○田嶋陽子君 では次に、
資格取得後の欠格
状況について伺います。
これは朝日新聞「ひと」欄に、先ほど紹介しましたキャロリン・スターンさんの、聴覚
障害者のお
医者さんの患者の三割程度が同じく聴覚
障害者だとありました。すなわち、同じ
障害を持つ人がお
医者さんとして病院にいるということは、患者にとって安心材料の
一つになると思うんですね。
二〇〇〇年十月五日付の朝日新聞では、「耳の不自由な人は病状を訴えるのも
説明を受けるのも難しい。気後れして受診をためらい、手遅れになりがちだ。」と書かれています。つまり、今は聴覚
障害者の
医者を選ぶという選択肢が余りにもないために、お
医者さんに行くことを我慢している人もいるということです。
例えば、
自分、私
自身が聴覚
障害者だとして、例えば手話が得意なのに筆記で
自分の症状を訴えなきゃいけない患者の場合、やっぱり
自分と同じ
障害を持っている先生の方が共感できるというふうに思うのは当然のことだと思うんですね。ですから、聴覚
障害者でない
医者と、手話でコミュニケーションが取れる
医者と、どちらかを選べと言われたら、やっぱり聴覚
障害者の
医者を選んでしまうと思うんです。ですから、そういう
意味でも、私は
障害を持ったお
医者さん
たちは大変必要な
人たちだと思います。
障害当事者
たちのグループである欠格条項をなくす会が作成した「欠格条項にレッドカードを!」というものによれば、既に中途失聴者の
精神科医は一九九三年から聴覚
障害者外来を始めているんだそうです。このように、耳が聞こえなくなったとしても、その耳が聞こえないというほかの
医者にはない持ち味を生かした
仕事も現実にできるということですね。
でも、昨年の
医師法などの
法律改正前は、この
取得後欠格、つまり国家
資格を得て
仕事に就いていても、欠格条項に該当する状態になったら主務
大臣が
免許を取り消したり開業停止にすることがあると聞いています。そのため、大っぴらに
自分は聴覚
障害のある
医者だとは言えない
状況にあったと聞いております。
この
資格後欠格は、
改正後も、これはちょっと大変なんですけれ
ども、適正に行うことができない者として厚生労働
省令で定めるものとか、麻薬、大麻又はあへんの中毒患者だとか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者と、そういうことになっているわけですが、その厚生労働
省令にどのように書いてあるかというと、「視覚、聴覚、音声
機能若しくは言語
機能」云々、「
精神の
機能の
障害により
医師の
業務を適正に行うに当たつて必要な認知、
判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。」とあります。すなわち、
資格取得後にこうなった場合、
厚生労働大臣が
免許を取り消したり、期間を定めて医業停止を命じることができるということですね。
なぜこれを問題にするかというと、
一つは、
障害者になったからといって、これまで
資格を持ちながら働いてきた人がその
仕事から追い出されてしまうおそれを感じてしまうからですね。それともう
一つは、
障害者になっても働き続けることができるというモデルを
社会に見せていくことが必要だと思うんですが、この
法律だと隠してしまうことになります。
そこで、絶対的欠格から相対的欠格になったので、問答無用で視聴覚や音声
機能障害者などの中途
障害者になったからといって
資格を剥奪することはないと思いますが、その中途
障害者になった
医者が
仕事を継続する意思がある場合、しかも周囲もそれをサポートする用意がある場合、もしかしたらサポートする用意があるなしにかかわらずに、この中途
障害者になった
医者の場合は一体どうなるんですか。