○五十嵐
委員 民主党の
五十嵐文彦でございます。
私は、前回の
予算委員会でも、本質的な
日本経済の根幹の問題、これをお話ししたいということでさせていただきましたけれ
ども、その続き、あるいは一部では繰り返しになるかもしれませんが、大事な話ですので、お時間をいただきたいと思います。
私は、やはり
日本の今の問題というのは、
経済のグローバル化、これがまず基点にあるんだろう、こう思っております。東西の冷戦構造が終わりを告げ、IT革命あるいは交通手段の進歩によって、どこで物をつくっても同じような品質のいいものができる。コンピューターで品質管理しますから、もうどこでもできるんだということになってしまった。そして、ロシアや中国という新たな国が自由主義
経済の社会の中へ入ってきて新たな生産基地になるということが、グローバル化というものが大きな原因になってきて
日本の今の状況が生まれてしまった。これに立ちおくれてしまった、これに対する対応が。
アメリカや
ドイツ、ヨーロッパ、それからシンガポールでも、この産業立地の国際競争激化というものに対応した国家戦略をみんな組んでいるんですけれ
ども、
日本は、一方でバブルの
崩壊というものがあったものですから、それに目くらましといいますか、目がくらまされてしまって、バブルの前に戻しさえすれば何とかなるだろうという気になってしまったものですから、例えば、
バブル崩壊以前の土地価格に土地の値段が戻ってもまだなお
資産デフレが続いているということに対して、おかしい、おかしいと言うだけで適切な手が打てなかった、これが大きな問題なんだろうと思いますね。
そこで、土地すらも、こうした状況の中では、国際競争の中に置かれると一つの条件にすぎない、いわゆる貿易財になってしまったということなわけでありまして、バブル以前に戻ったとしても、実は国際的な競争社会の中でどの水準なのかというのが問題になっているということなんですね。
お手元に縦長の資料と横長の資料をお渡ししていると思いますが、直近の
経済産業省の内外価格
調査によりますと、
日本の事務所の賃貸料は、
アメリカの二・〇六倍、中国の六・〇九倍でありまして、要するに、バブル以前に土地の価格は下がっているんですが、まだ高いということなんですね。これが国際競争力という面で足を引っ張っている一つの、全部ではありませんけれ
ども、一つの要因になっている。そして、この傾向がまだ続いているために
資産デフレがとまらないんです。
ページをめくっていただきまして、縦長の資料の二ページ目、土地の含み益が全産業の規模でどうなっているか。八二年を起点に計算をしてまいりますと、九〇年には含み益が六十兆円ありました。九三年にはそれがゼロになりました。そして、ことし三月末の時点では逆に八十一兆円の含み損になっているということで、問題なのは、それだけではなくて、なおかつ、現在でも毎年七兆円の新規の含み損が発生をしているということなんです。土地の含み損の発生が、ただ土地の含み損だけに終わらない。土地本位制が
崩壊したにもかかわらず、いまだに土地本位制の中で
日本経済がしがみついて生きている部分があるということが問題なんです。
その次のページ、三ページ目を見ていただきますと、小売業の営業利益と
商業地の地価との関係、それから建設業の営業利益と
商業地の地価との関係をグラフにしたものでありますけれ
ども、見事にほぼ一致しているわけです。要するに、土地が下落すると利益が下がってしまうという構造をいまだに
日本経済が持っているということなんですね。そうすると、これは大変なことなんですよ、
金融の面からいうと。実は、年々損失が新たに発生してくる、これが
不良債権化してくるという問題を抱えているということなのであります。
ですから、私は、この土地の問題だけではないんですけれ
ども、土地からくる
資産デフレがこのままでいくと長期間続かざるを得ないという状況をむしろ受け入れて、その
マイナス効果をどうやって減じていくかという方向に
政策を転換していかないと、インフレターゲット論とか調整インフレ論とありますけれ
ども、もし一時的に何らかの手段で土地の下落をとめたり、あるいは物価の下落を人為的に何かのやり方でとめたとしても、実はそれは国際競争力を逆に乖離させてしまうということにつながっていくんで、いつも、産業立地と国際競争力との関係、どこで物をつくっても今同じ物ができる
時代になったんだということを頭に置いて
政策をつくっていくべきではないかということをまず申し上げなければならないと思います。
そのために、そういう
時代に入った、ある程度長期間デフレは続くんだという上に立って、この
資産デフレの
マイナス効果をどうやって減じていくか。あるいは、一番きついのは庶民にとっては負債デフレです。借金を抱えていると、このデフレの
時代には借金の相対的な価値が高まってくるので大変だ、これをどうやって減じていくかというところに神経を集中しなければいけない。土地の問題を解決しようと思ったら、ただ単に何らかの小手先の芸でやるんではなくて、場合によっては土地の規制を強化して、土地利用計画行政を強化して、居住地、宅地でしたら、その環境の価値を高めることによって土地の価値を高める、あるいは
商業地でしたら、
規制緩和によって実質的に、名目値の土地の値段を逆転させるんではなくて、実質的な土地の生産性、価値を高めるという王道に立った対策をとらないと、これは直らないというふうに思うわけであります。
そして、この長期にわたるかもしれないデフレの
時代というものに対応するためには、必要なことが三つあるということを言わせていただきたいと思います。
その下に「三つの
回復」と書いておりますけれ
ども、一つは、
金融機能の
回復。
金融仲介機能が今脆弱化している、弱っていっている、これをどうやって
回復するか。それから、国際競争力をどうやって
回復していくか。もう一つは、消費をどうやって
回復していくか。この三つを徹底的に研究して進めていくことが大事であろうというふうに思うわけです。そして、その上に立って、まず入り口となる
不良債権問題が大変重要でありましたから、
金融問題から話を進めさせていただきたいんです。
私は、
柳澤大臣は尊敬を申し上げているわけです。
金融問題に関しては、市場原理を極めて重視する立場の方だと思って尊敬をしていたわけなんですが、最近の動向、またお話を聞いていると、どうもそうじゃないんじゃないかという疑いを持ち始めたわけでございます。
特に、つい最近のことです、与党の皆さんが相沢英之さんを中心に
銀行等株式保有制限法の一部改正案というものを出されてまいりまして、七月の十九日に衆議院の
財務金融委員会で可決をされました。私
ども野党は一斉に反対をしましたし、与党の中にも、個別にお話を聞きますと、筋の悪い法案だね、どうしてこんなのが出てきたんだろう、あるいは、私はこういう法案には実はタッチしませんでしたからと、何人もの方が、しかも比較的知識の豊富な、
金融問題について経綸をお持ちの方がそのようなことをおっしゃるんですね。
この法案は本当におかしいんですよ。これは、株式保有制限を
銀行にかけるから、一気に出てくると問題があるということで、それに対応して、実は
銀行の保有株を放出する際に買い取りをするという、これに対しても我々は市場原理をゆがめるというふうに反対をしたわけで、今もそう思っておりますが、まだそれならば、国による法的な規制に対する見返りとしてそういう措置があるというのはわかるんですが、一般
事業会社が
銀行株を反対に売るときは、その期間の制限もなければ保有制限もない。にもかかわらず、
銀行株を買い支えるという
意味でこれを買い取り機構に買わせるという制度改正でありまして、これは全くモラルに欠ける、いろいろな悪用の仕方もできますし、筋の悪い法案だと思うんですが、どうしてこんなものが通ってしまったのか。
しかも、そのときに
金融担当大臣は、持ち合い解消という観点からは、これは一つの理屈だというようなことをおっしゃった。持ち合い解消だったらそうじゃないでしょう。
事業会社同士の持ち合いだってよくないんです、そうですよね。コーポレートガバナンスという面から見ても、
事業会社同士だって、ちゃんとした株を持っていない相手方の会社の社長が株主としての権限を発揮して、本当の個人株主にはその権限をスポイルされるということが起きてしまうので、これは持ち合い解消だったらみんな悪いんですよ。何も
銀行との間だけここで救わなきゃいけないという理由はないということになってくるので、この筋の悪い法案をどうしてお認めになったのか。
小泉
総理大臣にも、私はこれは
改革に逆行する法案だと思うんですが、どうしてこのような法案を自民党
総裁としてお認めになってしまったのか、お話を伺いたいと思います。