○井上美代君 毎年着実に進んでいるということが今明らかになったと思います。この数も十年間で見てみますと倍になっているということになります。バス事業では、経営の効率化や競争力の強化を口実として、
リストラによる過酷な
労働条件の切下げが進められているということを裏付けしていると思います。
一昨年来、京王電鉄では一〇〇%出資の子会社を作り、その子会社にバス事業部門を営業譲渡し、そして
従業員をすべて新会社に転籍をさせ、出向をさせて移してしまうという、そういう手法をやっているわけです。そういう計画が進められておりますけれ
ども、現在、
労働者は、子会社の営業が八月から始まるということに合わせまして、今月の、五月の三十一日までに、自分が転籍を求めるのか、出向を求めるのか、どちらかを選択しなさいという、そういうことが今迫られているんです。五月三十一日ですから、もう幾らも日がないんですけれ
ども。そして、八月からはこれを子会社に移して、そして
労働者は切り下げられた
条件でやっていくということになるわけです。
計画どおりにいくのかどうかということが本当に大きな問題ですけれ
ども、どういうふうになっているかということをもうちょっと申し上げますと、転籍・出向先の
労働条件は大幅に引き下げられます。会社は、平均でまず一五%の
賃金引下げだと、こういうふうに言っているんですけれ
ども、
賃金が既に引き下げられるんです。そして、四十七歳の勤続十八年の
労働者の方ですけれ
ども、これを見ると一月で九万六千円、年間で百四十万円もの賃下げ、引下げになるということであります。その上、驚くべきことなんですけれ
ども、移った先では
退職金が全くなくなってしまうということです。そのために二千四百万円もらえるものが八百万円になってしまうというんです。今の会社から子会社に移される、そのことによって二千四百万円もらえるのが八百万円になってしまうというんですから、本当にこれは大変な引下げです。そして、計算してみれば一千六百万円の減額で、そして
賃金と合わせて単純計算で三千六百万円の減額となってしまうのです。三千六百万円といえば、言ってみれば
労働者の家庭にとっては家が一軒買えるという、そういう内容です。
こんなことになったらもう本当に大変というので、生活設計、そしてまた生涯の計画も持って、設計を持っているわけなんですけれ
ども、完全にこれが狂ってしまったということですね。そして、崩壊してしまうという、そういう不安に今
労働者が追い込まれているということ、そして切実な声になっているということが、私も現場の声を聞いて改めて驚いております。特に、住宅ローンを抱えた
労働者からは悲鳴が上がっております。転籍だと
社内融資
制度を利用できなくなるわけなんです。そして、
賃金カットと合わせてダブルパンチになっていくという、こういう
人たちがたくさん出てきているわけなんです。
更に重大なのは、この計画が進められると残業が激増していくということがあるということです。
なぜということなんですけれ
ども、収入が減った分を残業で補おうとするわけなんです。これまで以上に残業をしなければ生きていけないというふうになりますので、残業が更に増えていくというふうになります。何しろ疲れた体にむち打ってでも頑張ろうと
労働者が残業に追い込まれるのは、私は、収入ががたんと落ちていくわけですから、もう火を見るよりも明らかだというふうに思うんです。
現在、京王電鉄のバス部門の三六協定では、残業の上限時間というのは一日七時間、そして一か月で八十時間、年間で九百六十時間というこの異常な長さ、もう大変な長いものになっております。実際にはそれを超える残業をする人もいるということですので、現場の
労働者に聞いた
実態は本当に深刻なものです。
現在でも大変厳しい
労働条件にある中で、急激な長時間労働が進めば、当然、
労働者の健康がまず破壊されていくということがあるわけです。医療問題も深刻な
実態がありますけれ
ども、その上にこのような
労働条件の中で
労働者が病気になっていくということが大変心配されるわけです。そして、それはひいては乗客だとか
国民の安全性にも悪影響が出てくるというのは、もうこれは必至ではないかというふうに思うわけです。
京王電鉄のバス部門では、以前、
労働者が運転中に失神をする大変な事件が起きました。そして、これは私たちにも本当にショッキングな事件として今も記憶があるわけですけれ
ども、京王電鉄は九三年以来、長時間労働の是正を求めて労働基準監督署の指導を何回も受けておりますけれ
ども、今もなお是正はされておりません。
乗り合いバスやタクシーの運転手の
労働条件に関しては、労働基準法の残業時間の法定上限時間が適用除外になっているために、
厚生労働省は自動車の運転者の労働時間等の改善のための基準を設けております。しかしながら、このまま行きますと
企業再編によって運転手の
労働条件の向上に向けた方向に全く、今度は労働の現場から悪化していって、そして逆方向になっていく事態というのは大変心配されるんですね。そういう点からも非常に危険なことだというふうに思っております。
そこで、まず私は
大臣にお聞きしたいんです。基本姿勢について
質問をしたいんです。
企業再編による
リストラにおいても、
労働者の
労働条件のルールや、そしてまた転籍や出向にかかわる
労働者の権利を厳格に守らなければならないと、このように思います。労働のルールというのはあるわけですから、それを守るということが非常に重要だと思います。
政府、
厚生労働省にはその責務があるというふうに思いますけれ
ども、それはいかがでしょうか。責任があるというふうにお思いになっておられるかどうか、
大臣にお聞きしたいのですが、
大臣、御答弁お願いします。