○鈴木寛君 ありがとうございました。
それでは、今日は
国立大学法人化のみならず
大学全般についての集中
審議ということでございますので議論をさせていただきたいわけでありますが、私は、そもそも
国立と私立と公立、こういう
法人化区分がどこまで必要なのだろうかということを是非問題提起としてさせていただきたいと思います。
どうもいろんな議論を聞いていますと、
国立大学は非常に公益性があって
社会性があってと。私立
大学は何か、何というんですか、経営重視で私益に走っているという議論に聞こえてならないわけであります。私立
大学において
研究教育に携わっていた私からしますと、やや違和感を覚える議論であります。私立
大学の卒業生も国家
社会のために貢献してもらおうと思って
教育をしているわけでありますので、逆に、私立
大学といいましても、皆様方よく御存じのように、別に株式会社じゃなくて、きちっと
学校教育法あるいは私立学校法に基づいて公益性ある組織として
設置が認められているわけであります。それから、
私学助成ということで税金も使っているわけでありますから、私はあえて、中長期的課題としては、
国立と公立と私立と、こういう学校区分というのはなくして、一様に
大学法人法みたいなものができて、
大学たるものをこうした公益性と
自主性と
独立性と、こういう法的な枠組みというものについて
検討してはいかがかなという
提案をさせていただきます。
その
提案の問題意識の根っこには、私立
大学と
国立大学、余りにもやっぱり支援の差があり過ぎるのではないかと、こういうことでございます。
現在、
国立大学には一兆五千四百二十五億の国費が投入されております。一方、私立
大学は三千百九十七億円ということであります。これ、
学生一人当たりに直しますと、私立
大学が十七・一万円に対しまして、
国立大学はその十一倍の百九十五万円であります。
国立大学卒業生も私立
大学卒業生もひとしく
社会に貢献をしてくれているわけでありますから、この十一倍という差はやはり余りにも極端な差ではないかなというふうに思いますし、特に私立
大学生が入学の年に掛かるお金というのは三百十六万七千八十一円なんですね、直近の
調査によりますと。これはその家計の年収の三一・四%ということでありますので、これは私は大変ゆゆしき事態だと思います。私は、広く、
国立大学、私立
大学を区別せずに、学ぶ意欲があって一生懸命頑張っている
学生全体を支援をしていくべきだというふうに思いますが、いかがかというふうに思います。
それで、
教育面について、
国立大学がなくなった場合の問題点として、いわゆる実学以外の純粋学問についての
教育がおろそかになると、こういうお話がございますが、実学を貴ぶ慶応
大学でもきちっと哲学とかそうした学問は教えておりますし、人づくりの意味ということを見識ある関係者が
考えれば、当然に何を教えなければいけないのかと、純粋
科学は教えなければいけないということはこれは出てくるわけでありますし、それから当然そのところはアクレディテーションなどで
評価をされるということになりますから、
教育において私は
国立と私立の差というのはそんなにないのではないかというふうに思います。
ですから、私は、
一つの方法論として、
提案として、要するに
国立であろうが私立であろうが学ぶ
学生に対しては、今これ足しますと一兆五千億と三千二百億円ぐらいですから一兆八千六百億ぐらいになるんですけれども、これを
大学生で頭割りしますと七十一万円ぐらいになるんですね。そうすると、一律に、一律にである必要はないんですけれども、もちろん
学生に応じてなんですけれども、それを、それは
学生の資質とか意欲によって変えるのは構いません。しかし、
国立学生だから、私立
学生だからということではなくて、その平均七十一万円というものをクーポンとかバウチャーにして、その
学生の意欲と志と頑張りに応じて直接、組織に渡すんじゃなくて、この一兆八千億とかというお金を、今は慶応
大学とか
東京大学とか
京都大学とか組織に渡して支援をしているわけでありますが、そうじゃなくて、
学生の方にこの頭で渡していくような
教育クーポンとか
教育バウチャーというのは
考えられるのではないかなということを
一つ御
提案を申し上げます。
問題は
研究の方であります。確かに市場メカニズムあるいは経営重視だけで
基礎研究が成り立たない、あるいは純粋
科学の
研究を続けることが難しいと、この
指摘はもっともだというふうに思いますが、これは私は
国立大学が
基礎研究ができて私立
大学が
基礎研究ができないと、こういうわけではないと思います。
例えば、慶応
大学医学部ではきちっと
基礎研究をやっております。これは組織の問題ではなくて、先ほど
有馬先生もおっしゃいましたけれども、対GDP比〇・四三%しか
高等教育にお金を充てていないということの問題でありまして、
東京大学が仮に
基礎研究に強いといたしますと、これは
国立なのだから強いのではなくて、国費が十分に投じられているから強いんだというふうに思います。それから、私立である慶応
大学がそれなりに
基礎研究に打ち込めているのも同じ
理由だと思います。
東大は年間に一千三百七十億ぐらいの国費が投じられています。
京都大学は七百七十億ぐらいの国費が投じられています。東工大は二百六十五億、そして慶応は二百億なんですね。そして、早稲田が百億で、一橋が八十三億。地方
大学は慶応とか早稲田以下といったらあれですけれども、のところはある。これは、私が申し上げたいのは、別に組織の問題ではなくて、正に国費、いわゆる
基礎研究というか、経済的見返りを期待しないけれどもその
研究に充ててくださいという国費をどれだけ国がつぎ込むかという議論であって、
国立、私立の議論ではないと、こういう話であります。
アメリカなどもこの点は、私立
大学優勢ではありますけれども、先ほども
有馬先生の御議論の中で御紹介がありました対GDP一・〇七%の国費を
アメリカも投じています。ですから、ハーバード
大学でもMITでもスタンフォードでもきちっとした
基礎研究ができておりますし、それから、私は
基礎研究の充実のためには
国立の
研究所というのを充実させるべきだと思います。
アメリカでもJPL、ジェット推進
研究所というのがありまして、これはNASAの
基礎的な
研究を支えている
機関でありますが、ジェット推進
研究所をカルテック、カリフォルニア工科
大学に業務移管をしているわけですね。これによって非常に
国立研究所とそうした
大学とのいい意味でのコラボレーションというのができているということでありますから、そうした意味で、形式論にとらわれない、是非、
基礎研究あるいは
基礎学力あるいは純粋
科学をこの国にどう育てていくのかという議論をしていただきたいというふうに思います。
もう
一つ、私が
法人格の区別をなくすべきではないかという
理由が全然別の
観点からございます。それは何かといいますと、これは
国立大学法人化をしますと、いろいろ言われておりますけれども、地方の
国立大学が相当大変になるだろうという議論があります。それはそうなんだろうというふうに思いますが、そうなったときに地方公共団体の、当該所属地の地方公共団体のその地方の
法人化後の
国立大学に対する支援、これは地域
社会と一体となった
大学づくりという
観点で望ましいとは思いますけれども、しかし一方、最近は地方公共団体は自前で県立
大学をつくっております。
となりますと、さらに私立
大学の方も実は全体で見ますと経営大変でございまして、二〇〇〇年度で三割が定員割れであります。十八歳人口は九一年二百四万人をピークに二〇〇四年から急激に減少をしておりまして、二〇一〇年には百二十一万人。ですから、半減しているわけですね、ピーク時からしますと。でありますから、結果三割の定員割れと、こういうことになっているわけであります。
この事態を救うためにはどうしたらいいかというと、まずは各
大学が、私立であれ、地方の
国立であれ、あるいは地方の公立であれ、
特色化、
個性化、アイデンティティー、だから入試と学部設定が大事だということを申し上げているわけでありますけれども、そこを相当特徴的な、
特色的なことをやって、まずは特徴を出していく。そして、
社会人とかあるいは
外国人とか、今なかなか
高等教育を受けたいと思っても受けられない、そうした
学生の方々に入っていただくというところも
一つの方策だというふうに思います。
しかし、それをやってもなお相当抜本的な連携とか、要するに教員の交換とか単位の互換とか、更に言うと、もうちょっと言うと統廃合ということが必要になってきます。特に地方ベースにおきますと、独法化後の地方
国立大学と、そして地方の県立
大学と、そして経営の苦しくなった私立
大学というものが厳然として存在するわけでありまして、この組織間の有機的な連携を図るためには、恐らく
法人格が違うということが
一つの障害になると。しかも、それが二、三年のうちにこの問題が顕在化してしまうかもしれないということを私は
日本の
大学改革を
考える上で
検討していかなければならないのではないかという
観点で今の御議論もさせていただいているということを申し上げます。
そして、最後でございますので、あといろいろお願いを申し上げたかったことは、〇・四三%、対GDP比率、これをとにかく何とかしていただきたいということであります。
それから、本当に
学生は大変でございます。これは先国会でも文部
大臣にお話を申し上げまして、大変に御
努力をいただきました。そのことは改めて感謝申し上げますが、奨学金の問題、引き続き御尽力をいただきますように。それから、先ほど申し上げましたように、
社会人と
外国人に対する奨学金問題についても是非、先ほどの
大学活性化のためには不可欠でございますので、御尽力をいただきたいと。
いろんなお願いを申し上げまして、時間となりましたので、私の
質問とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。