○土井たか子君 私は、
社会民主党・市民連合を代表いたしまして、
小泉総理大臣の
施政方針演説に対して質問をいたします。(
拍手)
一昨日の
小泉総理の
演説を私、聞きまして、大変驚きました。そして、失望いたしました。一万五千字に及ぶ
演説です。しかし、その中に、今
国民が最も知りたいと
考えていることが何一つまともに入っていないからであります。
外務省によるNGO排除問題はどこに行ったんですか。
自民党の元幹事長の
私設秘書による脱税・口きき疑惑や
国会議員元秘書による入札介入
事件はどこに行ったんですか。
BSE、いわゆる
狂牛病の発生を防げなかった
政府の
責任と、先日発覚した
雪印食品の偽装牛肉
事件は
一体どこに行ったんですか。
基本的人権と平和主義を掲げる
憲法を持つ国で、そのいずれをも制限し、あるいは破壊してしまうかもしれない有事法制について、この段階に至っても、備えあれば憂いなしの一言だけとは、余りに無
責任ではないですか。
あらゆる指標が下げどまらない
経済の深刻な
危機の中で、
国民は仕事を奪われ、生活を奪われ、未来を、将来への希望を奪われています。大不況下に緊縮
予算を立てるという世界でもまれな
経済政策によって、この三月にも再び
日本は
金融危機に陥るとも言われています。
日本国民だけではありません。世界じゅうの国々が、
日本の
経済の成り行きを心配し、その急速な収縮を恐れているわけであります。かたずをのんで
小泉政権の
経済政策を聞こうという
国民を前にして、相も変わらず、
構造改革の空念仏と、努力が報われる
社会などという美辞麗句ばかり。方向性もなければ、具体性もないではありませんか。こんないいかげんなことでいいんでしょうか。
初めに、
外務省によるアフガン復興
会議へのNGO参加拒否問題について伺います。
幾つものメディアの調査がはっきりと示しているとおり、
小泉総理の
けんか両成敗的な決着に、
国民は納得しておりません。これでNGO参加拒否問題が決着したとは、全く
考えておりません。
問題は、二つ残っていると私は
考えます。
第一は、アフガン復興
会議へのNGO参加拒否について、
鈴木宗男
議員の介入があったかどうか、その事実関係についてきちんと調査したのかということであります。調査をした上での
田中、
野上両氏の更迭であったのか。調査をしたとするなら、いつ、だれに対して、どのような調査をされたのでしょうか。
一月二十九日の、出された「
政府見解」には、アフガン支援国
会議へのNGOの参加に当たり、特定の
議員の主張に従ったことはないと書かれております。しかし、一月二十四日の
予算委員会における
田中外相の答弁と
外務省事務当局の答弁に相違のあることを
政府見解が認めるというこの「
政府見解」の中で、既に矛盾があらわになっているんです。こんな
政府見解、今まで見たことありませんよ。
総理は、両氏の更迭を発表したとき、これは
自分の
責任だと明言されました。そのとおり、任命権者の
責任であります。そして、その
責任は、事実を確認して、理非曲直を
国民の前に明らかにして、初めて果たされるものであります。
二月四日、
予算委員会の席で、我が党の横光
議員の質問に対して、どういう判断をするか、「その点について、いろいろ、今回のNGOの問題については、
外務省も
鈴木議員の言うことを気にし過ぎたな、その点は反省すべきだ」と
総理は答えられておりますけれども、それなら、なぜ、外相更迭の必要があったんでしょうか。
外務省の
改革について、口をきわめてこれを強調されるのが
総理ですが、新外務大臣と前外務大臣との引き継ぎは行われたんでしょうか。そのことが何にも明らかにされておりません。新外務大臣は、
就任一週間たちました。問題が山積している環境
行政が大事なときに、環境大臣はどうなっているんでしょうか、お顔が見えません。けじめをつけると始まった大臣交代なのに、けじめをはっきりつけないで、
外務省の
改革ができるんでしょうか。
総理大臣、どうなんですか。(
拍手)
小泉総理、これは
国民が大きな関心を持っている問題ですよ。しっかりお答えいただきたいと思います。
もう一つ問題だと思うのは、NGOというものについて、そもそも
政府は理解していないのじゃないか、理解が足りないのではないかということであります。
NGOとは、言うまでもありません、ノンガバメンタル・オーガニゼーション、つまり非
政府組織であります。
政府とは違う、市民の自主的で自立した、しかも利潤を求めない
活動であって、古くは赤十字などもその一つですが、第二次世界大戦後、とりわけ一九七〇年代、八〇年代に至って、世界的に非常に盛んになったものです。盛んになったのは、
政府や
企業では解決できない問題が数限りなく見出されたからであります。
活動の分野は、枚挙にいとまがありませんが、地雷の廃止や核廃絶などの平和、途上国や紛争
地域への緊急援助や開発支援、環境、福祉、教育、人権の擁護などに及びます。すべて、公共的なテーマにかかわっております。国際的なNGOだけで、世界で三万を超えると言われております。私
自身もNGOにみずから参加をいたしておりますが、たくさんのNGOの友人がおりまして、日々、多くの情報や
意見をいただいています。
NGOは、
政府の下請ではありませんし、その指揮下にあるわけでもありません。
政府を補完するものでもないんです。最近はコラボレーションという言葉を使うようですが、ある課題をめぐって対等の立場で協働する、
共同作業をするという
意味であります。これまで
政府に対して批判、告発をする傾向の強かったNGOが、
政府とも特定の目的に関しては
共同作業して、そのことによってよりよい
社会を築いていこうとする新しい
考え方と言っていいでしょう。
この場合、大切なことがあります。大切なことは、対等性であり、自立性なんです。相互に批判を持つというのは、ごくごく当然のことであります。
政府を批判したから国際
会議に参加させないなどという意識そのものが、今や
国際社会で通用いたしません。そして、国連を初め国際的な
活動において、NGOの参加がない場というのは、もはやどこにもないんです。一つ一つのNGOの力は弱くても、世界じゅうにネットワークが張りめぐらされていますから、情報の量と確度は官庁や
企業にまさるとも劣らないと言えるでしょう。
そのことを
小泉総理はしっかり理解しておられるんでしょうか。これから、
日本政府は各分野のNGOとどのような関係を築いていこうと
考えておられるんでしょうか。お答えいただきたいと思います。
小泉総理は、
自民党政治を打破して
日本を変えると大見えを切って登場されました。しかし、今回明らかになった脱税疑惑や不正入札
事件は、いずれも、
自民党の体質そのもの、
政官業の
癒着と利益誘導
政治が改まっていないどころか、完全に温存されていることを示しています。
私と私の属する
社会民主党は、あらゆる機会をとらえて、
政治腐敗の問題を追及してきました。またか、と思われる方があるかもしれませんが、私たちの方こそ、またか、と申し上げたいのであります。
KSD疑惑が発覚して、
自民党の村上、小山両参議院
議員が逮捕されてから、わずか一年しかたっておりません。再び、
国会議員の元秘書や
私設秘書の肩書を
利用した、悪質な口きき行為が発覚したんです。これらは、れっきとした贈収賄というべきものです。この
国会は、疑惑の全容解明と、
あっせん利得処罰法の改正が優先されるべき課題であると
考えますが、
総理、いかがですか。
関係者の
国会証人喚問を行うことを要求したいと思います。そして、
私設秘書や、
議員の親族へ
あっせん利得処罰法を適用拡大する改正も要求したいと思います。どうお
考えですか、
総理。もう
政治腐敗の問題は終わったとお
考えなんでしょうか。
さらに、KSD疑惑について申し上げたいことがあります。この一年、どのような実態調査をされたのか、伺いたいんです。でっち上げ
自民党員の党費立てかえ問題は、調査と、党費をお返しします、これは森内閣のときのお約束だったんですよ。KSD会員に
自民党費は返されたんですか、どうですか。これをひとつはっきりお答えいただきたいんです。(
拍手)
政治家と金の問題について私たちが徹底的に追及するのは、単に、
政治家の倫理を問うためではありません。もちろん、倫理も問題ですけれども、それだけじゃない。「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」にもかかわらず、金が介在することによって、一部の利益が全体の利益に優先させられてしまう、これが問題なんです。国の政策を大いにねじ曲げる、これが問題なんです。
特に、
公共事業には数多くの事業者がかかわっています。むだで環境破壊的な
公共事業は、
国民から厳しく批判されて、ついに
予算も削減されました。しかし、まさしく
国民の公共的な利益のための事業というのは、必ずあります。では、本当に必要な事業は何なのか、そして、どの事業者がその事業を行うにふさわしいのか、その選択には、公正さと透明性がいよいよ不可欠になります。(発言する者あり)当たり前ですよね。しっかり当たり前にしてください。
政治によるあっせん、介入は、そうしたプロセスをねじ曲げ、
国民が享受すべき福利を妨げる、許しがたい行為と言わなきゃなりません。
総理はどう認識していらっしゃいますか。
政治と金の関係を断ち切るために、私たちは、従来より、
企業・団体献金の禁止を求め続けてまいりました。一九九四年、政党助成金の制度ができて、なお
企業、団体からの献金を受けるというのは、どう
考えてもおかしいんです、これは。
自民党も、そう
国民に約束したじゃありませんか。渋っていた
自民党も、やっと
政治資金規正法の改正に応じて、そして、改正が現実のものになりましたが、抜け穴をそこでは準備しておりました。それが、ただいまの政党支部の問題なんです。
自民党の支部は昨年一月一日現在六千九百三十一、二〇〇〇年に集めた
企業・団体献金は、前年の五倍、百六十八億円に上ると新聞は伝えています。結局、
政治資金規正法の改正で禁止された資金管理団体への献金が政党支部に変わっただけの話になっていますよ。
企業・団体献金を受け、事務所には何人もの
私設秘書を雇い、官庁と
企業の間で
公共事業の口ききをする。これでは、これまでの
自民党政治そのものですね。どうして、これで
自民党政治を打破するということになるんですか。(
拍手)
小泉総理、あなたは、一月二十二日の
衆議院本
会議で、社民党の辻元
議員の質問に、一定の規制のもとで
企業・団体献金を受けることは、必ずしも悪とは思っていない、先ほどもそれをおっしゃっていました。(発言する者あり)ここからなんです。ここからなんです。黙って聞いてくださいよ。
企業・団体献金を受けなかった場合、
政治活動はだれがやるんですか、税金でやるんですかとお答えになりました。
小泉政治の正体見たり、こう言わなきゃなりません。これでは、
政治家はあっせんをする動物と言ってひんしゅくを買った
自民党議員とどこが違うんですか。何のために政党助成の制度をつくったんですか。(
拍手)
この際、
あっせん利得処罰法の強化とともに、
企業・団体献金を全面禁止にすべきだと思います。これは、
総理のお
考えをしっかり聞かせていただきたい。
次に、
雪印食品による偽装牛肉
事件についてお尋ねします。
雪印による国産牛肉の偽装は、税金を詐取した極めて悪質な犯罪であって、
政府がこれを告発したのは当然のことであります。しかし、この間、明らかになったのは、雪印という一メーカーの問題ではなくて、私たちの口に直接入る食べ物の産地を偽ったり、ラベルを張りかえたりしていた食肉業界の驚くべき実態でした。
輸入牛肉を国産と偽ったり、少量の国産牛をまぜて国産と表示するなどの虚偽表示はしばしば行われ、問題にもなってきたと言われています。なぜ、
政府はこうした実態を放置してきたんでしょうか。また、こうした実態があったからこそ、今回の偽装
事件も生じたと言えるのであります。
政府の
責任は重いと言わなきゃなりません。
私は、先日、
雪印食品関西ミートセンターまで出向いて調査をしてまいりました。そこで明らかになりましたのは、こういうことであります。
今回悪用された事業は、牛肉在庫緊急保管
対策助成事業といいまして、おくればせながら全頭検査が始まった昨年十月十八日より以前に解体された国産牛肉を国が買い取るという事業です。
さて、この事業を行う全国食肉事業協同組合連合会、略して全肉連と申しますが、この連合会が都道府県連合会に出した指示があります。十月二十四日の段階では、対象牛肉には、屠場の証明書、格付証明書などで屠畜月日が証明できる書類が必要と明記されていました。ところが、五日後の十月二十九日、同じく全肉連が出した指示を見ますと、対象牛肉の確認は冷蔵倉庫業者の発行する在庫証明でよいと変更されていました。つまり、食肉業者が抱える在庫牛肉をチェックするすべもないまま買い入れる
仕組みにしたのは、事業を行う
政府自身だったのではないんですか。なぜ、このような変更が行われたのでしょうか。まことに不可解と言わざるを得ないのです。
雪印の詐欺は許しがたい
事件です。しかし、こうした問題を引き起こしたもともとの原因は、
BSE、いわゆる
狂牛病の発生を許した
農水省にあったと言わなければなりません。
一九九六年、世界保健機構、WHOが出した勧告に基づいて、肉骨粉を牛のえさとして使うことを禁止できたし、また、すべきだったにもかかわらず、
農水省はそれをしなかったのです。米国は、同じ勧告を受けて、九七年には肉骨粉を禁止して、ヨーロッパからの肉骨粉の輸入も全面禁止しています。ヨーロッパ以外で、
狂牛病の発生を見たのは
日本だけですよ。当時、
農水省は、この問題を十分自覚していたはずです。なぜ、法規制を行わなかったのか。怠惰だったからですか、それとも、肉骨粉の
製造業者をおもんぱかったのでしょうか。いずれなんですか。
HIVの蔓延をもたらした厚生省と全く同じではないですか。
政府の
国民に対する
最大の
責任は、その生命と健康を守ることであります。
国民の生命、健康を守れない
政府は、
政府の名に値しません。まさに、
日本政府は、NGOの言う、
信頼できないお上、そのものではありませんか。(
拍手)
さらに、昨年、EUの
狂牛病発生
可能性の評価を断ってしまったのも、
農水省であります。
国民の生命や健康より官庁のメンツを優先させるという、この無
責任と傲慢の同居は
一体何事でしょうか。
私は、
小泉総理は
BSE発生問題について
政府の
責任をどう
考えておられるのか、はっきりとここでお答えいただきたいのです。そしてまた、農水大臣を初め
農水省担当者の
責任についてどうあるべきだと思われているのですか。やめないで引き続いてやることが
責任だ——いいです、もう。そんなことは聞きたくない。本気になってどう
責任を果たすか、これこそまじめに答えていただきたいと思いますよ。(
拍手)
次に、不審船と有事法制について伺います。
総理は、
施政方針演説の中で、二回、武装不審船について触れておられます。これは昨年十二月に起きた奄美沖不審船
事件のことですが、
国民の生命に危害を及ぼし得る勢力とされ、
危機管理、有事法制準備の名目に挙げられています。
私は、この不審船
事件、わからないことが余りに多い
事件だと
考えております。海上保安庁の方から説明を求めたり、また、一月十日の
衆議院国土交通委員会における審議の記録を読み直したりいたしましたが、なお不明なことが多い。
我が国が、警察
行動とはいえ、公海上において交戦し、結果的に相手側の船を沈めてしまったというのは、恐らく戦後初めてのケースではないかと思いますから、この問題は軽視できません。有事法制の名目とされているのですから、なおさらのことであります。
第一は、この船は
日本に対していかなる不法行為を働いていたのか、あるいは、いかなる不法行為の疑いがあって公海上において追跡を行ったのか、それがわからないんです。
私たちが見せられた航跡図では、不審船は公海上を
日本領海から離れていくだけであります。
日本に上陸したり、領海に立ち入ったことにはなっていません。言うまでもなく、国際海洋法では、公海はもちろん、領海においても、すべての船舶に無害通航権が認められております。沿岸国は、それを妨害しない義務を負っております。排他的
経済水域における沿岸国の権利は、生物・非生物資源への権利のほかは、海洋環境の保全に対する管轄権などがあるにすぎないのであって、よほどの証拠がない限り、立入検査や、ましてや威嚇射撃などは許されないとされております。
海上保安庁によれば、追跡の理由は漁業法違反です。漁船のようでありながら漁網が見えなかったからというのです。ところが……(発言する者あり)静かにして聞いてください。
通常、排他的
経済水域においては、違法操業を疑われないために、漁船は漁網を格納しておくのが普通であると言われています。違法操業の疑いで追いかけたというのに、相手の船は操業している様子がないというのは矛盾ではないのですか。
第二は、重武装した船が害をなす目的で
日本に向かってきたというのならともかく、離れていくものを、追跡ばかりか射撃までしかけたのはなぜかであります。
前回、逃げられたからというのは理由になりません。それは、国内の、しかも一官庁の理屈であって、事は公海上の
日本の
行動にかかわるからです。国際的に説明できる理由が必要です。
警察官職務執行法がその
根拠になっていますが、では、どのような犯罪を疑っていたのか。射撃までするのには、相当な凶悪犯罪が行われていたことを疑わせるに足る証拠が必要であると思われます。それはあるのでしょうか。
事ほどさように、今回の不審船
事件には、
国民に隠されている部分が多いんです。
事件の真相を
国民に隠したまま、ただ脅威をあふっていると疑われないために、
総理は
事件の全体像をきちっと
国民に示すべきであります。
今回の
事件をめぐって、中国は、不快感、警戒感を示しています。人の玄関先でなぜ騒ぎを起こすのかと。韓国も強い懸念を示しています。
事件は、
日本の領土、領海で生じたのではなく、東北アジアの真ん中の海で生じたんです。
日本の船ばかりでなく、沿岸各国の船も、他の国の船も、漁船も輸送船も通る海域で起きたんです。
この
事件は大変不幸な
事件であったと私は思います。しかし、起きてしまった後、脅威をあふるだけで何もしないというのはどういうことなのか、理解できません。
再びこうした悲劇を繰り返さないために、また、沿岸各国がお互いに対する不信と疑念を抱くようなことがないために、すべきことは何なのか。私は、海の紛争防止のために協議する枠組みを、
日本が周辺諸国に呼びかけてつくるべきだと思います。
日本、中国、南北朝鮮、台湾、ロシア、あるいはフィリピンやアメリカも入っていいかもしれません。紛争ばかりでなく、例えば大規模な船舶の事故や遭難など、この
地域の海で何か不測の事態が起きたときのために、協議と対話の場を設けておくことが今何より必要ではないかと
考えますが、いかがですか。(
拍手)
そして、不審船について、本当に脅威であると
考えているならば、直ちに朝鮮民主主義人民共和国と対話に入るべきです。紛争を引き起こしたり拡大しないためには、対話し、関係を築く以外に道はありません。
施政方針の中では、一方で、
日本国民の生命に危害を及ぼす勢力と言いながら、一方で、正常化交渉の進展に粘り強く取り組むとも言われています。余りに支離滅裂だと思います。
対立と緊張が対話の契機になり得ることは、
外交のイロハです。その
意味で、昨年、不審船
事件直後、
外務省が北朝鮮当局と北京で接触を持ったという報道がありましたが、事実であれば、正しい
行動であったと思います。最もやるべきでないのは、今、周囲に脅威があるからと言い立てて、対話の姿勢もなく、有事法などを準備することだと思います。
備えあれば憂いなしと、
総理は何回も言われています。
総理、あなたは、幾たびも厚生大臣をなさったはずですね。これは、
社会福祉にこそ、備えあれば憂いなしと言っていただきたい言葉です。それが地震や洪水など自然災害への備えならもっともなこと、大いに備えをしていただきたいと思います。しかし、有事法制の対象は自然災害ではありません。有事への準備とは、戦争への準備ということであります。私は、子供のころ、戦争への準備という
意味で、嫌ほどこの言葉を聞かされました。
憲法で戦争を禁止しているのに、なぜ戦争準備なのか。この議論は大切であり、もし有事法案が提出されるなら、それをめぐって徹底的に追及いたしますが、外に対して協議や対話をしない国が戦争準備を始めたとするならば、周辺の諸国はそれをどう受けとめるでしょうか。よくよく
考えていただきたいと思います。間違いなく、警戒を高め、あるいは軍備強化を図ることになるかもしれない。この場合、備えをすれば、逆に、憂いを高めることになるんです。
小泉総理は、昨年、中国と韓国を訪問し、首脳と親しく会談をされました。ことしはワールドカップの年であり、アジア交流の年と、
総理自身、言われているではありませんか。なぜ、このときに戦争法の準備なんですか、お答えいただきたいと思います。
経済危機と雇用の問題について伺います。
この間、どの
経済学者に聞いてみましても、これほど深刻な
経済状況は経験したことがないと言われます。戦後どころか、七十年前の大恐慌時代以来の事態であると警告する
経済学者もおられるほどです。特に、昨年以降の激しい
景気の落ち込みをどうとらえるのかが問題であります。
失業率は、見る見るうちに昨年七月に五%を超え、数カ月で五・六%に達しました。しかし、実際の失業率がこの程度であると信じる人はありません。実際はこの倍ほどもあるのではないかと言われています。若い世代の失業率、また、五十歳代以上の失業率はさらに深刻です。私たちの
社会は、若者に仕事を用意することができない事態に立ち至っているんです。非正規雇用がふえ、労働条件はいよいよ悪化の一途をたどっています。安定的な仕事や収入がなければ、将来の見通しもなく、当然のことながら、
消費は減退します。
消費が落ち込めば、
景気はさらに悪くなります。この悪循環をいかに断ち切るかが問われています。
小泉総理は、
痛みを耐える
改革ということをしばしば言われます。しかし、あるところには既に、十分耐えがたい
痛みが集中しているんです。それは、失業者であり、
中小企業であり、
地方の
経済です。年間三万人以上の人々が自殺するという事態が、それを示しているじゃありませんか。
地方に行けば、どの町からも活気が消え、商店街はシャッターをおろしたままではありませんか。
日本は、戦後長く続いた低失業率の時代が終わって、高失業率の時代に入ったんです。その転換は急速でした。意識の転換がおくれて、いまだに
政府の
対策は後手後手に回っているんです。
失業の急速な増大によって、雇用保険の積立金も激減して、
破綻に近づいています。本年度中にも、積立金が底をつくおそれがあります。
総理がセーフティーネットと言われるならば、雇用保険の
給付ほど当たり前のセーフティーネットはないはずです。このセーフティーネットが破れるままに放置しておいていいとは思えません。雇用保険は、財源の四分の三を労使の折半で、四分の一を国庫
負担で賄っていますけれども、これを、労使の
保険料を引き上げて
対応するのではなくて、思い切った
財政的な措置をとるべきだと
考えますが、いかがですか。四分の一の国庫
負担を二分の一にまで引き上げたらどうですか。これはぜひ、
総理、英断でもって臨んでいただきたいと思いますよ。(
拍手)
総理の
構造改革は、
企業のリストラ策を後押しして、正規雇用を非正規雇用に置きかえていく傾向をいよいよ強めています。根本的に誤っているんではないんですか。
構造改革が進めば進むほど、安心して暮らせる
社会、子供たちの夢と希望をはぐくむ
社会からどんどん遠くなっていることに、どうしてお気づきにならぬのでしょう。
デフレスパイラルを起こさせないという
総理の決断はいいでしょう。しかし、今の
構造改革自体が
デフレ推進政策なんではないんですか。
私は、だからといって、
景気対策として、再び、むだで環境破壊的な
公共事業をやりなさい、道路をつくれとは絶対言いません。これはもう十分だと
国民は思っています。しかし、このまま雇用を創出しなければ
日本に未来はないということは明らかなんです。
積極的に雇用機会を創出する公的関与が必要だと思います。それは、今の
日本社会に圧倒的に欠けている部分に対して集中的に投資されるべきなんです。福祉、介護、子育て支援、医療、教育、環境、食の安全など、雇用の創出が可能な分野は幾らでもあるじゃありませんか。そして、それは、新しい
社会の形をつくることに必ずなるんです。車の通らない立派な道や橋が山ほどつくられているその横で、老人たちが満足な介護もなく縛られているなんて、余りにおかしい
社会ではないですか。
また、私は、
国民の不安を払拭するために、非正規雇用者の権利を保護し、同一価値労働に対しては同一賃金の
原則を確立することを求めます。
企業の安易なリストラを抑止するために、解雇、配転、賃金切り下げに明確な条件と手続を定める雇用継続保障法の制定を求めます。(
拍手)
アメリカ型の弱肉強食の
社会が世界のすべてではありません。環境を重視して、食の安全を重視して、教育を重視して、労働者の生活を重視している
社会はたくさんあります。個人の生活の豊かさと安心は、同時に、国と
社会の安全につながります。きな臭い有事法制などより、はるかに
国民に安心感を与えるのは、そういう
社会の
あり方であると思います。(
拍手)
人が生きるために
経済があるのであって、
経済のために人は生きているのではありません。その当たり前のことが忘れられているのが、今の
日本社会であり、小泉
構造改革であります。
小泉総理、どうも
小泉総理の
構造改革論は方向があべこべではないんですか。しかし、事今に至っても、
総理はスローガンの絶叫を繰り返すだけで事に
対応されるとするならば、直ちに
小泉内閣の退陣をするしかないということを私ははっきり申し上げて、質問を終えます。ありがとうございました。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小泉純一郎君登壇〕