○中村敦夫君 先週の静岡県の漁港の視察、大変参考になることが多かったので、いろいろ勉強させていただきました。焼津港、由比港、
小川港ですか、この三つの場所を訪れたわけですが、特にサクラエビで有名な由比港の自主的
資源管理とか共同
漁業のシステム、これは持続可能な
地域産業をやっていく上で非常に参考になるいいサンプルだと思います。しかし、全体的に日本の
漁業区域を見ると、むしろこういうふうにうまくいっているのは少ないんであって、たくさん、多くの場所で本当に存亡の危機を迎えているような、そういう
状況があるんではないかと思うんですね。
今日は、その
一つとして、富山県、富山湾に流れる黒部川の問題についてお聞きしようと思っているんです。
黒部川というのは、御存じのとおり、日本有数の急流河川でございまして、土砂崩壊
地域が七千か所もあるというようなことなんですね。年間百四十万立方メートルの土砂が下流へ流れていくということが起こっております。
ところが、ここに、一九八五年に関西電力による出し平ダムというのができました。また、二〇〇一年には国土交通省による宇奈月ダムというのができました。ダムができると底に砂がたまると。ただ砂がたまるだけじゃなくて、それはヘドロ化するわけですね。これでもってこの二つのダムには排砂ゲートという装置を付けたわけなんですね。
出し平ダムというのは一九九一年に排砂を開始しました。そうしますと、もう最初の排砂は河口沿岸で多大な
漁業被害が出たわけなんですね。そこで、国や県による排砂方法の検討
委員会というのが
設置されました。ところが、最終的な判断としては、排砂方法の
改善により環境に影響は見られないという報告が出たわけです。それ以後十回排砂が続行しました。昨年などは、出し平ダム、宇奈月ダムが連携して排砂をやったということなんですね。
結局、この結果、黒部川と河口沿岸にはヘドロ化した土砂が堆積するようになって、周辺海域では魚や海藻が育たない
状況ができてしまったということなんですね。これは、配付資料の写真見ていただければ分かると思います。こういうヘドロがたまってしまったということなんですね。結局、沿岸
漁業には壊滅的な
被害が生じました。
去年の六月、漁民とワカメ栽培者が、排砂の差止めと
漁業補償を求めて富山県公害審査会へ調停を申請したということがあります。富山湾といいますれば、キトキトと呼ばれる新鮮でおいしい
魚介類の産地で、沿岸
漁業が非常に活発なところなんですけれ
ども、代表的な魚はヒラメということですね。黒部川河口部というのはヒラメの好漁場として有名なわけですけれ
ども、出し平ダムの排砂以降、ヒラメの
漁獲量がもう半分以下になってしまったという事実があります。
配付資料の見開きをちょっと見ていただければ分かるんですけれ
ども、排砂による激減する
漁獲量というグラフがございますね。これを見て明らかなんです。一九九一年に排砂したら
漁獲量が
減少したんです。九二年、九四年と九五年に掛けては排砂をしなかったらやっぱり
増加傾向が見られたわけです。ところが、九五年にまたどさっと排砂をすると、以降はもう
漁獲量が激減しているんですよ。
事業者や御用学者みたいな
人たちが環境に影響は見られないという公式発表をしたとしても、
漁獲量が激減して地元の漁民が困窮しているという事実は厳然として存在しているわけですね。私たちはこうした、農水省にしても農水
委員会にしても、事実というものをやっぱり直視しないといけないと思うんですね。そして、漁民の苦しみというものを見て見ぬふりするわけにはいかないと思います。
そこで、関連した
質問をしたいと思いますが、
水産庁長官にお尋ねします。
事業者である国土交通省や関西電力が影響調査を行っているということは分かっているんですが、漁民の利益を守るべき立場にある
水産庁がこの件について何をしているのかがちょっと分からないんですね。
水産庁は、黒部川河口部沿岸の
漁業被害についてどのぐらいのことを把握しているのか、実際に
水産庁は調査をしているのかということについてお答えいただきたいんです。