○横光克彦君 私は、社会
民主党・
市民連合を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
日本郵政公社法案を初め郵政
改革関連四
法案につきまして、小泉
総理並びに片山
総務大臣にお尋ねいたします。(
拍手)
郵政事業の
改革をめぐっては、自社さ政権当時、国営維持と三
事業一体との方針を政府・与党間で確認し、行政
改革会議最終
報告には、三
事業一体で「五年後に
郵政公社に移行」、そう明記され、そして、これを受けて成立した
中央省庁等改革基本法においても、第三十三条一項六号で、「民営化等の見直しは行わない」と定められております。そして、二〇〇一年一月の中央省庁再編に伴って、郵政省の
事業実施部門は
郵政事業庁へと衣がえし、二〇〇三年にも、国営の新たな
公社として
郵政公社に移行することになっておりました。ところが、昨年、郵政民営化を持論とする小泉
総理が突如登場して以来、改めて
議論が再燃し、
議論が進められてきたわけであります。
今回の
法案提出に際して、小泉内閣は、お決まりの
改革派対抵抗勢力の攻防が描かれ、自民党の事前
承認抜きにして内閣が独自に提出するという、かつてない取り扱いとなりました。
先ほどの質問にもございましたように、自民党が小泉内閣をつぶすか、小泉内閣が自民党をつぶすかだ、これは与野党の
改革を試すよい
法案であると、
総理からは勇ましい発言が相次いでいます。
公社化は外堀であり、本丸は郵貯と簡保だと言う
総理から、今回の
公社化関連
法案に対する御自身の評価を、まず初めに明らかにしていただきたいと思います。
郵政事業は、全国の小学校とほぼ同数の二万四千七百の
郵便局によって支えられ、全国あまねく公平に郵政
サービスを提供し、
国民生活に最も身近な存在となっております。また、金融ビッグバン時代に金融機関や生保の店舗は次々に統廃合され、
民間銀行が存在しない市町村が五百を超え、
民間生保では千八百市町村に上っており、そのかわりを果たしている窓口が
郵便局なのであります。
しかし、
郵便事業において、
民間企業の参入の中で競争が激化していけば、諸外国の現状を見るまでもなく、
サービスの切り下げ、全国均一
料金体制の見直し、大口・企業優先
料金体系の拡充、地方の切り捨て等々、
ユニバーサルサービスの解体につながっていくことが危惧されます。
ユニバーサルサービスの維持についての
総理の御見解をお伺いいたします。
また、ペイオフ解禁や、
民間金融機関の倒産、不祥事が相次ぐ中、大量の公的資金の投入を受けながらも不良債権処理が進まない
民間銀行への不信感は、
国民の間に根強くあります。金融自由化の進んだアメリカでは、口座所有に手数料をかけるなど、低所得者の排除が進み、銀行口座を失う人々さえ出ております。
民間の銀行を国有化し、国営の郵貯を民営化というのであれば、金融自由化で先行した諸外国の経験を見ても、余りにも現実離れしていると言わざるを得ません。
二〇二五年には三人に一人が
高齢者となる中で、どこで年金を受け取るのか、即時払いの
保険が身近にあるのかなどを
考えても、むしろ、ライフラインバンキングとしての
郵便貯金や
簡易保険の役割を適切に評価すべきであり、高齢社会を目前に郵貯のネットワークを破壊してしまうのは、国益にかなうとは到底思えません。
郵政事業は、
国民にとって必要不可欠な生活インフラであり、また、各種
サービスのアクセスポイントである
郵便局は、今後の少子高齢社会にあって、安心、安全で、かつ、良質な公共
サービスを提供する地域コミュニティーとして、より機能を充実発展させていかなければならないと
考えております。
総理の御見解をお伺いいたします。
総理は、連休中、一九八七年から郵政民営化を行っておりますニュージーランドを訪問されました。特殊会社に移行したニュージーランドポスト社は、
郵便局が四分の一に減り、
職員も半減しております。一方、郵貯は、特殊会社後、外資に乗っ取られたものの、銀行の手数料値上げや支店閉鎖に対する
国民の強い不満から、新たに、ニュージーランドポスト社の子会社としてキウイバンクが
設立され、事実上、郵貯が復活いたしました。
郵政事業は社会的公共性が強く、効率化ばかり追求すると営利目的が社会目的を追放してしまうとの反省が出ているのです。
ところが、
総理は、二つ並んだポストについて、
民間の方が立派だなと漏らしたと言われております。しかし、クラーク首相が、政府系は効率的で取扱量も多い、
民間のポストはほとんどだれにも使われておりませんと
説明したことについて、どう思われましたか、
総理の御感想をお聞かせください。
参入が有力視されておりましたヤマト運輸も、メール便の拡大で対応し、
信書便法による参入を断念するとされており、
信書便法案をわざわざ提出し、
審議する意味がなくなったのではないかと思います。
しかも、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と初めて
信書の定義を定めたとしながらも、DMのメール便は
信書なのか、広告やチラシにあて名をつければ
信書になってしまうのか、DMを製本してカタログにすれば
信書でなくなってしまうのか、クレジットカードや地域振興券はどうなのか、
法案では全くわかりません。具体的には政省令やガイドラインで明確にしたいと言われておりますが、しかし、
信書便法案というからには、
法案にしっかりと書き込まなければ意味はないと思います。
総務大臣の御所見をお伺いいたします。
さて、提出された
法案は、あまねく公平、公共の福祉に寄与という
ユニバーサルサービスの
確保を明記しつつも、国営論者からは、企業性の追求が強調され、
郵政事業に対する公共性を現在より薄めるものと言われ、逆に、民営化論の立場からは、
民間参入のハードルが高過ぎると言われ、結局は、中途半端なものとなっております。
しかし、
国民の多くが
郵政事業に対して期待を抱いているのは、郵政三
事業が
民間の銀行よりはるかに安心して
利用する価値があり、
郵便事業が日常生活にしっかりと溶け込んでいるからであります。
国民にとっては、国営なのか、
公社なのか、あるいは民営化なのかというより、現在の郵政
サービスの水準がどうなるのか、どのような
郵政事業が求められているのかという、最も重要な問題が十分論議されているとは言えません。
今回の
公社移行と
民間参入によって、郵政三
事業はどのように変わるのか、
国民にとっての
公社化の意義、メリットはどこにあるのか、
総理並びに
総務大臣の御見解をお伺いいたします。
競争が行われ、
郵便料金が安くなるのは大都市部の大口が中心で、
採算の合わない地方や
小口利用者の
料金は高くなると予想されております。例えば、
郵便事業を民営化したドイツでは、
採算のとれない地方を中心に、
郵便局が半分に減少しています。
民営化でコスト切り下げといいますが、現在の宅配便は過酷な労働実態が支えており、今後、競争が激しくなれば、コスト
削減、人件費
削減のため、今より悲惨な状況となり、一方で、過疎地域での
サービス提供を初め、すべての
国民に保障すべき、はがきや封書といった基礎的な通信手段の窓口が大幅に減ることが予想されます。現在の
郵便局の配置を維持すべきだと
考えておりますが、
総務大臣、いかがでしょうか。
それでは、郵政三
事業が今のままでいいのかというと、決してそうではありません。あまねく公平に民衆の便益に寄与する
郵政事業として、
改革すべきは
改革し、社会的有用性のある公的
事業としての
郵政事業を目指すべきであると
考えております。そうしなければ、
国民の
郵政事業に対する信頼も失われてしまうでしょう。公共性と企業性の調和をどう図るのかが大事な点であると思います。
例えば、官営のもとで郵政官僚の天下りに代表されるさまざまな利権が生まれ、ファミリー企業が膨大な利益を上げる中で
郵便局の赤字が膨らむという高コスト体質が生まれております。官僚の天下り先となっております公益法人の実態、あるいは、郵政ファミリーとも呼ばれ、
郵政事業を独占的に受注する関連企業などについては、徹底して透明化し、情報を開示すべきであり、郵政官僚の
公社への天下りも禁止すべきではないかと
考えます。また、
公社の経営や
郵便局の
運営に際し、第三者や
利用者の声を反映させるシステムをつくるべきではないかと思います。これらについて、
総務大臣の御見解をお伺いいたします。
また、全国ネットワークの中で、特定
郵便局の果たす役割や情報、地域交流、福祉の拠点として今後発揮すべき役割を否定するものではありません。
しかし、参議院選での選挙違反事件に絡んで大量の郵政
職員が逮捕される事件が起き、選挙違反の舞台となった特定
郵便局のあり方の見直しは不可欠だと思います。局長の多くが世襲制となっていたり、渡切費などの使途不明金が存在していたりと、問題の多い特定
郵便局についても
改革しなければ、
国民の理解は到底得られるものではありません。
公社化でどう
改革されるのか、
総務大臣にお尋ねいたします。
公社への移行に伴い、新聞や雑誌等に適用している第三種
郵便の廃止や点字
郵便等第四種
郵便の廃止が取りざたされました。しかし、第三種
郵便は
国民の文化芸術活動を支援する目的から安価な
料金に設定されているものであり、地方では、新聞の戸別配達にも大きな役割を担っています。
採算が合わないからといって廃止するのは、
郵便事業の公共性をみずから放棄するものと言わざるを得ません。
法案では、
制度自体は残りましたが、
料金設定は
公社にゆだねられており、
障害者団体を初め、反対や不安の声が多数寄せられております。今後とも現行
料金を維持する
考えはないのか、あわせて、政策
料金の設定に対し場合によっては国が補てんすることもあり得るのかについて、
総務大臣の御見解を求めます。
総理は、「山の
郵便配達」という中国映画をごらんになったことがおありでしょうか。中国・湖南省西部の、交通手段がほとんどない山間地帯を舞台に、集配は一日に約四十キロ、険しい山道を移動し、大きなリュックいっぱいの手紙や新聞や雑誌などを心待ちにする人々のもとへ運び、新たにそこでまた預かり、一度の配達に二泊三日の行程をかけてやっと家に戻るという、本当に過酷な仕事に従事していた
郵便配達人が長年の仕事を息子に引き継ぐという、父と子の触れ合いを描いた感動の物語でございます。四季折々変わることなく、また、悪天候もいとわず、心と心の仲介人である
郵便配達への信頼は、たとえ国は違っても同じです。
市民、
利用者にとっての利便性を最も重視しつつ、だれのための郵政三
事業なのかということをしっかりと肝に銘じ、
改革すべきは
改革すべきことを訴え、最後に、
総理及び
総務大臣の
郵政事業の将来の姿について思いをお聞かせいただき、質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小泉純一郎君
登壇〕