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政府参考人(中村秀一君) 特別養護老人ホームの経営に株式会社を参入させることについての御質問でございます。若干、経過なり論議を整理して御
説明申し上げたいと思います。
まず、特別養護老人ホームでございますけれ
ども、先生おっしゃいますように、社会福祉
事業として位置付けられております。第一種社会福祉
事業というふうにされております。この第一種社会福祉
事業というのは、社会福祉法、これは社会福祉
事業法を基礎
構造改革で変えていただいたものでございますが、社会福祉法においては、自治体、社会福祉法人以外の設置主体が
事業を行う場合には社会福祉法においては都道府県知事の認可を受ければ認められると、こういうふうになっております。これが一般原則でございます。ですから、株式会社であっても、社会福祉法だけの世界でありますと都道府県知事が認可をした場合には株式会社が特別養護老人ホームができると、こういう法制になっております。ただし、昭和三十八年に制定されました老人福祉法におきまして、特別養護老人ホームにつきましては設置主体を地方自治体及び社会福祉法人に限定していると、これが現在の
日本の法制でございます。
先生御指摘のとおり、この老人福祉法によります設置主体を地方公共
団体以外は社会福祉法人に限定すると、こういう
規制につきましては、
規制改革論議の中で、福祉
構造改革法の
議論のみならず、十年以上も広く特別養護老人ホームにも株式会社を
運営主体として認めるべきだということで
議論が続いてきたところでございます。強く、
経済界の方あるいは
規制改革を主張される
経済学者を中心として株式会社を特別養護老人ホームの経営に参画させるべきだという主張がなされてまいりました。
これに対しまして、私
ども旧厚生省の時代から、何点か理由を申し上げまして株式会社の特別養護老人ホームの設置についてはお断りをしてきたところでございます。
一つは、特別養護老人ホームは、設置するときに社会福祉施設
整備費ということで四分の三、国庫なり地方公共
団体の補助が行われているということでございますが、株式会社につきましては御承知のとおり憲法上の制約がございまして、
整備費を交付できないという事情がございます。
それから、他方、老人福祉法の方でも、既に現行の老人福祉法でも株式会社が有料老人ホームの方には
規制なく設置できると。有料老人ホームには介護型の有料老人ホームがございまして、実質特別養護老人ホームと同じような方をケアしているところがございます。介護保険法ができましてからは、この有料老人ホームに対しまして基準を満たしているのであれば介護に関しましては介護報酬を受け取ることができると、こういう道も開かれているということ。
それから三点目として、今後の高齢者対策として、これからの高齢者ニーズというのは居住性の高い有料老人ホームやケアハウス等々、そのほか様々な居住性の高い施設のサービスのニーズが高まっていると、こういうことがございますので、私
どもとしては、国庫補助とは別途資金調達が可能な株式会社でありますので、特別養護老人ホームそのものに参入していただくよりも、頑張っていただくんであれば有料老人ホームとかその他ほかに求められる
分野があるんではないかと、こういうことを強く申し上げまして、参入について反対というか、別の
分野があると、そちらの道が開かれているので、そちらの方が株式会社に適当ではないか、株式会社は社会福祉法で全く排除されているわけではないけれ
ども、より適切な
分野があるんではないかと、こういうことで申し上げてきたところでございます。
しかしながら、今回、そういう枠組みの中で住民の健康、福祉を預かります地方公共
団体からも、強く株式会社、社会福祉法人に限らず多様な設置主体、株式会社、
民間活力を使って介護をしたいという御
提案があり、又はできる限り今回の
特区構想におきましてこういう御要望に対してこたえるべしということが
政府の
基本方針であるというようなこと、求められています
状況でありますことから、私
どもといたしましては、
特区に限りまして、
担当大臣の方からも
お話がありましたように、
パイロットケースという御
説明も受けておりますので、試行的に株式会社が行うことについて検討することといたしたわけでございます。
我々が検討いたしましたときに
考えました諸点を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、有料老人ホームについては株式会社の参入を認めているということ。同じ社会福祉
事業、第一種社会福祉
事業でありますケアハウスについても株式会社の参入を認めていること。それから介護保険の世界では在宅介護においては主体制限を行っておらず、ホームヘルプ
事業ですとかそういったものにつきましては株式会社の参入は自由であるということ。それから介護施設につきましては、現在、市町村で第二期の介護
事業計画の策定を
お願いしておりますが、高齢化に伴いまして三年間で施設についても一〇%ほど増やさなければならないというように、高齢化に伴いまして更に
整備が必要であること。また介護保険におきましては、介護を受ける場合に要介護
認定が必要であります。そういった手続が必要であり、また介護報酬につきましては、御案内のとおり定額払いであるということで、提供者側の裁量による誘発需要というのは他の
分野に比べまして、類似の
分野に比べまして生じにくいと、こういった諸点を考慮いたしまして、株式会社の参入について必要な条件を付して認めることとしたものでございます、
特区に限りまして。
必要な条件といいますのは、言うまでもなく、特別養護老人ホーム、長
期間安定したサービスを提供することが必要でございます。そのためには経営の安定性を
確保する必要がある。株式会社で他の
分野でビジネスをされていて、そこが調子が悪くなって特別養護老人ホームの経営から撤退するというようなことが起こることは非常に困るわけでございまして、私
ども株式会社の参入について懸念しておりました理由の
一つはそういうところでございますので、
特区においては地方公共
団体、地方公共
団体がやってほしいと、こういうことでございますので、十分関与できる公設民営方式、及びPFI方式という条件を付けまして認めることとしたと、こういう経過でございます。