○
江田五月君 おはようございます。私は、民主党・新緑風会を代表して、
小泉首相に対し質問と提案をします。
小泉内閣の支持率は一気に急落しました。
小泉首相、あなたはさきの外相らの更迭につき、誤算だったと言われましたね。何が誤算だったのでしょう。あなたは
田中眞紀子外相を更迭しても支持率にさほど影響はないと思っておられた。ところが、何と三〇ポイントもの下落、これはあなたにとって予期せざる出来事だった。そこで誤算、そうですね。まず、あなたの感想をお伺いいたします。
小泉さん、あなたは先日までの高い
内閣支持率の理由は何だったとお考えですか。私は、やはり国民は政治に何かを期待しているのだと思います。今のままで将来がうまくいくとはとても思えない、何とか変えてほしい、小泉さんという人は変人らしいが、それでも目は国民の方向を向いている、期待してみようと、こういうわけです。しかし、あなたは国民の期待を裏切った、少なくとも国民にはそう映った。そこで思わざる支持率の下落となった。原因はそこですね。お答えください。
田中眞紀子外務大臣は、本気で
外務省改革をしようとしていました。あなたが先日、本
院委員会でおっしゃったとおり、外務省は特定の政治家の言うことを気にし過ぎる、それを眞紀子さんは変えようとした。国民は
田中眞紀子さんのこの姿勢を応援していた。しかし、あなたはその
田中眞紀子さんの首を切った。これは三方一両損ではありません。非のある二人と一緒に、正しいことをした人まで首を切った。理非曲直が正されていないのです。正義に反するやり方です。しかも、事実隠ぺいなのです。これでは国民があなたを信頼できるはずがありません。
しかも、小泉さん、あなたは国民に今までとは違うぞという期待を持たせていただけに、余計にこの裏切りは罪が深い。あなたはそのことがいかに国民に失望を与えるか考えていなかった。この瞬間、あなたの目線は国民から離れて永田町の
派閥政治家や霞が関の官僚の方に移っていた。これでは、
小泉政治も結局は旧来型の
自民党政治の一つにすぎない、国民はそう思ったのではありませんか。伺います。
小泉さん、あなたは三人を辞めさせたのは国会の混乱を収めるためと言われますが、それはあなたの口実です。参議院では、私
たち民主党を始め野党は、
予算委員会出席方針を固めて質問の準備をしていたのですよ。それに、私
たち野党は、今回のNGO参加問題で正しい行動を取った
田中眞紀子さんの更迭など全く求めていません。あなたにはどういう情報が入っていたのですか。お尋ねします。元々、
田中眞紀子さんを更迭しようと機をうかがっていた人たちがいて、国会を混乱させ、これを利用したのではありませんか。あなたもそのことを知りながら、この機会に乗じて
田中眞紀子さんを辞めさせたのではありませんか。お答えください。
あなたは大きな間違いを犯しました。今回更迭すべきだったのは、特定の政治家の横やりを排除して
アフガン支援国会議へのNGOの出席を決めた
田中眞紀子さんではなく、BSEつまり
狂牛病対策の失敗で国民に二千億円もの損害を与え、国民の怨嗟の的になっている
武部農水相、農水大臣なのではありませんか。目線を国民の方に向け直す気はありませんか。お尋ねします。
さて、昨年は新世紀のスタートでした。しかし、祝福されたスタートとはとても言えません。逆ですね。世界は九月十一日の
同時多発テロと
アフガン空爆、これをきっかけに世界各地に緊張が広がっています。国内も
不良債権とデフレ、心の荒廃、特に
子供たちが危ない。大変です。
何より大変なことは、世界も日本も人々が理想や目標を見失っていることです。日本は特にそうです。もちろん、国家目標を一つに定めて
国家総動員でという時代ではありません。逆です。一人一人が自分の夢や理想を持って自分の人生を生きる。それを国も社会も応援する。二十世紀型でない、二十一世紀らしい理想や目標をみんなが持てるようにしないと、日本も世界も漂流状態になります。行き着く先は戦争やテロの横行、地球環境の破壊。みんなで協力して社会を作っていく力量を持った市民がいなくなってしまいます。
小泉首相、あなたは今、国民にどのような未来を作ろうと呼び掛けられますか。
特に
子供たちに何を呼び掛けられますか。人づくりなくして
国づくりなし、教育は未来への先行投資。御同意いただけるでしょう。しかし、現場は大変なのです。小泉さん、あなたは日本の未来のために教育をどう充実させますか。奨学金はどうしますか。三十人学級はどうしますか。伺います。
先日、衝撃的な将来推計人口が発表されました。一人の女性が生涯で産む子供の数を表す
合計特殊出生率が一・三九で長期安定し、日本の人口は二〇〇六年をピークに減少を始めて、五十年後には今より二千五百万人以上減るという推計です。これは日本の未来像を根底から考え直さなければならない重大な数字だと思います。小泉さん、あなたはこの推計をどのように受け止め、どのように日本の未来像を展望されますか。お答えください。
国民に理想や目標を持とうと呼び掛けるのは政治です。政治にしかできない仕事です。しかし、その政治を国民が信頼しなければ、何を言っても聞く耳を持ってもらえません。政治を信頼できないことは国民の不幸です。しかし、政治の側が手をこまねいていて国民に信頼してくれと言っても無理というもの、政治の側から身を正さなければなりません。
そこでお尋ねします。
あっせん利得罪の処罰対象に、
口利き行為を行って利得を得ようとしたすべての私設秘書を加えましょう。ずばりお答えください。
さて、私は、やはり一番大切なことは世界の平和だと思います。もちろん、平和だけが私たちの課題のすべてではありません。しかし、平和がなければすべてはありません。昨年を表す漢字が「戦」、戦争の戦だったことはよく知られています。今年も「戦」ではいけません。
そこでお尋ねします。
先日、
アメリカの
ブッシュ大統領が
一般教書演説をし、イラン、イラク、北朝鮮を悪の枢軸と名指しで非難しました。これは世界じゅうに波紋を広げています。ところが、小泉さん、あなたの
施政方針演説では、このことについては何も触れられていません。それどころか、日米の戦略対話の強化を強調しておられます。これでは、日本は
ブッシュ大統領の路線に追随するんだというメッセージを世界に発してしまうことになります。
このことだけでなく、
テロ対策でも経済・
金融政策でも、
小泉内閣は
アメリカ一辺倒、つまり
アメリカの言うことは何でもオーケーだという批判があります。
イランは、日本、
アメリカ、EU、サウジアラビアが
共同議長を務めた
アフガン復興会議の参加国ではありませんか。そのイランをあなたは敵視するのですか。答えてください。
北朝鮮については、韓国の
金大中大統領がいわゆる
太陽政策で対話の努力をしています。そのことを尊重すべきではないですか。
ブッシュ大統領の一方的な
敵視政策は、あなたが演説で二度も触れられた
ワールドカップサッカー大会にも悪影響を及ぼします。そうは思いませんか。あなたは、近々、
ブッシュ大統領にお会いになるのですから、直接、悪の枢軸という
敵視政策、
戦争政策をたしなめてください。いかがですか、はっきりお答えください。
昨年の
同時多発テロを目の当たりにして、私たちは、この地球上からテロを一掃するには
国際社会が一致協力しなければならないと決意しました。私
たち民主党も、激しい党内議論を経て、戦時に初めて自衛隊を海外に派遣することに同意しました。国際緊張の激化は私たちにとっては大変なピンチですが、ピンチはチャンス、今こそ
国際社会はテロや紛争を戦争によらずに解決するシステムを築くための大きな一歩を踏み出すときだと思います。
日本は何ができるか。私は以前から、PKOや将来の国連軍や
国連警察軍といった国連を中心にした
集団安全保障の活動には、日本も自衛隊とは別組織の待機部隊を作って、
国際公務員として積極的に参加すべきだと主張しています。
小泉首相はどうお考えですか、伺います。また、
国際安全保障については、日本はあくまで
国連中心主義でいくことが基本だと思いますが、いかがですか、伺います。
国連中心の
国際秩序の構築のために、具体的な提案があります。
国際刑事裁判所の創設です。そのための
国際規程の批准が昨年秋から注目を浴び、秋だけでイギリスを始め九か国が批准し、批准は四十七か国、署名は百三十九か国となりました。日本は、この
国際規程の提案国なのに、いまだに署名も批准もしていない。なぜですか、お答えください。
もちろん私は、軍事力でできることは小さいと思っています。
アフガン復興や
東チモール建国支援では、特にNGOの力が最大限発揮されるように政府が支援すべきだと思います。
アフガンの五億ドルと比べると
東チモールの
建国支援は今のところゼロ。
真実和解委員会のための五十三万ドルを決めただけですね。どうしますか、伺います。
アフガンや
東チモールの陰に隠れて、自分のところの援助が大きく削減されるのではないかと不安に思うアジア、アフリカの国々がたくさんあります。ODAは、一律にカットではなく、めり張りを付けて、これらの国々の不安を招かないようにすべきだと思いますが、いかがですか。
ちなみに、あなたの
施政方針演説には、NGOという言葉が一度も出てきませんでしたね。なぜですか。
NGOについては、今回は政府がお金を出し、政府と協力して活動するNGOがクローズアップされましたが、本来は、政府とは全く別に独立して活動している団体が多いのです。
アフガンでは、十七年にわたる
中村哲医師が中心の
ペシャワール会がよく知られています。御存じでしょう。小泉さんは、その活動をどのようにごらんになりますか。緒方貞子さんと並んで、中村医師と
ペシャワール会も日本の宝だと思いますよ。お答えください。
平和な
国際秩序を築くためには、何といっても
東アジア諸国との
友好関係が何より大切です。しかし、日本はこの諸国の人々に対し、さきの戦争で大変な痛手を負わせています。だから、
友好関係を築くために、日本がしなければならないこと、また日本がしてはならないことがあるのです。
小泉さん、あなたは今年の
靖国神社参拝をどうするつもりですか、伺います。だれもが気持ちよく参拝できる新たな国立の慰霊施設を造ることに、今年前半にも結論を出しましょう。伺います。また、
歴史教科書の共同研究はいつスタートさせるのですか。この三点について具体的にお答えください。
今後百年で、最大五・八度も気温が上昇し、異常気象も増えると、
地球温暖化が懸念されています。昨年十一月のCOP7で、やっと
京都議定書の細かなルールにつき合意ができました。日本は、COP3の議長国としての一層のイニシアチブが世界から求められています。リオから十年、今年の九月のヨハネスブルグ・サミットで
京都議定書発効まで持っていくには、六月上旬をめどとした我が国の締結が欠かせません。あなたの決意をお伺いします。
小泉内閣の目玉は、言うまでもなく
構造改革です。自民党を壊してもやり抜くと言われました。しかし、小泉さん、あなたは本当にこれをやり遂げる決意があるのですか。あなたは就任時の
所信表明演説では「
構造改革なくして
景気回復はない」と言っておられました。最近は「改革なくして成長なし」ですね。この看板の書換えには何か意味があるのですか、前の看板は下ろされたのですか、お答えください。
あなたの決意に大きなクエスチョンマークが付いたのが先日の更迭劇です。昨年秋には、
道路公団、
道路関係四
公団改革の不徹底もありました。
道路公団については、昨年末に十三の工事発注を中止した件につき、
自民党橋本派の有力幹部のツルの一声で中止が撤回されたと言われています。あなたは、この事実関係についてどのようにお考えですか。
道路公団や
国土交通省も、このような政治家の干渉をはね付けるべきだとは思われませんか。一般論でなく、この件につきはっきりとお答えください。
特殊法人改革は、百六十三の
特殊法人、認可法人のうち、大半が結局は看板の書換えです。
公務員制度でも、民主党の提出した
天下り禁止法案は与党の抵抗でたなざらし。小泉さん、あなたは
天下り禁止をやる気があるのかないのか、はっきりさせてください。
道路特定財源の
一般財源化は、
施政方針演説の中では全く触れられていません。どこへ行ったのでしょう。これもきちんと答えてください。
先日の更迭劇であれっと気が付き、よく見ると実は改革は言葉だけ、実行は先送りのオンパレードなのです。
私たちは、本気で
構造改革を成し遂げる決意です。しかし、
構造改革は、当面は
デフレ効果を伴うことも明らかです。ですから、
構造改革なくして
景気回復なしというのは論理的にはつながりません。
小泉首相、これは認められますか、伺います。
私たちは、
構造改革と同時に、デフレを阻止し経済を安定成長に軟着陸させるための
経済政策が是非とも必要だと思います。改革しさえすれば成長するというほど私たちの社会のモデルは単純ではありません。改革と
経済政策と、
政策目標は二つ必要なのです。
政策手法を多様に組み合わせ、息長く懐の深い生き生きとした
政策運営が必要なのです。
しかし、小泉さん、あなたの
政策手法は
経済無策です。株価下落は市場の悲鳴なのです。あなたはこの声を聞く気がないのですか。一本調子の
政策手法では、政治の可能性は干からびてしまいます。多くの手法を総動員することによって、政治は柔軟性と多様性を備えた豊かな可能性を取り戻せるのです。あなたはどうお考えですか。
昨年、あなたの言葉で最も印象に残ったものの一つが、夏場所優勝した
横綱貴乃花に
優勝カップを授与する際のものでしたね。痛みに耐えてよく頑張った、感動したでしたね。その貴乃花関は、今なお土俵に上がれずに、リハビリに努めています。痛みに耐えて頑張るだけが良いのではありません。
あなたのデフレに対する
経済無策で、国民の痛みは限界に達しています。
ホームレスは大都市だけの話ではありません。今や地方都市でも明日は
ホームレスかという恐怖が広がり、そこに付け込む新手の商売まで出てきているのです。その一方で、
狂牛病対策失敗の最大の責任者である前
農水事務次官には八千九百万円の
退職金満額支給でお構いなし。高級官僚には甘く、国民にだけ痛みを押し付けるのはおかしいとは思いませんか。答えてください。
民主党は
ホームレス自立支援法案を出し、継続審議になっています。これには与党の中にも賛同者がたくさんおられます。御存じですね。賛成してくださいますか、伺います。
あなたは、国民に対し、就任早々、改革に立ち向かう決意を、昨年秋の臨時国会では変化を恐れない勇気を、そして改革の痛みが現実のものとなりつつある今、希望を決して失わない強さを求められました。そして、ついには、戦後の国土の荒廃に立ち向かった
先人たちのように雄々しく立ち向かえとむちを入れられます。人は雄だけではありませんよ。
円安、株安、債券安、週明けにあなたの言葉を聞いた市場の反応です。失業率はとうとう五・六%、毎日、百人もの人が自殺しています。これにあなたの
支持率急落を加えて、
小泉スパイラルと言われています。国民は、貴乃花ほど、痛みに対し体を鍛えていません。痛みを和らげる方策をなぜ考えないのですか。伺います。
小泉さん、あなたは
経済情勢は厳しいと予想し、
デフレ阻止に取り組むと言われました。しかし、あなたの処方せんは、予算の切れ目なき執行のほかは、細心の注意、日銀と一致協力、強い決意くらいしか見当たりません。そして他方で、
改革断行を強調されます。注意深い
金融政策で円安誘導さえしておれば、本当に
デフレ阻止ができますか。国民は不安です。私は、この際、
与野党共同で
デフレ阻止共同宣言を行い、超党派の
デフレ阻止政策協議会といったものを設置することを提案したいと思います。あなたはどうお考えでしょうか。
今あなたが取り組んでおられるのは、戦後五十年余の努力で築いた繁栄の仕組みが、いささか古く非能率で新たな発展の障害になっているので、これを壊し更地にしようというものだと思います。しかし、人が住んでいるのに建物を壊しては、居住者はたまりません。
雇用政策が大切です。さらに、更地の上に何を作るか、この国のかたちをどう構想するのかが示されなければなりません。
あなたは、「
構造改革と
経済財政の
中期展望」でこれを示したつもりなのでしょう。しかし、これは
具体的処方せんのない言葉の羅列にすぎず、正に絵にかいたもちです。無駄なダムでなく、緑のダム構想があります。自然破壊の干拓でなく、白砂青松を回復する公共事業だってあるのです。
京都議定書に基づく
経済社会の在り方は立派な
中期展望になるのです。従来型の延長ではない新しい発想の
中期展望を作る気はありませんか。伺います。
イギリスでは、鉄の
宰相サッチャー夫人でさえ、改革と同時に
雇用対策として大規模な
セーフティーネットを張っていたといいます。あなたは、製造業や建設業などでの就業者の減少に見合う
サービス業での就業者の増加があると言われますが、数字でつじつまが合っていても、実際にハローワークへ行ってみてください。一緒に行きますか。そこに並んでいる皆さんに何と言われますか。明日にも倒産しかねない
中小企業の経営者や従業員は、あなたの万全を期してまいりますという言葉は空虚に響くだけです。
私
たち民主党は、四兆円規模の
雇用対策を提案しています。
不良債権の処理のためには必要不可欠な措置です。この提案をどうお考えですか、伺います。
さらに、今後の
雇用政策の大きな課題として
ワークシェアリングがあります。これは、単に
労働政策だけでなく、社会の在り方、家庭の在り方、人々のライフスタイルの変更にかかわる壮大な社会の
構造改革という課題です。
仕事さえあれば、仮に一家の大黒柱の収入が下がるようなことがあっても、配偶者やお年寄りや
子供たちの収入でこれを補い、世帯としての収入は確保できます。これを嫌々ながら受け入れるのでなく、むしろすべての人が能力に応じて労働という形で社会参加するのです。さらに、これにより生活時間にゆとりが生まれますから、仕事人間も家庭参加ができるようになるのです。
今後、人口減少が予想される日本の経済を大きく成長させることは全体としては困難な課題かもしれませんが、女性や高齢者の働く機会を増やすことによって、六千三百六十二万人の就業者数を増やすことはできるし、生活水準やクオリティー・オブ・ライフの向上は必ず達成できます。そのための
キーワードは、様々な形の労働力が極力均等に扱われ、保護されること、つまり均等待遇だと思いますが、
小泉首相は基本的にどのような考え方でこの
ワークシェアリングという課題に臨まれるのですか。伺います。
官から民へ、中央から地方へという言葉は、お題目だけではいけません。
例えば、
NPO税制です。
福祉システム、文化活動、街づくり、
途上国支援などでは、官ではかゆいところに手の届くサービスが提供できません。地域の皆さんのやる気を支援し、
地域社会を再構築するための
キーワードがNPO、特定非
営利活動法人なのです。
支援の枠組みとして税制は外せません。役所のコントロールを離れ、同時に公的役割をきちんと担うようにするため、政府も野党もパブリックサポートテストを取り入れた具体案を昨年作りました。しかし、政府案は実際には利用不可能。私たちはこれを羊頭狗肉だと批判し、修正を求めました。あなた方は、NPOの重要性については、一見私たちと同じ立場に立ちながら、あれこれ言って私たちの修正案に耳をかしませんでした。今、
認定NPO法人、これはわずかの二件。二件ですよ。
そういえば、小泉さん、あなたの
施政方針演説にはNPOという言葉も一度も出てきませんでしたね。NPOについての理解がないのではありませんか。多くのNPOが利用しやすい
支援税制に改めるつもりはありませんか。伺います。
ついでに一つ。NPOでもNGOでも重要なのは、政府との
信頼関係ではなく、彼らの自主性なのです。ところが、さきの
外相更迭劇では、政府を批判するNGOとは政府は
信頼関係を持てないとの外務省の態度が明らかになりました。あなたは、あなたの政府を批判する団体とは
信頼関係を持てないのですか。なぜ、これらの自主活動までコントロールしたがるのですか。なぜ、そんなに御
自分たちのやり方に自信があるのですか。市民の知恵や力を信頼できないのですか。伺います。
次に、地方のことを伺います。
小泉内閣の下で、すさまじい中央集権と地方破壊が進んでいます。今や
地方自治体の財政は軒並み破綻寸前です。それでもなお、
地方自治体によっては
財政改革の取組よりも補助金に手を伸ばすことに精力を使っています。補助金に自己資本を足して箱物を作り、これが市民にとって魅力皆無で、見向きもされず
金食い虫になって困り果て、客集めのためと称して次の箱物作りのために補助金を求めるという悪循環にはまり込むのです。
このくらいの知恵しか出ないのは、地方の財政権限が弱いからなのです。思い切って
財源移管をしてはいかがですか。また、私
たち民主党は、
地方財源強化の第一歩として、補助金を一括して
地方自治体の
一般財源とする
一括交付金制度を提案しています。小泉さんはこれを実現する考えがありますか。伺います。
地域経済や
地域金融をどうするつもりですか。
地域の経済は、元々不況のところに、目前に迫ったペイオフに備え、
地域金融機関に対し
不良債権処理を強く求めていますから、本来、
中小企業を支えるはずの
金融機関の融資が激減し、
地域経済は
危機的状況です。地域の
赤字企業を黒字にするための
地域企業再生法といったものが必要だと私は思いますが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。
また、地域の
中小企業を支えている
地域金融機関が地域の実情に応じた役割を正しく果たせるようにするため、私
たち民主党は、昨年与党の反対で廃案となった
地域金融円滑化法案、
略称金融アセスメント法案を昨日再び本院に提出しました。既に全国で
中小企業家を中心に五十万人もの署名が集まり、二百十一の自治体で意見書が採択されています。小泉さん、あなたも、多くの国民の声を無視するのではなく、是非この法案の成立に御協力ください。答弁を求めます。
小泉さん、あなたは口では官僚に厳しいことを言っておられますが、実は
小泉内閣は官僚に大甘の政治で、もっとはっきり言えば、実は
官僚政治ではありませんか。
税制改革も、結局は
財務省主導の増税策ではないのでしょうか。少なくとも、プライマリーバランスの赤字解消は歳出削減で行うべきではありませんか。お答えください。
前農水次官への
退職金満額支給で、消費者や畜産農家の怒りは頂点に達しています。外務省については、あなたは体制を一新したと言われますが、それは見せ掛けで、
田中眞紀子さんもてこずった機密費上納問題に完全にふたをし、
改革放棄をしたのではありませんか。そういえば、今回のあなたの
施政方針演説から聖域なき
構造改革という言葉が消えました。やはり、機密費問題はあなたにとって聖域だったのでしょうか。外務省と
内閣官房の機密費問題の真相解明は、もうおしまいではないでしょうね。はっきりとお答えください。
今、日本の農業は危機に瀕しています。
長く食の安全の問題を放棄し、農薬漬けも平気、季節無視も平気、とにかく収量優先。農家は土地改良と機械化で借金に追われています。しかし、大規模化も機械化も中途半端で、何より後継者がいません。気が付けば農業は崩壊寸前。農業土木偏重の従来型農業政策をやめて、所得政策中心の政策体系に移行し、環境や国土保全などの農林業の多面的な機能を重視した政策を進めるときが来ているのではありませんか。伺います。
食の安全のことになると、やはりBSEの失敗から学ばなければなりません。
私は、この際、農林水産省と厚生労働省に分かれている食の安全行政を統合して、内閣府に、
アメリカのFDA、連邦食品医薬品局や、EUの食品安全庁のような食の安全のための包括的行政機関を作るべきだと思いますが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。さらに、食の安全を害する行為を厳しく罰し、消費者本位の食の安全行政を実現するため、JAS法と食品衛生法の抜本改正を行うべきだと思いますが、お考えを伺います。
司法制度改革について伺います。
施政方針演説の中にもコンパクトに言及があります。私
たち民主党も、市民が主役の司法の実現のため、これまで司法制度改革の提言もし、審議会意見書に賛意を表してきました。司法改革与党のつもりです。小泉さん、あなたも市民が主役の司法とか国民主権の下にある司法という理念に賛同していただけますよね。伺います。
しかし、あなたは余り御存じないでしょうが、問題はこれから。ここでも抵抗勢力はかなり強力なのです。あなたは司法制度改革推進本部の本部長なのですから、是非ともリーダーシップを発揮して、本部の活動の情報公開、会議のリアルタイム公開など、プロセスを国民に開かれたものにしてください。さらに、予算措置が必要です。人を養成するのですから、おろそかにはできません。大丈夫ですか、伺います。
人権救済制度についても議論の真っ最中です。救済機関の独立性は、国内でこれでよろしいと言うだけでは済みません。パリ原則という
国際社会のルールがあります。同じ作るのなら、世界じゅうどこに出しても恥ずかしくないものを作りましょう。私
たち民主党は、内閣府に人権委員会を作ることを提案しています。どうお考えですか。
小泉さん、あなたは
施政方針演説で、世界最先端のIT国家や電子政府、電子自治体を実現すると言われました。大いに結構ですが、それが世界最先端の国民管理国家となってはいけません。今年の八月五日からすべての国民に十一けたの番号が付きます。小泉さん、あなたは、この国民共通番号制が個人の自由とプライバシーを侵害しないものだと約束できますか。お答えください。
この国民共通番号制には、ジャーナリストの櫻井よしこさん、作曲家の三枝成彰さん、長野県の田中知事、杉並区の山田区長始め多くの人々と百十九の
地方自治体が反対しています。総務省は住民基本台帳の四項目のデータにしか使用しないと言っていますが、経済産業省始め各省庁は既に拡大利用の研究を始めています。行政が個人を支配するような拡大利用を認めてはならないと思いますが、いかがですか、伺います。
昨年末、私の大変尊敬する大先輩、加藤シヅエさんが百四歳で永眠されました。愛をテーマに女性の健康と地位向上のために生涯をささげられた加藤さんの精神を私たちはしっかりと引き継いでいく責任があります。
今国会で政府は、母子家庭に対する児童扶養手当の削減をしようとしています。正に
小泉首相のおっしゃる痛みに直撃されている母子家庭を、あなたは更にねらい撃ちしようというのでしょうか。お答えください。
働く意欲を増す効果があるなどと言われているようですが、意欲があっても場がないのです。病児保育や夜間・休日保育も十分でない日本社会では、子供の都合によって働き方を左右されざるを得ない一人親世帯は最も職場から遠ざけられてしまいます。生活保護世帯になってしまうのなら、結果として国庫負担が増すだけだし、労働力はますます封じ込められるのではないでしょうか。どうお考えですか。
小泉さん、あなたは、女性の涙については差別的な認識をお持ちのようですが、児童扶養手当を削減されて成長権を脅かされる
子供たちの涙についてはどう考えられるのでしょうか。この計画を断念するつもりはないのか、お答えください。
昨年の内閣府の世論調査を受けて、今国会で政府は選択的夫婦別姓を認める民法改正案の提出を検討しています。女性の人権という観点からも、また、多様な家族にそれぞれの在り方を認め、愛をはぐくむ環境を提供するためにも、民法改正は長年の懸案であり、私
たち民主党も積極的に取り組んでまいりました。現在も私たちが提出した法案が衆参ともに継続中です。
民法改正案を提出しようとする政府に対して、与党の根強い反対があると聞いていますが、この程度の改革もできないようでは、日本を立て直すことなどできないでしょう。断固として法案を提出する決意が、小泉さん、あなたにおありかどうか、伺います。
DV、ドメスティック・バイオレンス、つまり家庭内暴力の被害者の自立支援について伺います。
昨年成立したDV法は、主として女性の被害者の保護と加害者の行動制限などについて定めるだけで、被害女性が加害者から逃げた後の生活再建や自立支援については不十分です。今後、被害者の自立、自己決定を尊重しながら地域で支援する仕組みを作ることが重要です。特に、地域福祉の観点からの取組の強化が必要ですが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。伺います。
ところで、
小泉内閣総理大臣、あなたは演説の冒頭、愛子内親王の御誕生に言及されました。私も愛子様の健やかな御成長を楽しみにしています。しかし、最後に昭和天皇の和歌を引用されたのはちょっといただけません。あなたにはお分かりにならないかもしれませんが、
施政方針演説はあなたの政治的意思の表明なのです。そこに、まだ影響力の強く残っている天皇の和歌をあなたのメッセージの説得力を補強するために使うのは、やはり天皇を政治に利用したことになるのです。慎んでください。どのように答えられますか。
私は、この際、むしろ皇室典範の改正を提言します。女性の天皇を可能にしようではありませんか。お答えください。
最後に、小泉さん、あなたは憎めない人だと思います。しかし、抵抗勢力に支えられて
構造改革を行うという絶対矛盾の政権では、あなたの目指すものはいずれ必ず行き詰まります。もう行き詰まっているとも言えます。あなたの一番いいところは、率直に、思い切って自分の思っていることをはっきり言うところです。行き詰まりが分かれば、どうぞ、恐れず、ひるまず、たじろがず、もうお手上げだ、代わってくれとおっしゃってください。私たちはいつでも代わります。
終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕