○広中和歌子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、
気候変動に関する
国際連合枠組条約の
京都議定書の
締結について
承認を求めるの件について御
質問いたします。
質問に先立ち、瀋陽事件について一言申し上げます。
何はともあれ、亡命者五人が無事韓国の土地を踏めたことは人道上の視点からも多といたしますが、日本
政府は、今後、類似の事件にどう
対応するおつもりなのか、
政治亡命者や難民問題に対する
基本方針を官房長官にお
伺いいたします。
京都議定書は、今から四年半前に、
我が国の古都、
京都の地でまとめ上げられました。人類の進歩や発展、あるいはこの文明の
在り方に大いに転換を求める人類史上画期的な国際ルールであります。
京都会議、すなわちCOP3は、二十世紀に日本で開催された最大規模の国際
会議でした。世界じゅうから、
政府関係者のみならず、
政治家、
環境団体、経済人、学者、ジャーナリストなど、何万人も集まり、
会議本体だけでなく
京都じゅうで様々なイベントが行われました。
日本国憲法前文には、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とありますが、大木
環境大臣が中心となって
京都でこの
議定書をまとめ上げたとき、私は、この憲法のくだりが初めて実現したのだと思いました。
ところが、
京都議定書の採択から批准の
国会審議までに四年半も費やしています。この間、
京都議定書の詳細なルールについての国際交渉が続けられてきたわけですが、日本
政府は、一日も早い合意に向けて努力する代わりに、米国などと組んで一部経済界の利益を国益という名で代弁し、合意寸前で交渉を決裂させたり、米国ブッシュ政権が離脱宣言をしてからは、それを口実に森林吸収三・九%を獲得、
我が国の
排出削減量を実質的に大幅緩和するなど、巧妙なる外交を展開し、国際NGOからは化石賞という不名誉な賞をもらっております。
この交渉でタフネゴシエーターとして名をはせた現在の
川口外務大臣にお
伺いいたします。
一部経済界の利益を国益として代弁することは、日本
国民と地球社会に対する大きな裏切りであり、
我が国が国際社会において名誉ある地位を占めるとはほど遠いと考えますが、いかがでしょう。
我が国は、二十一世紀の国際社会において
環境を基軸にした外交を展開し、ミレニアム・サミットでも合意したように、途上国の持続可能な発展を
支援することこそ最もふさわしい姿だと考えますが、御見解を
伺います。
この夏には、ヨハネスブルグで地球サミットが開催されます。十年前のリオに向けては、当時、平岩さんを会長とする経団連、市民
団体、青年
会議所、労働界、科学者、学生
団体など、そして我々超党派の
政治家が、
政府とも協力して、企業や
団体、
個人の具体的な行動を約束したり、共同して提案をまとめたり、途上国の
環境資金に関する国際的な賢人
会議を開催したりいたしました。
折から、東西冷戦が終えんを迎え、温暖化問題など地球
環境問題が国際社会の
共通の
課題になり始めた時期であり、日本でも大変に盛り上がったものでございます。そして、リオの場では、
我が国は世界最大の
環境ODAを約束し、高い評価を得ました。
その十年後のヨハネスブルグ
環境サミットにおいて、小泉総理は、日本国として何を主張し、何で貢献し、リーダーシップを発揮しようと考えておられるのか、具体的にお
伺いいたします。
さて、
我が国がまとめ上げ、今、参議院でその
締結の
承認についての
審議が開始された
京都議定書、その目標を達成することは
我が国にとって決して容易ではないと言われています。
確かに、小手先だけの
対策、対症療法だけでは難しいと思います。日本の経営者、経済界あるいは労働界の中には、
京都議定書の批准が、
我が国経済の国際競争力を損なう、あるいは産業の空洞化を加速化させるなどといった考え方の方もいらっしゃいます。
しかし、
京都議定書は、さきにも述べたように、我々の文明の
在り方の転換を求めるものでございます。すなわち、
都市構造、エネルギーシステム、交通体系、産業構造などを二酸化炭素などの
排出が少なくなるように変えていく、そのために、財政、税制始め様々な
制度や
仕組みを改革する、これが
京都議定書の目指すものであり、温暖化
対策であります。しかも、この
過程で技術革新が生まれ、投資やビジネスの膨大なチャンスが開けるのです。つまり、経済活性化や雇用創出を約束しているのです。しかも、
京都議定書には明確な数値目標がある。目標が大きいほど経済活性化のチャンスも大きいと思います。
京都議定書に
参加しないアメリカのことを気にすることはありません。彼らは必ず後から後れて付いてきます。
我が国が
環境技術開発と投資をてこに経済発展を遂げ、そして更に世界じゅうにその技術を伝える。
我が国がこうした形のリーダーシップを発揮することも国際社会に名誉ある地位を占めることだと思いますが、経済財政担当
大臣の御所見を
伺います。
特に、二十一世紀、確実に経済大国となる隣国中国に対する
環境を中心とした経済協力は欠かせません。かつて、
環境問題は先進国の問題とうそぶいていた中国が、今、経済発展と
環境破壊のジレンマに直面しております。
我が国にとってはいつか来た道、そしてまた、情けは人のためならずでもあります。
環境大臣の御所見を
伺います。
政府は、この三月に新しい地球温暖化
対策推進大綱を決定し、百種類を超える具体的、定量的な
対策を盛り込み、これを見直しながら二酸化炭素などの
排出量を二〇一〇年に九〇年度比でマイナス六%という目標を達成するとしています。この百種類を超える具体的な
対策の実施は、新たな設備投資、公共投資、
住宅投資、あるいは新たな消費をもたらすことになるわけですが、これらによる経済効果、雇用創出効果をどのように見ておられますか。そして、
環境と経済・雇用を同時に達成するこの温暖化
対策を今後の経済財政運営の基軸として積極的に活用すべきだと考えますが、いかがでしょう。経済財政担当
大臣に
伺います。
京都議定書の目標を達成するためには、先ほど述べたような様々な分野での改革やシステムの転換など、具体的な
政策が必要です。
幾つか提案させていただきます。
まず、税制の問題です。
石油、石炭、天然ガスという化石燃料の課税を、それぞれの二酸化炭素の原単位に応じた公正な税率にすべきだと考えます。現状では、石油には石油税、揮発油税、軽油引取税など、天然ガスには石油税が課され、最も二酸化炭素の多い石炭には消費税以外の税金は課されていない、大変いびつなものになっています。化石燃料に関する税金を一度全部廃止して、化石燃料全体を炭素税の視点で公平に課税したらどうでしょう。課税の簡素化にもなります。
あわせて、その税収は特定財源として温暖化
対策に充て、
環境に優しい
対応をした消費者に還元すべきだと考えますが、財務
大臣にお
伺いします。
次に、風力や太陽光発電など
再生可能エネルギーの温暖化
対策になる新しい技術というものは、一般的にコストが高いわけですが、まとまった需要が
確保されれば生産コストが低下し、普及がしやすくなります。そこで、例えば五年後に全国の公立学校約四万校に太陽電池を五十キロワットずつ、合計二百万キロワット設置するという計画を実施したらどうでしょう。つまり、メーカーに対して五年後の二百万キロワットの需要を約束するのです。
環境大臣に
伺います。
また、現在、電気のない暮らしをしている二十億に上る途上国の人たちへの
支援にも役立たすことができます。こうした視点での
環境ODAによる太陽電池の需要拡大を推進すべきだと思いますが、外務
大臣に
伺います。
さらに、
住宅や
建物の省エネ化です。
この分野からの二酸化炭素の
排出増加は著しいわけですが、日本の
住宅や
建物の断熱構造化は非常にお粗末です。新築のものには欧米並みの外断熱や二重窓を義務付ける、既存の
建物や
住宅には外断熱工法などによってどんどん断熱構造化する。公共
事業が減って仕事に困っている地域の工務店などの新しい仕事になりませんか。経済財政担当
大臣に御所見を
伺います。
そして、何事も隗より始めよです。今後、公共の
建物や学校には太陽電池、断熱仕様、屋上緑化などを義務付けていただけますか。官房長官に
伺います。
さて、
観点を変え、二酸化炭素などの
排出を減らすためには、ソフトな社会インフラにもメスを入れなければなりません。そして、これは決して我慢することではなく、真の豊かさを実感できるものでなければなりません。
一つは、これまでも参議院の超党派の議員連盟で試みられたサマータイムの導入です。十九世紀の終わりに国際的な標準時が定められる前までは、日本では、季節に応じて日の出時刻を
基準とした時刻が使用されていました。そして、現在、七十か国以上の国でサマータイムが導入されています。日本人も人間が作った標準時というものを地域と自然の摂理に応じて変更するぐらいの柔軟性を持ってもよろしいのではないか。
環境大臣に
伺います。
同じように、日本人はほとんど休暇を取りません。勤勉だからと言う人もありますけれども、社会的、
制度的な強制が働いているのではないでしょうか。特に、今や夏の長期休暇を実現できる社会にしていくことが不可欠ではないでしょうか。
私は、これを妨げている
制度の大きな
一つが、
政府各省の概算要求を八月三十一日までに財務省に提出しなくてはならないという予算決算及び会計令の規定だと思います。これは、単に国家公務員だけでなく、地方公務員、更には関連する民間
団体や企業などにも影響してきます。概算要求の提出は十月末としたらいかがでしょうか。財務
大臣に
伺います。
また、交通渋滞の経済的ロスや二酸化炭素
排出は相当のものです。東
京都心の路上での違法駐車は八割にも達すると言われています。取締りを民営化するなど、道路交通法に従って違法を取り締まるべきだと思います。いかがですか、官房長官に
伺います。
さらに、渋滞を解消する手段として、高速道路でのITを活用した料金自動支払システムであるETCの積極的導入を図ること。しかし、日本では機器が一台三万円、取付け
費用が五千円、すべて
個人負担です。ニューヨークの経験では、イージーパスと呼ばれるこのシステムは全額無料で、しかも、普及のため料金も割引されます。日本でも自動車関連の税からドライバーに機器の無料化を図ることができるのではありませんか。財務
大臣にお
伺いします。
経済社会の
仕組みを工夫することによって、企業や
個人から
環境に優しい行動を引き出すことは大切ですが、これらの行動を起こすのは私たち一人一人です。学校や職場、地域社会などで
環境意識を高めるための
環境学習、
環境教育が必要です。マスコミやNGOの協力も欠かせません。国としてどのように取り組まれるか、
環境大臣に
伺います。
さて、私たちは、元ロシア大統領ゴルバチョフ氏やリオの
環境サミットの事務局長モーリス・ストロング氏らの世界の仲間とともに、十年前のリオで実現しなかった地球憲章を新たにドラフトし、世界の多くの
人々の賛同を得て、今、ヨハネスブルグに向け、日本を含め、様々なレベルでこの地球憲章の普及を図っています。
地球憲章は、我々の唯一の住みかである地球に対する責任を分かち合い、お互いや他の生物への思いやりを持って、持続可能かつ平和で公正な社会をこの二十一世紀に築くための価値や原則をうたい、行動規範を述べております。
官房長官、大木
環境大臣、地球憲章を読んでいただいているか分かりませんが、この本
会議の場で、
国民に向かって、地球を救うための一人一人の行動を御自身の言葉で呼び掛けていただけますでしょうか。官房長官、
環境大臣から
お願いいたします。
議員の皆さん、ひな壇の閣僚の皆さん、そして
国民の皆さん、
京都議定書の目標の達成に果敢に挑戦し、同時に、その
過程を通じて、もう
一つの大きな
課題である経済や地域の活性化、雇用創出を図っていこうではありませんか。そして、それを実現し、
我が国は、世界の新しい
環境モデル国になり、世界の中で名誉ある地位を占めようではありませんか。
私は、このために幾つかの提案をさせていただきました。官房長官を始め
関係閣僚におかれましては、明確かつ積極的な御
答弁を
お願いし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣川口順子君
登壇、
拍手〕