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西野参考人 三宅で農業
委員会をやっています
西野直樹と申します。
まず最初に、
三宅島の
噴火前の農業の
状態と、次に
噴火後の
状態、そしてそれを踏まえて農業
委員会の方で検討されました内容を主に
お話しいたします。その後に、個人的に思うことなどを述べさせていただきます。
まず、
噴火前の
三宅島の農業なんですが、
資料四から七を参照していただければいいかと思います。一応内容的に、主には換金作物としまして二つありまして、
一つは、六十代から七十代の高齢の方が露地で栽培している伊豆諸島特産のアシタバという野菜です。それともう
一つが、五十代から六十代の中堅の農家の方が施設で栽培しているレザーファンというような観葉植物があります。その二つが大きな基幹作物となっております。
三宅島全体では約七億
程度の売り上げ、農産物の生産額でして、それ以外には、自家用消費ということで多くの方が農作物をつくっておりました。
噴火後の
状況につきましては、昨年の十一月に農業
委員会で現地の農地視察を行いました。その内容としましては、火山灰の影響と
火山ガスの影響、その二つがあるのですが、火山灰につきましては、全島一様に被災を受けておりまして、営農
再開には、降灰の除去、あと土壌改良剤の投入等がなければ農業は
再開できないというような
状況になっておりました。泥流等の被害の多い場所も、
地域によってはございます。
基幹作物のアシタバにつきましては、
火山ガスの影響はそれほどなく、成育はしているんですが、栽培
再開となりますと、やはり農地の更新と種をまたまき直すという
作業が前提となります。
レザーファンにつきましては、
火山ガスの影響を非常に受けやすく、一部を除きまして、ほぼ島の中のものが全滅という
状態で、営農
再開につきましては、新規に苗を
導入し、植えかえなければいけないというような形になっております。
島ですと、季節風の影響で、特に島の北東部、南西部につきましては非常に
火山ガスの影響を強く受けておりまして、農作物だけじゃなく、植生についても甚大な被害が出ているという
状況になっております。
地区によりましては、竹とか在来の植物の混入で農地の荒廃が進んでおりました。あと一、二年、もしそのままにしておくということになりますと、農地として使用できない、農地の形をとどめないほどの荒廃が進む、そういった
状況がかなり出てくるものと思われます。
パイプハウス等、栽培の施設につきましては、
火山ガスの影響でほぼ全島のパイプハウスが使用不可能という形になっておりまして、営農
再開については全棟建てかえ、新設という
作業が前提となるというような形になっております。
以上の
状況を含めまして、農業
委員会の方で課題を検討しまして、協議しまして、村の方に建議をいたしました。その内容を説明いたします。
資料の十二から十四に掲げておりますが、八項目挙げております。
その中の一、二、三につきましては、帰島前
避難中の課題としまして、農業の
復興復旧の計画を農家に知らせるように、情報公開するようにということを求めております。それに伴いまして、農家と
行政とか関係機関の
意見交換の場というのもぜひ持っていかなきゃいけないというふうに要望しております。それと、一般の農家につきましても、やはり
避難解除前に現地の農地を視察して、
現況を把握しておく必要があるというふうに考えております。
あと、四番、五番、六番につきましては、内容的には、降灰、泥流の除去、竹等の伐根、土壌改良剤の投入、パイプハウスの撤去、新設、そういった
作業を補助
事業として適用していただきたい、その
作業に当たっては当面の
収入を断たれている農家を
雇用していただきたいというふうに要望しております。
七番目につきましては、これは農業用水についてですが、農業用水は甚大な被害を受けて使用不可能になっているところもございますので、帰島前に農業用水の供給ができる体制を整えてほしいというふうに要望しております。
第八点目、最後としましては、現在島に残っている農作物も、母株として使えるものについては管理を図り、増殖等を図っていく必要があるということを述べております。
以上が、農業
委員会の建議の中で話されたことです。私が個人として思うことなんですが、農業自体が
噴火前からかなり厳しい
状況でして、市場低迷とかで経営的にも苦しい中であったのですが、この
噴火を経て、ついに帰って降灰を取って農地を復元して、施設を撤去して施設を建てて苗を
導入する、こういったことを自己資本でやるとなると、営農
再開というのはほぼ不可能というのが現状だと思います。やはりこれについては、補助
事業という形で手厚く
支援していただきたいというふうに要望いたします。
それと、中堅の農家の中には、帰島に際しましては
収入のめどが立たなければ農業を
再開するということはあきらめて、帰島もやめようかというようなことを言う者さえおる中です。ですから、帰島の前に、農業の
復旧復興作業の中で所得が得られるんだ、そういう計画を示すことが、やはり農家の営農
再開の気持ちを後押しするものとして、そういう形としてきちっと示しておくということが必要ではないかなと思っております。
個人の農地、施設ということなんですが、
災害前の
状態に戻すまでは、やはり
災害復旧の中の
事業として考えていただいて、農家自体に極力
負担がかからない、さらには、それをしながら所得も得られていくんだというふうな仕組みをつくっていただきたいなと思います。
前回の五十八年の
噴火のときには、降灰を取るという降灰除去
事業を地元の土木建設業者が受けまして、それを農家が仕事をしていくという中で所得を得ていたのですが、今回も同様な形、特に土木関係業者がやる農業
復旧はあるのですが、それ以外に、例えば人力でできる降灰除去ですとかパイプハウスの撤去、設置といった仕事については農協等の
団体に農業
災害復興事業をおろして、そこが主体となって、その
もとで農家が主体的に
復興作業をしながら所得を得ることができる、そういう形をつくっていただきたいなというふうに考えております。
あともう一点は、個人の従来の土地に建てるという形でない形としまして、泥流等でもう農地が使えない農家もありますし、
火山ガスの影響で、
帰島後も作物の栽培に支障を来すおそれのある場所もございます。そういった
地域の農家とか、また年齢的、
経済的に再投資をすることが非常に困難な農家というものに対しましては、公共の農地、公共の園芸施設、そういったものをつくりまして、そこでリース形式という形で営農
再開ができる、そういう形の
事業についてもよろしく取り組んでいただきたいというふうに考えております。
以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)