○荒井(聰)
委員 公式的にはそうなんでしょう。でも、李登輝が
ビザを自分で取り下げたというのは、
日本政府のそういうものをおもんぱかったからなわけですよね。
私がなぜ李登輝さんの話をしたかといいますと、彼が慶応大学で若い人たちに話をしようとした話の内容が、戦前、八田與一さんという
日本人の、これは
日本流で言うと
日本のかんがいの技術者ですね、利水の技術者です。その方が台湾で大規模な利水事業をして、台湾の農業振興あるいは
地域おこしに大きな貢献をした、その過程を通じて、
日本人の精神あるいは
地域づくりというものの真髄を彼は語りたかったんだろうというふうに思うんです。
ところで、この九月に当
委員会は
沖縄の宮古、石垣を視察いたしました。先ほ
ども吉野さんから
お話がございましたけれ
ども、石垣島の経済の死命を制しているのは石垣空港だというふうに思います。大変大きな観光資源も持っております。さらには、今、南方性のフルーツといいますか、市場価値の高い可能性を秘めた、そういう果物の栽培にも熱意を持ちつつあります。私は非常に豊かな島だなというふうに思いましたけれ
ども、できたものを運ぶにも、あるいは観光客に来てもらうにも、千五百メートルの滑走路の空港ではなくてもっと大きな空港をしっかりつくらないと、この島の経済的な再生、活性化というのはできないんだろうというふうに思いました。
そのときに、その工事の中で一番の問題になるのは、土地改良事業によって引き起こされていると言われている赤土対策であります。あれだけの小規模な土木事業であっても、これだけ大規模な赤土が出て環境に大きな被害をもたらした。石垣空港をつくるとどれだけの環境の破壊が起きるのかという面から見るならば、赤土対策なくして石垣空港の建設というのはできないだろうというふうに思います。
ところで、土地改良事業についてなんですけれ
ども、土地改良事業というのは、もともと、戦前にアメリカのカリフォルニアのランド・インプルーブメント・ローという法律を下敷きにしてつくった法律であります。これは土壌侵食を防止するための法律でありまして、その法律を土台にして我が国では土地改良法という法律をつくったわけです。したがって、もともと、我が国の農業の公共事業である土地改良事業というのは、土壌侵食をどういうふうにとめるのかということが本来土台になければならなかったのだと思うんですけれ
ども、残念ながら、
沖縄の赤土対策ではそれがうまくいかなかったということなんだろうと思います。
現地に行きましたら、土壌侵食をとめるために大きな沈砂池をつくろうといったような発想で工事をしておりましたけれ
ども、私は、そうじゃなくて、先ほどの八田與一さんが提案した
地域おこし、町おこし、村おこし、そういうものをもう一回見直す必要があると。
彼は何を言ったかというと、
地域おこしや、あるいは大規模な土木工事を伴ったときに当然その
地域の営農ですとか生活様式が変わるわけです。変わって、そのための弊害もまた生ずるんだということを前もって農民と一緒になって話をしていき、農民と一緒になって
解決策をつくっていったんです。だからこそ、
日本人の、
日本の精神というものを彼は台湾の中に植えつけられたんだ、そういう思いを李登輝さんは述べようとしたんです。私は、これが農業の、あるいは農村における公共事業の真髄だと思うんです。
最近、農水省はそういうことを少し忘れてきて、お金だけ、大規模な工事だけやれば
解決できるというところに流れ過ぎているのではないか。もっと農家の人たちと、
地域の人たちと、この
地域をどういうふうにしていくべきなのかということを話すべきなのではないか。
この赤土対策で一番の
解決策は、営農の面での
解決策であると私は見ました。土地改良をやったところを、全部水田から切りかえたところもあるんですけれ
ども、サトウキビに切りかえたために、株出しした後は全くの裸地になっている。これでは、雨が降ればすぐ土は流れますよ。こういう営農の仕方をそのままにしておいて赤土対策をやろうとすると、巨大な沈砂池が必要になる。営農を変えてもらうということ、あるいは畑からの流出を防止するために小さな灌木を植えてもらうというようなこと、そういうような指導をやって初めて
地域おこしなり、
地域が一体になっていく、そういうことにつながっていくんじゃないかと思うんです。
単なる土木工事だけではなくて、土木工事も一生懸命、最近直りつつあるようですけれ
ども、
地域全体を見ていく、そういう観点がこの石垣の赤土対策には絶対必要だというふうに思うんですけれ
ども、この点、農水省の副
大臣、お願いできますか。