○房村
政府参考人 まず第一に、三分の二か五分の四ということでございますが、十棟を
建てかえるときには、十棟全体の
区分所有者の五分の四の
賛成は、これは不可欠でございます。ただ、その十棟全体の
区分所有者の五分の四の人が
賛成している場合に、個々の
建物については
賛成者の割合がばらつきがあることがありますので、そういう場合に、それぞれの棟ごとに五分の四をクリアしていなくてもよろしいというのが、この一括
建てかえ
決議の基本的な
考え方でございます。
したがいまして、全体として、例えば九棟の
建物で、各五分の四ですから、少なくとも全体の五分の四以上の
賛成はあるわけですが、十棟一括でやる場合であっても、決して全体が三分の二で済むわけではございませんで、五分の四の全体の
賛成は絶対に必要となっております。ただ、個別の棟に見たときに、多少のばらつきがあって、ある棟についてはたまたま三分の二しかないという場合でも、それは全体としての
建てかえ
決議を有効にするという
考え方でございます。
法制審議会の
答申を経ていないものを
法案に入れたということについて御質問でございますが、その点について御
説明申し上げたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。(赤羽
委員「はい」と呼ぶ)
まず、団地の
建てかえにつきましては、やはり団地というのは、それぞれの棟、個別にあるわけではなくて、その敷地を全体として利用して
一定の住環境を保っている、そして、通常、管理組合も、団地管理組合として全体の管理を管理組合が行っているということが多いわけでございます。したがいまして、利用者の意識としても、もちろん各棟ごとの意識もございますが、団地全体として、この団地の住人である、こういう意識を持っていることが多いと
指摘されております。
その団地を全体として新しく
建てかえていくという場合、多くの場合、従来の低層の住宅の棟がたくさんあるものをまとめまして、ある
程度高層化して、全体として空間の有効利用を図るということが通常のように伺っております。
そういうことから、
法制審議会においても、団地の一括
建てかえの
決議ということを一たん検討の俎上にのせたわけでございます。ただ、その場合に、五分の四の
決議のみでいいということになりますと、例えば先ほどの御
指摘の、十棟の
建物のうち八棟で全員が
賛成した、残りの二棟については全員反対である、そういう場合でも、八割の
賛成がございますので
建てかえができることになってしまう。ところが、そうしますと、団地の全体で、団地の敷地は共有にしております、しかし
建物については、それぞれの
区分所有者ごとの、
建物ごとの所有でございますので、今のような極端な例になりますと、その
建物について何らの、
建物そのものについては権利を有していない者の意思によってその
建物の
建てかえが決まってしまうということから、所有権を侵害するのではないか、法理論上難しいのではないか、こういうことが懸念されたわけでございます。
また、今回の改正で、団地内の
建物の
建てかえ
決議に対する団地管理組合の承認という制度も新たに設けることといたしましたので、団地の
建てかえについても、全体のマスタープランをつくって、それに基づいて一棟ごとに
建てかえ
決議をしていく、それを団地管理組合の承認で実行していく、こういうことの方が
現実的ではないか、こういうようなことが
考えられましたものですから、
法制審議会の
中間試案公表の段階で、今回、そういう
現実的な方向に検討を絞り込もうということで、
中間試案でもその旨を公表いたしまして、それ以後、特に団地の一括
建てかえについての検討は行わなかったわけでございます。ただ、
中間試案についても、なお一括
建てかえ
決議について何とかならないのかという御
意見ももちろん寄せられました。
そういうことで、
法制審の
審議といたしましては、団地管理組合による承認という
手続の整備を中心にして
審議をいたしまして
答申をしたわけでございますが、その
答申がなされるころと前後いたしまして、団地管理組合で実際に
建てかえを
計画した人々から、何とか団地の一括
建てかえ
決議ができないのか、こういう強い要望が寄せられました。
私
どもも実情を伺ってみましたが、やはり、マスタープランをつくって、個別の
建てかえ
決議を積み重ねて、管理組合の承認で実行するということについては、すべての棟で五分の四が確保できれば、それは最終的に団地全体のきちんと整合した再開発といいますか、
建てかえが可能になるわけでありますが、そのうちの一棟でも五分の四に達しないということになりますと、全体として、複数の棟を集めて一棟にするとか、そういったような
計画内容になりますので、
現実には、一棟の
建物に関して
建てかえ
決議が成立しないということで、全体の開発
計画がだめになってしまう。
実情で伺ったものは、二十数棟の団地で、十年以上かけて
建てかえを
計画し、これを数棟の高層の
建物に集約するというような案だったようでございますが、全体で
決議をしたところ、全体としては八二%の
賛成が得られたにもかかわらず、幾つかの棟で五分の四に達しないということから、結局、長年の努力が水泡に帰して
建てかえが不可能になってしまった、こういうことをるる
説明を受けました。
その他、私
ども、直接ヒアリングをしたり、いろいろ調べてみますと、やはり団地として昭和四十年代ごろ開発されたものが次第に
建てかえ時期を迎えておりまして、かなりそういう一括して
建てかえをしたいという要望が強い、また、その必要性も強いということを認識したわけでございます。
そういう
意味では、従来にない制度をつくるわけでございますので、本来、諮問機関として
法制審議会を置いております
法務省とすれば、その
法制審議会での慎重な検討を経た上で
法案化をして
審議をお願いするというのが筋だろうと思っておりますが、そういう私
どもの見通しがやや悪かったということもありまして、団地の一括
建てかえ
決議の必要性あるいはその有用性というようなものについて、
法制審がもう
答申をするという段階になって、私
ども改めて認識をしたものでございますから、その扱いをどうするかということで大分苦慮したわけでございますが、やはり、
マンションの
円滑化法は既にことしの
通常国会で成立している、一日も早い
建てかえの
円滑化に関する
区分所有法の改正が待たれている、また団地についても、そういった
意味で非常に一括
建てかえの
決議の制度を設けることについての必要性が高いとかいうことを
考えまして、この際、立法府である
国会において国民の代表の議員の先生方に直接この一括
建てかえの
決議について御
審議願うということの方がよろしいのではないかということで、
法制審議会の
答申には含まれておりません一括
建てかえ
決議を含みました今回の改正
法案をつくって
審議をお願いしている、こういう状況でございます。