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2002-10-16 第154回国会 参議院 決算委員会 閉会後第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年十月十六日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十月十日     辞任         補欠選任      田嶋 陽子君     又市 征治君  十月十五日     辞任         補欠選任      若林 秀樹君 ツルネン マルテイ君      大沢 辰美君     林  紀子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中原  爽君     理 事                 岩井 國臣君                 佐々木知子君                 中島 啓雄君                 川橋 幸子君                 谷  博之君                 八田ひろ子君     委 員                 荒井 正吾君                 泉  信也君                 加治屋義人君                 柏村 武昭君                 後藤 博子君                 田浦  直君                 藤井 基之君                 三浦 一水君                 朝日 俊弘君                 池口 修次君                 海野  徹君                 神本美恵子君             ツルネン マルテイ君                 辻  泰弘君                 風間  昶君                 遠山 清彦君                 山本  保君                 林  紀子君                 岩本 荘太君                 広野ただし君                 又市 征治君    国務大臣        総務大臣     片山虎之助君        財務大臣     塩川正十郎君        文部科学大臣   遠山 敦子君        厚生労働大臣   坂口  力君        経済産業大臣   平沼 赳夫君        国土交通大臣   扇  千景君        環境大臣     鈴木 俊一君        国務大臣        (内閣官房長官) 福田 康夫君        国務大臣        (沖縄及び北方        対策担当大臣)  細田 博之君        国務大臣     鴻池 祥肇君    副大臣        総務大臣    加藤 紀文君        外務副大臣    茂木 敏充君        財務大臣    小林 興起君        文部科学大臣  河村 建夫君        厚生労働大臣  鴨下 一郎君         ─────        会計検査院長   杉浦  力君         ─────    事務局側        常任委員会専門        員        島原  勉君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官        兼行政改革推進        事務局公務員制        度等改革推進室        長        春田  謙君        内閣官房内閣審        議官       中城 吉郎君        人事院総裁    中島 忠能君        警察庁交通局長  属  憲夫君        総務省人事・恩        給局長      久山 慎一君        総務省情報通信        政策局長     高原 耕三君        総務省総合通信        基盤局長     鍋倉 真一君        文部科学省初等        中等教育局長   矢野 重典君        文部科学省研究        開発局長     白川 哲久君        厚生労働省医政        局長       篠崎 英夫君        厚生労働省職業        安定局長     戸苅 利和君        厚生労働省職業        能力開発局長   坂本由紀子君        厚生労働省老健        局長       中村 秀一君        厚生労働省政策        統括官      水田 邦雄君        農林水産省総合        食料局長     西藤 久三君        農林水産省農村        振興局長     太田 信介君        食糧庁長官    石原  葵君        国土交通省河川        局長       鈴木藤一郎君        国土交通省自動        車交通局長    丸山  博君        環境省総合環境        政策局長     炭谷  茂君        環境省自然環境        局長       岩尾總一郎君    説明員        会計検査院事務        総局次長     関本 匡邦君        会計検査院事務        総局第一局長   石野 秀世君        会計検査院事務        総局第二局長   増田 峯明君        会計検査院事務        総局第三局長   白石 博之君        会計検査院事務        総局第四局長   重松 博之君        会計検査院事務        総局第五局長   円谷 智彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成十一年度一般会計歳入歳出決算平成十一  年度特別会計歳入歳出決算平成十一年度国税  収納金整理資金受払計算書平成十一年度政府  関係機関決算書(第百五十一回国会内閣提出)  (継続案件) ○平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百五十一回国会内閣提出)(継続案件) ○平成十一年度国有財産無償貸付状況計算書(  第百五十一回国会内閣提出)(継続案件) ○平成十二年度一般会計歳入歳出決算平成十二  年度特別会計歳入歳出決算平成十二年度国税  収納金整理資金受払計算書平成十二年度政府  関係機関決算書内閣提出) ○平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書  (内閣提出) ○平成十二年度国有財産無償貸付状況計算書(  内閣提出)     ─────────────
  2. 中原爽

    委員長中原爽君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十日、田嶋陽子君が委員辞任され、その補欠として又市征治君が選任されました。  また、昨十五日、若林秀樹君及び大沢辰美君が委員辞任され、その補欠としてツルネンマルテイ君及び林紀子君が選任されました。     ─────────────
  3. 中原爽

    委員長中原爽君) 平成十一年度決算外二件及び平成十二年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総括的質疑第一回を行います。  質疑に先立ちまして、平成年度決算における警告決議に対し、その後内閣の取った措置につきまして、財務大臣から説明を聴取いたします。塩川財務大臣
  4. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 平成年度決算に関する参議院議決について講じました措置について御説明申し上げます。  内閣官房報償費につきましての不祥事再発防止と適正かつ厳正な執行による国民信頼確保につきましては、まず、総理外国訪問に関する内閣官房外務省との間における事務及び経費分担明確化を図るため、内閣官房におきまして、平成十二年度当初から、総理外国訪問に当たっての総理大臣及び官房長官宿泊費については施設借上費として庁費により支弁し、平成十二年八月より、旅費法運用方針改正に伴い、内閣官房職員宿泊費については実費支給とするなど、既に見直しを行ったところであります。  平成十三年度におきましては、総理外国訪問に伴う総理大臣及び官房長官以外の内閣官房職員宿泊費についても、施設借上費として庁費により支弁することとし、また、現地で必要となる自動車の借料等庁費支払については、外務省支出委任を行い、会計責任明確化を図るなどの改善措置を講じたところであります。  さらに、平成十四年度予算におきましては、総理外国訪問における内閣官房及び外務省の各々の事務分担を明確に定め、その事務分担に応じ自らの責任において予算を計上し、執行するとの観点から、総理外国訪問に伴う経費のうち総理大臣及び官房長官を含めた内閣官房職員分宿泊に関する経費以外は外務省に一元化して予算計上したところであります。  次に、内閣官房報償費執行体制整備内部確認監査体制の構築につきまして、平成十四年四月に内閣官房報償費の取扱いに関する基本方針等を定め、一、毎年度報償費執行方針を明らかにすること、二、事務補助者の範囲を明確にすること、報償費支払に関する関係書類の記録、管理及び内部確認等のルールを定めることなど、執行体制整備等を行い、平成十四年度より当該基本方針等に基づき、一つ一つ吟味を行った上で、厳正かつ効果的な執行に努めているところであります。  今後とも、内閣官房報償費執行に当たっては、一層厳正かつ効果的な執行徹底を図り、不祥事再発防止及び国民信頼回復に努めてまいる所存であります。  スポーツ振興基金助成金及び民間スポーツ振興費等補助金に係る不当支出につきましては、その再発を防止し、補助金等経理適正化を図るため、区分経理証拠書類整備徹底など、助成金及び補助金交付要綱等改正実施したところであります。  また、日本体育学校健康センター及び財団法人日本オリンピック委員会に対し、補助金等の適正な執行について指導を行うとともに、不適切な経理を行った団体に対して、原因の究明、その改善について指導を行い、併せて補助金等受給団体を対象として、補助金等の適正な執行についての研修会を開催したところであります。  今後とも、補助金等経理適正化を図るよう日本体育学校健康センター及び財団法人日本オリンピック委員会に対し、指導徹底再発防止に万全を期する所存であります。  財団法人ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団を始めとする公益法人の適正な運営確保につきましては、公益法人検査要領の全面的な見直し公益法人担当職員に対する定期的な研修実施、少なくとも三年に一回の立入検査の実施一定規模以上の公益法人に対する外部監査の導入の要請、インターネットによるディスクロージャーの推進等指導監督徹底を図っているところであります。  今後とも、公益法人の適正な運営確保に努めてまいる所存であります。  以上が、平成年度決算に関する参議院議決について講じた措置であります。  政府は、従来から、決算に関する国会審議議決会計検査院指摘等にかんがみ、国費の効率的使用事務事業運営適正化不当経理の発生の防止等について特に留意してまいったところでありますが、今後とも一層の努力を続けてまいる所存であります。  以上であります。
  5. 中原爽

    委員長中原爽君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 田浦直

    田浦直君 皆さん、おはようございます。自由民主党の田浦直でございます。  今日は特区について初めお尋ねをしたいと思いますが、その前に、今回大臣に就任をされました鴻池大臣に心からお喜びを申し上げたいと思っております。私ども同じ参議院の同僚でございますから、大変親しみを私も持っておるところでございまして、十分な御活躍を是非お願いを申し上げたいと思っております。  大臣がちょうど特区担当だということでございますから、特区について初めお尋ねをしたいと思うんですが、この特区という言葉自身、私もそうですけれども国民の皆様も耳慣れない言葉ではないかなというふうに思っております。私が知っている限りにおいて特区というのは、この前、北朝鮮でも特区を作るということでマスコミをにぎわしたようなことがございますけれども、例えばビザを免除して観光客をたくさん誘導するとか、あるいは関税を下げることによって貿易あるいは経済活動を盛んにするとか、そういう意味で、何かどちらかというと低開発国が誘導していたものだというふうな認識を私は持っておるわけなんですね。  今回、小泉内閣が出されておられます特区というのはそういうものの延長線なのかどうなのか、私も定かに分かりませんので、是非担当鴻池大臣の方から、今回の特区構想について御説明お願いを申し上げたいと思います。
  7. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) まず、祝意をちょうだいをいたしまして誠にありがとうございました。いつもこっち側に座っておる者がこっちへ座ったものですから戸惑いを感じているところでございますが、どうぞよろしく御指導いただきますようにお願いを申し上げます。  ただいま田浦委員が御発言なさいました、例えば、例えばというお話でございますが、その部分も大変重要な部分であると私は解釈をいたしております。構造改革をすることによって規制緩和につなげ、そして、経済もさることながら、あらゆる分野でこの日本列島活性化していこうと、こういう考えから発しておるわけでありますけれども、しかしなかなか規制緩和というものは簡単には成りにくいものでございます。それぞれの歴史があり、それぞれの規制というものの役割もあるわけでございますけれども、やはり今回の小泉総理一つの大きな目標として、規制改革をやるんだ、規制改革をやらなければ経済を始めとするいろんな分野活性化につながらないと。  しかし、今申し上げたように、いろんな分野で非常に重くのし掛かっている部分もあるわけでありまして、これを特別に定めて、特別に場所を決め、特別の分野パイロットケースとしてやってみようじゃないかと、これが特区構想であると私は理解をいたしておるわけでありまして、既に、御承知のとおり、今月の十一日に一つプランというものを策定をいたしました。  その前段といたしまして、全国に、地方自治体あるいは民間から、そういうアイデアがありますかと、どうぞお出しいただきたいということで、四百二十六のアイデアが出てまいりました。これを私どもで精査をいたしまして、プランを作って法制化していく、そしてパイロットケースとしてやってみようと、こういう状況を今作り出そうといたしているところでございますので、是非とも御理解をいただきまして、御協力をいただきたいと思うわけであります。
  8. 田浦直

    田浦直君 今、特区構想についてお話を聞きましたけれども、端的に申しまして、この特区を作られて、その目的ですね、いろいろ話がありましたけれども、例えば規制緩和することによって経済振興が盛んになる。それを今度は、そこの特区だけじゃなくして、全国的に展開をしていこうというのが第一の目的なのかな。あるいは、もうその特区で、例えば、先ほど申しましたように、北朝鮮の問題、あるいは香港なんかも特区と言っていいのかどうか分かりませんが、ああいうふうに治外法権的なものを作って、そこで経済活動あるいは観光誘致などを盛んにするということなのか、その辺はどういうお考えなのか、お尋ねをしたいんですね。そこに限定しているのか、あくまでもこれは実験なんだと、そしてそれを全国的に波及していきたいという考えなのか、その辺はいかがでしょうか。
  9. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) 私は、まだ十五日目でございますので、とっくりとまだ勉強をしておりません。しかし、私の考えておりますところを申し上げますと、今、委員がおっしゃいましたような一か所でとどめるということではなく、それがより良き方向で進めば、できるだけそれを広めていこうという構想であるというふうに考えておるところであります。
  10. 田浦直

    田浦直君 その目的は、一番はやはり経済振興ということで考えてよろしいですか。
  11. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) 私は、経済だけにとどまらないというふうに思っております。例えば、今回大変話題になっておりますが、教育分野、いわゆる学校の中でのカリキュラム緩和をいたしました。あるいは教員採用について緩和をすると。これは一地域でありますけれども、そこで小学校から英語勉強をすると、こういうこともカリキュラムから外れてやっておりますし、教員採用につきましても、県が教育委員会採用していくということではなく、その市町村で採用ができるといったような例もございます。もちろん、今、委員がおっしゃいましたように、経済活性化ということも非常に大事な分野でございます。
  12. 田浦直

    田浦直君 今、教育を例に取られましたけれども、私は特区教育というのをやるというのはいささかどうかなという気持ちがあるんですよね。やっぱり教育というのは全国的に展開するべきものではないかな。もし、独特の教育をしたいということであれば、それは私立学校とかそういったところがやるべきであって、公的な学校が、ある特定のところだけ特定授業をするというのはちょっとおかしいんじゃないかなという気がしているんですね。  したがいまして、これを、教育というのを特区の中に持ち込むということでなくして、もしそういうふうに外国語英語授業をしたいということであれば、それはそういう学校を作ればいいわけであって、そういうことに熱心な私立学校もあるんですよ。もう地方でもやっているところはあるわけですから、そういうところでいいんじゃないか。何も国がそういうものに関与してやることはないんじゃないかなと私は思うんですけれども、その辺は大臣のお考えは分かりましたということで。  もう一つお尋ねしたいのは、この特区政策の中で期限というのはどうなるのか。特区をそこだけやる、そこは長い期間ですね。そういうふうな、何といいますか、違ったことをやるのをずっと認めるというのもおかしなものではないかなと思うんですね。だから、そういった意味で、この特区についてはいろいろな中身があるとは思いますが、ある程度何かめどというものがあるべきではないかなというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  13. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) 今、私が思っておるところでは、期限というものは切らないで進めていくということでございます。そのために規制緩和する、規制を外すという作業に入っているわけであります。  例えば、法務省ともいろんな議論をいたしました。いわゆる研究者外国人研究者、非常に優秀な方々も、そうでない、そうでないといったらおかしいですが、普通の外国人方々と同じ法務省考え方で、三年たてば手続を改めてやらなきゃいかぬと。ところが、非常に重要な先端の研究をお互いに日本と共同して日本開発をしている中で、三年たてばそこで一区切り付けなきゃいかぬということを是非ともこれ考え直してくれぬか、外してくれぬかと、こういう御意見が、提案が出てきました。ここで法務省森山大臣ともいろいろお話しして御理解をいただいて、これについては外しましょう、五年にしましょうと、こういうことになりました。これは恐らく、どういう大問題が起きるか私は想像できませんが、そういう大問題がなければこれは私はずっと続いていく特区構想であろうと思います。そういうものが多々あろうかと思います。  教育の問題、今お触れになりましたけれども委員の御主張のような議論も随分ございました。遠山大臣ともいろいろ議論をいたしたところでございますけれども、とにかくパイロットケースとしてやってみようと。これは太田市というところからの提案だったんですけれども、私はこれ面白いと思いました。そこの町のある小学校に行けば英語で小学生がしゃべっておると。そういう地域もできると。これ面白い。これがうまくいけば次にいい意味で飛び火していくんではないか。私はこのような理解をしてこの構想に取り組んでいくつもりでございます。
  14. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) 期限につきまして、大臣が申し上げたとおり現在法案作成作業中でございますけれども、一度特区認定された地域につきましては特区となる期限を限定することは考えておりません。しかし、特区として内閣総理大臣認定を受けた計画認定基準を満たさなくなった場合には認定を取り消すことができる制度とすることを考えております。  それからまた、構造改革特区推進のための基本方針というのが九月二十日の構造改革特区推進本部決定にありますが、そこにも、構造改革特区において講じられた規制特例については一定期間後に評価を行い、その結果に基づいて必要な措置を取るということを決めております。  以上でございます。
  15. 田浦直

    田浦直君 今、一定期間後において、ちょっともう一度説明してください、一定期間後において。
  16. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) お答え申し上げます。  特区において講じられました規制特例措置というものが特区法律というものの期待した効果があるかどうかということにつきまして、一定期間というのはこれまだこの法案審議の中で決まるわけでございますけれども、その期間の間にその期待された効果があるか、それからそれに伴う何か弊害がないかというようなことについての評価というものをやらなければいけないというふうに考えておりまして、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということを定めたものでございます。
  17. 田浦直

    田浦直君 そうしますと、特区の、始めてから、それで初めに期限をくっ付けるということでなくして、ある時期が来たら特区全部一応洗いざらい調べてみて、効果がないという判定したものはもうそこで終わりにすると、そういうふうな説明ですかね。
  18. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) 評価をして、それでその効果があるかないかということを判断して、もし効果がない、あるいは弊害があるということになりましたら、先生の言われるようなことがあり得るとは思います。
  19. 田浦直

    田浦直君 その辺が、私がなぜ期限というのを聞くのかといいますと、やっぱりこれはその地区だけは例外的にいろんなことをやるわけですね。それをいつまでもやるということは、これは国民の側から見ると非常に不公平ですよね、平等ではないわけですから。当然いいものであれば早く全国的に展開をすべきだと思うし、それが駄目なものであれば早くやめさせなければいかぬのじゃないか、その辺で期限というのをやはり考えるべきではないかなということで申し上げたんですね。  今の御説明だと、ある時期を置いて評価はすると、その評価次第で今後検討するというふうなことだというふうに理解していいですね。
  20. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) 現在検討中の法案については、そういうふうな考え方で進めております。
  21. 田浦直

    田浦直君 それから、今申しましたように、特区になるとこれまでの法律で制約されないようなこと、あるいは政省令で制約されないようなことも認めるということになるんではないかと思うんですよね。その場合はどういうふうに考えればいいのか。そこの地区だけは大きく言うと治外法権的になるんだというのか、あるいは特別なまた法律を作ってそこの地区だけは当てはめるというふうにして法的にクリアするのか、その辺はどういう考えでしょうか。
  22. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) 現在考えております法案では、各地域がその地域特性に応じた地域計画というものを出していただきまして、その地域内閣総理大臣認定を受けました場合には、その地域にある規制に関します特例措置というものを適用するような法律、これは構造改革特区のための法律の中にそういった特例措置を設ける規定を書きまして、そしてその地域認定されれば、その地域に関してはその個別の規制法法律特例措置が適用されるというような形を考えております。
  23. 田浦直

    田浦直君 そうなると、これまである国の法律よりも新たに作る推進法ですか、の方が優位に立つというふうな法的な解釈ができるわけですか。今までの法律でやっていたものは、そこだけは外して今度新しくできる法律を適用するということでしょう。そうすると、この法律の方が現存の法律よりも優位なんだというふうなことでできるわけですかね。
  24. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) 優位といいますか、今度の特別区域の法律につきましては特例法という形になりますので、特定の要件を満たしたものについてはその個別の法律に対しての特例措置が認められるという、いわゆる特例法の適用になるということでございます。
  25. 田浦直

    田浦直君 そうすると、元に戻りますけれども、余り長い期間それに基づいてやるというのは国民の間に不公平を作る、不平等を作るという結果になるんじゃないかなと私は思うんですけれども、その議論はおきまして、例えば、今行われている法律が適用されない場合ですね、新しい法律で適用する場所ができるわけですね。その場合に、訴訟が起こったりするようなことはないものでしょうかね。今まではこうあったんだけれども、この法律によってこうなる、これはおかしいんじゃないかというような紛争なんかが起きるという可能性はないものですか。
  26. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) 構造改革特区において何らかの法的問題が発生したときにどういう、法的責任はどうなるのかという御趣旨の御質問だと思いますが、構造改革特区において発生した問題についてだれがどういうふうに法的な責任を負うのかというようなことについては、規制の性格とか問題の発生状況によりますので、それについては今一概には言えないというふうに考えております。
  27. 田浦直

    田浦直君 起こり得るというわけですかね。起こり得るけれども、そのときに対応しようということですか。
  28. 中城吉郎

    政府参考人中城吉郎君) もちろんそういう発生状況ということは可能性としては考えられるわけでございます。  現在検討中の構造改革特区の制度におきましては、地方公共団体がまず特区において講ずべき規制特例措置というものを記載した計画を作る、内閣総理大臣規制特例につきまして関係行政機関の長の同意を得た上で計画認定を行うというふうな形を考えておりますので、そのために、一般論としましては、計画認定において、関係行政機関の長の同意の際にもし瑕疵があるということになれば関係行政機関の長が責任ということになりますし、その関係行政機関の長の同意した内容について、その規制特例措置実施に関しまして瑕疵があるという場合には、規制特例措置実施者、これは主に地方公共団体考えているわけですが、そういったところの責任になるというふうに考えております。
  29. 田浦直

    田浦直君 大臣、私は、この特区というものについて、小泉内閣考えておられるのは、一番はやはり経済振興のためではないかなと思うんですね。そういう意味では、医療とか教育とかそういったものは余りなじまないんじゃないか。まず、その特区を作る目的をしっかり定めて、そして経済振興のためであれば経済関係の特区を作る、あるいは経済界の方々に聞けば、もういろんな制約があって、その制約を外してくれればよほど活動できるという陳情もよく受けるんですよね。  したがいまして、そういったところをまず率先してやるのが私はこの目的がはっきりして何か国民も関心持てるんじゃないかなと思うんですね。それが、医療だとか教育だとか農業だとか、いろんな今言われていますけれども、そんなところにかかわってくると話が広がってしまって、何の目的なのかなということになるんですね。どちらかというと、そういうことよりも、何か株式会社が入ってくるとかこないとか、そんな方面の話の方が大きく伝わって、この特区を作るということの目的は一体何なのかというのがぼやけてくるような気がするんですね。  そういう意味でいえば、私は、経済、産業、金融もいいかもしれませんが、そういうところに絞って特区の活動をして、いろんな制約を外して経済の振興を高めるんだというふうに訴えた方がより効果があるんじゃないかなと思うんですけれども、その辺についての御見解はいかがでしょうか。
  30. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) 今、田浦委員おっしゃいましたように、経済界からは頑張れ頑張れと、こういう声が随分多うございます。それを背に受けておりますけれども、正面からはまた、とんでもない、やるなという大きな声も聞こえてまいります。  ただ、私は、もちろん経済活性化のためにあるいは雇用促進のためにある一定部分、場所で規制緩和していくということも大事だと思いますけれども、その他の分野、今、委員がお述べになりました農業、医療あるいは教育分野におきましてもやはりパイロットケースとしてやってみるべきではないかという気が私はしておりますし、今後とも関係の皆様方と意見の調整を行っていきたいと思っております。  それは、供給する側の論理だけではこの特区というものは理解し難いものがあろうかと思います。やはり受ける側、どう言うんでしょうか、農作物をいただく側、医療を受ける側、教育を受ける側というものを視点にした場合には、やはりこの特区構想というものを推進していかなければならぬのではないかという気が私は強くしておるところでございます。
  31. 田浦直

    田浦直君 少し細かく入っていきたいと思うんですけれども、例えば先日の新聞に特別養護老人ホームに株式会社を参入させるということが載っていたんですよね。  これは、私ども二年ぐらい前に福祉の基礎構造改革ということで随分論議をしたんですね。一年間ぐらい掛かって論議をして、保育所に関してはいいだろうと、しかし特別養護老人ホームについては、まだ時期も尚早だし慎重にやっぱり取り扱うべきだということで導入を駄目だというふうに決めたんですよね。それはもう厚生省の方は御存じだと思うんです。随分論議して、厚生省も導入しないということに決めたわけですから。それが新聞に今度は導入すると出てくるものですから、これは一体どんな構造になっているのか。朝令暮改とは言いませんが、幾ら我々が一生懸命やって決めても、何かぱっと一片の紙でその論議は無視されるというふうな気がしてならないんですよね。  それで、この特養に株式会社参入ということについての経過を取りあえず説明をしてもらいたいと思います。
  32. 中村秀一

    政府参考人(中村秀一君) 特別養護老人ホームの経営に株式会社を参入させることについての御質問でございます。若干、経過なり論議を整理して御説明申し上げたいと思います。  まず、特別養護老人ホームでございますけれども、先生おっしゃいますように、社会福祉事業として位置付けられております。第一種社会福祉事業というふうにされております。この第一種社会福祉事業というのは、社会福祉法、これは社会福祉事業法を基礎構造改革で変えていただいたものでございますが、社会福祉法においては、自治体、社会福祉法人以外の設置主体が事業を行う場合には社会福祉法においては都道府県知事の認可を受ければ認められると、こういうふうになっております。これが一般原則でございます。ですから、株式会社であっても、社会福祉法だけの世界でありますと都道府県知事が認可をした場合には株式会社が特別養護老人ホームができると、こういう法制になっております。ただし、昭和三十八年に制定されました老人福祉法におきまして、特別養護老人ホームにつきましては設置主体を地方自治体及び社会福祉法人に限定していると、これが現在の日本の法制でございます。  先生御指摘のとおり、この老人福祉法によります設置主体を地方公共団体以外は社会福祉法人に限定すると、こういう規制につきましては、規制改革論議の中で、福祉構造改革法の議論のみならず、十年以上も広く特別養護老人ホームにも株式会社を運営主体として認めるべきだということで議論が続いてきたところでございます。強く、経済界の方あるいは規制改革を主張される経済学者を中心として株式会社を特別養護老人ホームの経営に参画させるべきだという主張がなされてまいりました。  これに対しまして、私ども旧厚生省の時代から、何点か理由を申し上げまして株式会社の特別養護老人ホームの設置についてはお断りをしてきたところでございます。  一つは、特別養護老人ホームは、設置するときに社会福祉施設整備費ということで四分の三、国庫なり地方公共団体の補助が行われているということでございますが、株式会社につきましては御承知のとおり憲法上の制約がございまして、整備費を交付できないという事情がございます。  それから、他方、老人福祉法の方でも、既に現行の老人福祉法でも株式会社が有料老人ホームの方には規制なく設置できると。有料老人ホームには介護型の有料老人ホームがございまして、実質特別養護老人ホームと同じような方をケアしているところがございます。介護保険法ができましてからは、この有料老人ホームに対しまして基準を満たしているのであれば介護に関しましては介護報酬を受け取ることができると、こういう道も開かれているということ。  それから三点目として、今後の高齢者対策として、これからの高齢者ニーズというのは居住性の高い有料老人ホームやケアハウス等々、そのほか様々な居住性の高い施設のサービスのニーズが高まっていると、こういうことがございますので、私どもとしては、国庫補助とは別途資金調達が可能な株式会社でありますので、特別養護老人ホームそのものに参入していただくよりも、頑張っていただくんであれば有料老人ホームとかその他ほかに求められる分野があるんではないかと、こういうことを強く申し上げまして、参入について反対というか、別の分野があると、そちらの道が開かれているので、そちらの方が株式会社に適当ではないか、株式会社は社会福祉法で全く排除されているわけではないけれども、より適切な分野があるんではないかと、こういうことで申し上げてきたところでございます。  しかしながら、今回、そういう枠組みの中で住民の健康、福祉を預かります地方公共団体からも、強く株式会社、社会福祉法人に限らず多様な設置主体、株式会社、民間活力を使って介護をしたいという御提案があり、又はできる限り今回の特区構想におきましてこういう御要望に対してこたえるべしということが政府基本方針であるというようなこと、求められています状況でありますことから、私どもといたしましては、特区に限りまして、担当大臣の方からもお話がありましたように、パイロットケースという御説明も受けておりますので、試行的に株式会社が行うことについて検討することといたしたわけでございます。  我々が検討いたしましたときに考えました諸点を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、有料老人ホームについては株式会社の参入を認めているということ。同じ社会福祉事業、第一種社会福祉事業でありますケアハウスについても株式会社の参入を認めていること。それから介護保険の世界では在宅介護においては主体制限を行っておらず、ホームヘルプ事業ですとかそういったものにつきましては株式会社の参入は自由であるということ。それから介護施設につきましては、現在、市町村で第二期の介護事業計画の策定をお願いしておりますが、高齢化に伴いまして三年間で施設についても一〇%ほど増やさなければならないというように、高齢化に伴いまして更に整備が必要であること。また介護保険におきましては、介護を受ける場合に要介護認定が必要であります。そういった手続が必要であり、また介護報酬につきましては、御案内のとおり定額払いであるということで、提供者側の裁量による誘発需要というのは他の分野に比べまして、類似の分野に比べまして生じにくいと、こういった諸点を考慮いたしまして、株式会社の参入について必要な条件を付して認めることとしたものでございます、特区に限りまして。  必要な条件といいますのは、言うまでもなく、特別養護老人ホーム、長期間安定したサービスを提供することが必要でございます。そのためには経営の安定性を確保する必要がある。株式会社で他の分野でビジネスをされていて、そこが調子が悪くなって特別養護老人ホームの経営から撤退するというようなことが起こることは非常に困るわけでございまして、私ども株式会社の参入について懸念しておりました理由の一つはそういうところでございますので、特区においては地方公共団体、地方公共団体がやってほしいと、こういうことでございますので、十分関与できる公設民営方式、及びPFI方式という条件を付けまして認めることとしたと、こういう経過でございます。
  33. 田浦直

    田浦直君 恐らく政府から言われていろんな理由を付けて株式会社導入への道を開いたということではないかと思うんですね。  これは私は、これからまたいろいろな議論をいろんな場でしていきたいと思いますから、これ以上申し上げませんけれども、何かもう少し、はっと、新聞紙上で見るということではなくて、もう少し、我々が本当に一年も掛けて論議した問題を変えるわけですから、そういうときには党なりあるいは何かのそういう団体なり、いろんなところにもお話を前もって聞かせていただきたいというふうに思っております。  それから、同じようなことですけれども、医療で、例えば日本の医師免許を持たない外国人医師が医療行為を行うということを認めるというふうなことが検討される、されているという話を聞きますけれども、それについての御説明お願いしたいと思います。
  34. 篠崎英夫

    政府参考人(篠崎英夫君) 先生今御指摘のように、例えば、外国人の医師が我が国において、例えば自ら開業して一般的な医療を行うというような場合には、当然日本の医師免許証を修得する必要がございます。しかしながら、十月十一日に決定いたしました構造改革特区推進のためのプログラムにおいて申し上げておりますのは、臨床修練制度というのが既にございますけれども、この臨床修練について、医療に関する知識及び技能の修得というものに加えまして、これに付随して行われる教授、教授とは教える方でございますが、教授を容認するということといたしております。  具体的に一つの例で神戸市の御提案を例に取って申し上げますと、神戸市では、高度先端医療ということで再生医療、今一番の、医療の中で高度先進医療と言われております再生医療、自分の細胞を再び、細胞とか組織を増やすという技術でございますが、再生医療につきましては世界で最先端である我が国の組織培養というような技術、それと、これを関節に注射するという、これは米国が今進んでおるそうでございますが、関節に注射するという米国の医師が持つ技術と、そういうものを融合するというような意味合いでございまして、現行の臨床修練の枠組みを活用いたしまして指導医の指導の下に外国医師に医療行為を行うことを認めると、こういうことにしたわけでございます。
  35. 田浦直

    田浦直君 例えば大学で、高度な医療の知識を持った方が来られて学生に指導するとか、あるいは研修生に指導するとか、そういうことは今もあっているわけですよね。今回のはそういうことでなくして、例えば民間の病院で医師の、日本の医師の資格を持たない人ですよ、その人が診療に携わるということができるというふうなことではないのかどうかですね、それはどうですか。
  36. 篠崎英夫

    政府参考人(篠崎英夫君) 今までの臨床修練制度で申し上げますと、その受入れの病院というのは大学病院、あるいは高度先端的な医療を行っております例えば国立がんセンターとか国立循環器病センターなど、また臨床研修病院などが具体的な例でございます。  先ほど御答弁申し上げましたように、それぞれの国が持っているような、日本が持っているものプラスその他の外国で持っている技術を融合するということでございますので、これは必然的にこちらの受入れ側の日本の医療機関も、従来から申し上げておりますような高度先端的な医療を行える施設に当然なるのではないかと、このように思っております。
  37. 田浦直

    田浦直君 僕は、その範囲であればいいと思うんですよ。ただ、特区の意見交換会での意見の交換を見ていると、その専門委員方々の方からは、日本人がそういう外国人医師に掛かりたいと思った場合、わざわざ外国に行かなくても日本で治療を受けることを禁止しなくてもいいじゃないか、外国人医師が日本の患者さんを診てもいいじゃないか、資格制度についても柔軟に考えられないのかとか、アメリカの資格を持った人が医療行為を日本でやるということについて免許を持たなければ、日本の免許を持たなければならぬということについて、そんなに反対しなくてもいいじゃないかという御意見があるんですよね。  これはちょっと私はおかしいと思うんです。これは全く同じことですよね。日本の私も医師の資格を持っていますが、アメリカに行って診療をすることはできないわけで、当然、アメリカの医師の資格を持っておって日本に来たからといって、その資格で日本人を診療するということはできないと思うんですね。その辺がこの特区改革の意見交換会で随分激しく論議されているんですよ。  要するに、民間の医療機関で、今、研修修練病院とおっしゃられましたが、その中には民間の病院もたくさん含まれているわけですね。そういったところで一般の患者さんの診療をするということを可能にしている、可能に考えるというふうな拡大解釈をしているんじゃないかなと私は危惧を持っているんですよね。  やはり医師の免許というのはそれぞれの国でそれぞれがやっているわけで、私どもも外国に行って日本の医師の免許を使うことはできないわけですから、やはり外国の医師が日本に来て診療するというなら、日本の医師免許を取って診療してほしいと思うんですよね。そういうことを、資格についてはそう固く言わなくてもいいんじゃないかという論議がされているものですから、私は非常に立腹しているんですよね。  そういうふうな方面に拡大解釈していくんじゃないかなと思うんですが、そういうことはないですか。
  38. 篠崎英夫

    政府参考人(篠崎英夫君) 外国人の医師の方が来られて、日本人の治療、医療行為を行うわけでございまして、それには医師ただ一人でできるものではありません。それをサポートする国内、我が国の国内での医療従事者の協力あるいはその連携の下に行われるわけでございますから、この修練制度におきましては、当然その受入れの側の指導医というのがおりますし、それから事故が起きた場合のそういう責任の問題もはっきりしておりますし、また向こうでの医師の資格を持っているとかあるいは教育の要件も満たしておるような条件も付いておりまして、今回の御提案、地方自治体からの御提案も、高度先端的な医療というものを融合して、そして世界初の高度先進医療を我が国から作り出すんだと、そういう趣旨で御提案がされているものでございまして、私どもも、現行の臨床修練制度の範囲において、そういう御趣旨が生かされるようにしていきたいというふうに思っております。
  39. 田浦直

    田浦直君 私が申し上げているのは、教育とか修練とかそんなものは当然学ぶべきだと思うし、そういうことを言っていないんですよ。こういう方々が来て、民間の医療機関で医療行為をするということは、これはやっぱり日本の医師免許を取ってもらわなければならぬということを申し上げているんですね。  今アメリカの話ばっかりしていますけれども、医師の免許を持っているのはたくさんおるんですよね、中国でも韓国でも。それぞれの国の主権でそれぞれの国が決めているわけですから、それを何か、外国人、医師の資格を持っておれば診療させてもいいんじゃないかという論議が随分されているというのは非常におかしいと思うんですね。その辺は是非注意をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほどもちょっと述べましたけれども、株式会社の導入ということが随分マスコミをにぎわせているんですね。私も医師ですから非常に関心を持って見ておるところなんですけれども、今回の特区構想の中でも随分論議をされておられると思うんです。  これは今回見送りになったというふうなことでございましたけれども、その経過、見送りになったまでの経過といいますか、そういったことをひとつどなたか御説明をしていただきたいと思います。
  40. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 孝ならんと欲すれば忠ならずという言葉がございますが、いろいろの御意見、正直申しましてございました。この医療制度の株式化につきましてもいろいろの御意見があって、そしてかなり強力にこれは実現をすべきだという御意見があることも事実でございます。  いろいろ我々も検討をさせていただいているところでございますが、しかし、医療というのは、経済効率を重んじる一方におきまして、これは医療効率と申しますか、治療効率と申しますか、やはりそのことが一番大事でございまして、株式会社化によって経済効率というものが優先をされるということにもしなった場合、そしてまた医師に対してこういうふうにすべきだという圧力が掛かった場合、それは本来の医療から懸け離れる可能性があるというのが私の方の認識でございます。  したがいまして、今でも、今でもと言うと医師会からしかられますけれども、営利に走る人も中にはあるわけでございますが、それが株式会社になるということになりますと、もっとそれが加速されるおそれはないか、私はそこのところを非常に心配をする者の一人でございまして、そうした意味で、今回のところ、これはひとつ御理解をいただきたい。鴻池大臣に対しましても心からのお願いを申し上げたところでございます。  そういう経緯があったことを申し上げておきたいと思います。
  41. 田浦直

    田浦直君 大体、特区ですから鴻池大臣担当かと思いますが、鴻池大臣も今の坂口大臣の御意見と同じと考えてよろしゅうございますか。
  42. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) 農業、医療、教育の中に株式会社はなじまないんではないかという御意見だと存じます。随分そういう御意見も聞かしていただきました。  農業はよしということに相なりました。これは、農民が一生懸命耕しているところに株式会社が入るんではなく、言わば荒れ地、放置されている土地に株式会社が入って、今までできなかった、例えば農地の中に工場を造って、周りにトマトを植えて、トマトジュースをその場で作ってしまうと、こういう素人の発想でありますけれども、そういうことではなかろうかと思います。  教育の件に関しましてはもう既に御理解をいただいておりますから、医療の分野へ株式会社が参入するということにつきましては、十日の日に坂口大臣と、十分御指導をいただきながら私の意見も申し上げました。  それは、一つは、既に株式会社が病院を経営しているところが六十七、八ある、長崎にも当然三菱が経営しておる病院、あるいはNTTの病院も御存じのとおりございます。そういった中でそういう医療の混乱が起きているかといいますと、これはうまくいっておると私は理解をいたしております。  もう一点は、経済的な発想かもしれませんけれども、いわゆる資本を多く増やしていく、株式会社で、ことによって大変重要な医療機器の購入とかあるいは人材といったものの募集が図りやすい、このように考えます。  そういった中で、今後、いわゆる先生方の御意見も十分聞かせていただきながら、特区構想とすればパイロットケースとして一件、二件の株式会社が医療に携わるということについて私は前向きに進めていきたいと、このように考えておるところであります。
  43. 田浦直

    田浦直君 株式会社が経営している、六十八ぐらいあるんだそうですが、私の情報では、みんなうまくいっているとは限らなくて、二つ三つぐらいはその市とか町が肩代わりして経営をさせられているというところもあると聞いているんですね。  私は、農業も教育も医療も、もう何でも株式会社というのが導入しなければ済まないような、何かそういう風潮というのがどうもなじめないんですね。日本日本式でこれまでそういうところをいろんな歴史もあるし経過もあってやってきていたんだろうと思うんです。それは悪いこともあるかもしれぬけれども、いいこともあったと思うんですね。それが最近、アメリカ経済学というのか、何かもう商業主義に基づいて、もう何でもかんでも利益になるようなところには入っていこうというふうな、そういう感じがしてならないんですよね。株式会社が、何というんですか救済の、日本経済の救済の一番いいものだというふうなとらえ方をしているんじゃないかなと思うんです。本当に株式会社というのはそこまで信用できるような経営体なのかなというのも思っておるんですね。  数日前の新聞に書いてありましたけれども、大変な親日家でありますマレーシアのマハティール首相が、日本は欧米の文化を導入することに一生懸命であって、自らの伝統を放棄しているんじゃないかという苦言を呈したというのが書いてありましたですね。何か私もそういう感じがするんですよ。何だかとにかくもう経済のためにはなりふり構わず、今までの保ってきておった秩序とかいい文化とか日本人らしい雰囲気とか、そういうものはもう要らないんだと、もうそういう余裕はないんだという感じなのかもしれませんけれども、でも、それが終わった後には何だか無残な日本の状態が残るんじゃないか。  大臣も剣道をされるという。剣道もスポーツ、これはスポーツとしてとらえる面もあるでしょうけれども、精神的な非常に礼節を尊ぶものである、これはやはり日本の持っているものだと思うんですよ。それはほかのものについてもいろいろあると思うんですよね。そういうものはもうなげうって、もう勝ち負けだけなんだというふうな空気がだんだんだんだん広がりつつあって、それがいろんな社会面にも出てきているんじゃないかな、あるいは経済のいろんな不祥事が起こってきているのもそういう面があるんじゃないかなというふうな気が私はいたしておるわけですね。  したがいまして、大臣、先ほどおっしゃられましたように、提供する側も受ける側もいろんな考えがあると思いますので、そしてまた、日本のいろんな歴史とか伝統とか、そういったものもあると思いますので、その辺は是非よく考慮をされまして、本当の日本のためになるようにお願いを申し上げたいと思いますが、最後に一言、よろしくお願いいたします。
  44. 鴻池祥肇

    国務大臣鴻池祥肇君) 田浦委員おっしゃいますように、剣道は武道でありまして、日本精神の伝統をしっかり守りつつ、そしてスポーツであると、同時にあるというものであります。そして、今、日本古来の文化、伝統というものを壊してはならないと御発言なさいました。正に私もそのように思います。日本の国柄というものが、マハティール氏の表現するように、壊れつつあるんじゃないかと。人には人柄というものがあり、家には家柄というものがある、国にも国柄というものが私はあると思います。私は、この国柄をしっかり守るために私自身も政治家を務めておるつもりでございます。  委員がおっしゃいましたことも十分配慮をいたしながら、しかし、特区構想につきましては、私自身、見込まれて特区担当大臣になっておりますので、前に向いて進めていきたいと思っておりますので、是非ともひとつ御指導と御理解をちょうだいしたいと思います。
  45. 田浦直

    田浦直君 終わります。
  46. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 皆さん、おはようございます。自由民主党の柏村武昭でございます。  本日は、平成十二年度決算に関する審議の締めくくりとして、四つのテーマにつきまして、関係各大臣の皆様方に質問を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、少々物騒な話から始めたいと思います。米国のイラク攻撃、これは私ども本当に心配しております。イギリスのブレア首相も非常に熱心な協力姿勢を表明しておりますが、この問題についてちょっと質問したいと思います。  現在、我が国では、外交問題といいますと、もう昨日、今日見ていても分かるように、北朝鮮による日本人拉致問題一色であります。私もその問題についてはふんまんやる方ない気持ちを持っております、当然でございますが。  現実の国際政治に注目いたしますと、やはりアメリカとイラクの関係が今後どうなるのか、これは大変に気になります。注目が集まるわけでございます。もし仮に、近々米国等がイラクを攻撃した場合、これは今の世界の世論に反発してという、そういう感じもありますけれども、もし攻撃をした場合に、中東情勢緊迫ということで、我が国は当然アメリカの一員でございますから、我が国にとっては果たしてどういうことになるのか、石油の安定的な確保という面で誠に心配な面が出てくるんではないか、これはだれしも考えるわけでございます。  資源エネルギー庁が二〇〇二年に取りまとめたデータによりますと、日本はエネルギー消費のおよそ五二%を石油に頼っておりまして、そのうちのおよそ八七%が中東からの輸入という状況になっておりまして、また、先日のニュースでは、日本にとっても重要な石油輸入国の一つであるインドネシアが工業化の進展によって自ら原油の輸入国に転じたとも伝えられております。したがいまして、中東の政治的、経済的不安定というものは、我が国の経済社会に深刻な影響を与えるものであり、大変気になります。  そこで、経済産業大臣にお伺いします。  もし、米国等のイラク攻撃後の原油の世界的な需給状況、これがどうなるのか。この見通しと、我が国が原油を安定的に確保するための対策等につきましてお聞かせ願えれば幸せでございます。よろしく。
  47. 平沼赳夫

    国務大臣(平沼赳夫君) お答えさせていただきます。  まず、原油の世界的な需給状況、量的な状況について申し上げますと、百六十九万バレル・パー・デーですね、一日当たり、その生産余力を有するサウジアラビアを筆頭といたしまして、イラクを除くOPEC十か国だけでも三百五十七万バレル・パー・デーの供給の余力がございます。これは、IEAの予測によりますと、世界全体の需要の約四・六%に相当する、それだけの余剰があるわけです。  もう一方、この石油消費国、IEA諸国の石油備蓄の合計が、七月一日現在でございますけれども、IEA加盟国の全体の、十か国加盟しておりますけれども日本を含めて、百十六日分の輸入量に相当する約四億三百五十八万トンという非常に高い水準にございます。  したがいまして、当面、直ちにアメリカが、そういうことはあってはならないと思っておりますけれども、イラクを攻撃すると、こういうような形が起こった場合に、世界の石油需要が逼迫する可能性は今のところ、今申し上げたようなデータから小さいと、こういうふうに考えられております。  なお、さはさりながら心配でございましたので、先般、世界の産油国、消費国が六十五か国大阪に集結をしまして国際エネルギーフォーラムというのを開催をしまして、私どもが主催国と、こういう形でありました。そのときに各中東の産油国の担当大臣から、非常にそういう事態になっても日本に対する安定供給は我々は最優先に考えたいと、こういうことも言明をしてくれております。  我が国の石油の安定供給確保のための対策としましては、まず石油の備蓄、これをしっかりやっております。それから、今申し上げたように産油国との連携、これも非常にしっかりやらせていただいております。それから、海外での石油の自主開発を推進しておりまして、この自主開発分が今、全体の一三%というところに相なっております。  備蓄について少し詳しく申し上げますと、現在、国家備蓄として国で確保しておりますものが九十一日、それから民間のタンクにこれも非常に備えて備蓄をしておりますのが八十一日、総計百七十日分を確保しておりまして、緊急時に備えた供給確保については万全の体制を取っております。  それからさらに、今申し上げた大阪で開催された国際エネルギーフォーラムにおきまして、日中韓とASEANのエネルギー大臣の間で合意をさせていただきました。これは、アジア地域における緊急時ネットワークを開設しよう、やっぱりアジアで緊急時にはお互いにこのネットワークで連携を密にしていこうと。それから、アジア地域でも一部石油備蓄を始めている国がありますけれども、そういった形でこのASEAN、そして日中韓で石油備蓄の推進のイニシアチブをやっていこうと。こういう形でIEAのような国際機関と、そして我々はアジア各国とも連携をしまして安定供給の確保に万全を期さなければならないと思っております。  そういった形で、非常に、もちろんそういう戦争が起こることは望ましいことじゃございませんけれども、そういう場合にも私どもは今そういう、今お話をしたような体制で対応していると、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  48. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 ありがとうございました。  いずれにしても、アメリカ対イスラム共栄圏といった対立構造にならないように我が国がベストな外交努力をしてもらいたいと、こう希望するわけでございます。  続いて、ここのところ話題となっております知財、すなわち知的財産権の保護に関する問題に移りたいと思います。  本日、政府の知的財産戦略会議が開催されると聞いておりますが、最近、新聞を見ておりますと、日本企業の工業製品が海外で模倣されて甚大な被害を受けているという記事に頻繁にお目に掛かるわけでございます。今年の夏には二輪メーカーのヤマハ発動機が中国で提訴したオートバイの商標権侵害にかかわる損害賠償請求訴訟で地元中国企業に勝訴したことが大きく報じられまして、反響を呼びました。判決では、地方保護主義の排除、当該モデルの生産禁止、謝罪広告等、肝心の賠償金額を除いては十分満足できる判決内容であったようですが、ジェトロによると、先月も陶器メーカーのTOTOが河南省で同様の訴訟に勝訴したとのことですが、WTOへの加盟ということもあって、中国でも知的財産権保護政策転換の兆しが見え始めておりまして、中国に進出する日系企業にとっては風向きがやや良くなってきたようです。  そこで、経済産業大臣にお伺いします。中国等における日本企業の特許権あるいは商標権等のいわゆる知的財産権侵害の現状についてどのように把握されていらっしゃるか、またそうした問題に対する対策をどのように講じていらっしゃるか、お願いいたします。
  49. 平沼赳夫

    国務大臣(平沼赳夫君) お答えさせていただきます。  模倣品対策等の強化というのは、本年七月に知的財産戦略会議が決定をいたしました知的財産戦略大綱でも大きな柱の一つとしてこれをぴちっとしなきゃいかぬと、こういう形に相なっております。  現状でございますけれども、私どもが行いました調査では、模倣品の海外の製造地域というのはアジア太平洋地域が実は最も多うございまして、国別にはまず中国、それから韓国、それから台湾の順で全体のこれ七〇%を占めていると、こういうことに相なっております。  また、昨今の被害状況は、一つは侵害国の国内の流通だけじゃない、例えば中国だったら中国の国内だけじゃなくて、世界各国にそこから大量に輸出される、こういう事態になっております。いわゆる地域的拡大、こういう形になっています。  二つ目は、各地を結んで侵害品を製造する等の、一か所だけじゃなくていろんなところが組織化されている、そういう状況にもなっております。  三つ目は、単なる商標権の模倣から、今御指摘の特許権侵害へと質的な拡大、これも一層深刻化しておりまして、被害金額も十億円を超えると、こういうような実態があります。  最近の侵害事例を見ますと、侵害国である中国などではWTO整合的な知的財産制度がほぼ整備されたと考えられます。そして、今お示しになった裁判等の結果にもそれが反映されていると思っておりますけれども、しかし、残念ながら当該制度の執行がまだ十分にできていない、こういう問題が進出している日本企業、これを悩ませているところでございます。  こういった問題に対処するために、委員御指摘のヤマハの商標権侵害訴訟等の個別企業による取組のほかに、本年四月に設立されました国際知的財産保護フォーラム、これは座長は松下電器産業の森下会長になっていただいておりますけれども、これは年内に中国にミッションを派遣して民間サイドからも積極的な取組を行っていこう。このミッションには当然我が省からも幹部が同行させていただきまして、官民一体となって中国の中央や地方政府に対して、一つは罰則強化等の一層の制度改善、二つ目は被害の著しい地域の侵害品取締り強化について強力に申入れをする予定でございます。  政府といたしましては、こうした民間の取組に対する各国大使館あるいはジェトロ等を通じた支援に加えまして、WTOや二国間協議など各種の通商協議等の機会を利用しまして、侵害国に権利保護強化の働き掛けをずっと行ってきております。さらに、知的財産侵害品の国内流入防止のために水際対策が大切なものでございますから、二〇〇四年度までに改善策をしっかりと講ずると、こういう形で今検討に入っております。  このような取組を通じまして、官民一体となって私どもはこの知的財産の保護をしっかりとしてまいりたいと、このように思っています。
  50. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 ありがとうございました。産業競争力の確保という観点からも、知財の問題にはこれからも力を入れていただきたいと存じます。  平沼経済産業大臣に対する質問は以上でございます。ありがとうございました。  引き続きまして、知財に関する質問を行います。今度は著作権でございます。  最近どうもCDの売行きが急速に減少しておりまして、今後の業界の存亡にもかかわる深刻な社会問題にもなってきています。この背景には、デジタル機器の進歩と普及によって、高音質を保持しながらも簡単に音楽ソフトをコピーできるようになったことがあると言われています。今ではインターネット上でダウンロードすることによって流行の曲を買うということが子供たちにとっては常識となっているそうです。シングルやLPレコード時代が懐かしい私たちの世代にとりましては寂しい限りですが、もはや音楽は円盤で買う時代ではなくて、音楽CDに限らず、映像媒体であるDVDの普及も進んでおりまして、従来のビデオテープを駆逐し始めておりますが、そのDVDに関しても、CD同様に違法コピーによる著作権侵害の危機にさらされている、そうした変化の激しい状況の中にあるようです。  また、国内の問題にかかわらず、さきの質問の場合と同様に中国等の海外諸国における深刻な著作権侵害の事例が後を絶ちません。今後、日本が世界に誇る文化的な資産でございます映画とかアニメーション作品の数々がDVDの普及とともに違法コピーの世界をさまよい始めるんじゃないかと、映画会社や映像ソフト会社にいる知り合いの皆さんは真剣に心配しております。  そこで、今日は文部科学大臣にお伺いします。  国内外を問わず、音楽や映像ソフト等の著作権侵害の現状についてどのように把握していらっしゃるか、また、そうした問題に対する対策をどのように講じておられるか、お聞かせ願います。
  51. 河村建夫

    ○副大臣(河村建夫君) お答え申し上げます。  委員御指摘のように、デジタル機器の普及とかあるいはインターネット、この利用が拡大してまいりまして、御指摘のような音楽あるいは映像ソフト、この違法利用というのが非常に広がって深刻な問題になっている、御指摘のとおりでございます。  この実態をつかむというのはなかなか困難を要するのでありますが、国内においても、例えば平成十三年度の調査によりますと、違法ビデオでも約五千点、それから違法コンピューターソフトでも一万三千点が押収されているという現実があるわけでございます。また国外においても、御指摘のような海賊版の問題でございますが、中国ではCD等の音楽市場の約九〇%、金額にいたしますと八百八十億と言われておりますが、それは海賊版であろうと。それから、台湾においても半分に当たる五〇%の二百二十億が海賊版であると、このように言われております。そのうち、更にそのうちの三割は日本の音楽の海賊版が出ていると、このように言われておりまして、これは国際レコード音楽産業連盟が指摘をしているわけでございますが、深刻な状況でございます。  このような問題にいかに対応するかということで、これは著作権の侵害の対応をしっかり進めなきゃならぬわけでございますが、国内におっては、まず法整備、違法なコピーを取り締まれるような法制度の整備をやらなきゃなりません。それから、いわゆるコピープロテクションといいますか、いわゆる技術的にこれを保護する仕組み、いわゆる技術的保護手段を講じなきゃいかぬということで、新しい流通システムの開発にも努めておるところでございます。さらに、著作権教育を推進する。これは是非、子供のときから著作権というものはどういうものだという理解を深めていく必要があるわけでございます。さらに、当然のこととして、違法なコピーを作った、製造したということに対しては損害賠償請求をやる。これも容易にできるようにしていくということが必要であろうと。  このような政策、総合的な施策を推進をいたしておるところでございますが、法整備の中でも特に世界に先駆けて日本では著作権法を改正をいたしまして、まずインターネットで無断送信を差し止める権利を既に法定をいたしております。これは、著作者あるいは実演家、それからレコード制作者、放送局、有線放送局、それらの方々に全部著作権でその権利を付与しておりますが、日本はそういう面では世界に先駆けておると言われておりまして、これを更に関係各国が進めてもらわなきゃならぬと、こういう現状があるわけでございます。WIPO等でしっかりこの点を強調していかなきゃなりません。  また、技術的保護手段、いわゆるコピープロテクションでございますが、これはかぎを掛ける仕組みになっているわけでございますが、これを回避するといいますか、そういうものを作るようなこと、これはもう差止め、禁止されているわけですね。あるいは隠しネームといいますか、透かしが入っています、そういうものを回避するような、改ざんするような、それはもう違法であるということがはっきり法定をされておるわけでございまして、この条約に沿ってやっておりますのは日本、オーストラリア、アメリカだけという状況でございまして、これ全部、各国がこれに入っていただくということが必要であろうと思います。  このようなことを通じて、法整備を通じて、音楽・映像ソフトの関係業界においては、特にコピープロテクション、電子透かし、この活用が今図られておるところでございます。  さらに、御指摘のアジア地域を中心とする海外の海賊版対策でございますが、我が国の権利者から、自ら侵害発生地における民事、刑事システムを活用して対抗措置を講ずる、この環境整備を進めなきゃなりません。これが急ぐわけでございます。このために、関係省庁の連携の下で、侵害の多い国、中国を始めとするそういう国には二国間でのいわゆる国際機関の枠組み、WTOでございますね、そこを通じての法整備や取締りの強化というものを強く要請をいたしておりまして、海賊版対策、これは積極的に取り組んでいかなきゃいかぬと考えております。  また、そのために今年の八月に、官民が協力をいたしまして、民間の組織としてコンテンツ海外流通促進機構というものが設立されました。経済産業省、文科省、官を中心として七団体十九社が参加をいただいているわけでございまして、この機構と連携を、協力して、例えば中国へも官民合同のミッションを出すというようなことによってこの対応を図っていきたいと思っております。  正に、今から知的財産基本法の制定の時期を迎えておるわけでございまして、文部科学省としても、これらの保護施策を総合的に進めて著作権の保護に全力を尽くしてまいりたいと、このように考えております。
  52. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 ありがとうございました。  いずれにしても、この著作権とか知財、今、端境期ではないかと思うんです。確立されるためには、各国とも随分温度差があると思いますが、しっかりとした対策をお願いしたいと思います。  次は、地上波テレビ放送のデジタル化問題について質問したいと思います。  テレビに限らず、通信と放送の世界ではデジタル化が世界の潮流となっていることは、委員の先生方におかれましても先刻御承知のとおりではないかと思うんです。CS、通信衛星放送やBS、放送衛星放送では既にデジタル化がなされているところでございますが、今後、我が国でも地上波のテレビ放送のデジタル化が進められることになっております。  昨年六月に行われました電波法の改正はその大きな一区切りと言うことができますが、この地上波のデジタル化問題には、実は誠に大きな、そしていまだ解決されていない多くの課題や問題点があり、とりわけ国だけではなくて、放送各社の負担するであろうデジタル化に伴う諸経費が膨大な額に上るという点で、我が国の放送業界全体が今危機的な状況に追い込まれているということを指摘しておきたいと思います。  まず、現在までに総務省が進めている計画によりますと、来年二〇〇三年からは関東、近畿そして中京の広域圏、いわゆる東阪名の三大都市圏でデジタル放送を開始して、また全国のその他の地域では二〇〇六年にデジタル放送を開始、五年以内の完了を目指すということになっておりますが、この結果、その最終年である二〇一一年、具体的にはその年の七月二十四日に現在放送で用いられているアナログの電波は停止、つまり停波ということになります。  これはどういうことかと申しますと、今、国民の皆さんがお使いになっているテレビ受像機ではテレビ放送を見ることができないと、こういうふうなことになるんですね。このことは余り国民理解されていないようでして、視聴率調査会社ビデオリサーチ社が一年ほど前に実施したデジタルメディア総合調査によりますと、アナログ放送の終了を知っているという方は一一%にすぎず、またデジタル放送が始まることを知っているという方も一八%しかいないということです。  国民の関心が低い理由としては、デジタル化による恩恵というものが余りみんなに実感として分からない。例えば、その昔、皆さん思い出してください、白黒テレビがカラーになったときの感動みたいなものがありましたね。何が何でも金を集めてカラーテレビを買おうと、そういう気持ちが今このデジタルにはないんじゃないかと。国民に対する総務省や放送事業者等の周知活動とか普及推進活動というものが低調であったためではないかと思います。  さきの通常国会では、個人情報保護法案に関して政府側の国民に対する説明不足が指摘されましたが、それと同じことがどうやらこの問題にも言えるんじゃないでしょうか。地上放送のデジタル化に関する国民への浸透度が低く、また一体だれのためのデジタル化なのかということも分かりにくくて、結局のところ、政府側の説明責任が十分に果たされていないんではないかという指摘について、総務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  53. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今、委員御指摘のように、デジタル化というのはもう世界の大勢ですし、我々としてはどうしてもやらなきゃいかぬというんで、去年の電波法の改正でそれを正式に決めたわけですね。大変品質が良くなる、高品質。それから、インターネットとつながって双方向でいろんなやり取りができる、いわゆるEコマースですね、電子商取引ができる。あるいは、いろんな、話すスピードの転換なんかの、障害者や高齢者にうまくなじむようないろんなやり方が導入できるとか、データ放送が充実するとか、いろんなメリットがあるんですが、ただ、今、委員が言われるように、国民にちゃんと分かっていただいているかというと大変心もとないんですよ。  このPRは、一九九八年ですから今から四年前から、地上波デジタル懇談会というのが報告書を出してから始めているんです。そこで、e—Japan戦略にも入れ、アクションプランにも入れ、放送基本計画にも入れ、電波法を直し、そういうことで常にPRはしているんですけれども徹底していません。ただ、最近の調査によりますと、今年の六月、七月の調査によると、来年の十二月からですけれども、三大都市圏で地上波のデジタル放送が始まると、それから今、委員が言われた二〇一一年には終わると、これはやっぱり五割以上の人は大体分かってきているんですよ。分かってきていますが、どれだけ正確に分かっているか。  そこで、この前、ブロードバンド時代の放送懇談会というのを作りましていろいろ議論をしていただきまして、それは役所だけじゃないんですよ、地方自治体も放送事業者も、それからメーカーですね、テレビなんかを作るメーカーも全部入っていただきまして、そこでいろいろ議論して、このデジタル放送のPRのためのアクションプラン、行動計画を作ろうと、みんなでやろうと。こういうことで、役所はもっと効率的なPRを考えていきますけれども、一番いいのはテレビでやってもらえりゃいいんですよ、どんどんどんどんNHK始め、皆さんに。  そういうことを含めて、是非この徹底を図ってまいりたいと、こういうふうに思っておりますし、今、委員御心配の、経費が相当掛かるんですよ。NHKで五千六百億かな、民放で五千億。これもどうやってやるかということを今みんなで知恵を絞っておりますので、今後とも御指摘の点を踏まえて十分な対応を図ってまいりたいと考えております。
  54. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 私はよくうちのおかみさんにデジタルとはどうだということを聞くんですが、アナログからデジタルに絵が変わったとしても余りきれいには見えない。これは素人はみんなそうです。それから、どうでしょうね、やっぱりそういう意味では、いわゆる長屋のおかみさんみたいな方々説明するのに、今の大臣みたいな説明で果たして分かるのかどうかですね。なかなか難しいんじゃないかと。デジタルになって何がいいのか、これを一番国民に分かりやすく言えるのは何だろうか、これを真剣に総務考えなきゃいけないんじゃないかと思うんですが。  去年十一月二十日のことですが、全国地上デジタル放送推進協議会、これは総務省とNHK、民放各社で構成されているものですが、その全国協議会で重大な発表があったんですね。いわゆるアナ・アナ変換対策費が当初見込みの七百二十七億円からその三倍に近い二千億近くに膨れ上がるというもので、一部のマスコミでは、これにより二〇一一年のデジタル化完了計画が大きく崩れ込むんじゃないかと指摘されました。  このアナ・アナ変換というのは、簡単に言うと、電波混信の防止とデジタル放送用の周波数帯を確保するために現行のアナログ放送の周波数を別の周波数の帯に移すことで、九州の有明地方や私のふるさと瀬戸内海沿岸地域での対策が急務となっております。  この対策費としては特定財源の電波利用料が充てられることになっていますが、特定財源であるにせよ国費で賄うということは、仮に当初見込みがどんどん膨れ上がってしまったような場合には電波利用料負担者だけでなく最終的には国民に負担がしわ寄せされる、そういうことになるんじゃないかと大変気掛かりであります。デジタル化を進めていくに当たっての最初のステップであるこのアナ・アナ変換対策費の見積りでこれほどまでに見込み違いがあったということは、デジタル化の事業計画全体にも大幅な、そして致命的な見込み違いがあるんではないかとついつい勘ぐりたくなります。  地上波のデジタル化のためには、伝送路のデジタル化には民放事業者だけで総額、今、大臣がおっしゃいました、およそ五千六百億円程度の経費が掛かります。また、肝心かなめの放送を送り出す設備の更新にもほぼ同じぐらいの程度掛かるだろうと言われています。もちろんこれは二〇〇一年度のデータでありますが、地上波系民放各社の営業収益の総額が二兆五千八百億円、経常利益の総額は二千五百三十五億円ということですから、その五千六百億円という額がいかに大きなものであるかということがよく分かります。また、伝送路のデジタル化について細かく見ますと、キー局の場合は一社当たりおよそ百億円程度と言われていますが、山間地域や中継局を多く抱える地方局の場合ですとそれ以上掛かってしまう場合もあるということなんです。  民放界全体を眺めますと、キー局という巨象の周りに無数の小さな象、つまりローカル局が存在するという構造であり、一社当たりの平均収益でも地方局はキー局のおよそ十分の一にしかすぎません。こうした経営環境の中でこのデジタル化を進めていきますと、民放、特に地方局は、その経営規模に比して多額の設備投資を強いられまして事実上破綻せざるを得ない局も出てくることが予想されます。  一企業の限界をはるかに超える負担を民間企業に負わせることには無理がありまして、今後放送会社の経営基盤弱体化によるコストの大幅な削減が実施されますと、番組内容の均質化と低質化が懸念されます。最終的には、我が国の放送文化の衰退といったことも大いに心配されます。特に、放送局が実際に減り始めるということにもなれば国民の視聴機会といいますか、番組を選択する権利なり自由というものが失われまして、一気に放送草創期のころまで大逆行するんではないかと、そういう心配もあります。  とにかく、情報の地方分権ということが今言われております。衛星放送がずっと盛んになってきますと、もう上から全部コマーシャル付きの番組は出るわけですから、地方局は要らなくなっちゃうわけですね。そうすると、地方局の収入が、これこそ七割以上収入が減になっちゃうわけです。つまり、ローカルのニュースは全く出なくなっちゃう。私の知人のある民放会社の社長によりますと、アメリカの大統領とか日本総理大臣の顔は覚えているけれども、自分のところの県知事とか市長の顔は全然分からない、そういう事情にもなってきますね。これでは、一体何のためのデジタル化なのかということになりかねません。  そこで、総務省としては、今後の放送業界、その中でも地上放送の在り方についてどのようなビジョンを持って政策を実行なさっていくお考えなんでしょうか。この際、改めまして総務大臣にお伺いしたいと思います。
  55. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今いろいろお話がありましたが、私は地上波放送、地上波テレビというのは、これは基幹的な放送だと、中心ですね。しかも、今言われていましたように、地方分権型のと言われましたが、地方密着型の放送だと。だから、これがもう中心にしていかざるを得ないし、その中でローカル局というのが正に地域そのものですからね、地域発信そのものなんで、これは是非育てていく、残していく、こういうことが必要じゃなかろうかと、こう考えておりましてね。  今、私どもの方では電子自治体ということをやっているんですよ。電子自治体とローカルのこれがデジタル化した場合の放送事業とどうやって連携していくかということも今研究しておりますし、それから大変なお金が掛かることは事実ですけれども、これはある程度努力してもらう、工夫してもらうということは必要ですが、どうしてもというところはどういう公的な支援が可能なのか、これは簡単にいきませんけれども、これは十分我々としては検討してまいりたいと、こういうふうに思っておりましてね。  デジタルのメリットがぴんとこないじゃないかと。なかなかぴんとこないんですよ。ただ、私もデジタルの放送受信機買いましたら、やっぱりきれいですね。ただ、問題は中身なんですよ。幾ら映し方が良くなる、いろんなことに利用できても、流す中身を、コンテンツというんですか、こういうものをちゃんとしてもらう、利用の形態を分かりやすくしてもらう、アプリケーションというんでしょうか、こういうことをしっかりやって国民の皆さんに印象付けるという努力が必要なんですよ。総務省もやります。しかし、放送事業者の皆さんにもそこは頑張ってもらいたいと、こう私は考えております。
  56. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 地上波のデジタル化に向けた設備投資の問題で気になるのは、放送局の負担だけではなくて視聴者の負担もあり得るんじゃないかということなんですね。  現在でも、難視聴地域では中継局を設けて何とか電波をキャッチしております。この放送中継施設、俗にサテライトと言うんですが、こうした施設もデジタル化に対応するためには既存の機器の更新を行わなければいけません。これにはおよそ五百万から一千万程度の費用が掛かるそうですが、問題は、そうした中継施設には自治体や周辺住民の負担によって作られたものがあるため、そのデジタル化への更新費用を一体だれが負担すべきなのかということなのであります。  例えば地理的にも広大な北海道の場合を想定しますと、こうした中継施設は全道で四十五局もあり、これがもしも周辺住民の負担ということにでもなりますと、到底その人たちの納得を得ることなどできないんじゃないかと心配されます。これが自治体の負担ということになったとしても、結局は地域住民の納める税金が原資となるわけですから、住民負担という点では全く同じであります。  この点、デジタル化推進に伴う国民経済的負担について、総務省ではどのような配慮をされているんでしょうか、総務大臣にお伺いします。
  57. 加藤紀文

    ○副大臣(加藤紀文君) お答えいたします。  委員御承知のように、デジタル化に向けた中継施設等の整備については、これは基本的には放送事業者自らが行うものであります。  したがいまして、現在放送事業者において共同の、送信施設の共同建設等いろいろな経費節減を進めているところであります。そしてまた、総務省といたしましても、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法等によりまして税制や金融上の支援措置を設け、各社の負担を軽減し、デジタル化投資の円滑化を図っているところであります。  しかしながら、今お話ありましたように、様々な地域的事情により民間投資による整備が容易でないようなところがあった場合も考えられるわけでありますが、そういったときには、今行われておりますアナログ放送における各種支援策等も参考にしながら、公的支援の在り方について検討してまいりたいと、先ほど大臣も申し上げたとおりでございます。  いずれにせよ、総務省といたしましては、地上テレビジョン放送のデジタル化に当たりましては、こうした取組等を通じて円滑な導入を図る必要があると認識しておりまして、国民に過度の負担を掛けることのないよう配慮してまいりたいと思っております。
  58. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 ありがとうございました。  地上波のデジタル化については、事業規模の大きさ、あるいは関係する当事者が非常に多くて、これは生活に密着したテレビの問題ということで国民全員に関係することですから当然なんですが、そのためにデジタル化の計画が遅れたりあるいはとんざしたりしますと、これはもう大変なことになるんじゃないかと。  その心配が最近イギリスで現実のものとなりました。今年の三月末に英国のITVデジタル社が経営破綻したんです。英国は一九九八年から地上波のデジタル化に取り組んでおりまして、その普及率も四割近いということで、正にこの分野での先進国だったんです。ですから、このニュースは世界に衝撃を与えました。  このほかでも、メディア大国と言われる米国では、FCC、連邦通信委員会によって、二〇〇二年までに全放送局でデジタル放送を開始し、二〇〇六年までに完了するよう政策誘導がなされております。今年五月に予定されていた商業テレビ局の放送開始に当たっては、そのうちおよそ四五%の放送局が延期申請を行ったと、つまり間に合わなかったということです。これは重大な事実として我々も銘記しておかなくてはいけないと思います。  また、米国では既にCATV、つまりケーブルテレビの普及率が七割を超えておりまして、今更高価なデジタルテレビを買うメリットがないということなんではないでしょうか。我が国でも都市近郊に限らずケーブルテレビの普及が進んでいることを考えますと、決して人ごととは思えません。  以上述べました諸外国の例、とりわけ今年三月の英国での失敗という経験を前にして、総務大臣は地上波のデジタル化計画の遅れや挫折に対する一部国民の不安に対しどのようにお答えになるんでしょうか。計画どおり二〇一一年にデジタル化は完了するんでしょうか。どうぞ。
  59. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今お話しのイギリスのITVですか、あれは有料で新規参入なんですよ。新規参入放送で有料だったんですね。今お話しのように、今年の三月に破綻しましたね。そこで、後、BBCだとかが引き取って免許を、無料でやるんですよ。日本の場合には既存の放送事業者が無料でやるんですから、もうビジネスモデルというんですか、それが全然違いますから、私はその点の心配はないと。  ただ、今、委員が言われる二〇一一年までに本当に大丈夫かと。テレビも買い換えなきゃいけませんわね。買換えぬ場合にはチューナーか何かを付けにゃいかぬ。ということはあるんですが、これからどんどん安くなりますよ。まだ高いんです。私も買ったからよく分かるんです。高過ぎるんです。しかし、これから大量生産でどんどんどんどん下がります。それから、テレビの代替サイクルは八年ぐらいなんですね、平均的に。まだ一一年まではこれは九年以上ありますから。だから、そこでだんだんだんだん性能も良くし、安くして買い換えていただく。それから、今言ったようにローカル局を含めて対応をやっていただく。  そこで、アナ・アナでちょっと遅れたんですよ、正直言いますと、アナ・アナが、見込み違いで。見込み違いといって、二・五倍も違うのは私見込み違いじゃないと言っているんですよ。ただ、役所の方が言うには、机の上でやったので、実際調べてみると、なかなか電波事情というのか、山があったり海があったり、特に瀬戸内海が大変なんですよ。委員のところの広島県、私も岡山県だけれども、あの辺が一番いかぬ。それから、有明海、首都圏、関東、そういうところを調べてみると大変だということが分かって、ちょっと膨らみまして、アナ・アナが遅れておりますが、来年の十二月から三大都市圏ではやりますから。これはみんなキー局がやるということをもう決意をされて公にされていますから。二〇〇六年からローカル局にやってもらって、二〇一一年には全部終了していくと、こういうことでございまして、最大の努力を我々は払いながら、二〇一一年というのは法律でも決めたことですから、電波法で書いているんですから、これはもうちゃんとやっていこうと。  外国のいろんな例はいい我々にしては参考例というんでしょうか、学習の一つの糧にさせていただいて、是非二〇一一年にはデジタル化を終了しようと、こういうふうに思っておりますので、ひとつ御理解と御支援をよろしくお願いいたします。
  60. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 いろいろとまだ大変な問題があるような感じがいたします。今、大臣がおっしゃったように、今私どもは、この間プラズマテレビを買ったばっかりですが、これも全然駄目になっちゃうわけで、果たしてこれ国民が素直にアナログからデジタルに受像機を換えてくれるかどうか、これは果たして政府がある程度補助しなきゃいけないんじゃないかという、そういう心配もありますし、大臣がおっしゃったように安くなればこれはいいと思うんですが、今まだ一インチが一万ぐらいの、そういう、もう電気店に並んでおりますけれども。  とにかく地上波テレビ放送のデジタル化に関する質問はこの辺で終わりにしたいと思うんですが、今後の技術革新や国民のメディアに対する接し方の変化によって、地上波とかCS、BS、そして有線等の相互の関係といいますか、その役割分担というものもきっと変貌していくんではないかと思います。放送法と電波法のこれからの在り方と情報通信法制の二十一世紀的な変革といった大きな課題についても日本は世界を常に積極的にリードしていく気構えが必要ではないかと、こう思うわけでございます。  総務省におかれましても、そうした動きを敏感に察知しながら、意識しながら、政策決定の節目に当たっては勇気を持って決断を行ってもらいたい、そういうことがあってしかるべきではないかと思います。総務大臣の今後の御活躍を切に希望するわけでございます。  総務大臣に対する質問はこれで終わります。ありがとうございました。  続きまして、四つ目のテーマに行きます。父子家庭のための子育て支援策について取り上げます。  私は、去る七月十五日に開催されましたこの決算委員会の全般的質疑におきまして、少子化対策と子育て支援全般について厚生労働省に質問いたしました。その際、当時の狩野安副大臣からは、新エンゼルプランに基づく総合的な施策について御答弁いただきますとともに、子づくり同様に子供を育てていくこと、それ自体に大きな価値があるという御意見をちょうだいしました。私にもまだ小学生の娘がおりますから、全く同感であります。  その子育て支援に当たっては、実は意外にも見落とされている観点があります。それはいわゆるシングルファーザーの問題です。  私の選挙区広島市にお住まいのある男性の方からお話を伺う機会がありまして、その人は今一人で、離婚をされまして、男性でありながら三人のお子さんを育てていらっしゃいます。男親であるということもあってか、子育てに関してはいろいろと難しい問題を抱えていらっしゃる様子で、精神的にも肉体的にも厳しい現実に直面しております。余りの苦境から仕事と育児の両立に悩んで行政の扉もたたいたそうですが、彼にふさわしい公的な支援というものがなかなかない。いわゆる母子家庭支援政策では表向き父子家庭も対象にしておりますが、実際のところ、父親の立場から見るとどうも使い勝手は悪いようです。男性の場合にはある程度収入があるために、かえって経済的援助、つまりその要件となる収入基準を超過してしまうこともあります。そんな境遇にある父子家庭のお父さんたちが逆男女差別の存在を疑うのもうなずけないことはありません。  これまで私たちは一人親の家庭イコール母子家庭と考えてきたようですが、少々古くなりますが、一九九七年のデータでは、母子世帯がおよそ九十六万世帯、父子世帯はおよそ十六万世帯でした。結構、だから父子世帯が多いんですね。しかし、母子世帯の三分の一は母親が仕事に就いていない。一方、父親は大体九六%の人たちが仕事をしています。就労しています。ですから、仕事と育児の両立に関しては母親に負けず劣らず厳しい状況にあることは確かです。  家庭や家族をめぐる社会状況や社会環境が大きく変貌している今、父子家庭における育児問題、シングルファーザー問題に対して私たちはどう取り組み、いかに応援していくべきか。見識ある決算委員の先生方にもそういう観点に是非お立ちいただいて、この問題について一緒に考えていきたいと思います。  そこで、厚生労働大臣にお伺いしたいんですが、父子家庭に対する子育て支援、いわゆるシングルファーザー支援の問題につきましてどのような見解をお持ちでございましょうか。また、今後、母子家庭とは違った形でシングルファーザー支援策を講じていくお考えはおありでしょうか。少子化時代において育児の問題にはますます国民の視線が集まっていますから、全国のシングルファーザーの皆さんに勇気と希望を与える御答弁を是非ともお願いしたいと思いますが、どうぞ。
  61. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 父子家庭に対しまして目を向けていただいて大変感謝を申し上げる次第でございます。  今お話しいただきましたとおり、平成十年の調査によりましても、大体十六万世帯というわけでございますから、かなりな世帯数でございます。離婚が増えまして、そしていわゆる父子家庭というのもだんだんと増えてきているということも事実でございます。  父子家庭に対する統計もございまして、お聞きをしてみますと、母子家庭の方はやはり家計というものが大変だと、それに対しまして父子家庭の方は家事というのが非常に大変だと。これはだれ考えましてもそうだろうというふうに思うわけでございますが、やはり家事というものに対して非常に困窮を窮めている御家庭が非常に多い、そうした状況にあるわけでありまして、我々もその家事を一体どう御支援を申し上げるのか、その辺を中心にしてやはり考えていかなければならないというふうに思っている次第でございます。  このような観点から、父子家庭に対しましては、今までの予算措置といたしましては、乳幼児のお世話などのための生活支援員を派遣いたしましたり、そうしたことをやっているわけでございますし、また一時的に児童養護施設におきましてお預かりをするといったようなこともできるだけ積極的にやりたいというふうに思っております。  しかし、これは限界のある話でございまして、お子さんが小学校に行かれるとかあるいは小学校の高学年になられるとか、かなり成長されてからの父子家庭でございますと、そうしたことで間に合うと申しますか、そういうことでしのいでいただくことができるんだろうというふうに思いますが、もっと小さなお子さんをお持ちの父子家庭に対して一体どうしていくかといったようなことにつきましても、これからもう少し真剣に考えていかなければならないというふうに思っている次第でございます。  今般、国会に提出をしております母子及び寡婦福祉法等の改正案、まだ、次の国会におきまして御審議をいただきたいというふうに思っているわけでございますが、その中におきましては、父子家庭を法律上、初めてでございますけれども、明確に位置付けるといったようなこともいたしておりまして、父子家庭に対します子育てや生活支援サービスとして、保育所の優先入所でありますとか、あるいはまた子育て短期支援事業を法制化したい、こんなふうに思っているところでございます。  しかし、そうは言いますものの、やはりそれぞれの御家庭によりまして様々な内容を含んでいることも事実でございますので、より多様にこの父子家庭の皆さん方に対しましても対応していくように努力をしたいと思っているところでございます。
  62. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 今、離婚率が非常に高くなっておりまして、随分と離婚も多いようでございます。したがいまして、全部子供さんが母親の方に引き取られていけばそれはいいと思うんですが、これは男親が引き取ることになると、今、大臣がおっしゃったように、年齢が大きい場合はいいですが、小さい場合ですと、今度は就労している父親が九六%ですから、これは会社の仕事にも影響しかねません。ちょっと育児のために失礼するというようなことを言っておりますと、今のデフレのこの不況の中ですからリストラということも随分考えられますので、この辺の気配りがこれから随分必要なんじゃないかなと。よろしく御配慮をお願いしたいと思います。  ここで、財務大臣にもお伺いしたいと思いますが、子育ての支援というものは最終的に子供を産んでから後も子供を育てていきやすい社会環境の整備という点で少子化対策の基本であると考えるんですが、財政状況の厳しい現在でありますが、そうであるからこそ今後の財政というものを考えるに当たっては未来への投資という、そういう観点が重要になってくるんではないかと考えます。  そこで、子育てを支援するための予算、とりわけ先ほど指摘いたしました父子家庭に対する子育て支援、これは男親の支援とも言えますが、そのための財政措置についてどう配慮すべきなのか、財務大臣の大所高所に立たれた御意見をお聞かせ願います。
  63. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほど厚生労働大臣がお答えになりました。検討しておられるところでございますが、私はその結論を得て、やはりいろいろと相談してまいりたいと思っております。
  64. 柏村武昭

    ○柏村武昭君 あっさりとした返答でございました。ありがとうございます。  そういうわけでございまして、今日は平成十二年度決算に関連して、イラクの攻撃の後の石油の安定的確保、知財保護、地上波テレビ放送のデジタル化、そしてシングルファーザー支援策の四つのテーマについて質問をいたしましたが、とにかく私は、やっぱり地上波テレビ放送のデジタル化、メディア出身だけに大変気になるところでございます。どうも今、国民の共感がいま一つない、これは第二の住基ネットワークになるんじゃないかと大変心配しておりますので、もっともっと国民の共感を得るためにどういうことをすればいいのか。我々も考えますので、一緒になって、国民に共感を得るためにどのようにすればいいか一緒に考えていきたいと思います。  適切かつ迅速な対応、ありがとうございました。そろそろ十二時でお昼御飯でございますので、質問をこの辺で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  65. 中原爽

    委員長中原爽君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩をいたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  66. 中原爽

    委員長中原爽君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度決算外二件及び平成十二年度決算外二件を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  67. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  いよいよ決算委員会も締めくくり総括質疑ということで、与えられた時間の範囲内で、私はまず、これまでに質問させていただいた中で、時間等の関係で十分にお答えいただかなかった点を幾つかピックアップしてお尋ねをした後、新たな課題についてもお尋ねをしたい、こんなふうに思います。  まず最初に、十月の二日でしたか、決算委員会厚生労働省の省庁別審査のときに幾つかお尋ねをいたしました。その中で特に私が指摘をさせていただきましたのは、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収不足について大臣にもお尋ねをいたしました。ただ、そのときはいろいろ、そのほかにもパート労働者が増えてきている問題など含めていろいろお尋ねしたものですから、決算の中で指摘されていることについて大臣の方から必ずしも十分にお答えをいただいていなかったというふうに気が付きまして、改めてこの健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収不足の問題について調べてみました。  調べてみましたら、ちょっと古いんですが、平成六年のときの決算でも、この本院の決算委員会においての審議を通じて警告決議がなされておりまして、その四項目めにやはり、健康保険又は厚生年金保険に関して適用漏れの事態が生じている、約百十三億円を超える保険料の徴収不足が指摘されている、それを受けて、政府は、社会保険事務所における調査確認及び指導徹底を図るなど、健康保険及び厚生年金保険の適用の適正化に格段の努力をすべきであると、こういう指摘を受けているわけであります。  しかし、それにもかかわらず、平成年度では百五十八億円、平成年度では五十五億円、平成年度では四十五億円、平成年度三十九億円、平成十一年度五十九億円と、引き続きこの徴収不足の問題が言わば毎年恒例のように指摘をされている。恒例という話はないわけでありまして、指摘を受けた、しかも警告決議を受けた。それならそれでちゃんとしかるべく対応をしていただかないと困るわけですね。  この点について、先般大臣の方からは、保険料の徴収不足について、これはあってはならないことでございまして細心の注意を払いながらやっていかなきゃいかぬと、こういうお答えをいただいたわけですが、その割には毎年毎年同じ指摘をされているのではないか。これは、後でまた会計検査院の方にもお伺いしますが、指摘を受けた、あるいは警告決議を受けた当該厚生労働省として、この事実あるいはこの経過をどう受け止めておられるのか、大臣の所見、そして今後どう対応されるのか、方針について改めて坂口厚生労働大臣にお伺いをしたいと思います。
  68. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 御指摘をいただきましたように、平成六年、百十四億円でございましたが、平成十二年におきましてもまだ五十五億円と、五十億円台ずっと続いているわけでございまして、御指摘をいただいていること、我々、本当に反省をしなけりゃいけないというふうに思っているわけでございますが、私もいろいろ現場に携わっておる者たちの意見も聞いておるわけでございますが、なかなかいろいろと努力をいたしましても思うようにいかない。企業の中でなかなか払っていただけないところがあるということでございまして、大変残念なことで、これはしかしこのままではいけないということを思っている次第でございます。  今後、いわゆる徴収の一元化の問題を今進めておりまして、早く、一年でも早く始めたいというふうに思っておりますが、いわゆる雇用保険と、それからこの社会保険の徴収一元化をやりたいというふうに思っております。  それで、雇用保険の方は比較的、皆さんお納めをいただいているわけでございます。額も少ないということもございましょうし、これは雇用にかかわることでございますからお納めいただいているわけでございますが、そういう雇用保険はお納めいただいておりましても、社会保険の方はお納めいただいていないというところがかなりある。今までは別々にばらばらにやっていたわけでございますけれども、徴収一元化をするということになれば双方これは見ることができるわけでございますしいたしますので、そうした面で是非ひとつ、抜けておりますところ、分かるわけでございますから、是非進めていきたい、そして漏れのないように今していきたいというふうに一つは思っております。  それからもう一つは、今まで毎年一回の報酬月額の届出に際しましての調査をおおむねすべての事業所を対象としてやってきたわけでございますが、すべてをやるのはいいんですけれども、効率的でないものでございますから、特に今後は社会保険の適用の大きいところを重点的に行いまして、そしてそういうところのないようにこれやっていきたいというふうにも思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、これ毎年指摘をされておりましてはいけませんので、そうしたことを幾つか組み合わせて、そしてなくするように努力をする以外にないというふうに思っている次第でございます。ひとつ、努力をしたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  69. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 是非努力をお願いしたいわけですが、ただ、今のお答えの中で一つ気になりますのは、実は十月の二日のときにも、せっかく厚生労働省として一つまとまったんだから、雇用保険の方と社会保険の方ともう少しきちっと連携を取ってやったらどうか、こういうお尋ねをし、またお願いもしました。  ただ、そのときに実務レベルでの説明を聞きますと、いや、実は子細に見ると、雇用保険と健康保険あるいは年金保険、対象事業所が必ずしもぴったり一致しないんだと。だから、厚生労働省として一つにまとまったから、そして今後は保険料の徴収一元化に向けていくんだから、それはそれなりに努力しなければいけないけれども、そうぴったりとはいかないところもあるんだという、やや弁解めいた説明もいただきました。  是非そこは、私はこう思うんですね、ある意味では、必要ならば制度上の見直し、例えば対象範囲をもう少し一致させるとかを含めて少し検討をしていく必要があるんじゃないか。やっぱり毎年毎年指摘をされている、多少指摘のポイントは違うようですけれども、中には五年も六年も続けて同じポイントを指摘されている部分もあるわけですから、せめて三年同じポイントを指摘されたら、これは何らかの制度上の問題があるのではないかということも含めて検討をしなければいけないんで、徴収不足について社会保険庁の方で頑張ります頑張りますと言うだけではなくて、やはり引き続き指摘を受けるならば、じゃどうするかというどこかで区切りを付けてめり張りを付けていただかないと、相変わらずまた毎年毎年ということになりかねないので、ここはひとつ、この間いろいろ指摘をされていることについて、少し流れを踏まえてきちんと総括をしていただく必要があるのかな、そして具体的にどういう取組方にしていくのか、明確にこの分野についてはこうしますという方針を明らかにしていただく必要があるのかなと、こう思いますので、是非その方向で御努力をいただきたい、こんなふうに思います。  そこで、今は所管の厚生労働大臣にお伺いをしたわけですが、一方、会計検査院の方も毎年毎年同じようなことを指摘をして、相変わらず同様の指摘をまた次の年もせざるを得ないということが繰り返されているということについて、じゃこれでいいのかと、もう少し違った視点であるいは違った手法で会計検査をし、あるいは指摘をし、場合によっては処置要求をするということがあってしかるべきではないか。何か同じことを繰り返しやっているような気がしてなりません。  何で何かこんなモグラたたきみたいなことをやっているのと話を聞きましたら、いや、今年はこういう点にポイントを当てて、今年はこういう点にポイントを当ててやっているので、ついついこっちが済むとこっちがまた出てくると、こういう話でありまして、そんなことをやっていたんでは、ぐるっと一周したらまたもう一遍やらなきゃいけないということになるんじゃないのと。  やはり会計検査の在り方、これ毎年指摘だけではなくて、先ほども紹介したように平成六年では警告決議まで受けているわけですから、それにもかかわらずなかなか指摘、決議されたような中身について改善がなされてきていないとすれば、検査のやり方についてももうちょっと工夫なり、あるいはめり張りなり付けてやる必要があるのではないかと。少なくとも、会計検査の報告を見て、なるほどこの年までにこういう指摘があってこういう部分は解決できたけれども、こういう課題がまだ残っているからここをこうするんですねということが分かるような検査報告を是非していただきたいなと。そうすれば、課題は明らかになって、より具体的に厚生労働省としても取り組まざるを得ないと、こういうことになるんではないかと思います。  そういう点について、この間の平成六年からおよそ七、八年間ざっと見てみましたけれども、同じような指摘がなされていることについて、会計検査院としてもう一工夫あってしかるべきではないかという点についてお尋ねをしたい。また、あわせて、当該の実務を担当しています社会保険庁とも、どういう情報の交換なり連携の在り方があるかも含めて検討する必要があるのではないかと思いますが、この点について会計検査院の方にお尋ねをいたします。
  70. 増田峯明

    説明員(増田峯明君) お答えをいたします。  私ども、保険料の適正な徴収につきましては、保険事業運営にとりまして、制度の信頼性確保などの観点から大変重要な課題であると認識しております。そういうことで、会計検査院といたしまして、保険料の適正な徴収につきまして重点を置いて検査を実施してきているところでございます。  委員既に十分御承知のこととは存じますけれども、私ども、検査の結果といたしまして、保険料の徴収不足の事態を御指摘のように決算検査報告に毎年指摘をしております。これは、毎年の検査に当たりまして、検査の着眼点を工夫するということで、特に保険料の徴収に問題がありそうな業種等を見直すというようなことをいたしまして検査をしてきております結果によるというふうに考えております。  先ほど委員おっしゃいましたように、二年ないし三年やっている例もあるわけですが、それは二年、三年やった結果として是正されてきている兆しが見えたということで、また新たな、別の業種等を検査の重点に置くということでやってきているわけでございます。  確かに、かつて重点を置いてきた業種についてフォローアップをするというようなことはしてきていなかったわけでございますけれども、今後、先生御指摘の趣旨も踏まえまして、私ども、従来から保険料徴収に関する制度あるいは事務処理体制などについて改善を求めるべき点があれば、それは処置要求というような形で要求をするということを考えてきたわけですけれども、引き続き保険料徴収に関する様々な観点から検査の工夫を凝らしまして検査を実施してまいりたいというふうに思います。
  71. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 是非工夫をしていただきたいし、私からのお願いは、是非もう少し分かりやすくしてほしいと。何か会計検査院の報告書は、どうもプロ意識でがちがちに固まっているようなところがあって、素人が読むとなかなか分かりづらいところがあるんですね。  だから、ここはひとつ、また一番最後にこれからの会計検査の在り方についてもお尋ねをしますが、従来の手法とか枠組みとかにこだわらないで、もっと大胆に、あるいは分かりやすい会計検査のやり方とその報告を作っていくことが、会計検査の意味をまた再び明らかにすることができるという意味で私は大変重要なポイントだと思いますので、是非、この点はそういう観点も含めて、毎年毎年同じ報告書を、同じと言うと何かそうではないとおっしゃるんですが、同じような報告書を書かざるを得ないようなことは何とか克服をしていただきたい、こんなふうに、これは会計検査院の方にも、そして厚生労働省の方にもお願いを申し上げたいと思います。  やり残した問題の二つ目に移ります。  それは、これも同じく十月二日の委員会で総括的に大臣からのお答えをいただきましたけれども、個別の事案についてもう少しきちんと御説明をいただく時間がありませんでした。そこで、ちょっと振り返ることになりますが、改めてお尋ねをしたいと思います。  昨日の夕刊にもほんのちょっと出ておりましたけれども、佐世保重工業、SSKにおける不正受給問題、大きく分けて二つあるわけですが、一つは生涯能力開発給付金に係る不正受給問題があります。ちょっとこの件について少し個別に説明をいただきたいと思うんですが、どうも私分からないところがあるんですが、例えば、そもそもSSKが提出をした計画書は、その書面を見ただけでも全体の約二割の従業員が半年間にわたって職業訓練を受けるというような中身になっている、そういう計画書が提出されていた。何か直観的に言うと、会社の全体の二割の従業員が半年間にわたって職業訓練を受けると、こんなことはあるのかいなという、まず率直にそう思いました。  しかも、そういう書類、基本的には原則書面審査ということですから、書面で極めて安易にといいますか、認めてしまった。果たして行政の側のチェック、的確なチェックができていたのかどうかという疑問が起こります。  そういう意味では、行政の側のチェックの甘さだけじゃなくて、そもそも制度上、原則書面審査ということで、制度上の甘さというか、そういうすきもあったのではないかという指摘もなされています。  結局、この問題、後になって分かるわけですが、そして現在裁判が進行中というふうに伺っていますけれども、何でこういうことになってしまったのか。この問題について厚生労働省としてどう認識されているのか。そして、今後はどう対応されようとしているのか。せっかくこういう不況の時期あるいは失業者が大変非常に多い時期ですから、恐らく今度の臨時国会においても、あるいは次の通常国会においても雇用問題というのは大変重要な課題になることは間違いありません。そういうときだけに、一方でこういう不正受給問題があっちにも出る、こっちにも出るということでは、これは極めてやりにくいことになるわけで、その辺、まず生涯能力開発給付金にかかわる不正受給問題について具体的に御説明をいただければと思います。
  72. 坂本由紀子

    政府参考人坂本由紀子君) 御指摘の佐世保重工業の生涯能力開発給付金の不正受給事案につきましては、平成十一年度から十二年度にかけて、SSKが従業員に対する教育訓練を実施していないにもかかわらず実施したかのように装って、平成十一年度、十二年度合わせて従業員数延べ五百十二人、金額にいたしまして三億七千七百万円の給付金を不正に受給したものであります。  給付金の支給事務は長崎県が担当しておりましたが、長崎県におきましては、この支給審査につきまして所定の書類審査は行ったことはもとよりでありますが、それぞれの年におきまして実地調査を行ったところであります。ただ、実地調査の際に、SSKにおいては訓練の事実がないのに訓練をしたかのような虚偽の書類を作成し、かつ関係者に口裏を合わせるように指示を行うというような偽装を行っていたために不正を見抜くことができなかったものでありまして、大変遺憾なことでありました。  この不正受給された助成金につきましては、既に長崎県が返還を命じ、その回収を終えているところではあります。  生涯能力開発給付金は昨年度をもって廃止をしたところであります。現在は、事業主の行う訓練に対する助成金といたしまして、平成十三年十月に創設をしたキャリア形成促進助成金により行っておるところであります。  この助成金におきましては、今申し上げました不正受給等の反省の上に立ちまして、一事業所当たり支給額の上限を設けまして五百万円という金額を設定をいたしております。加えまして、不正受給を行った事業所に対しては不正発覚後三年間の支給を停止をするということも併せて決めております。  そのほか、事業計画認定や支給決定に当たって審査を厳格にやるということはもとより、実地調査を適切に行い、かつこの実地調査も効果的なものとなるように行うということにいたしておりまして、不正受給の防止対策の一層の徹底を図っておるところでございます。  今後とも、本案件のような不正受給が生じないように徹底をしてまいりたいと考えております。
  73. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。  この問題については、それなりに的確な対応をされているというふうにお聞きをしましたが、まだ現在は裁判も続いているようでありますから、その結果を見ながらということもまだ課題として残っているのかなと思います。  頭から疑って掛かるというのは実に悲しい話で、できればそういうことはしたくないわけですけれども、しかし一方で、こういう事案が出れば出るほどそういうところに使っているお金は無駄ではないかという話にもつながるわけですから、是非制度としてできるだけ甘さのないというか、すきのないような仕組みをこれからも工夫をいただきたい、こんなふうに思います。  さて、同じくSSKにおいて、中高年労働移動支援助成金について、この問題について窓口は雇用・能力開発機構と、こういうことになっているようですが、新聞報道によりますと、一時期、佐世保重工業を詐欺容疑で告訴をしようとか、いやしかし、その後の捜査で制度上の不備があるから詐欺には当たらない、制度上の不備を知ってやったんだったらこれは背任ではないかと、いろいろ新聞報道で報道されました。  この件については、直接の厚生労働省も調査に入って近々調査結果をまとめると、こういうふうにお伺いをしていますが、この事案について改めて、経過を含めて現在どういうところまで来ているのか、御報告、御説明をいただきたいと思います。
  74. 戸苅利和

    政府参考人戸苅利和君) 御質問の中高年労働移動支援助成金でありますが、これは、中高年齢者を出向なりあるいは再就職のあっせんということで失業を経ることなく労働移動を円滑に行おうと、そのための助成金であります。  SSK関連につきまして、実態を調べましたところ、出向の実態がなかったと認められる事案があったものですから、四千九百万円でございますが、これにつきましては返還請求を行い、返還済みということになってございます。ただ、今、委員御質問のように、新聞でもいろいろ報道され、さらにさきの通常国会でもこの助成金のSSKをめぐります運用につきまして様々な議論がなされてきたところであります。  そういった中で、この七月、大臣から改めて本件についての点検調査を行うようにという御指示いただきました。当時の資料を再調査し、あるいは当時の関係者からの聞き取りを行い、さらに委員御指摘のように、支給事務を行っております雇用・能力開発機構に対しましても事実がどうなのか、さらにSSK以外の主な支給対象企業について同様の事案がなかったかどうか、全国的な調査を行うようにという指示を行いまして、今広範な調査を進めているところであります。  ただ、本件につきましては、特にSSK及びその関係企業にかかわる部分について捜査当局が捜査を行っているということがありまして、厚生労働省といたしましてはその捜査当局の捜査に全面的に協力するということを基本に、捜査当局と連絡を取りながら調査を進めているということでございまして、今後、捜査の進捗状況、大分大詰めに来ているように伺っておりますので、捜査状況を踏まえまして、できるだけ早期に調査結果を取りまとめ、適切な対応を取ってまいりたいというふうに考えております。
  75. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 近々、結果をおまとめになるということですから、今日の時点ではこれ以上お尋ねをしませんが、この二つの事案について、私あえて個別の事例についてお尋ねをしましたのは、さっきもちょっと触れましたけれども、やはりこれから臨時国会、通常国会通じてかなり雇用確保のための様々なきめ細かい対策が求められてくるだろう、それに当たって、今までの制度でこんなことがあったじゃないかということで足を引っ張られたんでは、大変これは今後の新しい制度や仕組みを作るに当たってマイナス要素となるだろう、こういうことで、ここはひとつきちっと切開してうみを出すべきところは出して、その上でより有効な、しかも一定のチェックが働く仕組みを一緒に考えていく必要があるだろうと、こういう趣旨でお尋ねをいたしました。  そこで、改めて、これは前回にも基本的なお考えお尋ねしましたから文字どおり改めてお尋ねをいたしますが、つい先週、十月十日でしたか、雇用保険制度改正の柱として失業手当などの見直し案を中心に案が取りまとめられたという、これは厚生労働省としての案だというふうに記憶していますが、そんな報道もなされました。ただ、これは必ずしも雇用保険制度改革全体の問題を包括して提起しているということではないように私は読みましたが、十日の段階でお示しになった失業手当などの見直し案の中身について、この際、簡単に御説明をいただきながら、その案がこれからどういう作業手順で具体的な案として改革の柱として取りまとめられていくのか是非お聞かせいただきたいと思いますし、その中で、十月の二日のときにも指摘をしましたが、雇用保険の三事業の在り方についてどう見直していこうとされているのかについても併せて改めてお尋ねをしたいと思います。  厚生労働大臣お願いいたします。
  76. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 今も御指摘をいただきましたように、この雇用保険制度の在り方につきましては、今進めております問題と、それから最近にわかに出てまいりました不良債権処理に伴います新しい雇用政策等々の整合性等の問題もございまして、今後更にまた検討しなければならない問題もあるというふうに思っておりますが、今までの、この十月十日におきます時点におきます労働政策審議会の雇用保険部会に対しまして厚生労働省から中間報告を踏まえた給付の見直しについての議論のたたき台をお示しをした、それで、その内容につきまして御報告を申し上げたいというふうに思いますが。  大きく分けまして三つございまして、一つは、早期再就職の促進を図りますため、するために、基本手当の給付率等を見直すという問題がございます。これは特に高額所得の方の皆さんでございますけれども、雇用保険の場合にいわゆる税を支払わないというようなこともございまして、そして、かえって雇用保険の方が高くなるというケースがございます。そういうことがございますので、この基本手当の給付率の見直しを一部において、特に高額所得のところにおいて見直しを行うということが一つでございます。  それからもう一つは、多様な働き方に対応しますために通常の労働者とパートタイムの労働者の給付内容を一本化をしていくという問題がございまして、このことを提起をいたしております。  それから、再就職の困難な状況に対応いたしまして給付の重点化を図っていく、とりわけ三十五歳から四十五歳の最も働き盛りのところに対してどう重点を移すかといったこと等でございます。  これらのことを中心にして御提議を申し上げておりまして、今後、この部会におきまして更に議論を深めていただきまして、十一月中には最終的な取りまとめをしていただきたいというふうに思っております。そして、これを踏まえまして次期の通常国会に関係法案を提出させていただきたいと思っているところでございます。  また、雇用保険の三事業につきましても、同部会におきまして、今後また、政策面からの給付の重点化でありますとか、あるいはまた、今御指摘をいただきました不正受給の防止の問題等も含めて、手法や運用面からの合理化の視点に立ちました議論を進めていただきたいというふうに思っているところでございます。この検討結果に基づきまして必要な対応を行ってまいりたいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、十一月末までには議論を終えて、そして案を御提示させていただきたいというふうに思っているところでございます。
  77. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今のお話で、十一月末までには全体的な取りまとめをなされるということですから、改めての議論はそのときにまたさせていただきたいと思いますが、一点だけ指摘しますと、某新聞に、この十月十日の案を評してセーフティーネットの強化と財政両立の苦肉の策という指摘がありました。  なかなかこういう状況の中で一〇〇%という話にはならないかもしれませんが、やっぱり今までの雇用保険の様々な諸制度が諸外国、とりわけヨーロッパ諸国と比べてももう少し何とかならないのかという指摘は多々あったわけでして、是非、基本的には、こういう状況を踏まえて失業保険、雇用保険の拡充の方向で最大限の御努力を是非お願いしたいなと、今日はこの点だけをお願いをしておきたいと思います。  次に、これまで必ずしも十分に触れられていなかった新しい問題について一点、せっかくの機会ですから、お尋ねをしておきたいと思います。核燃料サイクル開発機構における不正会計処理の問題についてであります。  つい最近は東京電力の原発の情報隠しの話が専らでして、これで原子力発電所の安全性あるいは信頼性はどうなのかと、こういう議論が専らでありますが、そういう安全性、とりわけ技術面、管理面におけるチェックも大いにこれからきっちり議論をしなければいけませんし、その中で保安院が一体どういう役割を果たしていたのか、この点も十分解明をしていかなければいけないと思いますが、私は、今日はあえて、その問題を念頭に置きつつ、これまでに必ずしも指摘が十分にされてこなかった事業所の不正会計の問題について開発機構がどんな対応をしてきたのか、こういう点について二、三伺って、その上で大臣のお答えをいただきたいと思います。  まず一つ目の問題は、これはちょっと御説明をいただければと思うんですが、御承知のように、平成十年に核燃料サイクル開発機構というのがスタートをしました。スタートをした一つの契機は、従来、動力炉・核燃料開発事業団、これがその業務、任務を担っていたわけですが、そこで様々な情報隠しも含めて問題がるる指摘をされました。  もう今日は一々細かくは申し上げませんが、例えば高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れの問題とか、あるいは東海事業所の再処理施設の火災爆発事故とかなどなど、相当に当時深刻な事故ということで問題になりましたし、その重大性あるいは深刻性にかんがみて、一体その当時の動力炉・核燃料開発事業団の対応はどうだったのか、こういう問題点が指摘されました。  結局、組織を変えると。様々な事故の後の、そういう組織の在り方そのものを変えなきゃいけないだろうと、こういうことで核燃料サイクル開発機構がスタートしたというふうに理解をしております。  そこで、この問題の入口として、この核燃料サイクル開発機構のスタートに当たって、従来指摘されてきた課題についてどう取り組んで、どう具体化してきたのか、この点についてまず御説明を求めたいと思います。
  78. 白川哲久

    政府参考人(白川哲久君) お答え申し上げます。  先生、今御指摘のとおり、核燃料サイクル開発機構は平成十年十月に旧動燃から改組いたしまして、それ以来、業務運営の基本理念といたしまして、原子力でございますので安全の確保徹底、創造性の発揮、業務の透明性の確保、適正かつ効率的な業務運営国民の皆様並びに国際社会の理解と信頼を得ること、この五つを業務運営の基本理念として掲げてございまして、更にサイクル機構職員の心構えや取るべき行動を示す行動憲章を理事長が定めまして、職員全員がこれらの基本理念や行動憲章を十分に認識して実行していくことを基本に据えて業務を進めておるところでございます。  これらの基本理念や行動憲章を真に生かしていくためには、職員の意識改革ということが最も重要な課題でございます。このため、サイクル機構におきましては、職員の意識を高めるという観点から、国の原子力政策やサイクル機構が担う役割について職員に対する教育研修を積極的に行うなど、職員一人一人が自ら携わっている事業に誇りと自覚を持って取り組み、原子力の研究開発、利用という重要な使命を通じて国民理解にこたえることができるよう努めているところでございます。  こういった取組につきましては、今後とも、サイクル機構において継続的かつ不断に努力をしていくことが肝要であろうというふうに認識をしております。
  79. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 誠にごもっともな御説明だったと思うんですが、ところが、今度は会計検査院お尋ねします。  サイクル開発機構がスタートしたのが平成十年です。そして、平成十二年度決算において、会計検査院特定検査によってこの核燃料サイクル開発機構の東海事業所等における数点にわたる不的確な会計処理の問題について指摘をしております。今御説明をいただいた直後の話であります。会計検査院の方からその中身について御説明をいただきたいと思います。
  80. 重松博之

    説明員(重松博之君) お答えいたします。  昨年、核燃料サイクル開発機構の予算執行に関しまして不適切な事態がある旨の新聞報道がありました。そして、これに対する同機構及び文部科学省における事実関係の調査がありました。  これを踏まえまして、本院では、同機構の予算執行が法令や予算に照らして適切に行われているかどうか検査をいたしました。その結果を、特定検査対象に関する検査状況ということで、平成十二年度決算検査報告に掲記したものでございます。  まず、文部科学省の調査内容に関連した事項でございますが、同機構では毎年度予算定員と実員に乖離が生じておりましたり、給与の実支給単価が予算単価を上回っておりました。また、主務大臣の認可を得ずに、補助金部門の役職員の給与のうち不要となった部分を出資金部門の事業費に流用いたしましたり、一般会計及び特別会計の出資金部門の事業費を補助金部門の退職金へ流用するなどしておりました。これが文部科学省の調査内容の確認ということでございます。  次に、本院が独自に検査を実施した事項でございますが、同機構では、認可予算で計上されていない地元協力金を実施計画のみに基づいて支出しておりまして、この中には、対象事業の多寡にかかわらず毎年定額を支出しておりましたり、対象事業やその使途の内容が明確でないまま支出していたりしているものがございました。  それから、固定資産税につきまして、同機構の納付額が、茨城県東海村の評価額の問題もありますが、納付額が過大になっていたというものがございました。さらに、同機構は、消費税の申告に当たりまして適切な申告をしていなかったために過大な負担をする結果となっておりました。  以上の事項、ほとんど同機構の本社、それから各事業所に関連する事項でございますが、固定資産税等については東海事業所に関連する事項でございます。  これらの事態を踏まえまして、今後は予算執行に係る職員の意識を高め、予算執行に係る内部統制を充実強化するなど、再発を防止し、適切な予算執行を行うための体制整備が必要であり、また本院といたしましては、これらについて今後の改善状況を注視していくということとしているところでございます。
  81. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 じゃ、今御説明いただいた案件について監督省庁である旧科学技術庁、現文部科学省がどんな措置を取られたのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  82. 白川哲久

    政府参考人(白川哲久君) 本件事案は、実は昨年の四月に報道によってまず明らかになったわけでございますが、その後直ちに私どもは、サイクル機構に対しましてその事実関係を調査するように指示をいたしました。  その後、サイクル機構の方からは調査結果の報告書が提出されたわけでございますけれども大臣の方の御指示もございまして、これだけでは不十分だということで、文部科学省としてきちんとした精査を更に行いまして昨年の五月に改善項目につきまして具体的にサイクル機構に指示をしたわけでございます。  この改善指示を受けまして、サイクル機構からの措置及び検討状況がその後文部科学省の方に報告をされたわけでございますが、先ほどの会計検査院の方からの御指摘も含めてその後の対応状況につきまして御報告申し上げますと、まず予算・定員管理に関する事項でございますが、予算管理につきましては、出資金や補助金等経理区分の明確化、監査機能の強化を図ると、これがまず第一点でございます。それから、定員管理に関しましては、会計検査院の御指摘にもございました定員と実員及び認可給与単価と実態給与単価の差の解消、さらには業務協力員、これの位置付けの明確化等の対応をサイクル機構が行っております。  それから、地元協力金でございますけれども、これにつきましては地元協力金等の使い道、使途の基準の制定あるいはきちんと認可予算へ計上するというふうな改善を図ってございます。  これらにつきましては継続的にその改善状況を聴取をしているわけでございますが、加えまして、先ほど検査院の方から御指摘がございました税の関係二点ございますので御報告申し上げますと、固定資産税等の過大な納付につきましては、サイクル機構は地元の自治体、これは東海村でございますけれども協議を行いまして、平成十三年中に適正な課税標準額への修正が行われたというふうに承知をしております。  それから、消費税についても御指摘がございまして、これの適正な申告という点につきましても、平成十二年度事業分から適正な申告を行うべく、平成十三年度中に改善を図ったところでございます。  以上でございます。
  83. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 この件について関係者に対する処分はなされましたか。
  84. 白川哲久

    政府参考人(白川哲久君) お答え申し上げます。  本件事案は基本的にはサイクル機構における適切な予算管理、定員管理の問題でございまして、一義的にはサイクル機構自体の経営責任の問題ということになろうと思いますが、まずサイクル機構を指導監督する立場にある我が文部科学省といたしましてもその責任を明確にするため、昨年五月二十三日に担当局長、その当時の担当局長に加えまして、さかのぼりまして旧科学技術庁の担当局長でございます原子力局長を含みます計三人に対しまして口頭による厳重注意処分を行ったところでございます。  また、サイクル機構自身は同日付け、すなわち五月二十三日付けで担当の理事、人事担当経理担当の理事二名に対しまして減給処分を行いまして、また理事長と担当副理事長につきましても同様に給与の自主返納をしたところでございます。  それから、更にこの過程で不適切な予算執行によるサイクル開発機構法上の違反事例が出てまいりましたので、これにつきましては昨年九月に文部科学省から水戸地方裁判所に通知を行いまして、昨年の十月に同裁判所の方からサイクル機構の経理担当の理事に対しまして過料処分をする旨の決定があったというふうに承知をしております。  以上でございます。
  85. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ちょっと時間が迫ってまいりましたので質問を幾つか省略をして、大臣にお伺いします。  実は、この後もう一つ同様の不適正経理問題について指摘をしたかったんですが、今年の七月に同開発機構の今度は敦賀事業所においてほぼ同様の不適正経理問題が報道されております。  特に、私、報道の中で気になったのは、地元の美浜町に地元協力金ということで、何か毎年約二億円程度、合計二十億円程度、十七・五億円ですか、認可を得ないままに支出していたというふうに報じられているわけですが、一体こんなことがルーズに行われていていいのかと。今、会計検査院の方から御報告をいただき、また文部科学省の方から説明をいただいた件も含めて、これで一体監督省庁としての文部科学省、いいんですかというふうに問いたいわけですね。  特に、この問題の冒頭にも申し上げましたけれども、やっぱり原子力関連施設というのは確かに技術面あるいは管理面から安全性をきちっと確保していくということも当然重要な課題でありますし、そのことによって事故の再発防止を確たるものとすると。これ絶対必要な条件だと思いますが、同時に、今指摘したような経理面においても、つまり技術面だけじゃなくて総務経理部門における様々な検討を含めて全組織的な体質改善というのか、これが必要なんじゃないかと私は思うんですが、この点について、この問題の締めくくりに文部科学大臣の見解を伺います。
  86. 遠山敦子

    国務大臣遠山敦子君) サイクル機構は核燃料サイクルの研究開発という大変重要な責務を担っておりまして、原子力施設としての安全確保はもとより、今お話しのように、私は国民の信頼を揺るがすようなことがあってはならないという強い認識を持っております。  幾つか出ました問題につきましては、私も就任直後から、様々に改善してもらうべき内容について指導をいたしたり、また処分もしっかりやったりということで対処してまいっております。今後とも、このような問題が再び起きませんように、予算問題、予算管理あるいは定員管理のシステムの改善を図ることによりまして、健全な業務運営確保することが極めて大事だと考えております。  今後とも、我が省としましては、継続的に状況を聴取しながら厳正に指導監督してまいりたいというふうに考えております。
  87. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 本当はもう少し丁寧にやりたかったんですが、申し訳ございません。また機会があればというふうに思います。  そこで最後に、是非これは会計検査院長に一言お伺いして私の質問を終わりたいと思うんですが、質問は一つにまとめます。  会計検査情報という資料を見せていただきました。そしたら、その中で金子前院長が面白いことをおっしゃっているんですね。検査院のこれからの在り方として、従来の手法で、一〇〇%問題がない、一〇〇%相手方に反論の余地がないという、そういうことだけではなくて、あるいは事後的、後追い的なことにどうしても会計検査というのはなりがちなんですけれども、そうばかりではなくて、ちょっと新しい視点を取り入れた検査院の今後の対応が必要なんではないかと。  私は、ちょっとよく分からない言葉もあるんですが、例えばリスク管理型検査とか、最近リスクマネジメントというのがはやっているんですけれども、リスク管理型検査とか、あるいは付加価値型検査というふうに金子さんはおっしゃっているんですが、要は、従来的な手法の会計検査に加えて、もう少しアップ・ツー・デートというのか、あるいは現在進行形の問題についてももう少し積極的にアドバイスをしたり問題提起をしたりする必要があるんではないかと、こういう方向へ是非取組を強めていきたい、いろいろ体制の問題とかあるけれども、ということをおっしゃっています。  是非、新しく会計検査院でこれからお仕事をなさる院長に、この金子前院長の御指摘等も含めて、私はなかなかこれ注目すべき御提案ではないかと思いますので、そこの辺を含めて、あるいは今後の会計検査の在り方について一言決意なりお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  88. 杉浦力

    会計検査院長(杉浦力君) 金子前院長のリスクマネジメント型検査ということについてのお話でございます。  金子前院長の趣旨と申します中身は、今、先生がおっしゃったような中身でございます。差し当たって申し上げますとすれば、不適切な会計経理が発生するようなおそれがあるような制度や事務処理体制などを改善させて、そしてその後、そういう不適切な事態の防止が図れるような検査をしてまいりたいということだということを私ども理解しております。  現に、先ほど局長の方からも御説明申し上げましたんですが、現にこのような着眼からの検査も従来からやってきておるわけでありますが、今後この点につきましては十分力を入れてまいりたいと思っております。  現に、ちょっと御説明申し上げさせていただきたいと思いますが、会計検査院の検査の結果の出し方と申しますか、この中身に、先ほど申されましたような不当な金の使い道のほかに、今後の政策上どうやって直していくかというような改善の意見を各関係省庁に申し上げるとか、あるいは広く国民も含めました方々にこういう問題がございますという情報を提供するとか、こういう違った広い分野への活動をしてきつつあるわけでございます。そして、検査報告の中身につきましても、検査の視点だとか、あるいはなぜこういう事態が起こったというその発生原因とか、あるいはその結果を平易あるいはかつ簡明に分かるような説明をするというような格好で努力をいたしておるところでございます。  ただ、それだけで十分だとは私も思っておりませんし、今、先生のおっしゃったような直すべきところ、今後見込んでいかなきゃいかぬ部分が多々あると思いますので、十分心して運営してまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  89. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。質問時間が十分でなくて申し訳ございません。  是非、何か最近の風潮は、あたかも内部告発をひたすら待つがごとき風潮があって必ずしも感心した状況ではないなと。やっぱり制度化されたチェックシステムをちゃんと働かせるということが重要だというふうに思います。そういう意味では、会計検査院の方も問題のスピードやあるいは問題の解き明かし方について是非これまで以上に御努力をお願いをして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  90. 谷博之

    ○谷博之君 私は、民主党・新緑風会の谷博之でございます。  早速質問に入りたいと思います。  昨日、二十四年ぶりに北朝鮮から五人の拉致被害者の方々日本の土を踏まれました。そして、その後の模様については、もうマスコミでも報道されているとおりですから私の方からは申すことはありませんけれども、どんなに苦しい思いをして、そして様々な思いを持って日本に帰国したか、そのことを思うと断腸の思いであります。そして、御家族の方や、さらにまた、現在今なお消息がはっきりしない御家族の皆さんや、さらにまた、ある意味では拉致事件に巻き込まれたのではないかということを心配されている多くの関係者のことを思いますと、この問題は正に今我が国にとって最大の大きな問題だというふうに考えております。  そういう中で、この拉致事件の全面的な解明というものをまず何よりも優先をし、そのための努力を政府はしていくということは、もうこれは論をまたない話でありますけれども、そうしたことを大前提にしながら、私は二つのことをお伺いをいたしたいと思っております。  まずその一つは、去る十月三日のこの決算委員会で、我が党の川橋理事が質問をいたしました。過去の外務省の、そして政府のこの問題について取り組んできたその姿勢、これは従軍慰安婦の問題なども含めてでありますが、戦後の補償も含めて、こういう問題についての質問もいたしまして、安倍官房長官も御答弁をされた。そういうふうなこともありまして、これらも踏まえて私は質問をさせていただきたいのでありますけれども、九月の十七日、日朝首脳会談で初めて北朝鮮がこの拉致事件について公式にその事実を認めた、そして、それまでの過去の外務省を始めとする政府のこの問題についての認識の甘さや取組の誤りというものが完全に明らかになったわけであります。  そして、その後、政府国民に対してどうこの過去の責任なり問題点を謝罪するのか、明らかにするのか、この点について率直に言ってもう一つその本当の姿がまだ見えてこない、このように私たちは思わざるを得ないのでありまして、したがって、改めて過去のこうした政府、そして外務省を始めとする関係者の、これは政治家も含めてだと思いますけれども、そういう方々責任をどう考えているか。そして、それらを踏まえて、それらの反省の上に立って今後どのようにこの問題を更に取り組んでいこうとしているのか。新しく外務副大臣になられた茂木副大臣の御答弁をお願いしたいと思っております。
  91. 茂木敏充

    ○副大臣(茂木敏充君) 谷委員、県議時代から常に弱い人の立場に立った発言、御意見を聞かさせていただいておりまして、国会の方に当選されてからもそういう姿勢を貫いていらっしゃる、そのことに敬意を表しますとともに、一政治家として今の委員の御指摘を重く受け止めたいなと、こんなふうに考えております。  その上で、外務省の対応についての御質問でありますが、外務省といたしましては、これまで、拉致問題は我が国の国民の生命にかかわる重大な問題である、こういう認識の下で、従来より国交正常化交渉等の場におきましても北朝鮮側に対しましてその解決を強く求めてくると同時に、アメリカ、韓国、そういった国を始めとしますほかの関係国との間で、また国際会議の場等におきましても拉致問題解決の重要性を一貫して訴えてきたつもりでおります。  北朝鮮、長い間この拉致問題につきましてその存在自体を認めない、国交の正常化交渉にも応じない、こういう拉致問題についての交渉も応じない、こういう姿勢でありましたが、先般の小泉首相の決断によります日朝の首脳会談で、金総書記がこの拉致問題の存在を初めて認め、謝罪をする、そして再発防止についても約束をしたと。一定の前進であると考えております。  ただ、このような北朝鮮の対応を引き出すまでに時間が掛かったことは事実でありまして、御家族の皆さんの御意見は外交に責任を持つ者として厳粛に受け止めたいと思っております。  そして、委員御指摘のように、今後、政府といたしましても、拉致問題の解決、これを最優先の課題として今後の国交正常化交渉に臨んでまいりたいと考えております。
  92. 谷博之

    ○谷博之君 私事ですが、同じ選挙区の中で大変私も、先輩の国会議員としていろいろと御指導いただいております茂木副大臣から御答弁いただきまして、改めて感謝申し上げたいと思っております。  そしてさらに、この問題のもう一つの問題なんですけれども、今後の国交交渉の関係については、先ほど申し上げましたように、拉致問題が解決しないとその先へは一歩も進まない、こういうふうな考え方が基本にあるわけでありますが、しかし、今月の末から再び両国で話合いが始まるということになれば、いろんな外交上の想定される問題というのが当然次に出てくることはもう間違いのないことだと思います。  そういうことを考えましたときに、一つだけ、戦後補償の問題について改めて現時点でお伺いをしておきたいというふうに考えております。  振り返りますと、第二次世界大戦のいわゆる被害に遭われた方々、こういう方々に対する政府は今日まで様々な補償を取り組んでまいりました。簡単に申し上げますと、朝鮮半島から旧日本軍の軍人軍属として徴用された約二十四万人のこういう方々、こういう人たちに対しては、一九六五年に日韓請求権協定という一つ法律を作りまして、それに基づいて約三億ドルの無償援助を日本が韓国に行って、そして、そのうち、韓国政府が、八千六百人の人たち、韓国に在住する遺族の方々に、一人三十万ウォンの弔慰金を払ったというふうなことがスタートになりまして、台湾、これまた二十一万人の人たちが徴用され、そして一九八七年、いわゆる弔慰金法という法律を時限立法で作って、そして一九九五年までの間に遺族の方に一人二百万円の弔慰金を総額で五百九十二億円、二万九千六百人の人に支払ったと、こういうこともあります。  そしてまた、本人ないし遺族が日本に住んでいる朝鮮や台湾の出身者に対しても、二〇〇〇年に議員立法で法律を作って、そして二〇〇四年の三月三十一日までに、亡くなられた方については一人二百六十万円、そして重い障害を受けた方には四百万円の弔慰金なり見舞金を支給するということで、現在その申請を受け付けているところだと言われております。  そういう中で、最後に申し上げました約二千人と言われているこの対象者の人たち、現時点ではまだ二百人しか申請をしていないということでありますが、こういうふうな戦後補償のそれぞれの歴史の中で、その補償が十分であったかどうかというのはこれは別の問題だと思いますけれども、今後出てくる問題は、特に北朝鮮に在住する旧日本軍に徴用されたこれらの人たちの補償の問題だというふうに考えているわけでありますが、これらの対象となる人数、そして、もし北朝鮮側から交渉の過程でこの補償の話が出てきたときにどのような対応をされるのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  93. 茂木敏充

    ○副大臣(茂木敏充君) まず、朝鮮半島出身者の旧軍人軍属の人数全体について申し上げますが、平成十年に外交ルートを通じて韓国政府に対しまして名簿を引き渡しましたが、このときの名簿の登載者数は、北朝鮮地域の出身者及び在日韓国人も含め、全体で合計では二十四万三千九百九十二人であります。ただ、名簿登載者の中には南北のちょうど境界付近の本籍地の方もありまして、正確に今現在北朝鮮在住者の人数を把握することは困難であります。したがいまして、旧日本軍の軍人軍属で障害を受けられた方、これにつきましても同様に、何人とこの段階で正確な数字をお答えすることはできません。  なお、もう一つの弔慰金の問題についての取組ということでありますが、御案内のとおり、日朝双方は国交正常化を実現するに当たりまして両国及びその国民の財産及び請求権を相互に放棄する、こういう日朝平壌宣言の基本原則を踏まえまして、今後、対処をしてまいりたいと考えております。
  94. 谷博之

    ○谷博之君 この質問に対して、官房長官、何かコメントございますか。
  95. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 今、外務副大臣が答弁したとおりでございます。  御指摘のような北朝鮮在住の個人の被害の問題、これは日朝間の財産及び請求権の問題として処理されるべきものでございます。そしてまた、先般の日朝首脳会談、この際に署名されました日朝平壌宣言におきまして、双方が財産と請求権を相互に放棄する、こういう基本原則が明記されております。あわせて、国交正常化の後に日本側から北朝鮮側に対し経済協力を行う方向で更に協議していくと、こういうことになっておるわけでございます。  いずれにしても、今答弁のございましたとおり、我が国としての具体的対応につきましては、日朝国交正常化交渉などの場におきまして日朝関係全体の観点から総合的に検討する、そういう課題であると考えておるところでございます。
  96. 谷博之

    ○谷博之君 いずれにしましても、これからの交渉というのは、ともかく先ほど冒頭申し上げましたような大変大きな問題が横たわっておるわけでありまして、それらの一つ一つの、拉致問題を中心に解決を図って、その先の交渉については是非、先ほど申しましたような過去に国交のない、なかった国との交渉でありますから大変難しいわけでありますけれども国民理解を得るような、そういう対応を是非これからも取っていっていただきたいと、このように考えております。  特に、外務副大臣にはこれからもますます御活躍をお祈りしております。  それから、次の問題でございますけれども、霞ヶ浦と沖縄の泡瀬干潟の問題についてでございますが、特に霞ヶ浦の問題につきましては、これは簡単に申し上げますと、今月の七日の日に、国土交通省の霞ヶ浦工事事務所、そして水資源公団の霞ヶ浦工事事務所の所長が、現地のNGO団体、アサザ基金に霞ヶ浦の水位上昇管理の再開を申入れをいたしました。  この問題、後ほど詳しく説明申し上げますが、霞ヶ浦のいわゆる冬の、冬季の水位を上げたいということで申入れをしたわけでありますが、これに対してNGO団体は反対をし、早速抗議をいたしました。  その反対をした理由というのは大きく二つありまして、一つは水需要の予測ですが、特に農業用水なども含めて予測を現実が下回っているということもありますし、それからもう一点は、霞ヶ浦の自然の水位というのは、冬に水位が下がって夏に水位が上がるという、こういう傾向を取っております。そのことによって湖岸の植生が正に自生して育っているという、こういう状況でありますから、何も水位を冬季に上げる必要はないわけなんです。  そして、今日まで六万人を超える子供たちや地域の人たちが一生懸命泥まみれになってアサザを植え、水草を植えて植生を回復する活動をしてきていた。こういうことからすると、この水位を上昇させるということは正にこれを壊滅状態にさせるというふうに考えざるを得ないと思っております。  国土交通大臣にお伺いをいたしたいわけでありますけれども、今年の秋の臨時国会で環境省が中心になった議員立法、自然再生推進法案議論をされるということになってきていますが、この法案の骨子というのは、正にそうした地域のそういう自然保護の市民組織と一緒になって自然回復事業をやっていくというのがこの法案の趣旨だと思うんですが、こういうことからすると、この水位上昇というのは正にそれに逆行する動きではないか。そしてまた、市民の皆さん方の十分協議もしないで、理解も得ないでやることについては余りにも一方的ではないかと、このように考えますが、中止するお考えはございませんか。お答えください。
  97. 扇千景

    国務大臣(扇千景君) 今、谷委員がおっしゃいましたように、霞ヶ浦のこの水位の問題でございますけれども、既に国土交通省担当者等と事務所等ともお話合いが既にあるということも伺っておりますし、御存じのとおり、今、谷議員がおっしゃいましたように、少なくとも流域内の小学校の約九割に相当します百二十一校、約四万人の生徒がアサザの里親としてこの事業に参加してくだすっているということで、私は将来の日本人がこの環境をいかに大事にするかということを地元の皆さんが熱意を持って推進してくだすっていることには敬意を表したいと思っておりますし、今、谷委員がおっしゃいました地元のNGOの皆さん方との円卓会議、これも私は少なくとも既に広く流域の関係者の皆さん方とNGOの皆さん方とで円卓会議を開きまして、懇談の場というものを開催を呼び掛け、なおかつこの場におきましても植生の保全などに関して議論をしてまいるというその方針を明示してございます。  水位の問題に関しましては、この円卓会議、まして子供たちがこれだけ参加して里親としてアサザの育成に協力してくだすっているというそのお話合いと実例と、この円卓会議の結論をまたよく見守りながら話合いを持っていくというのが基本的な姿勢だと思っておりますので、今、谷委員がおっしゃいましたように、周りの水位に関しての対策工事はすべて完成しております。これはもう御存じのとおりでございます。けれども、完成しましたけれども、その水位を元に戻すかどうするかというところが、NGOの皆さん方と含めた円卓会議で協議されるということでございますから、その結論というものを見守りながら、対処していきたいと思っております。
  98. 谷博之

    ○谷博之君 ありがとうございました。  是非そういう意味では、国土交通省、水資源公団とこのNGOの皆さん方の共催によるそういう円卓会議、その場をしっかりと尊重して、その場での結論を出すように、是非ひとつ今後ともよろしくお願い申し上げたいと思っております。  それから、沖縄の泡瀬干潟の問題でございますけれども、この問題につきましては、これ時あたかも、くしくも、十月の八日に沖縄の総合開発局は、実はこの地域、これは沖縄の東部海浜開発計画というこの計画にのっとって、海上にブイを設置していよいよ埋立工事の着工の準備に入ったと。月内にはその工事を着手しようという、こういう動きになっておりまして、ところがちょうどその地域の十三キロほど離れた北東の地域に、金武湾という湾がございまして、ゴールドの金に武士の武に湾と書きますが、ここに九月の十九日にジュゴンが二頭上空から撮影されております。青い海原にオレンジ色のジュゴンが泳いでいる姿がくっきりと写真にも写っておりまして、そういう大変この地域は、泡瀬干潟は、ジュゴンのえさとなる海草藻場、これが沖縄でも最大級の自生している地域だと言われておりまして、これは昨年の環境省の調査の結果でもそのことが報告をされております。そして、九月の三十日にこの埋立工事について、中城湾港泡瀬地区環境監視・検討委員会、こういう委員会が開かれまして、今後のこの計画についての委員会の議論がされました。  実は、私はこの委員会の議論の内容を是非注目したいと思いまして、内閣府にこの議事録の資料請求をいたしましたら、一か月以上掛かりますという話で資料が出てこないんですね。二十一世紀というのはアカウンタビリティーの時代、つまり説明責任の時代だと思うんですよ。これが、この重要な沖縄の中で行われているこの事業の、しかも最も注目されているこの委員会の議事録が一か月以上たたないと見せられないというのは、これはどういうことなのかということを私は非常にこれは疑問に思いました。  そして、特に説明責任とか、あるいは県民や国民理解を得るということであれば、なぜそうした委員会の情報の公開をして、そして公の場にそういう問題を皆さん方に知らしめて、そしてその結果として着工するなら着工するということはできなかったんでしょうか。私は余りにもこれは急ぎ過ぎた結論ではないかというふうに考えております。  いろいろうがった見方をしますと、私の手元に平成十三年の三月にこの工事についての入札の結果が出された資料がございます。それぞれこの工事の取付け道路を造るそういう工事とか、いろいろそういうところがもう一年以上も前に業者が決まっておりまして、そういうところからの働き掛けもあったのかなと思いますが、余りにも唐突にこの工事が十月八日から始まったということであります。  そこで、沖縄担当大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、今私が申し上げましたように、そういういろんな情報の公開というものがなされないままなぜこの時期にこうした工事に着工されたのか、その理由と対応についてお伺いをいたしたいと思っております。
  99. 細田博之

    国務大臣(細田博之君) 谷議員にお答え申し上げます。  泡瀬地区の埋立事業につきましては、沖縄中部地区の振興のために、地元の沖縄市が非常に市長さん始め御熱心に沖縄県とともに海に開かれた国際交流拠点の形成を目指して計画したものでありまして、国及び県が地元の強い要請に基づき進めようとしているものであります。  おっしゃいました藻場の問題でございますが、これは環境監視・検討委員会の指導、助言に基づきまして藻場の移植について様々な今取組が行われております。取りあえず手作業による移植を行いますと非常に根付きが良いという結果を得ておりますが、やはり相当コストが掛かるものですから、海に潜ってまた手植えをするということは大変なことでございますので、いわゆる機械によって掘って、それを機械によって埋めてはどうかというようなことも検討をし、その根付きぶりも台風が来ると流れてしまうんじゃないかとか、いろんな検討が行われておるというのが現時点でございます。  九月の三十日に先ほどの検討委員会が行われまして、そういったことは地元にも公開の下で開催されておるということが一つ、報道機関も含めて非常に地元住民にも開かれた会議を開いておりますが、まだちょっと、実際の平日、ワーキングデーでいいますと十四日ほどでございまして、長い会議でございましたのでまだ議事録の公開まで至っておりませんが、これは急ぐように私の方からよく要請をしておるところでございます。  それから、取りあえずは狭い範囲での工事、一応膜を張って準備をするというところに着手したわけでございますが、今年度においてはまず手植えから始めると、そして検討委員会でどういう在り方がいいかということを検討していただいて、またそれに従いながら効率的な埋立工事をどう進めたらいいかということをこれからまた更に検討していくと、こういうことでございますので御了解いただきたいと思います。
  100. 谷博之

    ○谷博之君 どうも新大臣、御答弁ありがとうございます。御活躍を。  それで、再度お伺いしたいんですが、今、取りあえず手植えで始めるということでございますが、これ、琉球新報という地元の新聞に出ていますが、大体第一工区、これ八ヘクタール、全体で二十五ヘクタールですけれども、この第一工区の八ヘクタールだけでも手植えだと約五十億円掛かるという話ですね。全体を合わせると、だから恐らく私は百五十億を超える、手植え全体であればですよ、そういうふうな費用が掛かってしまうと思うんですが、これは全体を手植えでやるということなんですか。ちょっと確認させてください。
  101. 細田博之

    国務大臣(細田博之君) 今年度の予定しておりますものは八百平米でございますので、大体三十メーター四方程度とお考えください。これは手植えでも十分今年度内に対応できる範囲でございますが、全体でいいますと二十五ヘクタールが非常に藻場の繁殖のあるところでございますので、これは面積でいうと五百メートル四方、二十五ヘクタールに及ぶわけでございまして、これをどのようにやったらいいか。  全部手植えでやると確かにおっしゃるようにかなりコストは掛かるという分析もございまして、できるだけ機械で掘って機械で植える効率的なやり方があるかとか、あるいは機械で掘るが手で植えるとか、いろんなバリエーションがあるようでございまして、こういったことを検討しておるところでございますが、この検討委員会の御意見に従ってやろうという方針を確認しておるところでございます。
  102. 谷博之

    ○谷博之君 今、大臣がおっしゃった最後のことなんですが、検討委員会の結論を待ってということなんですけれども、実はこの検討委員会はまだ議論を始めたばかりで、機械植えとか手植えについての、それが果たして大丈夫かどうかというような結論も出されていないというふうに我々聞いておりまして、いろいろそういう中で一方的にこの動きが出てきたことによって、既に委員の人が三人も辞任をするという、委員長の罷免を要求するという動きも出てきているんですよ。  つまり、この検討委員会というのは、もっと端的に言いますとどういう立場の委員会なのか。委員会は委員会として一方で検討させておきながら、一方では動きは動きとしてもう期限が来たから着手しますよという、こういうやり方なのかどうかですね。ここのところが私は非常にやり方がまずいというふうに考えているわけなんですけれども、そういう点について、検討委員会でもまだ結論が出ていない、そういう手法、やり方について、今の御答弁というのは若干私は内容がちょっと違うような気がするんですが、もう一度お答えいただけますか。
  103. 細田博之

    国務大臣(細田博之君) 現在、監視・検討委員会は、琉球大学の教授を委員長といたしまして、広島大学、鹿児島大学、さらに琉球大学の教授、助教授が四人、愛媛大学、そして泡瀬の自治会の自治会長さん始め地区の近隣の自治会も含めまして、主に自治会長さんでございますが、七人、それから国土交通省の沿岸海洋研究部長さん、研究室長さんという専門家を構成員としておりまして、かなり客観的にいろいろお願いできる方であると承知しておりますし、それからさらに、海藻草類移植・保全ワーキンググループというものもまた特別に設置しておりまして、鹿児島大学の野呂水産学部教授を主査といたしまして、愛媛大学、そして沖縄県、沖縄市、総合事務局あるいは国土交通省の専門家を配置しておりますので、できるだけ広くこれからも客観的な議論をしていただきたいと思っております。
  104. 谷博之

    ○谷博之君 委員会の構成については今お話しのとおりでありますが、私が申し上げたかったのは、この検討委員会というのは極めて重要な委員会であって、ここで議論をされるそうしたいろんな手法からいろんな検討の内容というものは、やっぱり十分それは今後の事業に生かしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思っております。  それからまた、新しく環境大臣になられました鈴木大臣に最後にお伺いしたいと思いますが、今申し上げましたこの二つの事業ですね、これは、先ほど冒頭申し上げたような自然再生推進法という法律、秋の臨時国会でも当然これは議論をされますけれども、こういう法律の趣旨からしても、やはり環境省がこういうふうな自然再生なり、もう我々は、言葉悪く言えば自然を破壊するといいますか環境を破壊するというか、そういうふうな事業に対してやっぱりきちっとしたイニシアを取って環境省が指導、リードしていかなきゃいけないというふうに考えておりますけれども、そういう点で、この二つの事業の今後の環境省としての具体的な対応、そして考え方、どのようにお考えになっておられますか。
  105. 鈴木俊一

    国務大臣鈴木俊一君) 環境省といたしましても、自然生態系などの自然環境の再生を図るということは大変これは重要なことであると、そういうふうに思っておりまして、これの進める枠組みを定めます自然再生推進法案、これは御指摘のとおり議員立法で提出をされているわけでありますけれども、それの早期成立というものを期待をしているところでございます。  こうした自然再生への取組ということでありますが、私は、NPOでありますとか、あるいは地域住民、行政などのそういう関係主体の広範な連携、それから参画によって展開されるのが重要であると、こういうふうに思います。  そういう中で、ただいま委員から御指摘のございました霞ケ浦でございますけれども、ここにおきましても、アサザプロジェクトが中心になった取組、これはこれからの自然再生への取組の一つのモデルになるものであると、そういうふうに高く評価をしているところであります。  霞ケ浦の問題、水位管理の問題、先ほど来お話がございましたが、これにつきましては実験的に行われるものと承知をいたしておりますし、先ほど国土交通大臣の方から今後も関係者の意見を聞きながらこれを進めると、こういうような御答弁があったわけであります。そういうようなことを環境省といたしましても是非関係皆様方のいろいろな御意見を聞きながら進めていただくということは重要であると、そういうふうに認識をしておりますし、環境省においても、モデル的な取組がここで行われておりますので、こうした関係皆様方の今までの運動、こういうものが生かされるように環境省としてもこの運動の進展に努力をしてまいりたいと思っているところであります。  また、泡瀬干潟の問題についてもお話がございました。これにつきましては、委員も御承知のとおり、いろいろなこの法的な制約の中で環境省として法的にこの環境アセスメントに関与することはなかったわけでありますけれども、しかし必要に応じて沖縄県の環境部局と十分な連携を図るなど最大限の努力を行ってきたわけでありまして、今後もそういう努力は継続をしてまいりたい、そのように思っているところであります。  先週、海上にブイが設置をされたと、こういうことでございますので、早速、事業者であります内閣府の方からお話を伺うことにいたしました。話を聞いた事柄は、海藻の移植について、あるいは機械化移植工法の評価について、また希少種と言われますクビレミドロの移植技術について、こういうものについてどういう考えで今後進めようとしていくのか等々お伺いをしたところでありまして、こういう今内閣府からお伺いをしたことに対して、早急に環境省としての考え内閣府の方にお示しをしたいと、そういうふうに思っているところであります。  いずれ環境省といたしましては、環境アセスメント等で示された環境保全の措置というものが確実に、着実に実行されることが重要であると、そのように認識をしているところであります。
  106. 谷博之

    ○谷博之君 それでは最後に、移入種対策の法制化についてお伺いをいたしたいと思います。  重ねて環境大臣にお伺いいたしますが、この移入種対策については、今年八月に環境省で報告書を出しまして、その後ちょっとその動きが止まっております、検討に対してですね。総合規制改革会議の答申では、移入種対策の法制化について今年度じゅうに何らかの方向を出すことというふうなことも答申に出ております。  そこで、この移入種対策については、既存の植物防疫法とか種の保存法とか、そういうふうな法律改正によって対応していくのか、あるいは包括的な新しい新法を作ってこの移入種対策を取り組んでいくのか。  特にブラックバスなどのように既存の生態系に大きな影響を与えていく、そういうふうないわゆる外来動植物についてこれをどう規制するか、それは正にこれからの大きな、私は自然生態系を守っていく上で大きな問題だと思っておりますが、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  107. 鈴木俊一

    国務大臣鈴木俊一君) 移入種の問題でありますけれども、これは在来種を捕食をしてしまうとか、あるいは交雑の問題でありますとか、大変危機的な状況にあると、そういうふうに認識をしております。  本年三月に新生物多様性国家戦略というものをまとめましたけれども、その中でも、早急に対応すべき課題ということで、環境省にとりましても大変優先順位の高い課題であると、そういうふうに認識をしております。  今後の取組についてのお尋ねでございましたけれども、環境省といたしましては、早期に中央環境審議会野生生物部会の下に専門の小委員会を設置をいたしたいと思っております。その中で専門家による詳細な検討をし、議論を深めまして、その結果を踏まえて具体的な制度化を図ってまいりたいと、そのように思っております。  そして、今、委員の方から、既存の法律の法改正でいくのか、それとも包括的な新法が必要なのかと、こういうことでございます。種の保存法、植物防疫法を例に挙げられましたけれども、このほかにも、動物愛護管理の法律、家畜伝染病予防法等々でもこの移入種の問題はありますが、これはストレートに移入種に対して立法されたものではないということでございますので、この専門小委員会の検討を踏まえまして、その中で、既存法の改正で対応できるのか、それとも包括的な新法が必要になるのか、そういうものも併せてその中で判断をし、適切な対応をしてまいりたいと思っているところでございます。
  108. 谷博之

    ○谷博之君 実は、今日、滋賀県の県議会が最終日でありまして、ブラックバスの放流禁止の条例が今日制定されると、成立するというふうなことで、そんな話も聞いておりまして、大変、都道府県によってはそうした取組をしているところもございます。したがって、是非国がこの問題について積極的にもっともっと取り組んでいくように、新法の成立も含めて、視野に入れながら、早急にひとつ前向きの検討をしていただくように心からお願いを申し上げたいと思います。  環境大臣のこれからの活躍を御期待申し上げまして、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  109. 遠山清彦

    遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。  まず、本日は総務大臣にいろいろと幾つかお伺いをしたいと思います。先日の、八月の決算委員会質疑の続きもありますので、どうかよろしくお願いいたします。  まず最初に、離島のIT化促進についてお伺いをしたいというふうに思っております。  現在、大臣よく御存じのとおり、日本のインターネット通信の分野ではブロードバンド化あるいは常時接続化が急速に進んでいるわけでございます。しかし、この恩恵をほとんど受けられない地域というものがございまして、日本の国内で言わばデジタルデバイドが広がりつつあるという指摘もございます。  私は、先日、最近ですけれども、東京都内の離島であります大島、八丈島に行ってまいりまして、地元で若い人を中心にお話を伺ってきたんですけれども、こういった離島・島嶼地域が正にこういったIT化の恩恵をなかなか受けられない地域になっておりまして、地元では対策を求める声が高まっております。  そもそも、考えてみますと、この離島地域は、IT化が進むことによって従来からあった様々な問題が最も解決し得る地域というふうに想定をされていたわけでございます。例えば、これは厚生労働大臣にも関係あることでありますけれども、離島地域での医療設備の不備の問題でありますとか医師の不足などもこのIT化の促進によって、遠隔医療技術が導入されることによって解決されるんではないかということがあったわけですけれども、現実にはなかなかうまくいっていないということでございます。  そういう中、本年の通常国会改正離島振興法が成立をいたしまして、その十三条で初めてこの法律としては高度情報通信ネットワークの整備促進が明記をされました。この法律は来年の四月から施行されるわけでありますけれども、このような状況の中で、総務省として、総務大臣として、今後、この離島地域のIT化促進にどのように取り組んでいかれるおつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  110. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 委員言われますように、離島のようなところこそITの恩恵が非常に効果があるんですよね。遠隔医療、遠隔教育、遠隔介護、いろいろなことができると思うんですが、実際は条件が悪いですから、採算性が合いませんから、実際はその不利なままで置かれている、こういうデジタルデバイドの解消というのが私は大きな課題だと思います。e—Japan戦略の中にも、アクションプランの中にもデジタルデバイドを解消していこうと、できるだけ。こういうことなものですから、現在私どもの方で考えておりますのは、民間事業者に光ファイバーなんかやってもらうわけで、民間事業者がやる場合に、例えば長期低利の融資をするとか、あるいは税金を少しまけるとか、そういうことをやっておりますし、今度は離島の中の公的な施設を全部つなぐLANですね、イントラネットというんですけれども、こういうものについては優先的に補助採択をしていこうと。  それから、本年度から新しく、その地域の情報基盤を整備する場合に特別の、離島とこれは過疎を考えているんですけれども、特別の補助制度を作りまして、イントラネットから枝線を出してそれぞれの家の電柱までつないでいって、あと、電柱から引いてもらうものは個人負担してもらわぬと、ここはなかなか難しいんですけれどもね。そういう新しい制度も離島や過疎のために作りまして、トータルとしてやっぱりデジタルデバイドをなくしていく、離島のITの恩恵を受けれるようにしていくと、こういうことを考えておりまして、ただ、例えば八丈島というと遠いですから、これはブロードバンド化といっても大変なお金が掛かるので、この辺をどうやっていくか、今後とも状況を見ながら現実に即した対応ができるように検討してまいりたいと考えております。
  111. 遠山清彦

    遠山清彦君 大臣、大変に前向きな姿勢をありがとうございます。  私も、この質問を取り上げるに当たって総務省の若い優秀なスタッフの方にいろいろと分からないながらもお話を伺いまして、離島の中のいろんな事業についての補助金制度というか、そういうものはかなり整ってきているということは理解しているんですが、大臣も今おっしゃったように、本土と離島の間の導線というかケーブルというか、ここの採算性の問題、キャパシティーの問題というのが非常に一番大きいところだというふうに私も認識をしております。  ただ、いろいろと民間会社の技術とか総務省の方でもいろいろと研究されていることを伺っておりますと、例えば最近は衛星インターネットサービスというのが出てきておりまして、これもハイブリッド型と言われるのは行きは衛星で帰りはケーブルというようなものもあるみたいですけれども、双方向で衛星でできるサービスもあるというふうに伺っております。私が今、手元にいただいているのは、スカイキャストというサービスですと双方向衛星でいけるということで、ただ月額基本料金が百五十万円ということで、これは一つの家庭が月額百五十万円でインターネットのブロードバンドを衛星を使ってやるというのは無理だと思いますが、ただ、こういった技術を使えば、従来考えられていた海底ケーブルを新しく新設して、二十数億円も例えば八丈島の場合掛かるというふうに私聞いておりますが、そういうようなことではなくて、こういった最新の技術を使えばやっていけるんではないか。  私、東京都、都庁の方ですね、東京都の方がどういうふうな対策をしているか調べましたら、東京都の方でも、今年の四月にこの通信関係の懇親会が出している答申を読みますと、やはり衛星を使ったような技術であれば何とか公的資金も入れてインフラ整備できるんではないかというふうに言っているんですけれども、改めて、この最新の技術を使っての離島IT化の促進に対して、大臣一言、あるいは事務方からお願いいたします。
  112. 高原耕三

    政府参考人(高原耕三君) 先生今御指摘のように、離島と本土との間の高速通信回線といたしまして有線と衛星を含む無線があるわけでございますが、それぞれ距離とか利用者の数等によってやっぱり投資効率が異なってまいります。  先生おっしゃるように、今、衛星の場合はその中継器の伝送容量が限られておりまして、このためにこの中継器の大容量化というのが大きな課題となっております。したがいまして、総務省では文部科学省と連携をいたしまして、平成十七年の衛星打ち上げを目的といたしまして、超高速インターネット衛星を研究開発いたしましてこれを推進しようとしているところでございます。  なお、e—Japan計画の二〇〇二におきましても、二〇一〇年を目途に超高速インターネット衛星を実用化することというふうに定められておりまして、これが実現いたしますれば、先生おっしゃるように、離島を含むあらゆる地域で超高速のインターネット衛星のサービスが実現するというふうに考えておる次第でございます。
  113. 遠山清彦

    遠山清彦君 分かりました。是非、その超高速インターネット衛星なるものを利用して、こういった離島地域にもこういったインターネットのブロードバンド化の恩恵が行くように政府としても努力をしていただきたいと思うところでございます。  続きまして、携帯電話に関する御質問をさせていただきたいと思いますが、私が大臣と八月二十八日の決算委員会で、携帯電話の発信の料金は、これは携帯電話会社が料金設定をする、固定電話から携帯電話に着信してくる電話の料金もなぜか携帯電話会社が決めていると。これはいろいろ調べてみると、電電公社の時代からの慣行であるとかなんとかいろいろあったわけでありますけれども、私はこれはいまだにおかしいと思っておりまして、納得していないわけですが。  この私の質問に対して、大臣、いろいろと今まで反響がございました。基本的に私が紹介するのは私の味方の反響だけでありますけれども、携帯発と固定発の料金が違うのは疑問に思っていたとか、あるいは固定発の料金が安くなれば会社の経費を随分抑えることができるんではないかとか、あるいは着信の携帯電話会社側に料金設定権を与えているのは独禁法で定める不正取引に当たるのではないかと、こういった反響があったわけでございます。  私、改めて大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、その前に一点、私が発見した新しい事実を、新しくもないんですけれども、御紹介をした上で聞いてみたいと思いますが、この固定発携帯着信の、つまり携帯電話会社側が決めている通話の料金の総額は年間七千億円から八千億円と今現在巨額になっております。その七千億円から八千億円の通話料金の収入配分が九〇%以上が携帯電話会社の取り分になっているわけでございます。他方、逆の携帯発固定着の固定電話会社の収入配分というのはたったの五%になっているわけですね。  ですから、片方は九〇%携帯電話会社が持っていく、しかし片方、違う方向の場合には、固定電話会社が着信なんですけれども五%しか収入配分がないというようなところでありまして、幾ら、大臣も前回の質疑で御指摘あったとおり、携帯電話会社がかなりコストを負担しているといっても、このような差があるというのはなかなか納得できないところではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  114. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 前回も委員にお答えしたと思いますけれども、これは当事者間で、事業者当事者間で話し合えと、こういうことになっているんですよ。話し合いますと携帯の方が強いんです、簡単に言うと。何でかというと、それだけの手間とお金を掛けているからですよ。  だから、そこのところは私もいろんな工夫や知恵があるんではないかという気もするんですけれども、今までのところそうなっていまして、今、一社が紛争処理委員会に御承知のように提訴していまして、そこで紛争処理委員会がどういう結論を出すかですけれども、当事者間の協議で決まったものは尊重するというのが基本的な立場で、役所が入っていってどうだということはなかなか今しにくい事情にありますので、そこは是非御理解を賜りたいと、こういうふうに思います。
  115. 遠山清彦

    遠山清彦君 大臣、確かに携帯電話会社の方が強いというのはあれなんですけれども、私が質問している意図は、また私も繰り返させていただくと、電話というのはこれは広域サービスでして、大臣も御自身でおっしゃったように生活インフラですから、我々は携帯電話も今含めて電話を使わないで生きることがもうできないわけですね。だから、ノーチョイスなわけです、ユーザーの側は。つまり、これは電力とか水道と同じなわけですね、今電話の位置というのは。  だからこそ、そういうサービスで、もうこれは、これがお菓子であって、森永がいいかグリコがいいかどっちがいいですかというような話じゃなくて、電話は使わなきゃいけないと。その電話を扱っているこの世界の中で一社があるいはある特定の業界が独占している状態というのが、果たして使っている我々ユーザー、消費者側の利益がちゃんと考えられているかという視点で私意見を申し上げているんであります。  それで、片山総務大臣、そういうふうに今もおっしゃっていたわけですけれども、十月二日の日本工業新聞の「新閣僚に聞く」というインタビューでこの問題について聞かれておるんですけれども大臣、こういうふうに答えております。「今は携帯側に設定権があるのはやむを得ないが、いつまでもそれでいいのか。」、なかなかいいですね。「常識的に考え」、ここ、次大事ですからね、次。「常識的に考えて、携帯発と固定発の料金が違うのは一般の人には理解できないだろう。」と、なかなかすばらしいお答えをされているわけですけれども。  そこで、大臣にお伺いしたいんですが、やっぱり常識的に考えて一般の人が理解し難い事態を所管官庁として所管大臣として是正するのが当然の行動ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  116. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 新大臣でもないんですが、大分古くなっていますけれどもね。  この前聞かれまして、なるほど携帯発と固定発で料金が違うのは、どこから掛けたかというだけで、これはなかなか一般の国民の人には、大した違いじゃないにしても理解し難いんではなかろうかという私は感じを持っています。  ただ、これも基本的には、また同じことを言いますけれども事業者間で決めたものを尊重するという立場でやっていますんで、私は、どこかちゃんとした、委員審議会か研究会で議論してもらったらどうだろうかと。物すごく今、技術開発は進んでいますから、この分野も。そういうことを含めて、そこで少し議論してもらったらどうだろうかと。  こういうことの中で、例の私どもの方にあります電気通信の紛争処理委員会、ここで訴えが提起されて今審議してますから、この結論を見てみようと、こう思っておりますので、委員の意のあるところはよく分かっていますから、十分これから検討させていただきたいと思います。
  117. 遠山清彦

    遠山清彦君 どうもありがとうございます。今後の検討に期待をしたいと思います。  続きまして、大分、時間がちょっとなくなってきたんですけれども、若者の雇用対策について厚生労働省と文部科学省にお伺いをしたいというふうに思います。  最近、リクルートワークス研究所というところが若者の雇用対策で大変に興味深い十の提言を出しているわけで、私、今手元にその提言書を持っておりますけれども、この中で、今日、もう時間もありませんので、二点だけお伺いをしたいというふうに思っております。  一つは、高校卒業生の就職難の問題でございます。  二〇〇二年の高卒者の就職状況というのを十年前と比較すると、求人数ですね、求人数を比較すると、十年前は百六十七万あったのが今年は二十四万と、四割以下に激減をしております。なぜ高卒の、高卒者の方が就職難になってきたかというと、専門家、この本にも書かれておりますけれども、専門家が二つの点を強く指摘をしているわけでございます。  一つは、高校における指導の在り方の問題、それからもう一つは、高卒者を採用しようとする企業がかなり面倒くさい、ぶっちゃけた言い方をすると、手続があるという問題でございます。  学校側の問題といたしましては、よく言われる一人一社制という、一人の卒業予定者がある一時点で一社しか受けられないという制度があるということでありますとか、指定校制でありますとか、あるいは生徒の能力とか資質に余り関係なく、学校の先生が、おまえはこういう成績だからここの企業へ、あそこの工場へ行けというふうに決めてしまうというようなことがございます。こうやって学校側が生徒の就職に大きな影響を持ち過ぎてしまったことが、私は、今、高校生で卒業した人が就職した後の離職率が非常に高いと。一年以内、三年以内で離職する人が半数近くいるということの背景には、こういった学校指導の在り方の問題があるのではないかというふうに思います。  それから、高卒者を採用しようという企業側から見ると、やはりハローワークに、旧態依然たる手書きのあの求人票を書き込んで、それでハローワークに出して、受理してもらって、それから今度学校を訪問して御説明を先生方に申し上げてと、そういう非常に煩雑な手続があって、自由応募採用制になっている大学生の就職状況とはもう全然違う、隔世の感があるわけですね。  ですから、こういったところのこの二点について、もうこの雇用のミスマッチを促進しているような高校卒業生に関する就職指導の在り方、また企業に対する制度的制約、こういったものは改革していかなきゃいけないというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  118. 遠山敦子

    国務大臣遠山敦子君) 今、委員御指摘のように、高校生の最近の就職をめぐる状況は大変深刻でございまして、私も本当に心を痛めております。  それは、やはり日本経済状況ということで雇用環境が厳しいということに起因するんだと思いますけれども、今御指摘のように、高校生自体の問題もございますし、学校の対応ということもございます。  それで、そのこともございまして、本年三月、厚生労働省との共同研究の報告が出ておりまして、そこでは、高校生の就職に関して、これまで企業と高校が培ってきました指定校制、それから一人一社制あるいは校内選考などの就職慣行を見直すべき等の提言が出されました。  この就職慣行につきましては、長年にわたって、企業の求人と、それから生徒の求職とを短期間で円滑に結び付けるという仕組みとして機能してまいったわけでございますけれども、求人が激減しております現在の状況では、もう応募する機会さえない生徒をかえって生んでしまうんだという課題も出てまいっております。それから、生徒の能力、適性よりも、学業成績を過度に重視した校内選考で、生徒とそれから企業が求める人とのマッチングが必ずしもうまくいっていないというような大変大きな問題がございます。  このようなこともあって、先ほどの指摘も受けまして、我が省としましても直ちにそのことについて各都道府県教育委員会に通知をいたしました。また、就職指導担当者を集めまして、これは厚生労働省とも共催で会議を開きまして、これまでの就職慣行を見直すようにということで指導いたしております。  このような状況を踏まえまして、就職慣行の見直しと、それから生徒、企業が互いに納得のいく選択ができますように、各都道府県教育委員会におきまして各労働局と連携して検討会議を設置すると、そして就職慣行の見直し等について検討を進めるよう指導しております。これを受けまして、十五年の三月、高校卒業予定者の採用活動におきましては、既に十一県が一人一社制を見直して、一定の時期以降複数社への応募を可能にするというようなことも今動いておりまして、私どもとしましても、今御指摘のようなことが高校生の就職にとってマイナスになることのないように今後とも指導を続けてまいりたいと思っております。
  119. 遠山清彦

    遠山清彦君 済みません。私の時間がもう終わり掛けているんですが、一点だけ坂口厚生労働大臣にお伺いしたいと思いますが。  今アメリカで定着しつつあるジョブシャドーイングという画期的な制度がございます。これは子供たちが、特に高校生が中心ですけれども、自分が興味ある職業を選びまして、その職業に就いている人に影のように一日寄り添って職場を体験すると。これは影のように寄り添うのでジョブシャドーイングと呼ばれておりまして、毎年、理由は分かりませんけれども、二月二日にアメリカで行われている制度で、今、全米では百万人以上の学生が参加をして、受け入れる企業の数も七万五千社と言われているわけでございます。  こういうことをすることによって、若者たちが本当に仕事をするというのはどういうことなのか、また自分が興味ある仕事というのは外から見ているイメージと実際どう違うのかということがよく分かるようになると思うんですが、日本でも是非こういったことを導入していくことによって若者の就職観の形成というものに寄与するべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  120. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 委員が御指摘になることと同じなのか、若干違うのかちょっと分かりませんが、いわゆる、我々、インターンシップを取り入れておりますが、これも今おっしゃったジョブシャドーイングとよく似ていると思うんですね。できる限りこのインターンシップを取り入れて、そして実際にやってもらって、そしてここならいいというふうに言っていただけるようにしたい。  若い人に対する就職がだんだん減ってきましたのは、一つは企業の方が完成された人が欲しいということに変わってきたと思うんですね。今までは、できるだけ若い人たちを自分のところの企業の中でやはり育成をして、そして自分のところに合った人をつくっていこうという方向だったんですが、今はもうそういう時間的なものをカットして、そしてできるだけもうすぐ戦力という人を欲しいということに変わってきているものですから、高校生が非常に厳しくなってきております。  今御指摘のようなことでインターンシップその他を取り入れて、できるだけもう学生時代のときからそういうことができるように私たちも努力していきたいと思っております。
  121. 山本保

    ○山本保君 公明党の山本保です。  今日は私、十月四日に愛知県春日井市にございます県立の児童自立支援施設というところで大変残念な事件が起こりまして、入所している四、五人の子供さんがその指導員であります森野成雅さんという三十四歳の方を殺害して逃げてしまったと、こういう事件がありました。  これについて、まだもちろん最近の事件でありまして、警察等の関係もあり、このことについてのいろんな具体的な問題については今日は行わないつもりでございますが、しかしここでこういう重大な事件、そしてそういう犠牲に、児童福祉のために犠牲になられた方が出られた、こういうことを機会として、こういうことを決して繰り返さないようなこの施設の制度の在り方について、大臣、副大臣と少し話し合ってみたいなと思います。  そこで、ちょっと時間がございませんので、大臣には最初この事件の概要をお聞きするつもりでございましたが、これについては今のようなことでお互いに了解したということにいたしまして、すぐに中身について、まず副大臣にお聞きしたいと思います。  まず、この施設の状況、ほとんどの方はどういう施設なのか余り御存じないので本当は御説明しなくちゃいけないんですが、私、この施設の担当をずっとしておりまして、何とか変えたい。非常に実は崇高な目的を持った、児童福祉の原点ともいうべき施設でございます。ただ、それができまして、一九〇〇年に感化法という法律でできた施設なんですが、百年を経過し、その理念も形骸化しているところもあり、又は伸ばさなくてはならないところもあると感じております。  そこで、まず、そのことについては講義はしないようにしまして、まず一つ一つお聞きしていこうと思うんですが、この施設長さんのまず在り方なんです。これは責任を問うという意味ではありません。しかし、こういう施設は大変、教育そして児童福祉、少年司法、また今出ましたような少年の自立のための雇用というような問題、大変多くの分野の中にあるものでございまして、大変高い専門性が必要とされているわけでございます。ですから、戦前においてはこの施設長さんは実は国家公務員、当時の官制に位置付いておりまして、県にあったわけですけれども、大変高い、それなりのまた先生方が施設長になっておられたわけでございます。  現在、その施設長の資格というものは厚生省令に定められているわけですけれども、これもなかなか厳しく、ほかの施設長はこういうふうに定められておりませんが、大学を出ただけでは駄目でして、五年間この事業を実際この施設でやらなければなりませんよと、こう書いてあるわけです。ところが、その次にいわゆる掃きだめ規定という、汚い言葉で申し訳ありませんが、規定がありまして、それに準ずる者であればだれでもよろしいというようなことになっている。これは私も、この在り方として大変問題ではないか。  今回の事件についてどうであったか、これは、ここから先はまだ分かりませんので、新聞等の読んだ限りでございますけれども、例えばそういう事件が起こることも全く寝耳に水であったというような報道もちらっと聞いた。しかしながら、この施設は大変リスクの高い施設でありまして、そのようなことを言っておられては困るし、実際、じゃ五年経験されたのかななんということも思うんですが、ここについては今日は触れませんけれども、ここをもっと厳しくといいますか、より高いものにしていかなければならないのではないかと思うんです。  鴨下先生、実際に一昨年ですか、児童虐待防止法を作りますときに大変お世話になりまして、一緒に仕事をさせていただいて、実はあのときのあの法律改正が、新法が関係ございまして、あの法律を作ったことによりまして、実はこの今回の施設長と児童相談所長という方がまず同等で今までは扱われてきております。児童相談所長は法律がございまして、児童福祉法に法律があるんですが、この方たちの法律がやはり同じように書いてあるんですが、これは大学を出て二年と書いてある。やはり五年と比べましても、それでもやはりこちらの施設長の方が高いということが分かるわけですけれども、この児童相談所長のことについても法律改正がありまして、最後の、だれでもいいというような表現はあるんですが、そういうものに対して、そうではなくて、同等以上の学識を持っておって、厚生省令で定めるものであるというふうに最後のバスケット規定が改正されておるんですね。  私、これについて、まず副大臣、これは当然、ちょっと遅きに失したかもしれないけれども、この最低基準という厚生省令を早急に改正すべきではないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  122. 鴨下一郎

    ○副大臣(鴨下一郎君) お答えいたします。  議員は非常にこの問題について今までライフワークのようにやっていらして、大変この事件についても心を痛めていると、こういうようなことを承知しております。  今御質問にありました児童自立支援施設のことについて言えば、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童等を入所させて自立支援を行う施設でありまして、言ってみれば高度な技術など、高い専門性が本来要求されると、こういうふうなものであります。  そのために、この児童自立支援施設の長としましては、一つに、先ほど議員御指摘ありましたように、児童自立支援専門員の職にあった者等児童自立支援事業に五年以上従事していた者、こういうような規定と、さらにもう一つは、児童自立支援事業に関して、特別の学識経験を有する者であって、厚生労働大臣又は都道府県知事が適当と認めたもの、このことについて先生問題意識をお持ちなんだろうというふうに思います。  この二の「適当と認めたもの」という要件につきましては、児童相談所長の場合と同様に、法令上明確に規定することにより児童自立支援施設の長の資格をまあ言ってみれば強化していくと。先ほどの中でも児童虐待防止法の中でこういうようなことに類する規定が強化されたと、こういうようなことでありまして、私たちの方も、この児童自立支援施設を始めとして児童福祉施設の在り方については、これから児童虐待対策の検討の課題の一つとして非常に重要な問題として位置付けておりますから、先生御指摘のように、今後、この検討の中で児童自立支援施設の長の在り方についてもより御指摘を受けて検討をしてまいりたいと、このように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  123. 山本保

    ○山本保君 ありがとうございます。  それでは、これが施設長の、大変責任の重い施設長についても現状では知事が認めればよろしいということになってしまって、経験のない方でもなれるということでございます。  残念ながら、最近の例を私つまびらかにいたしませんけれども、私の担当しておりましたときにも、子供たちが逆に体罰で死んでしまったというような事件を始め、本当に情けない話ですが、全国いろんな事件がございました。そのことについても、施設長さんなどはもうきちんと理解していただかなくてはならないと思っているわけなんです。  それで次に、職員のことに今度、これについてもやはり同じような法律また施行令、省令ですね、省令がございます。  この児童自立施設専門員の資格につきましてもやはり同じような形が、今と、施設長と同じようになっておりまして、言うならば、大学を出まして、教護事業をして一年の、最低まず一年の実践が要るというのが一番の中心、よく使われるものなんですが、最後にやはりだれでもいいですよと読めるような、知事がいいと言えばそれでいいんだというものがあるわけでございます。  これも、例えば児童相談所には児童福祉司という正に虐待などで対応する専門家がいるわけですけれども、この方たちについては、やっぱり二年前に法律改正が成りまして、そしてやはり同等以上の力を持っていて、しかも厚生省令で定めるという基準を厚生省が定めて、その格上げを図って、もう既に行いました。であるならば、この児童自立支援施設の職員についても同じように行うべきだと思うんです。  ちょっとその理由といいますか、これは誤解を与えてはなりませんが、マスコミ等を拝見しますと、例えばこの今回の事件の一つのきっかけになったであろうと書かれておりますのが、退所をするということについて子供が聞いたところ、大変あいまいな言葉があったとありました。私、これは本当かどうかは分かりません。しかし、これは例えば、私がおりますときに実は作り、そして現在はもっときちんとした形で、子供たちに退所をする予定でありますとかどういう形で今進んでいるかということについては、子供の意見を聞きながらきちんと作り上げていきなさいよという通知が厚生省からも出ているわけです。そういうことについてきちんと勉強をされるようなそういう機会を県は与えておったんだろうか、国はその方たちに与えておったんだろうかと、こういうことを大変気にするわけです。  といいますのも、これもちょっと諸先輩には申し訳ないんですが、私もこの仕事を始めてびっくりしましたが、当時、古い施設の大変ベテランの方が、この施設では退所するときその日の朝になって初めて今日退所するんだと言うのが、これがこの施設の在り方だと、こういうことを私聞きまして、びっくりして大げんかになったことがあるわけです。  そこで、私は、今回の事件ということではありませんけれども、まだそんな考え方があるときに、この施設の方の研修なり又は能力を上げるということが非常に必要だと思っておりまして、是非ここについても児童福祉司と同じような形で厚生省令を改正していただきたいと思うんですが、同じようなことでございますけれども、副大臣、これについても重ねてお聞きいたします。
  124. 鴨下一郎

    ○副大臣(鴨下一郎君) 児童自立支援専門員につきましては、高度な技術と高い専門性を要求されるということはもう言うまでもございません。  そういう意味で、地方厚生局長の指定する児童自立支援専門員を養成する学校その他の養成施設を卒業した者。あるいは、大学の学部で、心理学、教育学又は社会学を修め、学士を称することを得る者であって、一年以上の児童自立支援事業に従事したもの。さらに、高校若しくは中学を卒業した者であって、三年以上児童自立支援事業に従事したもの。四に、小学校、中学校、高校の教諭となる資格を有する者であって、一年以上児童自立支援事業に従事したもの。五に、児童自立支援事業に関し、特別の学識経験を有する者であって、厚生労働大臣又は都道府県知事が適当と認めたもの。このいずれかに該当しなければならない。こういうふうにしてあるわけでございますが、議員が御指摘なように、五の「適当と認めたもの」、こういうような要件につきましては、議員がかねてから御指摘のように、児童福祉司の場合と同様に、法令上明確に規定をし、さらに、児童自立支援専門員の資格要件を強化すべきと、こういうようなことについては私も共感するところでございます。  このことについては、これから児童自立支援専門員の在り方についても今後の児童虐待対策の検討の中で更に進め、そして児童福祉施設の在り方と併せて検討を進めてまいりたい、このように思っております。  御指摘いろいろとありがとうございます。
  125. 山本保

    ○山本保君 ここで大臣にお聞きします。実は、これからのことが、時間がないんですが、一番大事なことなのでございます。  この施設の原型といいますか、元々はペスタロッチというスイスの教育学者が考え、また実践してきたものでありまして、夫婦の職員が二十四時間体制で、自分の子供も一緒にしてこういう子供たちを助けていく。なぜならば、それは、この子たちは決して悪い心を持っているからではなく、社会に、しかも家庭環境が良くなかったがゆえにこういうふうになってしまったんだという考え方が根本にあるわけです。ここが少年法などと一番違うところであります。  これはどちらが正しいという意味ではなくて、私は両方の見方が必要だと思っておりますし、正にこれは児童福祉としてこれを大事にすべきだと思っているんですが、しかし、お気付きのように、今、県立の公務員さんでこういう体制というのはなかなか難しいわけです。全国五十七施設のうち半分が、まだ半分に残っていると言ってもいいんですが、もうなかなか難しい体制になっている。当然、今回の事件などを見まして、一般の施設と同じようにもっと公務員体制を強化すべしというようなことも議論は当然出てくると思います。ただ、私は、それはそれとしまして、この施設の特徴とか、また今までの原理原則というものをもう一度見なければ、ただ単に数字をどうするという問題では収まらないだろうと思っているんですね。  そうしますと、ここで大臣に具体的に二点ほど提案させていただきたい。  一つは、今、児童福祉法施行令によりまして、この施設は県立でなくてはならないという規定がございます。これを言うならば公設民営型にしまして、事業団などの非常にやる気のある方にこれはある程度、やはり試験で通ったという方よりはもう少し経験も持たれたような御夫婦を県内から募集しまして、きちんと仕事をやっていただけるような体制をこれはもう認めてよろしいんではないかと。今の体制は、実はもう昭和の初めから続いている施行令が、そのまま戦前の法律の施行令がそのまま続いておるのであります。ですから、ここはもう六十年も七十年も続いているんですから一度変えていただいた方がいいのではないかと、第一点。  第二点は、そうしますと、当然、専門性が問題になってまいります。今、副大臣も厚生省が定めた施設云々と今言われましたが、実はそんな施設は全国に一か所しかないわけでございまして、とてもできる状況ではない。かといって、各県で個別の一つしかない施設の職員をどうするかということは、これはなかなか逆にまた公務員の管理上大変難しい問題で今のような状況になっている。  となりますと、ここでまず一つ行ったらどうかと思いますのは、国立武蔵野学院という国立教護院の中に附属の教護院、この職員、いや、教護院ではない、自立支援施設という名前なんですが、この職員の養成所がございます。この部門を改組して独立行政法人ぐらいに高めまして、各県の民営型になった施設中心になると思いますが、こういう方の研修又は院長の研修、こういう体制をきちんとすべきではないかということをちょっと具体的に少し御提案申し上げまして、できればこれについて、今、副大臣からもお話ありましたが、早急にこれについての検討委員会というようなものを立ち上げていただきたいということを大臣お願いでございますが、時間がございませんけれども御返事をお願いいたします。
  126. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 一番の専門家の山本先生がおっしゃることでございますから、間違いないんだろうというふうに思いますが、私も一遍ちょっとこの辺のところは検討させていただきます。独立法人がいいのかどうか、よく検討をさせていただきたいというふうに思っております。全国に一か所か二か所しかない施設でございますし、いたしますので、ここがよりスムーズにいくようになることが一番大事でございますから、一遍検討をさせていただきたいと思います。
  127. 山本保

    ○山本保君 終わります。  ありがとうございました。
  128. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。  まず最初に、中部国際空港不正補償の問題について扇大臣に伺います。  中部国際空港建設に当たっての漁業補償費、これに今、重大な疑惑が浮かび上がっておりまして、常滑市が九一年に市の埋立事業による漁業補償に三億円を上乗せする、こういう密約を二つの漁協と交わしたが実行がされてこなかった、そこで九九年になって愛知県が中部国際空港の漁業補償の中に滑り込ませて肩代わりをしたということであります。県の企業庁は県議会で国の補償基準にのっとり適正に行われたと答弁したと。  そうしますと、適正に行われた国の補償基準の中に三億円の密約が入り込んでいることになるわけですが、もしそうならこうした不正は許せないと思いますけれども大臣の御認識を伺います。
  129. 扇千景

    国務大臣(扇千景君) 今の八田議員のお話ですけれども、私も一瞬、これは報道で初めて知ったわけですけれども、何ということをしているんだなと思ったのが第一印象でしたけれども。国土交通省としましてこれを調べさせていただきまして、今、八田議員がおっしゃいましたように、報道によればということで一番最初私も知ったわけですけれども、これは一九九一年、今おっしゃったとおり、常滑市が港湾の埋立事業に関する漁業補償とその未払分を今回の一九九九年、今、八田議員がおっしゃったように、愛知県に県の実施事業であります中部国際空港の前島の漁業補償の事業費に紛れ込ませたということなんですけれども。  私は、これは、国土交通省が実施しております中部国際空港、この建設事業とは直接関係のない事業、そこへ持っていってこれを紛れ込ませたと。そんなばかな話ないと。私たちも一緒にだまされたのかなと一瞬そう思ったわけですけれども。このことは国土交通省として、本来は、調べてみましたら常滑市のことですから私がコメントするのはむしろおかしいと思うんですけれども、むしろこちらの方は被害者の一人といいますか。まさかそんなところへ、中部国際空港に常滑市の漁業補償を紛れ込ませるなんてことがあってはならないことですし、また私たちは、一般論として、少なくとも地方公共団体にこういう不正がまかり通っているということが真実なのかどうなのか、そういう面では私はこんなことで中部国際空港、将来に向けて、二十一世紀の大きなプロジェクトですから、なおこんなことに疑義を持たれてはならないと思っておりますので、これはきちんと処理したい、そういう常滑の返事がなければ、私は中部国際空港としては汚名を着せられたのではかなわないなと、そういう印象でございます。
  130. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ですから、私は、きちんと調査をしていただく、先ほどの前島も許可をされたのは旧運輸省と建設省でありますので、許可をされたのは大臣です。常滑市長も、密約に対する要望が強かったので県にこの解決が必要だと申し上げたと公の場で言っておりますので、私は本当に許せないと思いますし、これ空港本体とは関係ありませんが空港一体の事業でございますので、きちんと調査をしていただいてこういうことを二度と起こさないように、ただでさえこの空港というのは汚職などの不正事件や、社長自らが何か談合空港だとかと言っておりますので、きちんと調査していただくようにお願いをしたいというふうに思います。  次に、愛知学園事件に関連してでありますけれども、児童自立支援施設について厚生労働大臣に伺います。  最初に、亡くなられました職員の方と御家族に心から哀悼の意を表したいと思います。  この児童自立支援施設、入所中の中学生が職員を殺害して逃走という非常にショッキングで本当に残念な事件でありますが、極めて珍しいケースだと専門家も困惑の声が出されております。ここは少なくとも開放施設です。再発防止策の確立のためには徹底的な調査と原因究明が必要であることは言うまでもありませんし、それには一定の時間を要すると思います。じっくりとこれこの際検討していただきたいと思います。と同時に、私、関係者の皆さんにいろいろ伺いまして、緊急に解決していただきたい問題点が、これは全国共通の部分もあるんではないかと思いますので今日伺いたいと思います。  その一つは、職員の増員がどうしても必要だということです。これは将来的に、感化院、教護院、自立支援施設というふうに変わってきた施設をどうするかということとは別に、今いる子供たちに対してどうするか、子供たちの人権をどう守るかということで必要で、国の職員配置基準というのは、今、入所者五人に職員一人です。これは夜、夜勤として交代勤務することが想定されておりませんので、事件の起きた施設では夜間宿直として実質一寮一人体制でした。男子棟の、現場ですけれども、第三寮と呼ばれていたところには小学校六年生から中学三年生まで十四人が四室で生活していました。当日宿直をされていた正規職員の方は、朝八時半から翌日の午前十一時まで、実際にはほとんど仮眠も取れない状況での拘束二十六時間半の勤務なんです。  当日の夜、男子棟の棟続きの第四寮というのが隣にあるんですけれども、ここは夜だけの代務員と言われる嘱託職員が一人配置されていましたが、この二つの寮の居室が浴室などで構造的に隔てられていたので、三寮のほかの子が異変を知らせに来るまで気付かなかったということであります。  国の職員配置基準では、こういう職員配置しかできないわけです。働く人の労働基準を守りながら、施設本来の趣旨にふさわしい仕事ができる体制が私は緊急に求められていると思うんです。とりわけ、大きな困難を抱えて入所してきた子供たちにとってきめ細かい指導と援助を行き渡らせる、先ほどもありましたが、家族的な愛情を持ってはぐくまれる環境を作るため、何よりも子供の人間としての尊厳を守って、自立支援ですから、成長を保障するためにも人が要るんですね。ですから、職員を緊急に増やす必要があると思いますが、大臣、どう考えられるでしょう。  また、夜間の一人勤務でこういう事故や事件が実は前にも起こっています。ですから、施設によっては職員を地方の単独予算で加配して対応しているところもあると聞いておりますが、少なくとも夜勤として交代制勤務を可能とする職員の配置の検討が要ると思うんですね。  もう一つは、職員の数だけでなくて研修の問題です。この方は、ほかの障害児施設から変わってこられてそんなに日は長くありません。この施設に入所している少年、実際にはほとんど触法又は虞犯少年と言われる子供たちで、今回の事件を教訓にして専門性を高めるきちんとした研修をしっかりと行うべきだ、これは制度化をするなり義務をするなり国がきちんと援助をするということが大事だと思いますけれども大臣、いかがでしょう。
  131. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 具体例の話でございますので、私も現場がどうであったかということは十分に存じません。先ほど山本議員からも出たところでございまして、非常に特異な例であったんだろうというふうに思いますが、しかし、それにいたしましても、亡くなられた方が出たということは大変なことでありまして、私も大変痛ましいことだというふうに思いますし、その職員の方に対しましては本当に申し訳ない事態だというふうに思っている次第でございます。  ただ、職員は多ければ多いにこしたことはないんでしょうけれども、おのずから限界もある話でございますし、五人に一人以上ということに先ほども触れられましたようになっているようでございます。その人数だけの一体問題なのか、それともその運営の在り方あるいはまた中の教育の在り方、指導の在り方といったものにこれは影響しているのか、それらのことも総合的に判断をしなければならないというふうに思っております。  平成十年におきましては、自立支援のための職員配置をしますために児童自立支援施設の職員体制の改善、これも図ってきたところでございます。夜勤の問題も今お話しになりましたので、そういったローテーションの問題等も十分に配慮していただくようにお願いをしなければならないというふうに思いますが、こういう事件が起こりましたことについて総合的に、一体どこに原因があるのかということをよく見定めることが大事であるというふうに思っておりますから、人員体制だけではなくて全体のこの問題についてよく検討させていただきたい、よく調べさせていただきたいというふうに思っております。  それから、こうした職員の人の研修の問題につきましては、これは研修が行き届いていきますように我々も更に配慮をしたいというふうに思っております。
  132. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 現実に、お示ししたように朝八時半から翌日のお昼まで、実際にはそれよりも延びるという、三十時間以上ということもその中の状況ではまれではないんですよね。ですから、正規職員の増員しか当面解決の道がありませんし、研修というのは、専門性専門性と、専門性が高いというふうに言われますけれども、やっぱりこういった専門性を高めるということを私は国が責任を持っていただきたいなというふうに思うんです。  次に、入所児童への、これは全国的な問題でありますけれども、公教育の保障の問題を伺います。  九七年の法改正で従来の入所児童に対する就学猶予・免除を改めていただきました。学校教育を保障することが明記されたんです。ところが、この問題の施設も含め、まだ実現できていない施設というのが半分以上あります。私、これも問題ではないかと思いますけれども大臣は今後どう取り組んでいかれるのか、明らかにされたいと思います。  さらに、新聞報道を見て私、本当に驚いたんですけれども、児童相談所の一部である一時保護所がこの愛知学園にありました。便宜的に使用していると思われますけれども、こういった不適切な在り方は直ちに正すべきだと思うんですけれども大臣、いかがですか。
  133. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) ここはやはり問題点の一つだというふうに私も思っております。愛知学園の空き寮を一時保護所に転用するという愛知県からの申出につきましては、観察機関であります一時保護所とそれから自立支援を目的とします児童自立支援施設を同じ敷地内に併設することになって、それぞれの児童の処遇として適切とは言えないものと考えまして、愛知県にその旨を伝えた上で協議を進めているところでございます。  この協議の途中に愛知県におきまして一方的に一時保護所として転用したことは、厚生労働省としても大変遺憾だというふうに思っておりまして、愛知県に対しまして報告を求めているところでございます。今後、愛知県からの報告を踏まえまして適切に指導してまいりたいというふうに思っております。
  134. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 公教育を。
  135. 坂口力

    国務大臣(坂口力君) 済みません。  平成九年の児童福祉法の改正によりまして、児童自立支援施設におきましては児童を就学させる義務が課せられておりまして、学校教育に基づきます正規の学校教育実施することとなっておると。なお、それができないときにはいわゆる学校教育に準ずる教育実施するということになって、いわゆる分校のような形で実施することになっているわけでございますが、これもなされていなかったということのようでございまして、これは大変遺憾なことだというふうに思っておりまして、この点もよく指導をしたいと思っております。
  136. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 公教育の保障が、これはこの施設だけじゃなくて、五年も六年も、それ以上も放置されていること自体を見過ごしてきたことは私は非常に問題で、子どもの権利条約を踏まえて改正された法律の趣旨が一体どうなっているのか。数々の問題を抱えた子供たちだからこそ義務教育がより必要です。そういう子供たちだからこそ、ともに希望を語る喜びを教えることや、誠を胸に刻む学びがより必要だ、福祉の場だから私は余計そう思うんですね。  すべての子供が日本の未来であることを考えれば、厚生労働省の責任は重大だと思うんですね。当分の間、見過ごしてもいいよというような態度であるならこれはもう言語道断だと思いますので、早急に是正していただきたいということを強く申し上げて、次の質問に移ります。  次は、庄内川、新川の総合治水対策についてであります。  東海豪雨から二年がたちまして、洪水ハザードマップが徹底していれば被害がもっと軽減されたのではないかと言われてきました。この洪水ハザードマップの作成は、今、全国で百九十三市町村で作成、公表されていると伺っております。全体の市町村数は三千二百で、必要なところに急速に促進を図っていく、これが必要だと思いますが、どのような助言や援助でこれを促進されようとしているのか、まず伺います。
  137. 扇千景

    国務大臣(扇千景君) 御存じのとおり、大変大きな被害をもたらした庄内川あるいは新川、私も当時すぐ現場に駆け付けて拝見させていただきました。あっという間に浸水をし、そして集中的に行われたあの集中豪雨。今、ハザードマップができていれば防げたのではないかというお話でございましたけれども、私は、それは済んで今だから言えることであって、あの当時ハザードマップがあっても、それぞれの御家庭が自分たちの住んでいる地域はこういう地域であるという認識がやはりなかったんですね。  その点は私、地方自治団体と我々もハザードマップを作っているとそういうことの連携の悪さというものはあるんですけれども、あの地域全体があんなに一瞬のうちに私たちは浸水されるということは皆さんも考えてなかったし、我々もあの一つの破堤によってあれだけの大きな被害が出るということを考えてなかったことも事実でございますので、我々は、そういう意味では、今作っております洪水のハザードマップというもの、今おっしゃったように各市町村、そういう意味では多くの市町村の皆さん方に御利用いただいておりますけれども、現実的に今、八田議員がおっしゃるように、市町村において作成される、本来は市町村のハザードマップを作成なさるというのが本来のものですけれども平成十三年の七月のあの水防法を改正して、国又は都道府県による浸水想定区域の指定とかあるいは公表というものが義務付けられました。それによって、今、先生がおっしゃるように、我々も多くのところでということをやっておりますけれども、百九の水系で百九十三河川の直轄管轄の区域におきましても庄内川など九十一水系百五十河川、少なくとも八百十の市町村を対象に現段階でハザードマップを公表しております。  けれども、今おっしゃったように、洪水のハザードマップを作成している市町村は全国で百九十三にまだとどまっているというのは仰せのとおりでございますので、我々は、このハザードマップというものを作成されていない約七百の市町村で洪水のハザードマップというものの作成の準備が整っているというふうに聞いておりますので、洪水のハザードマップの作成が加速的に促進されるものと期待していますし、また国土交通省としては、このハザードマップの作成に対する市町村への技術的な助言、そしてこれをどうぞ使ってくださいという様々な場面での支援をしているというのが現状でございます。  そういう意味では、今おっしゃったように、浸水想定区域が公表されていない区域、そういうところにも指定と公表に向けて努力し、そして地域を叱咤激励して、一緒になって洪水の被害が最小限にとどめられるようにしていきたいと、今努力中でございます。
  138. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ありがとうございます。  本当に自分たちの住んでいる地域がどういう町かを知ること、また自分たちが自主的に自分たちの町を守るということを意識を高めるためにも技術的な助言や援助というのが本当に必要であるなと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  今のこの二〇〇〇年九月十二日の東海豪雨ですが、ここに庄内川の工事事務所、国土交通省の中部整備局のパンフレットがあるんですけれども、このパンフレットの「事業効果」というので、これを河川激甚災害対策特別緊急事業に指定をしていただいて事業をするとこういう効果があるというページがあります。それを拡大コピーを私してまいりました。ここが、これがそれなんですけれども、見えますでしょうか。(図表掲示)これ、上が実際の被害で、ここのペケ印の付いているところが破堤したところですね。下が激特事業が終わった後なんですね。  これ見ていただきますと、薄い青いところは余り水が来なかったんですが、ここが床上浸水、ここが軒下ということで一階よりも上になったところですね。この濃いところはなくなるんですけれども、実際に激特事業が終わった後でも一千百戸床上浸水が残る。ちょっと濃いところですね、下の段の。これが残るわけです。ですから、実際、床下でいいますと八千六百戸なんですよね。ですから、激甚対策の特別緊急事業が行われても、床下はともかく床上もこんなに残る。床上といいますと、あの当時本当に困ったんですが、壁や畳から家電製品、自動車ももうみんな使い物にならなくなる大変な被害になるわけです。  ですから、激特をやったけれども床上一千百戸残るというのが、まあ一割程度ということになるんですけれども、これではもう新たな対策がないと、ここにいる方たちというのは、それは逃げればいいと言われればそうですけれども、大変だなと思うんですが、そこのところは、大臣、どうなんでしょうか。
  139. 扇千景

    国務大臣(扇千景君) 今、八田議員が図をお示しになりましたけれども、この庄内川と新川、先ほど私が申しましたように、平成十二年の九月の十一日から十二日、一晩と言っていいぐらいなあの大豪雨のために、あっという間に家屋が一万二千戸浸水いたしました。そして、被害総額は七千七百億円という、もう都市型の浸水の最も典型的なものを我々は見てしまったということで対策を練ったわけですけれども、御存じのとおり、今おっしゃいましたように、激特事業ということで指定をいたしまして、破堤を含めた今後のはんらんの区域を少しでも小さくしようということで、事業平成十六年度を目標に今実施しているというのが現実でございます。おっしゃったとおりでございます。  けれども、そのし終わった、激特事業が終わった後に完全に安全であるかどうかということがもう一つ残るわけです。それはなぜかといいますと、床上浸水の被害はこれで全部大幅に軽減できると。けれども、片方は何があふれるかというと、下水道などの水路からの水があふれる、いわゆる内水ですね、それをどうするかという問題が残るんです。これだけの密集地ですから、下水道処理というものをきちんとやらなければ、我々は今までの浸水区域を止めることはできたけれども、内水で、下水道自体のあふれるものをどうするかということで、今回は、問題が今おっしゃったこれで完全でないという部分、これは一千百戸、これは少なくとも内水なんですね。  だから、今申しました下水道整備を今後どう持っていくかということが残っておりますので、更なる河川の掘削とかあるいは排水ポンプとか、そういうものを整備して下水道の整備を完全にしなければいけないということで、我々も今後、庄内川とか新川については内水対策も考慮いたしまして、河川の整備計画の策定に着手しているというのが現実でございます。  また、庄内川と新川の河川の整備とか、あるいは両方の流域、今お示しになりました図の下水道整備と新川の総合的な治水対策というものを両々相まって努めていきたいということで、今の激特事業だけでは完全に浸水を防ぐことはできない、あとは内水の問題であるというので、その方に集中して、みんなで地元と検討して頑張っていきたいと思っています。
  140. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 確かにおっしゃるとおりなんですね。  新川の総合治水対策では、時間雨量五十ミリに対応するとした計画で、河川改修だけでなく、流域で貯留施設など二百四十五万トンを整備する緊急五か年計画というのが今取り組まれています。しかし、昨年度末ではこれは七十二万トンで、二九%の到達率なんですね。近年、一時間に五十ミリを超す雨量を記録する豪雨というのは結構発生しておりますし、その時間雨量五十ミリ対応の施設整備の遅れは重大だなというふうに思うんです。  今、大臣に御答弁いただきましたが、もうちょっと広い地域でいいますと、これがそうなんですけれども、これは上の方が新川で破堤したところです、下が庄内川の本川になるわけなんですけれども、庄内川の溢水と新川の破堤と内水のはんらんということで、この青いところが全部水がつかったところなんです。ですから、必ずしも堤防からだけでなく、内水があるんです。これをどうするかというのが非常に大きな問題で、雨水を川だけでは受けられないということですよね。  ですから、さっきおっしゃった下水ですね。下水を通じて川に排水する、あるいは緊急に備えて下水処理場などで雨をためていく、あるいは貯水池や遊水地でためる量とか地下に浸透させる量などを分担させる計画というのが第一義だと思うんです。そうした計画だけでは、私はちょっと今の進み具合では受けられない。  ですから、公とか民間の雨水管理とともに、住宅も含めた開発行為も視野に入れる法律、こういうものが必要じゃないか。マンションの下に造っていただくとか、あるいは大きなスーパーマーケットの駐車場とか屋根の雨水を受けていただくとか、そのほかにも、緑は失われて貯留浸透の機能が減少する開発行為が丘陵では行われますので、それの調整と、こうなりますと、今の総合治水だけでなく、もう一つ立法が必要だというふうに思いますけれども、建設省としてはどうなんでしょうか。
  141. 鈴木藤一郎

    政府参考人鈴木藤一郎君) ただいまのお尋ねについて御説明申し上げます。  都市部の河川の流域におきましては、市街化の進展と相まって、集中豪雨等により近年浸水被害が頻発していると、まずこういうことでございます。  このためには、河川の流域においては、河川管理者のみならず、御指摘のように、下水道管理者、さらには流域の地方公共団体を含めた関係者、そういった多くの関係者が連携、協力して浸水対策に取り組むことが重要であると認識しております。これを国土交通省の中での言葉で申し上げますと、河川局だけではなくて下水道部ですとか、あるいは住宅局ですとか、そういったところを巻き込んだ対策が要ると、このように認識しているところでございます。  このため、都市部の河川の流域における内水も含めた浸水被害を軽減、解消するための制度的枠組み、今までいろいろやってきておりますが、その拡充につきまして、法制化も視野に入れて関係部局とともに現在検討中ということでございます。
  142. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 是非そういうふうに総合的に新しい法律も作っていただきたいというふうに思うんですね。  庄内川の堤防整備率というのは他の河川と比べると今実は大幅に遅れておりまして、現状では、計算上十年に一回の確率で発生する可能性のある洪水に対してすら危険な部分が何か所かあります。これは国交省の河川事務所のホームページなんですね。これまでの経緯はあるにせよ、やっぱりもうちょっと予算も人もと思うんです。  この庄内川の激特区間の河川敷には実は多数の民地もあるんですね。地主さんとか共有者だけじゃなくて耕作者もいらっしゃって、この権利者九百人です。で、ちょうど今、半分はできているんですけれども、これからこれらの方との交渉がありまして、家屋の移転も百二十軒なんです。だから、あと二年でできるかしらと心配なんですけれども、やっぱり相当大変な事業ですね。  それから、都市型の水害対策では、ここは上の方に高蔵寺ニュータウンとか多治見のホワイトタウンという大型の大規模開発で、今も名古屋市の守山区は大型の区画整理が行われておりますので、山地や農地が減少し続けている。だから、この前の雨だったらもっと大変なことになるということなものですから、是非促進をされたいというふうに思うんです。  続いて、環境大臣に伺います。  今伺っておりますこの庄内川、新川ですけれども、この新川の先が、これ先ほど大臣も、扇大臣もおっしゃってくださったように掘削をするんですよね。この地先というのは実は藤前干潟がここの地先にあるわけなんです。で、新川の激特事業で河床の掘削というのは必要であるということで皆さんで相談してやっていただいているんですけれども、今年はラムサール条約へこの藤前干潟を登録していただくという、そういう準備も着々と進んでいると伺っておりますけれども、この河川改修による影響が藤前干潟の保全にとってどういう影響があるのか、環境省としてはどのように認識されているのか、まず伺います。
  143. 鈴木俊一

    国務大臣鈴木俊一君) ただいまお話ございました藤前干潟でございますけれども、この干潟は我が国有数のシギ・チドリ類の渡来地でありますとともに、渡りの中継地として国際的にも大変重要なものであります。  したがいまして、本年十一月には国設鳥獣保護区に設定をいたしましたとともに、今委員お話しのように、ラムサール条約登録湿地に登録をすることといたしまして、その前提となります区域の指定の告示を昨日行ったところでございます。  一方におきまして、庄内川、新川におきましては、先ほど来お話がございますとおり、平成十二年に大変大きな豪雨による甚大な被害があったということでございまして、環境省といたしましては、この大切な藤前干潟の保全と、住民の生命と財産を守るという治水対策の実施、この両立を図っていくべきであるというのが基本認識でございます。そのために、この藤前干潟を国設の鳥獣保護区に設定する際には河川管理者から治水対策として行う河口部のしゅんせつ計画を示していただきました。それを拝見をしたわけでありますけれども、しゅんせつ施工後も干潟の大部分は、これは引き続き残るという評価をいたしたところでございます。  今後とも、治水対策と両立するという観点を含めて、藤前干潟の保全に最大限の努力を払ってまいりたいと思っております。
  144. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 藤前干潟の保全に当たって環境省は、名古屋市に世界に誇るセンター施設をということで約束をされましたけれども、藤前干潟の魅力と本質に触れることができるのは藤前干潟を正面に見る堤防近くだということで、NGOの皆さんは、そういったセンターは、干潟に入れるような場は、新南陽工場の前あるいは前の南陽工場の跡地ですね、こういうところでしっかりと本当に世界に誇れるこういったものを造っていただきたいという御要望が大変強いんですけれども、環境省としてはそれをどういうふうに受け止めておいでになるでしょう。
  145. 鈴木俊一

    国務大臣鈴木俊一君) ただいま委員からお話がございますとおりに、この藤前干潟、国設鳥獣保護区に設定をいたしますに併せまして、干潟の保全と環境学習等の活用のための拠点整備を行うということで今予算要求もしているところでございます。  まず、内容でありますけれども、現在は展示でありますとか野鳥観察スペース、調査研究室等を考えておりますが、この内容につきましても、今後、名古屋市等の関係自治体や地元のNGO等の意見も聞いて具体的に決めてまいりたいと思います。  そして、この拠点施設の建設位置についてでございますが、当然これにつきましても関係自治体、NGOの希望をお聞きをして参考にして考えてまいりたいと思っておりますが、設置につきましては用地の確保ということが必要でありまして、土地所有者の同意が不可分でございます。そうした諸条件が様々ございますので、そういう条件を十分に整理をした上で最も適切な場所に設置をしてまいりたいと考えております。
  146. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 是非運動体の皆さん、世界の皆さんの意見もよく聞きながら適切に設置をしていただきますようお願いをして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  147. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 国会改革連絡会の岩本荘太でございます。  本日は私、米問題について農水省に集中的に質問する予定でございました。というのは、今年は農業生産者にとって米問題というのは大変な重要な変換期であるような認識をいたしておりまして、稲作経営がどうなるか、これは生産者も含めて大変不安なときでございまして、これはもう与野党関係なく皆さん地元に帰られるとそういうお話を聞かれると思うんですけれども、そういう大事な時期でございます。  ということは、またこれは、単に米、稲作生産というのは、農産物を作るということでなくて、私申し上げるまでもないことでございますけれども日本の国が稲作国家として成立されて以来、いわゆる政治、経済の屋台骨であったのが米であり、稲作であったわけで、そればかりでなくて、文化、芸術に至るまで日本の国というのはそういうものを屋台骨としてきたわけでございまして、それが言うなれば国が管理したというか、国民全体がしっかり管理してきたわけですが、どうも今、米問題を見ていますと、何か一般の農作物と同じような位置付けにだんだん変わってきているんじゃないかな、変えられるようになってくるんじゃないかなというような不安を持っているわけでございまして、したがって、日本の屋台骨が大きく変わるんじゃないかというようなふうに見ているわけでございます。  そうなること自体は、これは社会が要求することであるでしょうし、歴史の一つの流れですから、そうであればしっかりとそういう認識の下に政策を講じていただかなければならないわけでございますが、ある意味で大きな歴史的な変換点であるということだけは我々日本人として十分認識していかなければならないということで、このような問題を取り上げるつもりであったんですが、農水大臣が何かよんどころないスケジュールがございまして今日は委員会に出席できないということで、そのよんどころないスケジュールにつきましては、今後また十分にその御成果についてお伺いしようと思っております。  今日は事務方の政府参考人方々に出ていただきまして来ていただきましたので、そちらの方の方と具体的なお話をした方が問題がよりクリアになるんじゃないかというような願いもございまして御出席をお願いした次第でございます。  ただ、そういうことでちょっととばっちりといいますか、質問時間がちょっと短く、余裕ができたような関係で、それで文部科学大臣おいでいただいたのは大変失礼なんですけれども、地元の話で是非国会でいろいろ聞いていただきたいというようなこともありましたので、文部科学省についても質問を準備させていただいた次第でございます。  といいますのは、一つは公立学校の施設整備の問題でございまして、これは地元に聞きますと、私、これも私が言うまでもなく、戦後児童が急激に増えたときに、大規模学級といいますか、それに合わせた施設整備がなされた。それが今や老朽化されている。それと、その後、耐震化といいますか、地震対策を考慮した建物でなければいけないというような社会的な要請も出てきたわけでございまして、そういう中でやはり教育問題、いろいろ言われているわけですけれども、やはりこういうインフラといいますか、こういうものをしっかりしておかないと教育問題の解決にはならないというような地元の教育者、教育関係の方々の熱い、熱意もございまして、いろいろと施設整備をされているようでございますが。  これについて、文部科学省、恐らく一つ計画といいますか、持っておられると思うんですけれども、どういう計画を持っておられて、今どういう状況で、今後どんなふうなお考えか。財政が大変厳しい折でございますので、財務大臣にもお願いをしなきゃいけないわけですけれども、地元はそういうものに対して非常に財政的な支援が、不安感もございますので、その辺をひとつ御答弁を願いたいと思います。
  148. 矢野重典

    政府参考人(矢野重典君) 公立学校施設につきましては、先ほどお話がございましたように、昭和四十年代から五十年代の児童生徒急増期に大量に建築されました建物が老朽化して改築の時期を迎えているわけでございまして、現状では、現行の耐震設計基準が施行されましたのが昭和五十六年でございますが、それ以前に建築された建物が全体の六五%を占めるという状態にあるわけでございます。また、今年の四月に文部科学省におきまして調査した結果によりますと、公立小中学校施設の四三%につきまして耐震性に問題があるというふうに推計をされている、そういう状況にあるわけでございます。  そこで、公立学校施設のこうした老朽化や耐震性の問題への対応につきましては、これは極めて重要な課題であるというふうに私どもも認識をいたしているところでございまして、このため、各自治体におきまして学校施設の安全性、耐震性を確保し、安全な学校づくりを進めていただくということが大変大事なことであるというふうに考えているところでございます。  そうした意味合いにおきまして、我が省といたしましては、自治体における公立学校施設の計画的な改築でございますとか、また耐震補強等の事業に支障を来すことのないように必要な予算額の確保に努めて、自治体のそうした取組を適切に支援をしてまいりたいと、かように考えているところでございます。
  149. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 お考えはよく分かりますけれども、片や財政厳しい折でございますから、その基本的な方針を貫くのは大変なことだと思いますけれども、この問題について、もし、大臣、何か一言ございましたら、御決意といっても変ですけれどもお願いをいたします。
  150. 遠山敦子

    国務大臣遠山敦子君) 学校は、子供たちにとって安全な場所であることが必要であることと同時に、地域にとりましても、いざ何か起きたときにそこに集合して皆が困難な時期を過ごすわけでございますので、何としても公立学校地域のそういう住民の人たちの、何といいますか、よりどころでもございますので、これはしっかりしたものを造っていかなくてはならないと思います。  そのために、確かに財政的には厳しい状況ではございますが、私どもといたしましては、財務大臣の御理解を得まして、是非ともこの問題についてできるだけ早く解決に向けて取り組んでまいりたいと思っておりますので、よろしく御支援をお願いいたします。
  151. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。大臣言われた地域住民のよりどころというのは、確かに今私もお聞きして分かったんですけれども、私の地元なんかは一つ地域のまとまりとして校下という単位でとらえているのが非常に強い連帯感を持っている。そういうところから、確かに住民のよりどころであるということはよく分かる次第でございます。  それと、局長おいでになっていますので、ちょっとついでですけれども、ついでといいますか、校舎の新築、大規模改築もそうなりますかね、新築なんかする場合、一時代前、変な例ですけれども、JRの駅舎と公立学校の校舎というのはみんな画一的にできている、非常に個性がないというような声があって、JRの方は何か、跨線橋といいますか、跨線橋ができて上に改札口があるというような、両側に利用が可能だというような、こんな格好の駅が非常に私は多かったような気がしますし、小学校なんかも、何かコンクリート建ての三階建てがどこの小学校も同じような格好でできたというようなことがございまして、非常に個性に欠けていたような感じがするんですが、そんな声も社会一般にいろいろ出ていたような気がするんですけれども。  最近、実は私の地元でも、かの有名な安藤先生が小学校を設計したとか、そういう例がありますから、よもやそんなことないんでしょうけれども、その辺の御指導といいますか、実態といいますか、もしお分かりになりましたら、お願いします。
  152. 矢野重典

    政府参考人(矢野重典君) 公立学校施設の整備につきましては、先ほど申し上げましたように、耐震化やあるいは老朽化対策などの整備事業量の確保ということももちろん大事であるわけでございますけれども、同時に施設の質的な向上を図るということも大変重要な課題であるというふうに私ども考えているところでございます。  特に、近年は老朽化に伴う改築等を進めることが喫緊の課題となっておりまして、これはある意味では時代や社会の要請に対応した個性あるいは特色のある多様な学校施設に生まれ変わる、そういう一つのチャンスでもあるというふうに言えようかと思うわけでございます。  このため、我が省といたしましては、従来から、例えばでございますけれども、少人数指導や情報教育などといった教育内容あるいは教育方法の多様化に対応した施設造りでございますとか、また我が国の伝統的な建築材料でございます木材を活用した温かみと潤いのある教育環境作りといったようなこと、そしてバリアフリー化など地域に開かれた学校造り、さらには太陽光発電などを取り入れた環境に配慮したエコスクールといったような、そういう学校施設の整備など、学校施設の質的向上のために様々な取組をこれまで進めてまいっているところでございます。  その結果、先生お話がございましたけれども、かつてのかまぼこ形といったような、あるいはマッチ箱形といったような画一的な施設ではなくて、全国様々な地域におきまして創意工夫、そしてその地域の特色を生かした正に特色ある多様な施設造りが今日なされてきている状況にあるわけでございまして、我が省といたしましては、今後ともこうした取組を通じまして、学校施設の質的な向上、そしてまた個性ある学校施設造りに努力してまいりたい、かように考えているところでございます。
  153. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。  ここで、文部科学省とはちょっと離れたかの感の質問でございますけれども、実は余り離れていないと私は認識していることについて御質問させていただきたいんですが、中山間地問題。これ、中山間地という言葉が言われてもなかなか普通の人には通じなかったという時期がございましたけれども、最近は、たしか小泉総理もどこか演説で使われたような気がいたしますので、大分人口に膾炙したというか、皆さんお分かりいただいたと思うんですが。  いわゆる里山といいますか、里山から山岳部に向けての地域、自然の宝庫といいますか、そういう地域で、そこでそういう自然を守っている方々、生活して守っている方々、そういう方々が、いわゆる過疎化の問題とかあるいは経済効率性がないからというような面からどんどん疲弊していると。そこをどうしたらいいかという問題があるわけでございますが、よくよく考えまして、中山間地であれ、これは日本の国土であるということには変わりございませんから、経済効率性でどんどんそういうところの過疎化が進んで都会に集中してくるということは、日本の国の狭い国土を更に狭く使わなきゃいけないというような問題もあろうかと思いますし、さらには、こういう里山というところは日本の言うなれば資源の基ですね。  例えば水の問題、水の量、質の問題を考えましても、そういうところをしっかりと管理しておかないと、そういうものが川下である大都会に流れ込んできて、被害を受けるのは川下であると、大都会であると、大多数の国民であるというようなことにつながるんじゃないかと。  したがって、そういう面で中山間地問題というのは非常に大事な問題であると私は認識しておるわけでございますが、これはひとつ遠山大臣文部科学省の大臣としてでなくても結構でございますけれども、そういう中山間地問題についてどういう御認識を持っておられるか、ひとつ御所見をお伺いさせてもらえればと思います。
  154. 遠山敦子

    国務大臣遠山敦子君) 中山間地という用語はなかなか耳慣れないものでございますが、今、里山というお話ございましたので大体想像が付くところでございますが、その地域というのは、やはり自然環境に恵まれていること、それから人々の恐らくコミュニティーとしてのサイズは小さいとは思いますけれども、そこで展開される生活というものは非常に人間の本来の欲求に対応し得るような豊かさを持っているのではないかと思っております。  その意味では、その地域を単に合理的な思想だけで、あるいは効率的な考え方だけによりますと、そのようなものはできるだけ、何か余り財政的なあれを掛けないでというような考えもあるかもしれませんけれども、しかし、そういう里山なりあるいは中山間地ですか、そういったものを大切にしていくということは、環境の面でも、あるいは人間の心の面でも非常に大事なことではあるなと思っております。  その意味では、若干我が省にかかわります観点から申し上げますれば、そういうところにある学校についても、これはできるだけ豊かな教育が受けられるようにしていくのも大事なことではないかなとは思っております。
  155. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございます。肯定的な御答弁だったというふうに私は理解しておりますが、前、有馬大臣にも同じ質問をさせていただきまして、やはり同じようにお答えをいただいているわけで、日本人全体が大体大事にしなきゃいけないと私は思っているんですね。ところが、世の中不思議なもので、大事にしなきゃいけない、総論はそう言っても、現実にはどんどんその逆に行っちゃっているということが多々ありますので、その辺は我々しっかりそう行かないような対策を立てなきゃいけないと思うんですが。  先ほど文部省と必ずしも関係なくはないと申し上げましたのは、やっぱりこの中山間地で人が住む場合、過疎化にならないで人が住むということは、先ほど言いました資源をしっかりと管理しなきゃいけない。したがって、そこに人がいなきゃいけない。そのためには、そこの生産性といいますか経済性といいますか、そういうものをしっかり守らなきゃいけないということが一つの大きな問題だと思うんです。したがって、中山間地対策というのは所管が農林水産省になっているわけですが、私はこれは農林水産省だけじゃ解決しないんじゃないかと思うんですね。  例えば、そこの、そういうところで例えば学校がもしあった場合、中山間地がいいですよという、都会の人に、都会の児童に言って、それはいいですよと、遊びに来るのはそれもそれでいいんでしょうけれども、子供がそこで育たなかったら中山間地はどんどん疲弊していくわけですね。したがって、子供が育つということはそこでしっかりした教育ができなけりゃいけない。また、しっかりした教育をしなきゃいけない。そういう面で見ますと、見方を変えますと、中山間地というのは児童の数が少ないですね。今、盛んに日教組が二十人学級とかなんとか言っていますけれども、そんなものでない、もっと少ないわけです。環境がいいわけですよね。交通事故もないわけです。それで自然に親しめる。非常に教育する場としていいわけですよね。したがって、それを逆に有利な方向に使う考え方ができないかと。  それで、いろんなあれがあるでしょうけれども、私は、一つ前から申し上げているのは、これはこんなことを言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、例えば、常識的に考えまして、山奥とかへき地に行くときは、教員の方にそこへ行って頑張ってこいというようなことを言われる。一年なり二年なり頑張ってこいというような表現されるかもしれない。しかし、それを逆に、そこに行って、優秀な人を、そこに行ってそこの教育現場をしっかりしたものにするといいますか、教育の今のモデルになるような、そういう学校といいますか、そういうものを作るような働き掛けがあれば、これは中山間地というのは少なくとも教育の面からでは非常に有効に使える、教育の面から中山間地の過疎化というのを防げる、私はこういう気がするんですね。  もう一つ、医療の面も、これは非常に遠隔地ですから、なかなかその面で恩恵が得られないということも一つ原因がありますから、そっちの面もありますけれども、今日は厚労大臣もうお見えになっておりませんので、そちらにはお聞きしませんけれども教育現場の方でこういうような取組に向かわれる。先ほど大臣ちょっと教育の面も言っておられましたけれども、私のこういうような物の見方といいますか、考え方について、大臣どういうふうにお考えですか。
  156. 遠山敦子

    国務大臣遠山敦子君) 文部科学省としましても、従来からへき地教育の重要性といいますか、へき地教育を内実のあるものにしていく、あるいはへき地であることの自然条件をむしろ生かして良い教育をしていくということについて意を用いております。  もちろん、それぞれのへき地における学校をどうやっていくか、どういう人事配置をするかというようなことはそれぞれの都道府県教育委員会が人事配置の際に考慮していただくことではございますけれども、その地域学校は子供たちの数も小さいということであり、ほかのところよりは率としては手厚いんでございますけれども、しかし教員の数が少ないということで、どういう教員が行くかということによって子供たちの教育内容あるいは教育成果というものは随分変わってまいります。  そのようなことから考えれば、魅力ある教員を配置したり、あるいはそこにできるだけ手厚い何らかできることがあればやっていくということは大事なことだと考えておりまして、私どもも、そういう都道府県教育委員会の取組があればこれをバックアップしていくというふうな考え方でこれまでも来ておりますし、そういう委員のお考えにつきましては同感といいますか、そういう方向というのは非常に大事だなというふうに考えるところでございます。
  157. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございます。  実際私、今日、具体的に調べてこなかったんですけれども、現実にはあるんですね、もう動き出しているのが。したがって、そういうことをどんどん拡大していただきたいと。地方自治体の教育委員会の仕事かもしれませんけれども、やはりまだまだ日本というのは中央主体みたいなところが、中心みたいなところがございますので、そちらから働き掛けをいただくことによって、地方はもっと自分のやりたいようにやれよという、そういう動きに変わってくるんじゃないかなというような感じがいたします。  そこで、先ほど言いました中山間地域問題に対して、農林省は平成十二年ですか、から取組を、いわゆる生産費格差、平地でやる農業と中山間地でやる農業の生産費の格差を解消するというような目的で直接支払制度というのをスタートをさせておりまして、私はそれは非常にいいことだと思うんです。  一時は何か生活保障を受けるみたいな認識があってなかなか地元に定着しなかったんですけれども、大分広がってきていると思うんですが、その辺の、まだ二年ですけれどもこの実績と評価について、農林省太田局長、よろしくお願いします。
  158. 太田信介

    政府参考人太田信介君) お尋ねの中山間地域等直接支払制度の現状と評価ということでございますが、この制度は、中山間地域等における耕作放棄の発生を防止しまして多面的機能を確保していくという観点から直接支払実施するということで、十二年度から始めております。  十三年度現在の状況でございますけれども、千九百十三市町村におきまして、六十三万二千ヘクタールの農用地を対象といたしまして三万二千六十七の協定が締結されまして、それに対する交付金が交付されたところでございます。この結果といたしまして、全国で対象となります農用地を有します市町村の九割におきまして六十一万戸が参加して三万二千の集落協定等が締結され、対象となる農用地の八割におきまして適正な農業生産活動等が継続的に行われ、耕作放棄の発生が防止されるという状況がまずございます。  さらに、各地域におきましては様々な取組が行われておりまして、例えば集落協定の締結を契機といたしまして集落における話合いや共同作業等が復活するだけではなくて、新たな農業後継者の参加やオペレーターの確保、第三セクターによる農作業の請負が始まるなど、将来にわたる農業生産活動の継続に向けた動きが出ております。  また、耕作放棄地を集落の共同活動によって積極的に復旧し、これを新規就農者等に集約するような動きなど、地域の実態に即した質の高い取組が見られるところでございまして、全体としてはおおむね順調に進捗しているというふうに評価しております。  今後とも、この地域の特性を踏まえた創意工夫を助長し、意欲的な取組が広まるよう、その推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  159. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございます。よろしく推進方をお願いいたします。  ただ、そういう、で結構なんですけれども、私、この直接支払方式といいますか、これをちょっと眺めておりまして、いろんな新しい芽生えがあることは確かなんでしょうけれども、いわゆるこうやって生産費格差があるからそれを補てんするという、そういう思想というのはどうも受け身のような感じがするんですね。  まあそれはそれとしていいんでしょうけれども、もう一つ、この際、更にプラスの方向にもっと持っていけないかということで、これは私、何も私個人的な発想でないんですけれども、地元の中山間地なんかへ行くと、そうやって補償されて、それでは、それでいいんですけれども、新しい、これ農林水産業に限ったことでないんですけれども、新しい何かを企業なりなんなりにも芽生えさせると。そのときに、やっぱり何も元手がなくて、ただおまえはここでこういう新しいものを芽生えさせる努力せよというだけじゃなかなかそっちに行かない。やはりそういう人たちは生活しなきゃいかぬ。したがって、ある程度生活を、短期間でもいいんですけれども、生活をするその間の何か助成といいますか、そういうものを見てあげないと、なかなかこの中山間地の新しい芽生え、まあ私は根本的に山の、中山間地の方が好きですから将来はそっちの方に住んだ方がいいなと思うぐらいですので、そういうような社会、地域ができるようなふうな指導も必要なんじゃないかな。  端的に言えば、そういう新しいものをする人のためのポジティブな、前向きの中山間地対策といいますか、こういうことを、実はこれ先日、大島大臣、中山間地、十月の三日ですか、質問いたしましたとき、大変前向きなお話をいただきまして、本来、本当はこれ大臣に質問をしたい、しなければいけないと思うんですが、こういう物の考え方について、事務方として答えられる範囲で結構ですけれども、何か感想でも、局長、ありましたらお述べください。
  160. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 中山間地域の重要性については、先ほど来、岩本先生の方からお話のあったとおりでありますけれども、まずはやはり産業の振興という観点、農林水産業だけじゃないわけですけれども、それをきちっと図っていくため様々な支援というのが必要だろうというふうに考えておりますし、またそれに必要な基盤の整備、そういったものも必要かと思います。  また、新しい、農業に関連しても、ただ農産物を作るということだけではなくて、農業関連産業の振興あるいはグリーンツーリズムまでを含めて地域の振興を図っていくということが非常に重要だろうというふうに考えております。もちろん生活環境の整備は当然でありますが、そういったことを総合的に、これまでも進めておりますけれども、より積極的に進めていく必要があるという考えでおります。  そうした中で、特に最近、農村振興局の誕生から一年と九か月を経過して、特に他府省との連携ということをかなり重要視しながら、都市と農山漁村の共生・対流という観点から、農村にも都市から移り住んでいただく。これはこれまでも農業の新規参入という形では進めておりますけれども、それ以外のことも含めたいろんな条件の整備を、これは農林水産省だけでは進めていけませんけれども、その旗振り役を通じまして努力をしていくことが非常に重要だというふうに認識しております。これからも御指導をいただきながら取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  161. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  私もただ漠然と申し上げただけで、本来はもっと具体的な対応を出さなきゃいけないと思いますが、これはまた地元でいろんな声を聞きながら議論をさせていただきたいと思います。  次に、米問題なんですけれども、これも先日、大臣にも御質問いたしたんですが、いわゆる生産調整に関する研究会というものを作って、将来の米問題について検討しているというふうに伺っておりますけれども、先ほど言いましたように、私自身は、米問題というのは大きな変換点に来ている、今年こそ大変な時期だというような認識をしているわけですが、そんな中で、生産者サイドは、何か、例えば今度の減反は面積でなくて数量でやるようになるとか、あるいは全国一律の減反面積にするとか、あるいは主業的農家と副業的農家とを分類して、要するに補助の、何といいますか区別を付けるとか、そういう話を聞いて非常に不安な気持ちでいるわけなんですね。  ただ、私も今、米問題というのは大変だと思いますから、したがって、今この米問題というのはどういう問題なのかということを個別にしっかりと分析してといいますか、そういうものがしっかりできれば、それに対してじゃどうすればいいかという話ですから、それは役人、役所も生産者も、これはお互い納得ずくで検討できることだと思うんですね。したがって、その問題意識というのは何かというのがどうも私自身よく分からない。  先日質問したときに、需給ギャップが広くなり過ぎると。それだけの問題なら割と考えようによっては考えられないでもないんですが、私は、例えば、財務大臣おられますけれども、過剰米の処理費が大きくなり過ぎてもうもたないというようなことが原因なのか、あるいは食管法から食糧法だったですか、変わったときに計画流通と計画外流通を作って、あれが実際農家にしてみれば非常に不満の種にもなっている、計画外がどんどん伸びて、そういうような問題なのか、あるいは今、米価が下がり過ぎて、このまま見過ごしたら農家の所得がもうおかしくなるのか、これをどうにかしなきゃいけないというようなそういうような問題なのか、その辺、農林省、どうお考えになっているのか。食糧庁長官の方が大臣よりも具体的な面でお話しできるかと思って質問させていただくわけですが、いかがでしょうか。
  162. 石原葵

    政府参考人(石原葵君) お答え申し上げます。  ただいま先生の方からお話しございましたように、米をめぐる問題、非常に大きな問題がございます。ただいま先生の方からお話しございました食管会計の問題あるいは計画流通米云々の問題、そういうものも否定はできませんが、我々、それ以上に大きな問題として、ここで四点申し上げたいと思っております。  一つは、先ほどもちょっと触れられましたが、需要が大きく減少してきております。ピーク時、昭和三十七、八年当時、国民一人当たり年間百十八キロ食べていたわけでございますけれども、最近ではこれが約半分、六十五キロを割るというような状況でございます。このような需要が大きく減少する中で生産調整面積がどんどん拡大してまいりまして、今年も百一万ヘクタールというような大きな面積の生産調整をやっているということで、農家から、これ以上の生産調整は無理だと、いわゆる限界感、これが出ております。  それから二つ目には、これは先ほど先生が触れられたところでございますけれども、米価が大きく低落してきておりまして、農家収入が激減しているということでございます。  それから三つ目には、今の現場の状況、市町村、農協の対応を考えますと、市町村、農協の関係者は、皆さん生産調整、これをこなすことで手が一杯と、ほかの地域の農業振興をどのように進めていくか、この辺にまでなかなか手が回らないと、あるいは予算も回せないというような状況でございます。非常に市町村、それから農協が疲弊してしまっているというような状況がございます。  それからさらに、四番目といたしまして、他の作目に比べまして米の生産構造が非常に脆弱だということでございます。これは、先ほど言われました主業農家のウエートが非常に低いということでございますけれども、このような厳しい状況にあるということでございまして、我々、このような厳しい状況を打開するという観点から、今年一月から生産調整に関する研究会というのを設置いたしまして検討を進めてきているということでございます。
  163. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 今の言われた三番目というのは、結局これ、金が掛かり過ぎるということですね、米問題に。
  164. 石原葵

    政府参考人(石原葵君) 三番目で申し上げましたのは、市町村、それから農協の担当者が生産調整に掛かり切りになっていると。ある人の言によりますと、転作懇願係、正しく、転作をお願いしますと、そればっかりやっておられるということですね。その地域の農業振興、もっとその当該地域、麦なら麦、大豆なら大豆、それを振興するという、そちらの前向きな方向に目が向かないと、むしろ生産調整をこなしてくださいということで手が一杯だということでございます。
  165. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 労働配分がそちらに荷重が掛かっているということですね。  これは、こういうお話聞きましたんで、またこれは追って、地元へ帰っていろいろと検討させていただいて、どういうふうに認識しているか、また、それ、議論の場で言わせていただきたいと思っております。  それと、二分間ございますので、それともう一つですね、こういう検討、今いろんな原因究明、原因をお話しされました。それともう一つ日本の稲作というか水田農業ですね、これを守らなきゃいけないと外国に言っている一つの理屈、理由ですか、国内でもそうなんでしょうけれども、いわゆるそういう水田農業というのは、いわゆる多面的機能があると。何も稲作だけに限らない、環境問題にも役立つというようなことを主張されていると思うんです、今、農林省ね。そういうものと、今のこの米の生産調整に関する研究会との関係といいますか、この研究会では多面的機能というものについてはどんな視点で見ておりますか。
  166. 石原葵

    政府参考人(石原葵君) 研究会でも多面的機能の問題、議論されております。ただ、御案内のとおり、多面的機能は食料・農業・農村基本法、これに位置付けられた問題でございますので、むしろこれは、時間的な制約もございまして、これは大事だと、これは当然のこととして受け止めておられるということでございます。  具体的には、この多面的機能の問題につきましては、多面的機能の重要性など、地域の特性に応じ、将来の水田利用の在り方を検討した上で、畑地化等により米の需給ギャップの縮小を推進するという方向が打ち出されておりまして、この方向に沿って、あと残された時間限られておりますけれども、この研究会での議論が進んでいくものと見ているところでございます。
  167. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 いろいろ検討されて結構ですけれども、米問題だけに集中して、気が付いたらいわゆる多面的機能が見失われていたということにならないように是非お願いいたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  168. 又市征治

    又市征治君 社民党の又市です。  まず初めに、公務員制度についてお伺いをしたいと思います。  去る十一日の報道によりますと、勤務条件決定の権限のうち、給与と勤務時間だけを人事院に残して、能力評価と業績評価の基準と手続及び効率的な人員配置のための基準については内閣に移すというふうに報じられておるわけです。私は、これはまあ理不尽のそしりを免れないなと、こう申し上げざるを得ません。  そもそも、これら公務員の勤務条件に関する権限がなぜこれまで直接の雇用主である政府ではなくて中立的な第三者機関である人事院に置かれてきたのか。言うまでもなく、人事院の存在と機能は、公務員労働者から労働基本権を奪って、自らの労働条件を自らが交渉し、最終的には争議権によって確保するということを禁じてきた、このことの代償措置として置かれて機能してきたわけでありますが、これを全く無視した乱暴な方針じゃないか、こう言わざるを得ないからであります。  この点について、まず人事院総裁の見解を伺いたいと思います。
  169. 中島忠能

    政府参考人中島忠能君) お答えいたします。  御存じのように、公務員は労働基本権が制約されております。したがいまして、制約されておる状況の中で、制約が現状と同じであるにもかかわらず勤務条件の一部を使用者である政府というものが決定するということは、ごく通常の法律感覚からいうと理解できないということだと思います。  やはり、労働三権の制約が現状と同じであるならば、勤務条件を決定するシステムは現在と同じと。すなわち、法律で決める場合には、人事院が政府と労働団体の方から意見を聞いてその意見を国会内閣に申し上げる、それに基づいて法律が制定されると。そして、法律ですべて決めるわけにいきません。それを規則で決める場合には、政令ということになりますと、労働三権がない公務員に対する勤務条件が政府で一方的に決められるというのもまずかろうというので、現在、人事院規則で決めるようになっておると。そこはやはり尊重されなければ、バランスが制度として取れないということになろうかというふうに思います。
  170. 又市征治

    又市征治君 全くそのとおりだろうと思うんです。  そこで、行革事務局にお伺いいたしますが、いずれにしてもこの能力評価と業績評価の基準と手続などは明らかに勤務条件に関する事項ですから、労働組合との協議が当然必要だろうと思うんです。行革本部はこれらの事項について協議をいつからどのように行うのか、明確にお答えを願いたいと思うんです。これまで何度も会見をしているとほかの委員会でも聞きましたけれども、そうお答えになるかもしれませんけれども、少なくともこの能力評価と業績評価の基準と手続などについて協議が進んでいるとは聞いておりませんが、それを踏まえて明確にお答えをいただきたい。  また、あわせて、今回政府が行おうとしている法改正は、国際労働基準に照らして公務員労働者の労働基本権の回復を幾らかでも前進させた上で行おうとするものなのかどうか、この点も併せてお聞きをいたします。
  171. 春田謙

    政府参考人(春田謙君) お答えをいたします。  今、先生の方から十月の十一日の新聞の記事を基にお尋ねをいただいたところでございます。職員の処遇に係りますところの人事制度、現在私ども法律改正に向けていろいろと検討をしておるところでございまして、実はこの点につきましてはどういう形で人事制度の設定をしていくかということをまず議論することが必要だろうというふうに思っておりまして、そのためのまずたたき台というものを取りまとめまして、このたたき台を基に今お話がありましたような職員団体とも誠実に交渉、協議していきたいというふうに思っております。  実は、今日御質問いただいてあれなんですが、私どもも今鋭意そのたたき台の取りまとめを行っているところでございまして、もうできましたら、早ければ今日の例えば夕方とか、そういうようなところでもたたき台について職員団体の皆さんにも議論を始めるというぐらいの取組で進めてまいりたいというふうに思っております。  それから、ILOの関係でございます。  ILOの関係につきましては、労働組合の方から公務員制度改革につきましてILOに提訴がなされているということは承知をしているところでございます。私ども、公務員制度の昨年の末の閣議決定の中でも、労働基本権につきまして、これを制約するということにつきまして昨年の閣議決定で決めさせていただいたところでございますが、方向を決めさせていただいたところでございますが、今後とも、これに代わる相応の措置確保しながら、現行の制約を維持するということでまとめられたところでございます。  私ども、労働基本権の問題に関しましては、それぞれ各国の歴史的あるいは社会的背景を踏まえて決定されるべき問題であるということで、その対応につきましても先進諸国においても一様ではないという状況になってございます。  政府といたしましては、今後、法制化を進めていくに当たりましては、職員団体とも十分議論をしていくことが必要であるというふうに考えております。
  172. 又市征治

    又市征治君 今も出ましたけれども、連合官公部門連絡会あるいは他の国際労働団体もがILOに提訴をしておるという状況にあります。それは、国際的に見てこのような労働基本権の乱暴なじゅうりんが例がないからということだろうと思うんです。使用者側の違法行為に対して、法を遵守をしてそれを確保するように執行すべき立場にある政府が、事もあろうに国際労働基準にもとる違法行為を行おうということは許されないことでありまして、これは強く抗議を申し上げると同時に、誠意を持って対応するよう強く求めておきたいと思います。  次に、公務員給与の取扱いについてお伺いをしたいと思いますが、八月八日の人事院勧告、そして九月二十七日に閣議決定されておるわけですが、これは様々問題点があるように思います。今日は一点だけ、給与のマイナス改定を十二月の一時金で行う点について伺いたいと思います。  言うまでもなく、人事院勧告は、地方公務員を含めて四百三十四万人と言われる公務員にとどまらずに、多くの公共サービス部門や人勧に準拠して給与が決まっている中小、未組織の労働者、あるいは連動する政府の社会的給付に頼る多くの国民の生活をも直撃するということになります。したがって、このマイナス改定の不利益を四月にさかのぼらせるという今回の方針は、一つは労働法規の観点から見ても違法性が強いんではないか、二つ目に現下の経済情勢を無視したデフレ政策ということにも、そういうそしりも受けるんではないのか、こういうことがあるわけですが。  そこで、片山大臣にお伺いをいたしますけれども、まず一つは、この措置について組合側と協議、合意ができたのかどうか、これが一つであります。二つ目に、総務大臣自身もこの措置については苦慮されているようでありますが、給与の不利益不遡及の原則への抵触について、法的正当性、この問題をどうするのか。人事院や法制局との間でも協議をして明確な回答を示すとされてきたようでありますけれども、人事院含めて、三者の統一見解はできたのかどうか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  173. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 組合とは二回お会いしまして、現状での人事院や内閣法制局とのいろいろ相談しておる結果をお話し申し上げて御理解を求めました。結構ですという御返事じゃございませんが、承りますという返事でございました。  それで委員、こういうことなんですね。人事院勧告は何でやるかというと、あれ、官民均衡といいますか民間準拠ですよね、勤務条件、基本的な考え方は。そこで、民間を調べて給与をやりましたら今年は二・〇三%下げろと、こういうことだった。それは年間を通じてバランスを取るんですよ。だから、今まで払ったものを返せといって言っているんじゃなくて、これから払う十二月の期末手当で年間分の調整をやるということでございますから、これについては、人事院もこれは十分そういう解釈というんでしょうかね、法律上の解釈は成り立つし、内閣法制局も同じだと、こう言っていますからね、私どもの方も大体同じだと。  こういうことでございますんで、そこは是非御理解を賜りたい。差し上げたものを取り上げるんじゃないですよ。年間を通してバランスを取るんで、これから払う十二月の期末手当で調整しますと。それは、差っ引かれる方は面白くないですけれども、これは年間でバランス取るんだから、そこのところはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  174. 又市征治

    又市征治君 ここに、九月十七日だと思うんですが、総務省の見解の写しがございまして、その引下げに関する部分の前段では、「既に適法に支給された給与を遡って不利益に変更することは、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重であるべきものと考える。」と、こう記されているわけですね。当然だろうと思うんです。本給の引下げ分を期末手当で減額調整するというのは明らかにすり替えだと。これはちょっと筋が通らないと思うんですね。  期末手当は期末手当で今年の本給とは関係なしに昨年の民間の一時金の実績に準拠して決めるというのがこれまでのルールだったわけですが、これを変更されるというのかどうか。ここのところの説明を求めたいと思います。
  175. 久山慎一

    政府参考人(久山慎一君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、既に適法に支給されました給与をさかのぼって不利益に変更することは、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重であるべきものと考えておるところでございます。  今回の措置はこの考え方を踏まえつつ、従来どおり官民の年間給与の均衡を図るとの観点から、法施行日以降に支給される期末手当の額により調整を行うこととしたものでございまして、既に適法に支給された給与をさかのぼって不利益に変更するものではございません。  また、本年の給与の官民の逆格差につきまして、官民の年間給与の均衡を図るとの観点から、期末手当の額により調整を行うことは、国家公務員法に定める情勢適応の原則に照らしまして十分合理性があるものと考えておるところでございます。  この措置は、期末手当の生活補給金的な性格、調整措置を早期に終了させることができることなどを勘案すると最も適当な手段であり、これをもって期末手当の一時金としての性格を何ら変更するものではないと考えているところでございます。
  176. 又市征治

    又市征治君 大変論争のあるところですが、都合のいいところだけ情勢適応の原則を出されてもこれは困るんですが、これが一体民間にも波及したらどうなるか。企業経営者が九月決算やってみたら大変悪かった、四月にさかのぼって賃下げする、政府だってやっているんだからと、こう言い出したら一体どうするのか。際限ない無権利の悪循環ということになりかねない。労働者に対して使用者が不利益を遡及させてはならぬというのが法の立場なんだろうと思うんです。  このようなあしき前例を政府は作るべきではない。一月分からこれはもう減額をしていくというなら分かるけれども、こういうやり方というのは大変問題がある、こう言わざるを得ないので、今日のところはこの点だけ御指摘申し上げて終わらせていただきます。  続いて国土交通大臣にお伺いをしてまいりますが、新聞には国土交通省が福祉輸送の規制緩和へ踏み出すことが報じられておりますね。タクシー会社が運行する正規の福祉タクシーは今千二百業者で約二千三百四十台ある。十年前に比べると三倍近くに増えたものの、まだ供給不足だというふうに言われているそうであります。  そこで、交通空白地では民間非営利団体、ボランティアの移送サービスが障害者や高齢者にとって重要な役割を果たしているそうでありまして、これはそういう意味では意味がよく分かります。しかし、一面で欠かせないのは安全面の担保、このことも大事です。これをどのように確保していくかということだろうと思うんです。  緩和しようとしている自家用車、つまり白ナンバーになりますけれども、有償旅客運送は明らかにタクシー類似行為ということになるんだろうと思うんです。一方で、タクシーが規制緩和されて過酷な増車や低運賃競争に突入している中ですから、例えばボランティアでも、お客の命を預かる事業、これは青ナンバーですが、その自覚を持って事故のときの補償額も無制限として安全輸送に努めるべきではないか、こう思います。  国土交通省は十一月末まで実験中で、年度末にもガイドラインを出されるというふうにお聞きしていますが、どういう検討を行っておられるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  177. 丸山博

    政府参考人(丸山博君) ただいま福祉輸送の拡大についてお尋ねがございました。  先生御指摘のとおり、高齢者でございますとか身体障害者などの福祉行政につきましては、民間事業者が行っております福祉タクシーというようなものから、あるいは地方公共団体が行っております福祉行政の一環として併せて輸送も提供するという公的な輸送サービスまで幅広い取組が行われております。そこの中でボランティアもその担い手として含まれているというものと私どもは認識しております。  一方、先生からただいま御指摘ございましたように、一般に、福祉輸送を含めまして他人の需要に応じまして有償で自動車を利用して旅客を運送する場合につきましては、当然のことながら一般自動車運送事業の許可を取得するということが必要になります。その際、輸送の安全確保等の要件が付されているというのは当然のことでございます。  したがいまして、このような意味で、ボランティアと称しまして、先生からも御指摘ございましたが、営業類似行為を行うということにつきましては認めることができないというのが私どもの立場でございます。ただ、ボランティア精神に基づきまして適正に行われるサービスにつきましては、今後ともその役割を果たしていくべきだというふうに考えております。  このような観点から、現在、札幌でスペシャル・トランスポート・サービスの実証実験を行っております。私どもとしましては、実証実験の結果を踏まえまして、先生御指摘の旅客の安全の確保ということと利用者利便の保護ということ、二つ図っていくということを基本にしながら、今後、法的にどう取り扱っていくべきかということを検討してまいりたいというふうに思っております。
  178. 又市征治

    又市征治君 事故の問題について警察庁と国土交通省自動局長にお聞きしたいと思ったんですが、時間の関係でちょっとこれは省略をせざるを得ないわけですが、これはまた後ほど資料をいただくことにして、かなりこの関係の事故の状況あるいは白タク行為の取締り状況、さらに事故が起きた場合のこの福祉サービスの関係の補償問題、かなり実態がどうも不明のようでありますね。補償もタクシーに比べるとかなり不十分だということは容易に想像が付くわけでありますが、その関連で、どうも今、構造改革特区の問題も言われておりまして、こうした運送事業の関係の道路運送法にかかわる特区の問題も言われているわけですが、特にその中でやはり利便性だけでなくて安全のための制度と公的責任、このことは今ほどもお答えがありましたけれども、これが非常に大事だろうと思うんです。  そこで、大臣にお伺いをしてまいりますが、今もお話がございましたが、何でも実験中というだけでなくて現段階でも経験則で分かることがたくさんあるんだろうと思うんです。そういう点で、それらのことはしっかりと条件を付けておくべきではないか、こう思うわけでありまして、この介護輸送にかかわる車はやっぱり特定車両として扱っていくべきでないか、こんなふうに私は思います。  そこで、もう少し具体的に申し上げますと、一つはこの車に事業用としての青ナンバーを交付すべきでないか、二つ目に運行管理者を配置をするということが必要ではないのか、三つ目に二種免許を保有する運転者を選任する必要がある、四つ目にタクシーと同等の十分な保険をやっぱり義務付ける、こうした四つぐらいのことが必要ではないかというふうに私は考えるわけですが、そうした専門家の皆さんなどの意見も聞きながらこんなふうに思いますけれども、こうした方向で検討される考えはございませんかどうか、お聞きをしたいと思います。
  179. 扇千景

    国務大臣(扇千景君) 今伺っておりましても、我々、次は自分がその身になるという大変厳しい状況といいますか、現在、日本の高齢者状況、しかも今年の発表で少なくとも百歳以上の皆さん方が少なくとも一万七千九百三十四人ですか、もう二万人近くなるという、百歳以上が。特に女が多くて申し訳ないんですけれども、それくらい我々は高齢社会を迎えますので、今おっしゃったような専門家のタクシー、バス、それだけでは支え切れないと。少なくともバスとかタクシーというのは旅客輸送の安全を確保して、あるいは不当な料金を取っちゃいけないとか、あるいは安全を確保しなさいよという、その規制の中で限られておりますけれども、これだけ多くの老人が老人社会になりますと、それだけでは福祉の面で運送が足りないというのは現実でございます。  ですから、今おっしゃったような皆さん方が、NPOの皆さんがボランティアで、しかも利便性を考えてやってくだすっているということに対しては、我々は本当に有り難いなと思って頭の下がる思いをいたしますけれども、はてさて、じゃそこで、安全性はどうなのか、料金はどうなのかという現実がやってまいりますので、今おっしゃったような、青ナンバーでありますとかいろんなことをおっしゃいますけれども、少なくとも私は、ボランティアの、ボランティアたる精神を持った皆さん方が、いざ何かあったときに逆にそれが逆効果になって不利益になる、ボランティアの皆さん方に負担が掛かるというようなことになっては申し訳ないということで、今現実的に、先ほども局長が言いましたように、実証をしながらどうあるべきかということを今いたしておりますので、今後、安全の確保あるいは利用者の料金の問題、そして営業者とボランティアの皆さん方のNPOのバランスの問題、あらゆる面で我々は高齢社会にふさわしい新たな輸送サービスの形態というものをこの参考資料をもって検討していきたいと、そう思っておりますので、今は実験過程であるということを御理解賜り、是非御協力賜りたいと思います。
  180. 又市征治

    又市征治君 構造改革特区、これが叫ばれておりますけれども、これを隠れみのにこれまで積み重ねてきた運輸政策審議会の論議が吹き飛んだんじゃ何の意味もないわけでありまして、やはり上から押し付けるんではなくて、関係者の論議の場を保障すべきだろうと思います。  とりわけ安全面の確保とそして事業を営む者の社会的責任確保、こんな点を十分懸案いただいて対策を取っていただくようにお願いをして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  181. 中原爽

    委員長中原爽君) 他に御発言もないようですから、本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時五十七分散会