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小野委員 きょうは、限られた時間ということでございますから、
科学技術政策について、
尾身担当大臣にお尋ねしたいと
思います。
まず、
尾身大臣におかれましては、この職におつきになられまして以降、非常に総合的な形で
日本の
科学技術振興に御尽力をいただいて、とりわけ
産学官の
連携問題、これはかねてより非常に重要な
課題であったと思うわけでございますが、なかなか
具体化が行われなかったわけでございますが、
大臣みずからが各所へ出向いていかれながら
産学官のサミットを開催されるなど、非常に大きな実績を上げておられますことに心より敬意を表しておきたいと
思います。
本日は、新
世紀を迎えまして、
科学技術という問題を改めてとらえ直す必要があるのではないかという観点から御質問させていただきたいと思っているわけでございます。
この新
世紀を迎えまして、私
たちは、かつては二十一
世紀というと非常に夢や希望のあふれる
時代をイメージしていたわけでございますが、現実には、昨年の九月十一日、ちょうど
大臣が
アメリカにおられるときに
同時多発テロと言われるようなものが起こったり、その後の
アフガニスタンにおける戦争、また、連鎖をする形でのイスラエル、パレスチナ間での紛争の激化、また、
経済情勢をめぐりましても、アルゼンチンの
経済破綻等、いろいろな問題が起こってくるのを拝見しながら、これらはひとえに
政治の問題であり、また
経済の問題であり、また
軍事の問題である、こういうふうにとらえられることが多いわけでございますが、私は、この
背景をじっくり考えていきますと、やはり、
科学技術の問題というものを抜きにして今の
時代の混迷というものを考えることができないのではなかろうか、こんな
印象を持ち始めてきているわけであります。
つまり、
科学技術というのは、非常に大きな
成長性を持つ
分野だと思うのですね。わずか一
世紀前、何があったかということを今振り返ってみますと、
ライト兄弟が初めて
動力飛行に成功するのがちょうど百年近く前のことということになるわけでありまして、百年前の
科学技術などというと、もう随分古い昔のことだというような
印象になってしまうのであります。
一方、
政治だとか
経済という方面においては、多少の
進歩はあるにしても、
科学技術ほどの
進歩が見られるとはなかなか評価できない
分野であろうということの中で、どうも、
科学技術という
人類が持った巨大な
道具というものと
社会のシステムというものとの
整合性がとれにくくなってきているのではなかろうか、こんな
印象がしてならないところがあるわけであります。
そこで、
科学技術の問題を考えてまいります中で、この生い立ちからいえば、当然、これは
西洋の
合理主義と言われるようなもの、また、それのみならず、いろいろな
背景を持った
西洋世界の
母体の中から生まれ育ってきたということを評価せねばならないわけでありますが、これだけ巨大なものになってきたときに、果たして、この
西洋が持ってきたところの
思想のもとにこの
科学技術というものが統御できる問題なんだろうかというような新たな
課題を私は感じ始めてきたわけであります。
つまり、
西洋というふうに大くくりにすること
自身にも問題があるかもしれませんが、例えば、
アメリカの
思想というふうなことを考えてまいりました場合には、大きく言うと
三つ問題点があるような気がしてならないんですね。
一つは、
一神教的正義というものが余りにも大きく振りかざされることによって、みずからの許容できる範囲を超えたものに対しては、それを敵対視してしまうという
現象があるような気がしてならないわけであります。
二つ目には、弱肉強食の
考え方が余りにも強過ぎて、強きものが勝ち残ることこそが
進歩であって、弱きものは滅んでいっていいというような、そういうふうな
一つの主観が潜んでいるような気がしてなりません。
さらにまた、物や金というような、即物的という表現が的確かどうかわかりませんが、そういうものが
評価基準としてあったとしても、人間の
精神性というようなものをそこに織り込むということについては、
科学技術の
世界というのが特に顕著な
世界ではありましょうけれ
ども、何らかのちゅうちょを持っておられるような気がしてならないというような、こんな
課題もあるわけでありまして、こういう
母体の中から生まれる
科学技術というのが、どうしても敵対的なものといいますか、
競争的なものをはらむ、余りにも強くはらみ過ぎる、または
体系から合わないものをもうとにかく排除してしまうというような性格を持たざるを得ないようなところが生まれてしまっているというようなことがあるのではなかろうかという気がしてならないわけであります。
つまり、これから二十一
世紀に我々がよりよき
世界を実現する、
人類社会を建設していこうということを考えてまいりました場合には、この巨大な力を持った
科学技術というものの中に新たな
思想を織り込んでいかざるを得ないのではないか。もっと調和的に
人々の幸福というものを直視するような
考え方が
科学技術というものの中に組み入れられない限り、
科学技術がどんどん巨大化するということに対して、
人類社会はついていくことができなくなってしまう、こういう懸念を最近持ち始めているわけでございまして、その点に関して、
大臣、総合的に
科学技術を担当される
大臣として、御所見をお伺いしたいと思う次第であります。