○
参考人(
森下慶子君)
森下でございます。
私は、本業はイベントプロデューサーで、国際博覧会等をしておるわけですが、実は
平成九年度から
平成十二年度まで、建設省の
方々と一緒に安全・安心
まちづくり女性フォーラムという社会的な
活動を試みてまいりました。
今日、お
手元に
参考人質疑
関係資料というのが配付されておりますが、それの六十ページに安全・安心
まちづくり女性フォーラムの報告書の一部を掲載していただいております。これは、阪神大
震災が起こった後、私たちはいろんなことを学んで、コミュニティーの大切さや
町づくりの大切さ、それからボランティア
活動の重要性等、様々なことを市民側も学んだわけですけれ
ども、そういうものが一体全国的にはどんなふうに生かされているんだろうか、果たしてそれはうまく受け継がれているものなのだろうかということで、全国各地に、いろんな
活動をしている人に呼び掛けまして、安全・安心な
町づくりというのは何だろう、それは一体どうやったらできるんだろうかということで、
防災町づくりを安全・安心という分かりやすい言葉で呼び掛けながら行ってきた
活動です。
この三年間の
活動を通しまして、全国二十三地域に様々な団体が呼応して立ち上がって多様な
活動をしてくれたわけですけれ
ども、その
活動を通じて私がプロデュースしながら感じたこと、それから考えたこと、これから是非進めたいこと等をお話ししたいと思います。
安全・安心
まちづくり女性フォーラムの六十ページ、六十一ページを見ていただくと分かるんですが、安全・安心な町は何かということを本当に生活の部分、現場の部分から考えようということで、テーマも各地域の
方々に自由に出していただこうということで始めた
活動なんですけれ
ども、その一覧表を見ていただきますと、テーマの中にもちろん
災害・
防災という広い範囲で、広範囲で、水害とか
地震、都市の大火とかいう形で考えているところもあられますけれ
ども、防犯とか子育てとか福祉とか環境問題とか、様々なところで市民の生活者たちが不安を感じ、問題意識を持ち、何とかしなければいけないと、大変広範囲な形で安全・安心
町づくりというのは考えられているということがお分かりいただけると思います。
元々、こういう
活動というのは、今突然始まったわけではありませんで、防犯のためにきちんと町の中を実際に歩いて、様々な照明灯の実験等を繰り返したり道路をチェック、点検したりしているグループもあれば、子育てを
中心に
町づくりを考えていたグループもあれば、女性の婦人連合会が、
活動をしていた方たちが手を取って、
地震をテーマに考えてみようということで出発したものもあります。それから、
活動の内容も、パネルディスカッションやワークショップや、非常に多様になっております。
全国の人たちが集まってお互いに発表し合って、
情報を交換したり知恵を交換することでまた元気になって
活動を拡大していくということで、この
活動は三年間で終わりましたけれ
ども、まだこの後グループとして
活動を続けてくださっているところがたくさんあります。
こういうNPOとかNPOの法人格を持っている
町づくりのグループというのは大変たくさん出てきているわけですけれ
ども、それは、皆様
御存じのとおり、本当に
日本が都市化した生活を送って、生活スタイルを変えていって、価値観も変化している中で、今まで
日本的な組織として生きていた町内会とか自治会とか消防団、水防団、国民千人当たり一人しか消防士がいない中で自主的に消防団を組んだり水防団を作ったりしてきたわけですけれ
ども、そういう既存の組織というのがちょっと変質してきまして、大事なこれもNPOではあるんですが、町内会に入っていない人がマンションに住んでいたり、連絡だけ聞けばいいやという自治会に参加しない人とか、とても水防団に出せる人手がないので、老人だけの家なので、お金を出してもいいから人は出せないとか、本当に形式的には残っていて
情報は流れていくんだけれ
ども、実は形骸化していたり力がなくなっているところがたくさんあると。
それから、小学校のコミュニティーで、小学校区単位で非常に多くの
活動が行われてきたわけですが、これも子供がいない家庭が増えていたり、お年寄りの家庭にとってはなかなかそのコミュニティーでの運動に入れないと。何か
やり方が違って、私たちが同じテーマを持ってやれるんならやらなくちゃという非常に具体的なテーマ論を掲げて自発的に
活動したいという人たちがたくさん出てきているということですね。
そして、自己責任社会というのは、結局は自発的に
活動している人たちが作っていくもので、自主的、自発的に
活動している人はだれかのせいにしたりだれかに責任を取ってもらおうと思わないものですので、非常にその自発的
活動自体が安全・安心
町づくりにとっても核になることになると思います。
元々、新しいネットワークとかいろんな言い方をしていますけれ
ども、結局はだれとだれが手を組んで何をしていけばいいかということを明らかにしていこうよというのが安全・安心
町づくりの
基礎として大変各地、いろんな層から
意見が出されました。
というのは、安全というのは、安全かみそりとか安全ベルトとか、安全のシステムを作っていく、安全なものを作るというのがあるんですが、安心というのは、結局自分でやっていき、自分で見極め、自分で確保しないと、幾らお金を持っていても、幾ら仲間がいても安心にはならないということで、安心という
町づくりを作っていくための元を自分たちで作ろうということがNPOとかNPO法人の
活動をしている人たちの一番の強さだと思います。
今、
防災自主組織を作ろうとかというときに、ベースになるのはやはり町内会とか
自治体経由のものなんですけれ
ども、一番
防災情報が多いのはそこから来るわけですが、やっぱり通達的などうも
情報として受け止められてしまう。何かを考えるんじゃなくて、今度の
防災訓練はいつですよとか、こうなったらここに逃げて、広域
避難場所はここなんでこうしてくださいとかという通達的な
情報が流れていくんですね。これは別に消防とか警察の方のせいではなくて、消防の方たちも、そういう一方通行的な
情報で本当にみんなに支持してもらって、考えが共有されているのかということをいつも不安に思っておられますが、どういうルートを使ったらできるのかがよく分からないというふうに嘆いておられます。それから、警察は警察、消防は消防で様々なものが町内会とか自治会を通じて流れていくというのが現状です。
それから、広域
避難場所まで逃げて、その先どうなるか分からないとか、自分が本当は、もう
かなり家も耐震強度が上がっていて、ビルディング等も耐震・免震構造が良くなっているんだけれ
ども、本当にその場で逃げた方がいいのかどうなのか、それからだれとどうするのかという自分の実感が伴わない
情報になっていると。それから、先が見えない
情報で、逃げた後どうなるんだとか、具体的なめどが立たない、先が見えない
情報というのは非常に共有されにくい、人の耳に入らないということで、自発的な
活動ではない
防災情報がもったいなくもすごくたくさん流れているというのが現状です。
市民主体の
防災対応策というのは、今、政府を始め各地方
自治体も大事だと思ってくださっていて、現場の実感とか生活実感からの声を重視しようとはしてくださっているんですが、そういう場がどこにあるんだろうかと。市民が参画して今、地区
計画等都市
計画作りが始まっておりますが、市民の側からすると、生活実感としてはもちろん地域も大事で自分の家も大事、で、職場でいろんな目に遭うかもしれないというものもありますし、それから目的を共有する人と一緒に
活動をしていかないと具体的な
活動にならないということがあって、市民の側が求めていることと
行政の側が求めていることが擦れ違っていると。目標はもちろん同じで、安全で安心に暮らせ、
人命が大事にされればいいわけですが、目的が違う市民と
行政の擦れ違いが起こっていて、これが一緒にやるためにはどうしたらいいのかというところですね。
それから、企業の特性を生かした
防災対応策等がもっと生かされていいはずなわけです。コンビニはコンビニの力があります。流通路さえ確保されればすばらしい拠点になるかもしれない。あるいは、交通
機関の主であるJR等さんが持っている連絡機能とか、そういう企業の特色が生かされた
防災対応策がもっとたくさん提示されてきてよいはずだし、企業も独自に自分を守らなきゃいけない。そういう
行政と企業とか市民の
役割分担というのがうまく相互理解できて総合的に分かるような場が是非欲しいということなんですが、なかなかその場がないと。
そういうときに、今、
防災計画がなければいけない、
防災教育がなければいけないというふうに
首藤先生も
石原先生もおっしゃいましたけれ
ども、そういう
計画を作ろうと、前向きにみんなで
計画作りをしようという中で多様な市民の参画を保障していただけると非常に具体的に物が進んでいくと。
防災計画を作るということは、実は復旧
計画を作り復興
計画を作るという、一度に見通して先が見える形にする中で初めて具体論とか
役割分担が出てくると思うんですけれ
ども、まずは、もちろん命を守り、生活を復旧させ経済を復興させという話になるわけですが、町の生活者にとってはそれは一体に起こっていくものでありますし、
津波であっても
火山であっても、
日本全体から見るとその地域の問題になってしまう。阪神大
震災においては、道を一本隔てただけで、片っ方はもう復興に入っていて、片っ方はまだその生活自体も復旧さえしていないという場面が出てくるわけですが、この部分での難しさを皆実感しているわけですが、是非そういう中で
防災計画とは復旧とか復興とかという
計画とともに具体的に考えていきたいというふうに感じています。
それから、市民一人一人の力とか、NPOのネットワークとか、NPOが法人化されて運営力を持っているところとか、そういう事業力とかというものを本当に尊重していただけるとうれしいと思います。一人一人が何も感じていないかというと、実は大変感じて、問題意識も高く持っているんですが、それがある場面に来ないと話し合わない。夫婦とか家族で
防災について話し合っている家庭は本当に少ないと思いますし、町の中でもそういう機会、そういう場がないということが、結構この
火山国、
津波もある、
地震もある国としては恐ろしいことかと思います。
是非、こういうものを支援していただけるのであれば、
防災・復興
計画を一体として作れるような形での場を各地域とか
行政の中で保障してほしいし、単年度事業で一年間
計画作ったらできたできたというふうに終わらず、毎年毎年変化していく
計画作りなわけですから、その
計画を進化させるような形でいつも必要なんだということを是非御理解いただきたい。
それから、NPOとかNPO法人というのはやはり大変経済基盤は弱いです。NPO法人にしたら何か寄附行為とかは楽になるのかなと思ったら、事務手続ばかり多くなって大変だというのが今のみんなの実感だと思うんですが、昨年でNPO法人にした団体はもう五千を超えて内閣府に届けられておりますが、三分の一は
町づくりをテーマとしたNPO法人です。だから、
町づくりについてはNPO、NPO法人、大変全国にたくさんあるということですが、ほとんどのNPO法人は法人格を取りながらも一千万円以下の年間予算で何とかやっているというところが現状です。
で、専門
情報とか多様な分野の
専門家というのがどこに潜っていて、どこに行ったら手に入るかというところまで調べたり
情報を得る力が少ないのも事実です。今日も、うわあ、
津波の先生っているんだ、
火山の先生っているんだというふうに私も生で見て感動しておりますが、大変な事件でも起きない限り、こういう先生たちはどこにいらっしゃるのか分からなくて、テレビでお見掛けするのが精一杯なんで、そういう方たちの
情報とかお話がもっと出ていいんじゃないかと。
それから、教育について先ほ
ども二人とも触れておられましたが、教育プログラム自体の開発というのはやっぱりなかなかNPOとかNPO法人だけでは難しいんですね。
子供にどういう教育をしたらいいか。大
地震が起こったら家からとにかく出なさいというのは昔の話なんだとか、学校の先生も困っているのは、とにかく校庭にみんな訓練をして出すと、その校庭からどうするんだということですね。それから、逃げましょうと言ったときに、倒れた子がいると、その子はほっていってもう黙って一緒に団体行動した方がいいのか、その子を助け起こすように教育した方がいいのか、そういう根幹的なものから、
現実的な、じゃ学校というのは本当に
避難拠点になるのかとか、生活の知恵を伴った
対策としては何を家に置いておけばいいのかと、
防災避難袋というのは本当にああいうものでいいのだろうかとか、いろんな様々な
現実論から、先ほどの地球自体の
地震や
火山の原則とか将来性とか様々なものがあると思うんですが、そのプログラムの開発をしたり教育手法の開発をしていただきたいというのは、本当に家庭でも学校の現場でも欲しいものではないかと思います。
それから、
町づくりというのは今大変広範な範囲に広がっておりまして、福祉の
町づくり、観光をベースにした
町づくり、様々な
町づくりの試みがあり、
町づくりのグループがあります。もちろん、歴史が重なってきたり、今まで建設省、
国土交通省を始めとして様々な
専門家がかかわった
町づくりの部分は広範に広がっておりますが、じゃ、安全・安心な
町づくりって何をすればいいのかみたいな総合的なガイドブック作り、このとおりにやれということではなくて、そういう総合的なガイドブックのようなものが示されるといろんな
町づくりをする人たちが
一つのテーブルに集まってそれを具体的に検討できると思いますので、是非そういうものをいただきたいというふうに、やっていただければうれしいというふうに思っています。
それから、やっぱりNPOとかNPO法人って不思議なもので、忙しい人ほど熱心にやるんですね。子供を抱えて、年寄りを抱えて、老人を抱えて、病人を抱えて大変だとかって言いながら、仕事もし、なおかつNPO、NPO法人の
活動もしてくださる人が大変多かったんです。そういうものの基盤になるのはやっぱり
情報系の基盤でして、携帯電話とかインターネット、ファクシミリ、様々なものが活用されております。こういうものが安く使えたり、それから
防災の
計画の中にきちんと盛り込めたり、あるいは小学校とかコンビニとか、どういうところを拠点にしていくか、その地域ごとに違うと思いますが、地域ごとにこれが確実に保障されているかどうかで世の中変わっていく時代ですので、こういう通信等のNPO
活動の基盤みたいなものに支援をいただけると大変助かるというふうに感じております。
以上です。