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佐藤道夫君 私からちょっとお尋ねいたします。
横田めぐみさんの事件が起きたのは昭和五十二年ですね。その翌年、五十三年にヨーロッパに在住しているレバノンの女性数名が行方不明になったという事件が起こりまして、レバノン
政府はもう本当に驚いて、慎重にまた厳重に
調査を進めた結果、これはもうあらゆる
状況から見て
北朝鮮の
拉致であるという断定をしまして、それからどうしたかと。レバノン
政府は
北朝鮮と積極的に
交渉をする。しかし、表のルートだけでは、もうそんな
ものは覚えていない、一切ないと言われたらそれきりですからね、表の道、裏の道、ありとあらゆる方策を通じて
北朝鮮と折衝をして、何と何と一年半後にその
拉致された女性
たちを無事奪還することができたと。これは当時の新聞にも報道されて、私はっきり記憶しておりますよ。当たり前のことだったんです。本当に頑張って奪還してきたと。
情報通によると、裏で金も使ったんだと、一人幾らという計算で幾らぐらいの金を払うと。あの国は何か金に弱い国だという、これは私が言うんじゃないですよ、評論家が言っていましたけれ
ども、
交渉の当事者に金を払うとスムーズにいくんだと。そういうことで、レバノン
政府は金も使って
国民の命を奪還、守るために頑張って、一年半掛けて、わずかな期間ですから、一年半なんというのは、そしてようやく成功したと。
その
拉致されたという女性
たちが帰国して言っていることは、
北朝鮮の軍の
情報機関、
情報施設に拘禁されて厳重な監視の下でスパイ活動のスパイ訓練を受けた、大変厳しい訓練を受けていたと、そのうちに一年ぐらいたってようやく帰国されたと、こういうことでした。
これは大変重大な問題で、
横田さんがいなくなる、
日本でもあちこちで
行方不明者が出る、一体これは何だろうかと。話とすれば
北朝鮮が
拉致しているのではないかという話も出ていましたから、すぐにレバノン
政府と連絡を取って、情勢をお伺いしたいと、
調査員を派遣して
向こうと折衝する、当たり前のことだろうと思うんです。もう、公式立って
説明ができないと言ったらば、やっぱり裏のルートというのが
外交には必ずあるわけですから、得意の機密費を使って
向こうと折衝をして、裏の道をいろいろ
説明されて、こういうことでようやく奪還することができましたと、本当に
北朝鮮というのは悪いやつらですよというふうな話を聞く。
そうして、そのことを表立ってPRするかどうかは別として、いずれにしろ海外に行った場合に、あるいは
日本の海岸を、
日本の北側の海岸を独りで歩いているときなんかは、周辺に変なやつがいたらすぐ注意するようにと、こういう警告を
政府として、つまり
外務省として、警察として発すべきではなかったのかと。これだって当然常識といえば常識ですよ。ところが、行方不明だかどこだかよく分からない、一体どうしたんだろうかななんというようなことで何年ももう経過してしまって、その間に次から次と
拉致されたと。
こういう人
たち、やっぱり
拉致されたことについての
外務省と
警察庁の責任、最終的には国の責任という
ものは私は極めて大きいと思うんですよ。これは損害賠償訴訟を起こしたら多分勝ちますよ。まだ起こしていないんでしょうけれ
ども、国を相手に、一億か十億か知りませんけれ
ども、損害賠償訴訟を起こすわけですよ。長い間放置しておいた、レバノンがそういう経験をしている、それについて
調査もしないでほうり投げておいたと。一番ねらわれるのは
日本ですから、当然
日本政府としても重要な必要な注意を
国民に発するということは、やるべきことをやっていない。国家賠償責任があることは当たり前ですから、私は本当に不思議としか言いようがないんですよ。
それから、私、一回この問題をこの
委員会で取り上げたことがあって、
外務省にお尋ねしたんですけれ
ども、レバノンは何か
北朝鮮の代表通商部が置いてあるので公式ルートがあるからそれでやれたんでしょうなんて、人ごとみたいなことを言っていますよ。表から
交渉したってこんなことは、相手が、はい、
拉致しましたと、お返ししますなんというわけないんですから、裏からやっぱりいろんなルートをたどって努力を積み重ねていく。ですから、レバノン
政府と
交渉して本当にノウハウを聞き出す、それを参考資料として警察なり
外務省なりが奪還のために動いていく。当たり前のことだろうと思うんですけれ
ども、そんなことはやっておりませんと平然として答えているんですよね。
今まで、この経過を踏まえて考えますと、やっぱりこれは
外務省の責任が極めて重大であると
思いますし、
警察庁も
警察庁としてほとんど何もやっていなかったんじゃないかと。行方不明、行方不明といって、ようやく最近
拉致されたということを認め出してきていると。なぜなんだろうかと。
国民の命を守るための責任感というのが皆無としか言いようがない。
国民一人の命は地球よりも重いと言ったのは今の官房
長官のお父さんの福田赳夫総理ですから、そういうことをあのせがれさんは受け継いでいないんじゃないかとしか思えない。やっぱり、これ、取り戻すためにはどんなことを、例えば裏で金が必要だといえば、その金だって
国民は恐らく了承するでしょう。払う
ものは払いなさいよと、それぐらいは、一人一億掛かるならそれはそれで結構ですよと言うに違いないと、私はそう思うんですけれ
ども。これ、そんな話があるところで出ましたら、さる有識者が金で
国民を買い戻すとは何事だと怒っていましたけれ
ども、怒る方がどうかしているわけなんであって。
それはそれとして、あらゆる手段を講じて被害者の奪還に努める、近代国家として当たり前のことだと、こう
思いますので、どうかこの話も持ち帰って、省庁の幹部
たちに話をしてやってくださいよ。まともな
意見かどうか分からぬけれ
どもこういう
意見が出ていましたよと、お耳に入れておいてくださいよと。そういうところから、私、この問題
解決の一歩一歩が前進していくんじゃないかと、こういう気がしてしようがない。
どうも
皆さん方の話を聞いていても、率直に言ってまともに
解決する気があるのかないのかよく分からない。何か人ごとみたいな、形式論理みたいなことに終始しているんですよね。本当に親御さんの立場に立って、一体どうなんだろうかということを考えるのが役人として、公務員として当然のことではないのかと、こういう気がいたします。何か感想があれば、お伺いしましょう。