○吉岡
吉典君 私、これを読みまして、場合によると、ヒントの
一つは樋口レポートと言われたかつての防衛懇談会が提出した「
日本の
安全保障と防衛力のあり方 二十一世紀へ向けての展望」、ここで提唱されたこともあるいは念頭にあるかなという気もいたしました。ここでは、多角的
安全保障協力として集団
安全保障の機構という五十年前に創設された国際連合は、今やようやくその本来の機能に目覚めつつあるというところから始まって、これは明確に国連の機能としての、僕は五十二条を目指したことを念頭に置いての提案だと思っていましたけれ
ども、しかしこれについてはアメリカから猛烈に強い反発があって、
日本の安保離れではないかという不信が表明されたと。その結果、安保再定義協議が始まってクリントン・橋本安保共同宣言に至ったということは、
外務省編集の
外交フォーラムの
安全保障特集号でも何人かのお方がお書きになってきた経過があるわけですね。
私は、そのアメリカの
立場というのは国連を軽視する
立場で、それを支持するわけではありませんけれ
ども、こういう経過があった中で提起されたものだという点で、ここらは
長官、私はむしろ軍事同盟でなく国連憲章の精神に沿った集団
安全保障体制ということが私
どもが目指しているところですから、それに近いものならそういう目で見ていかなくちゃいかぬわけですけれ
ども、しかし二月十三日の記者会見は、大体NATO型だというふうに私は思って読みました。
なぜ私がそういうことを言うかというのは、今のアジア、ASEAN諸国の動向というのが、
日本の提唱、中谷
長官の考えておられることがどういう性格のものかということによって私は
日本に対する見方が非常に変わってくるんだろうと思っているからであります。ASEAN諸国の動向というのは、私は、
政府特に
外務省もなかなか正確にとらえ切れない弱点を持っているんじゃないかということをかつてこの
委員会で言ったこともあります。私は、マレーシアを始めASEAN諸国というのは、NATO型のアジア太平洋の
安全保障機構というようなことだとすると、恐らく強い反発を示すだろうと思っております。
マレーシアの国際問題研究所の所長が、ASEANは大国が与えてくれる
安全保障に依存することはできない、こういうことも言っております。多国間による
安全保障を重視すると言っていますが、しかしこれは軍事同盟ではありません。我々が望んだのは対話のシステムだということをASEANの構想として彼は述べ、
アジア太平洋地域の平和と安全を二、三の大国が保障することはできないのです。新たな発想、それは軍事面ではない
安全保障への接近方法が今求められます、こういうふうに、これはマレーシアの国際問題研究所長が述べたことです。
マハティール首相は、去年の六月でしたか、東京の国連大学に来て特別講演をやった。その後を受けた
質問に答える中で、私は軍事同盟や軍事
協力については賛成いたしません。人々はできるだけ軍備の解体をすべきであり、不可侵
条約あるいは協定を結ぶべきだと思います。軍事
協力をしますと敵を作り、その敵のために準備をしなければいけない、そういう仮想敵を作りますと本当に敵を作ってしまうのです。そうなると、軍拡競争になるというような趣旨を述べております。
私は、マレーシアのこのマハティール首相の
発言だけでなく、ASEAN諸国は明らかに軍事同盟、軍事
協力ではなくて軍縮と
外交の努力による
安全保障ということを目指している。しかも、大国の与えてくれる
安全保障ではないということを言っている。こういうときに
アジア太平洋地域のNATO型の
安全保障が提案されるということになると強い反発を呼ぶのではないか、あるいはそれはいろいろな経済情勢等もあって必ずしも表面化するかどうか、これは分かりませんけれ
ども、私はそういう不安を持ちながらあなたの提案を読みました。
そういう点、どのようにお考えになっているか。
長官のアジア
認識ということにもなると思いますけれ
ども。