○神崎武法君 私は、公明党を代表して、
小泉総理の
施政方針を含む
政府四
演説に関連して、主要なテーマに絞って質問をいたします。(
拍手)
小泉連立内閣が「聖域なき
構造改革」を掲げ誕生して、ほぼ十カ月。この間、
小泉内閣は、
経済再生や歳出構造の
見直し、特殊法人
改革、テロ撲滅や地球温暖化への取り組みなど、失われた十年を回復し、社会に元気を取り戻すため、あるいは顔の見える国と言われるため、果敢に努力を続け、内外の一定の
期待にこたえつつあります。
問題は、
小泉総理も指摘されているように、
構造改革には
痛みが伴うということであります。
改革本番の年と
総理が強調される今、企業
倒産の増加、
失業率の悪化など、
痛みと不安が次第に
国民生活の随所に広がり始めていることを、
政治家として夢にも忘れてはならないと思うのであります。
まさしく、
小泉内閣として正念場を迎えているのであり、これからが本番であります。
国民の支持、
期待にこたえるため、今後もしっかりと取り組まなければなりません。
そのためには、
小泉内閣の
構造改革後の社会はどういうものであるのか、明確に示すべきでありますし、
構造改革の結果が求められていると言えます。
総理は、
施政方針演説で、努力が報われ、再挑戦できる社会、人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会など、五つの社会像を強調されており、私も基本的には同感であります。この方向を底流に据えながら、私は、
我が国が目指す
国家の方向として、文化の薫り高き、活力ある国際
国家を二十一世紀は目指すべきであると
考えるものであります。(
拍手)
以下、その観点に立って、順次、質問並びに私の
見解を申し述べます。
昨年のKSD
事件問題に続き、年明け早々、
政治家の影響力や肩書を利用し、
私設秘書や元秘書らが公共工事をめぐる口ききの見返りとして金を受け取るという政官業癒着の
事件が、またしても発覚しました。
公明党は、結党以来、政界の浄化と闘い、清潔、公平、公正な
政治の実現を目指し取り組んでまいりましたが、今回の問題に
国会が真剣に対処することこそ、
政治の
信頼回復であり、この国の第一の
改革と強く訴えるものであります。
総理、あなたは、先月開催された
自民党大会で、いかなるよい
政策を掲げても、政党、
政治家に対する
国民の
信頼がなくては
政策を遂行することはできませんと、明言されました。
総理が目指す「聖域なき
構造改革」の断行には
政治倫理の
確立こそが急務であり、
政治の
信頼なくして
改革なしと言えるのではないでしょうか。
そのためにも、疑惑を持たれている
政治家は、みずからの疑惑解明に努め、
国民に真相を明らかにすることが、
政治的道義的
責任を有する
政治家としての身の処し方であり、
信頼回復の第一歩であります。
再発防止策として、三つの
提案をさせていただきます。
第一は、
あっせん利得処罰法の適用
対象を拡大し、
私設秘書や親族も加えることであり、第二は、いわゆる官製談合防止法の早期制定であります。国や地方自治体など発注側も規制する法整備がなければ、談合は根絶できません。既に、
与党三党プロジェクトにおいては骨子案は合意されており、公明、保守両党の党内手続は終了しています。あとは、
自民党の
決断を待つのみです。
自民党総裁としての
総理のリーダーシップが求められております。
第三は、
政治団体間の寄附のあり方の
見直しです。政党や政党支部に対する企業・団体献金が寄附の名目で
政治家個人の資金管理団体や
個人後援会などへ還流していると言われており、何らかの検討をすべきであります。
なお、
政治への
信頼回復という点では、永年在職議員の特典廃止を初めとする
国会改革も、大胆に進めるべきであります。
また、BSE感染牛の発生を許した農林水産省の
危機意識の欠如や初期段階における不手際などについて、
国民の不信と怒りは極めて大きいと言わねばなりません。このままの状態が続けば、営々と築いてきた
我が国畜産、酪農は
崩壊すると言っても過言ではありません。
政府は、BSE発生の原因解明等、BSE対策の一層の強化、食品行政に対する
国民の不信感を払拭すべきであります。そのためには、三月に結果が出るBSE問題に関する調査検討委員会の結論に基づき、その
責任を明確にし、農林水産省
改革を断行すべきであります。
さらに、今回明るみとなった雪印食品の牛肉偽装
事件は、食に対する
国民の不安、不信を増大させるものであり、まさしく企業倫理が問われております。個々の企業による倫理の
確立、徹底は当然でありますが、行政としても、法令違反には厳然たる措置を講ずるとともに、特に食品など、
国民の生命、健康に影響を及ぼす製品の安全性を
確保するため、徹底した規制、基準を設けていくべきであります。
一連の
外務省問題につきましても、
川口新
大臣になったのを機に
外務省改革を徹底的に行い、
国民の
信頼を回復すべきであります。特に
外務省幹部職員の人事については、従来の慣例や手法にとらわれずに、
外務省改革を実現する上でふさわしい人物を、民間人を含め登用することを検討すべきでありますし、
外務省改革も、民間の有識者から成る
第三者機関を設置し、適切なアドバイスを受ける形で新たな
改革を目指すべきであると
考えます。(
拍手)
さて、
我が国経済は、長期にわたり持続的に物価が下落するデフレ状況が続き、
デフレスパイラルにいつ陥ってもおかしくない局面に立たされております。特に、三月期決算、四月のペイオフ解禁に向け、これから二カ月が、
金融システムの問題も含め、重要な段階と言えます。
私は、今、大事なことは、正念場にある
我が国経済の現状、なかんずく、
デフレスパイラルへ陥りかねない断崖絶壁の
危機的状況について認識を共有し、
事態の打破に向け一致結束して取り組んでいくことであります。
総理、私
たち公明党は、
構造改革へと果敢に立ち向かう小泉船長のもと、団結して荒波を乗り越えていく覚悟はできておりますし、
改革なくして成長なしの方針も、一面においては支持します。しかし、深刻なデフレにあって、やみくもにデフレ的要素の強い
改革だけに邁進するならば、
我が国経済の展望は開けません。デフレ克服こそ、
経済政策の最優先に位置づけて取り組むべき課題であります。
そういう意味におきまして、私は、
改革なくして成長なしの前に、デフレの克服なくして
改革もなしという
言葉をつけ加えたいと思います。
総理自身も、デフレ阻止に向けて強い決意で臨む旨を
表明されておりますが、具体的にどう実行されるのかが重要であり、
総理の実行力を強く
期待するものであります。
以下、私は、五つの視点から
提案いたします。
第一は、適切な
金融政策の実行であります。
現在、
日本銀行は、日銀当座預金残高を通じた潤沢な資金供給、長期国債買い入れの増額など思い切った対応措置を講じており、評価をいたしますが、残念ながら、実体
経済にはほとんど効果をあらわしておりません。
財政政策に縛りがある以上、この際、デフレ克服という共通の目標に向かって、
政府、日銀が連携し、思い切った
金融政策を打ち出すべきであります。
第二は、税制
改革についてであります。
この一月より
政府税制調査会において抜本的な税制
改革に向けた議論が始まり、
経済財政諮問
会議でも議論が始まるとのことであります。中長期的視点に立って、二十一世紀のあるべき税制について議論を進めることは大いに歓迎をするものでありますが、当面、
平成十五年度
改正に向けては、デフレの克服のための
経済活性化を促し、また、
構造改革にも資する税制
改革に絞るとともに、景気の現状にかんがみ、少なくとも税制中立を前提で議論すべきであると
考えます。
第三は、資産デフレの克服、特に土地、不動産の流動化、有効利用の促進についてであります。
景気の低迷、デフレが進行する中、土地、不動産の価格低迷がさらに
不良債権を膨らませるという悪循環を断ち切るためには、思い切った土地、不動産の流動化、有効利用促進策を講じる必要があります。
中でも、都市再生に向けた集中的な投資を行うとともに、規制
改革の断行、思い切った税制措置、PFI活用などを含めた官民一体となった土地の有効利用の促進策、住宅対策の強化などを図るべきであると
考えます。
第四は、規制
改革の積極的推進であります。
経済活性化のためには、官から民へとの大方針のもと、新たなビジネスチャンスを生み出すよう規制を
改革し、民間参入を促すことが重要であります。
政府がまとめた三カ年計画にこだわらず、できるものは速やかに実行に移すべきであります。
第五は、産業競争力の強化、空洞化対策への取り組み強化であります。
我が国経済のデフレの一因は、中国デフレとも言われる、中国を初めとするアジア諸国の競争力の拡大にあることは、周知のとおりであります。
日本に比べ安価な労働力、資本に支えられた国からの競争にあおられ、また、
不良債権処理の過程で既存の供給過剰、高コスト業種の再編淘汰が進む中、
我が国産業
政策を抜本的に
見直し、新産業の創出、なかんずく高付加価値型産業の創出、育成が待ったなしであります。民間主導による産業創出が何より求められますが、
政府としても、新たな産業分野における
国家戦略を打ち出すべきときと
考えるものであります。
以上、五つの視点から私の
考えを申し述べましたが、あわせて、
金融に関しては、ペイオフは予定どおり四月から解禁するとともに、特に地域
金融機関を中心とした
中小企業金融への影響などについて、適切な対応措置を講じる必要があります。また、
金融システムの安定化の観点から、システミック(連鎖)リスクなど
万が一の状況が起こった場合には、
金融不安を取り除くために、
経営者責任、株主
責任等を明確にした上での
公的資金の注入をためらうべきではないと
考えるものであります。
次に、
中小企業対策についてであります。
中小企業をめぐる
金融経済環境は、ペイオフ解禁を初めとする
金融システム改革の中で極めて厳しい状況にあり、特に地域の
金融機関の
環境は、当分の間、厳しくなるものと予想されます。
このような状況の中、市中の
金融情勢は、
中小企業に対する貸し渋りのみならず、貸しはがしといったことが行われているとの現場の声も聞かれます。
政府の方針どおり、早急に
不良債権処理を進めることは当然ですが、その結果、
我が国経済の屋台骨である健全な
中小企業への
金融が滞っているとすれば、それは、全く本末転倒であり、
構造改革とは言えません。
政府は、
実態を十分に踏まえつつ、貸し渋り、貸しはがしに対し適切な対応措置を講じるよう、強く要請いたします。
平成十三年度第一次
補正予算は、こうした
中小企業の実情を
考えて、総合的な緊急
中小企業対策として打ち出したわけであります。
とりわけ、売り掛け債権を担保とした保証制度の創設は、多様な資金調達を開く有効な手段の一つとして、非常に画期的なことであります。しかしながら、
金融機関への売掛金債権の担保融資の周知徹底が不十分であるとの現場の声が聞こえてきます。この制度の円滑な運用を行うための周知徹底をすべきであると
考えます。
国際経営開発研究所の
世界競争力白書によれば、
我が国は、科学総合ランクでは米国に次いで二位であるにもかかわらず、総合ランクでは十七位と低迷しており、これは、研究開発活動が効率よく競争力へ反映されていないことのあらわれと推測されます。
私は、
日本の企業が国際競争に打ちかつためには、民間企業内で
事業化されていない多くの研究成果や大学に存在している知の蓄積を円滑に活用するシステムを
確立すべきであると
考えます。
特に、これからは、大学が持つ技術を特許化し企業へ移転するTLO、技術移転機関の活性化などの施策による産学官の連携を強化することが必須です。持ち前の機動性、柔軟性、創造性を発揮できる、
中小企業による社内ベンチャー制度や大学発ベンチャーなどを促進し、新製品の開発が積極的に行われ、その実用化、
事業化が円滑になされる仕組みを
確立するなど、思い切った取り組みを行う必要があります。
次に、厳しさを増す雇用
失業対策についてであります。
公明党は、特に
失業率の高い中高年や若年者対策について重点的に取り組むとともに、雇用の流動化に伴い増大するパートや派遣など、いわゆる非正規労働者の雇用
環境の整備についても
見直しが必要と
考えます。
中高年の雇用問題については、これまでも、再就職を困難にしている募集や採用における年齢制限の撤廃や、ミスマッチ解消策としての相談、職業訓練、
あっせん等を一括して行う新たな再就職支援システムの創設などを提唱してきましたが、今後は、
個人の能力や適性を客観的に把握し、就職や転職などを総合的にサポートするキャリアカウンセラー制度を充実させるなど、一層の再就職支援策が必要であります。
また、若年労働者対策については、高校新卒者の就職内定率が六三・四%と、前年同期を五・五ポイントも下回るなど、深刻さに一層拍車がかかっております。
特に、フリーターの数は百五十万人を超え、定職につけないために職業能力開発の機会が失われ、将来の労働生産性の低下を招くなど、本人にとっても
国家経済にとっても、極めて深刻な問題であります。実践的な職業能力を身につけさせるため、一定期間の試行雇用を実施する企業に対して
政府が助成を行うトライアル雇用制度や、学生が在学中に、企業などにおいてみずからの専攻や将来の希望に応じた就業体験を行うインターンシップ制度の拡充など、次代を担う若者が希望を持って働ける職場
環境づくりが急務です。
さらには、雇用の流動化問題について、先行きの見えない
経済状況の中で、長期雇用を前提とする正社員が減る一方、パートや派遣など非正規労働者の割合が四人に一人と増大しており、こうした傾向は今後も続くものと思われます。
有期雇用契約の
見直しなど規制緩和による就業機会の拡大、さらには、少子高齢化に伴う労働力不足の解消策としても、雇用の流動化、就業形態の多様化は必要と
考えますが、一方で、賃金体系や社会保険適用の問題など、正社員との待遇格差が拡大しております。雇用の流動化を進めるに当たっては、こうした非正規労働者の労働条件や雇用保障についての
環境整備が必要であり、ワーク
シェアリングの導入を検討するにおいても、この点を十分に踏まえて検討すべきであります。
次に、
国民の安心の基礎である
社会保障制度の
改革についてであります。
社会保障制度は、
国民が安心して
生活していくためには欠かせない
セーフティーネットであり、老齢、疾病、
失業などに際しても、社会全体で支え合う仕組みが将来にわたって確実に存在してこそ、社会の活力が生まれ、
経済再生への道も開かれると
考えます。
総理は、今までのように、給付は厚く、
負担は軽くというわけにはいかないと述べましたが、将来の給付水準を見据えて、どの程度までなら納得のいく
負担をしてもらえるのか、年金、
医療、介護等の給付と
負担の将来像を
国民にわかりやすく提示すべきであり、それとあわせて、先行き不安が増大している今、
総理自身が力強く、
国民に安心感を与えるような
生活安全保障宣言を行うべきであります。
次に、
環境先進国への取り組みについてであります。
本年九月に、南アフリカ共和国のヨハネスブルクで、
環境と開発に関する
世界サミットが開催されますが、このサミットで、昨年のCOP7、気候変動枠組条約第七回締約国
会議で大きく前進しました、地球温暖化防止のための京都議定書の発効を目指し、
我が国もそのときまでに批准すべきは、当然のことであります。
このサミットに
小泉総理も出席して、
日本が二十一世紀の
世界の
環境政策を主導するとの
姿勢を明確に打ち出すべきであり、同時に、
アメリカがテロの問題で国際協調を求めたと同様に、今度は
我が国が、地球温暖化防止のため、京都議定書の
議長国として、ブッシュ米
大統領に協調と
参加を働きかけることも重要だと
考えます。
総理は、就任の際の
所信表明演説で、自然と共生する社会の実現を
表明されました。
私は、その実現のため、まず第一に、京都議定書の批准に向けた国内制度の整備が早急の課題と
考えます。
地球温暖化防止のための取り組みを
我が国経済再生の原動力とすべきであり、その意味で、取り組みの進捗状況、施策評価が客観的かつ
透明性を持った仕組みで行われることが不可欠であり、省庁の垣根や縦割りを超えて、このための体制を早急につくる必要があります。
あわせて、同じ観点から、既に幾つかの国で導入されている
環境税についても、導入に向け積極的に検討すべきであります。
第二に、自然エネルギーの推進です。
持続可能な社会を目指すためには、化石燃料から自然エネルギーへと、大きくエネルギー
政策の重心を
転換することが重要であります。既に、EUでは、各国の自然エネルギーの割合を二二%に引き上げるという取り決めがなされました。我が党は、二〇二五年までに自然エネルギーを二〇%にという提言をしております。自然エネルギーの積極的な推進を図りつつ、それが普及するまでの間、
環境負荷の大きい化石燃料への依存を減らす意味からも、天然ガス利用は、十分検討すべきであります。
また、こうした観点から、エネルギーを
国家戦略ととらえ、
総理主導の推進体制をつくることが不可欠であると
考えます。
第三に、大都市圏のあり方を自然生態系の環に戻すために、我が党が提唱し、実現に向けて進んでおります、大都市圏エコタウン構想の一層の推進と全国的な展開が重要です。
第四に、新たな取り組みとして、失われた自然を保全、再生、維持していくために、自然再生推進法の制定も欠かせません。
総理が
表明された自然との共生社会実現への重要な具体策であると
考えるものであります。
次に、
教育についてであります。
私は、今、
日本で一番大切なものは
教育であると訴えたいと思います。不登校児が十三万人を超えるなど、今日のさまざまな
教育問題を
考えれば、これまでの
教育への
政策的取り組みは不十分であったと言わざるを得ません。抜本的な
教育改革なくしては
日本の再生はありません。
教育に対する投資はすぐに効果をあらわすものではないかもしれませんが、
総理の口にする米百俵の
精神は、まさに、未来への先行投資たる
教育にこそ当てはまるのではないでしょうか。そうであるならば、二十一世紀を担う
子供たちのために、公明党は、
教育振興について
小泉総理を支えていく決意であります。(
拍手)
その上で、具体的に提言をさせていただくならば、
教育への
財政支援も含んだ投資を検討すべきであります。例えば、現在、少人数学級の推進や、不登校児に対して、自宅への教員の派遣などを検討している自治体があります。こういった先進的に
教育改革に取り組んでいる自治体に対する
財政支援や、だれもが学びたいときに、いつでもどこでも学べる
教育環境の整備のために、入学金の公的貸付制度の創設や無利子奨学金の拡充などが喫緊の課題であります。
また、今こそ、平和
教育の重要性について強調したい。学校における平和
教育の推進とともに、小学校における英語
教育の推進や、海外
日本人留学生への支援など、
世界に貢献できる人材の育成を強力に推進する必要があります。
いずれにしても、
国家や社会のために
教育があるのではなく、
教育のために
国家や社会があるという、発想の
転換が今こそ求められています。
子供たちが目を輝かせて未来を語る
国家こそ、本当に未来のある
国家なのであります。
次に、
司法制度改革ですが、昨年六月、
司法制度改革審議会が「二十一世紀の
日本を支える
司法制度」と題する意見書を内閣に提出、これを受け、十二月に、
総理を本部長とする
司法制度改革推進本部が発足しました。
そこで、私は、
司法制度改革の実施に当たっては、あくまでも
司法制度改革審議会の意見書に忠実でなければならないこと、また、その作業や議論の
透明性確保に努めるとともに、広く
国民の意見を反映できるようにすべきこと、さらに、
司法制度改革実現のため、法曹人口の大幅な増員や法科大学院の設立、法律扶助、国選弁護の拡充などについて
財政上の措置を講ずるべきであると
考えます。
二十一世紀が目指す
国際社会は、戦争や紛争がないということにとどまらず、
国家よりも、むしろ一人一人の人間に徹底的に光を当てながら、だれもが人間らしい
生活を営める
環境が構築されなければなりません。
そのためには、人間の
安全保障の視点から、貧困、飢餓、国際組織犯罪、麻薬、エイズといった人類の問題に絶え間なく挑戦していくことが重要であります。また、国際テロの防止、根絶のためのテロ関連防止条約の早期批准や、国際犯罪人を裁くための国際刑事裁判所の創設なども含め、あらゆる課題に国連とともに全力で取り組むことこそが、人道大国として
我が国が目指すべき方向であると確信するものであります。(
拍手)
その意味でも、まずは、
アフガニスタンの復興を成功させることが、
我が国にとってその大きな試金石となるのではないでしょうか。先月、東京で開催されたアフガン復興支援国際
会議は、第一の目的であった資金拠出も需要額を満たし、大成功で終えました。これは
我が国の外交に新たな局面を開くものであり、復興のイニシアチブをとったことは大きな意義があったものと確信します。
今、
アフガニスタンの
人々は、あらゆる困難にもかかわらず、希望を持って、平和に向けた第一歩を踏み出しました。私
たちは、彼らの村に学校や保健所をつくり、そして、
子供たちが安心して、笑顔で元気に遊ぶことができる平和の大地を取り戻すために尽力しなければなりません。
そこで、私は、アフガン復興に関して、三つの
提案をさせていただきます。
第一は、地雷の除去支援です。
復興に当たっての大前提となるのが、地雷や不発弾の除去であります。地雷除去のための緊急機材の提供、現地及び国内の
NGOなどの除去
事業者に対する支援、そして、
我が国が最も得意とする技術開発で
協力するために、地雷除去ロボットなどの実用化を目的とする産官学の共同プロジェクトを発足するなど、総力を挙げて支援することを
提案いたします。
第二は、
我が国の独自のアフガン復興支援ビジョンの策定と速やかな実施です。
特に、
我が国は、戦後の復興やカンボジア和平・復興支援の経験、かつてアフガンで難民帰還支援策を試験的に実施していたこともあり、和平プロセスへの支援、難民帰還と定住支援、
教育、保健
医療、
女性の
自立支援、文化遺産の保存、修復、そして新たな
国づくりへのインフラ整備等、
我が国独自の幅広い貢献が可能であります。
アフガン復興支援・各省庁間連絡
会議(仮称)を設置し、
NGOの意見を最大限に取り入れながら、復興支援ビジョンを策定することを
提案いたします。
第三は、人づくりへの支援です。
現地のプロジェクトを支援する人材育成と派遣体制の整備、留学生や技術研修の受け入れを含め、人づくり支援を積極的に進めるべきであります。
さて、今
国会の大きな焦点となっております自衛隊の防衛出動に関する法制、いわゆる有事法制について、私の
見解を申し述べたいと思います。
我が国に対する武力攻撃が起こり、
国民の生命、財産、人権が脅かされるという
事態が発生したときに、必要にして最小限の対応措置がとられることは当然であります。ただし、いわゆる有事法制の有事という
言葉からイメージして、
国民が一抹の不安を抱いていることも事実であります。
この
国民の不安を払拭するためにも、私は、法整備を検討する上で、一定の歯どめが必要であると
考えます。
第一は、あくまでも憲法の枠内、第二は、集団的自衛権の行使には踏み込まないなど、従来の憲法解釈の変更は認めない、第三は、
国民の権利制限に関する事項は必要最小限とする、第四は、緊急
事態下においても、表現、報道の自由、
政治活動の自由など、
国民の自由権は保障する、第五は、
我が国に対する武力攻撃の
事態への対応措置を法整備の中心とするなどであり、まずは、
政府がこうした
基本方針を
国民に提示すべきであると
考えます。
なぜ、今、防衛出動法制が必要なのか。どのような
原理原則で
法案を策定するのか。私は、
国家の緊急
事態に関する法整備については、全
国民の生命、人権に直接かかわる問題なので、具体的な作業に入る前に、
国民の理解を求めるためのあらゆる努力を払っていく
姿勢が大切であると
考えます。(
拍手)
最後に、米国同時多発テロ
事件は、平和とはほど遠い
国際社会の
現実と、その底流に横たわる人類課題の根深さを改めて顕在化させました。一方、
我が国においても、年間三万人を超す
自殺者、年間一万人前後の交通事故死者、千四百件を超える殺人、犯罪の多発、幼児虐待など、安心、安全が大きく脅かされつつあります。これらは社会の姿として異常と言わざるを得ません。
私は、これらの課題は、根底的には、我々一人一人の生き方、
価値観に最終的に帰着するものであり、今、必要なことは、そうした点を直視して、
我が国の今後のあり方を抜本的に問い直すことであると
考えます。
そうした観点から今後を展望したとき、我々が目指すべき社会とは、
個人としての人間の生きる力、いわば人間力ともいうべきものが十分に生かされる社会、個の多様性を認め合い、互いに支え合う社会、一人一人の感性、個性の自由な発露として文化や芸術、芸能が隆盛し、文化の薫り豊かな社会、その結果として、
経済や庶民
生活に活力の満ちあふれた国ではないでしょうか。(
拍手)
私は、こうした生命の尊重を基調とする、文化の薫り高き、活力ある国際
国家の実現という認識を
国民が共有して初めて、
小泉総理の掲げる「聖域なき
構造改革」も重みを持ち、
痛みを伴わざるを得ない諸施策を断行することの意義も、一層の迫力と重要性を増すものと
考えております。
私の質問、
見解などに対する
小泉総理及び関係
大臣の明快な
見解をお伺いし、質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小泉純一郎君登壇〕