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白石参考人 おはようございます。東洋大学の
白石真澄でございます。
私の発言内容は、お手元に二枚物の
資料として配付をさせていただいております。
まず
最初にお断りを申し上げなければなりませんが、私の専門領域は
防災、
災害対策ではございません。バックグラウンドは建築でございます。本日は、
中央防災会議、今後の
地震対策のあり方に関する専門
調査会の一員として、また、私が一市民の立場から日ごろ考えております点について御
意見を申し述べさせていただきたいと思います。
私の専門領域は、少子高齢化と町づくりでございます。今後、皆様御存じのように、二十年いたしますと、人口の四人に一人が六十五歳以上の高齢者でございますし、とりわけ高齢者の単身、夫婦のみの世帯、高齢者世帯が増加してまいるわけでございます。小
規模化するということで、家庭内での相互扶助能力や
地域の相互支援能力が低下していく、こうしたことが懸念されます。このような中で、
災害時の安全確保についても、今までのレベルを変えていく必要があるのではないかなと
最初に申し上げたいと思います。
一たん
地震が起こった場合でも、逃げおくれる、
情報が届かなくて二次的な
災害に巻き込まれる、こうした
災害弱者がふえていくこと、さらに、現在障害を持たれていらっしゃる方の六割が六十五歳以上の高齢者であることを考えれば、初動体制というものが
災害の二次的
被害の拡大を防止するというふうに考えます。
特に、今後、高齢者の増加ということを考えますれば、私は、
片山先生もおっしゃいましたように、
災害対策というのは
都市の課題ではないかなというふうに思います。人口密度も多く、とりわけ高齢者の数自体も多い、さらに、
地域コミュニティーも希薄化している、こうした
都市についてが、まず
災害に対する緊急の課題ではないかなと感じております。
まず、本日の発言の位置づけについて御説明を申し上げたいと思います。
お手元の
資料の二ページ目をごらんいただけますでしょうか。
災害対策に関しましては、
片山先生もおっしゃいましたように、平常時、
地震が起こった直後、さらに
地震のときから
復旧復興、また平時に戻っていく、こうした複数の段階がございますし、それぞれの時間軸の中で、個人が、企業が、
地域が、自治体が、さらに国が行うべきことはそれぞれ違ってまいる、こういう認識でございます。
私がお話しさせていただくところは、本日、網かけをさせていただいているところが一番主要課題でございます。国による法制度整備、この1のところについて重点的にお話をさせていただきたいというふうに思います。
この中で、
情報提供というところが括弧で書いてございますけれども、これを個人の立場に置きかえれば、平常時には、自分が住んでいる
地域の安全性がどのようなものかということを常に自覚し、それに備えておく、こうした
状況が必要だと思いますし、
地震災害が起こった直後には、自分たちがどこに逃げればいいのか、さらに、避難路はどこにあるのか、物資の輸送はいつ、どこから来るのか、こうした
地震直後の
情報が必要になってきます。また、避難所で
生活しながら時間経過をするうちに、自分がここでできることは何なのか、自分の住宅の再建や経済的な復興についてどのようにすればいいのか。個人によりましても、各段階で必要な
情報が違ってまいります。ぜひ、こうした
三つの時間軸、主体によって整理をして考えていくべきではないかなと感じます。
まず
最初に、「
建物の
耐震性
強化」と「
耐震性に強い
都市づくり」が最優先課題、これについてお話をさせていただきたいと思います。
レジュメにございますように、
建築物の
耐震改修の促進に関する法律、これは
耐震改修促進法と言われておりますが、平成七年の十月に施行されました。
この法律の目的は、不特定多数が利用する特定
建築物について、階数が三階以上で、かつ面積が千平方メートル以上の
建築物について、現在の
耐震基準に適合しない場合は必要に応じて
耐震改修を行うことを求めたわけでございます。いわば
建物の所有者に対して努力義務を課した法律でございます。これによりまして、国、地方公共団体が資金の融通、あっせんを行いますし、
耐震改修計画をつくって
耐震改修工事を行う場合、住宅金融公庫の貸付資金の特例を設ける制度などが盛り込まれております。これにより、現在まで一定の成果を上げていると私は認識しております。
二ページ目の図表二をごらんいただきますと、平成十三年九月現在で
耐震改修促進法に基づく
耐震改修の認定
状況をお示ししておりますが、これは公共の
建物で千六百三十九件、民間の
建物で二百六十五件、全体が千九百四件でございますので、このうち民間の
建物の占める割合はわずか一四%でございます。
若干図表番号が飛んでしまいますが、特定
建築物の
耐震診断・改修を行っているかどうかの進捗を示したものが図表四でございます。
図表四の中で誤植がございまして、対象
建築物Bと示しておりますのは
耐震を実施した
建築物でございます。対象
建築物Aに対して、実施した
建築物はB、これをBというふうに変えてください。
これをごらんいただきますと、地方公共団体の中では、全体の三三・六%が
耐震診断を実施しております。その中で半数が改修、建てかえが必要と診断され、
耐震改修を実施しております。もしくは、建てかえ、除去されたものが、六千四百と千二百ですので、これを合わせて合計七千六百。しかし、結果、改修や建てかえが必要とされた一万八千百戸の中で既にそうした実施が終わったものを七千六百としますと、残りの一万五百戸がまだ必要な手続が終わっていない、この数字でございます。民間については、全体の三・九%しか
耐震診断を受けておりません。
このように考えますと、不特定多数が利用する
建築物の
耐震化のさらなる促進が必要だと思いますし、
耐震診断を義務化して、きちんと都道府県がそれに指導を行える、従わない場合は氏名を公表する、こうした手続が必要ではないかと思います。また、民間の
建築物の所有者に対しては、より一層の
耐震診断の普及促進が求められるというふうに思います。国の助成制度についても、
地域要件が
現状ございますが、要件緩和をするなどして、工夫の余地があるのではないかと感じております。
次に、密集市街地の
防災性の向上、道路と沿道
建築物の一体的整備のお話をさせていただきたいと思います。
建物が倒壊して、その
建物が緊急避難路をふさぐ、また、沿道沿いに
建物がたくさんつぶれて瓦れきが存在しているということであれば、被災時の応急活動の支障になります。これについては、公費を一定
程度投入しても、沿道
建築物の倒壊を防止し、緊急時に避難路が即座に確保できる、こうした手続が必要だと感じます。
次に、個人住宅の
耐震化、老朽化住宅の建てかえ促進についてお話をさせていただきたいと思います。
図表三をごらんください。新
耐震、これは昭和五十六年でございますが、新
耐震が基準施行された昭和五十六年以降に建築された住宅ストックは
全国で二千三百万戸ございます。それ以前に建築された住宅は二千百万戸でございます。ほぼ同数
程度でございます。このうち、古い住宅のうち、新
耐震基準レベルの
耐震性を有していないものが千三百万戸ございます。すなわち、八百万戸が
既存の不適格なまま残っている住宅でございます。
国土交通省の
調査によりますと、
我が国の住宅の平均寿命は約二十六年、この計算によりますと、五年後の二〇〇七年には旧
耐震基準を有した住宅はほぼ半減することになっております。
片山先生もおっしゃいましたが、
阪神大震災のときでもそうでございましたように、多くの高齢者は老朽化した住宅に住んでおり、とりわけ住宅の倒壊などで多くの
犠牲者を出しました。神戸市では、八割が
建物の倒壊による圧死だったというふうに伺っております。
私は、これについては、住宅の性能
評価を行い、質のよい、安全性の高い住宅を市場に流通させる市場原理を導入するということ、さらに、個人が
耐震診断や
耐震改修を行う、個人の努力に対してインセンティブをつけていく、個人の
自助努力を支援するような制度、
自助努力を後押しするような制度が必要ではないかなと感じております。
現在の個人住宅への諸制度は、
耐震診断や
耐震改修の利子配分
程度まででございます。個人の資産形成への支援というものはモラルハザードにつながる。低所得であればお金がもらえる、こうしたことによってモラルハザードにつながる。つまり、公費投入をするにはある
程度公共性が必要、こうした観点に立っておりますけれども、しかし、忘れてはならないのは、低所得者や高齢者の住宅をどうしていくかということです。
とりわけ高齢者にとりましては、老朽化した住宅に住んでいる人が多いわけでございますが、改修を行ってもあと何年住めるかわからない、こうしたことによりなかなか改修が進んでいないというふうに聞いております。低所得者や高齢者については
自助努力についても
限界がございますので、
耐震補修への補助、さらに公営住宅への入居誘導等もあわせて考えていく必要があるというふうに思います。
次に、
都市の高齢化、
地域コミュニティーの希薄化など、
地域で
防災力の低下に備えるというところについてお話をさせていただきたいと思います。
私は、
災害に強い
都市づくりに備える、こうしたハード以外にも、あわせてソフトの
対策を行っていくことが必要だというふうに感じております。
まず、日ごろから
地域の
防災意識を高め、
防災教育を行う、これが肝心ではないかなと思います。
阪神・
淡路大震災以降、一時的には国民の
防災に対する意識が非常に高まりましたが、また最近では低下傾向を見せております。環境保護やボランティア活動に対して住民は参加したいという意向を持っておりますが、
防災活動については参加意識が非常に低く、内閣府の
調査でも、
防災活動に参加したことがないという人は住民の七割を超えています。
また、九月一日の
防災の日などに都道府県を挙げて大
規模な
防災訓練を行っているところがございますけれども、私は、ぜひ
地域で、小グループで、役割感、
被害想定を行った上で、自分が
災害のときに何をすればいいか、きちんと自分の役割認識ができるような小グループでの
防災活動が重要ではないかなというふうに思います。
また、三点目には、
阪神・淡路のときにも、
災害からの立ち直りが早かった
地域というのは、日ごろからの人間関係が濃厚であった
地域、とりわけ真野地区などがそうであったというふうに伺っておりますが、
災害からいち早く立ち直るには、日ごろからのつながりというものが重要であると考えます。日ごろからのボランティアやNPO活動、
地域の見守り、こうした住民の活動を促進していく必要があるというふうに思います。
次は、自治体への期待でございます。
まず、自治体の役割としては、市民参加による
防災計画づくりと自主
防災組織への支援でございます。市民の中には、参加したいと思っていてもなかなか
防災活動に参加する機会を見出せないでいる。総理府の
調査によれば、国民の一七%が避難場所を知らない、自分が
災害のときにどこに避難していいかわからない、こうした
現状がございます。市民が
自助努力をするために
情報提供をしていくことが自治体に求められているというふうに思います。
次には、実効性あるマニュアルの整備です。都道府県等で整備をされている、市町村で整備をされているマニュアルを拝見しましても、
震災のときには関係機関が連携をして迅速に対応する、こうしたあいまいなことが書かれているというふうに聞いております。いつ、だれが、どのように行動するか、役割分担等、関係各所のスケジュールを明確にした、実効あるマニュアル整備が必要だと思います。これについては国が、各都道府県がどのレベルまで整備をすればいいか、ガイドラインのようなものもつくっていくべきだと考えております。
次には、ハイテクだけではなくローテクも利用した
情報提供ということを申し上げたいと思います。障害を持つ方の八、九割がパソコンやインターネットを利用した経験がございません。たった一〇%しか利用しておりませんし、高齢者の一二%しか携帯電話を利用しておりません。日ごろ使っていないものは
災害時にも使えない、こうした認識を持つべきだというふうに思います。私が神戸や有珠のときに避難所を回りましたときにも、パソコンを活用して
情報をとっているのはほぼ若い
人たちでございました。ITが普及しているとはいえ、ぜひそのペーパー
情報、ローテクの
情報によってどの人にも即座に
情報が行き渡る、こうした工夫が必要ではないかなというふうに思います。
ハザードマップの公表については、先ほど翠川先生からおっしゃっていただきましたので、割愛させていただきたいと思います。
さらには、要援護者、障害者や高齢者を
想定した避難所、これはバリアフリー化とマニュアル作成のことでございます。現在、都道府県などの
調査によりましても、避難所においては、階段にスロープが設置してある、車いすも利用できるトイレがある、さらに、点字や外国語表記などが備えてある、こうした避難所の八八%がバリアフリーについての配慮を行っておりません。車いすが利用できるトイレというものは一五%しかございませんし、手話通訳やガイドヘルパーが置かれている避難所は一一%、そうしたことを配慮するという避難所は一一%でございます。掲示板や聴覚障害者用のファクスを設置しているところなどは七%しかございません。こうした避難所についても、ハード、ソフトともにあわせた
対策が必要だというふうに感じます。
最後から二点目でございますけれども、広域
被害を
想定した広域
防災活動に関する計画、これは、兵庫県の副知事の方のお話によりますと、兵庫県と大阪で職員がどのレベルで出動するか、その
災害想定のレベルが異なっているというふうにお聞きいたしました。ぜひ、広域
被害を
想定して、国がまず広域の都道府県を連携させて、複数の都道府県を結ぶような広域通信網の整備、こうした広域
被害を
想定した広域
防災活動が必要ではないかなというふうに思います。
さらに、私は、
都市の問題というのは、帰宅困難者が多く
発生していく、こうした問題も顕在化してくるのではないかなというふうに思います。
災害時の役割においては、企業も何らかの役割発揮をすべき、コンビニ等で備蓄した食料品を拠出する、こうしたことは既に協約として結ばれておりますけれども、都心区においては、地元へ、帰宅難民をどのように安全かつ円滑に帰宅させていくか、こうした
都市の交流人口も
想定した避難計画が求められるべきではないかなというふうに感じております。
さらに、ここには書いておりませんけれども、こうしたことを自治体が行っていくためには、自治体の専門職員の養成です。
通常のローテーションのように一、二年で一回、二、三年で一回というふうに人員の配置が異なりますれば、
災害時の知識のストックというものが離散してしまいます。ぜひ中長期にわたって、十年ぐらいで
地域の
防災計画を立て、それを遂行する、こうした専門職員を養成していただきたいというふうに感じております。
以上でございます。(拍手)