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参考人(
神崎好喜君) よろしくお願いします。
私は、まず、学者でも
研究者でもございませんで、
日本理療科教員連盟会長ということで
出席をさしていただいておりますが、今日お配りいたしました
資料で
冒頭でプロフィールを書かしていただきましたように、たかが一人の盲
学校の
教員でございます。
進路指導、それから
あんま、はり、
きゅうの
教科の
指導に当たっているという現場の人間でございます。その
立場で今日は
発言をさしていただきたいというふうに思っております。
なお、本題に入る前に、昨年十一月には、私
ども日本理療科教員連盟が
あん摩マツサージ指圧師等法の
改正に向けて請願を行いましたときに、本
委員会の
委員の
皆様には大変御
協力をいただきました。結果的に私
どもの望みはかなわなかったわけでございますけれ
ども、これにつきましては心より感謝を申し上げ、また、あわせて、そういう機会がありました折には一層の御
協力をお願いしたいというふうに考えておりますことを
冒頭に申し上げて、本論に入らしていただきます。
冒頭申し上げましたように、私は
視覚障害者の
雇用促進ということを
中心テーマにいたしましてお話をさしていただきたいと思います。
視覚障害者の
雇用・
就労状況を見ますと、
厚生省、
平成八年の
実態調査をそちらの方に
資料一として挙げさしていただいておりますが、そこで見てお分かりいただけますように、他の
障害者に比べて
就業者の率が非常に少ないということ、また、もう
一つの特徴は、
農林水産業が三〇%という、
視覚障害者の
就業率でこれが最も高いわけでありますけれ
ども、私
どもの
常識になっておりますのは、これは家業が
農林水産であるということで、現にその生産に携わっていなくても、
視覚障害者、この家にいるからということで
農林水産の数が高いというふうに、私
どもの方では
常識なわけですが、それを除けば、
あんま、はり、
きゅうによる
就業が高いということがはっきりと読み取ることができると思います。
例えば、
欧米諸国におきましては、
視覚障害者といえ
ども様々な職に就いているというふうに言われております。それは
一つの
方向性であり、
ノーマライゼーションのいい
方向だと思っておりますけれ
ども、
職業的な
自立という
立場から考えたときに、
我が国視覚障害者はこの
あんま、はり、
きゅうがあるということで
職業的自立が果たせているというのも、またこれも事実であると。この前提を踏み外した
雇用・
就労対策というのは
視覚障害者に関しては当てはまらないだろうというふうに現在においては考えております。
これは、このところ取り組まれておりました
欠格条項の
見直しということ、ないしは今回の
障害者の
雇用促進等の
法律の一部を
改正する
法律案の中でも
除外率を徐々に縮小していくという
方向がうたわれているようでございますが、仮にこのような形になったとしても、
視覚障害者は果たして
職業的な、
職種的な広がりが求められるだろうかということに非常に私は疑問を感じております。
そういう中で、以前、
労働省が
ヘルスキーパーというものを、
企業内理療師というふうに呼んでおりますけれ
ども、この
ヘルスキーパーというものを
視覚障害者の
雇用促進の有力な目玉として取り上げて、約十年を経過しております。その間に、確かに目覚ましい
ヘルスキーパーの増加がございました。しかし、総数ではやはりまだまだ二百とか三百とかという程度ではないかと思います。
資料の方に、私
ども日本理療科教員連盟が
調査をいたしまして発表した
資料を添付さしていただきましたけれ
ども、それ以降
ヘルスキーパーについての
全国調査が行われておりませんので詳しいことを申し上げることができなくて大変残念なのでありますけれ
ども、少なくとも十年前と比べるとはるかに
人数は多くなっていった。この
方向を
一つの
視覚障害者雇用促進の
方向として位置付けることは、
視覚障害者全体の
雇用率を高めていくという上で非常に有用なのではないかというふうに考えております。
ところが、先ほ
ども申し上げましたように、
あんま、はり、
きゅうの業界といいますのは、このところ
大変晴眼者、
晴眼者というのは
視覚に
障害のない
方々のことを私
ども晴眼者というふうに申し上げますけれ
ども、この
方々が参入してまいりました。そういう中で、非常に厳しい
状況にあることも事実であります。
後ほど述べますけれ
ども、この
晴眼者の参入というもの
イコール悪というふうに私は考えておりませんが、早い
段階でそれなりの手だてが取られませんと、毎年六百人とか七百人とか八百人とかの
視覚障害者が
あんま、はり、
きゅうの
資格を持って、これは自営も含めておりますが、
社会で
職業的な
自立を果たしているわけですけれ
ども、これだけの
人数の
人たちがやがては路頭に迷わなければならないと。
国家政策といたしましても、その
人たちを例えば
生活保護の
対象にすればいいのか、それとも
職業を維持する中で
納税者の
資格を守っていくという
施策の方がいいのか、この辺はしっかりと是非お考えをいただきたいというふうに私は考えております。
確かに、
あんま、はり、
きゅう以外にも
視覚障害者は
仕事に就いていっております。先ほど申しましたように、今から十年ほど前に
労働省は
視覚障害者職域開発研究会というものを設けて、その
報告書の
一つが
ヘルスキーパーの勧めでございました。また、
電話交換、
コンピュータープログラマー、
事務的職種でございますが、こういうふうなところも
可能性があるという提起をなさいまして、例えば
職場介助者制度を作りまして、事務的な
職種に就いた
重度視覚障害者に対しては
職場介助者を充ててその業務の遂行に
円滑化を図っていったわけでございますけれ
ども、では、現実問題として、
視覚障害者で事務職の方がそれ以降どれだけ増えたかというふうに申し上げるならば、やはり
ヘルスキーパーと比べると格段の差がございます。
以上のような点を前提といたしまして、今日お配りさしていただきましたけれ
ども、二枚物のレジュメの中の三番のところに私なりの要望、提案事項を書かしていただきました。
その一点といたしましては、既存の職だけではない
障害者の
雇用促進のために是非とも政策誘導を図っていただきたいということであります。例えば、私
どもが
ヘルスキーパーの求人開拓のために各
企業に電話をしたりメールを送ったり、それは非常に多くの数でございますが、そのようなことをいたしますと、
資料の十一の方に添付さしていただきましたけれ
ども、大方の
企業のお答えは、それは冷たいものなんです。
ただ単に冷たいだけではありません。どういう点がネックかといいますと、
一つには、
視覚障害者に関してよく御存じない。例えば、インフラが整っていない、
障害者トイレがないから
視覚障害者の
雇用は考えられないと言ってくる
企業がございます。これはもう時代錯誤的なものだと私は思っております。また、我が社では
障害者雇用を積極的に進めているけれ
ども、現在所有のポジションだけに限っておりますと。そのポジションでやれる人であれば、
障害者であれ
健常者であれ、それは差別いたしませんと。しかしながら、新たなポストを考えることはできないというふうなことをおっしゃいます。
私は、
障害者の
雇用促進等に関する
法律の中で、
障害者がその能力に適合して就労できるということが第一条でうたわれているわけですけれ
ども、先ほど申しましたように、
視覚障害者の場合、この
あんま、はり、
きゅうというものが能力に適合した職なわけです。その職で働きたいというふうに言ったときに、
企業側が全くそれに乗ってこないという現状は問題なのではないかと、ここには政策誘導的なことが国レベルで図られてよろしいのではないだろうかというふうに考えております。
二点目に、
ヘルスキーパーの
雇用促進のための総合的対策というふうに書きましたが、これは、私は、同じ
厚生労働省の中で、
職業安定局が担当していらっしゃる
障害者雇用促進と労働基準局が担当していらっしゃる労働安全衛生の行政とがドッキングすることによって、一層
ヘルスキーパーの
雇用促進が図られるであろうというふうに考えておりますので、そのようなことを書かしていただきました。
三点目に、自営の
視覚障害者の
あんま、はり、
きゅう業者への
支援ということを書かしていただきました。恐らく、議員の
皆様も、また
厚生労働省におかれましても、現在を考えれば、自営に対して
厚生労働省が
支援するということは、これはあり得ないことではあります。しかしながら、
冒頭申しましたように、
視覚障害者の
雇用就業の
状況を一方で是とし、また、今回法案には盛り込まれなかったようでございますけれ
ども、自営業者に対しての
支援も
検討課題ということで提起があったというふうに聞いております。そうした点を考えますと、遠からぬ時期に
厚生労働省の
施策において自営の
視覚障害あんま・はり・
きゅう師に対する何か助成といいましょうか援助といいましょうかがなされてよいのではないか。
一言申し添えるならば、提言にありますような自営業者に対する
相談であるとか、又はセミナーであるとかというものは、既に私
ども盲
学校のマッサージ、はり、
きゅうを教える学科においてはこれは実行されていることなんですね。したがって、文部科学省サイドでは既に実行されていることだということも前提に置くならば、更に一歩進んだ
施策が打ち出されてもよろしいのではなかろうかというふうに私は考えております。
以上のようなことを考えますと、
視覚障害者の
雇用促進のためには
視覚障害者に特化した
施策、これが必要ではないかと思います。
このところ、
厚生労働省の
障害者雇用対策を見ていますと、確かにマクロのところでは進んでいると思います。また、従来、
施策が不十分であった
知的障害者であるとか
精神障害者であるとか、こういうところに厚くしようという、そういうことはよくうかがうことができますし、これは私も全く異論はございません。しかしながら、だからといって身体
障害者はもう上がりということは困るわけです。まだ全身
障害者と
視覚障害者においては決して上がりの状態ではございません。ここを是非とも議員の先生方にも御
理解をいただいて、法案の中に盛り込めるものは盛り込んでいただきたいというふうに考えております。
最後に、要望事項の五点目としまして、勤労の義務を果たしたい、そういう
障害者への
施策を講じていただきたいということを書かせていただきました。
憲法の第二十二条では
職業選択の自由がうたわれております。そういう意味で、どんな
職業にだれが就いてもいいんだということが言われ、従来
視覚障害者が守ってまいりましたマッサージ、はり、
きゅうの領域へ
健常者の
方々がたくさん入ってきております。
冒頭申しましたように、これを即悪いとは私は申しません。しかし、それを謳歌する
健常者の
方々がいらっしゃる一方で、同じ憲法の二十七条では勤労を
権利であり義務であると定めています。
視覚障害者の中で働く能力がある、だから勤労の義務を果たしたい、そう願っている
視覚障害者が、なぜ一方、同じ憲法で定められている
職業選択の自由によってそれを謳歌する
人たちによって
職域が狭められなければならないのか、私は非常にそこを危惧と申しましょうか、残念に考えているところでございます。
ほぼ時間になったようでございますから、
資料の方でも出させていただいておりますので、例えばこの
委員会におきまして、ないしは参議院におきまして、こういった点について附帯決議をしていただきたいと。又は、
労働省に関しても御要望を書かせていただいておりますが、後ほど御質問をいただくような時間もあろうかと思います。ちょっと目をお通しいただきまして、また御質問の中で補充、補足ができればなというふうに思っております。是非ともどうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
ありがとうございました。