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伊藤(忠)
委員 私がいただきました時間を、テーマを絞りまして、
一つは長期増分費用方式、
国会審議の
法律改正の経過がございまして、その問題をまず第一点。二点目は、
ユニバーサルサービスの問題を第二点。時間が限られておりますので、なるべく焦点を絞りましてお聞きをしたり、私の
考え方を述べたいと
思います。
まず、長期増分費用方式はLRIC方式というんですが、これが導入されましたのが二〇〇〇年の通常
国会の
事業法改正でございます。それまでは、実際費用方式、ヒストリカル方式という接続料のコスト計算が行われていたわけですね。これが長期増分費用方式、一口に言いますと、仮想網を前提にしました費用の実態を反映していない方式に変えるということに、当時の
郵政省ですが、法改正を出してきたわけです。随分これは
議論になりました。
そういうことをやりますと、言うならば、安いとこ取りで仮想網を構築する場合に、どれだけの投資をやればいいのか。これはコスト計算のモデルでございますが、ということになりますと、行き着くところ、回収できないような投資は、経営はやりませんから、それを
法律でもって規制を加えてやらせるということは、結局、回収できない投資をやらされるのだったら、そのような投資はインセンティブが働きませんから避けようと思うと。
めぐりめぐって、これは今の基本インフラである
ユニバーサルサービスと一体的な
関係にありますが、そのような電気通信の骨幹にかかわる基本的インフラが維持できませんから、このネットワークというのはだんだんと疲弊をする。行き着くところ、崩壊を招くというようなことになっていく。だから実際費用方式からLRIC方式に改悪することは反対だということを私たちも当時の
国会審議で、これは与野党含めて
意見が出ました。冷静に
考えると将来はそういう問題を引き起こしますよ、だからこれは導入すべきではないと。
日本だけが、言うならばヨーロッパも一部ありますが、日米交渉でも大変問題になりまして、がんがんと日本
政府に対してUSTRがLRIC方式を導入しなさい、こういうような値幅でもって接続料を下げなさいというふうに迫ってきた本体のアメリカが、御本尊のアメリカですら、一部市内回線は適用していますが、州内の市外回線や州際通信はそういうものを一切適用していないわけですね。にもかかわらず、USTRが日本に対してがんがん日米交渉の場で、言うならば、見ておってこれは押しつけに近い、そういう場面がずっと続いてきた、その過程で起こった法改正でございます。
もう一度強調いたしますが、交わされた
議論の特徴点は、LRIC方式というのは仮想網を前提にした算定方式であって、いかにして料金を値下げするかが目的である。その結果が何をもたらすか、このことを
政府は読み取っていない、長期展望のもとに
考えていない。これが一点。
二点目は、コストが回収できないようでは投資のインセンティブは働かない。経営は、投資の回収が可能であり、しかも、これにプラスして適正な利潤が
確保できるという前提にあって投資は成立するものであります。
そういう観点から
考えると、全く市場経済や経営の基本を否定するようなLRIC方式を導入するということになれば、国の基本的な通信インフラは、つまるところ維持できなくなる。そういうことを
考えてこの法改正をやられるんですか、こういう疑問なり反対の
意見がかなり強く出されました。
しかし、何といっても閣法は強いわけでございまして、多数決でこの改正案が通ったわけですが、審議の過程で、
事業者の間にこういう
考え方でこの問題の導入を図ろうということが最終場面で行われまして、四年間で二二・五%下げる、この期間内の下げ幅配分は申請するNTTの経営判断による、こういうことを前提にしまして審議に決着をつけまして、最終的に
附帯決議が採択されました。
附帯決議ではこういう文面がございます。
「長期増分費用方式の導入に際しては、ユニバーサル・サービスの
確保及び東・西NTTの経営・利用者料金に悪影響を及ぼすことがないことに留意し、効率的な投下コストの適正な回収が図られるよう、モデルの選択、適用、
実施を慎重に行うこと。」二つ目が、「長期増分費用方式は、諸外国においても一部において導入されているに過ぎない方式であり、この規制方式自体の有効性については、今後十分な検証を行い、必要な見直しを行うこと。」こういう、ある意味では、これまでの
附帯決議と比較をいたしますと、非常に
具体的で厳しい
附帯決議がつけられて、この改正
法案は成立したわけでございます。
この
法案の改正が行われるのを待っていたかのように、日米交渉では、二〇〇〇年の沖縄サミット直前、私ははっきり覚えておりますが、七月の二十一日でございます。時の森
総理がクリントン大統領と沖縄へもちろんお見えになったんですが、
事務方は事前に話がついていたと
思いますが、そういうセレモニーを含めまして、結果的にはアメリカペースで押し切られてしまったわけでございます。
どういう
内容で押し切ったかといいますと、これは日本
政府がイエス、イエスと終始言っていたのなら大変問題でございますが、いや、そこは難しいだろうというような抵抗も示しながら、結局アメリカペースで決まったのです。つまり、二〇〇〇年末から二年以内に二二・五%引き下げて、さらに、速やかに四一・一%の引き下げを図るという
内容でございます。
こうなりますと、我々が
国会でどんなことを審議しても、完全に、日米交渉の結論がそれを踏みにじるというんですか、さらに権限としてはその方が強くなるという認識で日本
政府はやりましたので、結局
国会審議は吹っ飛んでしまうということになるわけであります。大変これは問題ですね。そんな日米交渉や外国との交渉が
一つ一つこれからもやられていったら、日本の
国会で我々が審議したって、審議権というのは一体どういう意味を持つんでしょうか。ここがまず一番大きな問題点であります。
その当のアメリカがどういう状態かといいますと、LRIC方式の導入をめぐりまして、大変もめております。アメリカでは一部しかなかなか導入ができないというのは、これは訴訟が起きていまして、つまり、第一種
事業者に相当する通信業者でございますが、その業者が訴訟を起こしております。その言い分というのは、現実のコスト回収を認めないようなLRIC方式は、財産権の保障を規定した米国憲法、通信法の規定に反する、財産権の侵害であるということでこれを提訴しておりまして、二〇〇〇年七月には連邦控訴判決で違法になりました。現在これは最高裁で審理中でございます。
強く日本に迫ってきたアメリカ自身、足元がそういう
状況なんです。したがって、この問題は大変国際的にもまれなケースとしてやられているわけですが、それを日本
政府が率先してこういう方式を採用するというところが大変問題だろうと私は
考えているわけでございます。
このことを前提にしまして
質問をいたしますが、まず第一点、LRICモデル
研究会というのが
情報通信審
議会の中に置かれておりまして、部会で
議論がされておりまして、三月八日に
報告が出されました。その
報告に基づいて、
総務省が
情報通信審
議会に諮問なさいました。その前提で私は
質問をいたします。
平成十四年度接続料は現行モデルで認可されているわけですが、新モデル、つまり、モデル
研究会がモデルの見直しをやりました、さらに接続料の値下げをやるべきだというふうに出した、これを新モデルと呼びますが、新モデルはこれからの扱いであって、新モデルの即時適用は行うのか行わないのか。十四年度は既に現行法でいくことになっておりますので、十五年度以降になると思うのですが、この点についてはどうお
考えでしょうか。