○鈴木寛君 どうもありがとうございました。
私は、この
児童虐待防止という大変重要な
施策を進めていく上で大事なことは、やっぱり国民各位、各層、各界の意識の向上というのは大変重要なんじゃないかというふうに思いました、思っております。先ほど岩田
局長も、しつけと
虐待は違うんだということが理解されたと、それも一つだと思いますけれども、私はやっぱりこの問題は、
児童虐待というのは
子どもの権利に対する重大な侵害なんであるということを、国民全体がその意識を共有することが非常に重要だと思いますし、そのことがまず第一歩ではないかというふうに思っております。
子どもの権利の重要性について規定した国際条約に
子どもの権利条約という条約がございます。私は、この条約、大変重要な条約で、国際人権規約と相互補完的に正に人権の国際的保障の中核を成すものだというふうに思っておりますけれども、
児童虐待の
防止の原点である本条約について少し議論をさせていただきたいと思います。
この条約でございますが、人類は、
子どもに対して最善のものを与える義務を負っているという名文句で有名な一九五九年の国連における
子どもの権利宣言がこの下敷きにあるわけでありまして、その権利宣言の原則九で、
子どもはあらゆる形態の放任、
虐待及び搾取から
保護をされなければならないというふうになっておりまして、それが一九八九年、ちょうどこの宣言から三十年たって、一九八九年の第四十四回の国連総会で条約としてこの成立を見たというふうに私は理解をいたしております。
この条約制定とともに、ユニセフなんかは静かな緊急事態というふうにも呼んでおりまして、正にユニセフのグラント事務
局長が、この条約は世界じゅうの人々が何よりも
子どもを最優先するんだという、そういう原則をみんなが重視をしていく、そういう世界的な決意の表れであると、各国はこの条約に照らして、それぞれの社会の在り方をもう一回ちゃんとチェックをし、評価をし、そして条約を守るということがそれぞれの国の重要な関心事項であり、かつそれを守ることがその国の誇りであると、そういうふうにしていかなければならないということを訴えておられまして、私も全くそのとおりだなと思います。この条約でも、十九条、三十四条を始めとして
子ども虐待について明記がされております。
我が国は、若干後ればせでございますが、一九九四年に世界で百五十八番目にこの条約を批准しております。
こうした条約を受けて、日本でもこうした意識を草の根で一生懸命普及をしていこうと頑張っておられる方々が大勢いらっしゃいます。例えば、
子どもの権利条約ネットワークというNPOがございますが、そのためのシンポジウムを本当に長年地道に続けておられますし、また私の地元でもございます東京・生活者ネットワークという団体では、東京都が三十三の市や区に対して、
子どもの権利条約の精神を反映した条例というものをそれぞれの市や区で作っていこうという運動を熱心に展開をされていらっしゃるわけでございます。
しかし、そうした
実態をお
伺いをいたしますと、そうした条約の
趣旨に賛同して、そしてそれを十分理解して条例を制定している市というのは、
全国で見ても川崎市とかあるいは兵庫県の川西とかあるいは北海道の奈井江町など非常に数少ない、一けた、片手ぐらいしかそういう条例化に至っている
市区町村はないというふうに聞いております。川崎なんかは、この
子どもの権利条約の精神を生かして、そうした
虐待防止をも含む条例の制定というものがされたというふうに伺っておりますし、それによって、
虐待というものは事後的な
対応だけではなくて世の中全体をきちっと変えていくんだと、そういうふうな雰囲気といいますか、理解というものが市役所の中にも広まったし、市役所のいろいろな関連の団体、組織に、あるいはその
関係者に非常に広まって、自治体を挙げた、あるいは
地域も含んだ
取組というものが行われているというふうに伺っております。
それで、私が御質問を申し上げたいのは、この
子どもの権利条約でございますが、条約批准の折に国内法、要するに国レベルの法律の整備は必要なしということで国内法の手当てというのは今のところなされていないわけでございますが、例えば先ほど申し上げましたように、私は三千三百の
市町村でそうした条例化の動きが最終的には目途、目標としては行われていく、それを通じて国民全体が
子どもの権利というものが本当に重要なんだということを理解をしていく、その上で非常に重要なことだと思いますが、そういうことをやっていくためにも、国レベルできちっとこの
子どもの権利条約を見据えた法制化、例えばそうした
子どもの権利に対する基本法みたいなですね、というものの法制化というものをしてはいかがかという意見を私自身は持っております。
この質問をあしたさせてくださいと昨日いろいろ御相談申し上げたんですが、どこの担当なのかというのが分からないというお返事を受けまして、もしもお答えいただけるところがあればお答えいただきたいのでありますが、私は別に、であれば、この
調査会で正に国会がイニシアチブを取ってそうした国内法制化、基本法でありますから、そういったメッセージを出すということも含めて検討をしていったらいいのではないかなということは個人的に思っておりますが、もちろん法制化についてのお答えをいただけるならそれは大変有り難いですが、それが難しいのであれば、そうした、今私がるる申し上げました、
子どもの権利というものが非常に重要なんだと、その国民的理解を深めていくということの
観点に立って、各省庁どういった
施策をされているのかという
現状の
取組と、そのことについての各省庁の問題意識をお聞かせをいただきたいと。
そのことで、取りあえず今日のところはよしということにしたいと思います。それはあとは、
会長に後の議論を盛り上げていくところは
お願いをするということにしたいと。