○川端
委員 私も、大変これはすばらしいことであるということと、その中でも、とりわけ
経済産業に非常に関心を持つ者としては、この二つの受賞の背景に、それぞれ、島津製作所あるいは浜松ホトニクス、こういう、決して大
企業とまで言えないけれ
ども、非常に
技術を大事にする、いわゆる物づくりをするという
企業が支えてきたということが背景にあるというのは、本当に
日本の、
大臣も言われたように、総合的な科学力、
技術力というもののシンボルとして、私は、こういう
企業、物づくりというものがあるというのは本当に誇らしいことだというふうに思っています。
ただ、いろいろな問題を、今もお二人のお話を引用されながらされましたけれ
ども、実は大変大きな今の現代社会への問題を提起されているのではないか。例えば、
一つはやはり教育研究の環境。今もし小柴
先生が十三歳、四歳、今の時代に中学生としておられたら、五、六十年後に、小柴少年は小柴博士になり、ノーベル賞を受賞するような道を歩むことができるんだろうか。
いろいろな、御本人のお話とかを引用してお友達のお話をしますと、例えば、中学生であったといったときに、友達が言っているんですね。彼は悪餓鬼でした、夜間に町を歩き回ったり、外食したり、校則違反の常習犯だった、何かあると、また小柴かということがよくあった、こう書いてあるんですね。という少年が、果たしていい内申書をつけてもらえるんだろうか。内申書が悪ければ、もう今はちゃんとした高校というか、内申書で全部分けられてしまうというときに、こういう行動をしている、もう本当に元気はつらつの少年は、どういう進学コースを歩めるのか、今の教育
制度では。
そして、何か御本人も、
大学では決して物すごく勉強ができたというわけではなかったと、東京
大学の物理の中でとおっしゃっていましたけれ
ども、その彼が留学をしたいと言われたときに、その当時の留学を審査する
先生だったんでしょう、朝永振一郎、これもノーベル賞をもらわれた博士が、米国ロチェスター
大学留学の推薦状は、成績はよくないけれ
ども、それほどばかじゃないと自分で書いて、にやにや笑う博士の署名をもらったということで留学させていただいた。
しかし、今
大学から留学するときに、教授に推薦状を書いてくださいと言ったら、こういう余裕があるんだろうか。そして、
先生が留学を終えて戻ってこられたときに、
先生御自身が言っておられましたけれ
ども、そういう学生を母校東京
大学は教師として迎え入れてくれた、今東京
大学は迎えてくれるんだろうか、何年か後に、今の小柴少年がなったときに。
そして、ニュートリノって何なのとよく、
大臣も恐らく聞かれたと思うんです、何の役に立つのと、今おっしゃった基礎研究の部分で。成果やまさに目的のはっきりしない、何かよくわからないような基礎研究に、
大学は、あるいは文科省は本当に予算をつけてくれるんだろうか。
私は、この予算をつけられた文科省、当時の文部省の背景は、やはりバブルのときであったなと思うんですよ、ぶっちゃけたことを言えば。ということでいうと、今の教育環境、子供からの部分で、それから
大学あるいは文科省を含めて、今小柴少年がいたら、そういう人材は育つんだろうかということは、私は大変厳しい
状況にあるんじゃないかと。
もう
一つは、田中耕一さん、
民間企業でもらわれた。私も
大学の
民間企業の研究所におりましたので、ちょっとしまったかなと思っているんですけれ
ども。実は、例がないんですね、
日本で。そして、
大臣、お会いにもなられたと思うんですけれ
ども、これからまた
民間企業から
日本でノーベル賞の受賞者が出てくるんだろうか。私は物すごい難しいと思います。
これは、
一つは、このノーベル賞は学会論文をベースにしているんですね。そして、学会の論文というのは、特にこういう科学
技術の
分野でいえば、この物質とこの物質を、これぐらいの量で、こういう条件でこういうふうにしたらこういうことになりましたというのを発表するわけですね。要するに、ほかの人がそのままトレースしてもきちっと検証できることでないと学会として価値がない。
特許も出しておられるんです。
特許は、できるだけ一般化して書くんです。私も田中さんの
特許を手に入れてみました。要するに、例えば、本当は具体的な、この物質とこの物質をこういう条件でというときに、この物質はこういうところに属していてこうなんだというので、こういうものとこういうものを、こんな条件にしたらこういうことができるから、こんな役に立つという書き方が
特許請求の範囲になるんです。ですから、トレースのしようがない。なぜならば、余りわかればノウハウも全部ばらすということなんですね。
ですから、私は、よくぞ島津製作所は彼に学会発表を許したという
企業風土はやはりすごいことであると同時に、これは田中さんも言っておられるんですよ、後で述べますけれ
ども。
だから、ノーベル賞が目的じゃないですけれ
ども、
企業というのは、
特許は出させる、ぼやっとしたものをできるだけ押さえていってということだけれ
ども、学会発表なんというのはほとんどやらないという世界を持ってしまっている。だからノーベル賞なんて多分……。そうしたら、今までにノーベル賞に匹敵するものがなかったのかというと、私、そうではないと思うんですね。
さて、そういう非常にすごいことだけれ
どもというときに、井上
先生も言われていましたけれ
ども、今の
経済状況の中で、
企業は研究投資をするのにどれだけの余裕があるのか、体力が物すごく落ちている。そして、研究テーマがあっても、開発という部分でいうと、例えば、一年以内にこういう目標でこれだけの予算でやれ、できなかったらやめておこうというふうなもので、本当にショートレンジで、目標の決まったものを開発して、あしたもうけなければいかぬということにどんどん絞られてきているという
状況の中で、失敗も許されないし、余裕もない。そういうのが現実だと思うんですね。
田中さんが取材のところで答えておられるのをちょっと見てみました。そうしたら、私は、
特許や利益に余り貢献していませんねと。会社も会社で、商売が下手なのでしょう、
特許をいっぱい出して
技術を独占するような考え方がないんです。ただし、研究者をもっと評価する仕組みはあっていいと思います。すぐには利益に貢献しなくても、長い目で
企業のためになる研究をどう評価するか。まだ売れないけれ
ども、頑張ったというエンジニアをエンカレッジする仕組みが欲しい。そうすれば、
日本のエンジニアはよく頑張るから、
企業のあしたの飯はきちんとつくられるとか、
企業研究者としては非難されるかもしれないが、今でも私は
特許をとることに対して積極的ではない。
特許をとるよりも仕事がおもしろいかどうかが重要で、おもしろい研究が続けられていることに満足をしていると。
自分はかなり
企業人としては珍しいということを言っておるわけですね。そして、
企業がこういう人を許しているというのは、許していると言ったら変ですね、認めているという
企業であることがすごい。
企業研究者からノーベル賞受賞者を輩出するにはどうすればいいでしょうかという問いに対して、製薬会社の場合、新しい成果が出ても長い間マル秘扱いで対外に発表できない。この点を
改善できれば
日本の研究が先進的なことを示せるだろう。製薬会社の研究者が、自分の成果を後から研究した別の研究者に発表され、非常に歯がゆい思いをしたという話を聞いたことがあると。
要するに、
企業は、その部分では、きょうの
法案の議論でもありますけれ
ども、いわゆる
権利化ということさえ、
企業の中で、ブラックボックスに入れて独占しようというものが働いている社会の中で、しかし、そういうことをやっていると、要するに、
知的財産権で守りましょうとか言っても、そういうこともしないというのが実態の中で、ノーベル賞が全部いいとは思いませんが、果たしてどういうふうにして
日本の財産の
知財を生み出していくのかということに、私は大変大きな問題を提起していただいているのではないかというふうに思っております。
そういう
意味で、喜ばしいことは間違いがないんですが、現実ということも含めて、私は、かなり深刻な問題が提起をされている、我々もその部分を受けとめなければいけないと思っているんですが、こういう
状況を見て、
大臣はいかがな御所感か。
それで、
最後にまとめ的に、これもある報道で載っていたんですけれ
ども、田中氏のノーベル賞受賞は
日本の
企業内研究開発力の潜在力の高さを示した。
企業内研究や研究者を正当に評価し、処遇する仕組みが
日本では欠けている。
技術マネジメント力を高めることが
日本の
企業の将来の成長力につながる。だから、
日本の
企業はやはり潜在的には非常に高いレベルで力を持っているし、そういう部分をうまくやれば
日本の
企業は本当にもっともっと強くなれるということを示唆していると同時に、しかし、現実にはそういうベクトルと逆に今全部置かれているという、教育環境も含めてあるという
指摘だと思うし、その部分の御
認識を当然お持ちだと思いますので、ぜひとも強く
意識して取り組んでいただきたいということなんですが、御
所見を賜りたいと思います。