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参考人(
石田頼房君) ありがとうございます。
石田でございます。
今日、二つの
法律案が議題になっておりますけれども、私は、
都市再生特別措置法を
中心に
意見を述べて、
都市再
開発法の
改正の問題については、御質問でもあればお答えしたいと思っております。
特別措置法についても申し上げたいことはたくさんあるんですけれども、時間も限られておりますので、四点ほどに絞って
お話をしたいと思います。
第一点は、
都市再生ということをどう考えるかという理念的な問題をちょっと申し上げておきたいと思います。
私は、
都市再生という
言葉を使って論じたことというのは二、三回あるんですけれども、その最初は、一九八五年に
土地法学会が
都市の
再生と法というシンポジウムを行いまして、その中で「
都市再生のあり方」という題で報告をいたしました。御
参考までに配付させていただいておりますけれども。
この時期は、ちょうど一九八三年に中曽根首相がアーバンルネッサンスという
言葉をお使いになって、今回とかなり似たような方針で
都市計画を進めようとされていた時期でございます。
私は、この論文の導入部分で
都市再生とは何か、何をなすべきかを論じ、まとめの中では
都市再生へ向けての
都市計画法制の整備というようなことについても論じております。
御承知のように、中曽根首相のアーバンルネッサンスの政策の結末が地価の高騰、それからバブル
経済、その崩壊、そして失われた十年を経て現在の
日本経済の困難につながっていることは明らかでございます。したがって、まず
都市再生ということを掲げての政策が、この前車のわだちを踏むことがないようにしなければならないというふうに思っております。
この論文の中で、私は
都市再生という
言葉を、それを正しく考えるならば、やっぱり
都市再
開発というものとちょっとやっぱり対置して考えるべきだということを述べております。要するに、施設を取り壊し、造り直し、建て替えるという、そういうものと対比して、
都市再生というのは、
都市で営まれるいろいろな
活動の回復に着目をする、英語で言いますとリハビリテーションとかリバイタライゼーションというような
言葉が適当かと思うんですけれども、しかしそう申しましても、
都市再生の目標をどこに置くかというのは、
都市の現状をどう認識するかということに非常にかかわっております。
最後にちょっとイギリスの例を申し上げますけれども、そこでも、同じ
地域について
都市再生をうたいながら、全く違った二つの
プロジェクトがぶつかり合ったというような例がございます。都心が衰退しているという現状に対しても、現状認識の仕方によっては、都心へ人口を呼び戻すということが最大の
課題だという見方も出てくるし、あるいは都心でオフィスビルや何かを、商業施設を建てて
経済活動を活性化するということが一番大事だという見方も出てくるし、あるいは人々がだんだん郊外に移っちゃうというのは、
都市生活の快適性が欠けてきているんだから、それを回復するのが目標でなければいけないというような
考え方が出てくるわけです。そういう様々な
都市再生の目標をどう考えるのかと、この辺がやはり一番重要な点ではないかと思うわけです。
私は、現在、
都市再生を考えるならば、
都市生活の快適性の回復ということに最大の目標を置くべきだというふうに思っております。もちろん、私も、
都市の
開発整備が
経済活動の活性化につながる、そういうことは否定しません。また、ある
意味では、それも目標に加えることはいいことだと思っております。ただそれが、かつてのバブル期のように、
開発を行う者がぼろもうけをすることだとか、地価が投機的に上がるのに応じてもうけるという、そういうのが
都市再
開発とか
都市再生の
経済活動の効果ではないと、このところをしっかり踏まえなきゃいけないというふうに思います。
地域経済が活性化し、雇用を創出し、
開発の利益が
地域に還元される、そういうことが
経済の活性化の本当の
意味だというふうに考えております。
第二点としては、
都市再生をめぐる国と地方
自治体の関係、すなわち
都市、
地域政策の策定における地方分権の問題について触れたいと思います。
今回の
都市再生特別措置法の仕組みは、最近の
都市計画法制度の傾向から見て、ちょっと異常な仕組みを作ろうとしているというふうに思っております。非常に中央集権的なトップダウンの制度になっております。
都市再生本部、これは総理
大臣を
中心にして全閣僚が入るということになっているようですけれども、それが国の
一般的な
都市再生方針、
基本方針を決めるということはあってもいいんじゃないかと思いますけれども、
都市再生緊急整備地域を指定すること、その
地域ごとの整備方針を定めること、あるいはそこで行われる
民間都市再生事業の認定を行う、こういうことを全部ここで集中的にやるということになっております。これは、地方自治法に定めておる基本構想とか総合
計画行政、そういうものや、一昨年の、一九九九年の
改正による、一昨々年になりますか、
都市計画権限の地方分権化と逆行するような仕組みではないかというふうに思っておりまして、その中に、幾ら地方
公共団体が申出制だとか、地方
公共団体の
意見を聞くとかということが項目ごとに書いてあっても、それでは救えない非常に大きな問題点だというふうに思っております。
この
法案を少し勉強して、かつてありました新産業
都市建設促進法というのに類似しているところがあちこちにあるということに気付きました。この
法律も、新産業
都市の区域の指定は
内閣総理
大臣が行うということになっておりますけれども、原則として、市町村の
意見を聞いた上で都道府県知事が行う申出に従って区域を決めるというふうになっておりました。トップダウンで決める方法もないわけではないんですけれども、申出が全くないところについては国がこの
地域、区域指定をすることがあるというふうに、原則ではない形で決めているわけです。
この新産
都市法が作られたのは地方分権が余り
議論されていないような時期ですけれども、そのときでさえ、都道府県の申出に従って国が決めるというふうな制度になっていた。しかも、都道府県や市町村は、その申出とか協議をするときに議会の議決を必要とするとまで書いてあったわけです。そのことから見ても、この地方分権時代の
法律として、今度のこの
都市再生本部がいろんなことを決めていく、イニシアチブを取っていくというやり方は少しおかしいんじゃないかというふうに私は思います。
なお、その新産
都市法には、今回の
法案にある
都市再生緊急整備
協議会と似たような
協議会がやはり規定されております。この点も類似点ですけれども、新産
都市法の
協議会は、都道府県知事を会長にした都道府県に置かれる仕組みです。ところが、今度の
法律は、
法律による
協議会は、
緊急整備地域ごとに置かれるといいながら、この
協議会は国に置かれることになっているわけです。これも随分おかしいんではないかと。なぜ新産
都市法のときでこうだったものが今度の
法律ではここまでトップダウンになるのかということを私は大変疑問に感じております。
第三には、具体的な
都市再生事業推進の手法の問題、特に
再生特別地区における
規制の
緩和の問題について申し上げたいと思います。
法案では、この
緊急整備地域の中に
再生特別地区を指定し、いろいろな制限を、
都市計画制限が規定されているものを白紙に戻すということを定めております。この問題点は
小泉参考人も述べられましたけれども、確かにこういう仕組み、やり方というのが全くいけないということはないんですけれども、そういう既に決まっている
都市計画制限というのは全市的な
観点で決められている。一九九二年にできた
都市計画マスタープランのような全市的な、しかも
住民参加で徹底的に
議論して作られたマスタープランに従って用途
地域とか様々な制度は決まっているわけです。
ですから、特定の
地域だけを抜き出してその制限を緩める、あるいは白紙に戻すということであれば、もう一度そのマスタープラン的な立場に返って検討をして、それが妥当であるということを決めなきゃいけないと思います。それは、当然に
住民の参加の下で定められる
都市計画マスタープランに返って考えると、そういうことが必要ではないかと思います。
調査
委員会が作成した
参考資料というのを読ませていただいたら、
再生特別地区のモデルというか、としてイギリスのエンタープライズゾーンのことが書いてあって、これは非常にうまくいった例だというふうに書かれておりました。私も、ドックランド、このエンタープライズゾーンで再
開発した典型地区と言われているところを二度ほど見学をしておりますけれども、大体行かれる方は、カナリーワーフ辺りを見て、すばらしいのができているといって帰ってくるんですけれども、私はたまたま案内人が面白い人でしたので、そのすぐ隣接するかつて港湾地区で働いていた労働者の
住宅街を見学して、そこの
人たちの話を聞くという機会がございました。確かにカナリーワーフは繁栄しているんですけれども、そこにかつてあった職場に働いていた
人たちが地区外で取り残されて、遠いところまで遠距離通勤をしなきゃいけなくなっているということを聞いてまいりました。
要するに、特定地区の再
開発というのは、決してその中で閉じているのではなくて、
周辺地域、更には全市的な問題に
影響を及ぼしているのであって、そこの
規制を緩めるとか緩めないとか、どういう
開発をやるかというのは、決してその地区の中だけで考えてはいけないということをこの例は示しているのではないかと思います。
最後に、
都市再生における
民間企業の位置付けの問題について述べたいと思います。
まず申し上げたいことは、その特定の地区の
開発整備事業の
プロジェクトと
まちづくり、
都市づくりの
計画というものはレベルの違う問題であって、本来全体的な
計画があって、それを実現する手段として
プロジェクトがなければいけないと、この点です。これは先ほど申しました。ドックランドの例で申しました。
この
民間事業のかかわり方で一番問題だと思うのは、
民間事業が、
民間企業が
プロジェクトの提案をし、それにかかわる
都市計画の変更について提案ができるという制度が入ったことです。これはかなりやっぱり重要な問題だというふうに思っております。しかも、それに六か月とか三か月とかという期限を切っていると。提案がされたら、それを受け取った者は
都市計画を六か月の中でどうするかということを決めなきゃいけないということになっております。これも先ほど申しましたマスタープランに返って考えなきゃいけない問題を含んでいるということから見れば、マスタープランというのは大体二、三年掛けて各
自治体が作っているわけでして、それを変更するという場合でも当然一年とか一年半とかという時間が掛かるわけです。それを期限を切って判断しろというような制度というのは、かなり問題があるというふうに思います。
ここでまたもう
一つの例を挙げておきたいと思いますけれども、これもちょうど
日本の、今度提案されている
都市再生地区と似ているところですが、ロンドンのシティーやウェストミンスターとテムズ川
一つ隔てたところに低未利用地区でコインストリート地区というのがございます。
ここでは、ディベロッパーと地主が組んで企画した再
開発計画、これは事務所、ホテル、商業施設、そういうものを含めた高度利用型のものですけれども、それと地区の
住民が、
周辺地区の
住民が提案をした
住宅を
中心とした再
開発計画というものが二つぶつかりました。両方とも
開発申請として出まして、それが真っ向からぶつかって、結論は両方ともいいという、両方に
開発許可が下りるということになりました。
要するに、
一つの地区をどう再
開発するかということは、そのいろいろな条件というか見方で判断すると、両方ともいいということがあり得るんだと。それがどう最終的に決まったかということは、
住民側の
プロジェクトが地元の
自治体もそれを支持したために実現をされて、非常に長い時間が掛かっておりますけれども、今事業の途中にあります。
要するに、これは先ほど
小泉参考人も言われたんですけれども、
一つの地区に対して二つ以上の提案が出てきて、それがぶつかり合って、徹底的に
議論されて、最終的に判断がされていくという、こういうプロセスを経るならば
民間企業が
都市計画の変更を提案するということもいいと思うんですけれども、それが三分の二の同意を得たからそれ
一つだ、そういう形ではなくて、たとえ少人数でも
地域の
住民の提案したものも同じ土俵で
議論されて決まっていくような、そういう仕組みを持つならば今度のような
民間の提案制度というのも妥当だと思うんですが、今のやり方でいうとどうもそうならない。そこに一番大きな問題があるというふうに思います。
やはり、民主主義的な手続というのをどう作っていくかということとこの問題というのは深くかかわっているというふうに思いますので、
是非慎重な御検討をいただきたいというふうに思っております。
時間も来ましたので、終わりたいと思います。