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国務大臣(
平沼赳夫君) それでは、まとめて私から御
答弁をさせていただきます。
各国の
特許制度は、現在、出願の方式や
特許を付与する要件等が各国ごとに異なっておりまして、
世界各国で
特許を
取得するためには各国ごとに異なる対応が求められております。
今御
指摘のように、
経済がグローバル化が一層進展している今日、国境を越えて事業
活動を行う
企業等は複数国で
特許を
取得することが必要であることから、その負担というのは大幅に増加しているわけであります。
特許取得の手続を簡便にして知財
関連コストを削減するためにも、
特許制度がグローバルなものになることが期待されておりまして、このために、そういう
ニーズにこたえるべく、各国の
制度と運用の調和を図るべく、現在、
世界知的所有権
機関、WIPOにおきまして
制度面の調和と運用の調和に向けた検討が進められておりまして、その中では、まず単一の手続により、複数国で審査を受けられる
制度である
特許協力条約については、その一層の簡素化、合理化に向けた
制度の見直しを既に検討いたしております。
また、各国における
特許を付与する要件の調和を目指し、実体
特許法調和条約の策定に向けての作業も進められているわけでありまして、私
どもはここに積極的に参加をしておりまして、御
指摘の各国
制度の運用と調和に向けてやっぱり努力をしていかなければならない、このように思っております。
また、梶山官房長官のお話がございました。
特許は
技術開発等の知的
創造活動の結晶でございまして、
我が国中小
企業の
技術力向上や新規
産業の
創出を通じて、
我が国経済産業の発展を図る上でその積極的な利用を図ることは当然不可欠であります。特に、知恵を出して
特許を
取得した人とこれを利用しようとする人を効果的に結び付けて、すなわち
特許の流通市場の
整備が重要な
課題である、このことは我々も非常に重大性を
認識しております。
このために
特許庁では、
平成九年度から、
特許流通市場の
整備を図る観点から、
特許流通促進事業を
実施をしているところでございます。
具体的には、
特許の提供、導入の仲介を行う
特許流通アド
バイザーを派遣をいたしました。これは、昨年実績では九十九名でございます。また、他者に開放する意思がある
特許、開放
特許に関する情報をインターネットを通じて提供する
特許流通データベースの
整備をいたしまして、
平成十三年度の実績では約四万四千件、一日当たりのアクセスは約四千件に上っております。また、
特許の提供者と導入者の出会いの場を提供する
特許流通フェアの開催をいたしておりまして、これは
平成十三年度の実績で全国で十二都市で開催をしております。また、
知的財産権の取引を担う
人材の
育成を行う研修事業を
実施をしておりまして、これは実績として、基礎研修修了者数は
平成十三年度五百二十一名、実務研修修了者数は百二十一名やっております。また、国際
特許流通セミナーも開催をしております。
こうした事業を通じまして、過去五年間に千四百二十件の
特許の流通が行われており、利用者の皆様から高い
評価をいただいております。
また、本年一月に開催いたしました国際
特許流通セミナーには内外から延べ約三千名の参加者を得まして、各国の
特許流通への
取組に対する活発な意見交換が行われました。引き続き、
特許流通促進事業の
実施を通じて、やはり
特許流通市場の確立と、こういうものに努めていかなければならないと思っております。
それから、
ベンチャー、中小
企業の件でございますけれ
ども、
ベンチャー、中小
企業が資金調達を円滑化するためには、
ベンチャーキャピタルやエンゼルからの出資による資金供給に加えまして、
特許が生み出す将来の収益に着目した融資等を積極的に
活用していくことが重要であると
考えております。
我が省といたしましても、
平成七年度より
特許権等の
知的財産権を担保する融資
制度を
日本政策投資銀行に設けておりまして、これまで百八十八件、百六億円の実績があります。また、
経済産業省の
産業競争力と
知的財産を
考える
研究会において、資金調達手段として
特許権の証券化を取り上げまして、その
制度的
課題やフィージビリティー等について検討を進めております。
今後、
我が国の
ベンチャー、中小
企業を大きく育てるために、こうした
知的財産担保融資の定着でございますとか証券化のスキーム、こういったことについて積極的に検討しなければならないと思っております。
それから、第三者
機関でチェックする仕組み、このお尋ねでございますけれ
ども、審査など
特許法の運用に当たっては、公正中立を旨とし、適正な手続を行うことは御
指摘のとおりだと思っております。その実践に我々としては努めているところでございます。また、審査の結果に不服がある場合には、準
司法手続である審判請求や第三者による
特許異議の申立て、更には
裁判所での審決取消し訴訟によりまして、審査、審判の決定を再審理するといった
制度が設けられておりまして、改めて私
どもは第三者
機関を設ける必要はないと、このように思っております。
また、工業所有権
行政全般の遂行に当たっては、利用者の声の反映を図るとともに、
民間企業における経営の在り方も
参考とするため、外部有識者から今広く意見を求めているところでございます。
また、新しい
技術が出現した場合の対応、その審査基準、そのお尋ねでございますけれ
ども、例えば近年、
情報通信分野や
ライフサイエンス分野において
研究開発が急速に進んでおりまして、
特許庁では、これらの
分野における
特許の
保護対象を明確化するとともに、安定した審判判断に資するように、審判基準の
整備、公表や、審判体制の
整備を進めてまいっているところでございます。
具体的には、
情報通信分野では、
ビジネス方法関連発明の関心の高まりやデジタル情報の流通形態の変化を
背景として、コンピューターソフトウエア
関連発明に関する審査基準を
平成十二年十二月に改定するとともに、
ビジネス方法関連発明を一元的に審査するために、
平成十三年四月より電子商取引審査室を設置をいたしました。また、新たな
ライフサイエンス分野につきましては、
平成十一年十月に遺伝子の断片、全長遺伝子等の発明の審査事例集を、また
平成十二年六月にはたんぱく質を用いた医薬
開発方法の発明について審査事例集を既に公表しておりまして、更に現在注目されているポストゲノム
研究の
成果の適切な
保護のために、今後、審査事例集の作成を予定しております。
このように、
特許庁は、従来から新
技術に対応した審査基準及び審査体制の
整備を行ってきておりまして、今後ともやはり新
技術への迅速な対応を図っていかなければならないと思っております。
また、
特許侵害訴訟から
知的財産権訴訟に拡充すべきではないかと、こういうことでございますけれ
ども、今次の
改正によりまして、
弁理士が訴訟代理人として関与できるのは
特許権等の侵害訴訟、すなわち
特許、実用新案、意匠、商標、若しくは回路配置に関する権利の侵害、又は特定不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟でございまして、
知的財産権の
一つである著作権は御承知のように含まれておりません。
これは、
弁理士が工業所有権の
専門家であることと、著作権に関する業務が二年前の法
改正の際に、ライセンス契約など紛争性のない契約に限り代理が認められていることを理由としております。仮に、著作権に関する侵害訴訟の代理権を付与することとした場合、著作権についても、工業所有権同様に試験
制度を整えるなど、
弁理士資格の
取得のハードルを高めることになりまして、
弁理士人口拡大の障害ともなりかねないわけであります。
したがって、訴訟代理権の範囲の、著作権を含む
知的財産権に関する訴訟に拡充するに当たっては、
弁理士人口の今後の増加でございますとか、
弁理士の著作権契約の関与を通じた
経験、能力の向上に加えて、著作権に係る紛争への
弁理士の関与についてのユーザーの
ニーズ等に考慮しつつ、検討しなければならないと思っております。
最後の、
日本弁理士会の研修の拡充、法的
整備などについてでございますけれ
ども、
弁理士の資質の向上というのは基本的には自己研さん努力によることが原則だと思っています。これを支援するために、
日本弁理士会が会員である
弁理士に対して
著作権法や不正競争防止法に係る義務研修やテーマ別の会員研修を
実施する等、積極的な努力を行っているところであります。
また、
特許庁といたしましても、
平成十三年度から既に附属
機関である工業所有権研修所において、従来は
特許庁職員を対象に
実施しておりました
先端技術研修や審判研修等を
弁理士の皆様方にも積極的に開放いたしまして、資質向上の支援を行っているところでございます。
今後とも、
弁理士の資質向上につきましては、
弁理士会と
連携を取りつつ、積極的に私
どもは対応してまいらなければならないと思っております。
以上でございます。