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2002-05-28 第154回国会 参議院 外交防衛委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年五月二十八日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十四日     辞任         補欠選任      扇  千景君     泉  信也君      森元 恒雄君     河本 英典君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         武見 敬三君     理 事                 山本 一太君                 吉村剛太郎君                 木俣 佳丈君                 山口那津男君                 小泉 親司君     委 員                 泉  信也君                 河本 英典君                 桜井  新君                 福島啓史郎君                 舛添 要一君                 矢野 哲朗君                 山下 善彦君                 海野  徹君                 佐藤 道夫君                 齋藤  勁君                 広中和歌子君                 遠山 清彦君                 吉岡 吉典君                 田村 秀昭君                 大田 昌秀君    国務大臣        外務大臣     川口 順子君    副大臣        内閣府副大臣   村田 吉隆君        外務大臣    植竹 繁雄君        経済産業大臣  大島 慶久君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君    政府参考人        法務省刑事局長  古田 佑紀君        外務大臣官房審        議官       林  景一君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     高橋 恒一君        外務省アジア大        洋州局長     田中  均君        外務省北米局長  藤崎 一郎君        外務省中南米局        長        島内  憲君        外務省経済局長 佐々江賢一郎君        外務省条約局長  海老原 紳君        農林水産省総合        食料局国際部長  村上 秀徳君        経済産業大臣官        房審議官     仁坂 吉伸君        経済産業大臣官        房審議官     鷲見 良彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○投資自由化促進及び保護に関する日本国政  府と大韓民国政府との間の協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○犯罪人引渡しに関する日本国大韓民国との間  の条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定  書の締結について承認を求めるの件(内閣提出  、衆議院送付)     ─────────────
  2. 武見敬三

    委員長武見敬三君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、扇千景君及び森元恒雄君が委員を辞任され、その補欠として泉信也君及び河本英典君が選任されました。     ─────────────
  3. 武見敬三

  4. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 投資自由化促進及び保護に関する日本国政府大韓民国政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び犯罪人引渡しに関する日本国大韓民国との間の条約締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。  両件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 佐藤でございますが、皮切りに、日韓犯罪人引渡し条約関係につきまして外務省法務省質問させていただきたいと思います。なお、いずれも基本的な問題、取上げ方でありますから、なるべく大臣の率直な御感想、御意見を承ればありがたいと、こう思っておる次第であります。  実は、この日韓犯罪者引渡し条約、私、一方ならぬ思い入れがありまして、私は前々から、日本アメリカの間にこういう条約はあるんですけれども、それが昭和五十五年にできて、それ以来どことも結ばれていない。日本韓国、これは一衣帯水、もう本当に目と鼻の先にあって、大勢の人が国際化に伴って往来をしていると。その中には当然数多くの犯罪者も含まれていると。そうして、日本犯罪を犯して向こうに逃げていく、あるいは日本人向こうに行って、あるいは日本人向こうから何か不正なことを働いたといって身柄引渡しを要求されるような事態、もう考えるだけ十分と言っていいぐらい大変な問題があったわけでありますけれども、なぜかそういう条約を結ぼうという動きがない。  私、その問題をかねがね取り上げまして、いろんなところで話をしたり、また論文を書いたりもしていたわけでありますが、数年前にこの委員会、これは外務委員会と言っておりましたけれども、この委員会でも取り上げて、少なくとも韓国の間で早急に引渡し条約を作ったらどうだということを私なりに言ったわけでありますが、そのときの外務大臣高村さんでありまして、彼は法律家でありますので私の言うことも素直に理解していただいて、大変重大な問題だと思う、重く厳しく御提案を受け止めまして早急にその実現を図りたいというようなことを言っておりまして、それから数か月後に日韓首脳会談が開かれた際に、日本側の総理、首脳である小渕首相から韓国側にこの提案がなされまして、韓国側もこれを素直に受け止めまして、早急に作りましょうと、こういうことでありまして、今日、ようやくそれが日の目を見たと。  大変結構なことではあるんですけれども、私、ちょっといぶかしく感じたのは、なぜこんなに時間が掛かったのか。これはもう条約というもの、確かに相手のあることですから、そう一晩のうちにやるというわけにもいかぬでしょうけれども、サンプルはもう幾らでもあるわけで、日本アメリカも結んでおる。世界じゅうの国々が主な国とは皆これを結んでおる。韓国などは日本よりもはるかに多くの国々とこの条約を結んでおる。そんなに難しい問題があるわけはないので、やろうと思えば一晩にでもできるぐらいの易しい条約なんですね。  ところが、これ、三年、四年と掛かってしまった。なぜなんだろうかと。皮肉を言うわけじゃありませんけれども、外務省というのは、物事を慎重に慎重に言って、後へ後へと問題を回して、今検討中でございますとか、いろんな問題がございましてとか、そう簡単にはいかないのが国際間の条約でありましてと、そういうことを言うのが口癖になっているのかなと。たまには、そうですかということで一か月ぐらいでぱっぱとまとめ上げて、これでいかがでございましょうかと国会に持ち込んでくるというぐらいの気概があってもいいのではないかという気もしているわけでありますけれども。  この条約外務大臣の手元に上がってきまして、やっぱり私と同じような疑問を当然持たれたと思うんですよ。なぜこんなことがこれまで掛かったんですかと、なぜもっと早くやれなかったんでしょうかと、一事が万事、少しどうかしているんじゃないでしょうかというふうな御下問を当然されたと思いますけれども、その際の事務当局の返事はどうなっておりましたか。それをちょっと披露してください。
  7. 川口順子

    国務大臣川口順子君) この日韓犯罪人引渡し条約交渉に随分時間が掛かったということは、全くおっしゃるとおりだと思います。  私のところには、実はこれは私が外務大臣になる前にもう仮署名が済んでおりましたので、そういう交渉過程の話というのは、私は話が上がってきてそれについて指示をするという段階ではなかったということですけれども、委員が前に、話を聞きましたら、平成十年の十月に、平成十年の国会でお聞きになっていらっしゃって、そのときに高村大臣が御答弁をなさっていて、できるだけ早く進めたいということをおっしゃっていらっしゃいまして、更に平成十二年にやはり佐藤委員がこの件について質問をしていらっしゃって、それに対して河野当時の外務大臣から、早急に締結をしたいと考えている、事務当局叱咤激励をしているということをおっしゃったということを聞きました。三年半の年月が掛かったということは非常に掛かっているわけで、その中で、第一回の交渉を始めるまでに二年掛かっている、第一回の交渉を始めた後は四回の交渉で話がまとまっているということのようでございます。  それで、何で二年間掛かったのかという質問をいたしましたら、これは関係省庁間の調整に時間が掛かったということだったようで、何の調整に時間が掛かったかと聞きましたら、これは国際刑事警察機構、ICPOを経路とするか、あるいは外交ルートを使うかという、仮拘禁請求制度の導入に絡んでルートの問題が問題であったという話を聞きました。これは、それのルートの問題に絡んで国内法を改正するか、あるいはしなくて済むかということも関係をしていたということを聞きましたけれども、いずれにしても非常に時間が掛かったということは事実だと私は思います。  今こういうことで署名ということになったわけでございますので、基本的にいろいろな省庁間で立場が違い、あるいはそれに応じて必要とする国内法手間暇の問題というのがあるだろうと思いますけれども、いずれにしても時間は掛かり過ぎているなというのが私の印象です。
  8. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 率直にお認めいただいて、大変結構だと思います。どうかこれを悪例として、いい先例とはしないように、簡単にまとまるものはもうそういうことでどんどん仕上げていくという方針を事務方にも徹底させていただきたいと、こう思います。  それから、今、日本犯罪者天国と言われておって、外国からもう嫌になるぐらいの犯罪者日本にやってきて犯罪を犯すと。中国、台湾、それからイラン、インド、タイ、ブラジル、この辺が主なところでありまするけれども、面白い言葉があって、日本におい仕事に行こうと、ああ行こう行こうとやってくるんですね。大抵密入国偽造パスポートでやってくるわけで、そして、仕事しよう。仕事というのは犯罪のことなんですな。そうして、日本の街角に自動販売機が一杯置いてありますけれども、あれを彼らは金庫金庫と呼んでいますね。この金庫を開けよう、ああ簡単に開く開くということで開けて金を盗んで、盗んだ金はどこかに隠しておいて、まとめて、どうやって持ち出すのか分かりませんけれども、多分、密輸船にでも積み込んでいくんでしょう。そして、国に帰っていくと。数百万盗めばもう大変な金持ちですからね。立派なうちを建てて、そして一生遊んで暮らすと。それを見習って若い者たちも、じゃおれも仕事日本に行ってこようと、こういうことで日本に出掛けてくると。それが現実で、中国が一番多いんですね、二万人ぐらいの犯罪者が来ておって、全体の四割ぐらいが中国だとも、こう言われておりますけれども。  そこで、刑事政策の上で外国に毅然たる態度を示す、犯罪の上ではもういささかのゆとりも与えないと、厳しく対応すると。この犯罪者引渡し条約というのもその一環だと思うんです、我々考えましてね。そこで、今私が挙げました中国その他の国々ともやっぱりこういう条約を早急に締結する必要があると私は思っております。もちろん、これが解決のすべてじゃありませんけれども、その一里塚の第一歩であることは間違いないわけですから、どうかひとつ、こういう国々との条約、特に中国、大変難しいわけですけれども、これをどうするかと。  念のため、韓国は十数か国ともうこういう条約を、十、ちょっとオーバーかな、十か国弱かな、こういう条約を結んでおるわけでありますから、それに倣って日本も、犯罪対策国際化刑事司法国際化ということで、こういうことに本当に真剣に取り組んでもらいたいと思います。  そこで大臣、今私が挙げた国々、特に中国とのこういう条約を結ぶお考えがあるのかないのか。もう既に水面下で私交渉中だろうと、よほど暇でもない限りはだれだって思い付くことですから、これは。暇だと言ったのは逆で言ったんですけれどもね。そこで、事務方もきちっともう検討中だと思いますので、それを踏まえて大体いつぐらいまで、中国とはこれぐらいのことでまとまるかもしらぬとか、ブラジルとはどうしようか、こういう問題もこれありとか、そういうことをちょっと御卓見を御披露いただければと思います。
  9. 川口順子

    国務大臣川口順子君) この犯罪人引渡し条約をどこの国と締結をするかということについて考えていく際の幾つかの基準といいますか、点があると思います、押さえるべき点があると思います。  それが何かといいますと、まず当該国との犯罪人引渡し需要が、必要性があるかどうかということですね。それから、その国の刑事司法制度が適切に運用をされていて、我が国から引き渡された人間が不当な扱いを受けないということ、そういった様々な点を勘案をして決めていくということであるかと思います。  今、中国と具体的にこの条約を結ぼうということで交渉をしているわけではございませんけれども、犯罪抑圧国際協力というのは必要ですので、検討はいろいろな点からしているということでございます。
  10. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 中国大使館も亡命者問題その他で大変お忙しいようではありまするけれども、もう既にしてこういう問題があるということを知って中国に赴任する大使、公使その他の人たちが、特に法律担当の書記官なんかは向こうの人と折衝をして、水面下交渉とよく言いますけれども、そういうことすらやっていないんでしょうか。それなりにやっておって、こういう問題がこれあるんだと、これからも多少時間は掛かるけれども頑張っていきたいと思いますと、そういう報告が大臣のところへ上がっていないんでしょうか。
  11. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 先ほど申しましたように、幾つかの点を押さえなければいけないというふうに申しましたけれども、一つは、現実犯罪人引渡し要請があるという需要の点、多いところだというところですね。それからもう一つは、この犯罪人引渡しについては基本的な人権にかかわり合いがありますので、我が国から引き渡された人間がその先で不当な扱いを受けないかどうか、現在のその相手国法制度がどうか。特に、刑法ですとか刑事訴訟法ですとか、委員の御専門の分野ですけれども、そういった体制我が国と似通って民主的で、それからかつ文化的であると。それから、相手国のその政治体制が、あるいはその法制度が一般的に安定をしているかどうか、そういったこと。  それから、相互主義というのが、この条件で引き渡すということでございますので、諸外国でも同じような体制を、日本の場合には逃亡犯罪人引渡法という法律があるわけですけれども、諸外国でも同じような体制を取っている国があるか。条約がないと引渡しが行い得ない体制の国もあるということで、そういった相手国の状態を見て引渡し条約締結必要性がどれぐらいあるかということを考えていくということでございまして、こういった点を押さえて、先ほど申しましたように国際協力犯罪抑圧のための国際協力を進める必要という点から検討をしていくということでございます。
  12. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 非常に忙しいとか大変難しいとか関係者が大勢いると、だから慎重に慎重にというのがこれ外務官僚常套語ですから、どうかひとつ、そういうことを言って肝心のことをなかなか手を付けていかないと。今までの私の経験にかんがみてもそうだろうと思っておりますので、どうかひとつ事務当局のそういうごまかしに惑わされないように、やるべきことはきちっとやりなさいということを常套、大臣の常套句にしていただければ有り難いと、こう思って、その点も要望しておきましょう。  それから、これは具体的な事件で、私いささか問題だと、こう思っておるケースがあるものですから、主として法務省の方にもお尋ねしたいと、こう思っておりますけれども、最近の新聞報道されている理化学研究所のチーフ研究員アメリカ産業スパイ罪を犯したといって向こう刑事告訴をされまして、彼は日本に帰ってきているんですけれども、アメリカから引渡し要求が来ていると。そして、政府は何かかなり前向きで考えていると、場合によったら引き渡そうかというぐらいのことを考えておるということを報道で知ったわけです。  私、報道しか、新聞しか見ておりませんので、それ以上の詳しい知識は一切ありません。しかし、引渡し基本原則というのは、御承知と思いますけれども、自国民はまず原則として引き渡さないと。これは当然のことです、国民の権利を守る義務政府にあるわけですから。向こうから、こんな悪いやつだからすぐ渡してくれと、おまえのところの日本人は本当にどうしようもないぞと言われても、はいそうですかと言って軽々には渡さないと、自国民原則として引き渡さないと。これは国際共通の考え方だと、こう言ってもいいと思います。  それからもう一つは、明白な犯罪、これを引渡しの対象にする。明白な犯罪殺人なんかそうですね、だれがどこの国に行っても、だれが見てもこれは犯罪と。ああそうですか、じゃ渡しましょうと、本当にこいつはおたくの国で悪いことをしたんですな、申し訳ありませんでしたと言って引き渡す。それから、国際犯罪ね、麻薬とか密輸とか、これも原則的に引き渡すと。お互いの迷惑の元ですから、国際犯罪というのは。ですから、協力し合って犯罪者を引き渡すと。  ところが、今問題になっているのは産業スパイ罪と、こういうわけで、どうも聞いたような罪名ではないんですね。一体何やったんだろうかと、新聞読んでもよく分からない。彼はアルツハイマーの研究家でありまして、日本でもそれと知られた学者らしいんですけれども、アメリカのクリーブランド・クリニック財団に行って、共同研究か何かを一生懸命やって、それなり成果も収めたのでしょう、そして研究成果も持って引き揚げてきたと。その後で、向こうが何か産業スパイだと言って騒ぎ出した。  これは学者同士の付き合い、学問の府ですから正しく学問の自由だと、こう言ってもいいわけで、研究領域、その研究成果を持ち帰ったからすぐ産業スパイだと言われたのでは研究なんかできませんよ。もしそういうおそれがあるならば、最初からこの点はこれはノータッチということで、タッチするなと言ってどこかに収めておいて、そして当たり障りのないことで共同研究をするとか、そういうのが当たり前のことだろうと思うんですよね。それが、帰った後で何か作った遺伝子がなくなっている、あいつが持ち帰ったんだと、あれは産業スパイだと。どこへ行っている、日本に帰っている、じゃ、すぐ引渡しを求めろと。  しかし、遺憾ながら、そう言われても日本人は、殺人事件のように本当に悪いやつだと、すぐ向こうに引き渡してやれと、大変な迷惑を向こうの国に掛けてきたんだなと、そんなやつはもう日本人ではないと、引き渡してやれというのが国民の常識と言ってもいいのかもしれませんけれども、本件の場合には聞いても分からないんですよ。私だって分かりませんから、日本人の半分以上は分からないんだろうと思うんですよね。  一体こういうケースを、向こう要請があるからと、いかなアメリカの、アメリカの属国だというふうにも言われているようですけれども、そう言われたにしても、しかし法律の世界はまた別ですから、きちっと理屈が通らなければ渡すべきではないと。彼は日本人である、学問領域研究に行ってその成果を持ち帰ってきた、どういう成果か知りませんけれども、頭の中にも一杯詰まっておりましょう。それから、何かペーパーがあればそれを持ち帰ったのかもしれませんしね。  遺伝子を持ち帰ったとかどうこう言っているんですけれども、学者の間ではその辺にほうり投げてあるような研究材料かもしれませんので、そんなものを持ち帰ったからこれは産業スパイだと言われたのじゃ、学者研究者というのはたまらないんじゃないかと、こういう感じがしますけれども、この点どうでしょうか。  やっぱり報道されているように、前向きに対応をしているのか、前向きというのは引き渡すぞということで対応しているのかどうなのか、分かりやすく説明してもらえればと。どちらでも結構ですから。
  13. 古田佑紀

    政府参考人古田佑紀君) 個別具体的な事案について、その内容の詳細、検討過程のことを申し上げることは、これは御容赦いただきたいわけでございますが、いずれにいたしましても、委員御案内のとおり、日本犯罪人引渡法、それから日米犯罪人引渡条約、これによりまして犯罪人引渡しを可能とする要件、これが定まっているわけでございます。  したがいまして、この引渡請求につきましては、そういうふうな要件に該当し得るものかどうか、その事案内容がどういうものであるか、証拠関係がどういうものか、そういう点について現在様々な角度から検討しているということでございまして、現時点において何らかの結論を持っているわけではございません。
  14. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私の基本的な疑問は、この犯罪者引渡しというのは、先ほど自国民原則として引き渡さないと。それから、双罰主義というのがありまして、例えば殺人というのは、日本でも犯罪アメリカでも犯罪、だから引き渡しましょうと。  ところが、分かりやすい例で挙げますと、姦通罪は今、日本にはないわけですよ。ところが、アメリカのある州で姦通罪がまだ残っておって、その州に行った日本人姦通をして意気揚々と引き揚げてきたと。それに対してアメリカから、姦通をやったんだ、引き渡せと言われても、これは渡さないんですよね、日本にはもう姦通罪なんてありませんからね。そこまで協力する義務はない、なぜそのとき検挙して起訴しなかったんだと、それで済む話ですからね。  いずれにしろ、この産業スパイ罪、幾ら説明聞いても分からないんですけれども、日本にはこういう罪名はないと思うんですよ。  そこで、新聞によれば、何か遺伝子を持ち帰ってきたと。それは窃盗罪だとかなんとか言っているんですけれども、産業スパイ窃盗というのは基本的に違いますから、アメリカが要求しているのは産業スパイ罪で要求して、その事実で、その証拠で持ってきているわけですからね。それがたまたま一種の別件逮捕みたいに、これは窃盗窃盗だ、窃盗で送り返してやれと、そういうひとつこそくな手段は法務省たるものが断固として取らないように今席をかりてお願いしておきたいと思います。  もし、私が今言っていることと反対の結論ができて、その研究者アメリカに引き渡されるというようなことがあれば、私、これは人権上、人道上も許し難いことだと、こう考えておりますので、どうかその辺も頭の片隅に入れて対応措置を考えていただければと、こう思います。  条約関係はこれでおしまいで、幸い若干の時間があるので、瀋陽の問題、もうあちこちで嫌になるくらい議論されておるので今更という気もいたしますけれども、どうも私、これから取り上げる三つの問題は余りどこでも取り上げられていないもんですから、ちょっと外務大臣の御所見も承っておきたいと、こう思います。  第一に、総領事の行動なんですけれども、彼は瀋陽から大連に向かっていた。途中で連絡を聞いて、さあどうしようか、引き揚げようか、いやこのまま大連に向かおうか、考えに考え抜いて、三時間ほど時間を空費してそれから戻って、翌朝はまた大連に向かっているんですね。こんなばかなことがあるんだろうかと。  例えば、警察署の管内で大変な殺人事件が起きた。ところが、たまたま署長はほかに用があると。だれか親族が亡くなったとか、飛行機がちょっと落ちた、小型飛行機が落ちたとか、それで遺族が来ているから、その見舞いに行く必要があるとかいって、署長たる者がどこかすっ飛んでいっちゃって署に帰ってこないといったらもう住民はかんかんになって怒るでしょう、これだけの大事件が起きたのに署長は何やっているんだと。  この後、総領事たる者は何で大連に向かったかと。日本人が三人亡くなっていますから、その遺族が来られるので、それにごあいさつする必要があると。それも大事かもしれませんけれども、もしそういうことならば、代わりの者をやるとか、大連にも代理がいるわけですから、出張所があってその所長たる者がいるわけですから、それに行かせても十分なんで、今警察署が暴力団に入られて乗っ取られている、そういうことを聞いて、署長が、しかしまあそれは部下に任しておくよ、おれはちょっと葬式の方に行ってくるよと言ったらみんな怒るでしょう。それと同じことなんですね。  大臣は、この件どう考えられましたか。やっぱり総領事たる者はしっかりやることをやった、立派な男だ、こう考えられたんでしょうかね。いかがですか。
  15. 川口順子

    国務大臣川口順子君) まず事実関係ですけれども……
  16. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 時間が来ていますから、簡単で。
  17. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 二つありまして、一つは、その当日の午後、連絡が査証担当の副領事からあって、これが車で大連に向かっている総領事のところに行った。それで、総領事は、中国大使館の公使に連絡をせよと言い、そして外務本省に自分自身は連絡を取ったということのようでございます。その後で、随時現場との連絡を取りながら現状把握に努めて、結局五時半ごろに瀋陽に戻ったということで事後処理に当たった。  それからもう一つは、その翌日に、委員がおっしゃられた九日の午前中にまた大連に向かったということです。  これは、私はやはりこの総領事の行動には問題があったと言わざるを得ないと思っています。
  18. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 以下、結論だけでも結構ですけれども、首席領事なる者は当時休暇で日本に帰っていた。そして、現地に現れたのが何と何と四日後なんですね。大変これだっておかしい。聞いたらすぐ飛んで帰る、当たり前のことです。そして、総領事を補佐して、そして対応にやると。ところが、何か、連絡がはっきりしないとか不便なところにいたとか、ばかも休み休み言えと。一体何なのか、これが国家公務員と言えるのか、そういう感じがいたします。  それからもう一つは、あそこに現れたのは皆、厚生省とか警察庁から出向の副領事たちで、外務省キャリアのプロパーの領事たちは何か中で仕事をしていたと。二人、三人いたんですけれども、現場に現れていない。あんな面倒くさいことおれは嫌だ、君たちでやってこいやということで、あの厚生省の何か英語も分からないような領事を送り出したのかどうか分かりませんけれども、そうだとすると、これはまた大変問題だと思いますよ。ああいうときは率先、これは大変だといって身をもって対応する、当たり前のことだと思いますけれども、どうもそういう気は更々ない。  最後にもう一つ。ワイシャツを来て現れているんですね。今、この中でワイシャツを着ている人はいませんね。やっぱり、こういう重大な公務を果たすときはみんなきちっとした上着を着て現れてくるわけですよ。ワイシャツを着ている。現地の連中なら仕方がないのか、大した役職でもないしなと思ったら、こっちから何か調査に行った何とかという領事移住部長ですか、あれも調査と称してワイシャツでふらふらと物見遊山に行くような感じで現れてテレビに映っていましたね。あれを見て皆、国民は怒っていましたよ、一体こいつら何なんだと。上着も持っていないような貧乏人なのかというふうな言い方もしていましたよ、私の周辺では。私は一番穏やかだったんですけれども。  いずれにしろ、いかが考えますか、大臣といたしまして。
  19. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 全部ひっくるめて言って、この総領事館の中の館員の相互関係は非常に規律という観点からいうと問題があったというふうに私は思います。  それから、その首席領事がすぐに帰らなかった、これは飛行機の切符が取れなかったという事情があったようですけれども、これはやっぱりすぐに帰る努力をすべきであったというふうに思います。  ただ、ワイシャツの話は、これはテレビに映っていた、最初飛んで出たときにワイシャツで出てきたということですけれども、当日、三十度ぐらいあって、中でワイシャツで執務をしていて、それで飛び出してきたということですから、これは私はワイシャツでも仕方がなかったんじゃないかなと思います。
  20. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 こっちから行った何とか部長はどうなんですか。しかも、暑かったと言うけれども、周辺の人たちは皆上着着ていましたよ。一般の人だってきちっとしていましたよ。日本人だけ暑かったんでしょうかね。
  21. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 部長がワイシャツであったかどうかということは私は確認していませんけれども、いずれにしても、これはもう中で調査をしていたわけですし、非常に暑い中でやっていて、中国側に訪問をするとかそういう状況ではなかったということだと私は思います。
  22. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 弁解も結構ですけれども、やっぱり私と同じような気持ちで言うべきことを言った方が彼らのためになるんですよ。そういう気持ちをどうぞ思い直してください。  以上で終わります。
  23. 海野徹

    ○海野徹君 おはようございます。民主党・新緑風会の海野徹であります。  いわゆる日韓投資協定について、賛成の立場から質問をさせていただきたいと思います。  むしろ私は日本韓国のFTAを推進すべきだということで、その立場からも議論させていただきたいなと思っておりますが、投資協定の条文の中で、第十一条の中に敵対行為の発生等の場合云々というものがあります、文言があります。この敵対行為というのは具体的にどういうことを要するに想定されておられるのか。そして、敵対行為とかあるいは革命等緊急事態の場合、それぞれ原状回復あるいは補償というものを求めることができるようになっているわけなんですが、これは必ずそういうものを求められるのか。あるいは求められるとしたら、どういう状況の場合は求めることが可能なのか。その点について御答弁いただきたいと思います。
  24. 林景一

    政府参考人(林景一君) お答えいたします。  この御指摘の第十一条の規定でございますけれども、ここにおきます敵対行為という用語でございますが、これは国家間におきまして敵対関係が生じていわゆる戦闘行為等が行われるような状態をいうというふうに考えております。  この十一条の規定の趣旨と申しますのは、敵対行為を含めまして、今、先生御言及のございました革命その他これらに類する緊急事態でございますけれども、そういうものが生じて投資活動について損失又は損害を被った場合に、損害賠償をこの十一条の規定で義務付けているということではございません。むしろ、その十一条の規定の趣旨というのは、仮にそういうものに対して補償、原状回復、損害賠償、補償等がなされる場合にはこういう形でやりなさいと、その準則というものを書いておりまして、それは自国の投資家又は第三国の投資家に与える待遇のうちいずれか有利なものよりも不利でない待遇、つまり内国民待遇ないし最恵国待遇を与えるということをいっている、そういう損害賠償、補償等をする場合のその準則というものをここで規定しているということでございます。
  25. 海野徹

    ○海野徹君 必ずしも補償等の措置を取ることを求めるということではないということなんですね。
  26. 林景一

    政府参考人(林景一君) この十一条の規定がその根拠になって補償をするということじゃございません。補償を行う場合の準則ということでございます。
  27. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、第十七条なんですが、国際収支及び対外資金に関し重大な困難性が生ずる場合ということがありますが、これは具体的にどういうようなことなんでしょうか。それはいかなる状況下でこういうものが発動というか認識されて認定されていくのか、その点について御答弁いただきたいと思います。
  28. 林景一

    政府参考人(林景一君) この投資協定の基本的な考え方として、投資活動についての自由化促進する、それから投資活動に関連する基本的な重要な原則といたしまして、送金の自由といったことがうたわれておるわけでございます。  そういう資本取引ないし送金の自由というものを確保するというものが大原則でございますけれども、この第十七条の規定というものが設けられました趣旨は、例えば韓国で先年ございましたような経済危機と呼ばれるような大変な事態が生じて国際信用にも重大な懸念というものが生じて、いわゆる外貨危機であるといった形のもので正に重大な困難、外貨の保有とかそういった水準の問題でありますとか国際収支、そういうものについて正に危機的な状況というものが生じた場合に、先ほど申しました資本取引あるいは支払、送金の自由というもののその大原則に対して一時的な保留といいますか、措置を取ることができるということにしておきたいと。これは主としてこの規定は、韓国側が正にそういう先年の経済危機というものを念頭に置いて、そういう極めて例外的な状況の場合にはちょっと一時的に保留できるようにしたいということで入ったものでございます。
  29. 海野徹

    ○海野徹君 分かりました。  それでは、二十条の合同委員会という規定がありますが、この合同委員会というのは我が国においてはどんなメンバーでどんな役割とか機能を持たせていくおつもりなのか、御答弁いただきたいと思います。
  30. 林景一

    政府参考人(林景一君) この合同委員会の構成につきましては、この協定自体はごらんいただければお分かりのとおり特段の規定は設けておりませんで、実際上、今後、韓国側調整して決定していくということに相なろうかと思います。  ただ、この種の規定というものは、従来、中国とかモンゴルとの協定の場合にも、最近の条約では設けておるわけでございますけれども、その辺のところにかんがみまして、日本側の考え方といたしましては、今のところ、外務省のアジア大洋州局の審議官レベルをヘッドといたしまして、関係省庁のしかるべき担当者をメンバーに加えるといった形のことを念頭に置いております。
  31. 海野徹

    ○海野徹君 分かりました。  それでは、この問題の四点目の質問なんですが、今回、この日韓投資協定、これは韓国側からの提案だというふうに聞いております。一九九七年の金融危機以降の外資の自由化導入政策を受けたものだと。非常に金大中政権が外資導入の積極策を取ったものが背景にある。それは何かというと、雇用拡大あるいは長期資本の導入あるいは近代的経営ノウハウの導入、あるいは企業経営の透明性の向上、輸出の拡大、こんな効果をねらったものではないかと言われているわけなんですね。  経済危機直後、欧米の企業は非常に積極的な投資行動に出ました。しかしながら、日本の企業というのは、韓国の対日感情あるいは労使問題等の極めてネガティブであろうと言われる先入観というんですか、それがあって、それと対外進出体力が若干不足していたというような状況もあって、積極的に行動に出ていなかった。ただ、そうした欧米企業の積極に反して、一方、そうした欧米企業の積極的な行動というのはある意味では外資の乗っ取りじゃないかという韓国内の国民感情も生んでいたやに聞きます。  ただ、韓国経済が回復しているのは正に明らかでして、好調ぶりはIMDの二〇〇二年の国際競争ランキングでも韓国は、日本が三十位でありますが、二十七位になっているというような状態。株価指数も昨年九月に付けた最安値四百六十八・七六ポイントから九百四十三・五四ポイント、これは倍増しているわけです。直近でも八百五十から九百ポイントで推移しているというような動きがあるわけなんです、韓国経済は。  この動きの原因の一つというのはやはり海外マネーの流入、積極策、外資導入の積極策の政権の効果かなと思うわけなんですが、ただその買い材料になっているのはやはり成長率の相対的な高さだと思います。今年のGDPは二・五%前後、来年は三・二%前後というような予想がされているんです。  そういうような内容を、韓国経済の内容を見ますと、あるいはそれと金大中政権の外資導入積極策のねらいなんかを見ますと、これは日本のこれからの経済政策、構造改革についても大変参考になるんではないかなと思うんですが、その辺について、この協定が何らかの要するに好影響を与えてくるきっかけになり得ないかなとも期待するんですが、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思うんですが。
  32. 田中均

    政府参考人田中均君) 韓国経済につきましては委員御指摘のとおりでございまして、特に金融危機の後、非常に大胆な規制改革を行った。その結果、例えば九八年から二〇〇〇年まで韓国に対する投資というのは三年連続して過去最高を記録した。この翌年については、いろんな景気、米国の景気の停滞とかそういう問題もあって一時的に落ち込んでおりますけれども、二〇〇二年に入っては、特に米国からの投資を中心に更に海外からの投資が非常に堅調であるということは御指摘のとおりでございます。  特に韓国の場合にそういう非常に大きな規制改革、特に外国人の投資促進法であるとか、外国人の土地取得に関する規制撤廃であるとか、整理解雇制度、こういう基本的な投資のためのインフラストラクチャーと申しますか、そういう基盤整備が行われているということは事実でございますし、日本投資家にとってもこういう投資環境の整備が非常に好ましいものに映っている。日本の対韓投資というのも増加傾向にあるということだと思います。  委員お尋ねの、この投資協定自身が日本への外資導入にどういう影響を与えるんであろうかという点でございますけれども、もちろん投資協定自身は、一つの将来、基本的な枠組み、差別されないという枠組み、例えば投資の許可段階における内国民待遇の原則的な供与とか、特定な、特定措置を、こういう措置をやらなきゃいけないという要求を禁止するといったような形で投資環境を整備すること自体、双方にとって投資環境を整備すること自体につながるというふうに思います。ですから、こういうことをきっかけにして更なる双方通行の資本の流れというのが活発化されることを期待しているということだと思います。
  33. 海野徹

    ○海野徹君 経済産業省、この点についてどうでしょうか。
  34. 鷲見良彦

    政府参考人鷲見良彦君) 委員御指摘のように、外資が導入されますと、新たな技術そして経営手法が流入してまいりまして産業が高付加価値化し、それから事業の再構築を通じまして企業の競争力を強化するという効果が期待でき、かつ雇用の確保にも寄与するものであります。  先般の経済財政諮問会議におきましても、平沼大臣の方から、我が国の経済の活性化に向けた戦略の一つの柱として、内外の資本、頭脳の誘致戦略、これを提案させていただいたところでありまして、御指摘のように、外資の導入が日本の構造改革に好ましい影響を与えるということが言えるかと思います。  この協定につきましては、法的拘束力を持ったルールを設けることによりまして、日本における投資環境についての韓国投資家の予見可能性を高めるということになりまして、結果として韓国からの対内直投の増大に寄与する、そしてそれが日本の構造改革にも寄与していくということが期待できるかと思われます。
  35. 海野徹

    ○海野徹君 先ほど日韓のFTAを進めるべきだという話で私議論をさせていただいているわけですが、このFTA、将来的に締結するときに、この条約を議論するとき必ず問題になってくるのが農業の問題だと思います。  今世紀は食の世紀とも言われております。一方、日本の食糧自給率は四〇%、先進国中、主要先進国中最低な状況であります。ある意味では、産業と言えるかどうか、価格決定権を持っていないということで産業と言えるかどうか分かりませんが、農業というのはやはりまだまだ要するに改善の余地が私はあるなというふうに思っているわけなんですが。  日本の農政というのは、ずっと生産者、あるいは生産団体の方に目を向けて政策を展開してきたんじゃないかな。九九%の都市住民あるいは消費者、九〇%の都市住民とか生産手段を持たない消費者に向いて、彼らの理解を得ながら農業・農村政策を進めてきたかというと、必ずしもそうではないような気がしております。そうではないだろうと私は思っています。生産者、消費者の問題意識を共有する体制を作らないと、今後の農政というのはやっぱり進展していかないだろうなというふうに思うわけなんですが。  今、一方、農林水産委員会で野菜生産出荷安定改正法案、これが審議中である。これは少量多品種志向の消費者のニーズへの対応とか、食の安全を求める動き、あるいは食と農の距離を縮める教育なんかが内容になってくるんではないかと思うんですが、FTAを論ずる場合必ず問題になってくる農業の問題について、検討課題、これ外務省あるいは農水省両省、それぞれお考えをお持ちだと思うんですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  36. 田中均

    政府参考人田中均君) 日韓のFTAにつきましては、これまで民間レベルの研究であるとか、それから経済界における議論というものを踏まえまして、今年の三月の日韓首脳会談で産官学協同の研究会を作ろうということになりました。これで、できれば七月にも構成を完全に決めて第一回の会合を開いていきたいというふうに考えているんですけれども、なぜこういう産官学の協同研究会をやるかというと、それはそれなりにいろんな難しさがある。したがって、日韓双方の国内的なコンセンサスを作っていく必要があるということだと思います。  その中で、やはりFTAと申しますと、WTOの原則上は実質的にすべての貿易を対象にするという要件がありまして、日本がWTOの協定に違反したような形でFTAを結ぶということは可能ではないわけであります。したがって、その場合に、農業分野も含め、特定の分野を排除してはいけないということになっておりますから、正にどういう工夫をしていくのかということも含めて、やはり相当産官学の研究会できちんとした議論をやり、日韓双方が国内的なコンセンサスを得られるように十分見極めをしていくということが必要であるというふうに思っています。  一方において、これは日本、シンガポールともやりましたけれども、本当に必要なのは、物だけではなくて、いろんな意味のサービスだとか、それから投資投資はもう既にありますけれども、金融とかいろんな幅広い分野の経済連携を韓国とも進めていくというのが非常に日本としては望ましい政策ではないかというふうに考えていることは事実でございます。
  37. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) まず、我が国の国内における農業政策の在り方ということが一つあるかと思いますけれども、先生御指摘のとおり、我が国の農政ということについて、御指摘のように、ややもすると生産者寄りではなかったかという御指摘があるわけでございますけれども、必ずしも消費者サイドのこと、あるいは流通段階の、加工段階のことを十分配慮しないで政策を推進してきたとは思いませんが、やはり今回BSEの問題の発生等を踏まえまして、より消費者サイドに重点を置いた形で政策を進めていくということが必要であるという考えで、先般、食と農の再生プランというのを発表したわけでございます。  その中で、その中に三つの大きな柱がございますけれども、その消費者の視点ということ、食の安全ということと併せまして、国内の農業の改革の推進、構造改革の推進というのも大きな柱の一つとして掲げているところでございます。基本法の発足以来、そういう農政の改革、構造改革の推進ということを推進し、担い手の育成という国内における自給力の向上ということを進めてきているわけでございます。  他方で、FTAということが言われてきておるわけでございますけれども、やはりこの場合考えなければいけないことは、先生御指摘のように、我が国の食糧の自給率が四割というような状況になってきているということで、国民の中でやはりその自給率あるいは自給力ということについてかなり大きな不安が共有されている面もあるんではないかということ。それから、WTOの農業協定に基づきまして現在農政改革、今申し上げましたような改革の努力をしておるわけでございます。例えば、関税の削減とか国内支持の削減というようなことを実施して、構造改革を国内の農民が相当厳しい中で進めていると、そういうことを十分配慮した上でFTAというものを検討していく必要があるんではないかというふうに考えております。
  38. 海野徹

    ○海野徹君 日韓の両方の農業というのは非常に国内的に置かれている状況は似通っているなと思っています。両国のバランスある国民経済の発展にとってやはり農業の重要性は当然あるわけなんですが、もう既に個別の農業政策というよりも日韓両方の共通の要するに政策的な枠組みづくりぐらいを考えていかないとFTAは締結できないんではないかと私は考えているわけなんですが。  川口大臣、これ先ほど局長から、田中局長からお話があります産官学の共同研究がスタートしたということなんですが、例外ないFTAを締結するというのは、これは政治的な固い決意がないとできないんではないかと思うんですが、まだ具体的なスケジュール云々ということはないという御答弁になるかもしれませんが、決意のほどをお聞かせいただきたい。そして、大体どの程度、要するに何年か先ぐらいにこういう状態に持っていきたいというようなものがあれば、お考えをお伺いしたいなと思っています。
  39. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 例外ないというFTAを結ぶ決意があるかどうかというふうにおっしゃられるわけですけれども、FTAの締結については実質上すべての貿易を対象とするということで書かれているわけでございまして、こういったFTAの要件を満たすもの、これがどのような形でできるかということを取りあえず今研究会で勉強をしていきましょうということでやっているわけでございますので、まずこの勉強会の結果、議論の結果をきちんと見極めるということが大事だと思っています。
  40. 海野徹

    ○海野徹君 政治家としての要するに決意を聞きたかったわけですが。  じゃ、次の質問、時間の関係で入らせていただきますが、瀋陽総領事館の事件のことで若干質問させていただきたいなと思いますが、いろんな交渉あるいは主張すべきことがあったと思います。冷静かつ毅然に主張して折衝していくというようなことで基本姿勢を貫かれてきたはずなんですね。どうもそういうことになると、五人が出国して韓国に落ち着いたということになりますと、本番は、日中交渉の本番はこれからではないかなというような気が私はしますし、正にそうだろうと思います。  しかしながら、その意気込みはどうも伝わってこない。衆議院やあるいは参議院の委員会での質疑を聞きましても、どうもその辺が私ども胸の奥にすとんと落ちる、納得するものがないということなんですが、これは、やはり冷静かつ毅然としたというような言葉がなかなか数が少なくなって、消えてきて、日中の大局の関係という、関係の大局というか日中関係の大局というような言葉に変わってきているんで、この日中関係の大局ということ自体がどうも分かりづらいんですが、そういう要するに我々に対するメッセージが変わってきているように思えるものですから、とにかくその本番を迎えようとした、交渉の、正にこれから日本の外交交渉能力が求められるにもかかわらず、その意気込みが感じられないんですが、その点について大臣どういうお考えをされておりますでしょうか。
  41. 川口順子

    国務大臣川口順子君) おっしゃるように、私どもは全くこの問題が解決したなどと思っているわけではないです。事実関係についての認識が違う。そこに関連して、我が国の立場としては、総領事館の不可侵が侵害をされたという認識を持っているわけでして、これは中国側の言っていることと事実関係の認識は違うということはあるわけですけれども、我が国としては、この主張は毅然として主張をし続けていくことが大事であって、中国側と冷静にこの問題を、正にその日中の大局を踏まえて、これは唐家セン外務大臣が最初に使われた言葉だと思いますけれども、日中間の関係ということもきちんと踏まえて、しかれども冷静に毅然としてこの問題は我が国の主張を言っていくと、それで話し合っていくということであると私は思っています。
  42. 海野徹

    ○海野徹君 唐家セン外相の要するに使われた言葉だという話なんですが、川口外務大臣も日中関係の大局という言葉を最近使われているわけです。その中身がちょっと分からないんですけれども、御説明いただけますか。
  43. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 私としてこの言葉で何を考えているかということで、私なりの感じ方といいますと、やはり日本中国とは隣り合った相互に非常に重要な国であるという認識を持っている関係であるということであります。私はそういうことを考えているということです。
  44. 海野徹

    ○海野徹君 それでは次の質問に入らせていただきますが、今総領事館の門は、やはり終日、ほぼ終日一メートル、約一メートルほど開いているんですか。あれは亡命者や難民に門戸を要するに開いているのか。あれは本当に形だけ開いているのか、全く閉めてあるのか、本当よく分かりませんが、あの当時は開いていたということだったんですが、この要するに一メートルのすき間というのは大変重要な意味を持っているんではないかなと思うんですよね。  亡命希望者にとっては正に自由な生活へのこれは全く入口なはずだった。しかしながら、それは要するに、手紙は突き返されるわ、連行には同意したのかどうか、連行されるわ、とにかくもう一度北朝鮮へ連れて帰られて、死を覚悟したぐらいのことを要するにコメントをされているわけなんですが、この一メートルの意味合いというのは具体的にどういうものなんでしょう。あるいは、外務省としてそれを常に取っていたということは何を意味していたのか。あるいは、その映像が世界的にどういう評価をされていったのか。その点について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  45. 田中均

    政府参考人田中均君) 瀋陽の総領事館が一メートルぐらい戸が開いていたということは事実でございます。ただ、在外公館の警備という観点から見れば、基本的な原則というのは閉めているというのが基本的な原則で、もちろんその例外はある、瀋陽の場合にはそういう例外であったということだと思うんです。  これは、非常に難しい問題だと思いますけれども、御案内のとおり、総領事館の外側というのは正に中国の主権が完全にある世界でございまして、なおかつ警察権もそこにある。ですから、中国が接受国として警備ということについて第一義的な責任を負うという世界であります。ですから、大使館としてもあるいは総領事館としても、そういう警備については万全を期さなければいけないと、こういうことであるわけで、ただ同時に、大使館あるいは総領事館の中に庇護を求めてきた人、こういう脱北者の場合もそうですけれども、そういう人に対しては当然のことながら十分な人道的な措置を取るということだと思うんです。  ですから、そこは非常に難しい問題なんですが、大使館、総領事館をぱあっと開けてだれでもいらっしゃいという態勢にはなっていないし、そうすべきでもないであろうと。これは、ほかの国の主要国の大使館も総領事館も同じような万全な警備と、それから、中に、通常の場合は塀を乗り越えてくるとか、そういうことでございますけれども、中に庇護を求めてきた人に対して万全の人道的な配慮をすると、どうしてもこの二つの組合せにならざるを得ないということだと思います。
  46. 海野徹

    ○海野徹君 もう時間がありませんから、その問題はまた別の機会でお話をさせていただく中で、川口大臣は初動の反省点を総括する過程で処分は考えたいというような発言をされております。関係者の処分ということですね。  総領事あるいは大使ということだと思うんですが、在外公館に立ち入った不審者を押し出すよう指示していた、これは阿南大使の要するに発言というのは難民条約など国際法の精神を全く逸脱しているのではないかなと思われる。日ごろから、本省にいた当時から彼の周辺から聞こえてくる、これは何人か私直接聞いたんですが、同じような発言をしているんですよね。今回もまた、中国経済楽観報告に修正指示というようなものが出ているとなったら、ちょっとやはり外交官としていかがなものかというような感じがします。  責任者を処分せずして中国に主権の尊厳を主張することはできないと思うが、その点について、大臣どういうようなお考えをお持ちですか。
  47. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 川口外務大臣、簡潔にお答えください。
  48. 川口順子

    国務大臣川口順子君) まず、委員がおっしゃった阿南大使の経済問題に対する今日の新聞に出ていた発言については、これはそういうことで言ったのではない、統計の意味あるいは経済の実態を踏まえてその全体を正確に報告すべきだと、評価をすべきだということを言ったというふうに私は承知しています。  それから、今回の問題については、私が今まで申し上げていますことは、これはもう初動の段階で様々な問題があって、改善すべき点というのはいろいろあるわけです。ですから、この問題のめどが付いた時点で全体を総括をして、改善点を考えていく必要がある、その過程で処分問題については考えたいと、そういうことを言っています。
  49. 海野徹

    ○海野徹君 終わります。
  50. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 公明党の遠山でございます。  本日は、五分間だけお時間をいただきまして、議題となっている条約ではなくて、テロ資金供与防止条約の審議の際に時間を超過して御答弁いただけなかった質問を一点だけ、外務省と金融庁の方にお聞きをしたいと思っております。  質問は、前々回の委員会で私、若干御説明申し上げました、いわゆる不法な送金システムネットワークでございますハワラについてであります。  このハワラ業者というのは、南アジアあるいは中東系の方々のやみ金融ネットワークと指摘をされているわけです。昨年の米国のテロ事件でも、これに関連をいたしまして、アルカイーダがテロ資金の移動にこのハワラのネットワークを使っていたということが米国の当局から指摘をされて、その嫌疑を掛けられたハワラネットワークを持つ団体が資産を凍結されるということがございました。  また、日本におきましても、本年一月二十五日付けの読売新聞で詳細が明らかになっているように、在日パキスタン人のハワラ業者による不法な送金の事実が指摘をされております。  これに関して、日本外務省また金融庁がこの日本国内におけるハワラ業者の実態をどれだけ把握をされているのか、またこれに対してどういう対応を取られているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  51. 村田吉隆

    ○副大臣(村田吉隆君) 前回、私がこの委員会出席をさせていただきましたときに、金融庁の方から、警察庁の方から答弁がございまして、ハワラという形態でございますけれども、地下銀行の一つの形態ということで、正にそれがそのものということであるケースとそうでないケースとあるかと思いますが、何件かの摘発事例がございますという答弁がございました。  私どもは、金融庁といたしましては、組織的犯罪処罰法と、そういう法律がございまして、金融機関におきまして顧客から収受しました資金が犯罪収益であるかという疑いが非常に高い場合には当該取引を金融庁に届けなければならないと。そういう法制になっておりまして、仮にそのハワラという一種の地下銀行的な取引をやる方々が、人たちが銀行を経由して行うということになった場合に、今申しましたように、組織的犯罪取締法によりまして、疑わしい取引と銀行が認知する、そういう場合には私どもに届出をして、この届出を分析いたしまして捜査に資すると認められたものは捜査機関に対して私どもが報告をするという形になっております。  そういう意味で、金融庁といたしましては、銀行が、仮に銀行が関与することとなった場合において、疑わしい取引であるかどうかというその判断をする際の資料といたしまして、各金融機関に対して疑わしい取引の類型をまとめた参考事例集というものをお配りをしてその判断の参考に資すると、こういうことを行っているわけでございます。
  52. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 じゃ、外務省からもお願いいたします。
  53. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) 先生の今おっしゃられました点のうちの、国際的な部分についての取組についてお答えをさせていただきたいと思います。  御指摘のとおり、このハワラにつきましては、中近東、南アジア等におきまして相当広範に行われているのではないかということで、これがテロや犯罪の温床になるのではないかと、なり得るということで、国際的に大きな懸念を持たれているということで、国際的な取組の強化の努力が行われているわけでございます。  特に、OECDで、事務局のあります金融活動作業部会におきまして、昨年十月にこのテロのあれを受けましてテロ資金供与に関する特別勧告というものが採択をされているわけでございます。その中で、ハワラのような金融機関を使用しないシステムに対しても、当局の許可、登録を適用すべきだということで、これが、これに反するシステムに対して法律上の制裁を勧告するというふうにされているわけでございます。  これを受けまして、我が国に対してはいろんな努力を行っておるわけでございます。既に、法的には先ほどお話ありましたように我が方の現在の体制でこれを、無許可、無登録のものは処罰の対象にしておるということで、現実に逮捕の事例もあるというふうに存じております。  以上でございます。
  54. 遠山清彦

    ○遠山清彦君 以上です。
  55. 山口那津男

    山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。  初めに、外務大臣にお伺いしたいと思います。  読売新聞五月二十二日付け朝刊の四面の記事によりますと、外務省の村田良平顧問は、五月二十一日、自民党本部において、同党の国家戦略本部の会合で次のように発言したと報道されております。  先月末に訪中した公明党の神崎代表が、江沢民国家主席に対し小泉首相の靖国神社参拝に自らは反対との立場を伝えたことについて、政府と食い違うことを中国首脳に言うのは屈辱的と批判したと、こうあるわけであります。  ここで政府と食い違うことを首脳に言うのは屈辱的と発言した旨言われているわけでありますが、小泉首相の靖国神社参拝は政府としての行いなのでしょうか、外務大臣はどう認識されますか。
  56. 川口順子

    国務大臣川口順子君) これについては、参拝後に小泉総理がおっしゃっていらっしゃいますけれども、内閣総理大臣である小泉純一郎として参拝をしたということでして、それをもって公式参拝とかあるいは政府の行事とか言うのには当たらないと私は思います。
  57. 山口那津男

    山口那津男君 外務省の顧問というお立場、これについては、外務省の組織規則の六十三条によりまして、外務省の顧問は、外務省の所掌事務のうち重要な施策に参画すると、こう規定されております。外務大臣が任命権者でありまして、若干の報酬も支払われている、そういう組織的に位置付けられた方であります。  この方が講演という形で、外務省は顧問としてのお立場で政府としての行為というふうに靖国神社の参拝を位置付けたとすれば、これは今の外務大臣の認識とは明らかに違うわけでありますね。  この村田良平顧問のこの講演での発言、これは過去の中国に対する外務省の外交政策の在り方について相当な批判する部分もあるわけであります。  私は、この政府の行動について批判的な意見を持つということは顧問の役目からいっても妥当でもありますし、同調する部分もあるわけでありますが、しかし政治家の発言に対して誤った認識に基づいて発言するというのはいかがなものかと思うわけであります。  この点について、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  58. 川口順子

    国務大臣川口順子君) この報道につきまして、村田元駐独大使に確認を外務省としてさせていただきました。  神崎代表に批判的な発言をしたということについては事実であると。ただ、これはあくまでも個人としてのコメントを述べたものだということで、顧問ということでお話をしたわけではないということでございましたので、ということであれば、私どもとしてはその発言については何かを申し上げる立場にはないということであるかと思います。
  59. 山口那津男

    山口那津男君 これは顧問として、外務省のその組織的な立場の顧問として講演を依頼されているわけでありますから、個人的な発言とお断りになったかどうかそれはよく分かりませんが、もっと誤解を与えないような発言をすべきであると考えます。  そしてまた、このような報道が、あたかも顧問としての発言であるかのようになされるということについても遺憾でありますので、この点について、しかるべき対応をしていただきたいというふうに思います。  次に、申し上げます。  瀋陽の日本領事館問題に関してでありますが、現時点におきましては、再発、混乱を防止すること、この視点で物事を考えていくのは重要だと思います。事案内容についてどうこう言うのではなくて、今後の在り方についてどうあるべきかということで御質問させていただきたいと思います。  我が国は、中国の武装警官の、武装警察官の領事館立入りを条約に規定する不可侵権の侵害と主張しているわけであります。そうである以上、領事館の職員は立ち入った武装警察官に対して、不可侵権の侵害であるとか、あるいはそれに基づいて退去などの原状回復行為を求めるとか、そういう明確な言動をすべきであると私は思うわけでありますが、今後の在り方についてあるべき姿、これをお示しいただきたいと思います。
  60. 川口順子

    国務大臣川口順子君) これについては、初動の段階でいろいろな問題が私はあったと思います。事実、不可侵が侵害をされたということで抗議、これは連行された後で、あるいは連行される前に物理的に止めようとしていた、あるいは連行された後で抗議をしたということであって、もちろん日本としてはずっと抗議の姿勢を示していたということでございますけれども、当時、その副領事が非常に一人で緊迫した情勢の中に置かれて上がった状態であったということは差し引いたとしても、その段階で総領事なり何なりが直ちに抗議をその場でするべきだということを指導してしかるべきではなかったという感じは、私もないわけではございません。
  61. 山口那津男

    山口那津男君 一方で、この緊急な事態が発生した場合に、警備に当たる中国側が領事館の同意を得る必要があると仮に判断した場合に、本件のように、同意権者である総領事は総領事館には不在であったと、大連に向かう途中であったということでありました。一応、管内にはいるということでありまして、自分に代わって同意を与える者、つまり同意権者を指名しているということもしていなかったわけですね。  じゃ、現実中国側が同意を求めるとしたら、どういうふうにすればよかったんでしょうか。
  62. 海老原紳

    政府参考人海老原紳君) 今、山口委員がおっしゃったようなケースにつきましてどうするかということにつきまして、ウィーン条約は何も言っていないということでございます。それで、今のような御質問になるんだと思いますけれども、これはまあ常識的に考えまして、そういう場合には、中国が何らかの照会をその館員に行うと。館員、受けた館員がしかるべく総領事に連絡を取って、しかるべく対応するということだろうと思います。  ただ、今回につきましては、そのような中国側の照会は一切行われなかったということであろうというふうに考えております。
  63. 山口那津男

    山口那津男君 そうだとすると、一九九八年に東京の中国大使館で起きた、日本警察官が中国大使館の公館に立ち入ったという事件がありました。この件については、中国側の明示的な同意はなかったわけであります。このことが、今御答弁になったことと対比して、不可侵権の侵害に当たらない、日本側の不可侵権の侵害に当たらないというためには、どのように説明されるわけですか。
  64. 海老原紳

    政府参考人海老原紳君) 今、御質問になりました一九九八年五月の件でございますけれども、これは大使館の、中国の大使館の職員によりまして入館を拒否された者が大使館の敷地内に侵入して、これに対して大使館の職員がこの者を取り押さえようと追い掛けて、それに対して日本側の警察官が協力をいたしまして身柄を確保したということだろうと思います。  この件につきましては、日本側の行為につきまして、中国側から、現場におきましても、何ら異議の申立ては行われておりません。侵入者の身柄を確保したということ自体については理解が示されていると思います。また、現在においても、条約違反が生じていたというようなことを中国側から提起されたというような事実はないと思います。  したがいまして、この事例につきましては、中国側におきまして条約違反というような提起が行われておりません以上、我が方から条約違反が生じたということをも前提にいろいろなことをコメントするということは適当ではないと思いますし、向こう側が条約違反ということを提起していないということによりまして、条約上の問題が生じた事例ではないというふうに理解をいたしております。
  65. 山口那津男

    山口那津男君 このいずれの事例も、明示的な同意はないということなんです。しかし、片方では問題化されず、片方では問題として主張しているわけですね。  ですから私は、明示的な同意がない場合にも、やはり国際法の理解の上で許される場合と許されない、許される場合、許されない場合があるんだと思うんです。その基準、考え方というのでやっぱりはっきりさせておかないと、今後、緊急の事態が起きたときの混乱を防止することはできないと思うんですね。  その点について明確な考え方を求めたいと思いますが、現時点で、どうお考えになりますか。
  66. 海老原紳

    政府参考人海老原紳君) これは三十一条に言います同意のことだと思いますけれども、確かに、条約上は明示とも黙示とも何も書いていないということでございます。  ただ、この公館の不可侵権というものは、領事館の特権の中では最も基本的な権能であろうというふうに考えますので、基本的には、同意を与える側の意思が明示的に確認されるという明示的な同意というものが想定されているというふうに考えております。  それでは、黙示という場合もあり得るんではないかということでございますけれども、これは、条約の中に黙示の同意についての定めもございませんし、また我々が承知している限りでは、一般的な慣行も確立していないということでございますので、何らかの作為あるいは不作為をもって自動的に同意が与えられたというふうに推認されるというようなことは基本的にはないというふうに考えておりますが、ただ、今回の事例というようなこともございますので、今、山口委員がおっしゃったような、もう少しその辺について明快にすべきであろうという点は、そういう点もあろうというふうには考えております。
  67. 山口那津男

    山口那津男君 一般に、国内法では同意があれば違法ではないと、こういう事件の場合に、やっぱり黙示とか追認とかあるいは緊急性の客観的な要件でこれを合法化するとか、そういう理解の仕方があるわけですね。私は、国際法の舞台でもそういうことはあってしかるべきだと思います。問題は混乱をさせない基準を明確にすること、これでありますので、是非検討していただきたいと思います。  終わります。
  68. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この犯罪人引渡し条約が審議される際にまずお伺いしておきたいんですが、日本に滞在しているペルーの前大統領フジモリさんについて、しばしばペルーから引渡しの要求が来ているのに日本政府は引き渡さないということが報道されております。これは後を絶たないで、ずっと新聞に出ます。  このことをめぐって、私ども、よく質問を受けます。そこで、私は外務省説明も求めて、私流には事情が分かりましたけれども、その後も新聞には同じような報道が続いておりますので、この際、外務省から、フジモリ前大統領の、ペルーでどういう法律的な状態に置かれているか、その法律上の、何らかの訴追でも受けているのか、日本引渡し要求が来ているのかいないのかというような点について、正確に説明をしておいていただきたいと思います。
  69. 島内憲

    政府参考人島内憲君) お答え申し上げます。  まず、フジモリ元大統領がペルー国内で訴追されているのか否かというお尋ねでございますが、フジモリ元大統領につきましては在職中の複数の事案に関しましてペルー国内で調査手続が進行していると承知しています。ただ、何分にも法制度我が国と異なるよその国の国内手続に関する事柄でありますので、我が国としては、フジモリ氏が訴追されているのか否かという点を含めまして、詳細について承知する立場にはございません。  次に、引渡し要請の有無についてでございますが、現時点において、ペルー側から我が国に対してフジモリ元大統領に対する引渡し請求はなされていません。
  70. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、しばしば新聞報道されている、引渡し要求日本が拒否しているというのは誤報だというふうに取って構いませんね。
  71. 島内憲

    政府参考人島内憲君) そのとおりでございます。
  72. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 分かりました。ですから、これはこれで終わります。  その次に、日韓投資協定に関連してお伺いしますが、私どもはこの協定に賛成してきておりますが、したがってこの協定上の問題を言うのではなく、韓国で労働組合を中心に強い反対運動があった、韓国最大の労働組合ナショナルセンターである韓国労働組合総連盟ですか、これは昨年夏、相当強硬な反対声明も出しているということですが、この韓国における反対運動というのは現在どうなっているのかということを、まずお伺いします。
  73. 田中均

    政府参考人田中均君) 昨年の末に基本合意というのを行いましたけれども、その後、韓国において非常に強い反対運動があるという報告は受けておりません。  一つ、今年の三月の十五日に韓国の民主労総、これは随分過激ではあるようでございますけれども、この協定国会批准を阻止するための闘争決議大会及び署名運動を行ったということでございますが、国民とかあるいはプレスの反応というのはほとんどなかったわけで、この協定に対する反対運動が韓国の国内において高まりを見せているということは言えないというふうに考えております。
  74. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうしますと、韓国労働組合総連盟が十二月十九日に反対声明出している、これも御存じないということですか。
  75. 田中均

    政府参考人田中均君) 私、今年に入ってからのことを申し上げましたけれども、昨年来、この協議をしている段階でいろんな反対があったことは承知しております。
  76. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私がこのことを申し上げるのは、協定に仮に問題がなくても、歴史的な日本と朝鮮、韓国との関係、つまりいろいろな条約あるいは協定日本から、ある場合は脅迫、ある場合は買収、ある場合には懐柔、時には軍隊を動員して締結されたという歴史を持ち、また戦後も日韓条約は六五年に日韓双方の内部に強い反対がある状況下で結ばれました。  したがって、こういう協定を結ぶ場合にもそういうことを思い起こす人々もあるということも我々は考えざるを得ない。そうすれば、反対運動が現に広がっているというような状況でこれを強行するというようなことについては慎重でなくちゃならないということを私考えましたので、それで反対運動があるかないか、もう衆議院では通っていますからこの条約は成立することになっていますけれども、しかし私どもは、現に反対運動が強く起こっていればいろいろ慎重に考えることが必要だったなと思いました。  したがって、今、局長の答弁によれば、そういう考慮をするような反対運動が今韓国内に起こっているということはないという説明だと取っていいでしょうか。
  77. 田中均

    政府参考人田中均君) 御指摘のとおりだと思います。
  78. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それはそのように、それでは取ることにいたします。  私は、今も言いましたように、日本外交を考える場合に、善きにつけあしきにつけ、やはり日本といろいろな国との関係の歴史を絶えず念頭に置かざるを得ないといつも思っております。ここで外務省改革についての公述人の意見聴取をしたときにも、外務省改革の一つとして、私は外交史に強い外交をやるようにしてもらいたいということを提起しました。  そういうことを念頭に置いて、私は実は前回のこの委員会でのILO条約の問題で、これは外務省の答弁ではありませんけれども、その答弁が一つ気になりました。  それは、私が、ILO条約、第一号条約ですね、これを日本の強い要求によって修正した上で採択されたにもかかわらずその批准をしないまま今日に至ってしまったと、八十数年になっちまったわけですけれども、こういうことは余り感心したことではないじゃないかという趣旨での質問をしたつもりでしたけれども、その答弁は、日本は発展途上国を含むより普遍的な条約にするための努力をしたんだと、そういう修正努力をしたんだというふうなことでした。  私は、そういうふうに言いたい心理状況は分かりますけれども、しかしパリの講和条約からILOの第一号条約が結ばれる第一回ILO総会の時期というのは、日本は労働運動というのは非常に後れた分野でして、「外務省の百年」という外務省編さんの本を読んでみましても、大体このパリ講和会議でこういう労働組合、国際労働規約が審議対象になることさえも予期できなかったということがこれは外務省の編さんの本でも書かれております。  したがって、その「外務省の百年」によっても、日本代表団としても準備不足のまま態度決定を迫られることになったと。私、その記録を読んでみますと、現地からいろいろ訓令を求めてきていますね。こういうのにどういう態度を取るか、なかなか来ない、採決が近づいているから早く送ってくれというふうなのが、もう繰り返しやり取りがやられて、で、とうとう訓令が間に合わなくて、採決に当たって保留をせざるを得なかったというようなこともある。  そういうわけで、日本が普遍的な国際労働組合規約、今のILO憲章を作るために当時働いたというふうなことは、これはちょっと実態に照らしてみて言い過ぎであって、しかも日本が出した修正要求というのはそういうことでなく、日本はまだそういう点では後れているから特殊国扱いをしてくれと、そして日本をこの第一号条約、八時間労働の例外にしてくれというのが、これは外務省のまとめられた膨大な本の中にも残っている修正案なんですね。  それは採択されて、九条ですか、ILO第一号条約のたしか九条だと思いますし、十条でインドの修正というようになっているわけで、十条で例外になったインドはその後批准したんですけれども、九条で例外措置を受けた日本は批准しないまま今日に至ったわけで、それはいろいろな事情があったんでしょうから、私、その事情を一々聞かなくてもいいと。  いずれにせよ、こういう経過を経て、しかも日本も賛成して採決した、それを批准しないまま八十年たった時点でどう思うかといえば、私は、幾らかちょっとやっぱりまずかったぐらいのことがあるんじゃないかと思ったら、何か普遍的な条約を作るために努力したんだと言われると、こういう答弁がかえって、日本国際的な不信を買うという心配をしましたので、今日もう一回、言うまでもないと思いましたけれども、こういうことはきちっとしておいた方が日本が世界で信用を得る上でもいいだろうと思いまして、もう一度質問させていただきます。どなたでも結構ですが。
  79. 高橋恒一

    政府参考人高橋恒一君) 前回も若干御説明させていただきましたが、再度の御質問でございますので、答弁させていただきます。  ILOの第一号条約におきましては、日本、それから英領インド、中国、ペルシャ、タイ、ギリシャ、ルーマニアの七か国につきまして、各国別に例外的な取扱いを認める規定が置かれておるわけでございます。  このような規定の中身を見る限りにおきましては、少なくともこの第一号条約の討議におきまして、我が国政府がこの第一号条約原則でございます一週の労働時間四十八時間以内というこの原則を受け入れることが当時の状況の中では困難があると、そういう判断の下に例外的な取扱いを求めたということではないかと思います。  ただし、それでまとまって、賛成をして帰ってきて、そして国内で検討した結果、やはりそのまま締結はできないという、そこら辺の詳しい、国内で、帰ってきた後の検討の過程というのは外交文書にも残っておりませんので分からぬのでございますけれども、締結できなかったと。ということで、その後ずっと時間がたってしまいまして、現在においては、また我が国の現行法制とは必ずしもこの条約の規定が合っていないということで、締結できずに現在に至っているということでございます。
  80. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私もその後の文書ないものかと思って外交史料館でいろいろ調べてみましたけれども、まず第一回のILO総会の記録も一部残っているだけで、あとはどういう理由か、ないんだということでした。  ですから、分かりにくいこともあると思うんですが、大臣、お伺いしますけれども、いずれにせよ、どういう理由があるにせよ、修正要求して通ってその条約を批准しないまま終わった、またその批准の努力が行われたとも私は思いませんけれども、そういうのはやっぱり余り、いや、こうだった、ああだったと言って、何かいい努力をしたみたいに言わないで、これは、まずいことはまずい、それはやっぱり好ましくなかったという態度をきちっと取った方が私は立派だと思うんですけれども、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  81. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 委員のおっしゃるとおりだと思います。
  82. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私はそのことさえ言ってもらえれば、あれこれ言う余地ございません。  その次にお伺いしたいのは、ちょっと今日の案件と全く離れますけれども、安保条約の問題に関連して、一、二、お伺いします。  私は、朝鮮戦争の当時、私の近くにも米軍基地がありまして、朝鮮戦争の時期というのは、これは全面占領の時代ですから、日本の基地から米軍が朝鮮に直接攻撃、爆撃等に出掛けていきました。  しかし、安保条約がある今日ではそういうことは、私は、岸・ハーター交換公文の対象になって、事前協議が、岸・ハーター交換公文の三項目に関しての事前協議の取決めがあるわけですけれども、これに沿って行われるということであって、朝鮮戦争のように日本の基地が全く自由な出撃基地になるということは日本周辺では起こらないと思いますけれども、この点はいかがですか。
  83. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) 委員のおっしゃるとおりでございます。
  84. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうしますと、日本が作った法律、周辺事態法の事態、今の武力攻撃事態法でない周辺事態法の段階で米軍の日本の基地使用という場合にも当然この岸・ハーター公文の、事前協議の交換公文というのは生きてくると、こういうふうに取ってよろしいですか。
  85. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) 今言われますとおり、岸・ハーター交換公文におきましては、日本から行われる戦闘作戦行動、条約五条の規定に基づいて行われるものを除きまして、については事前協議の主題と、日本国内の施設及び区域の使用は日本国政府との事前協議の主題とするということとしておりますので、五条の事態以外につきましては事前協議の主題でございます。
  86. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それもそのとおりだと思います。  そこで、今度は、今、武力攻撃事態法をめぐっていろいろな論議があるわけですけれども、武力攻撃事態ということになった場合に、五条発動という事態になれば当然事前協議の対象にはならないということになると思いますけれども、おそれ、予測含めていろいろ論議になっていますけれども、どの事態から事前協議の対象にならない、この岸・ハーター公文に言うところの五条事態で、除くという、除かれない状態になるのか、これはどうなりますか。
  87. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) この五条事態と申しますのは、これは委員もよく御承知のとおりでございますけれども、従来の国会答弁にもございますとおり、武力攻撃が行われた時点ということで、武力攻撃が行われたということをもって五条事態というふうに私ども認識しております。
  88. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、その武力攻撃事態法で言うところの予測の事態、それからおそれの事態、この段階における米軍の基地使用というのはまだ五条事態ではなく、六条の事前協議に係ると、こういうことになるんですか。
  89. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) 今おっしゃっている趣旨は、戦闘作戦行動、岸・ハーター交換公文に規定しておりますとおり、条約五条の場合は事前協議の主題とならないわけでございますが、それ以外については事前協議の主題ということでございます。  他方、武力攻撃事態ということでございましても、我が国に対して実際に武力攻撃が発生していないという事態におきましては、まだ戦闘作戦行動という、戦闘作戦というものが、戦闘というもの自体が起こっておらないというふうに認識しております。
  90. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その場合の、自衛隊ではなくて、その場合の米軍の行動も、したがってここに言う五条の規定に基づいて行われるものを除くということに当たらないで、つまり五条ではなくて六条の基地使用という解釈になるんですか。
  91. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) 今、繰り返しになって恐縮でございますけれども、五条の事態が起こりますというのは武力攻撃が発生した時点でございます。他方、今おっしゃった予測、おそれというときに、これは武力攻撃はまだ起こっておらないわけでございますから、そもそも戦闘が行われておらないというふうに認識しております。
  92. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それは、そのような説明をあれにしておきましょう。  時間がもうちょっとありますので、私は、これは防衛庁に聞くべきことかもしれませんけれども、もし北米局長でお答えいただければお答えいただきたいと思うんですけれども。  この論議の中で一番分かりにくいのは、予測の事態とはどういうことを言うのか、おそれの事態とはどういう事態を言うのか、武力攻撃はよく分かるわけですが、そういうことが一番分かりにくい。したがって、日本国民的な体験のある戦争の歴史を例えに出してどういう事態だということの説明はできるのかできないのか。  例えば、私どもの念頭にある本土決戦態勢というので、日本国じゅう本土決戦に備える態勢を取った。私はトーチカというのは見たことがなかったけれども、北海道に行くとトーチカがあるし、色丹へビザなしで行ったときに海岸にずっとトーチカが今も残っているのを見て、ああ、こういうのを造って本土決戦に備えたのかと思いましたけれども、そういう本土決戦に備える態勢というのはおそれの段階か予測の段階なのか、そこら辺はどういうふうになるんですか。そしてまた、武力攻撃事態というのは、太平洋戦争を念頭に置いて言えばどういう事態になるか、もしお答えできたら説明していただきたいと思うんです。
  93. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) 今、委員が正に御示唆になりましたように、具体的な戦争に即しましてどのケースがおそれであったか予測であったかということをこの時点で申し上げることは困難でございますけれども、いわゆる予測される事態というのはどういう事態か、おそれのある場合というのはどういう場合であるかということにつきましては、五月十六日に事態対処特別委員会におきまして官房長官が政府の見解を説明しておりますので、これは委員も御承知のとおりでございまして、このとおりが今の予測事態、おそれのある場合についての政府の考え方でございます。
  94. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その説明があって、いよいよ分からないと新聞も書きました。私も、これは何も答えにならないと思って読みました。  それで、新聞によると、ある政府関係者は、将来の手を縛らないためにあいまいにしてあるんだと、こう語ったというのが、これはおとといですか、朝日に出ておりました。これは、私は本当じゃないかと思うんですね。  大体、法律というのは自由に使えるように作ってきたもののようで、私は、悪名高い戦前の治安維持法、政府の答弁は、思想、信条を抑圧しない、学問研究は認める、何々についてはこういう制限があるというのが当時の帝国議会での治安維持法審議のときに行われているんですね。  ところが、戦後発表された内務省の文書を読んでみますと、治安維持法についても、例えば茫漠たる用語になっているところがいいんだと。茫漠たる取りようのないような定式化してあるために、情勢の変化に応じてどのようにでも使えるようになっているんだということが書いてあるのを読みまして、ははあ、今も同じ手で、だれが考えてもさっぱり分からない、戦争を実際国民が体験したのに沿ってお伺いしても分からないということになって、一方で、政府関係者が将来の手を縛らないんだというふうに説明しているということになると、やっぱりこの法律、武力攻撃事態法というのはこのあいまいさに最大の特徴があって、それがいろいろ使う余地があるということになるんじゃないかという気がしてしようがないんですが、これはもっと具体的に、国民がなるほどそうかというふうに言えるようにならないものなんですか。
  95. 藤崎一郎

    政府参考人藤崎一郎君) この五月十六日の見解でございますが、これにつきましては政府部内でもいろいろ協議した結果でございます。  この例えば予測事態につきましては、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張が高まっている状況下で、ある国が我が国への攻撃のため部隊の充足を高めるべく予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っていると見られることや、我が国を攻撃すると見られるための軍事施設の新たな構築を行っていることなどから見て、我が国への武力攻撃の意図が推測され、我が国に対して武力攻撃を行う可能性が高いと客観的に判断される場合、それから、おそれのある場合についても、仮定の事例において、限られた与件のみに基づいて論ずることは適切でないが、その上であえて申し上げれば、例えば、ある国が我が国に対し武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させていることなどから見て、我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると客観的に認められる場合は武力攻撃のおそれのある場合に該当すると考えられるということで、可能な限り具体的に分かりやすい例示を行うということで努力した次第でございます。
  96. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間ですから、もう終わりましょう。
  97. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 本日の日韓条約については賛成でございます。  瀋陽の総領事館事件について、外務大臣に二、三お尋ねをさせていただきます。  まず、瀋陽にある日本総領事館に北朝鮮の五人がともかく入ってきたと。そうしたら、中国の警察官がそれを取り押さえて連れていって、中国政府はそのまま日本国政府とは無関係にマニラ経由、韓国に送ったというのが今回の事件の事実関係だと思うんですが、外務大臣、それでよろしいですか。
  98. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 瀋陽の総領事館事件につきましては、これは中国側と協議の過程で、人道問題ということが最優先の課題であるということを中国側に伝えていって、それを中国側には申し入れていったわけですけれども、この問題の早期解決という観点から、中国は、我が国の申入れそれから国際社会の要請と、それから中国自身として人道的な配慮というのもあったと思いますけれども、そういったことに配慮をしてこの五名の出国ということを、措置を取ったということでございます。  中国のこの決定には、先ほど申しましたように、我が国の立場への配慮というものがあったわけでして、したがいまして、出国をさせる前に我が国に対しても事前の通報があったわけです。
  99. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 事前の通告があったかどうか知りませんけれども、私が今申し上げたように、日本総領事館に入ってきた、助けを求めた人たちをよその国の官憲が入ってきてそれを捕まえていって、それでテレビにも映っているものだから人道的な措置としてマニラ経由韓国に送ったと、こういうことじゃないんですか。それで我が国としての主権だとかそういうものが踏みにじられたというふうにはお考えになっておられないのかおるのか、どちらなんですか。
  100. 川口順子

    国務大臣川口順子君) ウィーン条約との関係では、我が日本は一貫として、中国側は同意なしに、我が国は同意を与えなかった、中国側は同意なしに総領事館の館内に入ったということをずっと言ってきているわけです。で、これに対して中国側はそれと異なる事実認識を持っているということで、意見の違いがあるということは事実あるわけですけれども、我が国としては引き続きこの点については毅然として主張を続けて、日中両国の関係、日中関係の大局を踏まえてと申し上げていますけれども、冷静に話合いをしていきたい、対処をしたいと考えています。
  101. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 どういうことだか僕は余りよく理解できませんけれども、外務省は当初、原状に復帰すると、すなわち五人が入ってきたその段階から出発をするということを言っておられたんですけれども、そういうのはもう撤回されちゃったんですか。
  102. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 当初、五名の引渡しということを中国側に対して言いました。その点について協議を中国側としていく過程において、やはり人道上の観点を最優先にすべきであろうという立場から、中国に対して、先ほど申しましたように、最優先にすべきだということを伝えていったということでございまして、中国側は我が国のこの申入れを配慮をしてそのような措置を取ったということです。
  103. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そのような配慮って、何にも配慮していないんじゃないですか、連れていっちゃったんだから。もっと、日本側は、外務省さんは五人が入ってきた時点に復帰したいということを主張したんじゃないですか。それを主張していたのに、それ連れていっちゃって、中国側も了解したって、それどういう意味なのか全然私分からないんですけれども。まあ、なされるまま致し方ないと、そういうこととしか思えないんですが。  よその国に、まさか日本の国で逆のことが起こった場合に、例えば米国大使館に日本人が逃げ込んで、それを日本の警察官が捕まえに行ってということができますか。できないでしょう、普通。だから、普通、常識的に考えてできないことを国と国との関係で了解したということは、向こうの言いなりになっているということじゃないんですか。それどうなんですか。
  104. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 先ほど言いましたように、中国側は、我が方は協議をする過程で人道の問題が最優先の課題であるということを申し入れたということでございまして、それを、その申入れに配慮をして、人道上の配慮をして措置を取ったということでして、この事実関係についての認識の違い、我が方は同意を与えなかった、したがって中国が不可侵を侵害をしたというのが我が方の立場です。これについては中国側は異なる事実関係の認識を持っているわけですけれども、我が方としてはこの我が方の主張を毅然として貫いていくということで、今後引き続き日中の大局を踏まえて冷静に対処をしていくということを申し上げているわけです。
  105. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 人道的とおっしゃいますけれども、主権は踏みにじられても人道をお取りになると、そういう意味ですか。
  106. 川口順子

    国務大臣川口順子君) これは主権ということではなくて、不可侵の、ウィーン条約によります不可侵の侵害であって、我が国の主権が踏みにじられたという問題ではないということです。
  107. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 公館の不可侵というのは国家主権を認めるということですよ、そこに。そういう御認識だから、そういう問題は断固として命を張ってやるという話じゃなくなってくるわけですよ。  だけれども、外務省の諸先輩の中では、七田さんとか別府総領事のように小菅刑務所に入ってまでも公館の不可侵を守った先輩がいるじゃないですか。だから、外務省は、何かいろいろ改革とか何か言われていますけれども、精神が弛緩しているんですよ、外交官としての国家観の欠如だと私は思っているんです。そうじゃないですか。ちゃんと先輩では、そういうマッカーサー指令に反してまでも、自分の、中立国は連合国じゃないんだから日本の主権を守るんだと言って公館の不可侵を守った。それで小菅刑務所に入れられて犯罪人になってまで公館の不可侵を守った先輩がいるじゃないですか。
  108. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 私が申し上げていますのは、ウィーン条約による不可侵、これを中国が侵害をしたということについては日本はずっと一貫として主張しているわけであって、この侵害に対しては毅然として我が国の主張を通すべく、日中関係の大局を踏まえて、我が国としては引き続き中国と冷静に対処をしていくということを申し上げているわけですが、これが主権の問題ではないというのは、これは中国の、厳密に言えばこの総領事館があるところ、土地、これは中国の主権に属するということであるということを申し上げているわけで、中国の主権には属しますが、総領事館がここにあって領事業務を専らやっているということで、ウィーン条約によって中国側がこれを同意なく立ち入ることができない、要するに不可侵があると、そういうことであります。  物事の考え方が、委員がおっしゃっていらっしゃる戦前の治外法権ということと考え方が戦後は異なっていると、そういうことを申し上げているわけです。
  109. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 在外公館というのは、日本の主権がそこの場所だけ発生する場所じゃないんですか。それは中国の主権の下にあるんですか。
  110. 川口順子

    国務大臣川口順子君) そういうことでございまして、我が国が、不可侵の、ウィーン条約によって不可侵であるべきであるということです。  これの考え方は、戦前はその治外法権ということで委員がおっしゃっていらっしゃるようなことであったわけですが、今の考え方は、これは、領事機能の維持をするためにここの場所が不可侵であると、そういう考え方でありまして、在外公館、例えば領土、領空、領海に及ぶそういう主権とは異なって、これは国際法の下で認められた特別な権利であると、そういう考え方であるわけで、これは一九六三年の領事関係に関するウィーン条約の考え方であるということです。
  111. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ちょっと、ウィーン条約の二十二条ですか、言っておられるのは、と思うんですけれども、そういう解釈を外務大臣はされているということを私は初めて認識いたしましたので、私はそういうふうには思っておりませんが、日本の主権の及ぶ、だから公館は不可侵なんじゃないですか。どういう意味ですか。それなら不可侵というのはおかしいじゃないですか。
  112. 川口順子

    国務大臣川口順子君) これは、我が国外務省だけがそう考えているわけではございませんで、領事関係に関するウィーン条約の前文におきまして、「領事上の特権及び免除の目的が、個人に利益を与えることにあるのではなく、領事機関が自国のために行う任務の能率的な遂行を確保することにあることを認め、」ということになっておりまして、正にこの目的が任務の能率的な遂行を確保すると、そのために不可侵ということが条約で規定をされているということであって、十九世紀、二十世紀初頭の世界に存在をしていた在外公館は本国の領土の延長であって治外法権を有していると、そういう考え方は今国際的に取られていないと、そういうことでございます。
  113. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 時間ですから、またやらせていただきます。
  114. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 主要国の投資協定締結状況を見ますと、一九九六年現在、一番多いドイツが百十二件、続いてイギリスが八十四件、三番目がスイスで七十六件、四番目が中国の七十一件、五番目がフランスの六十五件となっています。  我が国は八件で三十九番目に位置しておりますが、他国に比べますと我が国締結件数は非常に少ないと思われますが、その理由を御説明ください。
  115. 林景一

    政府参考人(林景一君) ただいま御指摘のとおり、我が国につきましてはこれまで八か国・地域、香港がございますので地域と申しますけれども、と締結しておりますけれども、パキスタンにつきましてはもう先国会で御承認いただきまして、明二十九日に発効する予定でございますので、九になります。それから、今国会におきまして、シンガポールの自由貿易協定を御承認いただいておりますけれども、この中にも投資関連部分というものが入っているということをちょっと補足的に申し上げさせていただきますが。  投資協定につきまして、我が国は、それじゃ今御指摘のございましたアメリカ、イギリス、ドイツ等と比べて非常に少ないではないかというお話でございますけれども、この投資協定につきまして、我が国といたしましては、相手国投資環境整備の状況、それから相手国との貿易投資関係、それから我が国の経済界からの要望などを踏まえまして、対外投資促進及び環境整備の観点から交渉を行うことを決め、交渉を進めてきているわけでございますけれども、その際に、やはり意味のある内容投資協定というものを締結できる国との間で積極的に交渉を行ってきております。具体的には、やはり最恵国待遇ないし投資活動におきます内国民待遇、そういったものを確保するということを基本方針としてこれまで交渉に臨んできております。  各国が結んでおります投資協定によりましては、投資協定という名前はございますけれども、内容を見ますと若干ばらつきがございます。最恵国待遇あるいは内国民待遇のレベルにおいてもばらつきがございますし、あるいはその基本的な仕組みにおいて、いわゆる投資保障協定といいますか、投資保険の請求権代位を行うということだけを主たるポイントにしたような協定をたくさん結んでいるといった国もございまして、それぞれ考え方についてもややばらつきがあると思います。  そういう意味で、数字に違いはございますけれども、我が国につきましては、今申し上げましたとおり、基本的な原則というものをきちっと確保するようにと、それができない場合には交渉がまとまらないという形で今まできております。  ただ、近年、割合、モンゴルもございました、シンガポール、今回それからまた韓国もあるわけでございます。また、ベトナム等とも交渉を既に開始しておる状況でございまして、必要に応じてこの作業を加速化させていきたいというふうに考えております。
  116. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 日韓投資協定の理念の部分に、「両国間の投資促進する上で労働者と使用者との間の協調的な関係が有する重要性を認識し、」という文言があります。この文言について、韓国の労働界では労働権の侵害と受け止められているようですが、その点についてどうお考えですか。  また、当初の案文では、政府は労働問題の解決に真摯に対応するという条項が入っていたと伺っておりますが、それに間違いございませんか。
  117. 田中均

    政府参考人田中均君) 前文のところの労働者と使用者の間での協調的な関係ということについてのお尋ねでございますが、これの意味するところは、労使の自治を前提とした上で、労働条件等について労使双方が誠実に協議をして、事業の健全な発展と労働者の生活の改善を目指すといった趣旨を意味をしているということでございます。  これは、基本的に労使の関係というのはそれぞれの国からの投資促進する上で大変大事だという認識が民間にもございまして、そういう観点から日韓両国政府の、これはあくまで一般的な認識ということで、権利義務関係を設定するものではございませんけれども、そういう一般的な認識を労使双方に中立的な形で前文に盛り込んだということでございます。  ですから、交渉の途中でいろんな考え方があったことは事実でございますけれども、あくまでこの最終的な文書というものがここにある意味でございます。
  118. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 最初の案文と違った、案文と変わったということは事実としてありますですか。
  119. 田中均

    政府参考人田中均君) これは外交交渉ですから、いろんな意見があって、その過程でいろんな考え方があったのは事実だと思います。
  120. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 投資協定締結で、韓国の労働者、労働界の理解がなければ、日本からの投資に当たって不安材料を抱え込むことになると思われます。  先ほども他の委員からも御質問がありましたけれども、この投資協定について、韓国の労働界からはどのような反響と申しますか、出ているんですか。また、それに対して我が政府はどのように対処なさろうとしておられるんですか。
  121. 田中均

    政府参考人田中均君) 韓国の労働界との関係を我々が直接整理をするということではもちろんございませんけれども、私たちが把握しているのは、先ほどの御答弁でも申し上げましたけれども、今年に入ってからは一部の過激な意見がございましたけれども、それが大きな決議とか署名運動と、それがプレスとかあるいは国内での大きな反対ということにはなっていないということは日本韓国双方の認識だと思います。  正に、この協定の中の前文で中立的な形で労使協調の重要性ということを書いたわけで、結果的に、できているこの協定そのものについては十分御理解が得られているというふうに私どもは考えています。
  122. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 連合は、去る二月二十二日、平沼経済産業大臣に対して、日韓投資協定締結に当たって、両国の国民生活の向上、雇用の安定、創出、環境保全を促すものにしていただきたいと要請したと報じられています。  このように、投資協定は、労働基本権の尊重や環境保護などを念頭に置いたものでなければならないと考えますが、経済産業省はどのように御理解しておられるか、特に環境問題との関係で簡潔にお答えください。
  123. 大島慶久

    ○副大臣(大島慶久君) 大田先生にお答えを申し上げます。  まず、政府といたしましては、これまでの韓国側との交渉の結果は、労使の自治を前提とした上で、本協定の前文に、投資環境において協調的な労使関係が重要である、こういった日韓両国政府の一般的な認識を労働者及び使用者に中立的な形で前文に織り込ませていただいているところでございます。そして、連合あるいはNGO関係者に対しましては、交渉の節目において適宜説明を行っているところでございます。  また、政府といたしましては、本協定締結により韓国における労使紛争に介入する意図はございませんでして、前文において協調的な労使関係がプラスの投資促進効果をもたらすとの韓国、両国政府の一般的な認識を述べさせていただいているところでございます。  そして、今、先生がおっしゃいます環境保全についてでございますけれども、本協定の本文に、投資誘致のために環境基準を緩和することは適当ではない、こういったことを認めるとの規定を盛り込んだところでございます。
  124. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 外務大臣にお伺いします。  一般に、今回の事件と関連して、よく日本の主権が侵害されたと、瀋陽の総領事館問題でございますけれども、日本の主権が侵害されたと言われますが、外務省は具体的にどのような意味で、どのような点で主権が侵害されたとお考えですか。  それともう一つは、これまでのお話を伺っておりますと、どうも中国日本側の間に、例えば亡命者とかあるいは不法入国者みたいな問題について考え方の違いがあるようでございますけれども、そのような中国日本側との基本的な違いについても御説明いただけたら有り難いと思いますが。
  125. 川口順子

    国務大臣川口順子君) 主権侵害ということについては、先ほど申しましたように、これはウィーン条約に基づく総領事館の不可侵の侵害であって主権の侵害ではない、ウィーン条約違反だというのが我が国の立場でございます。
  126. 田中均

    政府参考人田中均君) 中国日本との間で難民とか亡命者ということについて考え方の違いがあるのではないかという御質問でございますけれども、確かに、この場合には脱北者ということだったわけでございますけれども、中国には少なくともこの問題について難民というとらえ方はしていないわけでございまして、中国はあくまでこれは中国国内法に反した不法滞在者であるというとらえ方をしているということであると思います。  したがって、今回も、正に私どもが中国に対して毅然とした主張をしたその結果、中国が不法滞在者として身柄を持っている五人の人たちを第三国に出すという結果、これは従来中国がやっていなかったことでございますが、そういう結果につながったということであると思います。  それは、先ほど大臣が言われましたように、日本の主張もあります。それから国際社会の非常な強い意見もあった。その結果、彼らが難民とか亡命者として扱わない、不法滞在者として扱っている人々を第三国、それから韓国に出したという結果になったということだと思います。
  127. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 ありがとうございました。終わります。
  128. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、投資自由化促進及び保護に関する日本国政府大韓民国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  129. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、犯罪人引渡しに関する日本国大韓民国との間の条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  130. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  132. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。川口外務大臣
  133. 川口順子

    国務大臣川口順子君) ただいま議題となりました気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、平成九年十二月に京都で開催された気候変動に関する国際連合枠組条約の第三回締約国会議において採択されたものであります。  この議定書は、先進国等が二千八年から二千十二年までの五年間において、数量化された約束に従って温室効果ガスの排出を抑制し又は削減すること等を定めるものであります。  我が国がこの議定書を締結してその早期発効に寄与することは、地球温暖化を防止するための国際的な協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  134. 武見敬三

    委員長武見敬三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十六分散会