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参考人(
田中章史君)
日本自治体労働組合総連合、略称自治労連の
田中と申します。
本日は、
総務委員会に
参考人としてこのような
機会を設けていただきまして、感謝申し上げます。
初めに、レジュメなども用意してございますのでそれを見ていただけたらと思いますが、自治労連について一言紹介をさせていただきます。
私ども自治労連は、全国の
地方自治体とその関連職場で働く約二十四万人で
組織する労働
組合です。私たちは、資本から独立すること、政党から独立をすること、一致する要求で行動を統一していこうということ、こうした労働
組合の三原則に基づいて、自治体労働者の生活と
権利を守ることと、地域
住民の生活と
権利を守り、
地方自治を守り発展させることを統一して運動
理念として運動を進めています。約六百の加盟
組合がありまして、全国で運動を進めています。
昨年来、脱税の問題ですとか裏金問題を起こした自治労という
組織とよく間違えられまして、誤解もされております。自治労とは全く別の
組織、労働
組合でございます。十二年前に自治労指導部が進めた特定の政党支持とか特定の運動
理念の押し付けに対して、労働
組合の原則に照らして容認できないとして、全国の自治体労働
組合によって新たに結成した
組織です。
私は、
地方自治法等の一部を
改正する
法律案の合併協
議会の設置に係る
住民投票
制度について、反対の
立場から
意見を陳述させていただきます。
レジュメの2にも触れてありますが、私は、合併協
議会の設置に係る
住民投票
制度については、政府の市町村合併を強要する手段の法定化だというふうに思っています。いただいておりました
資料の二百九十一ページにも全国町村議長会の昨年二月七日の決議が掲載されておりますが、ここでも「合併促進のため
住民投票
制度を導入する」という記述がございまして、私もそのように思っています。地方分権の
理念や
住民自治、民主主義とは相入れない問題であり、反対です。
その理由を幾つか述べます。
第一に、
議会が合併協
議会の設置を求める議案を否決した場合についてのみ
住民投票を認めるという
法案になっています。
議会制民主主義にも反しておりますし、
住民投票
制度の精神もゆがめるものです。大変自己矛盾を起こしている
法案ではないかと思います。
第二に、この
資料もいただきましたが、第二十六次地方
制度調査会の答申、これが
法案提出の根拠になっておりますが、この答申にも反しています。この答申では、この地域に住む
住民自身の意思を問う
住民投票
制度の導入を図ることが適当である、円滑な運用が図られるものとすることが適当であるとの答申でございまして、この
法案がなぜこういう
法案になったのかということでの信義を疑います。
第三に、地方分権改革の
理念から見て重大な
問題点があるとも
指摘をせざるを得ません。地方分権を推進する
立場から
改正をされました
改正地方自治法では国の配慮義務を明記をしています。そこに
資料、法文も失礼ながら掲載をさせていただきましたが、国が
地方公共団体に関する法令を制定したり、解釈、運用する場合には、
地方自治の
本旨に基づいて、かつ国と
地方公共団体の適切な役割を踏まえて行うことを
地方自治法二条十一項及び十二項で規定をしています。総務省や国は、
地方自治法に反する
法律改正案を提案しているのではないかというふうに思います。
したがって、
地方自治の
本旨や、第二十六次地方
制度調査会の答申を踏まえますと、
住民に十分な
情報を提供した上で合併そのものの
是非を問う
住民投票
制度とすべきではないでしょうか。私は、合併の
是非を
住民に問う
住民投票
制度に修正すべきであると考えます。
資料として、レジュメの後ろの方に全国で進められております合併の
是非を問う
住民投票条例の制定
状況を添付をさせていただきました。今後更にこうした動きは進むだろうと感じています。町の将来はその町の主権者である
住民が自らの意思で
決定をする、これは
地方自治と
住民自治を考える際の基本中の基本です。
住民の自己
決定権として保障すべきではないでしょうか。
皆さんも御
承知のように、昨年、埼玉県上尾市では、合併推進の人たちの直接
請求によってさいたま市との合併の
是非を問う
住民投票条例が成立し、二〇〇一年七月二十六日投票で投票が行われています。私どもに参加をします自治労連上尾市
職員労働
組合の
委員長が、私たちの季刊「自治労連」、
資料にお渡ししてありますが、この
住民投票について投稿しております。お手元の
資料の三十九ページをごらんいただけたら幸いでございます。
投票率が六四・四八%、合併
賛成四一・七%、合併反対五八・三%という結果でした。
市長選挙の投票率が四〇%台、衆参同時選挙で五三%、同時に行われました参議院選挙の県内平均投票率が五二%で、どの投票率を比較しましても
住民投票の投票率が非常に高くなっていることに注目をしてほしいと思います。自らの町の将来に直接かかわることで
市民が変わった、
住民投票で豊かな議論ができたなど、
住民主権を豊かに発展させていることが紹介をされています。上尾では、条例が制定されてから
市民の中で大きな変化が起きたと言われています。条例制定前はなかなかチラシの受取も弱かったようですが、条例が制定されて以降、町の将来を
市民が変わる、変えるんだという、決めるんだということで様々な媒体を通じての
市民的な討論が巻き起こって、この高い投票率になったのではないかと思います。
政府は、自主的というまくら言葉を付けながら強制的な合併推進を進めています。この
法改正も合併推進の手段です。
国民、
住民を信頼していないのではないか。この労働
組合でも、議論をしながら最終的にこの町の将来を決めるのは
住民だという当たり前の原則に気が付きました。
法案を修正をし、合併の
是非を問う
住民投票
制度にしてほしいと思います。
また、
改正案のように、合併協
議会の設置段階で
住民投票を実施すべきではありません。全国各地で、合併そのものの
是非を論じるのだからと署名を集めて、これが成立するとあたかも
住民が合併そのものに
賛成しているかのように扱われて、合併協
議会が設置をされた後は
情報が
住民に公開されないという問題が起こっています。入口での投票は合併促進をねらったものになる危険性を持っています。
静岡市では
住民投票条例の直接
請求は退けられましたが、ここでは合併協
議会の
在り方が問われました。合併協
議会の設置を求める
住民発議を積極的に進められた
市民の中でも、法定協
議会が合併の
是非を議論すると説明をされていた、しかし法定協
議会が設置された後には合併の
情報は
市民に見えなくなった、こういう議論があります。こうした人々の中からも、合併の
是非を問う
住民投票を行うべきだとの署名運動が始まったと言われています。
資料に、朝日新聞の静岡・清水合併の世論調査の結果を
資料として添付をしておりますので、ごらんいただきたいと思います。合併協
議会や
行政は十分に
情報を、
住民に
情報を十分説明をしたのかという問いに、八九%が十分でないと答えています。こうした点も見直すべきですが、昨年、総務省が配付をしました合併マニュアルでは、合併を自由に議論できる法定協
議会を設置していただきたくと、法定協さえ設置すれば万事うまくいくという
立場が露骨に出されているのではないかというふうに読ませていただきました。
レジュメの3です。市町村合併問題に対する私たちの
立場と各市の
状況について書いてあります。私たち自治体に働く
職員で構成する自治体労働
組合は、
住民の暮らしの向上と
地方自治の発展を自らの賃金や労働条件の
改善の取組と同じように、場合によってはそれ以上に重視をしています。合併問題につきましても、
地方自治が発展するのかどうか、「
地方公共団体は、
住民の福祉の増進を図ることを基本と」するという
地方自治法第一条二項に定めてありますが、この
理念が豊かに発展するのかどうかを試金石にしています。
私たちは、
資料にも入れさせていただきましたが、一九九七年三月に
地方自治憲章案を発表しました。この憲章案では、人が生まれ育って住み、営んでいるこの地域でこそ、基本的人権が保障されなければならない、これが憲法の
国民主権と
地方自治の原則的
関係であって、自治体の役割は、すべての
住民が生涯住み続けることができる場と条件を確保することだというふうにしています。
私たちは、こうした
立場で全国各地で
首長アンケート、自治体キャラバンによる
首長さんたちとの懇談、
実態調査、各種シンポジウムなどを精力的に今行っています。この中から聞こえてくる自治体
関係者の声は悲鳴に近いものがあります。財政的な締め付けと合併の上からの押し付けの中で、地域や自治体が破壊されます。一方で、小規模自治体の中から豊かな実践が進められていることも分かりました。農林漁業地域を豊かに発展させることなくして日本の将来はない、そうした声も広がってきています。
今、地域で起きていることの事態は、市町村合併の強要では地域や自治、国土を破壊することになるんではないかということです。
首長さんたちに会うと、本音としてはできることなら合併はしたくない、するも地獄だ、しなくても地獄だ、そういう声も聞かれます。
また、地方交付税の削減と合併特例債というあめとむちによって財政問題のモラルハザードも起きています。小規模自治体があるのは当然と考える視点がないことで、広大な面積を要する農林漁業地域を軽視する国の
政策になっているのではないか、これでいいのかという声が広がっています。財政力は人口が少ないことが直接的な
原因ではありません。産業
政策の問題が
指摘もされています。
また、
現実の
政策力量を見ますと、小規模自治体が大変豊かな実践を進めています。私たちも現地調査などを行いながら
資料として出させていただきましたが、小さくとも元気な自治体づくりの提言素案を今作成し、全国の皆さんへの討論を呼び掛けています。
国土の保全、農林漁業の振興、財政危機の打開は
地方自治の拡充と発展に負うところが大きいと思います。町村会が昨年七月に発表しました「二十一世紀の日本にとって、農山村が、なぜ大切なのか」は、全国の町村長さんの率直な思いではないでしょうか。小規模自治体や農林漁業地域の声をもっと酌み取った
政策が求められるのではないかと思います。
レジュメ4には要望を書きました。
住民投票
制度や地方交付税
制度をゆがめ、
地方自治の否定につながる強制的な合併に歯止めを掛けてほしいということでございます。最初に触れましたように、この
法律案では
住民投票
制度の
理念や
議会制民主主義をもゆがめています。また、合併特例債など合併特例法が定めている優遇策は、この間様々なところで問題になっています地方交付税
制度のゆがみを更に拡大するものとなっています。
地方自治法は、合併だけでなく廃置分合を定めています。合併だけを選択肢とする合併特例法そのものが問題ではないでしょうか。国会の
立場で合併の強要をやめ、地方分権にふさわしく税財源の移譲と地方交付税
制度の
改善充実を
是非進めていただきたいと思います。
最後になりますが、
住民訴訟制度について触れさせていただきます。
結論的には、様々な
意見を更に聞く場を作るなど
審議を尽くしてほしいということでございます。
国民の
参政権を保障するというのが
現行制度の精神だと受け止めています。これに水を差す改定ではないかと考えます。
職員の
立場からは、業務命令によって行った仕事が
訴訟の対象になることなど複雑な問題がありまして、現場では大変議論が伯仲をしています。したがって、国家賠償法の規定などを参考にした重過失の場合のみに限定するなど
現行法の枠の中での
改正にとどめることを求めたいと思います。
私たち地方公務員は、憲法と地方公務員法に基づいて、
職務の宣誓に関する条例によって、憲法擁護、尊重義務と、公務を民主的にかつ能率的に
運営することを宣誓をしています。宣誓に見られますように、公務員の
職務は主権者である
国民との
関係で民主的で効率的でなければなりません。しかし、今リストラの強要などの中で、医療過誤などに見られますようなサービス低下も起こってきています。
現在、公務員
制度改革大綱が閣議
決定をされ、
制度改革の議論が進められておりますが、公務員が
意見を表明する
権利や、瑕疵ある命令に対する拒否する
権利、参加権を明文化すべきであると考えます。
以上で私の陳述を終わります。御清聴どうもありがとうございました。