運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2002-04-04 第154回国会 参議院 財政金融委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年四月四日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      有村 治子君     坂野 重信君      西銘順志郎君     清水 達雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下洲夫君     理 事                 入澤  肇君                 林  芳正君                 若林 正俊君                 円 より子君                 山本  保君     委 員                 上杉 光弘君                 尾辻 秀久君                 金田 勝年君                 中島 啓雄君                 溝手 顕正君                 山下 英利君                 大塚 耕平君                 勝木 健司君                 櫻井  充君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 平野 達男君                 大渕 絹子君                 椎名 素夫君    国務大臣        財務大臣     塩川正十郎君        国務大臣        (金融担当大臣) 柳澤 伯夫君        国務大臣        (経済財政政策        担当大臣)    竹中 平蔵君    副大臣        内閣府副大臣   村田 吉隆君        財務大臣    尾辻 秀久君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    政府参考人        金融庁監督局長  高木 祥吉君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        日本銀行総裁  藤原 作彌君        日本銀行理事   増渕  稔君        日本銀行理事   小池 光一君        日本銀行理事   三谷 隆博君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月二十九日、有村治子さん及び西銘順志郎君が委員を辞任され、その補欠として坂野重信君及び清水達雄君が選任されました。     ─────────────
  3. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会金融庁監督局長高木祥吉君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君、同副総裁藤原作彌君、同理事増渕稔君、同理事小池光一君及び同理事三谷隆博君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 山下英利

    山下英利君 自由民主党の山下でございます。  通貨及び金融等に関する日本銀行からいただいた御報告に関連いたしまして質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  今、正にデフレ経済の中で経済が大変低迷している、これを一刻も早く立ち上げなければいけないという大変な至上命題の中で努力をしているわけでございますけれども日本銀行から都度御報告をいただいております報告書を拝見しておりますと、非常に環境は厳しいというトーンは十分うかがわれるのでございます。しかしながら、この三月、一昨日ですか、発表されました短観を見ますと、報道等によりますと、大分底値感といいますか、落ち着きが見られるようになってきたという種々の計数も発表されているようであります。  しかしながら、今このデフレ環境の中では、一朝一夕に上向いてくると言えるような環境ではないと私は思っておる次第であります。確かに、空売りの規制とか、それから米国経済底値を脱して回復基調に上がったというふうな発表を受けて、株価期待感を持って落ち着きを若干取り戻しているというふうなことが目にされるわけですけれども日本銀行当局としては、この三月の短観状況、これが十二月の時点とフラットであったと。市場はもう少し出目が出るのではないかなと予測していた部分もありますけれども、少なくとも十二月よりは悪化は止まったというところを踏まえまして、今の日本景気のこれからの先行きをどう見ていらっしゃるか、そしてこの米国景気回復が実際日本景気に及ぼす影響、これを教えていただきたいと思います。  確かに、在庫調整が大分進んで、これからそれが設備投資に本当に向いていくのか、そのためには何が必要なのか。そしてこの下げ止まり感が確かに大企業ではその傾向は出てきたという中で、やはりまだ中小企業段階においては非常に景気低迷感景気の悪さ、これの印象は顕著であります。そのところを踏まえまして、日銀当局から御答弁をいただきたいと思います。
  9. 速水優

    参考人速水優君) お答えする前に、皆様、御多忙の中をこの日銀半期報のためにこういう場所を、討議の席を設けてくだすったことを厚く御礼申し上げます。  御質問の四月一日に発表いたしました短観でございますが、私ども大体予想していたような線、数字が出てきたんですが、景気現状につきましては、設備投資を始めとする国内最終需要が弱めの動きを続けております。家計の雇用・所得環境も厳しさを増している。一方で、米国や東アジアなどの海外経済回復に向けた動きについては一段とはっきりしてきておりまして、このような海外経済動向に加えて、為替円安影響もあって我が国の輸出は下げ止まりつつあると思います。在庫調整の方も一段と進んできておりますし、生産減少テンポもかなり緩やかになってきていると思います。今週初めに公表した短観でも、こうした経済現状を示すものであったと思います。  当面、前回と大企業製造業者見通しなどは横ばいでございましたけれども、これから先についてはかなり良くなった数値が出ておりましたし、その辺のところは私ども感じと大体似ているなというふうに思いました。
  10. 山下英利

    山下英利君 これからの先行きはどのように御覧になっていらっしゃいますか。
  11. 速水優

    参考人速水優君) 景気先行きにつきましては、まだはっきり申せませんけれどもアメリカの方もどれぐらいのスピードで良くなっていくかによりますし、国内の方でも今いろいろ手を打たれ、構造改革がどれぐらいのスピードで進んでいくかということも分かりませんので、余りはっきりした見通しを持っているわけではありませんけれども製造業の方については大体底を打って、設備投資の方も増えていくんじゃないかというふうに思っております。生産の方は少しずつ伸びていくように思いますし、ただ、これから新しく日本が、地方を含めてかなり空洞化が行われておりますが、そういうところへ新しい産業が興っていくか、特に非製造業サービス産業などで新しいものがどんどんできていって、製造業においても付加価値の高いものがこの機会に作られていって、そういうものがこの経済成長を支えていくと。  いずれにしましても、民間の需要が、企業及び家計需要が出てこない限り経済は伸びていきませんし、それがないとデフレ克服ができませんし、経済が正常化していくのはそういった過程を通っていく必要があるというふうに思います。その辺のタイミング、外需の方は外のこともありますからはっきり言えませんけれども、そういうことをすべて含めて考えてみましても、この辺で底を打って年の後半から少し上がっていけばいいなという感じがいたしております。
  12. 山下英利

    山下英利君 どうもありがとうございます。  今のこのデフレを阻止するということがもう終始一致した目標なのでありますけれども、ただ単に金融政策だけではなくて、要するに総合的なデフレ対策、これを同時並行的に打っていかなければいけない、正にその中で金融政策というのが大変重要な位置を占めていると、私はそのように理解をしている次第なのでありますが、この景気回復というのはすなわち、産業構造調整とそれからフローデフレを止めるということ、これが同時に進んでいかなければいけない、しかし一方で、そのフローデフレを止めるということは景気も刺激していかなければいけないと。正にいろんな意味での言ってみれば二律背反するようなことを進めていかなきゃいけない局面もあろうかと、私はそのように思っています。  そして、このフローデフレが止まらなければ、ストックのデフレを止めるには至らないと。まず、フローの方を何とかしなけりゃいかぬと、そのように思います。そして、それは今盛んに言われている金融機関のいわゆる金融仲介機能が低下している、不良債権の処理の問題においても。すなわち、フローデフレが止まらないからますます金融信用が収縮している、その悪循環の中に入っていると、そういうふうに私は思っているわけであります。  その総合的なデフレ対策の中で、日銀金融政策として今盛んに言われているインフレターゲティングについて御質問をさせていただきたいと、そのように思っております。  物価水準目標設定をして、今緩和政策を取っていただいている。言ってみれば、市中はじゃぶじゃぶの状態になっているというわけです。昔であれば、もうこれだけじゃぶじゃぶの状態にすればインフレ懸念が出てきて金利が上がってくる、物価も上がってくるというふうに言われたわけですけれども、全くそれが起きない。なぜ起きないかというと、やはり設備投資需要がない、資金需要がないから実際にじゃぶじゃぶになったお金が市中、いわゆる中小企業に回らない、実際の実需に基づいた資金の貸出しにつながらないというふうなところがあろうかと思っています。  しかしながら、その日銀緩和政策によって息をつないでいるという部分も私はあると思っております。そして、このインフレに対して、今まで私たちが全く経験したことのない、今度はデフレ状況からインフレ状況へ持っていこうという流れが、このインフレターゲティング一つの趣旨であろうと思っています。  物価水準をまず目標にして日銀資金緩和政策を取る中で、インフレ率といった数値目標設定によるインフレターゲティングについて、日銀の御当局はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。  ちなみに、諸外国の中央銀行は、インフレターゲット政策を採用しているところもございます。そんな中で、日本銀行としてこの政策についてのお考えをお聞かせください。
  13. 速水優

    参考人速水優君) インフレターゲティングという言葉は、昨年来かなり広く使われてきておるわけでございまして、私どももこの問題は十分頭の中に入れて考えてきたつもりでございます。海外でもございますけれども、やっぱりこれはインフレを抑えるためにインフレターゲットを作るところが大部分であって、デフレ状態の中でインフレターゲットを決めていくというのは今まで実例がないと言ってもいいと思います。  日本銀行は、既に昨年、緩和政策をゼロ金利から更に広めて量的緩和に切り替えましたときに、CPIの上昇率が安定的に〇%以上となるまで現在の思い切った金融緩和の枠組みを続けるということを宣言いたしまして、デフレ克服に向けた強い意思を表明したつもりでございます。また、このコミットメントの下で、市場に対して極めて潤沢な資金供給を行ってきております。  この結果、短期金利は〇%まで低下しておりまして、いわゆるマネタリーベースといいますか、日本銀行から出ていく資金は、流動性は、二月、三月でも前年比三割に近い伸びを示していたわけでございます。現在はこうした金融緩和効果経済全体になかなか浸透していかないのが現状であると思います。  こうした情勢を踏まえますと、現段階ではターゲット設定しても人々の信頼が得られない可能性が高うございますし、むしろ先ほど申し上げましたように、さっき申し上げたコミットメントの方が分かりやすくてまた効果的であるというふうに思います。  先ほども申し上げましたが、物価の方は経済活動の体温と考えるべきであって、様々な経済現象の結果として表われてくるもので、デフレ脱却のためには、やはり経済全体の基礎体力といいますか、成長があって初めて物価は上がっていくんだろうと思います。そのためにも、このコミットメントでゼロを超えるところまで消費者物価が上がっていくことが第一の目標であるというふうに思っております。
  14. 山下英利

    山下英利君 ありがとうございました。  その第一の目標コミットメント、これに基づいて今の経済環境をごらんいただいて、しかし先ほども私が申し上げましたように、総合的デフレ対策の中での金融政策という位置付けを十分御理解をいただいて、じゃ、二の矢三の矢というときには具体的な目標と、そしてその目標に対しては、これは日本銀行がすべて責任を負うというんではなくて、本当に種々環境がそろわなければその目標達成には届かないという国民理解、これも大分深まってきていると私は思っておりますので、前向きにと申しますか、ちゅうちょなくやはり日銀として金融政策を展開していただきたいと、そのように思っております。  それで、次の質問なんでございますけれども先ほどから総裁のお話の中に為替という話が出てまいりました。正に今これだけ、昨年十二月の状況から今三月の状況になって、やっぱり大きくコメントの中でも出てくるのが米国経済回復であると。やはり貿易によって、日本輸出によって日本経済に対する回復というものに対する期待感、これが本当に大きいんだなと、そのように思います。  その中で、やはり日本が今直面しているのが為替環境であります。  為替というのは、もう昔からやはり日本にとっての大きな経済の主たる要因でありましたけれども、今の現在の日本が置かれている為替環境というのは、ドルだけではなくて、ここに元という新しい要素が入ってきています。日本経済空洞化していく、そしてまた、はたまた安いものが入ってくる。これも単純に労働賃金の格差だけでなくて、やはり為替要因というのは大変大きいんではないか。そして今、中国の元は正にドルにリンクした特別な相場形態になっております。  日銀当局として、ドルと円と元という、この三つの通貨関係を踏まえたこれからの為替日本経済に及ぼす影響、これについてお考えをお聞かせください。
  15. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) お許しを得て私から答弁させていただきます。  先生御指摘のとおり、昨年来、円相場各国通貨、元も含めまして各国通貨に対して円安水準で推移しております。これは、日本経済やそれから日本金融システムに対する厳しい見方が続いているということが一つ、それから、反面、アメリカなど海外経済回復に向けた動きがはっきりしてきているという要因などを反映した動きだと解釈しております。このような海外経済為替相場動きは、輸出環境の改善という形で足下の、現下の輸出数量の下げ止まり傾向企業収益の下支えに寄与しているものと考えます。  日本銀行としましては、為替相場の、経済のファンダメンタルズを反映した、安定的に推移することが望ましいと基本的に考えておりまして、そういう意味で、今後とも為替相場動向とその影響については注意深く注視してまいりたいと存じます。
  16. 山下英利

    山下英利君 ありがとうございました。  そういった意味で、金融の正に中心であります中央銀行日本銀行の置かれている立場というのが金融政策の中で非常に明確なんでありますけれども、今、副総裁御答弁いただいたように、為替というものが日本経済環境の中で非常に重要な位置を占めている。したがって、日本国内の中だけの金融政策でなく、やはり為替政策というものも併せた通貨当局政策の実行というものが、非常に今度タイムリー、時間の勝負というものを考えた場合には大事ではないかなと私は思っておるわけでございます。  そこで、私の質問は、金融政策、それから為替政策、これを連動させる。今だれがどういう形でこれを動かすかというところに立ち返ってみますと、財務省、それから日銀、それぞれのお考えあろうかと思いますので、財務省日銀、それぞれにお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) まず、私の方からお答えさせていただきます。  日本銀行の任務は金融政策でございますけれども、現在の日本銀行法では、金融政策の目的を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」というふうに規定しております。もちろん、金融政策と申しましても、為替相場変動など経済物価に様々な影響を与えると同時に、金融政策波及効果の重要なルートの一つでもあるわけです。  日本銀行としましては、引き続き、為替相場変動影響にも十分に留意した上で、大本の金融政策運営を行ってまいりたいと考えております。
  18. 尾辻秀久

    ○副大臣尾辻秀久君) 財務省としてお答え申し上げます。  まず、金融政策について申し上げますと、お話しのように、政府日銀が緊密な連携いたしましてその対策に取り組んでいくことが重要である、これはもうお話しのとおりであります。  一方、為替相場でありますけれども、この為替相場金融政策によって影響を受けることも事実でありますけれども、とはいえ、為替相場そのものだけについて言いますと、私ども立場で申し上げますと、人為的な政策誘導を行う考えはございません、こういうお答えになってしまいます。  ただ、申し上げましたように、金融政策影響があることは事実でありますから、為替の問題と金融政策とはその時々の状況に応じて検討されるべき問題である、このように考えております。
  19. 山下英利

    山下英利君 ありがとうございます。  為替については、実際の貿易における実需とそれ以外のいわゆる資本流出入、こういった面で最近やはり大変大きい要素になっているのが、今の株価の問題にも出てきますとおり、やはり外人投資家からの積極的な買いであり売りであり、そういった市場混乱、その中で為替も動くというようなことが顕著であります。それをして人為的な介入をしないという場合に、それをどうとらえるか、これはまたいろいろ御意見があろうかと思います。そして、日銀通貨当局としての金融政策にそれがマイナスの影響になるといったときに、御当局が実際それを回避するという手だてというのはやはり必要ではないかなと私は思っておる次第であります。  日銀法改正等、またいろいろ議論をされておりますけれども、その中にあって、やっぱり外債の話、それから有価証券等、そういったいわゆる資本市場取引における日銀金融政策を、為替政策というところからどうやって反映していくのかというのは大きな、今の経済環境における、特に金融面での課題かなと、私はそのように思います。  そこで、追加で質問をさせていただきたいと思いますけれども、そういったデフレ政策の中での金融政策あるいは為替政策という話をさせていただきました。総合的にとらえて、総合的な今の日本の国の政策運営の中で日銀在り方です、これはどういう在り方であるべきか。私はイメージとして、例えばアメリカであれば連邦準備銀行、FRB、あるいはドイツのブンデスバンク、あるいはバンク・オブ・イングランド、そういった中央銀行といろいろ比較をいたしまして、今の日銀のあるべき姿というのはどう日銀の御当局として考えておられるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 速水優

    参考人速水優君) 新しい日銀法の下で、特に独立性と、もう一つ透明性といいますか、アカウンタビリティー、説明責任と、この二つのことが新しい日銀法二つの柱だと思っております。  日本銀行目標は、通貨を発行して、安定した通貨を通じて経済の安定的な成長を図るということが私ども責任であると思います。そして、現在の日本銀行独立性というものは、政策運営透明性とともに、世界的な大きな流れを背景にして、様々な検討を経て抜本的に改正されたものであって、非常に立派な中央銀行制度をお作りいただいたものと考えております。現在最も重要なことは、新しい日銀法にうたわれた中央銀行制度の理念をしっかり定着させていくことだと思っております。日本銀行としましては、今後とも、そのために全力を挙げたいと思っております。  政府との関係について申し上げますと、日本銀行は、日銀法規定に従いまして、金融政策決定会合などの機会を通じて政府との連絡を密にして、十分意思疎通を図るように努めております。デフレ脱却という目標や決意につきましても、日本銀行政府との間で十分共有されていると考えております。  日本銀行としましては、政府と十分な意思疎通に努めて、その上で、独立した中央銀行として政策委員会討議を尽くして、自らの責任と判断で政策決定を行うことが求められているものというふうに認識しております。
  21. 山下英利

    山下英利君 ありがとうございました。  同じ質問になりますけれども、この日銀の独立した金融当局金融の元締という考え方について、財務省当局はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  22. 尾辻秀久

    ○副大臣尾辻秀久君) 日銀法三条四条のことになろうかと思います。  三条において日銀自主性は尊重されることになっておりますし、また四条におきましては、今お話しになっておられるように、金融政策というのは経済政策の一環でありますから、政府経済政策が整合的なものにならなきゃいけない、そのためには常に日本銀行政府連絡を密にする必要がある、こういうふうに決められておるところでございます。  したがって、この三条四条の兼ね合いになろうかと思いますけれども、私ども財務省としてお答えさせていただくといたしますと、そのことを十分わきまえて、今後とも政府日銀の間で一層緊密に連絡を取り合って、今日お話しデフレ克服に向けても一層頑張っていきたい、このように考えております。
  23. 山下英利

    山下英利君 ありがとうございました。  日銀が独立した中央銀行という中にあって、国の政策の中の重要な位置を占める、その連携という和をきちっと守って、そして全体的な政策効果を出していく、これが一番重要ではないかなと、私はそのように思っております。  質問としてはいたしませんけれども、今一番言われているのがリスクの管理であります。これは、システミックリスク、クレジットのリスク信用リスクですね、これは盛んに議論をされております。その中で、金融の、中央銀行としてリスクをどう考えるか、そして金融庁としてまた個別のリスクをどう考えるか、ここのところは整合性が取られているということが非常に必要ではないかなと私は思っております。  全体的に、例えばBISの基準にしても、それは全体の流れです。ですけれども、個別のいわゆる中小、いわゆる市中金融貸出し、これの積み上げがその金融機関のBISの要求水準を満たすかどうかという流れになります。したがいまして、マクロの部分とミクロの部分がきっちりと平仄を合わせておきませんと、マクロだけ決まってしまってそこでミクロにしわが寄るということは、大変日本経済に対してマイナスであると、私はそのように思っておりますので、是非、今後とも連携をよろしくお願いを申し上げます。  私の質問は以上にとどめさせていただきます。ちょっと時間は早いですけれども、これで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  24. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 民主党の峰崎でございますが、日銀総裁にお聞きする前に、実は、高木監督局長、今日突然お呼びしたわけでございますけれども、実は「選択」という雑誌の四月、一番新しい号に、「銀行自己資本の「詐術」 「見せガネ」で三月期末しのいだが」という中に実はあなたの名前が出てくるわけであります。  どういうことかといいますと、その関係する資料、五枚ものの「ポイント」と書いた資料、私もこれ入手したわけでありますが、この中に実は、銀行は大丈夫ということで強行突破で行く方針を練った、その三人男というのが財務省金融庁の事務方だと。三月初めの段階で、武藤敏郎財務次官、森金融庁長官、高木祥吉監督局長の三人が鳩首会談を開き、公的資金の追加注入を見送る方針を打ち出したという。金融庁広報室は、あったということは否定するということになっていますが、念のためにお聞きいたすんですが、そういうことについて何らかの、あなた自身何かこれに関与したとか、あるいは書かれていることに対してどういうことかというのは分かりますでしょうか。
  25. 高木祥吉

    政府参考人高木祥吉君) お答えします。  御指摘の事実は全くございません。
  26. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 中身、ここで資料を全員に配れば良かったんですが、今日になって入ったわけでありまして。いずれにせよ、この中身に書かれてあることが事実そうであったとしたら大変なことなわけでありまして、引き続きまた私たちも調査を進めていきたいと思っております。  委員長高木監督局長はこれでよろしゅうございます。  それでは、日銀総裁にまず最初、先ほど述べられましたちょっと質問に関連して一点、景気の問題でお伺いしておきたいことがございます。  それはアメリカ経済なんですが、アメリカ経済が、ITバブルが崩壊をして、そして依然として設備投資が落ち込んでいる、そうした中で非常に景気が上向いてきている、特に個人消費が堅調であると。その背景、ずっと調べてみますと、どうもアメリカのモーゲージ、いわゆる住宅ローンのところの金利が非常に、FRBの金利が非常に低下をさせたということで、私も余りアメリカで生活したことないから分からないんですが、あそこの、アメリカの場合は固定金利じゃなく、金利を借り換えて、そして今の高い金利を安い金利に切り替えることによって、それが事実上個人の所得になっていくというか、そういう形で実は住宅に対する金利低下に伴うバブルが発生しているんじゃないかと、こういう見方をする方がおられるんですが、そういう点、どのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  27. 増渕稔

    参考人増渕稔君) 私からお答えをさせていただきたいと思います。  アメリカ経済の中で、個人消費が予想外にといいますか、非常に堅調であるということは御指摘のとおりでございます。その背景として、住宅の価格が相当高い水準で維持されているということが影響しているという指摘はございます。  ただいまの御指摘は、住宅ローンの金利、モーゲージの金利が下がったことによってということでございましたが、アメリカ金利そのものは、短期の金利はFRBの金融政策の結果として非常に下がりましたが、長期の金利についてはそれほど顕著な変化が見られていないと思います。  個人消費、堅調な背景として住宅の影響があるというのはそのとおりでございますが、それは主として住宅の価格が比較的高水準で安定しておるということの影響が大きいというふうに認識をいたしております。
  28. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 まだ引き続きこれ、私たちもずっとアメリカ経済、ウオッチングしていかなきゃいけないと思っていますが、あれだけの株価の下落した衝撃が果たしてこう簡単に、設備投資も落ち込んでいる中で、引き続き、こんなに早く回復するということ自身がなかなか私も信じられないところでありまして、こういった点についてまた教えていただければと思います。  今日は金融政策を中心にしてお聞きしたいわけでありますが、何よりも不良債権問題というのが一番やはり私たちにとって、引き続きこれは重大問題だというふうに思っております。民主党として、これからもこの問題について、今日は金融担当大臣もお見えでございます。是非、不良債権の問題について実態を解明するとともに、本当のことをやはりきちっと明らかにしていかなきゃいけないんじゃないかということを含めて質問させていただきたいと思いますが、最初に日銀総裁、今年に入ってもう何度も多くの方が実は質問やあるいはこの国会の中でも質問されていますので、何度もお答えになっていると思いますが、日本の銀行の自己資本の実態について、アメリカ並みに実施すれば一〇%台ではなくて七%台になっちゃうよということを指摘をされておりました。その根拠について少しお伺いしたいと思います。
  29. 速水優

    参考人速水優君) 邦銀の主要行のうちの自己資本比率の規制で、国際基準対象行の自己資本比率は、昨年三月末には一一%でありました。これらの銀行について、ティア1から公的資本を除き、かつ繰延べ税金の資産を、繰延税金資産の計上を米国基準並みにした場合に、自己資本比率は七%台まで低下いたします。また、繰延税金資産の計上をゼロとした場合には六%台まで低下いたします。  数字の説明は以上でありますが、私は、こうした試算で、会計ルールにのっとった繰延税金資産の計上や公的資本の算入自体を否定しているわけではございません。私が申し上げたいのはあくまでも金融機関の中長期的な課題であります。それは、公的資本は長い目で見ればいずれは民間資本に置き換わっていくべきものでありますし、民間が出資に応じるに足る収益力の強化が必要であるということでございます。  また、繰延税金資産につきましても、将来の収益に対する税金の前払的なものでございますから、やはり収益力を強化しなければ資産としての意味に乏しいというふうに言うべきだと思います。  したがいまして、いずれにしましても、今後の収益力の向上と、それによる資本基盤の更なる強化を図っていくことが極めて重要だということを強調したかったわけでございます。
  30. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 お手元に、私、一応、日本銀行からいただいた資料、二ページと、下の方に数字で2と書いてありますから、多分。「自己資本比率に関する試算」ということで、これは日銀からいただいたものであります。ティア1、ティア2。現行でいきますと、ティア1が二十兆、ティア2が十六・五兆と。控除項目は、これはいわゆる意図的な保有額という持ち合いのやつですね、これを合計すると三十五・九兆。これは、リスクアセットが三百二十七兆で、自己資本比率一一%と。これをよく主張されるわけでありまして、そのうち、ティア1の中に公的資本が五兆、それから繰延税金資産四・五兆と、こうあります。  私たちは、どうも公的資本なり繰延税金資産をここの中に入れていることについて疑問をなし、その都度、柳澤大臣から、いやいや、これはBISのバーゼルで認められた基準に沿っているんだと、こうおっしゃられたわけです。  そこで、柳澤大臣にお聞きします。  この繰延税金資産と言われているものは、現行の日本の会計基準と、いわゆる公認会計士協会の基準が実はあるわけですね、五年までやってよろしいよという中身であります。私は、これが決まったとき、これ二〇〇〇年でしょうかね、一九九九年でしょうか、この基準を進めたときに、どうもこの五年という設定をすること自体は無理があるんではないかなというふうに思うんです。  なぜ無理があるかというのは、一つは、やはりこの繰延税金資産というのは、翌年にずっと利益が上がってくるという前提で、そうすると先払いしたやつを実は税でもって後で返してくると、こういうことですね。税効果会計に関する日本公認会計士協会による指針というのがあって、そこの中で六段階に分かれていろいろ出ています。どうしてこのいわゆる五年間というものが認められたのかということが一つ分からない点と、それからもう一つは、銀行というところの、特別に銀行に関しては経常的利益と言われているものがあって、この経常的利益というものが実際上、これはもうほとんど業務純益に等しいと。そうすると、銀行の場合、今、業務純益がマイナスになるというような銀行はほとんどないわけで、そうするとほとんどぴかぴかの銀行になっちゃうんですね、全部、どんな銀行でも。それこそ破綻寸前の銀行でも何でも、これはほとんど業務純益から見たらぴかぴかになっちゃう。  そういうことをずっと考えていくと、このいわゆる五年間までやっていいですよという公認会計士の皆さん方の指針というものが出ているわけですけれども、これはどうも、アメリカ並みというか、そういうほかの国々と比較したときに非常に甘くこれはできているんではないかなというふうに思うんですが、これはどのように考えておられますか。
  31. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 今、峰崎委員が御指摘になられたとおり、この繰延税金資産のどれだけ計上するかということは、国際会計基準というものの中で、まず繰延税金資産というものを時価会計や何かの導入と同時に入れないと、何というか、全体的に整合性の取れないものになってしまいますねというようなことでこうしたコンセプトが入ってきたということであろうと私認識しております。  それで、その適用に当たっては、具体的な取扱いを、今、委員がお述べになられたとおり、公認会計士協会の実務指針というところで定めておるわけでございます。  これが甘いのかということでございますけれども、じゃ、他国はどうなんだといいますと、アメリカは今委員もお述べになられたような制約を置いているわけですけれども、他国は、これはもう明示的には実務上の取扱いに任されているというのが一般的でございます。  そこで、今回、そうしたことがたびたび先生からも御指摘いただいているということもありまして、これはあくまでも悉皆的なものではないんですけれども、できる限りの範囲で各国の実務家から個別にヒアリングをいたしたわけでございますけれども、結局、その個別のヒアリングでも、一般的には三年から五年といったところではないか、こういうことが彼らの回答でございました。そんなことから比較をいたしまして、我が国の実務指針が特段何か格別甘いというような状況にはなっていないというふうな認識をなお持っているというところでございます。
  32. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もう答えは恐らく言っても水掛け論になるんだろうと思いますが、ここで、さっき二つ条件を申し上げましたけれども一つは、いわゆる上から順番に見ていって四ランク目に下がっているときに、事業のリストラや法令等の改正など特別な原因による場合はその企業は五ランクではなくて三ランクでいいですよと、つまり五年でいいですよということになっているんですが、もう一つのところの、銀行に対する経常的利益のところの条件の中に、実はバブルの崩壊に起因する臨時多額な債権放棄等が、これはいわゆる非経常的な特殊要因から発生した費用ということで落とせると。それを落とせるようになると、実際上はもうどんな銀行でも、さっき言ったように、これはぴかぴかの銀行になっちゃって、そして五年間なら五年間置けるというのは、これはどう考えても実態にそぐわないんじゃないかという気がするんです。  ですから、五年間繰延べできますよというこの指針というのは、公認会計士協会の指針なんでしょうが、私からすると、これはやはりむしろもっとここは厳しく、公認会計士協会の指針自身にこれはやはり問題があるんじゃないのかというぐらいのことを指摘しないと。  こういう形で実は、その繰延資産というのはある意味ではティア1の中の一番かなり重要な項目に入っているわけですから、これの言ってみれば十二・五倍まで貸せるというところまで入ってくる大きいところですからね。しかも、そのティア2はティア1を超えられないというところも入っているわけですから、ここのいわゆる査定というのは、極めてこの自己資本比率を査定するときに、何度も私たちは自己資本比率は非常に問題じゃないかということを言い続けてきたことの一つの根拠なんですよ。ですから、この点は、我々としては引き続きこれは、一年、要するに五年じゃなくて一年ごとぐらいしかせいぜい見れないんじゃないかと。  とりわけ、銀行がこの間ずうっと赤字を出してきている、赤字というか、不良債権処理を含めて、過去何年このいわゆる業務純益以上の含み益を取りつぶしたりしながら辛うじてここまで来ております。後でまたそれは数字を申し上げたいと思いますが。その意味では、この五年というのは、私は明らかに粉飾になっているんじゃないかということを指摘せざるを得ないというふうに考えているわけでございます。  そこに、資料にございますように、これを除き、あるいは公的資本を除くと実質上自己資本比率というのはもう六%台まで下がってしまうという。大変やはり日本の銀行というのは過少資本だということを、これは速水総裁にちょっとお尋ねしたいんですが、海外のよく記者会見等で、オタワに行った、G7の会議へ行かれた、海外に行かれたときに、今日は財務大臣お呼びしていませんけれども、G7に行かれた財務大臣やあるいは日銀総裁は絶えずこのことを追及されてきたんじゃないんですか。この点、明らかにしてください。
  33. 速水優

    参考人速水優君) 海外でこういう指摘を受けた経験はございません。
  34. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 総裁、それは、この間ずっと記者会見の記事を調べていますが、海外からいわゆる過少資本、すなわち、これは随分言われたよということをおっしゃっているんじゃないんですか。
  35. 速水優

    参考人速水優君) 自己資本が不足しているということは何回か言われております。しかし、今のこの繰延税金資産について、これは外すべきではないかといったような話は受けたことはございません。
  36. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 自己資本が少ない。そうしたら、自己資本は一一%あったらこれは決して、バーゼルの基準からしたら優に八%を超えているんですから、指摘されるゆえんはないわけですね。  じゃ、なぜ自己資本が少ないと言われるんですか。
  37. 速水優

    参考人速水優君) いわゆるコアキャピタルというのが少ないんだということは彼らも知っております。そのことを言っているんだと思います。
  38. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 とすると、コアキャピタルのところは、今申し上げたように、繰延税金資産と、それからいわゆる公的資金の注入なんでしょう。そうなんでしょう。もう一回それ答えてください。
  39. 速水優

    参考人速水優君) 銀行によっていろいろあると思いますけれども、いずれにしても、どこへでも使える本当の意味での自己資本というものが十分でないんじゃないかということは海外でも分かっております。あくまでも必要なことは銀行のそのときの収益力であって、自分のもうけた金で資本を増やし、それでもって不良貸出しが出れば償却していく、損が出ればそれで消していくというようなことが十分に行われていないということが彼らにとっても一つの不安の原因になっているんだというふうに想像いたします。
  40. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 柳澤大臣にお尋ねしますが、そうすると、海外からはコア資本が不足しているというふうに言われていることについてはどのようにお考えですか。
  41. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) バーゼルではティア1、ティア2ということでやっているわけですけれども、そういうバーゼルの監督委員会で合意されている基準は基準として、他方、やっぱり恐らく、私はもうその場に居合わせておりませんので推測でありますけれども、やはりそういうティア2というような、これは資本性があるじゃないかというようなことで入れてくるものではなくて、もっと単純に、ティア1というものに着目して、ティア1のレベルはどうなんだということでの話。そういうことで、もっとティア1の資本の充実を図るべきじゃないかということを指摘する向きがあるということをおっしゃっていらっしゃるんじゃないか、このように考えます。
  42. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いずれにしても、日本国内向けには一〇%あるよ、一一%あるよといっても、国際社会の皆さん方は、いやいや日本の銀行の自己資本というのは非常にコアになる資本というのが少ないよということを厳しく指摘をされているんだろうと思います。  今のコアの資本の少なさと並んで、総裁は恐らくきっと、要するに問題なのは、このいわゆる公的資本もやがては返さなきゃいかぬと、やがては返さなきゃいけない。それからもう一つは、繰延税金資産も、順調に利益が上がってくるようになってくれば、これもやがてまともに繰延税金資産が、これは五年どころかずっと優良な企業なら何年続けたっていいわけですよね、そうでしょう。だとすれば、そういうところになっていかなきゃいけないねということで指摘をされているということも私どもはよく知っているわけです。  じゃ、なぜ、これ十ページ目になりましょうか、数字を見ていただきたいんですが、これは全国銀行百三十四行決算の内容を一覧表にまとめたものでございます。  中には、日経新聞からのを含めていろいろさせていただいているわけでありますが、この間の不良債権処理、それから経常利益はもちろんそこに記載をしておりますが、業務純益の中でほとんどこの不良債権処分というものがある意味では足りないという状況がこの十ページの表で出てくるんだろうと思うんですね。右上の方に、九三年から二〇〇〇年に掛けての不良債権処理額はおおよそ七十・二兆、うち業務純益は三十八・六兆、含み益は十九・四兆、増資が十・九、公的資金投入が六・五と。合わせてこの不良債権処理額は、これまでは何とか業務純益と含み益、公的資金の投入などによって辛うじて押さえてきたというのが実態ですよね。  そうすると、こういう状態というのは来年、これは二〇〇〇年度ですから二〇〇一年度、これは恐らくこんなものじゃ済まないでしょうね、不良債権処理は。来年以降どうなるんだろう、再来年以降どうなるんだろう。来年は、日銀の皆さん方の物価見通しによっても来年はマイナスなんですね、これ。そして、今日は竹中大臣お見えになっておりませんが、経済財政諮問会議の来年以降の予想も、来年もきっとまだデフレが続くと言っているんです。地価統計もずっと下落をしたままなんです。そうすると、これはまだずっと続きますねと、こういうことですね。  一体全体、日本の銀行、金融機関は、速水総裁がおっしゃるように、業務純益あるいは諸利益でもって順調に利益が回復していけるような状態というのは、これは見通し得るんでしょうかね、この状態のままで。この点は、ゼロ金利政策をずっと続けておられるわけですけれども、どのようにお考えになっているんでしょうか。
  43. 速水優

    参考人速水優君) これまでは自己資本の比率が余り問題にされなかったと言ってもいいのかもしれませんけれども、特にここへ来てその問題が大きく出てきたのも、やはり不良貸出しの残高が減っていかない。これは自己資本が十分ないからじゃないかということを考え始めたに違いないと思いますし、特に、これまでは、昨年の九月までは株式の含み益というものがかなり大きいものが銀行にあったわけで、そういうものが不良貸出しを消す場合に使える資金であった、資金のソースであった、そういうものもこれから使えなくなってくる、そこへもってきて収益が、まだ貸出しが伸びていかない、資金の運用が十分に行われていないといったようなところから、これは、このままいったら自己資本が少なくて困るんではないかということを想像して言っていることではないかと、そういうふうに思います。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕
  44. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今日は、今の業務純益といいますか、今の銀行の利益構造というものをこのままにしていたんでは変わらないんじゃないかというふうに思いますが、今日は時間がありませんから、不良債権というものは一体本当にどれぐらいあるんだろうか。これはもう何度もこの間、この数年間と言っていいぐらいずっと議論してまいりました。  その実態問題について、柳澤大臣、今日を私は出発点にしまして、この問題はずっとやはり私たち自身としては、民主党の立場としては、不良債権というのはもっとあるんではないかという考えをずっと披瀝をしてきましたし、多くのエコノミストの方々も、不良債権というのは百兆を超えているんじゃないかもしれないと、こういうふうに指摘する人もいるわけで、その都度私が聞いている限り、金融庁は、それはマクロの推計でしょうと。例えば、GDPの一三〇%の与信をやっている、これは、本来であればGDPの一〇〇%ぐらいがトレンドからしたらそうだから、GDPの三〇%多い、これが不良債権になっているはずだと、こういう言い方で百五十兆という数字が出たりしたこともあります。そういうマクロの推計でやっているから、実はミクロで見ているのは我々なんだと、日銀も考査されています。  そこで、不良債権の実態について二つの機関が実は積み上げ方式でデータをやりました。一つは、昨年の十二月の十八日、衆議院の予算委員会、この場で仙谷由人さんが一枚の表を使ってその説明をしたはずであります。もう一つは、実はゴールドマン・サックスというところ、この間は金融庁からおとがめのあったところですが、ゴールドマン・サックスが十一月十六日に、「銀行の資産内容を再考察する」という、保存版というのを出している。昨日、この資料については金融庁に、あるいは日銀にも差し上げておきましたからお読みになっただろうというふうに思います。  そこで、その積み上げ方式について、一体積み上げ方式をやったらどうなるのか。積み上げの根拠がありますから、これは全部の金融機関を査定しているわけじゃありませんから、ある意味では、上場企業についてはある程度分かっていくんです。しかし、上場企業以外のいわゆる全法人となるとなかなか分かりにくいところがあります。  そこで、お手元に、これは何ページ目になるでしょうか、五ページ目になりますかね、上場・店頭企業金融・保険業を除く上場・店頭企業三千三百九十八社、このデータを、実は日本経済新聞のNEEDSというのと、私がいつもよくお世話になっている中前国際経済研究所というところがございますが、この方々が十一月にこれをまとめられた。十月の終わりだったと思います。ほぼ同時期にこのゴールドマン・サックスも同じような方法でまとめているんです。  二つのデータを今日はお話し申し上げて、それに対して金融庁はどのように考えておられるのか、金融担当大臣日銀はどう考えておるのかを教わりたいと思いますが、まず、この五ページの数を見ていただきたいと思います。  三千三百九十八社、一番左の企業数というところのうち、無借金経営をしている上場企業は二百七十社。そして実質無借金というのは、これは有利子負債はあるけれども有利子資産もあって純有利子負債がゼロのところですね。右から五番目のところゼロになっていますが、これも実質無借金になる。それから自己資本が純有利子負債を上回っているところ、これも、いつでもこれは資本の中から返せますねと。これで二千四百六十八社が大体これは大丈夫だと。以下、この三〇%超から営業赤字までというのは、これは要するに借金をして、いわゆる負債に対する有利子、ごめんなさい、営業利益ですね、有利子負債分の営業利益、この比率を三〇%超から一%以下、営業赤字までやったわけであります。  そこで、この前提となっているのは、今申し上げたように、その企業数というのはずっと調べていったわけでありますけれども、そのうちなぜ六%と五%以下のところに黒い欄が引いてあるかというと、どうもこの六%以上と以下とで、ある意味では一つの基準でございますけれども、この全体九百三十社のうちの四百七十九社、すなわち六%以下の企業のところは、どうもやはり六%以下になると借金の金利や元本の一部を返済する能力がなくなっているんじゃないかと。なぜ六%なのかというと、前提条件は、平均貸出し金利が二・四%、信用リスク一・六%、元本返済を二%ということで一応六%というふうに仮定をしているわけです。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕  そうすると、この下の小計四百七十九社が浮かんでくるわけでありますが、この四百七十九社だけではまだちょっと足りないということで、実は次の七ページを開けていただきたいわけでありますが、そのうち、四百七十九社のうち株価が百五十円を超えているのは幾らか。百五十円を超えていれば、市場はこの企業はまあまあよくやっていると見るのか、いや百五十円じゃ安いと見るのかはいろいろあるでしょう。百五十円以下のところは二百四十七社、この七ページのところの上段の、上の下の方の斜めの線が引いてあるところです。これがどうも我々が見て非常に危ない会社じゃないんだろうかなというふうに見たわけであります、全上場企業のうち。  そうすると、この全上場企業三千三百九十八社のうちの二百四十七、金額にして、企業数では七・三%ですけれども、売上げでは九・六ということでずっとそこに記載をしておりますが、そこのうち、百五十円以下のところの二百四十七社の銀行借入れは二十九・四兆円です、これは。これは全体の上場企業三千三百九十八社の銀行借入れのうちの何%を占めているかということで、下を見ていただきたいんですが、一八・六%を占めています。大体、上場企業で一八・六%を占めているということは、これを今度は次のページ、八ページ開けていただきたいんですが、法人企業全体にこれを敷衍してみようと。そのときに、一八・六だから二〇という数字じゃないだろう、やっぱり中小企業だから、やはり能力がない、営業成績が低いところが多いだろうということで、実はその銀行借入れというのは非上場の合計は三百二十六兆円です。これに二五%を掛けて、そして足すと一体幾らになるか。すなわち、非上場企業の場合は四分の一ぐらいはこれはどうも不良債権になっているんじゃないのか、六%払えないんじゃないかということで計算をしますと、これが実は八十一・五兆円になって、さきの上場企業の二十九・四を足すと百十一兆円になります。もし三割が中小企業が恐らく不良債権になっているんではないかと仮定をすれば、九十七・八兆に二十九・四兆、上場企業を足すと百二十七兆、おおよそ百十兆から百二十七兆、百三十兆ぐらいの幅にいわゆる日本不良債権というのはあるのではないかというふうに私たちはこの数字を見ているわけなんです。  もちろん、これにはいろんな前提条件を付けていますから、また、この百二十兆すべてが不良債権、もう引き当ても何もしていないかというとそうじゃないはずですね。もちろん引き当ても付いています。しかしまず、不良債権というのは一体どのぐらいあるのかなということを、積み上げ方式プラス、上場企業以外は積み上げできませんから、データがありませんから、それを法人企業統計に割り掛けて推計をしてみたわけでありますが、この数字について、この算出について、柳澤大臣、どのような感想をお持ちでしょうか。
  45. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 私、今日出掛けにこの数字を、計表を見せられましたので、それほど何というか子細に検討するいとまはないということで、そういう前提でちょっとコメントというか、そういうことをさせていただきたいんですが。  峰崎先生は、じゃ借金を、常識論として、借金をして返すというのが、すべて当期利益だけでそういうことが可能だというふうにお考えなんでしょうか。例えば設備投資資金借りる、片っ方で経費になります。当期利益にとってはマイナス要因ですけれども、減価償却というのをやりますね。これはキャッシュフローはあるわけですね、売上げがありますから。そういうのはどこへどう入っちゃっているんだろうか。  我々は、借金の返済能力というのは、そういう償却であるとか固定資産の減価償却だとか、繰延資産の減価償却だとかというものも動員をされて返済が行われてちっとも構わない、こういうように思っています。  私、これ個人的には、独断かもしれませんけれども、例えば短期の運転資金、これは一体どこから返せってこうおっしゃるんでしょうか。私は、商売が続いている限りそんなもの、返すあれはなくてもいいと思いますよ。最後にその商売やめるというときに、はい、じゃやめますから、片っ方でこれだけ売上げが立ちましたと。多分、売上相当額の中の一部が運転資金の借入金になっているでしょう。その売上代金が返ってきたら、もう仕入れが必要ありませんから、それを返済に充てればいいんじゃないでしょうか。  私はそういうごくごく自分の実生活の体験から考えて、そういう仕組みというのはこの中のどこにインプットされているんだろうかということが、この計表を見せられたときに、事務方からいろいろ説明されましたけれども、私の疑問としてそういうことを申し上げたんです。  先生、いかがお考えでしょうか。
  46. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今、家計の話をされましたね。家計というか、実際の。
  47. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 家計なんて言ってない。
  48. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私は、これは複式簿記を使って公会計でいわゆるやっているわけでしょう。そのときに……
  49. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 家計じゃない。
  50. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いいですか。その運転資金が転がっていくようなことは我々もよく分かっていますよ。そうではなくて、実際上の、借入金をしている、それがちゃんと払えているかどうか、これが実はあれでしょう──ちょっと、少々お待ちください。  要するに、マニュアルを見ても、借金に対してこれがちゃんと払えているかどうかということに対する評価が実はそのマニュアルの中の、これは要注意だとか要管理だとかあるいは破綻懸念だとか、そういう形で出てきているわけですね。とすれば、借金に対してどの程度利益を上げているのか、そしてその中から返せるのか、あるいはそれは追い貸しをしているのか。これ、おいおいまたやりますよ。これ、今日だけじゃありません。  今お話しになった中でおっしゃっていることは、我々が金融──いいですか、不良債権問題やっているんですよ。不良債権問題をやっているときに、金融マニュアルに従って私たちは一つ一つのそれを、これは債権はどうなるかということをやっているわけです。そうでしょう。そういうことでしょう。だからそれを今数字を挙げて、それについてどうですかということを聞いているわけじゃないですか。
  51. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 私、家計なんて一言も言っていませんよ。
  52. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 家計というか、私たちの生活を見たって分かるでしょうと言ったじゃないですか。
  53. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 生活なんて言っていません。実体験と言っているんですよ。
  54. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 実体験、実体験というのは……
  55. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 我々の、こういうすごい高等な計表を用いた話ではなくて、我々の実体験。じゃ私聞いたのは、例えば設備投資する、設備投資の金を利益から返せと言ったら、そんなものができるような企業ありませんよ、それは。それは、その会計経理上は損になります減価償却、そういうようなもので返してくるのは当たり前の話ですよ。それはどこに入っているんだということを説明してくれなければ、これが妥当かどうかコメントを我々できませんよということを私が申し上げたということです。
  56. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 これはもちろん、今私が申し上げたようにピンポイントでとらえているのかもしれません。しかし、これは今日だけに限りません。これ引き続きやりますよ、この代わり。このゴールドマン・サックスの資料の中には、そういう設備投資のお金はどうなっていっているのかということも全部その中に書いてあるんです。これは金融庁にもう渡してあるし、当然金融庁もこういう資料は読んでいるはずですから、当然これからまた議論していきたいと思います。ですから、今日は持っておりません、それは。その設備投資のお金がどうなっているかとか、キャッシュフローがどう回っているかという。  問題なのは、さっきから何度も強調しているように、我々の不良債権かどうかということの基準というのは、マニュアルに従っているんでしょう。マニュアル読んだら、それはちゃんと貸したお金が返っているか返ってこないかが基準になっているんでしょう。もちろん企業ですから、いろんな指標はたくさんまだもっと取らなきゃいかぬことはあるかもしれません。しかし、一番肝心なのはその資料だということ、その数字だということは間違いないんじゃないですか。
  57. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) いやいや、私の言っているのは、当期利益あるいは営業利益でもってすべての有利子負債が返せるか返せないかという問題の立て方について申し上げているんですよ。それを先生大前提にしてこれから立論されていこうとするから、その一番の基本のところを先生はどうお考えですかと、借金をこの営業利益からすべて返していくんでしょうかと。私は、営業利益を出す前の控除項目である減価償却だとかいうようなものが借金の返済に動員されて何が悪いんですかということで、それは一体どうなっているんだろうかということを逆に質問して、お答えいただければもっと議論が展開されていくだろうということを申し上げたんです。実にプリミティブなところで私、疑問を表明させていただいたんです。
  58. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 それは、減価償却をするというのはある意味で当たり前の話で、その減価償却が妥当かどうかというのは別にして、それは現実のキャッシュフローとしてそれは回ってきますわ。  しかし問題は、お金を貸していることに対して実際どの程度の利益が上がっているのかという、これは間違いなくあれなんでしょう、査定をするときのマニュアルの大原則なんでしょう。そこだけを答えてください。
  59. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) それが、一定の営業利益が有利子負債に対して一定のパーセンテージを保持していかなきゃいけないということであれば、その営業利益でもって返すということ、つまり有利子負債の元本のところまで言っておられたわけですから、元本の返済のところまで言っておられたわけですから、それが全部当期利益で返せなきゃいけないという立論だとしたら私は理解ができませんということを申し上げたんです。
  60. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 分かりました。  そうしたら、一部、今日最後に配った資料がございます。  また、減価償却の問題だとか、つまり元本のところは返っているということは、当然それは、元本を返すということは、設備投資投資したときの金額から、つまり減価償却から返してもいいじゃないかというような議論は成り立ち得ると思いますが、それはまたその数字、データをもって明らかにしたいと思いますが、今日最後に配ったのは、これはゴールドマン・サックスが作った資料、下の七十一図と第七十二図を見ていただきたいと思うんですね。  ちょっと数字が小さくて恐縮なんですが、この数字の、これもまたちょっと説明しなきゃ本当はいけないんでしょうけれども、これもいわゆる有利子負債に対する営業利益の比率を左に出して、そしてその比率が〇%以上、一%から〇%、ずっと行って最後のところは一〇%以上です。つまり、上の方に来れば優良な企業、下の方に来れば駄目な企業、駄目なと言ったらおかしいけれども、非常に成績の良くない企業ということで、営業利益はこの十年間どう変化したか、有利子負債はどう変化したかということをずっとこれは調べていっている。ですから、同じように単年度で見ているわけじゃなくて、これは歴史的に見ているわけです。これでずっと見ていっても、実は私は、ある意味で優良な企業は非常に優良になってきているし、不良な企業は駄目になっているという感じでちょっと見ていたんですけれども、ちょっとその種の、何といいましょうか、単年度の一回限りのもので見ているんじゃなくて、これは十年というタームで実は対比をしてある。  そうすると、今おっしゃられた減価償却だとかそういうものについては、新しい設備投資していれば、当然それはまた過去の減価償却から出しているわけですね。ですから、そういうものを差し引いて見たときに、この営業利益や有利子負債の変化というものも一つ見る価値があるんではないかというふうに思いますが、今日は余りデータを、減価償却のところのデータを持っているわけではありませんから、またその点については次回に移したいと思いますが。  問題は、不良債権と言われているものを我々が幾らあるのかというときに、不良債権とは何ですかといったときには、先ほど申し上げたように、借りた金を返せるのか返せないのか、返せる期間が三か月なのか六か月なのかによっていろいろまた変わってくると、こういう話だったわけですね。ですから、今六%という数字を置いたことに対して、特に二%のところがある意味では一つのポイントだったのかもしれません、いわゆる元本までというのは。しかし、将来的には元本まで返さなきゃずっとある意味では借りっ放しといいますか、また設備投資資金を、長期資金を借りるということももちろんできるのかもしれませんけれども、そこは私は六%程度に収めておって、これは余り高く見積もり過ぎてはいないというふうに見ておったわけでありますが、そのことは別にいたしましょう。  それでは次に、その感想をまだお聞きできる以前のところで先に進まないわけでありますが、じゃ、今度ゴールドマン・サックスが調べた資料が一番最後に載っているわけであります。これも、ちょっともうこの数字で時間ばかり過ぎていっちゃうわけでありますが、「金融監督庁のまとめた問題債権とゴールドマン・サックス試算不良債権の比較」というのが実は一つ出てきているわけです。  ゴールドマン・サックスは、これは何をやったかといいますと、先ほど申し上げました上場企業決算の短信と金融監督庁の資料から、このいわゆる破綻先・実質破綻先に該当するその債権額十三兆四千四百六十億に、すべての企業の言ってみれば債権、これを足していって、そして十三兆四千四百六十億円になるだけ集めたときに、次の営業利益/有利子負債は一体どういう個別データでもって成り立っているのかということを実は調査部が試算をしたものなんです。  破綻懸念先、それから要注意先というのも全部同じ要領で、実は実際にこの十三兆四千四百六十億、それから破綻懸念先が二十兆五千百億、これは一つ一つ企業を積み上げていってみると実質破綻先はマイナス〇・二八%ですと、要するに有利子負債でいえばもう赤字になっちゃっている、平均ですよ、これは。それから、破綻懸念先は〇・六一、一%にも満たない。要注意先は二・六八と。  それで、実はゴールドマン・サックスさんは何をやったかというと、これは私、前回たしかお話を申し上げたと思いますが、今までの金融検査マニュアルというのはインフレが大体前提になっている。デフレになった場合には実質金利が問題になるというところで、実はゴールドマン・サックス独自のいわゆる営業利益/有利子負債比率を、破綻先の場合には一%以下、破綻懸念先は一%から三・五%、要注意先は五%以下、こういう基準に設定をしたわけなんです。  その設定がいいかどうかというのは別にして、一番最後、別紙でお配りした図の第四十六を見ていただきたいわけです。図を見ていただくと、一九九三年から二〇〇〇年という七年間、この変化、すなわち有利子負債比率分の営業利益、この変化率を見たら、〇%以下は何とこの有利子負債が赤字がどんと、黒字だったものが赤になっていくということで、変化率がマイナス二七〇%、それから一%から三%の間、これを見ると実はマイナス四一・四%、マイナス三八・一%、マイナス三一・七%、そして五%以下のところで実はマイナスとプラスの分かれ目ができている。  これは、実はゴールドマン・サックスが調べた調査データからそのままコピーしてきたものです。ほぼ大体一、三、五というのは当たっているんじゃないかなというふうに見て、それで何をやったかというと、ゴールドマン・サックスさんは何をおやりになったかというと、同じように積み上げていってその一%未満のところで破綻先・実質破綻先を調べてみると、何と債権額が七十三兆五千九百十億円、破綻懸念先は九十六兆六千百九十億円、要注意先は六十六兆四千百二十億円。不良債権と言われるのは破綻先・実質破綻先と破綻懸念先だと仮定しても、約百七十兆余りが不良債権というところに実は該当するんですよということが出てきたわけです。  この数字を見たときに私もどってんこいたんですけれども、しかしこれは恐らく相当いろんなことを割り引かなきゃいかぬものがあるのかもしれません。先ほど言った株価はどうなっているんですかねとか、いろんなほかの資料もあるのかもしれませんが、一つ一つ企業を積み増していって売上高の営業費比率を積算をしていくとこんな数字になっちゃうんですよ。で、一%以下、これは実質一%にも満たないようなそういう不良債権を、いや、一%に満たないような利益しか上げられないところはこれはちょっともう難しいですね。それから、一%と三%の間を見ると、やっぱりここは過去七年間を見ても相当やはり落ち込んでいますねと、営業利益は。  そうすると、なまじっか間違っているんじゃないんじゃないかなという思いがちょっとしているわけなんです。これは私もまだ資料の読み込みも足りないかもしれませんが、ですから都合のいいところだけを持ってきたのかもしれませんが、しかし、いずれにせよ、両方の積み上げをやるといずれも百兆を超すような不良債権というものがあるんではないのかということを、積み上げ方式、完全な積み上げ方式かどうかは別にしても、どうもそんなふうに見えるんですが、これは柳澤担当大臣と、日銀総裁は今ずっとそばにいて、不良債権、お聞きになっているだろうと思いますが、どんな感想を持たれたか、お聞きしたいと思います。
  61. 速水優

    参考人速水優君) 不良債権の規模につきましてはもう様々な試算が出されております。いずれも特定の仮定や前提を置いた上での試算でありまして、その結果がいろいろであるわけですけれども、概して言いますと、やっぱりただいま先生がお示しになった試算も含めて、この不良債権問題というのは相当深刻であることを示唆するものが多いと思います。こういうことは、言い換えれば、金融機関不良債権問題への対応につきまして、市場やアナリストから信認が得られていないということを示していると言うこともできるかと思います。  こうした試算が妥当であるかどうかは別として、ともかくこうした疑念を払拭して市場からの信認を回復していくためにも、金融機関は厳正な自己査定を踏まえて適切に引き当てを行っていくと同時に、再生させるべき企業市場から退出させるべき企業を見極めた上で適切な対応を迅速に取っていくことが重要であるということをこの数字を見ていて感じました。
  62. 柳澤伯夫

    国務大臣(柳澤伯夫君) 非常に細かい数字を挙げての御議論でございますので、かえって的外れの議論を余り細かくするのもいかがかと思いまして差し控えますけれども、分析の手法として、営業利益を、有利子負債比率に対する営業利益というものの比率で分析をされるということは、分析の手法としてはあるのかもしれません。私も、こうした専門的にそのことをやっていらっしゃる方の御努力には敬意を持っていつも見る方ですけれども、ただ、非常に先ほど言ったプリミティブな、素朴な議論として、そういうことで不良債権比率というか、不良債権の問題と、そういう、つまり不良債権、つまり、委員先ほど来おっしゃっている返済能力あるいは回収可能性というようなものとどう結び付くんだろうかというところが今一歩私に腑に落ちないものですから、これ自体についてのコメントは遠慮させていただきたいと、このように思います。
  63. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 昨年十二月の十八日の衆議院の予算委員会では、仙谷さんに示した一枚同じものが入っているんです。それについて、非常に興味を持って、これから検討していきたいとおっしゃっていました。今日聞いていてそのことについて検討されていたのかなと思ったんですが、されておられませんでした。  この問題は、生産的か非生産的かは別にして、やはり不良債権の実態というのは一体どうなんだろうかということの議論はベースになっていくところですから、これからも引き続き、今日指摘を受けたことで十分答えられないこともやりたいと思います。またひとつよろしくお願いしたいと思いますが。  そこで、日銀総裁、お尋ねしますが、要するに、そのときに不良債権であるものが実は本来市場から退出しなきゃいけない、これが退出しない、残っちゃっている。これが私はどうもデフレ一つの大きな原因じゃないかと思っているんです。  今日の資料の中に、何ページ目になりましょうか、生産能力とそれから実際の実態を出した数値を用意いたしました。ページでいきますと四ページですね。日本財務省と、アメリカのやつは右の方に書いてありますが、日本のいわゆる製造業の稼働率を調べたものです。何と実に、一番新しいところで、平成二年の一月に日本製造業の稼働率というのは六四・六%。生産能力に対して生産指数、つまり能力指数というのを見ると、ピークが九七年十一月、一〇五・三、これ九〇年の十二月がピークですが、一〇〇としたわけでありますが、九七年十一月が一〇五・三で、辛うじて今八%ぐらい落ちたでしょうか、それでも九七・八と。ほとんど落ちてないです。  これまで我々、不良債権を言ったときに、今、日本の最大の問題は、要するに過剰生産能力、過剰設備、それから過剰雇用、それから過剰負債と、こういうふうに言われていた。負債のことで、お金のことはずっと言ってきたけれども設備能力はほとんどこれは変わってないということですね。勝ち組、負け組、すなわち、今日ゴールドマンサックスの中身は余り詳しく説明することできないんですが、勝ち組と負け組がこの八〇年代から九〇年代に起きてきていて、負け組がなかなか退出しないんだと。だから、いわゆる過剰生産能力のために、実は製造業の、例えば鉄鋼業だとか造船業だとか繊維だとか、そういうバブルと一見かかわりないようなところで実は不良債権がどんどん出てきているし、いわゆる借金に対する利益の率もどんどん下がってきている。なぜこれがそうなっているかというと、異常なるゼロ金利、低金利がそうさせているんだと。  ここに実は、構造改革と言われているものを、金融庁さんは不良債権のいろんな実態を明確にして、そしてそれを不良債権を処理をするのに検査マニュアルを使ってきちんとやりなさいよというふうに言っても、いや、何だかんだ言いながら、何だかんだと言いながら、変な言い方ですが、先ほどのいろんな形でこの不良債権の実態をある意味ではきちっと正確に押さえる。そして、いわゆる査定、それから先ほど申し上げたような繰延税金資産の扱いだとか、そんな問題を含めて、どうも今度の特別調査の場合は、特別に今調査をしたやつが四月十二日に出るようですけれども、どうもそういう形で行政的な手法でやるのは、事実上これは不良債権の問題の解決というのは難しいとすれば、あとは市場で実はそれをやっていくとすれば、金利が上がっていくことに伴って、今は低金利だから払えているような企業、キャッシュフローが回っている、さっきのもしかしたら減価償却を取り崩してそれで回しているかもしれません。そういった企業を残していることを、ある意味では金利が余りに低過ぎるからそういう構造改革を遅らせているんじゃないのか。財政の公共事業をあれだけどんどん出したことに伴って構造改革を遅らせたという、異常なる低金利がそうさせている。こういう要素というのは私はないのかなと。  だから、構造改革を進めていく過程の中で、どうしてもその量的緩和だとか、どうしても金利を下げなきゃいかぬというのはあるんだけれども、先にその方だけ進めていって構造改革は全然進んでいないじゃないか、そんな思いを持っているんですが、総裁、どのようにお考えでしょうか。
  64. 速水優

    参考人速水優君) 今おっしゃるように、もう競争力のないもの、あるいはない機械設備、工場といったようなものが残っているから生産性は少しずつ落ちていくし、競争力はなくなるしと。それにもかかわらず、そういうものを捨てて新しいものを求めようとしないというところに日本の改革すべき古い構造が残っていると言わざるを得ないと思うんです。  私どもはいつも、超低金利を継続するにつきましては、私ども自身もこれは早く正常化したいと思っておるわけですけれども、今申し上げたように、構造改革の方が進んでいかないと、金融だけ先行してもできるものではないと思います。先般、この二月の末に、年度末を控えて改革を更に推進さして、かなり思い切ったことをやって、期末もようやく潤沢な資金で越えることができたんだと思いますけれども、そのときに私どもが発表いたしました新しい、政策と同時に発表いたしましたこのステートメントの中でそのことはもう一度言わしていただいたんですが、これは生意気なようですけれども日本銀行の思い切った金融緩和経済全体に浸透していくためには、迅速な不良債権処理を通じて金融システムの強化・安定を図るとともに、税制改革、公的金融の見直し、規制の緩和・撤廃等によって経済産業面の構造改革を進めることが前提となる。この点について、政府及び金融機関を始めとする民間部門の一段と強力かつ果断な取組を強く期待したいということを、生意気だけれども言わせていただいているんです。  これ、金融だけ先に走っても、おっしゃるように経済成長していかないと思います。やっぱり民間の需要を引き出すためには、今言われたような民間の現状、構造が改革されていって、リスクを取っても新しいことをやっていこうというような企業家、そしてまたそういうものを、需要を新しい消費者の立場で開拓していくといったような家計、そういうものが動いていかないと経済というのは伸びていかない。経済が伸びていかないと物価は上がっていかない、需要が伸びていかないと物価は上がっていかないと思います。  そういうことから、先に金を、とにかく年度末を過ぎていくためにはこれだけの資金を潤沢に出していかないと、短期市場金利でもいろいろ金融機関流動性の欠如が起こったりするようなことが予想されていましたので、資金は量的金融緩和を一層進めましたけれども、そのときに、本当の経済成長というのは、こういったものが動き始めてこの成長はできるんであって、それまでの下支えを金融緩和という形でやっているんだというふうに理解しております。
  65. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 時間がもうなくなってまいりましたので、これを最後にしたいと思いますが、いわゆる特別検査の結果が十二日に発表される、こうなっております。  巷間、いろいろ問題企業だなというふうにおぼしきところ、これは恐らく個別企業名は出ないんだろうと思いますし、この銀行名も出ないんだろうと思いますが、中にはデット・エクイティー・スワップを随分やっておるんですね。このデット・エクイティー・スワップは、これは株価をどういうふうに、そのデット・エクイティー・スワップで発行した銀行の株はどういう評価になるんですか。これはもう定まっているんですか、この評価の方法について。  つまり、これも恐らく、私もちょっとうわさで聞くと、公認会計士協会が現在何かデット・エクイティー・スワップの位置付けをめぐっていろいろ議論があるやに聞いております。アメリカの場合は時価方式でいくとか、デラウェアという州の法律がそうでございますが、そういったことについてどういうふうに、これは金融庁に聞かなきゃいけないんだろうと思いますが、なるんだろうかと。もう多分、十二日に発表になりますよということだから、そのデット・エクイティー・スワップの位置付けも、評価の仕方も恐らく出てくるんだろうと思いますが、それはどうなっておりましょうか。
  66. 村田吉隆

    ○副大臣(村田吉隆君) 御指摘のように、銀行がデット・エクイティー・スワップによりまして保有する株式の評価でございますけれども、資産の処分とか債権放棄とか減増資等を含めた企業の再建計画、この内容が踏まえられて決まっていくということでございますが、まずは、市場価格がある場合には当該市場価格によって評価されるということでございますが、市場価格が存在しない場合、こういう場合には、当該株式について生ずるインカムゲインあるいはキャピタルゲインなどの将来のキャッシュフローの割引現在価値というものを算定しまして決まってくると、こういうことでございます。  いずれにしましても、銀行がデット・エクイティー・スワップによって保有する株式は、具体的な再建計画の内容を踏まえた上で、当該の銀行によって公正妥当な会計基準によって算定されると、こういうふうに考えております。債権放棄がある場合には、債権放棄された後の価値を反映してくるということでございますし、いずれにしても、市場価格によって算定されるということでございます。
  67. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 まあいいでしょう。終わります。後でまたやりましょう。
  68. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 今日は金融問題ということでありますが、塩川財務大臣にも予算委員会開催している際に御出席いただいて、まず敬意を表したいと思います。  幾つか聞いてみたいと思うんですが、私の基本的な考え方といいますか、当委員会で何度も質問に立ってまいりましたけれども、私の基本的なスタンスというのは、小泉総理の、いわゆる小泉改革と言われておりますけれども、これは是非成功させたいというのが基本であります。今まで幾つもの内閣が改革を掲げながら、なかなか実態的に前に進めなかった。それを、聖域なきという言い方がされてきましたけれども、今までにない手法でチャレンジしているのが私は小泉内閣だというふうに評価を基本的にはしているわけであります。  しかし、この内閣が成功してほしいということで考えますと、私はずっと二つアキレス腱があると言ってまいりました。  一つは、外務大臣だと。この問題は一応区切りが付いて、しかし、その反動で支持率は落ちているわけであります。その後に続いた各種の不祥事、これはすべて小泉さんの責任ばかりとは限らないわけですけれども、当然返り血を浴びるわけでありまして、最近の支持率を私は大変心配をしているわけであります。ですから、これからが小泉改革の言わば真価を問われる本番である、私は個人的にはそう思っておりまして、頑張ってほしいという気持ちであります。  もう一つアキレス腱があると言ってまいりましたのは、景気でございます。  デフレ下の改革というのが難しいというのは、これはもう初めから分かっているわけでありますから、私は一貫して、改革を進めるためにも経済に対する配慮、対策というのは並行して取るべきである、そう言い続けてきたわけでありまして、この前の質疑のときも申し上げましたけれどもデフレを阻止するというところまでは政策転換といいますか踏み込みがあったというふうに評価をしております。  せっかくそこまで踏み込んだんですから、私はこれからが勝負だという中で、やはり少し明るさが見えてきた。先ほど日銀総裁のお話でも、底を打つというのが見えてきたというよりも、そういう兆しが出てきたという感じは言っておられるわけでありますが、そういうときであるだけに、この問題、もう一歩踏み込んでほしいというのが基本的な私の願いであるわけです。  その場合に、じゃ、金融政策でどれだけできるか。これはもうずっと言われてきまして、塩川大臣には少しきつい言葉でおしかりいただいたような経過もありました。金融にばかりしわを寄せないで財政でもっと頑張りなさいということを私は申し上げてきたつもりでありまして、今日の日銀総裁の御答弁でも、実質的にこれはインフレターゲットの、山下委員からのお話に対しても、そういうお言葉は使われませんけれども、しかし、物価上昇率というものをゼロないしそれ以上に安定的にしていくんだ、そのための量的緩和政策というのはやっているんだということでありまして、私も、それをお始めになったときに、それこそ実質的なインフレターゲット政策に近いものであって、よく踏み込まれたという評価をした記憶がございます。ですから、金融政策では大いに頑張っておられるというふうに思うわけです。  もう一つずっと日銀総裁にも申し上げてまいりましたのは、ゼロ金利が長過ぎて、これがもう本当にいろいろなひずみを生んでおりますし、ここのところはもう早く機会をとらえて離脱してくださいということも申し上げてまいりました。  そういうことも含めて、今の金融政策については、私は評価もしているし期待もしているわけでありますけれども、今日は金融問題ですから、最初の一問だけ日銀総裁に、今後の金融政策について所信を短くて結構でございますから伺いたいと思います。
  69. 速水優

    参考人速水優君) ゼロ金利というのはいつまでも続けるのかというお考えは、私どもも全くそのとおりだと思っておりまして、先ほども申し上げましたように、構造改革動き始めて、構造改革なくして経済成長なしと小泉さんが言っておられるのを、私も全く同感でありますし、経済成長なくしてデフレの解消はないと私は思っております。  そういうことを前提にして、これから何をどうやって金融政策を進めていくのかということでございますが、この間の二月の末に決めました追加的な量的緩和、これも随分思い切った番組、プログラムであったと思います。我ながらそう思っております。しかし、そのかなり影響もあって、期末は余り波が立たないで、そのほかにもいろいろ要因はあったと思いますけれども、私どもは二十七兆の当座預金という今までのピークに近い資金の供給をやったわけで、そういうもので特別の大きな破綻もなしに過ぎたわけでございます。  これから先、この四月、何をやっていくかということは、これは海外の情勢、そしてまた国内先ほど構造改革等の、あるいは租税の改革も来年度になるんだと思いますけれども、小泉政権のもろもろの政策、特に活性化ということを、最近の諮問会議はそれを問題にして議論が進められておるわけですけれども、早く民間の経済体制、経済が活性化していかないと景気が良くなっていかないと思うんですね。お金だけ出しても景気は良くなるものではないと思うんです。そういう動きを見た上で、これからまだまだ小さいことではやれることはあると思うんです。今ここで何を本当に考えているのかと言われてもお答えはできませんけれども、全行挙げていろいろ知恵を絞ってこれからの難しい情勢を乗り越えていきたいというふうに思っております。  先ほどゼロ金利、幾ら続けてもしようがないじゃないかとおっしゃっておりました。確かに、現在の金融緩和というのは、長引く超低金利家計や利子の収入が減ってきますし、年金なども機関投資家の運用難とか、あるいは構造調整の阻害などが副作用として指摘されておるわけで、そういう面もありますけれども、やはり機関投資家の運用環境とか家計の収入を改善させていくためには、まず経済活動全体を活発化させて、それに応じて金利収入や賃金が増加するような状態を実現する必要があると思います。  金融緩和には景気を下支えして構造改革を促していくという側面があるわけで、私ども金融緩和、こうした経済活動の活発化を目指して粘り強く実施していることを御理解いただきたいと思います。
  70. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 それでは、財務大臣、お願いいたしますが、新聞で読んだことでありますけれども、二〇〇三年度の予算編成に関して、小泉首相は国債発行枠三十兆円にはこだわらないという発言をしたと報じられておりますけれども、これはそうなんでしょうか。真意はどういうことなんでしょうか。
  71. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) どうも、私は直接聞いたわけじゃございませんけれども、小泉総理は、財政の節度の守り方というものにはいろいろある、あながち三十兆だけの問題ではなくして、全体にわたる予算の、予算というか財政の緊縮を図りつつ、より活性化できる方途を考えていくべきであるということは我々にも言っておりました。けれども、そのことはちょっと誤解があって、まず三十兆円枠を撤廃して考えろというところに飛躍しておると、こういう意味ではないということでございまして、場合によったら急施しなければならぬ対策があるとするならば、それが有効に生かされるということであればこだわる必要はないではないか、そういう意味における発言であったと、こう思っております。
  72. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 その趣旨は私も賛成なんですね。ただ、二〇〇三年度からそういう考えに変わるというのがちょっと私は解せないのでありまして、二〇〇三年度にはそれほど三十兆円枠こだわらずに弾力的にいこうやということであれば、もっと弾力的にいく必要があったのは二〇〇二年度であり、あるいはそれ以前の補正の段階での話であり、あるいはもっと言えばこれからの補正の、やるやらないは別にいたしまして、補正をやるとすれば、要するに今の時点でより必要な考え方ではないんでしょうか。なぜ二〇〇三年度なんでしょうか。
  73. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは、実はまだ予算の執行につきましても、随分とそれが経済効果にあるいはまた構造改革に直接的に作用しておるということはまだ十分でないと思っております。まだこれからだと思っております。  したがって、第一次、第二次補正を十三年度でやりました。この予算の執行をもっともっと急いで執行していくべきであるし、十四年度予算だってまだ配分も終わっていないという状況でございますから、早急に配分してこれを実施してもらうことが必要だと。  一つだけ例を申しますと、昨年の十二月でございましたが、第二次補正予算を出させてもらいました。その第二次補正予算の中に次世代、いわゆる第三世代と申しましょうか、いわゆる携帯電話等を中心にいたします情報機器の世代開発機構でございますが、これが三百九億付けましたんですが、三百八億でしたか、これがやっと、やっと今回日の目を見まして、昨日、新聞で大きく報道されましたように、大手電機メーカー七社が共同開発しようということで、世界に対して対抗手段を講じるという、国際競争力に乗り出していったわけですね。  こういう改革が実はしてほしかったんです。それがぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ民間やっておって何にもやっていなかった。やっとこれがそのような気配ができてまいりました。これからどんどんと予算を使って、第一次、第二次予算でそういうようなものを実現化していってほしいと。そうでないと、何ぼしこを踏んでみたって、金融財政だと言ってみたって日本経済は良くなりませんので、私は民間の経済人にその自覚をもっと促したい。そのためには、日本経済大丈夫ですよということの、そして明るい展望、必要であれば、幾らでも必要なところには予算的な措置あるいは税制的な措置を講じるという姿勢を民間に示すことが大事だ、旧習にいたずらに墨守しておったんじゃだめだと、そういうことを私は申し上げておるのでございまして、これが夏以降必ず財界はそれにこたえていい状況に持っていってくると思っております。
  74. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 財政が果たす役割というのは、これは非常に限られているわけで、おっしゃるように民間の活力といいますか、やる気を引っ張り出す、ですからポンププライミングポリシーであり、スティミュレーティングポリシーだと思うんですね。  だけれども、私、ずっと言ってきたんですけれども、民間がなぜそういう気持ちにならないか、あるいはかなりの金融資産を持ちながら使う気持ちにならないか。それはやっぱり、これから先に対する見通しの不透明さ、これはもう長期で老後まで含めた話にもなりますけれども、しかしそれ以前に、これからどうなるか、これから良くなるぞという、そういう展望が出てくればこれは変わってくると思うんですね。その展望を作り出すのが、これが財政であり金融である、それが正に政策であるというふうに思うんです、釈迦に説法ですけれども。  三十兆枠というのをこだわるなと私は言い続けてきているわけですが、そう言いますと、すぐそれじゃまた公共事業の垂れ流しかという話になるわけですが、決してそうじゃないわけで、三十兆という国債は、これ二十兆以上が赤字国債でしょう、言ってみれば。つまり、公共投資のための国債発行、もちろんそれはもう全額そうなっていますけれども、それ以外の部分が多いわけですから、私が言いたいことは、政府財政のスタンスですよね。つまり、これから政府景気を明るくするために、拡大するためにこういうスタンスを取るぞという、そういうメッセージというのが大変大事だというふうに思うわけで、それで、支出する材料がないじゃないかという話は、今、大臣自身もおっしゃられたとおり、いろいろ工夫すればあるわけですね。  例えば、私は、公共事業についても、私の選挙区である埼玉県、まだまだ通勤地獄ですし、道路整備はできておりませんし、ここにお金をつぎ込めば、これは随分生産性が上がるよというところはたくさんありますよ。だから、公共事業も、それ自体が駄目だという話はちっともないわけでして、必要なところに必要な配分をするというシステムを作る、それが構造改革だと思うんですけれども。  ですから、そういうこともやる。さらには、何というんですか、購買力を方々に付けていくための政府支出というのもあるわけで、例えば、社会福祉制度もそうですし、労働保障制度といいますか、ですから、そういう公共投資だけじゃなくて、この国債発行そのものがもう別に四条国債だけじゃなくなっているわけですから、そういう全般の政府の支出に対するスタンスというんですか、これを私は改めることが財政の大きな役割であり、今必要なことである、そういうことを言っているんですけれども、その点についての御所見を伺いたいと思います。
  75. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 公共事業のお話でございまして、正に私たちも賛成でございます。即効性があり、そしてまたそれがどうしても社会の活性化、経済の振興に役立つものであれば支出にはいとうところがないと思っております。  私は、それと同時に、今は日本の科学技術についても相当進んでおりまして、それらの研究開発は、産学官といって、大学等を中心にいたしましてベンチャーの発信をやっております。これをもっとキャッチする側、つまり企業側がそれをしっかりと受け止めてそれを産業化してくれる必要があると思っております。  ベンチャーにいたしましても、昨年度、一昨年度でございますが、二百件ほどございましたし、今年で三百件ちょっとございましたが、これを、アメリカ等はもう三千件、四千件というものがベンチャー化して、失敗もあればまた成功しているのもあります。日本は、そういうところがみんな後っ引きになってしまって、リスクリスクで、もうとにかく手を出さない、この気風が産業界に漂っておった。ここが不景気の、景気回復しない最大の原因だったんです。それが最近、経営者もどんどん変わってまいりまして、もっと積極的にやっていこうという気配が各企業に出てまいりましたので、これが私は変わってくると思うんです。  現に、金融一つ見ましても、この四月一日からすっかり役員は変わりましたですね。そういう人はどうしたかといいますと、各銀行はそれぞれ今までの営業の組織をすっかり変えたじゃありませんか。このことがやっぱり大事なんでして、いたずらに後ろを向いて過去を振り返ってもうぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ心配事ばかり言っているんじゃなくて、前向きでやってほしいと、こう思っております。  私は、銀行も新しいシステムを構築する時代に来た、それはもうもっと積極的にやってもらわな困るが、やっぱりちっちゃいことにこだわって自分の銀行を守っていこうという、そういう体制に固執しておる、それがやっぱり再編成が遅れ、営業の新しい展開が遅れておる最大の原因だと思っております。
  76. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大臣のおっしゃることは一つ一つ反対ではありません。ただ、今は財政の問題で考え方を申し上げているわけですが、例えば社会福祉施設なんかでも整備しなきゃならないのはたくさんあるんですね。それから、要するに従来型の公共事業じゃなくてやれるものはたくさんある。まあ確かに今度、都市再生事業というんですか、これは私はいいと思うんですよ、観点は。しかし、そういうものを打ち出しながら、結果として対前年一〇%削りましたという話の方が先に出ちゃう。それがマーケットに対してどういうインパクトを与えているかという問題ですから、何も何十兆を追加しろというような話ではなくて、政府もできるだけのことをやるからみんなもやれよという、そういう打って出るような、そういう感じを是非出していっていただきたいということを申し上げたいわけであります。  最後に、与党がデフレ緊急対策というのをまとめて昨日かおとといか発表しておりますが、その中の二項目についてちょっと御意見承りたいんですが、贈与税の拡大ということが入っております。特に住宅取得に関する贈与税の拡大。  私もここの委員会で思い付く限りの税制による誘導策ということの中で御提案を申し上げた経緯がありますけれども、贈与税だけを拡大するという考え方じゃなくて、相続税と贈与税をワンセットで考える。これは諸外国の制度にあると事務方の御説明で聞きましたけれども、先取りするんですね、この贈与税。それを相続が現実に発生したときには通算をする。だから、先取りするのは、控除も先取りするわけですから、基礎控除五千万ぐらいありますね。だから、息子が早めに嫁さんもらうから家を建ててやりたいというときは二千万か三千万は先取りをしちゃう、そして生前贈与してしまう、そのときに控除も先取りをする。その代わり、相続が起きたときには、幾ら生前贈与して、そして幾ら相続が起きた、トータルでこの相続税の問題を一括最終調整をするというような組合せで考えれば、現実に今お金を使ってもらうというのは大事なことですから、そういう観点からすれば考えられる制度の仕組みではないかなというふうに思いますが、いかがでございますか。
  77. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私もその説に賛成でございまして、私は、実は去年の九月に贈与税を六千万円までいいんじゃないかという意見を発表しましたら、えらい非難を受けまして、金持ち優遇だとかいって、そんなつまらぬ人間から反対が出ました。これは全く誤解でございました。  ところで、そのときに非常に聞くべき意見が一つございました。それは弁護士会から私の方に意見が来ました。というのは、相続財産がそんなに一人の人にシフトしてどんと渡してしまって、あとの財産、残った財産の分与が均等割になりますね、相続人平等に、そのとき、非常に少ないと、これは非常に不公平で相続人平等分配の原則に反するじゃないか、それはどうするんだと、こういう意見がございました。  であるから、その弁護士さんに私聞いた。それじゃどうしたらいいんですかと言ったら、親が相続財産を、一定の部分をこういう特定の者に贈与するよということの協議を相続権者の中であらかじめやっておく必要があるんじゃないかと、それをできるような法律はやっぱり必要なんじゃないかと、こういうことを言いまして、私は、なるほどな、もっともな意見だなと思うて、それ以降、六千万円、その贈与説を引き下げたんです。しかし、今、先生がおっしゃるように、私はその思想は全くそうなんです、同じなんです。  今、もう八十のよぼよぼのじいさんがうんと金持っていますから、そして息子はせっせと一生懸命やって、おやじ死んだときにもう子供も老人になっちゃっている。そういう財産の分与方法はどうだろう。それよりも若いときに親が財産を譲って、親は年金があるんですから年金で十分生活できるし、若い者が親から受けた財産で生々はつらつと活躍していく体制を取ったらいいんじゃないかと思っております。  そのためには、今住宅住宅と言っていますけれども、これも古い考えでして、昔から住宅言ってますが、もう既に住宅の事情は変わっていますよ。今、若い人は五千数百万円まで公的金融受けられるそうですね。そうしますと、今マンションも六千万円とか七千万出したらもう立派なものございますから、これはもう自分の力でいけるんです。ですから、相続をするのにただ住宅だけじゃなくて、一般財産全体を考えたらいいんじゃないかと、私はそう思うておるんです。  どうぞ是非、一番進歩しておる浜田先生、財産は何も住宅なんかじゃない、全財産について贈与を考えるということを考えていただいたらどうですか。
  78. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大いに結構な御提案でありまして。  だから要するに、金持ち優遇かどうかというのは、正にその相続税全体を、現実に相続が起きたときに、累積なりなんなりということで生前贈与の分を調整すれば、そういう批判は免れるわけでありますし、住宅に限らずそれがやれるということであれば、それは私は大いに結構だと思いますから、是非御検討いただきたいと思います。  最後にもう一つだけ。結局、土地が下げ止まって、株が下げ止まって、そこからですよ。だから早く、株は下げ止まったのかどうか、そこで私は、まだ不安の要因があるから、この際思い切って株式の譲渡課税は時限的でいいですから非課税にしたらどうかという御提案をこの間申し上げました。  この与党の今回の提案の中にも、土地の取引に関して、土地取引を活発化させるためにいろいろな制度を工夫して、税制上流動化を図ったらどうかという提案がございます。この点について最後に御所見を伺って、質問を終わります。
  79. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 土地、不動産の税制、これはもう御存じのように、浜田先生が自民党におったときからもうこれの闘士やった仲やないですか。この論争はもう数十年続いておるんですね。そして、そのたびごとにやっておりますが、これはむしろ朝令暮改に終わっておるようなのが多いと思うんです。  今、土地について考えますと、移転について税の優遇措置を講じてそして活発化するのか、あるいは利用する者に対するインセンティブを与えて利用を活性化するなり、いろいろあります。この方向性が、そのときそのときによってこないなったような、犬の散歩みたいにこう変わっちゃうんですね。これがやっぱり、しっかりと政治家が土地に対する、不動産に対する認識を決めてくれないかぬと思うんですね。そのたびごとに税制があっちこっちへもう振り回されているということではいかぬと。私は、今もう若い人の意見聞きますと、あえて不動産を所有しようなんて考えないで、利用することを考えております。特に定期借地権というような制度ができましたので、逆に安定した賃借契約を結べると。そうとするならば、賃借関係に思い切ったインセンティブを与えてもいいんじゃないかと、そういうことも考えられると思うんです。  ですから、今非常に大事なことは、土地の流動化、そしてこれの安定措置を図るために、根本的に、不動産というものをどう見るか、ただ財産として見るのか、そうじゃなくして経済的、要するに素材として見るのか、そこらのことからしっかりとひとつ御検討していただきたいと、こう思うております。
  80. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) ちょっと速記を止めてください。    〔速記中止〕
  81. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 速記を起こしてください。
  82. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸です。  日銀総裁、まず伺いますが、金融政策目標金利から量に変えて、量的緩和政策に踏み切ってちょうど一年になるわけなんですが、その結果、日銀から出すお金、これについてはマネタリーベースというんですか、これはぐんぐん伸びたと。この二月で対前年比二七・五%、三割近く伸びているんですね。ところが、民間銀行貸出しは減り続けて、大体前年比五%から七%減、このようになっています。  何でこうなったかということも論議したいんですが、それをやり出すと、それを最初にやると、延々それで終わってしまいそうなんで、それを取りあえず置いておきまして、原因はともかくとして、そもそも量的緩和政策を取った目的というのは、少なくともそういったマネーサプライが潤沢に供給されることを目的としてやったんだと思うんですね。しかし、実際はそうなっていない。その点では的外れに終わったというふうに言えるんじゃないかと思うんですけれども総裁は、日銀報告の概要説明で、日本銀行金融緩和金融市場の安定を確保することを通じて景気の底割れを防ぐという点で大きな役割を果たしたと言っているんですね。何を根拠にこんなことを言えるのかということを私は不思議に思うんですけれども。  しかし、こういう認識から始まるんじゃなしに、今申し上げましたように、ともかく最初に目的としたこと、そのこと自身が達成されなかったんだということをまず認識することから出発しなけりゃならぬのだろうと私は思うんですね。そういう点で、そうは言っても、やっぱり結論は金融緩和続けるんだ、今日も午前中にそういうことをまた改めて決められました。そうしたら、これ以上の量的緩和がどういったプロセスで民間資金の、民間銀行貸出しを増やしていくと、活性化していくということにつながっていくのか、そのプロセスについてまず伺いたいと思います。
  83. 速水優

    参考人速水優君) 先ほど申し上げたように、我々は思い切った金融緩和をやったわけで、金融市場に強力な緩和効果をもたらしたと思っております。景気の底割れを防いでいると思います。今後とも、デフレ克服する断固たる決意の下で、金融市場の安定確保と緩和効果の浸透に全力を挙げていくつもりでございます。  ただ、金融緩和効果経済全体に浸透していくためには、金融システムの強化・安定を図るとともに、経済産業面での構造改革が進んで、民間の需要が引き出されてくるということが不可欠であるというふうに思っております。
  84. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 あと、民間需要の問題について、結論的にはそこへ私も持っていきたいと思っておるんですが、おいおいその論議に入っていきたいと思うんですけれども、今申し上げましたように、量的緩和が何で民間銀行の貸出しを増やすということに、そのプロセスが全然分からぬのですよ。実際、この一年間やってきてそうならなかったわけです。民間銀行の貸出し、逆に減っているんですね。にもかかわらず続けると言うんですよ。それをもう一回繰り返すとまた同じことの答弁でしょうから聞きませんけれども、結局お答えないんですよね。これ、事前にいろいろと日銀の方にもおいでいただいてお伺いしたんだけれども、結局答えがない。  やることはといえば、この内容について入っていくんですけれども、二月末の政策決定会合では、長期国債の買入れ額、月一兆円増額したというわけですね。一体この一兆円というのはなぜなんだと、どこにその一兆円の根拠があるんだということなんですが、いろいろ伺ってもよく分からぬ。結局はこれ、塩川財務大臣が閣議の後で、二月の末ごろですか、二月の下旬、要するに日銀に対して、月一兆円ベースの買いオペを申し入れるということを言っておられたんですけれども、結局、政府の要求をそのまま受け入れたと、それが一兆円だというふうに理解していいですか。
  85. 速水優

    参考人速水優君) 塩川大臣が一兆円とおっしゃった、どこでおっしゃったのか私は知りません。新聞などではそういうことが書かれておりますけれども、私に向かって一兆円にしろというようなことはおっしゃっていません。  私どもは、自分たちで二月末のあれだけ大きな緩和措置、量的緩和措置を取って、その機会に、八千億、二月まで八千億であったものをこの際一兆円に増やそうかということで決定会合で決めて、一連のこの量的緩和策の一つに入れたわけでございます。  長期国債の買入れにつきましては、日銀当座預金を円滑に供給する上で必要と判断される場合に、銀行券の残高という一つの歯止めを設けておいて、それにぶつかるまでは増額していってもいいということにしてあるわけでございます。  二月末には買い切り額八千億から一兆円に増額して、三月から既に実行に移しております。これは、年度末に向けて大量の資金供給を行う必要が予想されたこと、さらに、期明け後の当座預金需要動向がまだ不確実であるということを踏まえまして、円滑な資金供給を行っていく、図る観点から実施したものであります。  特に、塩川財務大臣に言われたからこれを実行したというものでないことは私からはっきり申しておきたいと思います。
  86. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 政府の圧力を受けたんじゃないんだということなんですが、一兆円という根拠についてはよう分からぬですよ、やっぱり。それまで八千億だったのが、増やすとしたら一兆円というふうな感じで、何かよく分かりません。  それで、これ、竹中経済財政担当大臣には後で、いろいろ論議した中で伺いたいと思っておったんですけれども、今、流れでお伺いしたいんですが、この一兆円というのは閣議後の記者会見で財務大臣が言われたことなんですけれども、閣議でこういった何か、日銀に一兆円の要求していこうやないかというふうな話があったんですか。
  87. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 閣議でそういった日本銀行政策について議論したことは今回もございませんし、過去にも私が知る限りでは全くなかったというふうに申し上げたいと思います。
  88. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、この一兆円の問題なんですけれども日銀は今年に入って買いオペの対象を発行後、それまでは発行後一年未満のものは買いませんと、発行後一年以上のものを買いオペの対象にしていたわけですね。それを、発行後二か月、場合によっては一か月のものでも買入れ対象にするというふうにしたんですね。これは結局、月間一兆円買おうと思えば、買いオペやろうと思えば、発行後一年以上たったものに限定していたんではとても買えないと、玉が足りないといったところでこういう操作をしたんですか。そういうふうに理解していいですね。
  89. 速水優

    参考人速水優君) 考え方としては、引受けでなくて市場から買うということでございますので、今までいわゆる一年ルールというのがありましたのは、長期国債を買入れに際して日本銀行は実質的な引受けをやっているんじゃないということで一年という、一年経過分を対象とするということにしていたわけです。  これまではそうでしたけれども、最近の市場動きを見ておりますと、発行して売買が行われるのは、発行した直後が一番多くて、後は、後の方は大体みんな固定的にお持ちになるんですね。そういう市場の変化あるいは投資家の変化を見た上で、私どもは、発行後一年を超える銘柄を変えまして、国債の入札直後から市場で売買が活発になっておりますので、発行直後の二銘柄、発行直後二回分を買わないで、その後の分、二回たってから後であれば、もうそれを買っていくと。買入れの対象の拡大という意味になるかもしれませんけれども、国債市場の整備状況を踏まえまして講じた技術的な措置だというふうにお考えいただきたいと思います。別にこれで引受けに近づいたというものではございません。
  90. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私の質問を先取りして答えていただいたわけですが、私はやっぱり直接引受けに限りなく近づいていっているんだと思うんですよ。月一兆円も買おうということになれば、今総裁がおっしゃったように、発行後一年以上たったものについては安定しておってなかなか市場に出てこないと、買いオペできないということですよね。だから、この二期ということは、二回入札ということは、一か月後でもできるわけですね、半月に一回やるわけですからね。これはもう限りなく直接引受けに近いじゃないですかと。私はこれ、日銀の自殺行為を、だんだん自殺行為に近づきつつあるんじゃないかなというふうに、私は強くこのことについては感じておるということを申し上げておきたいと思うんですね。  それで、時間が非常に短いものですから、できるだけ端的にお答えいただきたいというふうに思うんですけれども量的緩和のその内容も、当座預金、預金残高五兆円を更に十兆円、十五兆円というふうに増やしていかれたわけなんですけれども、要するに、年度末には残高目標にかかわらず幾らでも資金供給を行うということまでやったわけです。結局、こうした日銀の量的緩和政策、これ見ていくんですけれども日銀がこの供給した資金、どうなったのかと。  最初に申し上げましたように、なかなかマネーサプライ、下まで行ってないんですよ。どこに行ったんだと。これは資料をいただきました。銀行にとどまっている、銀行の国債はどんどん増えていると、こういうことなんですね。そうすると、政府と、それから銀行と、それから国債という形でぐるぐる回っておって、もういわゆる実体経済の中では役立っていないんですよ。だから、こういった量的緩和というのは、もうこれ以上続けることにどれだけの意味があるんだ、意味ないじゃないか、むしろ弊害の方が私は多く出ていくというふうに考えているんですよ。  だから、量的緩和続けるとおっしゃるんですけれども、その量的緩和続ける意味とさっきも伺ったけれども、結局明確なお答えはないんですよ。これはもう日銀が、デフレ対策だとかなんとか言って金融のレベルで考えても、あるいはもう何もできないんだということを今の時点で明確にすべきことじゃないのかと。金融の出番じゃないんだということをはっきりさせることこそが日銀総裁としては私は今一番大事なんじゃないかというふうに思っておるんですけれども、余り長くならない形でお答えいただきたい。
  91. 速水優

    参考人速水優君) それは、現状においてなし得る緩和政策として今取っているんであって、金融緩和効果が銀行部門の外側に浸透していくことを制約している要因があるわけです。  例えば、不良債権問題を背景にした信用仲介システムの機能が低下してしまっているというふうなこととか、企業投資意欲が低下しているとか、あるいは家計の将来に対する不安があるといったような点があるわけで、これを克服していくためには、迅速な不良債権整理などを通じて金融システムの強化を図っていくこと、あるいは税制改革や規制の緩和・撤廃などをやって構造改革を進めて企業家計の前向きな需要を作り出していくということの方が、金が先に出ていってもなかなか物価が上がっていったりするようなことにはならないということを私ども考えております。
  92. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 その結論のところは私も同じなんですよ。むしろ私は、そこのところをまず大事にしていかなけりゃいかぬと考えておるんです。  ですから、日銀がせっせせっせ資金を供給するんだけれども、銀行にとどまっているんだと。今言われたように、何といいますか、不良債権等があるから銀行が大胆に金貸さなくなるんだというお考えのようですけれども、それよりもやっぱり一番の原因は資金需要がないんですよ、企業に。そこに一番の問題があるんだろうと思うんです。  実際、中小企業レベルで見れば、これはもう何度も論議しましたけれども、柳澤大臣いらっしゃいますけれども、我々、信金、信組をどんどんどんどんつぶすようなことをやっていくからむしろ不良債権が増えていっているということで何度も言ってきました。少なくとも銀行レベルで見れば、これだけ資金がじゃぶじゃぶに供給されているにもかかわらず、中小企業に対しては貸し渋り、貸しはがしがやられている、金融引締めがやられているんですよね。そういう実態があるんです。こういう状況を改めていかなければ、今の状況は一向に良くならないだろうというふうに思います。  不良債権を処理しなければならないというようなことも言われました。しかし、デフレ対策として不良債権を処理する、これは本当に私はおかしいと思うんですよ。いつももう結論は不良債権の最終処理、早期最終処理ということになるんですけれども不良債権を処理するというのは、それは確かに必要なことであるけれども、今早期に急いで最終処理をするというやり方は何かというと、中小企業をつぶすということにしかならないんですから、これはあくまでもデフレを促進する要因にしかならないということだと思うんですね。  これ、この間の本会議でも私質問させていただいたんですけれども、今この不良債権は、処理しても処理しても逆に増えていっているという現実ありますね。三月と九月の間で見ても、全国の銀行ベースで見ると、処理した不良債権四兆七千億円、ところが不良債権総額は三兆一千億円増えて三十六兆八千億円に膨れ上がっているわけですね。これ、ともかく景気が良くならなければ不良債権は減らない、この現実をやっぱりしっかりと見詰めなければいかぬというふうに思うんです。  むしろ、日銀立場からすれば、この不良債権の処理を急げということを注文するんじゃなしに、前回の論議でもありましたけれども、浜田委員が言われたように、中小企業に対しては、もう契約を条件変更して、返済条件変更して、二年なり三年あるいは五年なり返済期間延長する、思い切ったそういうことをやることの方が今大事なんだ、日銀立場からすれば、不良債権の処理は急ぐなということをむしろ言う方が正しい立場じゃないかと私は思うんです。  先ほども答弁されましたので、これ以上言っても同じことの答弁になるでしょう。その点では、これは竹中大臣に伺いたいんですけれども、そういった考え方でむしろやっていかにゃいかぬ。日銀に対して金融緩和をもっと続けろ続けろというような、そういった政府政策というのは取るべきでないと私は思うんですが、いかがでしょう。
  93. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 直接的には、物価が下がるデフレ状況をどうするかということから今の議論が出てきているんだと思いますが、委員も御指摘になられたように、デフレ要因は幾つかありますけれども一つのやはり注目すべき問題は、マネーサプライが増えない。マネーサプライが増えない要因は何か。日銀は二七%の増加でハイパワードマネーを増やしているけれども、マネーサプライは三%しか増えない。  これは、とにかくマネーサプライが増える状況を作るということが政策上の目的でありましょうから、それに関して言うならば、これはやはりハイパワードマネーの増加がマネーサプライの増加につながるように、委員は反対かもしれませんが、不良債権をやはり処理する。同時に、日本銀行においても引き続きそういった状況をにらみながら金融緩和を続けていただいて、一層の努力をしていただいて、結果的に政府日銀の努力が相まってマネーサプライの増加が実現するような状況を作る。それがやはり私は必要であるというふうに思っております。  二月末のデフレ対応策というのは、そういった観点から、引き続き不良債権の処理と日本銀行の努力を期待する、政府日銀が一体となって問題を解決するという組立てになっております。
  94. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私もそのことを伺いたいと思っておったんですが、今言われたのは、要するにマネーサプライ、これ、マネーサプライを増やそうということでこの一年間量的緩和政策を取ってきた。逆の結果になったということを最初に申し上げました。そうでしょう。増えていないんですよ。銀行貸出しは逆に減っていっているんですよ。それが現実なんです。もう一年間やってきてそれは証明されたじゃないか。にもかかわらず、また同じことをおっしゃって、そのためには不良債権の処理だと、こういうふうにおっしゃるんですね。  それで、あなた方の出されたデフレ対応策ですけれども、その前に、デフレ問題についての論点整理ということを経済財政諮問会議でやられました。それを見ますと、要するに、デフレの定義というのは、政府の方としては、連続して物価が下がる状態だと、こういうふうに定義していますね。そういう意味でのデフレのことについて、その要因について言っているんですね、物価の下落要因。  一つが需給ギャップ拡大による物価の下落だと、そのとおり。供給サイドの要因が集中したことによる物価の下落、技術革新とか規制緩和等々ですね。もう一つは、マネーサプライと物価関係が不安定だと。それぞれの原因だと思うんです。二番目の問題でいえば、私は、プラザ合意後の円高の問題、これによる産業空洞化の問題がもう少し強調されてしかるべきだろうと思いますけれども、取りあえずこの要因として挙げておられるのは私も賛成です。  じゃ、こういう原因を挙げたのは正しかったと、それじゃということで、ここまでデフレ要因は論点整理をしながら、デフレ対策というので出てきたのを見ますと、これに対応したものがほとんどないですね。一番に挙がっているのは不良債権処理の促進なんです。これは三番目の言ってみればマネーサプライとの関係、この辺に関係してくるのか。一と二のことについては何もない。個人消費、どうやって拡大していくのか、ないですね、対策が。金融だけでやろうとするからこんなことになるんですよ、金融だけでやろうとするから。  なぜ、もうこれだけ要因挙げておられるんだったら、私が何を言わんとしていることはお分かりだと思うんですけれども、これじゃ何にもならぬでしょう。
  95. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) そもそも、経済政策全体のこれは組立ての問題を是非御認識いただきたいと思います。  経済実態をよくする、つまり経済の活性化こそが必要であるということは十分に認識しています。そのためには、経済の長期的な成長力を高めるという意味で、規制緩和も行わなければいけないし、民間にできることは民間に、民営化も行わなければいけない。そのことは昨年の骨太の方針以来ずっとやってきている。さらに、経済を活性化するための税制についての論議も、今、諮問会議、政府税調等々で進めている。そういった活性化が、この経済の活性化がすべての問題のベースであるというのが基本的な認識であり、私たちの政策のスタンスであります。  そうしたことは行ってきた。需要の問題につきましても、第二次補正予算において事業費四兆円を超える、真水約四兆円の需要追加を確保しています。その効果が今正に出てくるところでありますので、需要等々については一応の手当てがなされているというのが基本的な認識であります。  そうした中で、マネーサプライがなかなか増えないというその直接的な問題、これは金融問題であるということで、そのデフレ対応策には、その金融問題に、今回は金融問題を中心にしてその課された問題を解決していくということを示して、その上で、マネーサプライを増やすための、不良債権の処理、資産デフレ対策日本銀行への更なる努力の期待、そういうことを取りまとめさせていただいているわけです。したがって、需要政策経済活性化がないのではなくて、それはそもそも行っているし、正に税制の改革等でもそういうことを行っていると。特に第二次補正予算において需要が、常にその底割れを防ぐための需要が付けられているという点は是非御理解をいただきたいと思います。
  96. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 何かぐるぐるぐるぐる回って、肝心なところがまたすぽっと落ちたような気がするんですが。  要するに、金融だけじゃ駄目だということを私たちもよく分かっています、総合的な対策が必要なんですといいながら、結局は出してきたのは金融だけじゃないですか。しかも、構造改革だといっているやつについて言ってみても、構造改革何をやるかというと不良債権の最終処理ですよ。デフレ対策何をやるか、不良債権の最終処理。構造改革何をやるか、不良債権の最終処理。何でもそこへ来ちゃう。それしかないでしょう、言っていることが。  それで、短期の対策、長期の対策云々言われたけれども、じゃ、今の短期の問題で何をやるかということについてひとつ、どういう手を打つかということについて伺いたいんですが、これは非常に面白いのは、財務省財務総合政策研究所というところで、不良債権デフレの結果だという、そういうかなりの分析をやっておられるんですね。私読ませてもらいました。  なかなか面白くて、結論は要するに、過剰債務がデフレを引き起こす効果は、デフレが過剰債務を増大させる効果に比べれば無視できるものだ、過剰債務が景気を悪化させる効果は見出せなかったが、景気悪化が過剰債務を増大させる効果は明らかだったという形で言っているんですね。非常にかなり説得力のある分析だと思うんです。要するに、過剰債務、不良債権ですよね。これを回収するにはデフレを阻止することが最も効果的であるということで言っておられる。  じゃ、それをやるために何をやるかというところについては非常に大ざっぱで、それまでのかなり分析的なやつが、最後の段階になると、マクロ経済の基本にのっとった金融政策を進めることが重要だということで、かなり乱暴な、またマネーサプライを強化すればよろしいと、こういうことになるんですね、結論は。  これはもう私今日言いました。マネーサプライ増やせばいいんだという金融緩和が成功しなかった。今そのことはもう証明されているわけですから、この結論はともかくとして、要するに、過剰債務を解消するにはデフレを阻止することが先決なんだと、不良債権最終処理ということで銀行の帳簿をきれいにしようということから出発するんじゃ駄目なんだという、こういう分析については、これは竹中大臣は同感ですか。
  97. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 原田次長の論文は私も読ませていただいておりますし、非常に貴重な点を指摘していると思います。  不良債権問題と過剰債務問題というのをあえて一体と考えますと、過剰債務、不良債権問題を起こす要因デフレであると。しかし、デフレを起こす要因一つが過剰債務、不良債権の問題であるということは、理屈の上ではあり得るということを原田さんもちゃんと主張しておられたと思います。今、現実に起こっていることは、このデフレ不良債権問題の間で一種の悪循環があって、その悪循環を絶ちたいというのが私たちの思いです。  原田さんの分析は、そのどちらの方が大きいだろうかということを、大きいかどうかということではなくて、どういう関係があるだろうかということを一部計量的に見たものであります。ちょっとそれを読む限りは、非常に七つぐらいの変数の簡単な方程式で分析していらっしゃるようですので、厳密な因果関係の分析、これは大変技術的な話で恐縮でありますが、どちらが因果関係にあるかと、原因か結果であるかということを分析するには、グレンジャーのテストと言われるような非常に細かな分析をやらなければ結果は出てこないのでありますが、そこまではやっておられないのではないだろうかというふうに認識をしています。その一方についてはかなりはっきり分かると。その点は私も否定はいたしません。ただし、じゃデフレの原因は何なのかということに関して言うならば、ここは意見は分かれるということなのだと思います。  じゃ、デフレの原因は何なのかについて、例えばその原田次長の持論は何かというと、それはマネーサプライが少ないからだと。日銀はもっともっと出せというのが原田さんの持論でございまして、ここは池田先生と大分違う結論にやはりそこはなるんであると思いますが、だからそこはデフレ要因としては、私はやはり総合的に政策責任を預かる人間としては、やはり総合的に考えて、考えられるものをやはりすべてやっていかざるを得ないのだと思います。  不良債権、例えば需要が弱いということも確かに一つ要因でありますが、私たちの経済財政白書の分析によりますと、不良債権、過剰債務が存在したことによって、それが原因で九〇年代後半の民間設備投資は八%抑えられているというような結果も出ております。したがって、そこはやはり、需要は確かに重要でありますが、その不良債権問題というのはその原因にもなっている。その意味では、不良債権の問題、日銀政策、それと需要活性化のための、今正に税制の改革をするための議論をしておりますので、それらを是非組み合わせて解決していきたいというふうに思うわけであります。
  98. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 大事なところへ来ているんですが、要するにデフレの原因について、これは、先ほどデフレと債務、不良債権関係についてはまあいいですよね、原田さんの分析は。結論が原田さんの場合には、マネーサプライをもっと増やさなきゃいかぬのだと、デフレの原因がそこにあるからだと。確かにそうなんですね。これは私は間違いだと思うんですよ。  デフレの原因でだから先ほど確認したんです。政府の側、経済財政諮問会議でデフレ問題についての論点整理では三つに整理されておりますと。私もそれについては賛成だと申し上げた、基本的には。足りない部分はあるけれども、円高、空洞化の問題はあるけれども、基本的には賛成だと。あなたもその立場だと。そうすると、原田さんとの違いはそこに明確にあるんですよ。  だから、デフレ対策としては、マネーサプライだけ、それじゃ駄目なんですと。消費増やさなきゃいけません、個人消費拡大していかなきゃいけませんと、そういうことでしょう。中小企業をきちんとした形で経営安定化させなければいけませんということがあるんですよ、そうでしょう。  だから、不良債権の最終処理、まずこれをやるんですというところへ行くんじゃなしに、その不良債権を処理するためにはこれをやらなきゃいかぬのだと、個人消費と中小企業対策ですよ。そういうところに政策の中心を置かなければいけないと、私たちたびたびそのことを申し上げてきました。  ところが、税制も云々言っておられますけれども、税制についていえばむしろ我々と全く正反対、消費税を引き上げるというふうなことを検討している、しようというわけでしょう。我々は消費税を減税しなさいと、むしろ消費を拡大しようと思えば、そういう立場に立っているわけです。  だから、これだけやってきてもなおかつ今一番先にやることは不良債権の最終処理だと、そうおっしゃるんでしょう。そんなことをやっていたんじゃ駄目だということを再度強く申し上げて、ちょうど時間になりましたので、終わります。
  99. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 同じような質問になってしまっていますけれども、よろしくお願いをいたします。  平成十一年二月に初めてゼロ金利を採用してから以降、今日まで我が国は大変超低金利あるいは金融緩和政策が継続をされてまいりました。一昨年八月にいったんゼロ金利は解除されましたが、昨年三月、日銀当座預金残高を五兆円程度にするという金融緩和策が取られ、その後八月には当座預金残高を六兆円程度に引き上げる、九月には六兆円を上回ることを目標にいたしました。また、今年に入りましてからは、二月末には残高目標を十から十五兆円にするなど、我が国の金融は本当に一段と緩和をされてきました。  事実、当座預金残高は今年になってから八兆円を超えておりまして、資金の供給が十分に行われているということは示されています。しかし、銀行の貸出残高を見ますと、平成九年度以降連続して減少し続けています。企業資金需要がないと言われますが、一方で貸し渋りが起こっているとも言われています。企業資金を借りない、一方、銀行も余り貸したくないというのでは、資金が有効に使われなくて景気が良くなるはずはありませんけれども、これからの政策の重点は企業資金需要をいかにして引き出すかということだろうと思います。また、銀行が喜んで資金企業に供給できる仕組みというのがあるのかどうか、私にもよく分からないわけですけれども、どんな仕組みが有効なのかというようなことを真剣に考える必要があるんじゃないかと思います。  先ほど来、総裁も民間需要を引き出す努力は必要だと、こう言っているんですけれども、具体的に、じゃ、何をするのかということが全く示されないという状況でございますが、これらについてお示しをいただきたいと思います。
  100. 速水優

    参考人速水優君) 民間の需要を引き出す。民間の需要というのは企業家計が主でございますけれども、やっぱり企業にとっては、これはやってみたい、あるいは投資して新しい仕事をやってみたいといったような、そういう意欲が出てこないと、投資意欲というのはリスクがありますから出ないわけでしょうね。  そういう、民間が先行きをある程度安心して、これから競争激化していくんだから自分たちでもう一歩前進した新しい仕事を始めてみたいという意欲が出てくるというのは、やっぱりこれは金融だけでは無理な話であって、よく言われる構造改革と言われる、競争力本位で力のあるものが勝っていく、一歩前進したものが先に利益を出していくというような、こういう資本主義経済というものが長年続いてきた原理というものが生きていくんであって、また家計にとってはいろいろ自分たちの所得あるいは給与というものが何とか増えていくことが望ましいと思いますし、ためたお金が安心して使えるようになっていく経済社会というものができていくことが必要だと。そういったことを実現するのが今恐らく小泉総理の言っておられる構造改革というものではないかというふうに思います。そういうものが起こらないと、幾らお金を出してもそれが金融市場以外に流れ企業家計流れ込んでいかないということが、先ほどおっしゃったように、これまでの体験からしてもはっきりしていることだというふうに思います。  それがゆえに、私どもは、構造改革効果を上げ始めるまでかなりの時間も掛かるかもしれませんし、当面の痛みを伴うものであるかもしれませんけれども、中長期的に経済成長、安定的な経済成長をしていくためにはやはりそれはなくてならぬものであって、それを下支えする意味で、金融が先行するような形で資金を潤沢に出していると、底割れを防ぎ、必要な資金が調達できるようにしていくというようなことを私ども考えてやってきているんだというふうに御理解いただきたいと思います。
  101. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 おっしゃるところ、よく分かるんですね。  今まで資金流れなかった産業に、新たな産業資金流れていくようにするという、そうした産業構造そのものを変えていく努力というのはもちろん非常に大事だというふうに思っておりまして、それは政治の力でかなりやることができるというふうに思うのですけれども、今、現実的にはそうなっていない。  同じ政権がずっと継続して担当することによって、上手に産業構造そのものを転換することができない、予算の使い勝手を変えていくようなことが大胆にできないという、この極めて日本の政治の変わらなさがこのことを促さないことになっているんじゃなかろうかと、私などはそう強く思っているわけでございまして、ここを変えていくためにはやっぱり国民の決断も必要だなというふうに今思っているところでございます。  さて、今年の初め、二月あるいは三月危機というのがまことしやかに言われていましたけれども、その後、株価は持ち直しをいたしまして、危機説は今影を潜めました。もちろん、万が一のことを考えての日銀の潤沢な資金供給が危機を回避したというベース、そのベースにあったということはそのとおりだというふうに思いますけれども、その潤沢な資金供給を支えた背景にはオペ対象の種類の拡大や担保の種類の拡大などがあったと思われます。  これらの対策がどの程度の資金の供給を可能にしてきたのか、おおよその数字で示すことができれば示してほしいということが一点と、また、そうした種類の拡大によって新たな問題は生じてこなかったのか、その評価についてもお答えをいただきたいと思います。
  102. 増渕稔

    参考人増渕稔君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、一月それから三月と、国債買入れの対象銘柄の拡大、これは先ほど来御議論のありましたいわゆる一年ルールの見直しということでございますが、それから資金供給に当たっての適格担保の拡大を行いました。  適格担保の拡大の内容としては、いわゆる資産担保証券、ABCPの現先オペの対象としても適格化するとか、それからABCPを適格化するとか、それから住宅ローン債権、不動産を裏付けとするABSを担保の範囲に入れるとか、あるいは預金保険機構向け証書貸付債権及び交付税特会向け証書貸付債権の適格担保化といったことでございます。  ここは二つ効果があったと考えております。このようなことを行うという日本銀行の姿勢自体が、金融機関金融市場に安心感を与えるということがまずあったと思います。具体的にこれらのものが現実に担保として使われた金額それ自体はこれまでのところそれほど大きくはございませんが、限界的に相応に担保拡大の現実的な効果もあったと思います。それから、国債買入れの対象銘柄の拡大、これによりまして数十銘柄が新たに買入れ対象となったという効果もございました。  全部合わせまして、年度末に掛けての日本銀行資金供給力の強化、金融調節の円滑化といったことに貢献したと思います。年度末に掛けて当座預金の残高を非常に高いところに積み上げたわけでありますが、二十七兆円というふうな数字を実現できたわけでありますが、そのような潤沢な資金供給上の効果があったと、それによって金融市場の安定化に大いに貢献したと思っております。  これによるマイナスの影響といいますか、副作用等はなかったのかということでございますが、これまでのところ、そのようなことはないというふうに認識をいたしております。
  103. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 国債の直接買入れの議論を促進をさせていくような弊害はないですか。
  104. 増渕稔

    参考人増渕稔君) この点につきましては、先ほど総裁の方からも若干御答弁があったというふうに私記憶しておりますが、長期国債の買入れ対象銘柄の拡大、直近発行二銘柄を除いて買入れ対象とするということは、国債の市場の整備が非常に進みまして入札の直後から活発に市場で売買が行われるという、そういう実態にかんがみ、また市場参加者の要望もございましたので、それを踏まえてそういう措置を取ったわけでございまして、しかし、現実に市場での言わばふるいに掛かるといいますか、現実に取引がされて言わばこなれたものを買うということについては何の変化もございません。したがいまして、引受けといったようなこととは全く異なる、そういう厳格な一線は引き続き引かれているというふうに思っております。
  105. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今はそうだと思いますけれども、それが結果して圧力になっていくんじゃないかという懸念はだれもが持っているんじゃないかと思いますので、よろしくお願いをいたします。  さて、日銀の保有国債のことでございますけれども、二〇〇二年一月、資料によりますと七十五兆四千三百五十八億円の残高となっていますけれども、三月末の現在で保有高を教えていただきたいことが一点と、これらの国債が、金利一%もし上昇したとするとどのくらいの評価損が発生すると見込まれるのかということ、また評価損が発生した場合、それを対処する良い具体策はあるのかどうか、あるいはその評価損は償却できるかどうかという点について具体的に教えていただきたいと思います。
  106. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 詳しい数字は、済みません、つまびらかにしませんけれども、国債保有残高が増えているということは事実でございます。これは、先ほど来御質問ございましたように、長期国債買入れを増やしたために残高もしたがって増加しているということでございます。  これは日本銀行のバランスシートその他に変な影響を及ぼさないかということですが、私ども常々にその点については注意をしていまして、中央銀行の資産の健全性の確保という観点から、金利上昇に伴う国債の価格変動に対応しまして決算上の引き当てというものをちゃんと行っておりまして、金利リスク等への備えはできていると思います。経理上の償却等々も健全性を旨として万全を期しているつもりでございます。
  107. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その一%金利上昇すると評価損の発生はどのくらいになるかというのをちょっと教えてください。素人なものでよく分かりません。
  108. 小池光一

    参考人小池光一君) 長期金利が一%上昇したといたしますと、概数でございますが、約一兆数千億円の損失が発するということになろうかと思います。
  109. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 国債の評価が、格付がだんだん下がってくるということは金利が引き上がっていくということになっていくわけでございまして、大変これから先、評価損が発生するおそれというのは年々年々強くなっていくのではないかということで、財政破綻を招くのではないかという心配もするわけですが、気を付けてその対処をしていっていただきたいというふうに思います。  また、四月一日に発表されました日銀短観によりますと、中小企業はなお景気の悪化が続いているようでございます。大企業を中心にようやく景気の悪化に歯止めが掛かるようになってまいりましたけれども米国景気回復が予想以上に早かったことに加えて、株価が持ち直してきたことなどがその要因として挙げられると思います。しかし、何といっても年初来の円安傾向が大きかったのではないかと私は思っていますけれども景気悪化に歯止めが掛かり出したその要因についてどういうふうに考えておられるのか聞かせていただきたいと思います。
  110. 速水優

    参考人速水優君) 景気現状を見ますと、設備投資を始めとして国内の最終需要は引き続き弱めの動きが続いておるわけです。家計や雇用あるいは所得環境、これらも厳しさがまだ増えているという状況でございます。  一方で、米国や東アジアなどの海外経済回復に向けた動きについては、ここへ来て一段とはっきりしてきたと、明るくなってきたということは言えると思います。  こういった海外経済情勢の動向に加えて、為替円安影響どもあって我が国の輸出は下げ止まっております。在庫の調整が一段と進んでおりまして、生産減少テンポもかなりここへ来て緩やかになっております。もちろん、大企業中小企業ではかなり見方が違う。特に、非製造業等についてはまだまだこれからだと思います。  しかし、今週初めに公表しました短観、これは随分、八千社だったかな、たくさんのところからアンケートを定期的に取って、それを集計して前期と比較し、それが製造業についてはほぼ横ばいと、先行きはもう少し良くなるといったような計数、数字が出てきたわけで、こうした経済現状が少しずつ明るくなって、底をついたのかなといった感じは持てるかと思いますが、中小企業で競争力が、将来見込みがないといったような中小企業がどうやって生き延びていくか、これはやはりいずれは衣替えをして、競争ができるもの、あるいは需要が増えていくものに変えていかない限り、なかなか生き延びていくことは難しいというふうに思います。この辺のところは、それぞれの金融機関なり、あるいはそれぞれの官庁でこの対策考えられていることだと思います。  しかし、この期末を越えたからといってすべてが良くなったわけでもございません。株価は多少三月で上がって、これで一息ついたような感じはございますけれども、これとても、御承知のように外人の株主が非常に多いわけで、半分以上は外人でございますし、そういったことを考えますと、まだこれから何が出てくるかということは、そう簡単に安心できる状態にあるとは言えないと思います。
  111. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 円安傾向景気悪化の歯止めの要因ではないかという私の意見についてはどのようにお考えでしょうか。
  112. 速水優

    参考人速水優君) やや長期的に見れば円安要因はあったと思いますけれども、比較的百三十円前後で安定しているということが私としては、これが輸出入業者あるいは為替関係を扱っている人たちにとっては安定の要因ではなかろうかと思います。一時に比べれば円安になっていることは確かでございますけれども、今、ドル、ユーロに対して著しく円が安くなっているというものではないと思います。
  113. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 円を安定させておくためにいろいろな手法があるんでしょうけれども日銀の外債購入というようなことはその政策の選択の中にあってもいいのではないかなと、こう考えますけれども、いかがでございますか。
  114. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 外債購入をめぐって議論が最近活発に行われているということは私どもも承知していますけれども、この議論につきましては二つの側面があるかと思います。  一つは、今おっしゃったように、円安を実現するために、為替レートの円安化を目指してのその手段としての外債の買入れであります。しかしこれは、日銀法上は為替相場の誘導を目的とする取引を日銀が独自で行うということは認められておりません。為替介入によって円安誘導を行うかどうかという、そういった介入云々は財務省が決定するというのが現在の法律の規定でございます。  それから、議論をめぐるもう一つの論点は、円資金を供給する手段として外債買入れを位置付けるという考え方があります。これにつきましては、日銀法上は特に問題はありませんので、金融調節の必要性があるかどうかという観点から判断していくべき筋合いのものだと思います。  しかし、御承知のとおり、現在は短期及び長期の国債がもう十分に存在しておりまして、潤沢な資金供給を行うという意味で、調節手段に支障を来すという状況では全くございませんので、必要性はないというふうに私は現時点では考えております。
  115. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 終わります。時間です。
  116. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 もうなるべく短くいたします。  この前に、去年の十月十八日に日銀総裁に御質問を申し上げて、質問というか、私の意見を勝手に言ったような話でありますが、そのとき極めて大ざっぱなことを言いましたが、一番最後に、日銀というのは非常に金融背負っていらっしゃるので大きな存在みたいに見えるわけで、まあ事実そうなんでしょうけれども、しかし、必要なことはやっていただきたい、必要でないことは場合によってくださいと、やってはいけないことは絶対やらないということで行ってくださいと、こう申し上げたんですがね。  それは、その前提としては、あのときももう既に流動性の供給で、今はじゃぶじゃぶじゃぶじゃぶというぐらいでしょうが、あのときでもじゃぶじゃぶぐらいだったと思うんですね。しかし、幾らガソリンを積み上げても、自動車のエンジンが壊れていたら何にも動かないというのにどうも近いような気がして、知恵出せ知恵出せというようなことを世間でも、政府の方からも言われるだろうけれども、余りうろうろなさらない方がいいんじゃないかということで私申し上げたつもりであります。  それ以後、何か月かたって、せんだって報告書いただいていろいろ読みましたが、私が申し上げたような感じから大きなぶれというのはなしに来られたという気がいたしますね。今、増渕理事からお話があったようなこと、一番大きなことは、結局、流動性、非常に三月の期末に供給なさったということ。ある意味では大変な実験をおやりになった。じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶぐらいになっちゃっていると。  しかし、さっきからもお話があるように、マネーサプライはちっとも増えない。一体どうすればいいかという話で、いろんな議論があったわけですが、どうもだれに責任があるかということをよく考えてみると、将来的には、できるだけひずみのない、家計までを入れたマーケットをいかに政治が作っていけるかということが一つあるでしょうけれども、そういう舞台の上でのプレーヤーである、個人もそうですが、企業などが本気になって動かないと何にも動かないんじゃないかという気が大変に最近しているわけであります。  そのひずみのないマーケットをできるだけ、今は大変にひずみがあると思っておりますけれども、過去の政策からきたひずみもあるし、バブルの後遺症もあるし、その中で非常に目立つのがこの不良債権の問題である。それから、最近の経済動きの中でまた不良債権の問題が新しい問題としても発生しつつある。これ全体を見据えながら、どうやっていくかというところに知恵が出ないかということで皆さんが考える。何よりも不良債権というのを片付けようというような話で、先ほども非常に詳しく、いろいろ意見の相違はありましたけれども、一体、処理するというんだったら、幾らあるか分からなきゃ処理できないじゃないかというようなお話で、どこそこの解釈とか、極めて専門的に面白いお話を伺わせていただいた。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕  しかし、考えてみると、非常に活発に動いている経済の中で今不良債権というのはどれだけあるんだろうかということは、もしも経済が好調に回っているときには余り問題にならないんですね。そんな話は高度成長期には、考えてみれば不良債権というのはたくさんあったと思うんです。だけれども、こんなことは気にしない、でも経済は回っていくという状況になれば、幾らか幾らかというような話は余りエコノミストですらやらないという、そういう状況をどうやって回復するかということが私は問題なので、一体これ百兆を超えるのか百八十兆なのかというようなことを一生懸命議論するよりも、前向きに全体が動き出すようなためには何をやるかというような、もう少し包括的な視野でやっていくべきだと私は思っております。  不良債権の問題に目を付けると、とにかく一つ一つ洗ってみようじゃないかというので検査があり、特別検査をやってということでありますが、まずそういうことを一生懸命やり始めると、非常にスタティックなプラス・マイナスの話を、とにかく表か何か作らなきゃいけないから話がまずスタティックになる。ダイナミックスというのは、附帯条件みたいなのでしか注目されないというような傾向が出てくる。  それよりもっと大事なことは、一体、銀行の問題もそうですが、不良債権というのは銀行の先の企業の問題でしょう。そうすると、これを一体どう扱うか。駄目だという、疑わしいような債務を抱えているところは早く退場してもらおうじゃないかと言うか、これは助けて育ってもらおうじゃないかと言うか、それから新顔が来たときに、これは拾うか拾わないかという判断をしなきゃいけない。できるだけ再生したいということで再生法というようなものを作って、大いにそういう方向でやろうというわけですが、これもスタティックな観察だけでは解決しない。お金の面でもダイナミックスがあって、それからそれを生み出す仕事自体に目を付けなければいけないということがむしろ一番大事だと私は思っております。それは役所でやれるわけでもないので、そういうことにしようということになったら、これはまた銀行に任せなきゃいけない、相当、取引先みんな知っているはずですから。  しかし、そこで非常に心配になるのは、日本でも一番大きな銀行が幾つか集まってメガバンクができた。それで看板全部塗り替えて、それから何か新しくできた頭取さんがそこらじゅうの新聞の全面広告で本当にうれしそうな顔をしてにこにこ笑ってというのがありましたね。そうしたら、ATMが動かなくなっちゃった。これは二十四時間で直ったからいいじゃないかという話じゃないという気が私はするんです。  大きなスーパーが三つ集まって巨大スーパーチェーンを作った。それで看板塗り替えて、さあ今日の十時から開店ですといって、お客がそれじゃと行ってみたら入口の自動ドアが開かなかった。これは大変だ、申し訳ありませんがと店員が出てきて、中にはちゃんと品物がありますからこっちの方の裏口から皆さん入ってくださいというようなもので、こんなばかなことが起こるということは、そもそも、何というかな、資格があるのかねという気が私は自分でビジネスをやった立場からいうといたしますね。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕  その先にある今度はいろんな業種の仕事をしている人たちがどう考えるかというのは、またこれが大変な問題で、今ちょうど年代的に言いますと、非常にもうめっちゃくちゃな、経済が乱れたようなときに創業した人たちがいる。その人たちが少し年を取って二代目に移っているのが随分あるんですね、中小企業なんかで。そうすると、おやじが成功者で、おまえはうちで、とにかくちょっと五年ぐらいはよそで修業してきて、それからうちへ帰ってこいと。それで、専務になって社長というようなことに今なっているような中小企業が大変多いんですね。  すると、おやじさんと銀行との付き合いというのは、それなりの時代を通り越してきて非常に親密になって、余り文句も言わないで融資が継続していたというような関係のところが多いですね。そうすると、息子の二代目の方は当たり前にこれ続くものだと思い込んでいるような、意識改革ができていない人が実は多いんです。  それを見ると、今度は今のマネーサプライの話ですが、大きなところはいいけれども、ちっとも中小企業に回らぬ、貸し渋りが起きる、貸しはがしですか、が起きるとこれは問題だと。銀行が悪いというけれども、どっちも良くない。おまえ、性根を入れ替えろと言って忠告するようなことは余り銀行としてはやるべきでもないかもしれないけれども、むしろそういうことが必要なんです。それから、借りる方でも、おやじの時代とは違うんだという新しいパラダイムの中で、これからこういうことをやっていきたいんだというようなことをきちっと示せれば、そこ辺りのお金というのは流れるものが随分あるんじゃないかと。私は、今のところ、責任というのは官から民へというけれども、民の意識改革というのをきちっとやらないとどうにもならないという気がする。  それから、さっき言いましたようなひずみのないマーケットをどうやって作って、その中で様々な経済主体が活動できるようにするかという観点から、一つ一つじゃなしに、不良債権の問題もそういう観点から総合的にやっていくという、今まあ政府はいないので、欠席裁判みたいでちょっと気の毒ですが、そっちの責任の方が今や大きいんじゃないかという気がする。知恵が出ないものだから、日銀も知恵出せ、おまえ、金融でやれやれと、こういうことに余り乗っちゃいけない。  このじゃぶじゃぶじゃぶじゃぶの話はどういうことかというと、それははっきりおっしゃらないでしょうけれども、皆さんの心理の中で働いているのは、日銀日本経済つぶしたと言われるのはかなわぬという動機が非常に大きいんじゃないかと思うんですね。ですから、やらない方がいいことはやらない方がいいという中に幾分足を突っ込み掛けて、しかし、これはまた撤退できる話ですから結構ですが、この間の報告書の冒頭におっしゃったようなことをやっぱり主張し続けるということは私は非常に重要だと思います。  それからもう一つ、最後のしかしながらと、こう申し上げますが、一番おしまい、ごあいさつの中で「「最後の貸し手」として」というお言葉があった。最後の貸手という機能が顕現化するときというのは、最後にならないときで、新たな混乱の始まりみたいなことになるわけですよね。最後の貸手が出動したというのは、そこから話が始まって大ごとになる。ですから、最後の貸手ではあるけれども、最後の貸手というような事態が起こらないようにするために日銀ができることというのは、常に二十四時間考えておいていただきたいということを付け加えまして、いろいろ申し上げましたが、御感想をお願いしたいと思います。
  117. 速水優

    参考人速水優君) 椎名先輩は本当に私どもに、ある部分では耳の痛い、ある部分では激励をしてくだすって、お言葉をいただきまして大変感謝しております。  これから何が起こるか分かりません。しかし、今おっしゃったことをよく頭の中に入れて、私ども一同頑張ってこの難関を乗り越えていきたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  118. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会