○植田至紀君 社会
民主党・市民連合の植田至紀です。
去る五月八日、
中国・
瀋陽の
日本総領事館において、
北朝鮮国籍と見られる男女五名が
中国公安当局に拘束された問題、
外務省の命名によれば
瀋陽総領事館事件について、私は、社会
民主党・市民連合を代表して、
小泉総理、福田官房長官、
川口外務大臣に
質問いたします。(
拍手)
言うまでもなく、
事件の事実
関係からして、
中国公安当局の
対応は、
ウィーン条約第三十一条に違反していることは明らかであり、
抗議することは至極当然であります。
しかし、それ以上に問われるのは、
領事館の側が、
我が国の当然守られるべき主権を守るべく適切に対処したのかであります。何よりも、今回の
事件は、外交問題である以前に、
中国公安当局が
我が国の主権を
侵害したという事実以前に、
我が国の
在外公館が主権を明け渡したかごとき事実こそが問題とされなければならないのであります。(
拍手)
昨日、
外務省から
調査結果が公表されました。その内容は、まさに、主権を明け渡した事実を実に丁寧に明らかにしたものであります。しきりと、
日本側が
同意を与えた事実はないなどと述べておりますが、本来当たり前のことをわざわざ強調しなければならないことを恥ずべきではないでしょうか。
問題は、その場で何ら
抗議をしなかったことであります。まず、この点について
総理の御見解をお伺いいたします。
続いて、
外務大臣にお伺いします。
外務大臣は、
事件をいつ知ったのでしょうか。私が知る範囲では、その第一報は
事件発生から実に二時間が経過していたということですが、それは事実でしょうか。まさか、
大臣が委員会に出ておったので
報告がおくれたとは言いわけにはなりません。かかる
体制で
危機管理が機能していると、まさか
外務大臣も断言はなさらないとは存じますが、御見解をお伺いいたします。同時に、第一報を聞いてまず何を
指示したのか、これもお伺いします。
さて、
調査結果に沿って、
外務大臣に引き続きお伺いします。
まず第一に、
総領事館入り口で
女性二名、
幼児一名が取り押さえられた際の状況について、副
領事は
中国側の
武装警察官が
敷地内に入っていたという「
認識はなかった。」と
報告にありますけれども、副
領事は、どこまでが
敷地内で、どこからが
敷地外かを知らないのでしょうか。当時の状況を冷静に見ていなければ、
調査結果にあるような事実経過は述べることはできないはずです。にもかかわらず、最も重要な問題になると「
認識はなかった。」などとごまかしていること自体、
調査結果の正当性を疑うに十分だと
考えますが、見解をお伺いいたします。
第二に、査証待合室に入った
男性二名が取り押さえられた際の状況についても、
武装警官が
敷地内に入ったのを「気づいていなかった。」とか、「言葉を発する間もなく」
連行されたとかありますけれども、このことは、主権を侵されながらもなすすべがなかったということをいみじくも示しています。
外務大臣はいかに総括されるのか、御見解を伺います。
第三に、五名が
連行された際の状況について、第一報を受けた総
領事が本省に連絡をとったところ、本省の
担当者は「とりあえず
国際法上の問題を指摘しつつ、追って連絡する旨述べた。」とありますが、まず、本省
担当者はだれなのか、明らかにしていただきたい。
さて、その上で、総
領事に対して
国際法上の問題を指摘したなどというのも、実にばかげています。総
領事が
ウィーン条約を知らなかったのでそのレクチャーをしていたとでも言うおつもりでしょうか。それとも、この段階では総
領事は事実
関係を正確に把握していなかったのか。それならば、不正確な情報で本省が
指示をしていたことを立証することになりますけれども、御説明をお願いいたします。
また、公使は「無理はするな、最終的には
連行されても仕方がないと述べた。」とあるけれども、これが事実とするのであれば、耳を疑うのは私だけではないでしょう。かかる
認識を公使が持ったということは、
我が国の主権を守らなければならないということを知らなかったのか、それとも、主権を明け渡すと判断したのか、どちらかしかありません。公使の判断は一体どちらだったのか、明らかにしてください。
蛇足ながら、主権を守る
行為は何も物理的に押しとどめることに限りませんから、
総領事館員の身の危険をおもんぱかったなどという答弁は通用しないことをつけ加えておきます。
次に、官房長官に伺います。
きのうの会見で、
外務大臣には全く
責任がないと述べられましたが、では、今回の
事態は一体だれが
責任をとるべきか、具体的にその役職名もしくは固有名詞を明らかにしてください。
最後に、
総理に二点だけ伺います。
一つ目は、
総理も
外務大臣の更迭を否定されましたけれども、もしそうならば、
総領事館側の
対応は一点の曇りもなく、
我が国の主権を守るために身を挺して働いたと御判断されているということでしょうか。そうでなければ、本来、慎重に判断すべき閣僚の出処進退について明確に語ることはできないと
考えますが、御見解をお伺いします。
さて、
最後に
総理にお伺いしたいのは、
調査結果を通じて全く触れられていない問題、すなわち、
人権意識の
欠如であります。子供が泣き叫ぶ中で、ただそれを傍観するのみで、子供に駆け寄ろうともしなかったことは、映像によって明らかであります。かかる事実は
我が国政府の
人権意識の貧困を
国際社会に知らしめたものであると
考えますが、
総理、いかがですか。
人権に係る
認識は、後になって言葉で語るものではなく、とっさの判断の中で如実に表現されるものではないでしょうか。今回の
事件の真摯な反省を本当になさるのであれば、
職員はもちろん、特定の職業に従事する者への
人権意識の涵養に向けて改めて取り組む決意がおありかどうか、この点を
最後に
総理にお伺いし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕