○椎名素夫君 もうなるべく短くいたします。
この前に、去年の十月十八日に
日銀の
総裁に御
質問を申し上げて、
質問というか、私の意見を勝手に言ったような話でありますが、そのとき極めて大ざっぱなことを言いましたが、一番最後に、
日銀というのは非常に
金融背負っていらっしゃるので大きな存在みたいに見えるわけで、まあ事実そうなんでしょうけれ
ども、しかし、必要なことはやっていただきたい、必要でないことは場合によってくださいと、やってはいけないことは絶対やらないということで行ってくださいと、こう申し上げたんですがね。
それは、その前提としては、あのときももう既に
流動性の供給で、今はじゃぶじゃぶじゃぶじゃぶというぐらいでしょうが、あのときでもじゃぶじゃぶぐらいだったと思うんですね。しかし、幾らガソリンを積み上げても、自動車のエンジンが壊れていたら何にも動かないというのにどうも近いような気がして、知恵出せ知恵出せというようなことを世間でも、
政府の方からも言われるだろうけれ
ども、余りうろうろなさらない方がいいんじゃないかということで私申し上げたつもりであります。
それ以後、何か月かたって、せんだって
報告書いただいていろいろ読みましたが、私が申し上げたような
感じから大きなぶれというのはなしに来られたという気がいたしますね。今、
増渕理事からお話があったようなこと、一番大きなことは、結局、
流動性、非常に三月の期末に供給なさったということ。ある
意味では大変な実験をおやりになった。じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶぐらいになっちゃっていると。
しかし、さっきからもお話があるように、マネーサプライはちっとも増えない。一体どうすればいいかという話で、いろんな
議論があったわけですが、どうもだれに
責任があるかということをよく
考えてみると、将来的には、できるだけひずみのない、
家計までを入れたマーケットをいかに政治が作っていけるかということが
一つあるでしょうけれ
ども、そういう舞台の上でのプレーヤーである、個人もそうですが、
企業などが本気になって動かないと何にも動かないんじゃないかという気が大変に最近しているわけであります。
そのひずみのないマーケットをできるだけ、今は大変にひずみがあると思っておりますけれ
ども、過去の
政策からきたひずみもあるし、バブルの後遺症もあるし、その中で非常に目立つのがこの
不良債権の問題である。それから、最近の
経済の
動きの中でまた
不良債権の問題が新しい問題としても発生しつつある。これ全体を見据えながら、どうやっていくかというところに知恵が出ないかということで皆さんが
考える。何よりも
不良債権というのを片付けようというような話で、
先ほども非常に詳しく、いろいろ意見の相違はありましたけれ
ども、一体、処理するというんだったら、幾らあるか分からなきゃ処理できないじゃないかというようなお話で、どこそこの解釈とか、極めて専門的に面白いお話を伺わせていただいた。
〔
委員長退席、理事円より子君着席〕
しかし、
考えてみると、非常に活発に動いている
経済の中で今
不良債権というのはどれだけあるんだろうかということは、もしも
経済が好調に回っているときには余り問題にならないんですね。そんな話は高度
成長期には、
考えてみれば
不良債権というのはたくさんあったと思うんです。だけれ
ども、こんなことは気にしない、でも
経済は回っていくという
状況になれば、幾らか幾らかというような話は余りエコノミストですらやらないという、そういう
状況をどうやって
回復するかということが私は問題なので、一体これ百兆を超えるのか百八十兆なのかというようなことを一生懸命
議論するよりも、前向きに全体が
動き出すようなためには何をやるかというような、もう少し包括的な視野でやっていくべきだと私は思っております。
不良債権の問題に目を付けると、とにかく
一つ一つ洗ってみようじゃないかというので検査があり、特別検査をやってということでありますが、まずそういうことを一生懸命やり始めると、非常にスタティックなプラス・マイナスの話を、とにかく表か何か作らなきゃいけないから話がまずスタティックになる。ダイナミックスというのは、附帯条件みたいなのでしか注目されないというような
傾向が出てくる。
それよりもっと大事なことは、一体、銀行の問題もそうですが、
不良債権というのは銀行の先の
企業の問題でしょう。そうすると、これを一体どう扱うか。駄目だという、疑わしいような債務を抱えているところは早く退場してもらおうじゃないかと言うか、これは助けて育ってもらおうじゃないかと言うか、それから新顔が来たときに、これは拾うか拾わないかという判断をしなきゃいけない。できるだけ再生したいということで再生法というようなものを作って、大いにそういう方向でやろうというわけですが、これもスタティックな観察だけでは解決しない。お金の面でもダイナミックスがあって、それからそれを生み出す仕事自体に目を付けなければいけないということがむしろ一番大事だと私は思っております。それは役所でやれるわけでもないので、そういうことにしようということになったら、これはまた銀行に任せなきゃいけない、相当、取引先みんな知っているはずですから。
しかし、そこで非常に心配になるのは、
日本でも一番大きな銀行が幾つか集まってメガバンクができた。それで看板全部塗り替えて、それから何か新しくできた頭取さんがそこらじゅうの新聞の全面広告で本当にうれしそうな顔をしてにこにこ笑ってというのがありましたね。そうしたら、ATMが動かなくなっちゃった。これは二十四時間で直ったからいいじゃないかという話じゃないという気が私はするんです。
大きなスーパーが三つ集まって巨大スーパーチェーンを作った。それで看板塗り替えて、さあ今日の十時から開店ですといって、お客がそれじゃと行ってみたら入口の自動ドアが開かなかった。これは大変だ、申し訳ありませんがと店員が出てきて、中にはちゃんと品物がありますからこっちの方の裏口から皆さん入ってくださいというようなもので、こんなばかなことが起こるということは、そもそも、何というかな、資格があるのかねという気が私は自分でビジネスをやった
立場からいうといたしますね。
〔理事円より子君退席、
委員長着席〕
その先にある今度はいろんな業種の仕事をしている人たちがどう
考えるかというのは、またこれが大変な問題で、今ちょうど年代的に言いますと、非常にもうめっちゃくちゃな、
経済が乱れたようなときに創業した人たちがいる。その人たちが少し年を取って二代目に移っているのが随分あるんですね、
中小企業なんかで。そうすると、おやじが成功者で、おまえはうちで、とにかくちょっと五年ぐらいはよそで修業してきて、それからうちへ帰ってこいと。それで、専務になって社長というようなことに今なっているような
中小企業が大変多いんですね。
すると、おやじさんと銀行との付き合いというのは、それなりの時代を通り越してきて非常に親密になって、余り文句も言わないで融資が継続していたというような
関係のところが多いですね。そうすると、息子の二代目の方は当たり前にこれ続くものだと思い込んでいるような、意識改革ができていない人が実は多いんです。
それを見ると、今度は今のマネーサプライの話ですが、大きなところはいいけれ
ども、ちっとも
中小企業に回らぬ、貸し渋りが起きる、貸しはがしですか、が起きるとこれは問題だと。銀行が悪いというけれ
ども、どっちも良くない。おまえ、性根を入れ替えろと言って忠告するようなことは余り銀行としてはやるべきでもないかもしれないけれ
ども、むしろそういうことが必要なんです。それから、借りる方でも、おやじの時代とは違うんだという新しいパラダイムの中で、これからこういうことをやっていきたいんだというようなことをきちっと示せれば、そこ辺りのお金というのは
流れるものが随分あるんじゃないかと。私は、今のところ、
責任というのは官から民へというけれ
ども、民の意識改革というのをきちっとやらないとどうにもならないという気がする。
それから、さっき言いましたようなひずみのないマーケットをどうやって作って、その中で様々な
経済主体が活動できるようにするかという観点から、
一つ一つじゃなしに、
不良債権の問題もそういう観点から総合的にやっていくという、今まあ
政府はいないので、欠席裁判みたいでちょっと気の毒ですが、そっちの
責任の方が今や大きいんじゃないかという気がする。知恵が出ないものだから、
日銀も知恵出せ、おまえ、
金融でやれやれと、こういうことに余り乗っちゃいけない。
このじゃぶじゃぶじゃぶじゃぶの話はどういうことかというと、それははっきりおっしゃらないでしょうけれ
ども、皆さんの心理の中で働いているのは、
日銀が
日本の
経済つぶしたと言われるのはかなわぬという動機が非常に大きいんじゃないかと思うんですね。ですから、やらない方がいいことはやらない方がいいという中に幾分足を突っ込み掛けて、しかし、これはまた撤退できる話ですから結構ですが、この間の
報告書の冒頭におっしゃったようなことをやっぱり主張し続けるということは私は非常に重要だと思います。
それからもう
一つ、最後のしかしながらと、こう申し上げますが、一番おしまい、ごあいさつの中で「「最後の貸し手」として」というお言葉があった。最後の貸手という機能が顕現化するときというのは、最後にならないときで、新たな混乱の始まりみたいなことになるわけですよね。最後の貸手が出動したというのは、そこから話が始まって大ごとになる。ですから、最後の貸手ではあるけれ
ども、最後の貸手というような事態が起こらないようにするために
日銀ができることというのは、常に二十四時間
考えておいていただきたいということを付け加えまして、いろいろ申し上げましたが、御感想をお願いしたいと思います。