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2002-04-24 第154回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年四月二十四日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  四月九日     辞任         補欠選任      遠山 清彦君     高野 博師君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         関谷 勝嗣君     理 事                 山崎  力君                 山本 一太君                 藁科 滿治君                 沢 たまき君                 緒方 靖夫君                 田村 秀昭君     委 員                 小林  温君                 西銘順志郎君                 野上浩太郎君                 舛添 要一君                 森元 恒雄君                 吉田 博美君                 小川 勝也君                 木俣 佳丈君                 山根 隆治君                 若林 秀樹君                 高野 博師君                 井上 哲士君                 大田 昌秀君    事務局側        第一特別調査室        長        鴫谷  潤君    政府参考人        外務大臣官房審        議官       城田安紀夫君        外務大臣官房審        議官       奥田 紀宏君        外務大臣官房審        議官       滑川 雅士君        経済産業大臣官        房審議官     田勢 修也君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○国際問題に関する調査  (「新しい共存時代における日本役割」の  うち、イスラム世界日本対応について)     ─────────────
  2. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九日、遠山清彦君が委員を辞任され、その補欠として高野博師君が選任されました。     ─────────────
  3. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際問題に関する調査のため、本日の調査会外務大臣官房審議官城田安紀夫君、外務大臣官房審議官奥田紀宏君、外務大臣官房審議官滑川雅士君及び経済産業大臣官房審議官田勢修也君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本調査会では、「新しい共存時代における日本役割」のうち、イスラム世界日本対応について、これまで六回にわたり十二名の参考人から御意見を伺い、政府から報告を聴取するなど、重点的かつ多角的な調査を進めてまいりました。  本日は、これまでの調査を踏まえ、イスラム世界日本対応について、午後四時ごろまでを目途に委員間の意見交換及び政府参考人に対する質疑を行います。  本日の議事の進め方でございますが、あらかじめ発言者を定めず、自由討議方式により意見交換を行います。  発言を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って発言を行っていただきたいと存じます。  できるだけ多くの委員発言できるよう、委員の一回の発言時間は五分程度お願いをいたしたいと思います。  また、本日は外務省及び経済産業省から政府参考人出席もいただいておりますので、発言者政府参考人説明を求めていただいても結構でございます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、御発言を希望される方は挙手お願いをいたします。
  6. 山崎力

    山崎力君 自民党の山崎でございます。  今日は、今までと違いまして自分なりの意見、これは党というあれではなくて、個人的な意見も踏まえていろいろ考え方を述べ、政府参考人の方にもちょっと参考意見をお聞かせ願えたらということでございます。  今回の一連のイスラム世界の勉強、調査を通じまして、やはり非常に難しいなというのが第一印象でございました。キーワードをいろいろ考えてみて、やはり宗教、特に一神教の問題、しかも、キリスト教ですら本当に理解しているかどうか分からぬというところに、それよりも遠い存在イスラム考え方をどう理解するか。それからもう一つ、やはり今も、現在も問題になっているパレスチナ絡みの問題、そして石油の問題、この辺がやはり日本とのかかわりでどうしても避けて通れない問題だなというふうに思っております。  そういった中、それを踏まえまして、私自身、この問題で個人的にいえば、一番どうしても引っ掛かりがあるのは、かつてのいわゆる、何というんでしょうか、日本の新左翼という人たちといわゆるアラブ連帯PLO時代からの連帯、そういったものの総括がどういうふうにできているんだろうかと。そこのところに対する外交あるいは国民の思い、これは余り意識していない方も多い、一部の人しかそこのところを意識していないかもしれませんけれども、そういったかつての解放戦線グループと今の彼らのいわゆるアルカイーダを中心とした勢力、あるいは現在のパレスチナ勢力、そういったもののつながりがどうなっているのか、その辺を彼ら自身イスラム人たち自身どう思っているのかということを踏まえないともう一歩進んでいけないのかなと。  余りそういった議論、最近聞こえてきません。もう過去のものになったのかもしれませんが、テルアビブの空港で最初の自爆テロ的な攻撃をしたのは我々日本人の同胞でございました。その一人の岡本という人間が一種のヒーローになって、彼一人日本への送還を阻止されたという形もございます。  そういった中で、外務省、どなたでも結構ですが、その辺のところが今、現状外交上どのように政府として理解しているのか、そしてまたアラブの、温度差はあったとしても、アラブ人たちがどの程度その問題を今引きずっているのかいないのか、その辺についてちょっと考え方をお聞かせ願えればと思いますが。
  7. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 外務省中東局奥田と申します。  ただいまの山崎先生の御質問、大変難しくて一言ではなかなか言えないと思いますけれども、元来やはり六〇年代のころの中東情勢を思い浮かべてみますと、既に一つは五六年のスエズ動乱というのがあって、それから六七年にはダヤン将軍の、片目の将軍ダヤン将軍の六日間戦争というもので、イスラエルが今の西岸ガザ及びシナイ半島を圧倒的な武力で占領したという時代でありますが、そのときの、その辺りアラブの国が一体どうやって近代化をしていこうかと思っていたかというと、シリア、エジプト辺りではやはり社会主義アラブ社会主義ということで国の近代化をやっていこうということだったかと思います。当時はまだ、今のようにイスラム原理主義というものもそんなに強くなくて、アラブ自分たちアイデンティティーを持って、それでその国づくりをしていこうというときの一つの軸が社会主義というものだったかと思います。  当時、米ソ対立時代でありました。ソ連は、イスラエルアラブとの間の抗争との関係では圧倒的にアラブ側を支持する、パレスチナを支持するという立場でありました。他方米国は、米国及びヨーロッパ諸国イスラエルというもの、まだ戦後のユダヤのホロコーストの記憶もまだ新しいということもあって、イスラエルに近い立場を取っていました。  そういう中で、恐らく日本の新左翼運動も、当然パレスチナ運動というものが民族解放運動だということで、民族解放運動というのは社会主義勢力がそれぞれのところで応援、支援をしていましたから、自然とやはりパレスチナの対イスラエル闘争というものを民族解放闘争と位置付けて連帯していったということがあったかと思います。  それが今どうなったかということでありますけれども、恐らく新左翼パレスチナ関係というのは心情的には今も続いているのだと思いますけれども、何せ九〇年以降、ソ連崩壊東ヨーロッパ崩壊というものに端的に現れているように、社会主義そのものに対する信頼感といいますか、が崩れているわけでありますので、少なくともアラブにとっても、いわゆる社会主義ないしは左翼系の人がそのままアラブないしはパレスチナの友人だということにはなっていないんだろうと思います。  他方、その反対に、二つあろうかと思いますけれども、二つ出てきた新しい事象として、一つは、イスラム原理主義自分たち一体感を求めていくという運動、そういう気持ち、そういう政策が強くなっているということが一つ。  その中で、最近のグローバライゼーションとかグローバルスタンダードというものに対する漠然とした反感というものがアラブの中にあって、そういったものとアラブ諸国、特に草の根レベルとか、それからパレスチナ運動を支持している人とのつながりというものが出てきたかというふうに認識しております。  取りあえず、以上でございます。
  8. 山崎力

    山崎力君 その辺の流れは現状のところなんですが、そうすると、その辺のところで我々がどうもアラブのいわゆる民族解放的な系列に対して、それ自体についてのとやかくはいいとして、問題ないとして、かつての引きずっている部分について、どうしても何というか批判的な目といいますか、その辺がどうなっているのかねということに対しての我々日本人側が持っているということに対しての意識というのは、余り現状アラブ人たち草の根レベル政府レベルも含めて余り意識に上っていないと理解してよろしいんでしょうか。
  9. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) お答えします。  新左翼とか、それから社会主義勢力との連帯ということは、今のアラブ草の根の人々とか、それから、先ほど申しましたように、パレスチナ運動をやっている人の間にはもうもはやそれほどの力はないのではないかというふうに思われます。それよりも、やはり、先ほども申しましたイスラム原理主義的な考え方ないしはアンタイグローバライゼーション、反グローバライゼーションのような者たちの力が強いのかなと思います。  例の九月十一日以降、大変脚光を浴びておりますアフガンのアルカーイダの人たち、これはアラブ人たちですけれども、彼たちの出自をたどるとかなり中流から裕福な、オサマ・ビンラーデン自体が大きな日本でいうとゼネコンの御曹子の一人だったということにも象徴的に表れているように、割と経済的にも恵まれた、社会的には割と社会主義というよりは保守的な人たち自分たちアイデンティティーのよりどころがなかなか求められずに、一つイスラム原理主義、それから彼たちの直接のきっかけになったのは反共産主義ということで始まった運動でございますので、そこのところで今やそういう社会草の根レベルでは社会主義とか左翼、すなわち友達だというような意識を持ちにくい状況になっているんじゃないかというふうに私は思いますが。  以上です。
  10. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 民主党・新緑風会の木俣でございます。  まず、外交戦略ということを政治面経済面と分けて中東戦略ということで考えたいわけでありますけれども、幾つか私も今までも質問してきたんですが、例えば石油中東依存度の話、これは現在八六、七%になったんでしょうか、オイルショックのときが七七%だと記憶しておりますが、これからすれば非常に中東依存していると。そしてまた、石油というのは正に産業の米であるということからしても、この依存というのはやはり危機的な状況ではないかと思うんですが、この点はどういうふうにお考えになるか、まず一点。  それで、これ、危機的ではなく市場で調達できるということで考えたとしても、例えば石油確認埋蔵量ですね、可採年数四十年、マキシマムでも七十年という計算があるわけで、そういった中で日本外交がどれほど買い付け等々について機能していると思われるか、二つ目。  これは特に、今中国のいろんな要人中東歴訪をしておるように思われますけれども、こういったものと比較しまして、いかにも日本外交というのが、政治家外交が甘いという意識を持っておりますが、これについてはどうかと。  それから、中東の中でどの国と仲良く、つまりどの国を押さえていくというのが日本外交戦略なのか、教えていただきたいと思います。  それから、中東の国は火薬庫になっておりまして、米国におりましても世界に残された唯一の非民主的な国家の固まりであるというふうに思っておるわけで、今回のアフガンが終わったとしても王族というのがずっと残っておりまして、非常に不安定な要因になっておるんですが、日本国としては非民主的国家の群というふうに見ておるかどうかという認識を伺いたいと思います。  さらには、日本がこの間、今もインド洋に派遣している艦隊がありますけれども、これらについてどのような認識中東各国が持っているか。さらには、米国は、中東の安全を守るために日本としてはどんなプレゼンスを、どんな要はコントリビューションを、貢献をしたらいいと米国が思っているのかということですね。この辺についても教えていただきたいと思います。  いずれにしましても、全体通して日本の今紛争が起こっているイスラエルパレスチナの問題においても政治という面から見た場合に非常に独自性がどこまであるのかなというふうに私は見ておりまして、今後は政治的に日本日本として、独立国日本として独自の外交戦略を持って中東に接するかどうかということを教えてください。  以上です。
  11. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) 経済産業省審議官田勢と申します。  お尋ねの件でございますが、まず、石油依存度が以前と比べますとやや上がってきておる、輸入依存度中東依存度が上がってきておるという件でございます。数字は前回の本調査会におきましても資源エネルギー庁の部長から御説明をいたしましたところでございますけれども、私ども自主開発原油開発努力を傾注するとか、あるいは供給ソース多角化、こういったものにつきまして努力を傾注してきておったわけでございますが、結果といたしまして、中東における原油供給ポテンシャルが非常に高いということ、これは価格あるいは質、あるいは安定度といったようなことから当然のこと……
  12. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 短く答えていただければ結構ですから。
  13. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) はい。  そういうことで、中東ポテンシャルが高いということで依存度が高まっておる、こういうことかと存じます。  それから、どの国が大切かというような御質問もございまして、なかなか難しい問題でございますが、例えばサウジアラビアクウェートアラブ首長国連邦、カタール、オマーン、たくさんございます。それからイランもございます。あるいは、問題になりますのはイラクといったような国もございまして、たくさん埋蔵量を持っている国があの地域にはございまして、それぞれの地域と緊密な関係を保つというのが私どもの基本的な考え方でございます。  以上でございます。
  14. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 石油の話と若干重なるところもありますが、問題の大半が中東関係ですので、ひとわたりお話を申し上げたいと思います。  石油との関係で、日本外交がどの程度機能しているのか、機能していないのではないかという御指摘だと思います。  確かに、大使館活動として、これまで石油の取引でありますとか新たな利権の獲得でありますとか、そういったものに個別の契約について活動していなかったのではないかという御指摘であるとすれば、それはそうであったというふうに思います。  しかし、この点については石油関係だけではないのですけれども外務省、それから外務省大使館といたしましてもできるだけ、邦人の企業の活動というものが公正さを損なわないという条件ではありますけれども、できるだけそれは応援していかなけりゃならないということで、力を入れ始めているところだというふうに承知しております。  それからもう一つは、大きな外交をやっていく中で、やはり我々は石油の確保ということは、時代は変わっていますけれども、忘れてはならないと思います。いろいろな見方はあろうかと思いますけれども、例えばアフガニスタンの復興を助けるということも、大きく言えば将来的にはそういう石油の安定的な供給につながるということもやはり視野に置いてやっていくべきではないかと思います。  中東の国でどこの国と仲良くすべきかということについて、石油関係では今経済産業省の方から申し上げたとおりかと思いますけれども、もちろんそういう観点からはそのとおりでありますけれども、やはりこれまでのいろいろな政治的な関係、それから特にパレスチナ問題等々の関係でいえば、やはりサウジアラビアも重要でありますけれども日本としてはその周辺国家、特にエジプト、ヨルダンというような国は非常に重要でありますし、そういう国としてこれまで付き合ってまいりました。  それから、必ずしもいつも仲良くしているというわけではありませんけれども、いろんな意見の違いはあるわけですけれどもイランとの関係は非常に重要だというふうに思いますし、それから、このように九月十一日以降の新しい状況というものを考えてみますと、やはり中東というのをよく相対的に見ていかなければならないのではないかということを最近感じておりまして、例えば、これはテロリストがたくさんアフガニスタンに行っていたということであったわけですけれども、イエメンの関係でありますとか、それからスーダンは長いこと見放されておりましたけれどもスーダンテロ関係でやはり、すぐ仲良くするという話ではないかもしれませんけれども、忘れてはいけないということかと思います。  それから、非民主的国家が多いではないか、特に王族の国があって、それは不安定ではないかということでありますけれども日本としてこれらの国を一律に非民主的国家として非難するというようなことはこれまではしたことがございません。それぞれの国なりに民主化努力というのはしております。クウェート、これは民選国会もあります。イランも例えば民選国会もあります。バハレーンでは最近国会というものの力を強めるということをやりました。  それでは、サウジアラビアはどうかとかモロッコはどうかというようなことがございます。これらの国もよく見ていきますと、必ずしも民選ではありませんけれども諮問議会というようなものを九〇年代に作るとかいうことがございまして、それなりに機能しているということでございます。他方で、そういった体制であるので、よく注意して国内が不安定でないかどうかということを見なければならないということは、そのとおりかと思います。  それから、中東各国日本の軍事的な存在、特に最近、テロとの関係日本海上自衛隊の艦船が行っておりますけれども、そういったものについてどう見ておるのかということについて、今ここに、何といいますか、しっかりとした情報がないんですが、何月何日にだれがどういうことを言ったということはちょっと私も覚えていないのですが、一般的に日本政治的な役割、それから軍事的な役割ということについてアラブの国は少なくとも警戒心がない、あえて言うと、歓迎する場合が多いということは言えるかと思います。  それから、どこまで独立国日本として独自の外交戦略でもって中東問題をやっていくかという話です。  これについては、中東局としては日々いろいろと悩んでいるところであります。しかしながら、日本中東から地理的にも遠い、それから歴史的にもなかなか関係がないというようなことがありますけれども、この時代に、国際社会のいろんな世論を見てみますと、やはり日本が積極的に物を言っていく、それから例えば中東問題、パレスチナ問題に関する国際的な世論の構築というものに参加していくということはこれは否定できない、すなわち、そういうことをやらないというわけにはいかない時代になっているかと思います。そういう中で日本は、地理的な遠隔性というようなこと、歴史的な希薄性ということを逆手に取った外交ということをやっぱりやっていくべきなのかなというふうに思っております。  取りあえず、以上でございます。
  15. 森元恒雄

    森元恒雄君 私も何回かのこの会で参考人の方々からお話伺っておりましたけれども、いま一つまだ自分なりに、イスラム国々日本がどういう形で今後付き合っていったらいいのかと、確たるものをつかめない状態でございます。そんな思いで二、三お聞きしたいと思いますが。  せんだっての党首討論のときに、今イスラエルパレスチナの問題について日本はどう対応するのかと、こういう問いに対して、小泉総理の方は、ただ一言、大変憂慮していると、こういう答えをされたかと思うんですね。で、憂慮するのはいいんですけれども、さてその次にじゃどうなのかということが示されていないわけですけれども、多くの一般の国民から見ても、日本政府自体が今のイスラエルパレスチナを、どういうかかわりを持ち、その問題解決に向けて日本としてはスタンスで臨もうとしているのかと、また具体的にどのような行動をしているのかというのが、いま一つ見えないのじゃないかなというふうに思います。  外務大臣の答弁を伺いましても、いろんな要人の方と直接お会いしたりあるいはまた電話等で働き掛けをしているというお答えではありますが、じゃ、その会談の中身を、どういうことを言っているのかというのが見えてこないと。この点についてお聞かせいただければと思います。  それで、もう一個、下がって考えれば、そういうイスラエルパレスチナの問題に対して、日本として今、日本の置かれた立場からしてなかなか限界がある、あるいはこういう独自の姿勢、方針を打ち出しにくいという事情がもしあれば、そういうことも併せてお聞かせいただければなというふうに思います。  先ほど来からも少し、若干お話ございますように、やっぱりイスラム国々中東アラブ国々日本人にとって非常に遠い存在だと思います。端的に言えば、地方団体世界の様々な国と姉妹関係を結んだりして交流をしていますけれども日本地方団体イスラム中東国々とのそういう関係を持って頻繁に交流しているところは、ほとんど私、皆無じゃないかなというふうに思うんですね。そこにやはり日本人関心度合いというのが端的に表れているように思います。  私は、そういう中でできるだけ日本人がやっぱりイスラムに目を向けるというためにも、政府が今後進めようとしている施策を地方団体を通じて、まあNGOを通じてやるというのも一つの方法かとは思いますが、それと併せて地方団体を通じて、できるだけ一緒になって、そういう地方の力、知恵もかりながらやっていくということが国全体、国民全体の関心を高めるためにも非常に有効じゃないかなという感じがしておりますが、そういうことについてどういうふうにお考えか、お聞かせいただきたい。  それからもう一点、関係を深める中で、ある参考人の方から、イスラム世界では議員に対する評価が非常に高いと、そういう意味では議員外交をもっと活発に展開することが比較的効果が大きいんじゃないかと、こういうお話がございました。それに対して政府としてどういうふうにお考えかという点をお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一点、経済の面についてお聞きしたいと思いますが、いま一つよく分からないのは、反米、反西欧、反グローバリズムというのはいいんですけれども、そうであるとするならば、イスラム国々自分たちはどういうテーゼで、どういう戦略で、どういう体制で自分たちの国を将来引っ張っていこうとしているのか。もっと端的に言えば、経済的、産業的な基盤を築こうとしているのか、いま一つそこが見えない。反対するのはいいんですけれども、それだけで物ができていくわけじゃありません。自分たち独自の路線というものが、じゃ何なのかというのがあってしかるべきだと思いますが、私なんかにはそれがいま一つよく見えてこないと。  もう一歩言えば、かつて世界の四大文明として歴史をリードするような文化、科学の先端を担っていた地域が、今や西欧化の、近代化の流れの中に取り残された状態になっている。それが、イスラム教という宗教がかなり影響している部分がありそうな気がいたしますけれども、果たしてそれはどうなんだろうかと。  そういうしがらみといいますか、一つの制約を乗り越えるためにも、あの地域国々がどういうふうに考え、進めようとしているのかということがもしお分かりになればお話しいただければと思います。それを知ることによって、日本として今後どういうような具体的な方法で協力関係を築いていくかということが見えてくるんじゃないかなと、こんなふうに思うわけであります。  以上でございます。
  16. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) まず、イスラエルパレスチナの問題から申し上げたいと思います。  イスラエルパレスチナ問題についてどうするのかという御質問、何をやっているのかという御質問だったと承知しておりますけれども、この問題、いろいろな見方があると思いますけれども一つは、今の暴力の連鎖というものをどうやって断ち切るか、停戦をどうやって行わせるかということが一つあると。その後の問題として、政治的なプロセスとして恒久的な和平を実現するために何をしていくべきかという二つのことがある、大きく言うと二つのことがあるんだと思います。その向こうにやっぱり復興とかそういう話があるかと思いますが、取りあえず当面はこの停戦と政治的プロセスにどうやって持っていくかという話があるんだと思います。  それで、停戦についてなんですけれども、これは特に最近、アメリカの国務長官、コリン・パウエル国務長官が行かれて、その結果については多くのマスメディア等では調停不調であるとか失敗であるとかいうふうに言われておりましたけれども、確かに恐らくだれもが一番期待したであろうような結果は生まれていないことは確かでありますけれども、我々としては、この停戦、暴力をやめさせるということについては基本的にこういうパウエル長官の努力というものを軸にしてやってもらうと、やっていっていただくということが重要だと思っております。その観点から、やはりアメリカについては継続的にこの中東問題に関与していくことが重要だということをやっぱり言い続けていく必要があるのかと思います。  それから、政治プロセスにどうやってつなげていくかという話でありますけれども──失礼しました。その前に、停戦については川口大臣がいろいろ電話とか在京のアラブ大使とかイスラエル大使と話をしているようだけれどもお話をしているだけで何もやっていないではないかという御指摘だったかと思いますけれども、確かにアラブ側、それからイスラエル側に何回もお話をしましたけれども、言っていることは確かに同じなわけであります。  それは何かといえば、パレスチナについては、やはりアラファトが九三年のオスロ合意で和平の当事者として認められたときの約束、すなわちテロに訴えない、それから自分の傘下にある者がテロをするということを許さないということに彼は誓約をして、それで和平プロセスに入ったわけですので、そこに立ち返ってそれを守るようにということを言い続けると。イスラエルに対しては、即時に、具体的に言いますと、自治区のいわゆるA地区、B地区とありますけれども、本来パレスチナ側の治安に任されるべきA地区からの即時撤退ということを主張しているということであります。アメリカにつきましては、若干繰り返しになりますけれども、関与を支援するとともに、是非継続的に関与をしていくことが必要だということを言い続けているということであります。  それから、政治的プロセスの話でありますけれども、これは今いろいろな関心国がいろいろなアイデアを出しております。我が国はこの面でもやはりある種の役割を担っていかなければならないというふうに思っていまして、例えば今度国会の許可が得られるという前提でありますけれども、川口大臣がイランに行くときに重要な話題の一つはこの中東和平であります。  それで、イランにつきましては、この中東和平、特にオスロ合意に対する不明確な態度というのがありまして、それを我々は是非直すようにということを言っていましたし、それからいわゆるレバノン南部のヒズボラとのつながりというものを絶つようにということを言ってきましたけれども、それは何も今度川口大臣がイランに行くからということではなくて、継続的に続けておりました。特に、今回の厳しいパレスチナ状況になってから、イランそれからレバノン、シリアに対しましては、在京でもそれから現地でも、特にレバノンの国境からのヒズボラによるイスラエル北方への爆撃というものを停止するようにということを何度も申しました。  これは何も日本だけがやったと言い募るつもりはありませんけれども、その結果としまして、この前、二、三週間前にイラン外務大臣がレバノンに参りましたときに、イランとしては、彼たちの言い方によれば、イスラエルの挑発に乗らないようにレバノンの関係グループに自制を呼び掛ける、呼び掛けたということを言っておりました。それもある程度たち自身の計算かもしれませんが、我々はイランに対して合理的な計算をするようにということを言い募ってきたことも若干影響があったのかと思いたいと思っております。  取りあえず、パレスチナ問題については以上であります。
  17. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) お答え申し上げます。  こういった国々経済戦略あるいは経済の持っていき方ということかと思います。  まず、産油国の関係につきましては、何といっても一番重要なものが原油とガスでございます。ただ、あるから掘って売ればいいということだけではなくて、今は世界の各地でそういった供給国が現れてきてまいりましたので、価格競争、品質競争も当然あるわけでございます。したがいまして、いかに効率よく安く掘ってそれを安定的に供給できるかと、こういう競争をされていらっしゃる。これが国の基盤を支えている政策ではないかと、こういうふうに理解をいたしております。  次のジャンルは、石油あるいはガスの周辺部分、すなわち一般的には石油化学と言われるような分野でございます。  具体的に申しますと、サウジにおけるサウジ石油化学、これは我が国の企業もあるいは我が国自身も大きく参画をいたして成功したプロジェクトだと認識をいたしております。あるいは、昨年でありますが、クウェートでは石油精製に用います触媒の工場を新たにクウェートにお造りになられまして、これも我が国の企業が一部分でございますが参画をさせていただいております。こういった石油、ガスの周辺部分の産業がございます。  それから、更に拡大をいたしまして、例えば同じ産油国でもイランについて申しますと、製造業あるいはその中でも特に自動車産業などについて大変強い御興味をお持ちでございます。国産自動車は既にお作りになっていらっしゃいますし、海外からの投資あるいはノウハウの導入、具体的に申しますと、プジョーの車をイランなどはお作りになっていらっしゃるわけでございます。  一方、サウジなどに例を取りますと、こういったところはなかなか自動車を作って売るというわけにまいりませんので、一つだけ例を申しますと、例えば車用のエアコンの工場を、組立て工場を造ってほしいとか、そういうことで実現に至ったものもございます。あるいは自動車の整備工場のトレーニングを協力をしてうまく作っていただきたいというようなことで進行しているプロジェクトもあるわけでございます。  全体と申しますと、一番重要なことは、恐らく海外からの投資をそれらの国に呼び込むための施策、これが一番彼らが今重点を置いているところかと存じます。  ただ、残念なことに、様々な事情がございまして、例えば日本の企業が投資をする場合にはどこを投資先として選ぶかというのは、これは比較考量をした結果でございますので、こういった産油国あるいは湾岸諸国につきましては、海外投資を呼び込むためのアドバンテージをどうやって作り出し、アピールしていくのかということがこれからますます重要になるのではないかなと、こう考えております。  日本といたしましては、例えば産業面では様々な面でこれまでもできる限りの協力をいたしてきております。石油、ガスにかかわるものだけではなくて、先ほど申しました自動車の関係、あるいは最近は湾岸の関係では、水資源が払底しているということなので造水、海水の淡水化の関係でも私どもも全力を挙げて協力をいたしておると、こういう状況でございます。  以上でございます。
  18. 森元恒雄

    森元恒雄君 よろしいですか。
  19. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) どうぞ。
  20. 森元恒雄

    森元恒雄君 ちょっと、お聞きした中でお答えいただいていないところがあると思いますので、その点、まずお聞きしたいと思いますが、外務省の方には、議員外交をもっとやったらどうかというのと、それから地方団体をもっとかませていったらどうかと、この点についてお答えをまずいただきたいと思います。
  21. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) それでは、議員に対する評価が一般にイスラム世界では高いので議員外交をしたらどうかという御意見だったと思います。済みません、忘れました。  一般に、イスラムとかそれからアラブ諸国の間で議員が評価されているかということについて私は議論があると思います。国によって違うんだと思うんです。恐らくイランとかレバノンとか、最近はクウェートもそうでしょうと思いますけれども、こういう国では最近の民主化の動きもあって、国会が非常に活発に活動しておりますが、例えばサウジアラビアに行かれた場合、先ほどサウジアラビアの水準では九〇年代になって、これは湾岸戦争のいろんな余波もあって、民選ではないけれども勅選のいわゆる諮問評議会というものができましたが、これは日本国会とはやはり全く違うものだし、それから一般の人もやはり諮問評議会の活動というものは日本国会活動に対する関心とは全く違う関心しか持っていないので、そういう意味で、やはり一つ一つの国を見ていかないといけないのかなというふうに思いますので。他方で、いろいろな事情で、アラブ、それから特にアフリカもそうかと思いますけれども、大臣だけではなかなか手が回らないところもあります。  そういうわけで、国政に直接に参加されている日本国会議員の方々がこういうところに行っていただくことは、一般論としては大変有り難いことだというふうに思っております。
  22. 滑川雅士

    政府参考人滑川雅士君) 地方団体を通じた支援ということについて簡単にお答え申し上げたいと思います。  地方団体を通じた交流、特に姉妹都市交流、あるいは最近でございますと、同じ悩みを持つ、例えば大気汚染とかそういう悩みを持った都市同士での交流というのが、正直言いましてアジア地域にはかなり広がってきておるという状況かと思っております。  そうした意味で、地方のそうしたそれぞれの経験あるいは知見というのを生かした形での協力というのはこれから高い可能性を秘めているものというふうに期待をしておりまして、私ども経済協力の立場でございますが、地方を通じましたそうした協力というものについて今後更に力を注いでまいりたいと思っております。  ただ、中東地域につきましては、残念ながらまだ、いわゆる都市間交流というんでしょうか、特に地方都市と相手国との交流というのはまだアジアに比べると限定されたものにとどまっておるということでございますので、そうした意味では、様々な機会に情報を提供していくということが重要かというふうに思っておる次第でございます。
  23. 森元恒雄

    森元恒雄君 もう一点、経済産業省の方にもう一点お聞きしたいと思いますが、具体的にそういう自動車だとか水だとかというようなことについての先方から要請があるという話は今お聞きしましたけれども、私は、端的にお聞きしたかったのは、その反米とか反西欧とか反グローバリズムということをスローガンといいますかテーゼに掲げるのはいいんですけれども、それじゃ自分はどうしようとしているのかというのが私なんかには見えないと。そういうものが見えないと、例えば今お話しの投資環境を仮に整備するとか企業法制を整備するといったときに、じゃどういうものを整備しようとしているのか。それが全然世界のスタンダードと違うものであれば、やっぱり出ていく側、特に日本側からしても非常に出づらいというようなことになりやしないのかなと。そういう意味で、そこら辺をどう考えて体制を整えようとしているのかということが分かればお聞きしたいと、こういうふうにお聞きしたんですけれども
  24. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) なかなか機微にわたる話になろうかと思うんでございますが、例えばイランについて申しますと、明らかに反米という色彩があるわけでございますが、米国と極めて強い関係を有しております我が国について、資源、エネルギー、更には経済全般について協力をしたいというお申出があるということでございまして、例えばイランが反米というようなことをいろんなところでおっしゃるとは必ずしも私正確には思わないんでございますけれども、それとこの話とは直接つながってはいないのではないかと、経済に役に立つことはしっかりやっていこうというお気持ちではないかというふうに考えております。
  25. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 今の申し上げたことを若干補足する感じで申し上げたいと思いますけれども、一般にイスラム諸国、アラブ諸国が反米とか反グローバライゼーションというスローガンを言いながら実際にはどうしようとしているのかということでありますけれども、恐らくサウジでもエジプトでも、ひょっとするとイランでもそうじゃないかと思いますけれども、いわゆる経営の最高責任者のようないわゆるエリート層の人たちは、やはりグローバライゼーションとかグローバルスタンダードということが、これはもう日々自分の御商売で感じている話なので体で感じて分かっているんだろうというふうに思うわけです。かつ、恐らく昔から欧米との付き合い、イランも長いですし、サウジアラビア石油産業を取ってみれば、言わばあの国が石油の上流部門のいろんな商売のやり方のスタンダードをアメリカ、ヨーロッパと一緒に作ってきたというようなところがありますから、そういう意味では、いわゆる政治的なスローガンと経済的なエリート層たち認識というのは随分違うんだろうと思うんです。  そして、外務省の観点から、だから問題だと思われるのは、そういう社会でありながら、いわゆる草の根の人々はそういうグローバライゼーションの恩恵を直になかなか被らないし、日々の生活の中でそれが物すごく影響力があるというふうにも思われない。そして、アラビア語のニュースを見ていますと、毎日毎日パレスチナが被害を受けて、アメリカ、イスラエルが同盟を組んで弱い者いじめをしているという印象が毎日毎日のように入ってくると。したがって、そういうエリート層と草の根の人々の間の認識のギャップというものが大変大きい、国によってはですけれども、あるのではないかということが我々の立場から言うと懸念であるということは言えると思います。
  26. 高野博師

    高野博師君 中東政策について二、三お伺いしたいと思うんですが、一つは、イラン政策、川口大臣が近々イランに行かれるということなんですが、イランに行かれて日本立場というか、これは例えば悪の枢軸というアメリカが決め付けをしているんですが、日本はどういうスタンスで、そしてイランとの関係はどうしようとするのか、これについてちょっとお伺いしたいと思うんですが。  私は、今、反米とか反グローバル化というようなお話がありましたが、アメリカの対中東政策、これはアメリカの外交政策の基本にかかわるんですが、そこに問題があるんではないかと思うんですが、例えばもうすべてにアメリカは国益を優先する、あるいは二元論的な考え方、善か悪か、テロリストかテロリストでないか、敵か味方かと、そういう峻別をするところがある。そして、力の論理というかパワーポリティックス、そして米国の価値観を押し付ける。  これは正に自由、民主主義といっても、これはアメリカ型の民主主義、イラン型のような民主主義は認めない。市場原理、こういうところがあって、そしてまた中東について言えばユダヤ・ロビーというのが背景にある、軍需産業もあるし、強大な軍事力を持っている。こういうものが基本としてベースにあって中東政策をやっていると。したがって、僕は、パレスチナ問題についてもアフガンの復興についても、アメリカの責任は極めて重大だ、こう思っているんですが、日本がそれじゃどうするかということなんですが。  一つ、もし分かったら教えてもらいたいんですが、アフガンのカルザイ議長がどういう経緯で出てきたのか、どういう出身の人間なのか。  僕はちょっと物の本で見たのは、石油会社ユノカルのコンサルタントをやっていたと。このユノカルという会社とサウジのある会社がアフガンにパイプラインを敷くという計画がずっとあって、そのコンサルトをやっていた人間がカルザイだ、したがって彼はアフガンのどの民族もあるいは何の利益も代弁していない、こう言われているんですが、この辺は本当なのかどうか。  そうすると、アフガンが復興成って安定したら必ずパイプラインを敷いてくるんだろうと。これはもう正にアメリカの国益というか、アメリカのエネルギー戦略というのがあるわけなんですが、そういうことが背景にあるとすると、これはちょっと日本としてもきちんと考えなくちゃいかぬではないかなと私は思うんですが、その辺どう思っているのか。  それから、テロの問題なんですが、九・一一の後、テロ対策は国際的な協力の下にやっているんですが、そもそもテロとは何か、テロリストとは何かという定義が国連でもできていない。  そうすると、このテロという、テロリストという、いったん決め付けられるともう問答無用だと。相手の存在もすべて否定される、人権もない、ジュネーブ条約の適用もない。これはもう捕まったら、テロリストのおそれがあるというだけでカリブ海の島に流されちゃう。これ人権問題もあるだろう。これは下手をすると魔女狩り的なアメリカの行動につながらないかと私は懸念を持っているんですが、その辺はどういうふうに見ているのか。  そして、カリブ海あるいは中央アジアの膨大な石油、ガス資源があるんですが、日本のプレゼンスが弱い。そういう意味での日本外交戦略が僕は見えないんではないか、こう思うんですが、その辺についてはどういう考え方外交をやっているのか。ちょっとまとまりませんが、まずお伺いしたいと思います。
  27. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) 今御指摘ございましたカルザイ議長のパイプライン、ユノカルのお話につきまして、若干私どもが承知しておりますことだけお話をさせていただきます。  過去にトルクメニスタンのガスを、パイプラインを縦にというか下の方へ引いてまいりまして、アフガンを通ってパキスタンの方へ持ってきてというようなことを考えたことがあるのは事実かと存じます。  最近では、例えばパキスタンのムシャラフ大統領もそういうプロジェクトにつきましてちょっと御発言をされたようなこともあったように伺っております。ただ、現状で申しますと、なかなか、ちょっと政情の問題もございますし保守の問題もございますので、そう簡単に進む話ではないのかなというのが私どもの今の感じでございます。  御指摘がございました、そこにカルザイさんが過去に言わばフィージビリティースタディーをやったときのユノカルのコンサルか何かで入ったのかということにつきましては、私どもは十分にそこは存じませんものですから、何ともちょっとお答えを申し上げられないということでございます。恐れ入ります。
  28. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) イランの件でございますけれども、まず悪の枢軸というブッシュ大統領が一月の末に使った言葉がありますけれども、それについて日本はどうするのか、ないしはどう思っているのかということでありますけれども、悪の枢軸という表現は、私の個人的解釈かもしれませんけれども、これはアメリカのテロに対する強い立場を示すために使った言葉ではないか、テロとそれから特に大量破壊兵器が結び付くと非常に危険だということから、一つの強いメッセージとして言うための表現ではないかというふうに思います。  じゃ、北朝鮮、イラク、イランについてアメリカがすべて同じ態度を取っているかということはよく見ていかなければならないのではないかと思いますし、私の局の所掌範囲でありますところのイランについて言いますと、例えばあの発言があった後もアメリカはいろいろな形で、特にアフガンの問題ではイランとも接触をしているというようなこともございますし、そうであるとすれば、少なくともアフガニスタンにおけるイラン役割の一部についてはアメリカも前向きな評価をしているということではないかと思います。  今度、川口大臣がイランにもし行った場合にどういうことをするのかということでありますけれども、基本的な目的は、政治的にはハタミ改革路線というものを日本としてこれまでも支援してきたわけですけれども、それを支援するんだということを言いながら、やはり国際社会の懸念というものについては、この際イランのリーダーたち、これは改革派もそれから保守派も、できれば保守派の方にもお会いしてやっぱり議論をしたいというふうに思っております。加えまして、若干重なりますけれどもイランとの間で、アフガニスタンに関する協力、それからパレスチナ問題に関する政策というようなものについても協議をしていきたいと思っております。  イランにつきましては、確かに国際社会の懸念がある、人権問題とか、つい最近まで長距離のミサイルの実験をしているとか、それに北朝鮮の支援があるとか、そういうことでも懸念がありますし、それからテロの問題がございましたけれども、ヒズボラによるテロを人的、資金的に支援しているのではないかということもございますので、大変我々としてもそういった問題についてはきちっと議論をしていかなければならないと思いますが、他方で、確かに保守派、急進派という連中がおるわけでありますけれどもイランのハタミ大統領は二度にわたって国民の選挙で選ばれてきたわけです。  それで、選挙についてどこまで西洋的なきちっとした選挙かという議論はまた別途あるかと思いますけれども、いずれにしても二回受かってこられた方ですし、それからイラン国会も、何回か選挙もありまして、特に増えております、イランの若者の支援を得て改革派の人々がだんだん数を増しているという現実もありますので、そういうところに我々も注目をしながら、イランに対する働き掛けをしていく理由があるのではないかというふうに思います。  テロにつきまして国際的な定義がないというのは、御指摘のとおりであります。テロについては、国際的にすべての人がそうだと言うような定義はない、問答無用にいったん勝手にテロというふうに名付けて、後は国際法も無視してやっているのではないかという御指摘でありますけれどもテロについて定義がないというのはそのとおりであります。  しかしながら、我が国としては、いわゆるそれが自殺テロであろうが自殺でないテロであろうが、一般の市民、その問題に全く何も関係のない一般の市民を巻き添えにして、いろんな理由があるんだと思いますけれども、主義主張はいろいろあると思うんですけれども、主義主張にかかわらず、一般の市民を巻き添えにして死亡させたり負傷させたりすることは認めないということでこれまでやってきております。  取りあえず、以上でございます。
  29. 高野博師

    高野博師君 カスピ海、中央アジアに対する外交戦略について。それからもう一つ、一般市民を巻き添えは認めないというような発言を公にしているんですか、日本は、テロの問題で。公に発言しているんですか、日本は。
  30. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) すべてについてお答えできるかどうか分かりませんが、まずテロについて、無辜の市民について死亡させたり負傷させたりするのは認められないということは、これはいろんなところで言っております。言っているはずだし、言っておるようであります。  それから、中央アジアの関係でありますけれども、中央アジアにつきましては、九〇年代の初めにソ連の共和国だったカザフスタンとかウズベキスタン等の国が独立をしてから、我が国としては非常な関心を持って見ております。  特に、九七年に橋本当時の総理大臣が、国内ではありますけれども、ユーラシア外交ということを打ち出されて、一つ政治対話ということ、それからもう一つ経済的な協力ということ、それからもう一つはその域内の平和、それから核不拡散に関する協力ということを打ち出されて、それぞれ三つの柱を中心にしてこれまで様々な努力を重ねているところであります。  それで、例えば経済的な協力に関しましては──済みません、経産省の方からちょっとコメントを。
  31. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) 中央アジアの国についての経済関係をお尋ねでございます。  残念なことでございますけれども、距離的な問題とかいろいろなことがございまして、中央アジアの国々日本との貿易・投資は非常に低調でございます。  前回も資料で御説明をいたしましたけれども中東諸国と中央アジアを比較いたしまして貿易でどこが上位に入っているのかという御説明をしたんでございますが、中東ですともちろん日本が輸出でも輸入でもトップのところに入っているわけでございますが、中央アジアはやはりロシアとか近隣の中央アジアが主要な取引相手と、日本のウエートは低いわけでございます。  しかし、非常に有り難いという感じがするわけでございますが、日本に対して親しみを感じてくださる国が多うございまして、例えばウズベキスタンとかキルギスといったようなところは日本の復興の経験から学びたいと。現在、御案内のとおり、既に十年たったわけでございますが、自分たちの国を作りましてから経済状況が非常に落ち込んでおる国が多うございまして、何とか回復をしたい、そのために日本からいろんなノウハウを教えてほしいというような御要望もたくさんございますし、協力をしてくれという御要望がございます。要人も度々お見えでございます。これに対しまして、当方から例えば専門家を派遣してあるいはセミナーを行ったり、様々な場を作らせていただきまして協力をしておると。今後、貿易・投資において発展が期待される国の中に入れてもいいのではないかと、こんなふうに考えておる次第でございます。
  32. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) ちょっと失礼いたしました。  そして、経済関係に付け加えまして、中央アジアの関係で、先ほど申し上げました核不拡散の話、地域的な和平、平和の話でありますけれども、三本柱の一つとして、これまで特にカザフスタンについて非核化の支援協定というのを作りまして、特に核実験、セミパラチンスクというところにソ連時代からの核実験場があるようでございますけれども、そういったところにおける核物質の管理といったようなことにつきましての支援を継続しているとか、それから、同じようにタジキスタンにつきましても、あそこの国は内戦が長いこと続いたわけでありますけれども、元兵士の雇用促進プロジェクトでありますとか、そういったことについて協力することによってあの地域の和平、安定といったことに協力をしてきているところであります。  取りあえず、以上です。
  33. 小林温

    ○小林温君 先ほど来、各委員の先生方から出ている意見とかぶさる部分もあると思うんですが、もう一度日本中東外交全般について、少し私なりの考えお話しさせていただいて、御意見をお伺いしたいというふうに思うんですが、日本中東外交というのは二つの柱で今まで成立してきたと。一つは、対米外交一つの柱であり、もう一つ石油の安定供給をいかに成立させるかという、この二つの柱が日本中東政策の、中東外交の中心だったと思うんですが、その一つ目の対米外交ですが、基本的にこれはアメリカの対中東外交にある意味では影響される、依存してきたというところがあると思います。  アメリカの中東外交自体が、じゃどういう今まで変遷を経てきたかというと、冷戦前、冷戦までは一つには対ソの、ソ連の南下をどういうふうに防ぐかと。それからもう一つは、やはり石油の安定供給、フリーアクセスをどういうふうに確保するかと。それから、イスラエルをいかに守っていくかと。この三つの柱で、冷戦後この一つ目の対ソの部分が抜け落ちて、二つの外交の柱で今まで中東政策というのは進められた。  ただ、冷戦以降というのも、ある意味でいうと、クリントン政権下で比較的パレスチナの問題も融和の方向に向かっていて、言わば平時のモードの中でアメリカの中東政策も進んできていたんだろうということが言えると思うんです。ところが、今現実に日本が直面しているのは、日本が対中東政策を考えるアメリカの対中東政策が変わってきた、あるいは環境が変わってきたということだと思います。  それから、一つには、先ほど来話が出ていますような、アメリカ自身のクリントン政権からブッシュ政権に変わったことによる政策変更、そして一般教書演説での悪の枢軸発言に見られるような今までとのスタンスの変更、これが一つ日本にとっての環境変化になるだろうと。そしてもう一つは、やはり中東が今こういう緊迫した情勢になって、今まで平時だったものがある意味でいうと有事というモードに変わってきた、これが大きな環境の変化なんだろうと思います。  先ほど来、外務省日本中東外交ということについてお聞きしていると、こういう環境の変化にもかかわらず、大きな意味での日本中東政策については何ら変更が認められないというか、果たして外務省を含め政府がどの程度環境変化に対応していこうという積極的なステップをお踏みになっているのかというのはなかなか見えてこない、これが日本中東外交が見えづらい、あるいはプレゼンスを発揮することができないということに私はつながっているんじゃないかと、こういうふうに思うわけでございます。  そういう意味で、日本中東外交自体の環境が激変していると。先ほど申し上げた一つはアメリカの政策変更、もう一つは有事になったということについて、どういう御認識をお持ちかということについてひとつお伺いしたいということ。  それからもう一つは、これはアメリカ自身の、今回パウエル国務長官の調停のある意味では失敗も含めて影響力の低下ということも挙げられると思うんですが、それと併せて、九・一一のテロの後、少しアラブとアメリカの間で協調関係が進むのかなと思われた状況もあるにもかかわらず、それが、例えば今回のパレスチナ問題においても全く逆の方向に戻ってしまっている感じがすると。  例えば、アラブ各国における、あるいはイスラム国家における反米ナショナリズム的な動きも、反イスラエルへの動きでございますが、これが、例えば今ジェニンでの虐殺があったかないかというようなことも含めてアメリカの対応に対して世界各国がかなり注視して、アメリカの対応に対してのいら立ちを隠せないでいる国も多くあると。  この辺のところについて現状、どういうふうに御認識をされているか、そういう中で果たして、じゃ日本はこの有事の中でどういったことが可能なのかということ、これ、重なるかと思いますが、お聞きしたいというのが一つ。  それともう一つは、石油の問題。もう一つの柱でございますが、これも、中東への石油輸入の依存度が高まっていると。これは、平時の場合においては許容されるものだったのかもしれないわけですが、ここに来てパレスチナの緊張が高まって、例えばイラクに見られるような禁輸の動きもあったり、あるいは石油価格も上がっていると。もしこのパレスチナがこじれて有事が長く続くようなことになって、それによってアラブ石油産出国がいろんな対応考えたり、あるいは影響が出るとすると、日本の対中東石油依存度が上がっているという状況というのは非常に日本にとって厳しい状況なんじゃないかという気がするわけです。その辺についての認識。  それと、これはカスピ海ということじゃなくて、ロシア自体がここ近年、非常に石油の産出国としてのプレゼンスを上げてきている、意欲も持っている、その埋蔵量もかなり実はあるということが確認されておりますし、ある意味ではサウジアラビアの覇権に対してロシアが挑戦をし始めているというところも見られるわけですが、その一番最初の話で、要は、冷戦が終わって日本もロシアというものをある意味では一つ戦略的なパートナーとしてとらえることが可能になった今、石油供給元としてのロシアというものを中東とのバランスの中でどういうふうに考えるかということについて御意見をいただければというふうに思います。
  34. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 今の御指摘ですけれども、基本的に中東自体が平時の環境から有事になったのではないかと、そこのところをどういうふうに認識しているのかという話かと思いますけれども、確かにそういう見方ができるかと思います。  特に、ブッシュ大統領が、九月十一日以降の対応を見ておりますと、それに対するアメリカ国内の世論を見ておりますと、少なくとも心理的には戦時の心理、それから実際に軍隊の動きを見ても、これ戦時と言っていいのかどうか分かりませんけれども、普通、平時とはなかなか言い難いような動きを見せていることは事実だと思います。しかしながら、中東自体がこの九〇年代からこっち平時だったかどうかというのは、我々の主体的な認識とは違っていろいろ議論があるところだと思います。  したがって、議論のあるところだと思いますというのは、その中東自体が今まで本当に平時だったかというと、それは必ずしもそうではなかったのではないか。アフガニスタン状況一つ取って見てもそうではない。それから、湾岸戦争後のイラクの状況を見てもそうではなかったというふうに思いますので、要するに、中東が平時から戦時に変わったので、そこで何か新しい政策が要るんだということでは必ずしもなくて、恐らく九〇年代以降、それまでの米ソという大きなおもしがあって、それである程度予測が可能であった状況から、九〇年のイラク、クウェート侵攻以降、非常に先が読みにくくなった中東で我々は何をしていくのかということが問われているのかなと思います。  それで、まずアメリカの話でありますけれども、確かに、クリントン大統領それからブッシュ大統領、政策が違うというのはそうかと思います。しかしながら、これまで、例えばパレスチナ問題について考えてみますと、よく言われておることでありますけれども、民主党政権は伝統的にユダヤ・ロビーに近いということもあって、そういうときにかえって和平が成るんだということが言われておりました。クリントン大統領のときのオスロ合意もそうだったかと思いますし、今から考えれば、一九七九年のエジプトイスラエル・アメリカのキャンプ・デービッド三者合意のときもカーター大統領であった。ちなみに、そのときのイスラエルはベギン首相、今のリクード、右の方の党ですけれども、そういう組合せで和平ができたということであります。  したがって、国内的にユダヤ・ロビーに近いとか、例えばリクード党であるとかということは、何かものを変えるときに、和平をするというときには、約束をすればそれを実行することができるときにおいて楽観といいますか、期待が持てた時期だというふうに思われます。  ブッシュ大統領になって、それがそうではないのではないかと今まで思われていたわけです、これは若干逆説的なようでありますけれども。しかしながら、今年は中間選挙の年ということもあるんでしょうか、伝統的な共和党の支持母体であるキリスト教右派の人たちも最近はイスラエル支持、ユダヤ支持ということに回っているということがありまして、そういったことをとらえて、アメリカは余りにもイスラエルに偏っているのではないかといって批判をするということもあるということは私ども承知しておりますけれども、ひょっとすると、そういう状況、事態が近い将来、アメリカがそういう今蓄えている政治的な資産を使って中東に和平をもたらしてくれるということを私としては期待したいなという気持ちも他方であります。  それから、日本がそういう九〇年代以降、先が読めなくなった、先生は有事だとおっしゃいましたけれども、先が読めなくなったところでますます日本中東外交がどこに行っているか分からなくなっているではないかという御指摘だと思います。  これについては、毎日毎日我々はいろんな議論をするときに常に頭に置いておかなければならない問題だというふうに自戒してやっておるつもりですけれども、確かになかなか難しいところでございます。  しかしながら、あえて申し上げれば、今年一月のアフガニスタンの復興会議というものは、例によって日本がお金を大盤振る舞いして、そのときに注目を集めてそれでおしまいということではないかという御批判もあろうかと思いますけれども、我々としては、あのアフガニスタンに対する対応というものは、国際社会アフガニスタンを無視していた時代、すなわちタリバンがカブールに入ってきた九六年前後からいろいろなアフガニスタン勢力にも接触をしながらやってきた努力というものが認められて、それで初めて東京のあの会議につながったと我々は思っておりまして、そういう意味では少し先を見てやってきたということもあるわけであります。なかなかそれが目立たないというのはそのとおりかと思います。  それから、イスラムで最近、反米ナショナリズムというようなことがあって、九・一一以降アラブとアメリカの関係が、一瞬良くなるかと思ったけれども、最近はそうではないのではないか、日本はそういう中でどうするかという御質問だったかと思います。  その点につきましては、確かに、最近のパレスチナ情勢の悪化に伴いまして、先ほども申し上げましたけれども、特に草の根レベルでの反米それから反イスラエルの感情というものには激しいものがあるし、デモも、官製デモもあるかもしれませんけれども、自然発生的なデモも行われていると承知していまして、それ自体我々としては若干の懸念を持って注視しているところであります。  それで、特にアラブ国々は、先ほどもちょっと申し上げたかと思いますけれども、そういう草の根での反感というものがなかなか日常の政治プロセスの中で上の方に跳ね返ってくるということが難しいわけでして、特にエリートの人たちは、ああいう国であるにもかかわらず欧米的な思考のある人たちもいるわけですので、そこのところが徐々にお互いにエリート層と草の根層が理解し合うということであればいいんですけれども、ある日突然ひっくり返るというようなことがなければいいのですけれども、そういったことが気になるところであります。そういう中で日本としてどうするのかということなんですけれども、非常にこれは難しい話だと思うんです。  一つ言えるのは、幸か不幸か、日本先ほど申し上げましたように、地理的にも遠い、それから政治的にも今まで余り深い植民地の歴史もなければ戦争の歴史もないわけで、いろんな意味で遠いわけでありますけれども、そういう日本アラブの国とやはり積極的に対話をしていくということが重要かと思います。  それは何をねらって、じゃ対話をしていくのかということでありますけれども、長期的に言えば、やはりあの地域で重要な異文化とか他民族とか異宗教に対する寛容ということをやはり一つのテーマにして、対話といいますか、議論というようなことをしていってはどうかなというふうに思っていまして、この前のこちらの会議でも多少宣伝させていただいたかもしれませんけれども、そのイスラムとの対話というのを二、三年ぐらい前から始めているのも、一つにはそういう目的があるからだと、こういうふうに思っております。  長くなりまして済みません。
  35. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) 御質問の第一番目は、中東に対する依存度が高いのではないかと、有事の際どうかと、こういう御質問でございました。  御案内のとおりでございますが、昨年の九月十一日以降、現在に至るまで、様々な世界の情勢が起こっておるわけでございますが、日本石油輸入に大きな障害があったとか支障が生じたという事実はないわけでございます。誠に有り難いことと感じております。加えまして、御案内のとおりでございますが、国家備蓄それから民間備蓄ということで、およそ百六十日分の石油の備蓄を我が国は持っておるわけでございます。何らかの支障が生じましたといたしましても、こういった備蓄を有効活用するという道が私どもにはあるわけでございます。  それから、御質問の核心は、平時はいいが有事になってどうするんだと、こういうことだったと存じます。  別に反論するわけではございませんが、じゃ平時に高くて必ずしも好ましくないものをみんなが買うのかと。そこら辺の問題もこれまた逆にあるわけでございまして、私どもは、確かに中東への依存度は高いわけでございますが、石油、ガスだけではなくて、先ほども申しました経済的な面、産業的な面での協力、水資源の面での協力、人的な面での交流、先ほど外務省審議官からもお話がありましたイスラムとの対話、様々なツールを総動員いたしまして関係の緊密化、安定的に推移する、何かが起こったとしても日本とそうした国との関係が極めて安定的であるように、ひいては油がきちんと入ってくるようにという努力を続けておるわけでございます。  それから、ロシアの話もございました。  実は、ちょっと横道にそれますが、先日、ベネズエラのチャベス大統領が辞めて、また復帰をされたというようなこともあって、あのときに原油価格も大幅に動いたわけでございます。実は私、中南米も中東もロシアも全部担当しておりますので、そこら辺の関係を全部見ておるわけでございますが、本当にちょっとした出来事で相場というものは動くわけでございまして、一日、二日でこう動いたからといって、だからこうだああだということではなくて、やはりずっと継続的に安定的に買っていくというのがこのビジネスの一つのみそなのではないかなと、こういうふうに思っております。  ロシアに戻りますけれども、確かにロシアは今や産油国の中でも非常にウエートの高い国になりました。あえて付け加えさせていただければ、ガスにおいても大変な大きな供給国でございます。端的に申しまして、こういったロシアあるいはカスピ海の周辺の国における原油の生産に私ども期待をしておるというか、どういうふうに動くんだろうかということで非常に関心を持って見守っておるということでございます。供給先は一つに固まるよりは複数の方がいいに決まっておりますし、様々なパワーバランスがある方がいいのではないかなと、こんなふうに思うわけでございます。  加えまして、ガスについて申し上げれば、ロシアの真ん中辺りから長いパイプラインを引いて日本に持ってくるというようなアイデアも過去に民間の方なりあるいはロシアから提案をされたこともございます。やや個人的な感想になりますが、三千キロ、四千キロのパイプラインでガスを持ってくる、これは相当コストが高くなる。一方、つい先日でございますが、中東のある産油国の大臣がお見えになりまして、その方はガス会社の社長さんも兼ねていらっしゃいまして、うちはどこよりも安くガスを御提供申し上げる、遠く離れているけれども、船で液化して運べば簡単に運んでいるんだから、今後ともよろしく頼むと、逆にそういう御提案もあって、私どもは、経済にとってあるいは国民生活全般にとりまして一番いい選択は何なのかということを常に考えながら、この供給国の選択といったような問題にも頭を巡らせているということを申し上げたいと存じます。  以上でございます。
  36. 小林温

    ○小林温君 済みません。平時か有事かというこれは議論、もちろんあるのは分かるんですが、例えばどういうことが九月十一日以降起きているかというと、九月十一日以前を平時とするなら、アメリカの政策決定においても、例えばG7諸国の方が安全保障理事会の常任理事国よりもある意味でいうと重い状況が私は平時だと思うわけです。ところが、有事になると当然アメリカの中の政策のプライオリティーが変わって、ある意味でP5の方がG7よりも重くなるという状況が私は有事だと思うんですね。  この状況が仮に九月十一日、そしてアフガン以降も続いているとすると、勢いアメリカの政策の中での日本の位置というものは相対的に低くなった状態が長く続くんじゃないかということが私にとって非常に大きな問題だというふうに認識をしておりまして、仮にそういうことであれば、経済問題も含めて、例えば今回G7の蔵相会議があったわけですが、今、じゃアメリカのメディアで中東情勢とG7とどちらを多く取り扱うかということであれば、これは当然中東情勢なわけですね。そういった環境変化、日本にいるとなかなかマスコミ報道を通じても分からない状況があるんじゃないかということを申し上げたかったということでございます。
  37. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  私は、若干の意見を表明させていただきたいと思います。  まず、先ほどから話になっているイスラエルパレスチナの紛争の問題なんですけれども、現地からいろいろ話を聞いても、また外務省からお話を伺っても、正に戦争状態にあるという大変な事態だと思うんですね。私は、この根本的な問題、それは双方が抹殺論に立たない、これは当たり前のことなんですけれども、これが非常に重要だということを痛感いたします。つまり共存する、平和的に共存するということ、その条件と立場を双方がしっかり持つということが非常に大事だということを痛感するんですね。当然、パレスチナ側はイスラエル抹殺論に立たない。それから、イスラエル側もパレスチナの抹殺論の立場に立たない。更に言えば、パレスチナの自決権を認める、それから国家の建設を含めた権利を認める、このことが非常に大事だということを思います。  日本共産党について言うと、一九七〇年代から、イスラエル国家を認めるべきである、つまり、イスラエル抹殺論は誤りであるという立場を取ってまいりました。先ほど山崎理事からお話がありまして、新左翼あるいは赤軍派というのは結構パレスチナに食い込んでおりまして、私も学生時代に国際会議なんかに出ると、あるいは青年のそういう会議に出ますと、イスラエル国家を認めるべきだと言うと袋だたきに遭うわけですよ、反アラブ立場だと。それがパレスチナにとっても常識の時期がかなり長い間続いたわけですよね。しかし、私たちはそういう立場を貫いてきたと。  やはりこれが、この立場を確固としたものにするということが非常に大事であって、いまだに、前からも言われておりましたけれどもイスラエルを地中海に追い落とすと、地中海の底に沈めるというスローガンがアラブの中でもかなりありました。あるいはそれを支持する勢力なりがありましたけれども、やっぱりそれが根本的に間違っていると、今の世界ではそういうことは成り立たないという一番自明なことを認めるということが大事かなというふうに思います。  同時に、パレスチナ側の民間人の殺傷ですね。バスに乗っている市民とか、あるいはカフェで楽しんでいる市民を殺傷するというそのテロ行為は、これは当然成り立たないわけで、ですからその点を明確にするということが非常に大事だということを痛感いたします。  現在の問題でいうと、参議院では、先日、パレスチナ紛争の即時停止と対話の再開を求める決議、これは全会一致で採択されまして、私は、この決議というのは非常に大事な中身を持っているということを痛感するんですね。それはつまり、イスラエル政府パレスチナ自治政府テロ支援組織として決め付ける、あるいはパレスチナ人が選んだその指導者であるアラファト議長ですね、それを認めない、さらには敵として位置付ける。かつてはオスロ合意で対話のパートナーとして認めてきたわけですから、そういうことになってきているわけで、そのねらいというのは、つまりパレスチナ自治政府とその指導者の否定とかあるいは抹殺にあると思うんですけれども、これこそ私は国際法を踏みにじる無法行為になってしまうと思います。  そういう論理でいくと、今イスラエル政府が盛んに言っているテロへの対抗とか自衛というそういう口実、これは結局、そういうことを言っても、つまりイスラエル自身テロ行為を非難する果たして資格があるのかというそういう問題にもなるのではないかと思います。  最近決まったことですけれども、ジェニンへの国連の調査団の派遣ですね。これは緒方貞子さんも入られるということですので、そういう調査も非常に大事になってくると思いますけれども、今の状況を続ける限り、私はイスラエル政府の孤立化を招くことになるのではないかということを非常に懸念しているところです。  この問題の解決というのは、やはり国連の安保理決議の一四〇二、一四〇三決議で示された方向、つまり、イスラエル軍が占領しているパレスチナ地区から即時に撤退するというそこに立ち戻るというそこが一番肝心だということを痛感しております。特に私が思うのは、イスラエル政府の力の信奉ですね、力への信奉、この立場を放棄しない限り、一般的に言っても、また中東情勢からいっても、この立場にしがみつく限り、私は問題解決は絶対にできないということを痛感いたします。  特にユダヤ民族というのは苦難の民で、やはり歴史的に見ても大変な苦難をなめてきたわけで、抑圧の歴史が大変長いわけです。抑圧されてきた歴史が大変長いわけですよね。ですから、それをやはり今パレスチナの側にやることがどうかということを非常に強く思うわけです。  それに関連して、私、先ほどからちょっと議論になっている日本政府対応についてなんですけれども、やっぱりだれから見ても何をしているんだろうと、顔が見えないという、そういう感想というのは持たれると思うんですね。外交一般ということがあるかもしれませんけれども、特に中東、今のこの焦眉の問題について、そういう感想、顔が見えないじゃないかということにもなると思います。  私、そこで、ちょっと述べておきたいのは、パウエル国務長官の調停工作のときに、外務大臣が、やる前から、あるいはやっている最中に支持すると言ったり、あるいは邪魔したくないということを述べたりするわけですけれども、私はそういうことは言うべきじゃないだろうということを思うんですね。  つまり、どういう仲介をするのかという中身を見ないうちにそういうことまで言うことはないだろうと。もちろん、アメリカの調停行為というのは決定的な役割を持つだろうし、またそれができる国がどこにあるかというと、アメリカの持った役割は自明ですけれども、やはりその中で状況を見ながら述べることは述べるということは大事だと思うんですね。  特に、私、今回、アメリカの調停工作の中で非常に大きな問題点を感じたのは、つまりイスラエル政府に足下を見られたんじゃないかというふうに思うんですね。それは、ワシントンDCですか、あの大きなイスラエル支持の大集会がありました。そこにアメリカ・ブッシュ大統領が自分の代表代理として自分の代理を派遣して、アメリカはいつまでもイスラエルの側にあるということをわざわざメッセージで伝えた。これはやはりイスラエル政府を大変勇気付けて喜ばせたわけですけれども、同時に、今の立場でいいんだということをまた悟らせるという結果にもなったのではないかと思うんですね。  ですから、そういうことにこそやはり日本として意見を述べる必要があるのであって、あらかじめアメリカのやることに、まあ部分的に限られていても、パウエルの調停工作に限られているとしても、言わば白紙委任を与えるような形、そういうことをすることがいいのかどうか、そういうことは今後是非考えていただきたいなというふうに思います。  最後に、もう一点ですけれども、結局、異なる文明の衝突なのか、あるいは異なる文明の平和共存なのかという、ちょうどこの委員会で議論している大問題に行き当たると思うんですね。  私は、欧米文明、いわゆる欧米文明ですね、この価値観を、何といいますか、押し付けるとか押し出すとかいう考え方ではこの世界は成り立っていかないだろうと。人口的に見ても、欧米社会の人口を合わせてもやはりそれは半数に満たないわけですから、特に日本では、サミットでも、あるいはまた幾つかの国の、二国間のそういう共同声明等々においても、アメリカの自由と民主主義の価値観を共有するということが度々言われてきました。これはそういう意識がないとしても、いわゆるほかの価値観を軽視するとか、あるいは更に悪く言えばそれを否定するというふうに取られかねないような、そういう響きもあったと思うんですね。  例えば、ASEAN諸国などを訪問すると、そこではアジアの価値観ということが盛んに言われます。その概念が何か、定義が何かということは定かではないとしても、やはりアジアの価値観、それで結束しようという動きがある中で、日本もアジアに地理的には属しているわけですから、やはり少なくともそれを理解しようという立場が必要だと思うんですね。  イスラム教でいえば、イスラム教の教えあるいはマホメットの教えでいっても、政教一致ということがあるわけですけれども、しかし、先ほどから話がありましたように、国会議員役割、位置付け、あるいは国会役割としても国様々ですよね。それからまた、政教一致という教えがあっても、そのままそれを実行するというよりは、それぞれいろんな体制を作りながら、あるいは民主化努力を進めながら進めているというのが今のイスラム諸国の、一括では言えないような複雑さはありますけれども、そういう状況だと思います。  ですから、それならばなおさら私は異文化をよく理解するということが非常に大事になってくると思うんですね。先ほど外務省審議官が言われたように、異文化、異宗教への寛容、これは非常に大事なことで、いみじくも正しいこと言われたなと、そういう感じもいたします。  したがって、文明の衝突ではなく、異なる文明の平和共存を求めていくという、私は恐らくこの調査会でもそういうことがこの間いろんな形で議論されてきたと思うんですけれども、そのことが非常に大事ではないかと、そんなことを感じているところです。  以上、私の意見でありますけれども、何かコメントがありましたら、聞く用意があります。  以上です。
  38. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) コメントを許されるということで、どうもありがとうございます。  一つは、日本政府パレスチナ問題で何をしているのか、顔が見えない、ないしは本当に何をしているんだろうということを感想で持たれるということを言われておりまして、この点は我々として、先ほどもちょっと申しましたけれども、過去からいろんな意味で努力はしているつもりですけれども、今後ますますそういう御指摘を踏まえてやっていかなきゃならぬと思います。  川口大臣との関係では非常に、もしそういう感想ばかり持たれるということであれば大変申し訳ないと思っております。私は何も言う資格はないのですけれども、大臣も、今、大臣になられてから中東問題、特にそのパレスチナの問題については相当の力こぶを入れておられるし、もっともっと入れていかなきゃならないということでやっておられますので、もう少し大臣の体制が整ったときに直接大臣の方からお聞きいただきたいというふうに思います。  それから、パウエル調停に対する支持ないしは米国に対する支持が、いわゆる何といいますか、白紙委任的に事前になされ過ぎではないかということがございました。これについては、まだ調停が行われないのでどういう話になるか分からないではないかということかと思いますけれども先ほども申し上げましたように、一つは、我が国としては、米国がこのパレスチナの問題から手を引くないしは積極的な関心を示さないということは非常に危険なことではないかというふうに思っているものですから、アメリカの継続的な関与というものを慫慂する上でも、やはりパウエルさんが行かれるということであれば、行かれること自体まず支持するということだったかと思いますし、それからEUも、たしか当時、三月、四月でしたか、外相理事会というのをマドリードでやるときに、いろいろとドイツの和平提案とかあったんですけれども、やはりここはパウエル調停というものをまず支援しようということで、いろいろな議論はEUの中でしたんだと思いますけれども、その結果としての声明では特に新しいことは何も言っていないというようなこともありますし、あのとき、最近の状況では、少なくともパウエルさんが行かれて両者をシャトルされ、両者というのはイスラエルパレスチナの間をシャトルするということをやっぱり応援しなければならないということであったのではないかと思います。  イスラエルからパウエル特使が、長官が足下を見られたのではないか、イスラエル支持のデモも行われておりましたから、パウエルさんが何を言ってもワシントンは何も動かないのではないかというふうに思われたのではないかという御指摘かと思います。  これについては、ちょっとイスラエルが、また第三者のことについてどう思ったかということなんで直接のコメントはしづらいのですが、他方イスラエルの支持が、失礼しました、ユダヤ人によるイスラエル支持のデモがあった数日後にはアラブの支持のデモというのもワシントンで行われているわけです。もちろん、伝統的なワシントンにおけるイスラエルとアメリカとの親密な関係というのは非常に強いものがありますから、アラブ側のデモでそれが解消するということでは当然ないわけですけれども、アメリカというのはそういう国だなというふうに思います。  ただ、ちょっと気になりますのは、このアラブのデモが、いわゆるアンチグローバライゼーション運動の人と何か一緒に行われていたというようなことがあるのが、中東を見ている者としてはちょっと不安かなという感じがしています。  それから、価値観の問題、異文化への寛容という私の申し上げたことについて、それは大事だというふうにおっしゃっていただいたのは大変有り難いと思います。他方で、米国と価値観を一致している日本という立場からは、アラブないしはアジアの価値観の否定ではないか、そういうふうに感じられるのではないかという御指摘もありました。恐らく、相対的に見るとそういうふうに感じるアラブ、アジアの人もいるかもしれません。  他方で、それでは日本が今信奉している民主主義、いろいろ人権とか民主主義とか、そういう基本的な価値観というものは、その実施について必ずしも一〇〇%ではないということは日本の人、多くの人が感じていると思いますけれども、そういったことが非常に大変重要だということは、我々役人も含めて日本の中では皆さん同意しているのではないかなというふうに思いますので、そういったことを例えばアラブとかアジアから否定された場合に、異文化への寛容だからといって、いや日本は実は本当はこういう民主主義とか人権という価値観は西洋からの借り物であって、普通はしようがないからそう言っているけれども本当は違うんだよねというのが異文化との寛容ということの結果として出てくる現象だとすれば、それは良くないと思います。自分たちの価値観をやっぱり守りつつ他者を理解するということじゃないかというふうに思います。  以上です。
  39. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 一言だけですけれども、私は、アメリカの外交政策、そう広げなくても、こう狭く、今のパレスチナイスラエルの局面だけいっても随分ぶれがあると思うんですよ、揺れが。だから、一貫性があってそこで安心して見ていられるという状況ではないだろうと思います。  ですから、例えば、なぜブッシュ大統領が重要な調停をやっているときにイスラエルの支持の集会にイスラエルを支持するということを言うのかと。これも、動機といえば、私、非常に狭いところから出ていると思います、ユダヤ・ロビーとかいろいろ言われておりますけれども。あるいは、先ほど同僚議員質問したイランの悪の枢軸の問題についても、なぜそういうレッテルを張ってしまったのかと。割と意外と簡単なところにあって、これは何か非常に視野の広い、外交政策をよく分析して出たというよりも、非常に狭い、何といいますか、イスラエルとの関係で出てしまったような話であって、だからそのとおり実行できないという先ほど話もありましたけれども、私もそう思うんですよね。それからまた、非常にそれについては、ほかの二国についてはともかくとしてといいながら、それについて批判する声は非常に国際的にも強いわけですよね。  ですから、そういう割と、先ほども軍事とかあるいはユダヤ・ロビーとか、ユダヤ・ロビーあったかどうか分からないけれども、そういうことでの、割とそういうことで大きな政策判断をしてしまうという今のアメリカの現状外交政策を決める際の、広い基盤に立っていない、割と視野狭窄な状況というのは、やはり外務省もそういう点は見ていると思いますけれども、私は、そういうところをよく見て、アメリカとの関係、何を言うか、あるいは何を助言するかという、そういうことも考える必要があると、そう思います。  以上です。
  40. 小川勝也

    ○小川勝也君 民主党の小川勝也です。  緒方理事のような大演説はしませんけれども、若干興味のあること、そして疑問に思う点を政府参考人にお答えをいただければというふうに思います。明確に答えが出ない場合は感想でも結構であります。  この調査会で幾人かの参考人の話をずっと聞いてまいりました。そんな中で、当たり前のことなんですけれども印象に残った言葉で、よくイスラム社会とかイスラム国家とかいうけれどもイスラム社会だから一つということにはならないんだ、それぞれ多様な文化あるいは国としての様々な特色があるということを伺ったわけでありますが、そのことを前提に、包括してお伺いをしたいと思います。  一つは、欧米の文化や文明あるいはライフスタイルをどのように受け止めているのかという先ほど来の話題がありましたけれども、例えば日本なんかは、この西欧文明を一九四五年以降急速に受け入れた国だろうというふうに思うわけでありますけれども、それに対してイスラム諸国は、ゆっくりとあるいは部分的に受け入れてきたんじゃないかな、こういうふうに思っている次第なんですけれども、例えば、昨今のこのアメリカを中心としたグローバルスタンダード、別名アメリカンスタンダードという言い方もありますけれども、例えば資本、そして競争、市場、この価値が極めて高いということ、そして、そのことがグローバル化や情報化の中で、あるいはイスラム諸国から外貨を稼ぎに出稼ぎに出られている方が相当増えてきたということから、西欧文明を受け入れることよりも、いわゆるアメリカ的な、今言ったようなことを受け入れるのに関して言うと、イスラム諸国の皆さんが元々持っている気持ちというのは変わらなくても、二十一世紀、ちょっと変化してくるんじゃないかなというふうに私自身は思っています。  このことについて、アメリカ的な経営とか資本とか、そういう社会イスラム諸国はどのように受け止めていきそうか、このお答えをいただきたい。  それから、日本がどのように彼らに見られているのか。これもいろんな参考人の方からお話を伺ったわけでありますけれども、一番多いのは、やはり油を買いに来る人たち、そしてもう一つは何かを売りに来る人たち、とりわけ輸送機器とか電気製品が多いわけでありますけれども世界に冠たるこのビッグネーム、ブランド、メーカーというのは非常に認知度が高いし、いわゆる生活の中に溶け込んでいるので、その部分では非常に親日というのか、日本から供給されるアイテムに対する信頼度は高いということなんだけれども、実際それだけなんじゃないかなという懸念が残ってしまう。  彼らの中の日本というのがそういう本当に経済の分野だけでいいのか、日本がどういうふうに認知されているのかということと、それを変えていく必要があるのか、もっといろんな努力をした方がいいのか、その辺のお答えをいただきたい。  それと、もっと単純な質問なんですけれどもアフガニスタンに作戦がアメリカを中心に繰り広げられました。つい最近の新聞に、ビンラーディンを取り逃がしたなどという報道がありました。現在までのところ、その作戦というのがどのように評価をされているのか、日本政府はどうとらえているか、あるいは中東諸国を中心にイスラム関係諸国はどのように見ているのか、この辺のお答えもいただきたいと思います。  そして、もう一点は、例えばアメリカ合衆国ブッシュ大統領は、アフガニスタンに空爆をした後、先ほどもこの悪の枢軸という言葉が出ていましたけれども、別な国に攻撃を波及したかったという思惑もあったんじゃないかなというふうに思います。当然のことながら、生物兵器、化学兵器、あるいはテロ国家を対象にしたいということだったと思いますが、それに対する日本政府がどういう受け止めをしているのかというのが若干不明確でありました。印象に残ったのは、アメリカの友人国でありますイギリスでは、同盟国であるにもかかわらず、イギリスの首相が、それはちょっとやり過ぎじゃないかみたいなコメントを発したというのが私の印象に残っているところであります。  そういうアメリカの考え方がどうか、あるいは、それに対する日本政府はどう対応するつもりなのか、その辺のお答えをいただければと思います。
  41. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) ただいまの御質問すべてにはちょっとお答えできないかと思いますけれども、感想でもいいということなので、そのお言葉に甘えて多少述べさせていただきたいと思います。  一つは、アラブイスラム社会が欧米の文化、文明をどう受け止めているのかということでありますけれども、確かに、日本と比べるとイスラム社会の人というのはなかなか自分たちの文化、伝統をよく守っていると思います。日本では、明治政府になってから、ちょんまげをやめて、それで刀を差すのをやめるということをやっていますけれども、オマーンやイエメンに行けば今でも、ちょんまげではないですが、ターバンを巻いて、それで腰ではなくて腹の前には短刀を差して皆さん歩いているわけですね。そういったことを見ても、イスラムアラブの国では自分たちの文化、文明というものに固執するというか、非常に強い愛着があるということは、それは事実だと思うんです。  そういうイスラム社会が最近のアメリカの影響力、それから、今アメリカを中心とした恐らくグローバライゼーションとかグローバルスタンダードの発展、促進というものにどう対処しているのかということだと思うんですけれども、これは、単にアメリカ社会をどう見ているかとか、グローバライゼーションをどう感じているかという問題の前に、やはりアラブイスラムの国が十九世紀の後半からヨーロッパの圧倒的な文化、軍事の力にさらされたときに、自分たちを何者だと思って、どうやってその国を発展させて対抗していったらいいかという悩みの延長にあるような気がするわけです。したがって、根は大変深いんだと思うんです。  十九世紀末から二十世紀の初めに掛けて、私もよくは知りませんけれども日本が明治維新でやったようないわゆる西洋化というようなものを考えていた時期があって、かなりベイルートに集まった西ヨーロッパの人たちの下にアラブのインテリが集まって、そこでいろいろ勉強をした。そのなれの果てが今、ベイルートのアメリカン大学というところですけれども、そういう伝統が十九世紀の初めにあった。それが、しかしうまくいかなかったんですね、日本とは違ってうまくいかなかった。  それで、二十世紀になってからは、いわゆるアラブ、ちょっとイスラム全体の話はできませんけれどもアラブ民族主義。これは、経済的にはいわゆる国有化を中心とした社会主義を基にしながら、国境を言わば越えた形でアラブの民族主義というのをやることによって国を発展させ、かつ、それぞれの国民一体感を持つということでやってこられた。これがやっぱりうまくいかなかった。その象徴が、やっぱり一九六七年の戦争で負けて、アラブ民族主義、社会主義の雄であったナセル大統領がその後心臓病か何かで亡くなったというのは象徴的ですけれども、それでうまくいかない。  その後、やはり若干時間はたちましたけれどもイスラム原理主義に帰ろうという運動で、これでもってイスラムアラブもそうですけれどもアラブ人は自分たちの間で一体感を持ってやっていこう、それでイスラムの原理に基づいた国、社会を作ろうということでやっていった。八〇年代には、イランイスラム革命というのもありました。それから、アフガニスタンに対するソ連侵攻というものがこういう動きを助けたということもあります。しかしながら、それもうまくいっていない。そういう中でイスラム社会は、今、アメリカないしはグローバライゼーションというものに真っ向から立ち向かっていかないといけないという状況になっているわけですね。  したがって、自分たちが今後どうやったら国を自分たちの尊厳を保ちながら発展させていけるかという答えを持たないままにこういう大きな力と対峙しなくてはならなくなったために、なおのこと、特にグラスルーツといいますか、草の根のレベルでは、反グローバライゼーションとか、そういう反米主義というのが高まっている。先ほどちょっと申しましたけれども、アメリカというのは面白い国で、イスラエル支持があるとすればアラブ支持があるわけですけれども、そのアラブ支持者のデモというのは、アンチグローバライゼーションに指導され、指導というか、アンチグローバライゼーションの団体と一緒にやっていたというのが若干懸念されるというのはそういうことであります。  それから、済みません、日本をどう見ているかということについては、隣の審議官の方から申し上げます。
  42. 城田安紀夫

    政府参考人城田安紀夫君) ただいまの御発言で、中東地域あるいはイスラム世界において日本人といえば、物を買っている人、あるいは売りに来る人、要するに物を通じての日本という、そういう理解しかないんではないのかなと、こういうお話だったですけれども、多分二十年、三十年前の一時期そういうことがあったのかもしれません。  ただ、ただいま現在の私どもが理解しておりますのは、もちろん、一面で大変何か日本は物の売り買いに熱心な国だという面はありますが、そこから出てくるイメージとしては、大変日本は高品質ないい立派な物を作る国で、その背後には日本人という、何というか、大変働き者の人たちがいて、いつも頭を巡らしながらいい物を作ろうと、こういう文化を持っている国だというのが一つあります。  それともう一つは、今、奥田審議官の方から説明しましたけれども、そもそも日本の国、日本国民に対しては基本的に非常にいいイメージ、ほとんど尊敬の念と言ってもいいぐらいの気持ちを、これはアラブ中東世界草の根レベルにおいて私はあると思います。  その理由は、今の説明のとおりなんですが、明治維新以降、急速に世界の列強に伍して近代化国家形成を成し遂げたということ、それから、その過程において、古来からの日本の独自の伝統をきちんと守りながら、しかもそういう国家形成がされたということ、この二つの問題意識が、彼ら中東の国の指導者たち、あるいはその国民が持っている問題意識に極めて合致するものですから、日本というのは一つのいい模範になると、こういう評価がされていると思います。そういう頭のレベルと別に、物の感じ方、感性という点で、やはりヨーロッパの人とは違う何か温かな心と心の何というか通い合いというのを、彼らが接した範囲の日本人たちから彼らはそういう印象を受けております。  というわけで、必ずしも私自身日本に対するイメージが経済的な面に偏って彼らの間に抱かれているというふうには思っておりません。逆に、彼らのそういう理解と同じように、私ども日本の国に生きている者どもとして、彼らの持っている問題意識、彼らがこれまで大事に育ててきた伝統文化、彼らの生き方、そういうものについてもっと理解する姿勢を示した方がいいんであろうと、こういうふうに思っております。
  43. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 続きまして、御質問にありましたアフガニスタンにおける軍事行動、米軍を始めとする軍事行動及びオサマ・ビンラーデンの追撃のための作戦といったものについてどういうふうに評価しているかということでありますけれども、まだこの攻撃自体は終わっていない。米国を中心としたいわゆる多国籍軍は、多くのアルカーイダの部隊とか訓練基地等を破壊それから壊滅したということはそのとおりでありますけれども、そもそも一番初めに言っていたオサマ・ビンラーデン、それからオマルというタリバンの頭目ですね、この人たちがまだ生きているか死んでいるかということすら分からない。大体生きてどこかに隠れているというのが通説ですけれども、そういうこともあり、今もって作戦目的は完全には達成していないということだと思います。したがって、今後ともアフガニスタンでの作戦というものは基本的には続いていくんだろうというふうに思っています。  この軍事作戦というのは、確かにアメリカが中心になって最初は一番最初に行ったわけですけれども、ヨーロッパを中心にして、英国とかフランス、カナダ、カナダはヨーロッパではありませんけれども、それからイタリア、オランダ、ドイツ、それにオーストラリアといったような国が参加しているほかに、一部バハレーン、それからアラブ首長国連邦の飛行機や艦船も、人道支援という目的ではありますけれども、これらのテロに対する軍事的な戦いの中に入っているということがございます。  それから、今、オサマ・ビンラーデンを取り逃がした報道が最近あったということでありましたけれども、これは、例のトラボラ地区という、カブールの北東の方だったかと思いますけれども、の山岳地帯で、一時そこにオサマ・ビンラーデンが潜伏しているという有力な情報があって、そこで相当の攻撃を米軍を中心として掛けたんですけれども、そのときにもう少し増派をすればよかった、すなわち軍を増やして一挙にたたけばよかったという反省が今行われていることかと承知しております。  それから、ブッシュ大統領がアフガニスタンの空爆を最初始めた直後は、別の国にもすぐに行こうと、爆撃をしたがっていたのではないかということでありますけれども、これは報道を見る限りはそういう気配もあるわけですけれども、いずれにしても、アメリカは政策としてテロに対する戦いをこの際やるんだと。先ほども平時、有事の話が出ましたけれども、アメリカは今、少なくともワシントンを始めとするところでは戦時体制にあるわけです。心理的にも戦時体制、軍隊も戦時体制と。この戦時体制は何を敵にしているかというと、国際的なテロのネットワーク、それから国際的なテロのネットワークを庇護する国家体制持つ国を戦いの相手にしているわけでありまして、そういう意味では、それはアフガニスタンだけではないというのはおっしゃるとおりだと思います。  しかし、基本的にテロのネットワークというものをつぶすという目的がまず最初にあるわけで、何が何でも爆弾を落とさないと気が済まないということではないわけでありまして、例えばイエメンなんかは、当初はすぐにもアフガニスタンにおけるような軍事行動がイエメンで行われるかのごとき報道もありましたけれども、そこは今はそういうことはない。イエメンの政府と協力をして、どちらかというとイエメンの軍、警察にアメリカが協力するような形で、アフガニスタンから帰ってきたテロリストないしはテロリストと関係のあったイエメン人を追い掛けているというのが実態かというふうに思っております。  以上です。
  44. 小川勝也

    ○小川勝也君 今の最後のところなんですけれども、もし仮にアメリカ合衆国が多国籍軍という形で、テロを撲滅するためにここもやらなきゃいけないんだと言ったときに、例えば先ほどイギリスを例に出して申し上げました。日本政府としてはどういうふうなスタンスに立って考えなきゃいけないのか、その辺お伺いをしたいと思います。
  45. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) テロに対する戦いに日本も参加しているわけですね。それは、非常に迂遠なやり方で参加をしているという見方もありますけれども、今回、初めて自衛隊があちらの方まで派遣されて、後方支援ということでありますけれども、参加をして、テロに対する戦いに参加しているということであります。  他方で、私、ちょっと必ずしもきちっと承知しているわけではありませんけれども、そういう今のアフガニスタン関係でのテロに対する戦いというものに対する日本の関与の仕方というものと、ほかの、それがほかの国、地域に及んだ場合に同じことをやるのかと言われれば、それはそうではないんだろうと、取りあえず。それはその法律の範囲の中で我々はやっているわけなので、それがほかのところに行っても同じようにテロに対して戦う、戦いに参加するということではないということははっきり言えると思います。  他方で、やはりテロというものが国際社会において、国際社会の我々の安全にとって大変大きな脅威であるということは事実でありますので、そういう意味で、日本は必ずしも軍事的な役割を果たすことはできないわけでありますけれども、ほかの面でできるだけの協力をしていくというのは当然かというふうに思っております。
  46. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 民主党の若林でございます。  最初、ちょっと感想を述べたいんですけれども、これまでの調査会の中で自分自身非常に勉強になったと思ったのは、イスラム一つじゃない、やはり多様性を兼ね備えた文化、世界ではないかということですから、イスラムという言葉が付くたびごとに、イスラムでとらえるというんじゃなくて、やはりもうちょっと多面的にこの問題をとらえる必要があるんじゃないかというふうに思います。ですから、例えばこのタイトル、「イスラム世界日本対応」というふうにありますけれども、じゃ、キリスト世界日本対応があるかといったらやっぱり必ずしもそうではないわけですから、余りイスラムということに対して特別視するということは私はあえて逆に必要ないんじゃないかと思ったわけです。  一方、やっぱりイスラムのことをもっと勉強しなきゃいけない、もっと知らなきゃいけない、もっと近づかなきゃいけないという意味では、これからいろんな交流を深めていくということが私は必要じゃないかなというふうに思っています。  その中で、日本かかわり方を見ますと、私ははっきり言って、外交的な、政治的な影響力というのは私はないと思います。川口さんが頑張る、それはいいですけれども、一回言ったらそれは続かないと思うんですよね。継続的にどうやってかかわっていけるとしたら、私はやっぱり経済じゃないかなという感じがしています。  そういう意味じゃ、テロの撲滅というのは私はやっぱり貧困という問題にもかかわっていますし、今、だれもがやっぱり豊かになりたいと、それに対して日本が協力しているんだということと、一方、更に発展したときにグローバル経済とどうやって引き込んでいくか。依存度を高めることによってやっぱり安定と平和が私はもたらされるんじゃないかというふうに思いますから、そういう継続的な対話をこれからやっていくという意味では経済にどうやって入り込んでいくか、そのときに私はやはりODAという役割というのは非常に大きいんじゃないかなという感じがしています。ODAだけとらえれば、これまでのODA戦略というのがやや、石油が安定供給されるとまた下がっちゃったりとか、非常に一貫性がなかったんじゃないかなという感じがします。  データ的に見ると、八〇年代、九〇年代を見ると、額はちょっと下がって、更にシェアがすごい下がっているんです。我が国のODA政策の中の中東諸国へのシェアが下がっているという意味では、私は逆にこれをやっぱり増やすべきじゃないかと。全体では上がらないですから、日本のODAの中でのシェアを増やしていくという観点から、もうちょっと戦略的に重点的にそういうかかわり合いを増やしていくということがやっぱり必要じゃないかなというふうに思います。  今百五十か国ぐらいODAをやっておりますけれども、私の目から見ればやや、ばらまきとは言わないまでも広く薄くやり過ぎている。いや本当に日本の国益を考えた場合に、今の二倍三倍ぐらいやるぐらいのやっぱり覚悟があってもいいんじゃないかなというふうに思いますので、その観点からちょっとこの八〇年、九〇年のODA政策にどういうことが起きてきたのか、これからどう戦略をそういう観点から取るべきかということについてお伺いしたいということ。  もう一つ、中国なんですが、中国の外交、対アラブ中東政策、イスラムに対する政策の状況をちょっと教えていただきたい。とにかく何かこの数年で変化があるのかどうか。今後、東アジアあるいは中国のエネルギー需要が増えたときに、やっぱりこういう諸国が中東諸国に行くのかどうか。そのときに我が国はやっぱりその優位性というのを保っていかなきゃいけないというふうに思いますが、その辺も含めてどう見られているかということについて二点、お伺いしたいと思います。  以上です。
  47. 滑川雅士

    政府参考人滑川雅士君) 中東地域に対するODAについての件につきまして御説明をさせていただきたいと思います。  お話しのとおり、中東地域に対してのODAというのが実は中東地域、前回、杉浦副大臣からもお話し申し上げましたように、非常に各国状況が様々であると。一方では、産油国でいわゆる途上国のリストからも外れるような国もあると、他方では極めて厳しい貧困状況にあるような国もあるということで、経済状況が非常に多様であるということで、なかなか中東地域を全体として見るような形でのODAの供与というのは難しい部分がある。そうした多様な対応が必要であるということがございます。  そして、今御指摘のように、八〇年代、九〇年代の動きというのは、実はその中でいわゆる有償資金協力が中東の場合は実は所得の高い国には出せますけれども所得の低い国には出せない、ただ産油国の所得の特に高いところには出せないというようなことで、これは有償協力は日本の場合ある程度大きなシェアを占めておるものですから、これの動きによって振れた部分がございます。と申しますのは、八〇年代は結構有償資金協力の拡大を図っておりましたので、様々な国に有償資金協力を供与するという状況がございましたが、九〇年代になりまして、やはり債務問題等が出てきまして、かなり対象とする国を絞らざるを得なくなってきたというようなことの反映もあろうかと存じます。  それから、中東地域のシェアでございますけれども、大体今、七、八%ぐらいという状況でございます。そして、これはある意味でいうと高いのか低いのかという議論はあろうかとも思いますが、正直申し上げまして、中東地域におきまして援助がしづらい状況が若干あったと。これは治安の問題、安定の問題というようなことがございまして、この地域におきまして援助の支援が止まらざるを得ない、あるいは困難になったという地域が幾つか出たということがあるかと存じます。  それから、もう一つ申し上げるとすれば、この地域、実は援助がそういう意味でいうと技術協力、特に所得の高い国には技術協力というのが中心になりますので、比較的額的に積み上がらないというようなことがございまして、最近でも、ある意味で申しますと、この地域での援助の中心といたしましては、特に湾岸諸国等に対しましては、人づくりというようなことを中心にやらせていただいておるというような状況があろうかと思います。  それで、今御指摘いただきました今後の中東地域、現在では今後の中東地域に対してODAでどういう支援が可能かということについて、若干抽象的になろうかと思いますが、お話をさせていただきますと、一つは、やはり私どもこの地域の安定というのが非常に大事だろうというふうに思っておりまして、中東和平というものに対して寄与するようなODAを行いたいなというふうに思っております。  それから、先ほど、今有事の状況に入ったというお話をされまして、実は私どもの支援もそういう意味では有事体制というか、パレスチナにつきましてはこれまでいろいろなインフラとかそういうのを含めた協力をしてきたわけですけれども、今回残念ながら、いわゆる難民支援的な食糧とかそういう支援にまた戻ってしまったというようなことで、そういう意味では若干残念な状況でございます。私どもODAが特にできることということでいいますと、やはり平和とか安定の配当というのがあるんですよということをいかに上手に示せるか、それをもって中東和平と言われるものに貢献できるのかというのが非常に大きな要素かと思っております。  そうした意味で、実は私ども、これは中東とはちょっと離れますが、これまでカンボジアとか東チモールというものについて、いわゆる紛争から平和、安定、復興へという過程で私どものODAを使ったできる限りの努力をさせていただいたつもりですし、それなりの成果が上がってきているのではないかというふうに思っております。こうしたものがこれは今アフガンで私ども試されていると思っていますし、こうしたものがうまくいくということを実際に見ていただくというような形で、ある意味では中東地域の安定というものにODAが貢献できる部分が大きいのではないかということでございます。直接的にODAで紛争をというよりは、そうした意味でいわゆる少し太陽的なという、温かいものをごらんいただけるという形で貢献できるのではないかというふうに思っているというのが現状でございます。これからODAにつきましては、今年度から予算がまた一〇%削減という意味でいいますと、ODAに割ける資源そのものがかなり制約を受けてきているということは事実でございます。  そうした中でうまくODAを活用いたしまして、一方で効果的、効率的な支援を行うとともに、今お話しのような、もう少しある意味でいうと戦略性あるいは方向性を持った支援を行うようにということは常々指摘されてきておることと存じますので、これから私ども更に国あるいは地域、あるいは分野にわたっての私どもなりの援助の方針というのを打ち出し、また多くの方々に議論をしていただく中で整理をしていきたいと思っております。
  48. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 中国と中東アラブ諸国との関係ですけれども、これについて今細かないろんな資料がなくて、私の頭の中にもよく入っていないものですから正確にお答えできないのですが、昔は中国は、昔はというのは米ソ相対峙していたような時期には、中国はアラブ支援の国としてパレスチナ紛争の中でも一つの要素を占めていたかと思うんですけれども、九〇年代以降、特にマドリッド会議、それからオスロ合意というものを経て一つの枠組みができたころから、そういう政治面、いわゆる中東パレスチナ問題との関係では中国というものの影が余り出てこなくなった。他方経済面では中国は今まで以上にやはり中東のことを気にしているに違いないんだろうというふうに思います。自分のところの石油商品もどんどん増えていくわけなので、そういうことだろうと思います。  それから、しかしながら中国はもう少し自分の国境の近いところで、これまでソ連の一部であった、したがってソ連との関係さえやっていれば中国の西部国境というのは守れていたものが、突然非常に不安定な時期、不安定な事態になったということを踏まえて、いわゆる上海ファイブ、上海協力機構というものを中国とロシアが、二つの大きな国でありますけれども、そのような両国がカザフスタン、キルギスタン、タジキスタンといった国、最近ではそれにウズベキスタンが入ったようでございますけれども、そういう地域的な機構を作ることによって、中国が西側の自分の国境地帯というものの安定化を図るべくいろいろな活動をしている。  その中にはもちろん政治的な対話ということもやっておりますけれども他方で、最近ではこれらの国が経済とか文化等の分野で協力をするんだということで活動を次第に広げているということがございますので、中国は米ソの時代のときには西側に余り物理的にも出られなかったと思いますけれども、今の時点で見ますと、西側のそれぞれの旧ソ連国々、共和国との関係を少しずつ深めているということは確かのようでございます。
  49. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) 若林先生から御指摘ありましたこと、経済の面から幾つかちょっとお話をさせていただきます。  まず、貧困削減のお話が御指摘がございましたが、貧困削減で、例えば教育とか保健の分野だけではなくて、やはり雇用を拡大をすると。自分で物を作り出して、あるいは輸入に頼っておった部品を国産品に代替をしていくということが特にGDPが余り大きくない国にとりましては重要なポイントだと私ども考えております。例えば、中央アジアにつきましては、そういう意味で、私ども産業政策のノウハウとか中小企業政策のノウハウをいかにしてお話をして参考にしていっていただくかと、これがポイントになっておるかと存じます。  それから、先ほどODAのお話で、もうODAを卒業した国も産油国の中では多いというお話もあったかと思いますが、中にはカタールとかオマーンとかアラブ首長国連邦のように、WTOにもう既に参加をされていらっしゃる国もございます。あるいは、サウジアラビアイランどもWTOに参加をされたいと、こういうような御希望があると聞いております。  したがいまして、相当な国が既にグローバライゼーションの中に、あるいはWTOのシステムの中に入っていきたいというお気持ちをお持ちになっていらっしゃる。この流れはそういう方向で今後進むのではないかと、こう認識をいたしております。  そのWTOは、いろいろ、逆に言うと、国によってはメリット、デメリットあるわけでございますから、私どもといたしましては専門家を派遣をいたしまして、こうした方がうまくいきますとか、あるいはこうしたらうまくいきませんというような、いろんなこれまたノウハウをお伝えをさせていただきたいと、こんなふうに思っております。  それから、もう既にODAを卒業された国につきましては、私ども関係ですと、中東協力センターというふうなところが様々なビジネスのお手伝いをする、あるいはジェトロもございますので、これもビジネスのお手伝いをするということで、相互依存関係、これも御指摘がございましたが、貿易・投資が進むことによって相互依存関係がますます深まって、抜き差しならないと言うとちょっと逆のあれになるかもしれませんが、お互いに依存していく関係を築いていきたいと、こう思っております。  それから、今、中国の件につきまして若干のコメントがございましたので、私どもから一言、二言申し上げますが、中国、御案内のとおり発展をいたしておりまして、石油の需要も急激に伸びております。私どものところの手元にある資料では、二〇二〇年には石油の需要、中国、二・七倍程度まで上がるのではないかと。したがって、中東からの輸出も当然相当増えてくるのではないかとこう思われます。石油だけではなくて、例えばカタールなどは中国も天然ガスのマーケットと考えておりますし、ロシアもそういうような意識で中国を見ている面があろうかと思います。エネルギーの観点ではそういう見方。  それから、私どもは、現実に中央アジアあるいは中東に参りますと、中国の製品、雑貨が我々の目に見えるものとしては多いわけでございますが、雑貨がたくさん実はございます。まだ日本のハイテク製品と真っ向から衝突するという感じじゃございませんけれども、相当中国の商品は出ておって、ただ韓国のように、例えば建設会社が中東で仕事を取って日本と競争するというようなところとは少しまだ違うようでございますが、やはり中東、中央アジアにおける中国のプレゼンスは相当大きくなっているなというのが実感でございます。  以上です。
  50. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 最後、一言だけ。  もう正にそのとおりであり、通商政策も含めて、やはりその地域との会話を、対話を常にしておくということが私は必要なことじゃないかなという感じがしています。  ですから、ODA、確かにODAから外れたんですが、日本のODAのスキームは外れるとしにくくなっちゃうので、本当に国益にとってどうなのかということを含めてやっぱり支援していくということですから、今回、日本・ASEAN包括経済連携構想ですか、やっぱりああいうような包括的な対話をきちっとやっておくということを常ににらみながら、やっぱり会話を継続的にしておくことが必要じゃないかと思います。  私は技術協力、個別の案件で積み上げるとこれは限界が来ちゃうので、もっとやっぱりマクロで全体的な対話をきちっと、やっぱり協定をきちっと連携構想を結ぶことも必要じゃないかということです。  以上です。
  51. 西銘順志郎

    西銘順志郎君 自由民主党の西銘順志郎でございます。  前回のこの調査会のときに板垣先生から、これはイスラム地域研究というプロジェクトの話をお伺いしたわけでございます。このイスラム研究というプロジェクトは、文部科学省の予算を使って一九九七年から今年の三月まで五年間にわたってイスラムに関する研究をなさってきたというような話でありました。その仕上げとして、東京大学でシンポジウム等も開かれたというふうなことも聞いておるわけであります。  このような地域研究の成果を我が国の外交や内外の政策に生かしていくには、本当に生かしていくことが大変重要なことだというふうに思っておるわけでございまして、例えばこのイスラム研究というこの読売新聞の、これ四月十六日の文化面での記事でございますけれどもイスラムに対する切り口としてとても入りやすいようなことが書かれておるわけでございまして、是非そういう面からもこのイスラムに対する取っ掛かりといいますか、そういうものの政策を是非、日本の全体の政策として考えるときにこういう地域研究も是非参考にしていただきたいと。そういう政策の中に、そういう政策を経済産業省なり外務省なり取り入れていただきたいというふうに要望をしておきたいと思いますので、どのようにお考えになるか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。    〔会長退席、理事山崎力君着席〕  また、もう一点、これは外務省並びに経済産業省にお伺いをしたいわけでありますが、この中東地域を対象とした調査機関、これは外務省の方は中東調査会、あるいは経済産業省中東経済研究所あるいは中東協力センターというのがあるようであります。また、その他にもいろいろ研究機関があるようでありますけれども、こういった研究機関の活動に対して私ども大変高い評価をしていきたいというふうに思っておりますが、例えば今現状で、これは例えば経済産業省の分野だから外務省は触りませんとか、これは外務省の研究機関だから私たちは全く関係ありませんというようなことをよく耳にするような場面も多々あるわけでございまして、そういう意味ではやはり外交とかそういった観点からいたしますと、日本の国策というものを考えるときに、やっぱりこれはもう省庁の縦割りの関係を越えて一つのこういう問題に取り組んでいただきたいなというような思いをするわけであります。  その二点について、外務省経済産業省のお考え等もお聞かせいただければ大変有り難いなというふうに思っております。
  52. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 御指摘の点、二点あったかと思いますけれども、第一の地域研究とそれから外交政策との関係ということでございます。  今、御指摘のあった文科省の予算に基づく地域研究の中にイスラムに関するものがあったということにつきましては、私どもの中でやっておりますイスラム研究会というものの中でも実は披露されていまして、この一週間ほど前ですかに今年度の初めてのイスラム研究会を川口大臣の出席を得てやったときに、たしかそこに出席の先生方のお一人がそういうことをおっしゃった上で、何とか日本イスラムの間の理解を増進させるために、たしか中東地域に建物を建てるわけではないけれども研究者を集めるような、そういうシステムができないかということをおっしゃったわけですね。それについて、もちろんすぐできるというわけではないのですけれども、今後そういったことも含めて考えていきたいというのが結論の一つになっておりますので、そういった意味で、そういう文科省でやっておられるような学術研究もそういう研究者を通じて外務省の中に取り込まれているという一つのいい実例だと思うので、あえて御紹介をさせていただきました。  それから、研究所の話でございます。  確かに、外務省の所管法人として中東調査会というのがございます。これは、先ほど調べましたら、昭和三十五年から特に中東政策を中心にする研究をしているわけでありまして、この歴史の中で独自のいろいろな人的なネットワークというものも築いてきたということで、我々の役所といたしましてもいろんな形で活用しております。  他方で、御指摘のありました経済産業省所管の諸団体との研究交流というようなことも大変重要だというふうに考えております。私の知っているものの中には、中東調査会、それから、たしか中東、アジア経済研究所ですかを歴任された上で中東専門家として大学の先生になっておられるというような方もいらっしゃいますので、そういった意味で昔から人的な交流もあったかと思いますけれども、今後ともこういう関係の団体と有機的な連携をやっていきたいというふうに思っております。  以上です。
  53. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) ただいま御指摘いただきました様々な調査結果、私どもの可能な範囲でとにかくお聞きし、資料を読み、それに基づいて政策の立案をさせていただくという努力を日夜させていただいております。  それから、調査機関につきましては今、外務省の方からも若干の説明がございました。確かに幾つかございます。  少し例を申し上げますと、私ども中東地域に対する投資促進といったようなことで主として認識をしておりますのが中東協力センター、それから、政治経済情勢について中東調査をするのが中東経済研究所、それから、今、合併いたしまして特殊法人であるジェトロの研究機関になりましたアジア経済研究所、これは開発途上地域地域研究、開発研究を主としてやるような組織、それぞれ財団法人であったり社団法人でございますけれども、いろいろなお役目があって特色があるというふうに私も認識をいたしております。  もう一つ、ロシア東欧貿易会、これは中央アジア、ロシアあるいは旧東ヨーロッパ、ここのプロフェッショナルな調査研究をされる組織もございまして、我々のところで、いろんなそういう方たち、それぞれ御専門性が高いものですから、お話をお聞きし、それから時々は、最近はテレビとかいろんなところにお出になっていますが、東京大学の山内先生とか、ここにもお見えになったかもしれませんが、いろんな専門家の方のお話をなるべく広くお聞きするようにいたしております。思わぬ面白い話が聞けることもありますし、お聞きして、じゃそれは本当に真実ですかと言うと、ちょっとあやふやというか、そこは言えないというようなことをおっしゃる方もいらっしゃるし、様々でございまして、そこら辺を全部全身に浴びながらやらせていただいているというのが実情でございます。  これからも、なるべく効率的にやれますように、皆様方にまたお願いをしながら企画立案をさせていただこうと思っております。
  54. 西銘順志郎

    西銘順志郎君 国益という観点あるいは資源の確保という観点から大変重要なことだと思いますので、是非またそういうものも考えていただきたいなというふうに思っております。  以上であります。
  55. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 パレスチナ問題を解決するにはオスロ合意を実効あらしめるほかに道はないと言われているわけですが、残念ながら、同合意は現在ほとんど全く機能していません。これをどう活性化させるかということが問われていて、日本の積極的な役割が期待されているわけですが、この点と関連して外務省にお伺いしますと、川口外務大臣は、電話でパウエル国務長官と、やれ話をされたとかという形で終わっているわけですね。問題が複雑ですからいろいろと御苦労があるということは理解できますが、もう少し目に見える形で何らかの方策は取れないものかと。    〔理事山崎力君退席、会長着席〕  先日、この調査会お話を伺った防衛大学校の立山教授は、パレスチナ問題での日本の取るべき行動についてお話しされましたが、その中で、両方に手を突っ込んでいかない限り影響力は行使できない、第三者として幾ら口で言っても双方の紛争当事者に影響力を行使できないということをおっしゃったわけです。  そこで、振り返ってみますと、日本政府は湾岸戦争のときにヨルダンを支援していますね。その湾岸戦争の半年後のマドリード会議でイスラエルパレスチナ側の参加を拒絶したときに、ヨルダン代表団の中にパレスチナ側の代表を抱え込んで出席させるというふうに、和平のための受皿を作るのに日本政府は積極的に動いておられるわけなんですね。それから、一九七三年のオイルショックの後、パレスチナ問題について、パレスチナの民族自決権を認め、占領地は返すべきだという方向性をはっきりと打ち出しているわけです。  このような背景から白鴎大学の平山参考人は、日本のこうした姿勢は、占領、併合は認めないという意味で北方領土問題にもつながる、日本は両方に同じ基準で物が言える立場にあると思うと言われて、日本がやれることはいろいろあるというふうに述べられておるわけなんですね。  そういった意味で、イスラエルパレスチナ問題についてもう少し国民の目に見える形で行動をお取りになることはできないものかどうか、お聞かせいただきたいと思います。  あと一つだけお伺いしたい点は、九月十一日のテロ以降、ロシアのプーチン大統領はアフガニスタンに対するアメリカの軍事行動への支持を明確に表明しています。そして、国内での強い反発にもかかわらず、米軍のグルジア派兵についても同大統領はこれを容認いたしました。そのため、ロシアのマスメディアや政治評論家、国会議員の間では、プーチンを西側に譲歩し過ぎてソ連を滅ぼしたゴルバチョフの再来というふうに論評していると報じられておりますけれども、このプーチン大統領のこのような積極的な対アメリカ協力というものは、一体どのようなメリットがあって、どういう戦略でそういうことをやっているとお考えですか。  この二点について教えていただきたいと思います。
  56. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) まずパレスチナの問題であります。もうメッセージは一つだけで、もっと目に見えることができないものかということであります。  一言で答えるのは難しいんですが、あえて一言で答えると、その御指摘を踏まえてその可能性をできるだけ追求したいと言いつつ、これまで何もやっていなかったか、やっていなかったのだと言われると、それをそのまま私も立場上は認めるわけはいかないなと思っていたところでありますけれども、先生の方から御親切にもいろんな指摘をいただきましたので、そういったことも思い出しながらやっていきたいと思います。  何せこれは大臣自身が非常によく力を入れてやっておるところでありまして、私がここで余り勝手なことは今言えない、そういう状況なので、ちょっとそこの点は御理解いただきたいと思います。  いずれにしても、パレスチナ問題については、日本は過去のしがらみのない立場から自由に物が言えるはずだという御指摘はよく踏まえた上で今後努力をしていきたいと思います。  それから、プーチンがどうしてアメリカにここまで協力しているかという話は、私は中東局なので──ちょっとお待ちください。
  57. 田勢修也

    政府参考人田勢修也君) 私ども経済産業省なので政治の話は門外漢でございますが、一応ロシアを担当しておりますので、小耳に挟んだ話というレベルでございますが、恐れ入りますが申し上げさせていただきますと、一つは、まずロシアがテロへの戦いに明確に参加をするというプーチン大統領の意思決定をされたと。その言わば外延部分として重要なことは、一つはチェチェン紛争。これは、ロシアにとっては、テロへの戦いであるというふうな定義ができることによって、一定の武力行使が国際世論の反対なしに行える地合いができるのではないかという期待があったのではないかとよく言われます。  もう一つ申し上げると、アフガンにおきましてはよく御案内のとおり過去に大変痛い目に遭われて、ロシアの軍部筋から、これはもう本当に裏付けの取れないあれでございますが、アメリカも失敗するんだと、そういうような期待感と言うとちょっと言葉が変でございますが、そういう気持ちがおありになったようでございますが。逆に言えば、過去に言わばアフガンで負け組になったロシアが、今度は連合軍的なサイドに付いてアフガンにおける勝ちの方へ入る一つのチャンスであるという判断をしたのではないかということと、それから、徹底的に今回は軍事力面、軍事サイドでは御参加をされなかったわけでございますが、アメリカに言葉では支援をしつつも自分は手を汚さないでいいポジションを、アフガンにおける悪いイメージを若干でも回復できる可能性があるのではないかと、こういうことをお感じになっていたという情報もあります。  一方、御案内のとおりでございますが、中央アジアにアメリカ軍が駐留することによるデメリットをどうするんだという見方もあったわけでございますが、しかし、実は個人的な経験を申しますと、九月十一日以前でございますが、ウズベクに私どもが参りましたときに、そこには既にアメリカの陸軍だと思われますが、その姿は私ども確認をして見ております。ということは既にいたわけでございまして、ウズベクには、少なくともですね。そういう意味では、もう少し我々が思っているふうなCIS諸国はアメリカとは遠いんだということではなくて、もう少し実は違う距離感があったのかもしれないなと。  そういうことも踏まえて考えると、利害得失をお考えになってこういう御判断をしたのだ、プラスが多かったという御判断をされたのだという見方も成り立つと。  これは全然裏付けも取れませんで、私どもが小耳に挟んだ話でございますが、一応御紹介だけさせていただきました。
  58. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) ただいま同僚の助けを得まして、少しコメントができる状態になりましたので。  一つは、この中央アジアにおけるアメリカ軍のプレゼンスが、九月十一日以降、ロシアのいわゆるエンドースといいますか、支持も得た上で行われ始めたということは、よく今後とも注意して見ていかなくちゃいけないことは確かだと思います。中国辺りも相当、中国も結構気にしているのじゃないかというふうに思います。  それで、プーチン大統領が基本的に、今もお話ありましたように、アメリカとの間でテロに対する戦いに協力するんだということで合意はしたわけでありますけれども、これについてはいろんなことが言われているようでありますけれども一つはやはり自分の国に抱えているテロの、彼たちからするとテロの問題というのがあって、それが一つはチェチェンの問題というのがある。九月十一日以降、チェチェンの方面ないしはチェチェンの関係では特段の大きな動きはないようでありますけれども一つ考え方としてはこのチェチェンとの関係というものがあったというふうに言われる人が結構おります。  それから、今、ロシアのプーチン大統領や、それからイワノフ国防相ですか、いわゆる今のロシアの政府の高官が国内向けに言っている話は、プーチン大統領としてアメリカのプレゼンスは認めたけれども、これは一つアフガンでの反テロ作戦が終了するまでということで、一時的なものなんだというのが一つの理由ですね。  それから、そういう特別な理由でアメリカ軍が軍事的プレゼンスを持つようになったけれども、だからといって例えばロシアがカザフスタンから軍事的プレゼンスを削減するということではないのだということで、一定の地域においてはロシアのプレゼンスも維持するのだということを言って、それによって、国内で恐らくいろんな不安とか批判とか不満もあるんでしょうけれども、それを抑えようということを努めておられるということのようであります。  取りあえず、以上であります。
  59. 舛添要一

    ○舛添要一君 何点か申し上げたいと思います。  一つは文化のことですけれども日本の教科書、歴史の教科書にどういう十字軍に対する記述になっているか、十字軍。  私はスイスで仕事をしていたときに、二十年ぐらい前になりますけれどもイスラム・アンド・ザ・ウエストという、イスラムと西欧という団体を作ってヨーロッパ諸国の教科書のチェックをやったんですね。十字軍に対する評価は、ちょうど今、南京大虐殺とかいうことで日本と中国、それから植民地時代日本と朝鮮半島、この問題で教科書の問題が大きくなっているように、西欧とイスラムで教科書問題、非常に大きゅうございまして、要するに我々はヨーロッパの教科書をそのまま翻訳して使っていますから、十字軍というのは悪いことをするイスラムの連中に聖地が取られた、それを奪還するために西欧の騎士たちが行ったとなっていますね。ところが、イェルサレム含めて現地では残虐行為を働いているわけですよ。全く罪もない女子供というか、そういうのも全部殺したりしているんで、そうすると非常にイスラムから見ると十字軍というのはひどい。  そうすると、そういう教科書レベルでの文明の対話ということがないと、教科書書換え、こういうことがないと駄目だということで、しばらくそういう活動をやっていたことがありますけれども、本当にやっぱり理解しようとするならその点を、我々もイスラム諸国の学者と日本の学者で日本の教科書を、すぐ、朝鮮半島、中国だけじゃなくて、ちょっとやるようなことを試みていいと思います。今、子供に聞いたって、十字軍って何ですかと言ったら正義の味方ですよ。イスラムの子供たちイスラムの子供に向かって十字軍って何ですかと言ったら、これは敵ですよね。もうそこから始まっている。  それから、基本は、我々のような多神教の民と一神教というのは全く考え方が違いますから文化の理解というのは非常に難しいですけれども、そういうことも是非試みる必要があるということをまず第一点申し上げておきます。  それから、第二点は、これは外務省に対してよりも会長ないし我々同僚に対してですけれども、私、議員の友好同盟、よその国との、これをもうちょっと活用すべきだというのを、休眠状態になっているのが非常に多いですね。それで、NPOを活用するならば、NPOに予算付けてやるならば、それも必要ですよ、もう少し、そこでの政と官の接触は幾らでもいいんで、どんどん議員連盟に対して、個々の国行ってくださいよ、どうですよということを一遍、一度、私、これ会長、この会でできるかどうかですけれども、他国との間の議員連盟というのを総サーベイする必要があると思います。非常に有効な道具として使えるんですけれども、しかし、だれがどこで何やっているのか分からない。  たまたま相手が来た、相手の議員がよその国から来たとき、しようがないから集めて、そうじゃなくて、今回のパレスチナ問題でもそれぞれの国がどういうふうにやっていますか、エジプトに対して、ヨルダンに対して、モロッコに対して、イスラエルに対して。与党の三党の幹事長がぽっと行って話するだけじゃ話にならないんで、ちょっと我々の課題としてこれは、二百ばかり国があるんで、もう一遍議員外交というものを再活性化する意味でも、これ与野党両方入っていますので、もう一遍整理するなり再活性化するなりが非常に必要だと思うんです。私、もういらいらして見ている場合があるんですけれども、一年生議員ですから、長老の偉い方が会長さんなんかやっていて、おまえ動けというわけにいきませんので、是非、調査会長の重みでもって御指導いただければと思います。  そして、外務省も是非、こういう時期であって何か遠慮している。政治家と接触したらまただれかさんみたいに恫喝されるというふうなことを考えるんじゃなくて、是非それは接触して、どうか議員連盟、何々議員連盟の方、行ってくださいよ、こういう大事なときですからということ、全面的に皆さん方もお手伝いするということがあって必要だと思います。  それから第三点目、これは外務省の在り方、外務省改革とも関係ありますけれども地域専門家というのがイスラムについてどれぐらいいるのかというのは、イスラム研究の難しさとプラスマイナスは、要するに言葉は同じですからどこでもできるわけですね、アラビア語ができれば、ある意味で。だけれども、特に湾岸戦争以降は全く利害も異なってきているから、じゃ、サウジの専門家、どれだけ地域専門家でいるか、チュニジア何人いますか、アルジェリアどれだけいるか、ヨルダンどうか。本来は、例えばアジア諸国ですと言葉は違いますから、インドネシア専門家、タイの専門家、ミャンマー専門家、こういますね。言葉が違うからこそそうやらざるを得ない。ところが、言葉が一緒だから何でもできるような感じになっちゃうんで、これは少し頑張って地域の専門家を育てないと、全部違いますから、御承知のように。それも一つ努力項目として、イスラムについては、地域専門家というのはカントリー専門家です、私が言うのは。地域じゃない、カントリー専門家を育てるということをやっていただきたい。  それから四番目は、これは既に一生懸命おやりになっていますけれども、王制の国が非常に多うございますから、是非皇室外交をもっと盛んにやっていただくということが非常に日本にとってはいいと思いますけれども、これ私もいつかお話ししたことがあると思いますけれども、今のモロッコの国王の先生ですので、こちらへ来られたときにいろんな外務省との関係でやったりしますけれども、問題は皇室・王室外交になったときにプロトコールが先に出ちゃう。それはもう大変大切なことで、敬語を使ったりしないといけない、こういうプロトコール。そうすると、そっちに力がそがれちゃって中身が抜けちゃうんですね。  だから、その点もこれからの外交の在り方として一言御提言申し上げて、特別にお答えが必要なような話ではございませんけれども、やっと発言の場があって、ほかの調査会と同じなものですから、遅くなりましたけれども申し上げて、何かコメントや提言がありましたらいただきたいと思います。
  60. 奥田紀宏

    政府参考人奥田紀宏君) 今、四点御指摘をいただきましたけれども、答えられる、ないしはコメントできるところだけさせていただきます。  いわゆる議連、友好議員連盟についてもう少し役所の側もやるべきだというのは、恐らく正しい御指摘ではないかと思うのです。これだけパレスチナ問題が厳しい折、昔は日本パレスチナ友好議員連盟がアラファト議長を招待をして、まだ国として招待できないときに議連の方で招待をしていただいて、一九八一年か二年だったかと思いますけれども来られて、そのときの議員連盟の方々、自主的に物すごく働いていただいたわけですけれども、これだけの状況なんですが、残念ながら、このパレスチナ議連は半分今休眠中ということで、この前、パレスチナのアブ・アラという自治政府国会の議長が、立法府の議長が来られたときに、これはやはりもう一回やってもらいたいということで、今そっちの方向で動こうとしておりますので、御協力をお願いしたいと思います。  それから、皇室とのかかわりでありますけれども、実は皇室外交という言葉をそのまま素直に使っていいのかどうかというのは別途またいろいろ憲法上の話とかありますので、そこはなかなか難しい問題はあるのです。例えば、いわゆる皇室外交にどういう内容を持たせるのかというふうな話は、それこそ我々よりはやはり国会の方でいろいろと御議論いただきたいというふうに思います。我々はその枠の中でやるしかない。他方で、皇室の方々に是非中東方面に行っていただくというのは、もちろん天皇、皇后両陛下から始まって皇室の方々いろいろいらっしゃいますけれども、行っていただくのは大変有効だというふうに思います。  それから、地域専門家の話でありますけれども、アラビア語につきましては、二十数か国あるアラビア各国すべてアラビア語なので、各国ごとの専門家が育たないではないかということであります。恐らく専門の国別の、その国のことをよく知っている専門家というものをもっと組織的に育てる必要があるという御指摘はそのとおりだと思うのですけれども、なかなか人事上の恐らく、人事課が来ると人事課の人はそう言うに違いないんですけれども、人事上の都合でずっと同じところにやるわけにいきませんということがあります。たまたま今までのところは、長いこと例えばイラクにいたとか、長いことア首連にいたとかいう人がいまして、そういう方々はやはりほかの人に比べると専門家として大変活躍をしているということもありますので、もう少し組織的にやったらいいじゃないかということはそのとおりだと思います。  済みません、教科書の話はちょっと私分かりませんので、失礼します。
  61. 舛添要一

    ○舛添要一君 ありがとうございました。
  62. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  予定の時刻も参りましたので、本日の調査会はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会