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速水参考人 日本銀行が、この
金融緩和策、
金融市場においては今強力な効果を発揮していると思うのですけれ
ども、先ほど申し上げましたように、
銀行貸し出しは引き続き減少を続けているわけですね。いわゆるマネタリーベースという私
どもの方から出す資金は、この一年を見ても、前年比一六%ぐらい増加して出しているのですが、
銀行の
貸し出しはむしろマイナスである、マネーサプライも三%前後である。先ほどおっしゃったように、
国債投資にかなり向かっているというようなこともあるわけですが、こうやって
金融緩和を進めていく意味がないのに、なお
金融をもっと
緩和しろ、
緩和しろといって
緩和しているのはどういうことなのかという御
質問ではないかと思います。
それに対して私
どもは、前から申しておりますことは、やはり基本的には
民間の
需要が引き出されてこなければ
景気というのはよくならない。それをやるために、やはり
構造改革というのが大事なんだということなんですね。
それは、資金を今潤沢に
市場に供給することによって、
金融市場はむしろじゃぶじゃぶという感じになっていて、それを
銀行の
貸し出しに使って、その資金を引き出していく
銀行の機能というのが、今のところ活発に動いていないというところに問題があるわけで、それを引き出すためには、やはり
一つ一つの規制を
緩和し、
競争を激化し、そして、かつての、とにかく金さえ集まれば
銀行はもうかっていくんだといったような
考え方が変わっていかないといけないわけなんですね。借りる
企業の方も、
銀行に対して借りるのか、あるいは自分で社債を出して資金を調達するのか、そういった
競争関係ができてきて初めて物に対するファイナンシングというのが
市場原理で動くようになっていくんだと思うのです。
そういうことを私
ども大きな目標に置いて、今資金量を出しているわけですが、幸いにして
小泉内閣がこうやって、テロで少し、二、三カ月おくれたのは残念でしたけれ
ども、
構造改革の具体的なことをかなりもう積み上げてきておられますし、これからやる特殊法人の整理とか、あるいは規制の
緩和、撤廃とか、単なる補助金的なものをやめて
競争原理に戻していくといったようなことが実現していくときに、そしてまた、アジア関係で非常に
競争力のある産業が興ってきて、
日本の
企業がそちらへ出ていって、あいたところで新しい付加
価値の高い産業を興そうといったような動きが出始めているわけなんで、そういうものをうまく育てていけば、
民間の資金
需要というのは出てくると思うのですね。それを待っているという形で、私
どもの方がむしろ先行して資金を出させていただいて、
構造改革を後ろから支援させていただきたい、そういう目的で出してきているのです。
そういうことですから、
構造改革が
一つ一つ実現していって、
民間の
需要、設備投資にしても消費にしても、新しい仕事ができていくということが、
銀行の
貸し出し機能を発揮するようになってくるんだ、そういう動きが今起こりつつあるのだというふうに思っております。
銀行も、先般来、非常に
貸し出しの効率化といったようなことを始めております。それに対しても、いろいろ反対もあると思いますけれ
ども、とにかく
銀行は稼がなければ、
不良貸し出しを整理することも、あるいは
銀行の株価を上げていくことも、あるいは自己資本をふやしていくこともできないわけですから、そういうことを今
銀行に期待しながら資金を潤沢に出しているというのが
現状なんです。
いずれにしましても、
経済、産業面での
構造改革などを通じて、家計や
企業あるいは
金融機関の前向きな活動が引き出されてくれば、
日本銀行の
金融緩和も強力な効果を発揮することができると思っております。それがこれからの私
どもの期待なんです。