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浜四津敏子君 一部まれなケースを除きますと、ほとんどが社会に再復帰しているということを示していると思います。
先ほどの欧州評議会で議論されたことにも見られますように、死刑廃止というのは、現実に
世界の潮流になってきておりますが、
日本では
国民的な議論は十分になされておりません。これにつきまして、
本当に死刑が必要なのか、死刑で
本当に被害者感情がいやされるのか、また死刑をなくすと凶悪な
犯罪が増えるのか、死刑に
犯罪抑止効果があるのか、こういった
観点からの真剣な議論がなされなければいけないと思っております。
法務大臣が署名される死刑
執行命令書の原案は
法務省の刑事局が作成すると伺っておりますが、その刑事局に配属されたある検察官の方の言葉を読んだことがあります。それは、自分たちは法律に従って
手続を進めるだけである、国際的な死刑廃止の潮流は分かるけれ
ども、決めるのは
国会であると、こういうふうに述べたと伺っております。
ともかく議論をし、そして
検討し、何らかの改善を図りたいと私は希望をしております。改善の一方法として、死刑と無期との格差を埋める
方策を
提言させていただきたいと思っております。
現在、死刑が必要だという人の中には、現行法上死刑に次ぐ重い刑罰である無期懲役では余りに軽過ぎる、その
現状では死刑存置せざるを得ないという
意見も多いわけでございます。現行の無期刑は、十年間服役すれば仮出獄できることになっております。仮出獄は、刑務所長の申請に基づきまして、
地方更生
保護委員会が改悛の情があるか否か、具体的には悔悟の情、あるいは更生の意欲、再犯のおそれ、及び社会の感情を総合的に判断して相当と認められるときに仮出獄を許すものとされております。仮出獄後は、
保護観察に付せられますけれ
ども、何事もなく無事に経過すれば生涯を社会で過ごすことができると、こういうことになっております。
すなわち、現行の無期刑は、実質において、十年以上の有期懲役という結果となっておりまして、死刑に次ぐ重罪として本来あるべき無期刑とは実態は乖離していると言わざるを得ません。すなわち、現在の無期刑は、生命を存続させることを前提とする、また高い蓋然性を持って社会復帰があり得る刑でございます。これに対して死刑は、生命を絶つという
内容の刑でございます。しかも、我が国では死刑の
執行猶予や
執行停止、あるいは恩赦を除きまして減刑ということもありませんので、社会復帰は始めから全く予定されていない刑でございます。したがって、死刑と現行の無期懲役というのは、本質的、決定的な差があるわけでございます。隣接した刑であるにもかかわらず、実質的には天と地ほどの乖離がある、ここに一番の問題があると思っております。
しかも、死刑になる事案と無期懲役になる事案とでは、言わば紙一重のケースが多いというのが
現状でございます。一審、二審あるいは上告審の間で、死刑判決、無期判決の判断が揺れ動くこともまれではございません。現場の
裁判官の苦悩は多くの判決文からもにじみ出ております。
例えば、先ほどお話しいたしました光市の母子殺人
事件、これは一審、二審無期懲役でございました。また、いわゆるこの判決の中でもいかに
裁判官が苦渋の決断をしたかという
内容が出てまいります。また、いわゆる永山
事件、これは十九歳の被告人が合計四人の命を奪うという
事件でございましたが、原審は無期、最高裁で破棄差戻しとなって死刑となりました。また、甲府の信用金庫OL殺人
事件でも、一審、二審無期懲役でございますが、この判決の中に、極刑も十分に考慮に値する、しかし熟慮の結果、無期を言い渡すと、こういう判決文が判決の中で述べられております。また、これは最高裁の
平成十一年十一月二十九日判決でございますが、顔見知りの主婦宅を訪問して現金を強取し、強姦の上殺害する、こういう
事件につきまして一審が死刑、二審が無期、最高裁が上告棄却となって無期、こういうことになりました。つまり、同じ事案につきまして死刑にしてもおかしくない、しかし無期懲役でも著しく正義に反するということはできない、こういう判決の
内容でございました。
最後に、これは二〇〇〇年の九月十八日、横浜地裁で言い渡された判決でございますが、るる死刑にするか無期にするかという考慮を重ねた結果、最後にこういう
部分が判決に出てまいります。なお付言するに、同じ無期懲役刑に処せられる事犯にもその罪責の重さのほどには相当な幅が存するところ、本件は限りなく死刑に近い領域に属するものと言うべきである、また現在、死刑に代わる刑罰として、あるいはこれと併存させて仮出獄の認められない無期懲役刑の
制度化が論議されているが、仮にその
制度が実現したならば、本件の被告人に対してはその無期懲役刑に処するのが相当と思料されるという大変異例の判決が出されました。
私
どもも、このともかくも無期刑と死刑との間の天と地ほ
どもある乖離を何とか埋める施策として幾つか中間的な刑を
検討してまいりました。それは、与党のプロジェクトチームでも
検討したり、あるいは議連でも
検討したりしておりましたが、例えば絶対的終身刑、仮出獄を認めない絶対的終身刑につきましては、またこれもある意味で問題がある。あるいは、
裁判官が判決の際に仮出獄条件の最低服役期間を例えば二十年、三十年、四十年といったようにいずれかを言い渡す、こういう考えも提起されましたが、これは本来行政
機関のなすべき仮出獄につきまして
司法が介入するという問題点がある。
あるいは、イギリスの終身タリフ
制度に似たような終身刑
制度はどうかというような議論もありましたけれ
ども、これについても様々な問題点が
指摘されたりしておりまして、私は個人としては、これは死刑と無期の間に新たな刑として特別無期刑というものを設けて、特別無期刑は二十年又は三十年以上服役しなければ仮出獄を認めない、こういう刑を刑法総則に規定した上で、死刑が規定されている条文に死刑との選択刑として規定してはどうかというふうに考えております。これは個人としての
提言でございますので、
大臣には御感想だけお伺いできればと思います。