○
参考人(
山路敬三君) 私は、
日本経営者団体環境安全特別
委員会の
委員長と、元
日本経営者団体ですね、今となりますと、
委員長ということで発言をさせていただきます。
もう
一つ、私は国際連合大学で一九九四年にゼロエミッションというコンセプトを打ち出しました。これはエミッション、つまり液体であろうと固体であろうと
ガスであろうと廃棄物、排出物、これを限りなくゼロに近づけようという考え方であり、そのやり方でございますが、これを、ゼロエミッション運動を
推進しようということで、国連大学をベースにしましてゼロエミッションフォーラムというのを作りました。これは、
産業界のトップマネジメントの方々と、それから全国のアカデミアの、学会の
先生方と、それからもう
一つは地方自治体の方と、この三者がネットワークを組んで一緒になって解決すると。この三者が一緒になってやればあらゆる環境問題が片付くだろうという考え方から発足して、今、会長を務めているわけでございます。
私は、まず申し上げたいことは、
我が国企業が本当に真剣に環境問題に取り組んでいるということでございます。環境問題の第一歩は環境ISO、つまりISOの14001番、これを取得することでございますけれども、この取得数は、環境白書によりますと、既に八千何百件となって、この数は
世界の国の中で第一位でございます。こういうようなインフラが
企業の間にできつつあるということと、それが中小
企業にまで及んできたということが特記すべきだと思います。
私どもは、この環境ISOを更に
普及しようということと、それからもう
一つはゼロエミッションを
普及しようということで、環境ISO
プラスゼロエミッションの全国の講演会をいたしました。これは貿易振興会さん、貿易振興会さんというと、ただトレードをしているプロモーターかと思いましたら、トレードをする場合に必ず今はグリーン購買ということが話題になると。要するに、何か売り込もうとすると、相手の方は、おたくは環境ISOを取っていますか、あるいは環境にいいこと何やっておりますかと必ず聞いてくるということで、貿易振興会さんがやはり主催してくださいまして、それに
日本能率協会が一緒になって、我々と一緒に全国十一か所で講演会をいたしました。お
手元にその講演会の資料としてこのマニュアルということをお配りしてございます。
これは後でごらんいただきたいと思いますが、この一番後ろにこういう長い表がございます。この表の環境経営の進み方というのは左上から右下に向かって進むということを私どもは主張しております。上の方をごらんいただきますと、環境経営は、初期
段階から始まって工場・事業所
段階、全社
段階、発展
段階、統合
段階と進んでまいります。それから、左の方を見ていただきますと、環境対応としては、
規制があるから対応するという強制的対応から自発的対応に移ってまいります。そして、
企業内で対応することと社会に向かって自発的に対応すると、このような方向で進んでまいります。
ここでたくさん升目を作りますと、二十八の升目ができるわけなんですが、それぞれのところにそれぞれのポジションでやるべきことというものを書いてございまして、それについてお話をして、環境経営の進展、決して難しくないんだと、この順序でやってくださいよということを実例をもってお話しして回ったわけでございますが、その回ったときの印象を私は実は申し上げたいわけでございますが、
企業の方はどの
企業の社長さんも環境というものを無視してこれからの
企業はもう生きていけないんだと、そういう気持ちをはっきりと吐露してくださいます。それから、環境技術によって新しい製品づくりをして、自分のところの商品を差別化して経済的
効果を上げようと、そういうような
プラスに環境活動を取っておられるというところがほとんどでございます。
そういうようなことで、
産業界の各
企業さんの取組が大変真剣になったということをまず頭にお入れいただきたいと思います。
それで、その次の
温暖化対策への
提案というところに入るわけでございますが、
温暖化対策は、先ほどからお話しされておりますように、温暖化の悪
影響、海面上昇とか平均気温の上昇というようなこと、あるいは異常気象、これはもう既に途上国などで被害を受けているところもありますし、
対策を急ぐ必要があると思います。
しかし、私は、これは相当息の長い長期戦になるというように考えております。その理由の
一つは、温暖化
ガスが平均濃度が安定をいたしましても、それから数百年の間は海面上昇とか温暖化の現象が続くんだということと、もう
一つは、創意工夫によって省エネをするというようなことは、これは比較的早くできますけれども、一番基本的なものは、根本的な技術
開発に基づく省エネ、新エネの
導入と、これはやはり時間が掛かります。
しかし、
産業界における特に技術屋さんの意気は大変燃えております。我々の技術
開発によって地球の温暖化を救うんだと、
日本は地球の、
世界の工場として
世界じゅうに商品を出してきたと、そういった我々としてその商品を更にエコプロダクトに変えていく、グリーン商品に変えていくという責任はあるんだということで、大変意気に燃えております。私が期待するところは、こういった技術屋さんのモラールとか意欲をうまく燃え上がらせて、いい成果に結び付けていただくと、これが一番大切だと思います。
私の
研究開発、私、
研究開発を昔やっていたわけですが、その経験によりますと、技術屋さんには大きな枠を与えて、その中で自由に研究させることが最も効率がいいんだということを実感として知っております。
そういうところから見ますと、
産業界の今回の自主的行動というのを是非しばらく見守っていただきたいと思います。
もちろん、
産業界としては、どんなふうにそれが進展しているかということを分かりやすく、決まった形で決まった時期に、皆さんにすぐ了解していただけるような形で開示する責任はあると思いますが、この
自主的取組というのが非常に
効果を示すんではないかと私は自分の研究体験からそう思っております。
技術屋さんを一番燃え上がらせる方法というのは、自分の設計した商品、例えば省エネを達成したような商品、お客様が使っている間に非常に
エネルギーが節約されるというような、そういう商品がやはり世の中に
普及することだと思うんですね。世の中に
普及しないと技術屋さんは喜びを感じないわけでございます。世の中に
普及させるには、最初のこういうような製品は、出だしは量産
効果もありませんし、コストダウンの努力もまだ行われていないという
段階で高いです。その高いものを売り込んでいくには、やはりそれなりの補助金とか
税制的な支援が一層必要だと思います。
それともう
一つは、最近よく言われ出しましたけれども、物を売るんではないと。ハードを売るんじゃなくて、その機能を使っていただいただけお金を払っていただくと、機能販売という、その商品の機能を使っていただいて、その使った分だけお金を払っていただくということなんですね。
そうしますと、初期投資として大変多額の
設備投資が必要にならなくなります。必要なのは毎月使っただけの幾らかというようなお金を払っていただくということで、経費処理で済むわけですね。
設備投資じゃなくて経費処理で済むと、こういうことになりますと、
企業でも
導入しやすいし、一般の家庭でも
導入しやすいということになります。こういうようなシステムを是非
導入、支援をいただきたい。
というのは、支援と申し上げますのは、こういうシステムの場合には、初期投資、初期資金が要るわけですね。最初作ったときのコストを売って回収できません。ただ、お貸しして使っただけお金払っていただくわけですから、初期投資がなかなか回収できないと。多額の資金が要りますが、その資金をできるだけ低利で金融機関から調達できるようにすると、そういうような点で
皆様方のお知恵をもっていいシステムを作っていただきたいと思うわけでございます。
このようにしてお金の動くことは経済的にも非常によろしいんではないかと思います。間違いのないお金が動くわけでございますので、経済的にいいと思います。
それから、これが
産業部門でございますが、
産業部門のもう
一つ申し上げたいところは、
日本企業は大変
海外に進出しております。この
海外に進出した
企業の
温暖化対策、要するに温暖化
ガスを出さないという
対策、これを
海外で
日本企業がやるということが非常に重要だと思います。これはその地区の
発展途上国の
企業の
参考にもなると思います。これがうまく京都
メカニズムに結び付けばいいというようなことを私は考えております。
もう
一つ、今度は
運輸民生部門で申し上げたいと思います。
運輸部門の
エネルギー消費の大半は、八〇%以上、九〇%ぐらいが車だと言われております。したがいまして、この車について、エコカーが出ていくことによって随分
運輸部門の方は様変わりに
エネルギー節約になってくる。
CO2の発生が抑制されるんではないかと思います。同様に
民生部門でも、省エネ製品が次々にトップランナー方式によって刺激を受けながら
市場に出てまいりますと、非常にこれもまた
民生部門の方も様変わりに良くなってくると思います。
そういったエコカーとかエコプロダクト、これが
市場に出るようにうまく誘導するということが
産業界にとっても、それから
政府、あるいは議員さん方のお知恵を入れていただきたいというように思うわけでございます。
それからもう
一つの
民生部門の
エネルギーの節約の仕方は、分散型の社会にするということだと思います。つまり、端的に言いますといろんなライフラインを自分のところで調達する。地元で取れたものを地元で食べる。それから地元でできた
エネルギーを使う、これはいろんな
エネルギーがございますですね。風力、地熱、ソーラー、バイオマス、あるいはごみというようないろんな
エネルギーの作り方がございますが、その地元に合ったものでやるということ、それから地元で蓄えた水を使うんだ、こういった分散型の方向に持っていくということが温暖化
ガス抑制に
効果があると思います。
それから、
運輸部門につきましては、よく言われるんですが、例のETCですね、これを全面的に採用されるのがいいと思います。これは、車の場合には渋滞による
エネルギーロスというのが車の全
消費エネルギーの一一%と言われております。そして、渋滞のうちの三〇%は料金所であると言われております。そうなりますと、料金所にETCのポストを設けることによって、また、そこを通る車を増やすということによって、三・三%節約できる、
エネルギーが、
消費が節約されるということになるかと思います。
最後に、それでは国際的な
枠組みの
推進についてでございますが、私どもは
京都議定書は速やかに批准の方向に持っていっていただきたいと考えております。これは
先進国としての
日本の義務でもありますし、
COP3の議長国として
京都議定書をまとめられた、これは大変な功績だったと思います、この名誉に懸けても通していただきたい。それから、
COP7につきましては、森林吸収三・九%など、
日本の主張を皆さんに認めさせた、その手前からも是非批准していただきたい。
第二ステップとしては、批准しただけでなくて、効力が発揮するように、ロシアその他の国々に積極的に働き掛けまして、
発効条件を速やかに満たすようにリーダーシップを取っていただきたいと思います。
三番目としては、米国には継続的に働き掛けをいたしまして、
京都議定書の
枠組みに復帰されることを求めていっていただきたいと思います。
四番目としては、中国、インドのような、あるいはインドネシアのような人口の多い国の入れるような
枠組みづくりを是非引き続いて進め、その
推進力に
日本がなっていただきたいと思うわけでございます。
以上でございます。