○
浅尾慶一郎君
総務委員会沖縄県
委員派遣
報告。
当
委員会が行いました
委員派遣につきまして、その
概要を御
報告申し上げます。
派遣委員は、
田村公平委員長、
景山俊太郎理事、
世耕弘成理事、
谷川秀善理事、
魚住裕一郎委員、
八田ひろ子委員、
渡辺秀央委員及び私、
浅尾慶一郎の八名で、去る一月十六日、十七日の両日、沖縄県を訪問し、同県における
地域振興、
情報通信等に関する実情を
調査してまいりました。
まず、本
委員会派遣を沖縄において
実施することといたしましたのは、国内経済の低迷による沖縄県への影響、全国に比して高い失業率、さらに昨年九月に米国において発生いたしました同時多発テロ事件の影響による修学旅行の取りやめ等、入域観光客の減少による観光産業への深刻な影響を憂慮いたしまして、同県における実情を把握し、国政の場における
審議に反映させようとした次第でございます。
以下、
調査の
概要について申し上げます。
まず、沖縄県の財政状況ですが、
平成十二年度の決算では、
歳入総額は六千六百八十八億円で前年度に比べ二百九十一億円の減となっており、このうち県税収入は九百五十七億円でその割合は一四・三%であり、これを含んだ
自主財源比率は二四・〇%であります。一方、
地方交付税は二千三百三十億円で三四・八%の割合を占めており、全国平均の二一・七%に比べ、高い水準にあります。
歳出総額は六千六百二十一億円で、このうち公債費と投資的
経費の補助
事業の伸びが大きく、その要因は数次にわたる景気対策等によるもので、その増加には
地方交付税の伸びや国庫支出金の増額で対応するとともに、県債の増発や基金の取崩しで対応してきております。
同県の産業構造の特徴は、観光業など第三次産業の発展によって経済
規模が拡大したものの、自立経済として不可欠であり、雇用や技術革新をもたらす重要な要素である第二次産業では、
経営基盤の脆弱な中小企業が多く、下請といったすそ野が広がる構造にはなっておらず、民間資本、生産力等が脆弱であります。
また、雇用
情勢は、完全失業率の悪化は昨年十月の九・三%に端的に示されているとおり、極めて厳しい状況にあります。高失業率の背景としては、若年層を中心に県内就職傾向が強いこと、さらに、県内の新規求人数が増えても、求職者との希望が合わない雇用のミスマッチもあり、労働供給力は高まっているにもかかわらず、県内産業の雇用吸収力では労働力人口の増加を十分吸収できていないことなどが考えられます。
次に、観光産業は、本土経済の低迷、米国同時多発テロ事件の影響により、修学旅行を中心にキャンセルが続くなど観光客が大幅に減少し、大きな打撃を受けております。特に
平成十三年の入域観光客数を四百四十一万人と予測しており、当初の
目標値である四百六十六万人に比べ、二十五万人の減少、二百二十九億四千万円の観光収入の減が見込まれ、国、沖縄県、旅行会社、交通
事業者及び観光
関係団体において種々の
取組がなされているところであります。
一方、沖縄県では、
平成十年十月、
情報通信産業を二十一世紀に向けた中核産業と位置付け、集積・振興を図るため沖縄県マルチメディアアイランド構想を策定し、産業の集積、
人材育成・
研究開発の
促進、先進的なアプリケーションの
構築、
情報通信基盤の
整備を図ることとしております。
また、
総務省では、沖縄をアジア太平洋
地域における
情報通信ハブとして
形成するため、沖縄マルチメディア特区構想を提唱し、
情報通信分野における基盤の
整備、
人材育成・
研究開発の
推進、先進的なアプリケーションの展開、
情報通信産業の集積、情報発信
機能の
強化のための
施策を
実施し、さらに、沖縄国際情報特区構想として発展させ、沖縄経済の
活性化のための環境づくりを
推進しております。
同県では、
情報通信関連企業、研究機関等を誘致した結果、NTT一〇四番号案内センターを始めとして、
平成十三年十一月現在三十七社に上り、約三千八百八十一名の雇用が創出されており、現在では、構想の第二段階である
コンテンツ制作部門の集積・誘致に重点が移りつつあります。しかしながら、県内では
コンテンツ制作等高度IT技術者の層が薄く、労働力の需給
関係がアンバランスになっており、こうした
人材の
育成が急務となっています。
また、沖縄国際情報特区構想の
実現性については、沖縄県は、総じて、企業集積は進んでおり、
米軍基地もあることから英語アレルギーもなく、戦前の移民の伝統もあり、Uターン組もあるので、国際的なノウハウの蓄積もあり、大学院大学設置構想、外務省のJICA研修センター等、国際的に開かれた条件は備わっているとの話でありました。
今回、特に企業誘致の代表的な例としてNTT一〇四番号案内センターを視察いたしました。このセンターは、NTTが、
政府の沖縄振興策を受けて、雇用創出による
地域経済への
支援を図るため、距離に影響されない通信
事業の特性を生かした
事業として
平成九年十月に開設したものであります。東京発の番号案内分散による雇用の創出とともに、他企業に先立って進出するといった牽引的な役割を担っており、その後、コールセンターの進出が相次いでおり、昨年九月末時点で十六社がコールセンターを開設しており、将来は約四千人の雇用創出が見込まれる産業
規模にまで成長しております。
政府として、沖縄県北部
地域の振興に関する方針等に基づき、北部
地域の振興策に積極的に取り組む方針を決定しておりますが、今回、特にその中心的な役割を担う名護市における名護市マルチメディア館を訪問いたしました。ここでは、NTT一〇四番号案内センターを始めとして、
研究開発施設、
人材育成施設のほか、マルチメディア企業
育成を目的としたインキュベート施設があります。その中には、年二回の東京における企業誘致
説明会の結果入居した県外企業が約半数含まれておりますが、今後の問題としては、特に高度IT技術者等の
人材が不足しており、
人材確保策として、研修を行い、地元技術者を育てるとともに、県外から技術者を招聘することも検討中とのことでありました。
一方、沖縄県において、
地域振興のために、
地域情報化通信
ネットワークの
高度化を図ることを目的に、県内五十三
市町村中四十四
市町村において
地域インターネット施設又は
地域イントラネット施設が
整備されております。
名護市におきましても、
地域イントラネット基盤施設
整備事業により、
インターネット技術の活用による教育、
行政、医療、防災等
地域住民への公共
分野の情報
サービスの
提供を行う施設
整備を行っております。マルチメディア館を北部
地域の情報の中心として、昨年二月、
地域イントラを完成し、役所、公民館、図書館、観光施設、大学等が
インターネットでつながり、
利用の便に供されております。今後は、名護市における
地域情報
提供だけではなく、農産物へのIT管理を
導入するなど北部
地域東側における農業の
活性化など既存産業の情報化を進め、北部
地域の
IT化等
地域振興を含めた
情報通信網の有用な
施策の研究を
促進することとしております。
稲嶺沖縄県知事からは、県としても
情報通信基盤整備を進め、コールセンターを始めとした企業誘致に積極的に取り組み、またe―island宣言を行い、
情報通信関連への
人材育成を強力に推し進めるとともに、IT等の研究施設としての大学院大学構想に関しての言及がありました。これに対して派遣団からは、大学院大学構想への期待、アジアに開かれた
人材育成、産業振興と環境
保護、観光リゾート産業振興への方策などの意見が述べられました。
最後に、沖縄県は、地理的優位性、
情報通信インフラ
整備計画等から見て、世界の
情報通信ハブとして発展する可能性を有しており、今後、マルチメディアの島、IT特区になれるかどうかは、施設
整備等環境整備とともに高度IT技術者等の
育成に掛かっていると思われます。
以上で沖縄県における
調査の
報告を終わりますが、今回の
調査に関し、沖縄県を始めとして
総務省及び
関係自治体等から終始御
協力いただきましたことに対し、深く感謝を申し上げます。
以上です。