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今井澄君
それなりにいろいろやってきておられることは私も知っておりますし、今お話しになったようなことだと思うんですが、しかし問題は、なぜ抜本
改革なき
負担増と私どもが批判するか、あるいは
国民はそう
受け取るかということは、やっぱり目に見えた形で、これまでの
医療の在り方をこういうふうに変えるんだという、そのやはり基本的な視点の変え方がないと思うんですね。
例えば広告規制の緩和、今度の四月からの広告規制の緩和はかなり大胆だと私も評価いたします。ですけれども、要するに厚生行政のこれまでの
考え方は、広告をやたらにやらせると、今度の中国のやせ薬じゃないけれども、
国民に被害が及ぶから、認めたものしか広告させないよという規制行政。要するに、悪いやつがいるから、そういうやつをはびこらせないためにまず規制するんだという
考え方でずっとやってきているわけですね。その結果どうなったかというと、それはいい面もあるけれども、既得権を持った人の既得権を守ることになっちゃっているんじゃないですか。新しいことをやるようになった
人たちというのがなかなか知られない。
例えば、アレルギー科なんというのは、あれ、いつ認められたんですか、今は認められていると思うんですけれども。アレルギーなんというのは
国民の中ではもうとっくに知られているのに、アレルギーを専門として言うことができない。それは、言ってみれば
医療界の古い体質の中で、これは自分の科の、自分の縄張だと思っているものだから、新しい科の名前なんかを作られて、新しいばりばりの医者にそこをやられると困るからという、そういう既得権を守ることに実は
国民を守るはずの規制がなっちゃっているというところで今、実は大
改革。
したがって、広告規制の緩和も、原則広告はいいですよと、だけど
国民に害を与えるようなこういう広告は規制、してはいけませんよ、そういうふうに例えば法律を変えるということをやると
国民にも分かりやすいし、我々も、ああ、抜本
改革だなというふうに
受け取れるんですよ。それを役所の中で、業界との、業界の既得権を持ったところとあれこれ。これはもう
医療界だけじゃないですよ、建設業界だってどこだって。それが今問われているわけでしょう。
そうすると、やっぱり抜本
改革と言うからには、そこのところを法体系も含めて根本的に変えるということが必要だと思うんですね。
それで、実は、質問、ちょっと急いじゃったんで飛ばしちゃったんですが、さっきの
診療報酬との関係でも、これは
大臣にも是非お聞きしたいんですけれども、私どもは、ずっと議論されてきている
診療報酬、医師への支払システムが今のような出来高払、注射一本やったから幾ら、肝機能調べたから幾ら、往診に行ったから幾ら、こういう出来高払から、治して幾らという包括払にすべきじゃないかとずっと提案してきているわけですよね。そう提案してきているからといって、包括払、定額払の方が絶対的にいいとか、出来高払は絶対に駄目だとか、そういうことを言っているつもりはないんですよ。
結局、
現場の
医療機関がちゃんとした
医療をやって、そして職員を、ちゃんと過重労働にならないように働いてもらって、経営が成り立つ
診療報酬であればどういう支払い方でもいいんですよ。ただ、
坂口厚生
大臣も何回も
お答えのように、今の
診療報酬は本当に数千
項目あるんですよね。
私も
診療報酬の審査員というのを十四年やっていました。もう大変なことですよ。それで、あのレセプトというのを毎月二万件も机の上に積まれて、それを審査するんですからね。もう大変なことですよ。これを民営化しようなんという意見がどこかにあるようですけれども、民営化してごらんなさいというんですよ。だれが引き
受けてくれますかって、こんな専門的な知識と技術を要するレセプトの審査なんというのは。恐らく、民営化したってだれも引き
受けてくれないんですよ。
その話は別として、経験がありますけれども、
坂口大臣もおられるように、あんな複雑なものは窓口で
患者さんが見れば、ああ、そうか、おれの注射は幾らだったのかと分かるぐらいまで簡素化できないんだったら、治して幾らにした方がよっぽどましじゃないですかというのが我々の主張なんです。だから定額制を言っているんですが。
そこで問題になるのは、定額制の前に標準化があるんですよね、
医療の標準化。今、EBMとかなんか言われましたけれども、やはり今の
医療というのは、
患者によって同じ病名でも違うんだ、同じ病名でもそのときによって違うんだ、何か常識みたいなことを言われますよね。風邪だって人によって違うよ、風邪だって今日と明日で違うよ、だから
治療法が違うんだよ、だから標準化はできないよ、まして定額払はできないよと言われると、そうかなと思うけれども、
皆さん、医者に行ってごらんなさい。自分の前に診てもらった風邪の
患者と自分と違う
治療を
受けていると思う人はいますか。どう少なく見積もっても、八割以上の
患者は定型的な
治療を
受けているんですよ。なぜか。その方が安全だからなんですよ。間違えないからなんですよ。
例えば胃がんの手術だったら、
入院して、手術して、何日目にどうなってこうなってと、クリニカルパスがもう今進んだ
病院に全部できているんですよ。胃がんは慢性期か急性期かどっちに分類するのか知りませんけれども、こういう
病気はもう
治療法はきちっと決まっているんです。肺炎だとなったら、まずばい菌が、原因の菌を検査に出すと。その菌に一番効く抗生物質を使おうなという前提の下で、しかし今最もはやっている菌はこの菌で、今一番効く抗生物質はこれだからというので、はい、
入院して、点滴して、抗生物質はこれ。決まっているんですよ、マニュアルが大体。それが決まっていなかったら医者はやってられないですよ、一人一人全部
考えて。
第一、昔は医者のさじ加減といったけれども、今は全部錠剤じゃないですか。背の低いおばあちゃんが来てコレステロールの薬を出した。次には相撲取りみたいな大人が来てコレステロールの薬を出した。さじ加減なんかしないで同じ薬を出しているじゃないですか。それが現実でしょう。標準化しているんですよ。
これは
坂口大臣も御経験はおありだろうと思いますが、私も医者になったときに、これは小池さん
たちのグループで作っているんですかね、「臨床医の注射と処方」、非常に便利な薬がありましてね。風邪だと思ったら、風邪の種類、鼻水が主体かせきが主体かによって、薬はこう、注射はこうという非常に便利な薬が毎年改訂されて出ているんです。我々は、教授に教わるよりも、それを大事にしながら、OJT、医者になってからのトレーニングを始めたんです。
そのぐらいどの世界にだってマニュアルがあるし、マニュアルに沿ってどうやって治すか、マニュアルに合わない人にどうするかというところで医者の裁量権があるんですよ。そうすると、標準化をしなければ何もできない。それを今までは、何ですか、
厚生労働省も、
審議会の偉い先生方も。医者から、
患者一人一人違うんだよと言われると、ああ、そうですかと引き下がっちゃって。ばかげた話ですよ。
そこで、
坂口大臣にお尋ねしたいんですけれども、いっそのこと、ここで抜本
改革と言うからには、
診療報酬の支払制度も治して幾らということにしてみようじゃないか。下手くそやったらその
病院が損するよ、うまく治したら得するよと。お薬の使い方もそうです。そういうふうにしてみて、当然それに当てはまらないものあるでしょう。この人は特例でした、その人だけ紙に書いて、どうして特例かということでプラスアルファくださいと、そういうシステムに切り替えることこそが抜本
改革だと思うんですが、そう思いませんか。どうでしょう。