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参考人(
本渡章君)
弁護士の
本渡でございます。
本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
それでは、私は、
岩原参考人及び
中谷参考人の高邁な
意見陳述の後に、個別にちょっと日弁連
意見書で書いたところを踏まえながらお話しさせていただきたいと思います。
まず、
委員会等設置会社を作ろうという
法案になっておりまして、それについては
企業の
競争力を
強化したいとか
効率的にするとかいうことで、やはり
会社というのは
利益を上げないといけないものですから、それに資するためには
会社の統治を、
コーポレートガバナンスをどのようにすればいいのか、そういう観点から
委員会等設置会社、要するに
アメリカ型の統治機構を持ったものを作ることには賛成しております。
それで、基本的には今回の
商法改正案については
一定の
評価をしておるわけですが、
一つ、細かい点ですけれども、まず日弁連
意見書で、
監査委員会に常勤の
監査委員を置かない場合、
現実に
業務監査の実効性が上がるのか疑問があることから、常勤一名を義務付けるべきであるという
意見を述べさせていただきました。
これは何が言いたいかといいますと、
監査委員会、これも一応、
監査委員は
取締役であって妥当性
監査もやるんだということでありますけれども、ただ、何というか、この
委員会等設置会社の
議論を聞いておりますと、
監査委員がただ
取締役会に
出席し、年に、年にというか月に一回
程度ですかね、多くて、あと
監査委員会にも当然
出席はするでしょうが、その
程度のことで実際に
監査ができるのかどうか、そこら辺が少々疑問だと思います。
ということは何かといいますと、大体、
監査というのはただ聞けばいいというものじゃなくて、自分から出ていって、それでいろいろ質問をしながらやっていかないと、大体耳障りの悪いことというのは余り話題にならないことが多いものですから、現在行われている
監査役会においても常勤
監査役がおりまして、それで大体、支店とか各部署に聴きに行っていろいろ調査をしながらやっているというのが実際で、そういうことをやって初めて
監査の実が上がるんじゃないかというような気がいたしております。ただ、何というんですか、
監査役スタッフを多くして、そこから上がってきたものをただ聞いて、それでちゃんと
監査ができるかと、ちゃんと
執行役又は
代表取締役の行為について監視がきちっとできるのかというと、少々疑問があるなと。
そういうことから、一応この
法律案におきましても、「
監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして
法務省令で定める事項」というものがあって、内部
監査システムは
法務省令で一応定めるということになっていると思いますので、でき得ればその
監査システム、要するに内部
監査システムを作る場合に、
監査委員のうち一名以上は常勤で、ちゃんと各支店及び
関係先を回って聴かないといけないというような
監査システムを作るようなことにしていただきたいなということが
弁護士会、
弁護士会というか日弁連で書いた
意見書の趣旨でございます。
やはり、
コーポレートガバナンスというのは、要するに
会社というのはお金を、要するに
利益を追求するものですから
効率的にやらないといけない、
競争力も高めないといけない、
活性化もしないといけない。これは当然のことでありまして、それがないといけませんが、しかし
不祥事が起これば、これはもう、ちょっと
効率的にやったとかそんなような問題じゃなくて、社会的に悪影響というのはかなり大きいものですから、やはり
不祥事防止という観点からこういう
監査委員の選任というか、そういうところもかなり気を遣わないといけないと考えております。
次に、第二点といたしましては連結
計算書類の点なんですが、連結
計算書類を今度、
大会社については作成しないといけないということになっております。これは
法律案でそうなっておりますが、これは
企業情報をより積極的に開示するということから非常に必要なことですし、また実際、
大会社というのはもう単独の
計算書類だけでは実態は把握できない状況になっていると思います。というのは、もう子
会社、関連
会社が数十社、多ければ何百社もあるような
会社が多いわけですね。そうなると、やはり連結
計算書類がなければ実態は把握できないと。したがって、
企業情報を積極的に開示するためには連結
計算書類がどうしても必要でございます。したがって、今回、連結
計算書類を作成しないといけないということに
法律案でなったことは大賛成でございます。
ただ一点、連結
計算書類につきましては、連結
監査報告書を
会計監査人及び
監査役、まあ
監査役会又は
監査委員会で
監査しないといけないことになっております。しかし、この
法律案を見ますと、連結
計算書類は
取締役又は
執行役が作りまして、それを、何というんですか、定時総会の招集通知に添付するということになっておりますが、しかし連結
監査報告書につきましては総会の場で報告すればいいという
法律になっております。しかし、やはり
計算書類ですから、
監査を経た
計算書類でなければ完全ではありません。したがって、でき得ればですけれども、招集通知に連結
計算書類と一緒に連結
監査報告書も添付させるべきであろうと、これが理想でございます。
しかし、それができないとしても、まあ事務
手続上できないかもしれませんが、少なくともそういう場合には、総会が終わった後に
株主に対して連結
監査報告書を事後的に
送付するとか、少なくとも不適法
意見あるいは相当でない旨の
意見が提出された場合に限ってはその旨を通知するというような
制度を付加する必要があろうかと考えております。そうすることによって、やはり
監査を経た連結
計算書類が
株主の元に届くということになり、正確性が担保されるんじゃないかと考えております。
次に、第三番目で、これはかなり
弁護士の間においても
意見の違いがありまして両論があったわけですが、
計算関係規定の省令委任につきましてやはり反対ということになっております。
これはどういう
意味かと申しますと、
法務省令に
計算関係書類をすべて、
会社の財産とかそういう
評価の基準をすべて
法務省令に委任しちゃおうということで、それ自体はすごくそのときそのときの状況に応じて、グローバルスタンダードというんですか、そういうようなものに合わせて省令を簡単に
改正できるという点は便利であると思います。しかし、便利だけでは困るので、少なくとも、この会計基準を
法務省令に委任することによって配当限度額及び中間配当限度額の各算定についても
法務省令によって定められてしまうことになると、これは根本的な
株主権の
一つである
利益配当の
内容について
商法本則から導き得ない結果となるので問題だということで、少なくとも基本的なこと、会計基準だとか、あと
利益配当限度額の算定については
商法本則に規定してもらいたいということがかなり強い
意見としてあります。
それで、それは何でこういうことを言うかと申しますと、省令というのは簡単に
改正できて便利であるということは、裏返しにすると、省令を
改正するのは簡単だということは、少なくとも
弁護士にとってはどういう
改正がなされたかがよく分からない、知らないうちに
改正になっちゃったというような事態もありますので、できれば
法律で
改正することにすれば、今回のように、まあ
参考人として出るかどうかは別として、
弁護士会においても一応妥当かどうかについて、何というんですか、検討ができますし、ああ、こういう
改正になるのかということが分かりますのでいいのかなと。
それで、あと財産の
評価。
会社というのは財産をどう
評価するかで
利益が出たり出なかったり、又はちょっとした
改正でも
計算が違ってくれば今まで黒字になるだろうと思っていたのが大赤字になっちゃうとかいうこともあるわけで、
会社にとってはかなり大きな問題だと思います。したがって、
商法改正も去年三件ですか、
改正があったように、大体一年ぐらいたてば
改正はできるんじゃないかと。したがって、これはだからもう絶対、今回の
法律は駄目だというわけじゃないですが、できれば
商法本則できちっと規定してもらいたいなという
意見が
弁護士会の会でも少々強かったと。省令委任でいいんだという
意見もありますが、そういう
意見もあったということでございます。
以上でございます。