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参考人(
松井博志君) 日経連の
松井でございます。よろしく
お願いいたします。
私からは、ちょっとお
手元に
資料を何点か多めに出さしていただいております。
レジュメと更にもう
一つ、この労働問題研究
委員会報告というものもお配りして、更には春季労使交渉の手引きなるものもお配りさしていただいております。もう
一つリーフレットとして、私
どもがエージフリー
社会に対して取り組むその一例として、こういった
資料もお配りさしていただいております。
それでは、
レジュメにほぼ沿いながら、他にお配りしました
資料も含めて目を通しながら、私
ども使用者の側の考え方をお話し申し上げたいと思います。
今、もう
日本総研の
山田さんからはマクロの
雇用の問題、
経済問題も含めてお話もございました。その意味で、私は当面の今、
足下の
状況にスポットを当ててお話をさせていただきたいと思っております。
御承知のように、今我が国の
企業労使は春季労使交渉、組合側からいいますと春闘あるいは賃闘といろいろ言い方もあるようです。今は
生活改善闘争という言い方をしているようですが、この中で、私
どもといたしまして今提案申し上げておりますことは、まず働き方の諸
制度を総合的に見直す場であると位置付けてございます。
と申しますのは、新聞紙上等では、賃上げがゼロだとかベアゼロだとか賃下げだとか、そういう中にあっては労使交渉の意味がほとんどないのではないかという指摘も時たまなされておりますけれ
ども、私
どもといたしましては、
賃金がもしかして凍結される、あるいは引き下げられる、そのような中であればこそ、それぞれに置かれた
企業労使がその
状況を確実に把握し、情報を交換し、情報を共有して、その危機を乗り切る
対応が非常に重要なのではないかと考えております。
その意味では、賃上げがあれば組合があって当然だということを私は考えておりません。こういう時代にこそ、
労働組合があるならば、その
労働組合と真摯な話合いを通じてその
企業がどのような形で今後も健全に運営していかれるか、それを労使共々に話し合うのがこの春季労使交渉の場であろうかと考えております。
私
どもの基本に据えておりますことは、やはり
企業が存続することが重要であります。その意味では、その支払能力に基づいた総額人件費の管理をする。その場合のもう
一つの重要な
視点としまして、このような高
失業の時代でありますので、
企業の中でできる限り
雇用を維持できる
仕組みや何か、それをやはりお考えいただきたい、そういうことを提案申し上げている次第でございます。
では、ちょっとデータで見てみますと、どのような
状況があったか、過去を見てみたいと思います。
お
手元の
資料、
レジュメの後ろに書いてございます。これは労働分配率と賃上げ率の推移ということで、バブル崩壊後約十年間の推移を見たものでございます。労働分配率は、これは四半期
ベースで見ておりますけれ
ども、傾向的に上がってきております。労働分配率というのは、御承知のように
企業が生み出した
付加価値を、給料、
賃金、役員報酬も含まれておりますけれ
ども、働いた人たちに配分していくものでございます。他方、賃上げ率はどうかといいますと、御承知のように低下傾向にある、これが実態でございます。
中にはこの賃上げすらできなかった
企業が多いという例証、事実をお知らせするために、下の図の二をごらんいただければと思っております。これは私
どもの団体でなくて
中小企業団体中央会の
資料で、
中小企業における賃上げを実施しない
企業の割合の推移の数でございます。
したがいまして、まだ賃上げがなされている
企業はまだまだましな方だというのが実態でございまして、賃上げをしない、この中には賃下げも含まれていると私
どもとしては認識しておる次第でございます。
先ほど、
山田さんの方の御
説明の中でも、かつて
中小企業は
雇用の
受皿としての機能が十分あったということがございましたけれ
ども、
中小企業においてまだそういう人を必要とする
企業もたくさんあるのが事実でございますけれ
ども、他方、なかなか吸収し得ない、事業を存続できないような
状況が続いている、こういう例も多く見られるのが実態であろうかと思うところです。
それでは、また
レジュメにお戻りいただきまして、お話を申し上げたいと思います。
私
どもといたしまして、
雇用問題についてどのように考えているかといいますと、やはり当面の短期の措置と中長期の措置というものに分けて
対応すべきという考え方を持っております。
お
手元の
資料といたしましては、この「労働問題研究
委員会報告」の
雇用問題を扱っております三章のところをちょっとごらんいただければと思います。ページといたしましてはその一枚目というか二枚目の二十八ページのところでございますけれ
ども、「
雇用のセーフティネットの充実を」と書いてございますが、まず
雇用問題については、今申し上げましたように、短期・当面の対処と中長期の観点から
対応すべきである。基本的に今現在重要なことは現下の深刻な
雇用失業情勢に対する
雇用対策を打つべきであると。中長期的には
少子高齢化の進行あるいは勤労者の就労ニーズの
多様化などに
対応する
仕組みを考えていく、こういう必要があるということであります。
私
どもといたしまして、いわゆる
雇用のセーフティーネットはどのようなものかと考えておりますと、ここの
三つ目のパラグラフに書いてございますように、やはり一番重要なことは①にありますように
雇用の維持、創出であります。二番目に勤労者の職業能力の向上、片仮名で言いますとエンプロイアビリティーの向上ということになろうかと思います。三番目にそれを支える大きな
仕組みとしての政府の
雇用対策あるいは
雇用保険、
社会保障の充実、この
三つが相まって
雇用のセーフティーネットを支えていくものと理解をしております。それぞれがそれぞれに与えられた役割を担ってこそこのセーフティーネットが確実なものとなると理解をしております。
一番目の
雇用の維持、創出であります。それについてはやはり民間
企業、経営者の責務が重要であります。政府におかれては、事業
規制となっているもの、それをできる限り取り払っていただいて、民間が自由な活動ができ、そして
雇用の維持、更には創出ができる
環境条件を整えていただく、そういうことが重要だと思っております。
二番目に、勤労者の職業能力の向上については、やはり今まで
企業が基本的には丸抱え的に従業員の教育に責任を持ち
対応をしてきた、これが実態でありましたけれ
ども、やはりこれからは従業員の方にもより自らを磨く努力を続けていただく、そこに対して
企業なり政府あるいは地方自治体などが支援していく、こういう
仕組みがより重要なのではないかと思っております。
三番目に、そのような
対応をしたとしても、やはり今の
現状を見てみますと、
失業者が大量に発生している事実がございます。そういう方々に対する支援がやはり欠かせないということは言うまでもないことかと思っております。
私
どもといたしましては、そのような考え方に立ちまして、お
手元のもう
一つのページをごらんいただければと思いますが、昨年八月、日経連といたしまして緊急
雇用対策プログラムを策定いたしました。先生方の御協力もございまして、これは昨年の臨時国会、秋の臨時国会においての第一次補正予算の審議がなされました。私
どもの考え方が基本的には取り入れられ、それが今
政策に、実行に向けてまだ進んだばかり、やっと始まったばかりのところがございますけれ
ども、私
どもといたしましてはそれが確実、着実に実行に移されることを期待しておるところでございます。費用制約がある中、なかなか新たな予算というものを組み込むということは非常に難しかったかと思っておりますけれ
ども、この場をかりまして改めて御礼申し上げたいと思うところでございます。
私
どもといたしまして、更に民間でできることがいかようなものかと考えたところが、次の三十一ページのところでございます。ここでは、「柔軟なワークシェアリングの実践」と小見出しを付けておりますけれ
ども、当面の措置としまして、
失業増大の回避のために
雇用の維持確保、更には総額人件費の抑制を両立するための緊急避難的なワークシェアリングが必要なのではないかと考えております。
ワークシェアリングにつきましては、今、政労使という場面においても様々な議論が展開されております。さらには、
企業側の中でも、これは
生産性の低下につながるのではないかということで、かなり危惧する向きもございます。私
どもといたしましては、そのような危惧が少しでも払拭されるべく、どのようなワークシェアリングの導入の仕方があり得べしか、それを今現在、
連合さんともいろいろ協議を進めながら議論をしているところでございます。
ここのワークシェアリングについては、次のページに書いてございますように、大きく分けて四種類あるだろう。これは厚生労働省の研究会の報告に基づいて書いたものでございますけれ
ども、私
どもといたしましては、この四くくりというよりももう
一つ少ないくくりで、当面の措置と中長期的な措置、そういう考え方で
対応すべきではないかと考えておるわけであります。
それは、三十三ページをごらんいただければと思います。繰り返しになりますけれ
ども、そこの三十三ページの
二つ目のパラグラフ、「とりわけ当面」というところでございますけれ
ども、過剰
雇用と人件費
負担に苦しむ
企業においては、緊急避難措置として、労働時間を短縮し
雇用を維持し、
賃金、賞与など、これはどの
部分について
対応していくかはやはり現場のそれぞれの労使が工夫をして決めていただければということで、総額人件費を少しでも
負担の少なくなる方法を考えてほしい、そういう提案をさせていただいております。
ここの
部分については様々な議論が行われておりまして、
企業のそれぞれの取組、やはり置かれた
状況が違うようであります。全社的に行うもの、あるいは生産ラインの一部だけ行うもの、様々のようであります。その場合に、私
どもといたしましては、ワークシェアリング、この緊急避難的なワークシェアリングというのはどのようなものかということの考えは、その最後のパラグラフに書いてございます。今までの我が国の
企業労使というのは、やはり
企業の実情に応じて、
不況時には採用抑制、配転、
出向、あるいは残業
規制、一時休業等々で、厳しい
状況になってくればやはり希望退職の募集、整理解雇ということになってこようかと思います。
こういう様々な
雇用調整施策を講じ、
雇用安定を図ってきたわけでありますけれ
ども、やはり先ほど
山田さんからのお話もあったように、
雇用の
受皿が非常に少なくなってきているという実態がございます。その意味で、今もし
雇用を支え、そしてそれが
企業経営としてもマイナスにならない、そういう
状況であるならば、今までの取ってきた
雇用調整施策にもう
一つ加えた
選択肢の
一つとしてこういったものも取り入れていただけないものかということで、私
どもとしましては会員
企業に向けて発信しておるところでございます。
私
どもといたしましては、このワークシェアリングの問題については、基本的に
雇用、
賃金、労働時間を多様かつ適切に配分する
仕組みであると理解をしております。これは中長期的にも、短期のみならず中長期的にも
雇用の維持創出が図られる
仕組みであると理解をしております。
次のページをごらんいただければと思います。
「
雇用ポートフォリオの実践」、「
雇用多様化の推進」と書いておりますけれ
ども、
二つ目のパラグラフに書いてございますように、これからやはり
企業として必要な
人材を確保するためには、勤労者のニーズに即した多様な
雇用形態あるいは就労形態を用意をしまして、従業員の方の働き方の
選択肢を増やす工夫が必要と考えております。その工夫をしていく中にありましても、やはり経営効率の向上あるいは
生産性が低下しない
仕組みと
雇用コストのバランスを図っていく、同時に図っていくことが重要であろうかと思います。これは、日経連が従来から提唱してまいりました
雇用ポートフォリオをより一層
企業の実情に合った形で進めていただければと考えているところであります。
雇用ポートフォリオにつきましては詳しく御
説明申し上げませんが、お
手元の「春季労使交渉の手引き」というところの五十五ページにその概要を紹介させていただいております。ここに書いてあるものは、一番下のところ、長期蓄積能力活用型グループ、これはいわゆる今までの
正社員のグループ、そして真ん中の箱の高度専門能力活用型グループ、これは高度の専門能力を持った契約社員みたいな方々をイメージしております。一番右上の箱の
雇用柔軟型グループは、場合によっては
派遣労働者あるいは
パートタイム労働、このような方々を想定しているものでございます。私
どもは、柔軟なワークシェアリングに加えて、このような
雇用ポートフォリオをうまく活用して、
企業の運営に合って、そして更には従業員のニーズに合ったものを作り上げていっていただければと考えておる次第であります。
それは、またこのコピーでお配りした
資料にお戻りいただきたいんですけれ
ども、三十五ページに書いてございますように、今後、
少子高齢化が進んでいく、そして
労働力が減少していく中にありまして、今、
足下の
企業における
雇用判断というのは非常に厳しいものがございますけれ
ども、やはり今後の中長期を見定めたときに、
対応ができ、今からも準備していかれる
企業が、
人材獲得競争が仮に
構造改革がうまくいった三年後、四年後に起きたときには、やはり
企業として確実に
人材獲得競争というところでは生き残れると私
どもとしては認識しておる次第でございます。その意味で、今から可能な範囲でこういう
方向で取り組んでいただきたいと考えておる次第でございます。
お
手元の
資料といたしまして、そのためにはやはり
企業として行わなくてはいけないことは何か。それが三十八ページのところに「人事・
賃金制度の
改革を進めよう」という形で書いてございます。
基本的には、ここの
二つ目のパラグラフに書いてございますように、仕事と責任の差に応じてやはり成果を適切に
評価していくと。年齢、勤続、学歴など属人的な要素が重視されがちであったのが今までの
日本における
賃金制度の実態でございましたけれ
ども、その属人的要素が
企業に対する貢献あるいは成果に結び付いていない場合にはその要素を除いていく努力、それが重要であろうと考えてございます。
時間が参ったようですので、最後にもう
一言だけお話し申し上げておきたいと思います。
次のページの三十九ページ、「
労働市場改革の推進」でございます。
労働市場がやはり
経済のグローバル化に合わせた形での
対応をしていかないと、やはり
日本としても国際競争に打ちかっていかれないと考えております。その意味で、キーワードとしましては、ここの四つにありますように、移動性、柔軟性、専門性、多様性が生かされる
仕組みを
構築していくことが重要かと思っております。
私
どもといたしましては、例えば多様性という意味合いでは、日経連の中にダイバーシティ研究会というものを設けまして、いかに多様な
人材を活用していくか、それが
企業の今後の命運を制するものであるという命題の下、議論を進めている最中でございます。
柔軟性等につきましては、やはり
労働力需給
制度に対する
規制をより撤廃をしていっていただくことが必要かと思っております。
それは、具体的には四十ページの
二つ目のパラグラフに書いてございます。
人材派遣事業における派遣期間の諸制限の撤廃等、あるいは物の製造の業務、医療
関係業務への派遣の禁止が今現在なされておりますけれ
ども、その
部分についても派遣事業ができるような
仕組みの
構築が必要だと考えております。さらには、
雇用期間の原則一年となっているものを五年に延長する、あるいは労働時間
規制そのものにつきましても、いわゆる工場労働者のみを想定した今の労働時間
規制については、ホワイトカラー層、そして知識で、知恵で勝負していく
日本の
企業の
競争力を決めていく、そういう労働者が増えている中にありましては、その方々の労働時間管理についても適切な見直しをしていただきたいと考えております。
時間が参りましたので、私からは以上とさせていただきます。
どうもありがとうございました。