○椎名素夫君 そういう、もうほっといても、いろいろ気働きで、競争力はそこそこ頑張ろうというようなことも計算に入れてのこれ話なんですね。ただ、もう一つそれに付け加わって言えることは、最近、バブルの形成と崩壊でけがしたね、これはやっぱり治しておかないと後引くよ、これは後になればなるほどけがを治すコストというのは高くなるということだけは覚えておいた方がいいねと、こういう話が付け加わるんですね。
ですから、そういうようなことを仕分して
考えてみると、まあある
程度急ぐということが必要であるし、それからもう一つは、やっぱりハッピーにみんなで衰退していくにしても、国民の間で自分だけが損しているというような気分がなくなるぐらいのことはやっておかないと、緩やかだけで、幸せなというのがなくなってしまうということになるおそれがあるのではな
いかという気がするわけです。そういう、どのぐらいのことかよく分かりませんけれども、とにかく
税制も抜本
改正をやるということで六月に向けて
議論していらっしゃるという
お話なんですが。
最近読んだ論文なんですが、猪木武徳という人がいて、この人は、日本の森林ですね、山、あれが駄目になって、それでみんなどうしてい
いか分からぬというのを眺めて、結局、視野が短期的になってきてしまっているんじゃな
いか。材木を大いに作って、それが四十年、五十年たてば売れるだろうと思って大いに植林したけれども、だんだん環境が変わっちゃって、四十年、五十年たったら、材木みんな輸入して、その値段に負けるから売れもしないし、それどころか、だから、そういうふうな一年一年のもうけ、短期的な視野から見ていくと、もうやるだけ損だということでほったらかしてある。
それから、何かよく分かりませんけれども、五十年ぐらいたつと、あの花粉というのが物すごく大量に出るような樹齢に達するんだそうですね。そんなような副産物までできちゃった。それから、山が荒れてその保水力がどうのこうの、ああいう針葉樹ばかり植えちゃってというようなことで、今どうしてい
いか分からぬと。国が持っている山はまあ何とかなるかもしれないけれども、民有林が多いですから。
こういうことを眺めていると、やっぱりどうもどこにおいても、日本の各界各分野において視野の短期化というのが進んでいるんじゃな
いかと。それを敷衍して、
経済の運営とか
政策とかいうところでも同じことが起こっているんじゃな
いかということを言っておりまして、誠に私もっともだという気がするわけです。
もう一つ付け加えれば、視野の狭さという、セクショナリズムなんかからくるやつですね、あると思うんですが、その病に
税制の論議なんかも陥ってしまうと、思い付きみたいなことがうわっと出てきて、何でも言える世界ですから、示しが付かなくなっちゃう。
今は決してノーマルな
状況じゃない、日本の
経済の
状況ですね。アブノーマルなところで、これだこれだ、うわっとこうやりますと、今までもそうですが、日本の
税制なんかを見ていると、一体ばんそうこうばかり張っちゃって、その元はだるまなのかきれいなお人形なのか分からぬというようなことになっちゃう。そこのところを、やっぱり長期的な視野とそれから広い視野できちっとやるということが
抜本改革ということなんだろうと思うんです。そういう、それを是非頭に置いてこの
議論はやっていただかないと
いかぬなと思っているわけです。
僕が聞きたいところですが、余り時間もありませんから、それで先に進みますけれども、何より困ることが、
個人も
企業も、あるいは今回の東京都の銀行税の例でも、あるいはほかのところでもみんなそうですけれども、何か自分ばかりが損をしているという感じがいわゆるタックスペイヤーの中にみなぎっているという国だと思うんです、私は。
ですから、増税なんて話になった途端に大騒ぎになる。自分のところはもう払い過ぎるぐらい払っているんだとみんな思っているし、それから地方と中央との関係でいえば、分権分権ということで、地域のことは地域で決めると言うけれども、一体、税金の集め方、配り方というのはそんなことと関係ない仕組みになっているじゃな
いかという気分があって、それを端的に表して、そして少なくとも、都民がやれやれと言ったのが銀行税ですね。
あの先行き、どうなるか分かりません。控訴なすって、しかも最高裁まで持っていって、その間徴収し続けて、それで駄目だと言われたら、一体東京都に、あの
財政に空く穴というのは、これは青島知事というのは駄目だったとか言うけれども、それどころじゃないよという話になりかねないというようなことを見ると、余り勝手なことをやらない方がいいんじゃな
いかと、手がかじかむ。
そうすると、最近、こういうことがありますね。やっぱり地方分権をきちっとやるためには、市町村の力が弱過ぎるからどんどん合併させろと。合併のメリットというようなことで後々までの
財政支援みたいなのが出ておりますが、それを見ると、今の交付税ですね、その上に乗っかって、これを特別交付税などでここの部分はいろいろ面倒見てやるよというような話が、相当重要な幹として入っております。
そうすると、この
税制の抜本
改正をやるということと、何か二、三十年先まで予定したような話と、どう整合性が出てくるのか分からないようなところがある。そういうことも全部まとめて
考えなきゃいけないと私などは思うわけであります。
もう一つ、もっと私、そこで、この抜本
改正をやるに当たって、それができた形というものが、しばらくは少なくとも変わらない日本の税体系の基本的な骨組みというのはどういうものであるか。それから、やっぱり必要はあるでしょうから、その時々の
政策税制のような
時限的なようなものはどういうものであるか。
それには、先ほど
大臣のおっしゃったように、ここで
減税したら後はこうなりますよというのをはっきりするというようなことは大変いいことだと思うんですが、それから、どうしても需要に足りな
いからこれだけは借金というような形を、タックスペイヤーが
個人の段階でもあるいは
企業の段階でも地方の段階でも、はっきり見えるようなことをどうやって意識させるか。これをきちっとやらないとうまく
いかないんじゃな
いかと思うわけです。結局、そして、その中で自分が負担するのはこの分だよという全体像の中での自分の負担ということ、それからそれに対する見返りというものが全体としてどうなっているか、損か得かというような話が分かるようにしなきゃいけない。
そういうことをやるためには、一つの方法はやっぱり申告
税制だろうと思うんですが、申告
税制を是非やれというような話じゃなしに、そういうタックスペイヤーの意識をきちっと確立するということ、そのために大いに努力するということを是非目標の中に入れていただきたいと思うわけです。
実際に私の経験ですが、
消費税を入れましたときに、当時の大蔵省、一生懸命やって、とにかく分かってもらおうというので、しかし人手が足りな
いから地域の税務署の人を派遣したんですね。ところが、税務署の職員というのは小さい机で対で話すことしかやったことがない。三十人、四十人の前で立って、言わば一通りスピーチをやらなきゃいけないというと、緊張しちゃってしどろもどろになった。
質問をされたときに即答しない。慎重を期する
人たちですから、それはちょっと今すぐ答えられな
いから調べてきますと。そういう会に参加した民間の人がみんな、ほとんどの人が言っていましたけれども、税務署の人も分からないようなものを押し付けるのかという声が非常に強かった。
ですから、こういう
辺りはよっぽど慎重にお
考えにならなきゃいけない。システムを決めるだけじゃなしに、それをどうやって理解させるかということも併せて
考えていただきたいと思うわけです。
それから、余り時間がなくなってしまいましたけれども、私が小渕総理のときにいたしました代表
質問があるんですが、そこで
土地税制の問題を申しました。結局、昭和三十年代に始まる話ですが、簡単に言っちまえば、日本の
税制、それで、本来の固定資産税の
税率ということから外れて非常に低い水準で推移したために、いわゆる
土地本位制が起こって、その究極がバブル。バブル最盛期の四年間で大変な資産形成の計算になったわけですよね。
土地資産の増加分というのが千百三十兆円になって、これは当時の
アメリカの国土の三倍近いものになった。
ところが、この四年間にGNP、当時はGNP、総額が千五百兆。この千五百兆から上がった税金が約二〇%、三百十兆円。千百三十兆円だけ資産はとにかく増えた分に対しての税収というのは八兆五千億しかなかった。もしもこれをGNPで稼いで千百三十兆円普通の
経済活動で積み上げるというのは、逆算すると、この四年間で実際には、千五百兆円のGNPが五千六百兆円
所得がないとそれだけの税収は上がらないという話で、ここのところで、それを基礎とした日本の
経済全体、マーケットが物すごいひずみを作ってしまったという話をいたしました。
これは、税金で得をした損したというだけでなしに、いろんな
要素が重なりましたけれども、当時の日本の会社は、大変楽々とただ同然のエクイティーファイナンスができて、それで国際市場に出ていった、あるいは外国の
土地や会社をうんと買ったとかいうことで、相当信用にかかわることが当時行われた。
崩れましたから、損した損したという話がバブル崩壊後は横行いたしましたので、そこでの利得というのはどこかへ吹っ飛んじまいましたし、それはそれでいいのかもしれませんが、今まだ日本の
土地価格というのは
下落を続けている。しかし、ゼロになるわけはないので、どこかで止まるでしょう。止まったときに、今は
土地の価格というものは利用価値で決まるべきものだというようなことを言っているけれども、底を打ったときに、またこれ資産だという意識が出てきたらどうなるかというと、このばかばかしい話が繰り返されない保証はないと思うんですね。
ちょっと元気になったかというと、本当に東京の中でも物すごい大きなビルがたくさん建って、後楽園の何倍とかやっていますでしょう。これ、下手するとミニバブル。また、そういう資産の話だけでなしに、都市再生とかいうことで大いに奨励したじゃな
いかと、
政府は。だけれども、やってみたら空室ばかりで困っちゃった、どうしてくれるというような話で、また何とかしてやるかというので、自民党の電話帳なんかを通じて
特例を設けるとかなんとかいうことになると、再び同じ道をたどることになるんじゃな
いかと。
これは昭和三十年から始まった話で、これを完全にアンワインドする、巻き戻すというのは難しいともちろん思います。思いますけれども、そういうことも頭に入れた上で、この非常に重要な日本の証券市場まで、株にまでかかわるようなマーケットを長年にわたってゆがめて、そしてバブルになった。この教訓というのは是非是非頭に置いてやっていただかなければいけない。
大臣がおっしゃったように、必ず回復すると思うんです。このまま日本の
経済沈没するわけじゃない。そのときにも通用するような骨組みというのを作るんだということをお
考えになって
税制論議を是非
政府でやっていただきたいと思います。
いかがでしょうか。