○東祥三君 私は、自由党を代表して、ただいま
議題となりました有事
法制関連三
法案について質問いたします。(
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国民の
生命、
財産、自由、人権、文化を守り、
国民生活を発展させることは、国家の最大の
責務であります。日本国の危機は、すなわち
国民の危機であり、国家の存亡にかかわる非常
事態に当たっては、
政府は、すべてに優先して
国民の
生命財産等を守らなければなりません。
武力攻撃であろうが、テロであろうが、自然災害であろうが、非常時の国家の鉄則に変わりはありません。
本来、この最
重要事項については、憲法に
規定がなければなりません。日本の有事、非常時に、
我が国としていかなる手段、方法によってその危機を管理し、排除するのか、その明文
規定がないのは現行憲法の欠点であります。(
拍手)
私たち自由党は、それを補うために、安全保障に関する
基本法と非常
事態に
対処するための
基本法を制定すべきであると考えます。
日本の安全保障は、これまで、
政府の憲法解釈によって、なし崩し的に、恣意的に行われてきましたが、安全保障の原則とそれに基づく
自衛隊の
行動原則を確立し、内外に宣明すべきであります。その土台の上に、非常
事態において、国家が
国民の
生命と
財産をどのような手段、方法で守っていくのかを定める必要があります。この二つの
基本法により、これまであいまいにしてきた憲法解釈を確定し、国がどうやって
国民の平和と安全を守るかについて
基本方針を明示するのであります。
まず、安全保障
基本法について申し上げます。
我が国の安全保障は、一、個別的であれ、集団的であれ、自衛権は極力
自己抑制的に行使する、二、日米安全保障体制を堅持し、その信頼性をさらに高める、三、
国際連合の平和活動に積極的に参加する、の三原則に基づいて行う。
具体的には、第一に、
我が国に対し直接の
武力攻撃があった場合、及び
我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば
我が国に対する直接の
武力攻撃に至るおそれがある
事態が生じた場合、
自衛隊を出動させる。
第二に、
我が国に対する直接の
武力攻撃でなくても、日本国を侵害する
目的をもって、
国民の
生命財産を侵し、社会の治安を乱す
事態が生じた場合には、
自衛隊により治安の回復を図る。
第三に、国連安保理もしくは国連総会において国際平和の維持、回復のための決議が行われた場合には、
国際社会の一員として、PKO活動及び武力行使を含む多国籍軍に参加する。
次に、非常
事態に
対処するための
基本法について申し上げます。
まず、国家の非常
事態とは何かが問題であります。国家の非常
事態とは、他国からの
武力攻撃にとどまらず、国家テロ、サイバーテロ、原発事故、水道への細菌混入、
エネルギー危機、大規模地震、大洪水など、多種多様な形態が考えられますが、
国民生活に不可欠な食料、飲料水、燃料、電灯、交通手段の供給が崩壊し、あるいは
国民生活から生活必需品が剥奪されるような、すべての
事態を想定しなければなりません。
そのようなときには、内閣は、国会の承認を得た上で国家の非常
事態を宣言し、非常
事態態勢のもと、内閣の責任において、強いリーダーシップによって
事態を収拾していかなければなりません。そうしなければ、
国民の
生命財産等を守ることができないからであります。
また、非常
事態はいつ起きるかわからないことから、非常
事態に
対処する態勢は平時から内閣の中に
組織しておく必要があり、総理大臣のもとに
権限を集中して、いつでも
対処し得るようにしておかなければなりません。
さらに、非常
事態においては、
国民生活を守るために、道路、鉄道、航空、船舶等の交通、郵便、通信、
電波、そして電力、ガス、石油等
エネルギーの輸出入及び販売などについては、
一定の統制を行わざるを得ません。内閣が地方自治体に対する指揮命令権を持つことも必要になります。しかし、それは、あくまでも
国民を保護するために限定されるべきであります。
以上、自由党の考え方を述べてまいりましたが、この考え方に立って今提出されている
政府案を拝見すると、
政府案は、時代錯誤そのもので、まことに支離滅裂、あいまいもこ、奇想天外。
国民の
生命財産を守ろうと本気で考えたとは思えない代物であります。(
拍手)
政府は、米国同時多発テロ事件を契機に、憲法解釈を回避したまま、
自衛隊を米軍の後方支援のために海外に派遣しました。一国の軍事力を動かすのに、そのように無原則、なし崩し的に運用するやり方は、海外だけでなく国内でも、
自衛隊を恣意的に動かす可能性をはらみ、危険きわまりないものと言わなければなりません。(
拍手)
今、安全保障についての自由党の原則を申し上げましたが、
政府は、一体、いかなる原則のもとに
自衛隊を活動させようとするのか、小泉総理の御所見をお尋ねいたします。
また、今日、
我が国を取り巻く安全保障
環境は大きく
変化しております。かつてのように、戦闘機や艦船を使って上陸し攻めてきた敵に戦闘機や戦車で応戦するという、古い戦争観は通用しなくなっています。まずテロで日本国じゅうをパニックに陥らせてから攻撃したり、いきなりミサイルや生物化学兵器で日本の戦闘能力を奪うといったシナリオが考えられます。
政府はどのような有事を想定して本
法案を策定したのか、冷戦後の有事の中心形態と見られているテロや最も発生頻度の高い大規模災害への
対処をなぜ後回しにしているのか、総理の御見解を伺います。(
拍手)
政府案では、有事に当たって、
対処基本方針を閣議決定した上、「
武力攻撃事態対策本部を
設置する」となっていますが、そんなのうてんきな感覚で
国民の
生命財産を守ることができるはずがありません。
洪水や地震などの災害対策と同じような認識で、どうして
武力攻撃事態に
対処できるのでしょうか。小泉総理は、
政府案によって国家の危機に迅速に対応できると本気で考えておられるのか。もしできると考えておられるなら、その
理由を明確にお話ししていただきたいものであります。
そもそも、
政府が想定する
武力攻撃事態とはどんな
事態なのか。
政府案では、日本が直接攻撃された場合のほか、
武力攻撃が予測されるに至った
事態も含むとされておりますが、その判断基準は何であり、だれがどのように判断するのか。周辺
事態安全
確保法には、我が自由党の主張で、「そのまま放置すれば
我が国に対する直接の
武力攻撃に至るおそれのある
事態」との文言を入れましたが、
政府案の言う「
武力攻撃が予測されるに至った
事態」とは、それと同じ意味なのか、あるいは全く別の概念なのか、御
説明願いたいものであります。
また、
政府は、
国民保護
法制、
自衛隊支援
法制、米軍支援
法制などを二年以内に
整備するとしておりますが、どのような優先順位で、どのような位置づけで
法案を
整備するのか。有事
法制の全体像や考え方が全くわからないのであります。非常
事態のときの
国民の避難・保護
措置が担保されていないだけで、この
法案は欠陥
法案であると言わなければなりません。
以上の点について、御所見をお聞かせください。
政府の有事
法制整備方針は、
国民に対する重い責任感が全く見られず、何の見識も
方針もなく、体裁だけを整えたものにすぎないと言わざるを得ません。
自民党、公明党との連立政権で有事
法制の
整備を決めてから、三年近くが
経過しております。それにもかかわらず、
政府・与党はこんな
内容の
法案しか提出できなかったのですか。第一、自自公連立政権において、有事
法制の
整備に反対したのは自民党ではありませんか。立案能力がないというのであれば、政権を交代していただかなければなりません。総理の責任ある答弁を求めます。(
拍手)
最後に、
国民の私権の
制限について伺います。
有事の際には、
我が国の危機を管理、克服するために、一時的に
国民の私権を
制限せざるを得なくなることがあります。それは、憲法第十二条等に
規定されている公共の福祉にかなうものとして行わなければなりませんが、そうである以上、どのような場合にどこまで
制限するのか、明確にしなければなりません。そうしなければ、
権限の乱用が行われたり、
国民を混乱に陥れることになります。私権
制限のガイドラインについて、御見解を伺います。
以上指摘してまいりましたように、
政府案は、いずれの面からも、いずれの角度からも、非常
事態において
国民の
生命と
財産を守る上で、百害あって一利なしと言わざるを得ません。
したがって、自由党は、今、小沢一郎党首を中心に対案を作成しており、近く、安全保障
基本法案と非常
事態に
対処するための
基本法案を国会に提出し、どのような
事態においても
国民の
生命、
財産、自由、人権、文化を守り抜くため、
基本方針を
国民に明示したいと思います。(
拍手)
自民党幹部は、既に、有事
法制関連三
法案を今国会で成立させるために、野党との修正協議に大胆に対応する考えを示しておりますが、このようなずさんな
法案は、修正協議に値しません。
政府案は、土台が間違っている以上、廃案にして根本からつくり直すしかありません。
政府案の修正でごまかして成立させることは、日本国と日本
国民に対する重大な背信行為であります。
よもや修正協議に応じる野党はあるまいと申し上げ、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕