○林
参考人 私は、大学で
都市の
計画あるいはまちづくりということを教えております一方、仕事といたしまして、
都市計画あるいはまちづくりのコンサルタントという職を長年やってまいりました。
また同時に、その仕事の中で、住民が主体となって取り組むまちづくりを住民とともに進めるという、かつては住民参加と言います、今は住民主体のというまちづくりを進めてまいりました。その過程で、アメリカ等の調査を通じてNPOの活動の現場を訪ねまして、七十以上に上るさまざまなNPO、あるいはそれを支援する組織体、あるいは各国の行政、政府というところを訪ねまして、さまざまな研究の蓄積もいたしました。
そういうこともありまして、私自身、NPOを
地域で設立し、運営をするというふうなことをしております。
今回は、
都市再生特別措置法案及びその
関連法の改正ということでありますので、この問題について私がかかわりましたそういった知見から、あわせて
意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
お手元に私のメモをお配りさせていただいておると思いますが、
最初に、大きくは「目指すべき
都市再生の
あり方」ということについて五点挙げております。それから二番目に、「
都市再生関連法案が開くものと改善を要する問題」ということについて、これもまた五点挙げております。これについて簡単に述べさせていただきたいと思います。
最初の「
都市再生の
あり方」ということで、冒頭に一として「
状況認識について」、副題は「コミュニティの持続的発展を制度の目標とすべき時代の到来」ということを挙げております。
現代の
状況を見ますと、一九七〇年代の英国病と言われたイギリスの
状況、あるいは同じ時期に
都市の荒廃とか経済不況に非常に悩んだアメリカの諸
都市というものが抱えた
状況と非常に似てきたのではないかというふうに思っております。
こういった
状況に対して、英米両国では、政府による
都市開発ということによって対応しようということを一九五〇年代以降続けておりましたが、これは行き詰まって、七〇年代以降は
民間それから行政の共同による、パートナーシップによる開発ということを進めましたが、これも挫折をしたという歴史がありまして、その結果、そういったことからの教訓というのは、
都市の荒廃
地域あるいは
都市の
再生のためには、
地域のコミュニティーが主体的に取り組むということを支えていくということを一つベースにした上で、初めて大
規模な
都市開発その他も生きてくるというようなことが学び取られたわけであります。
こういったことから、さまざまなまちづくりのNPOの登場というようなことがあったわけでありまして、現在、
日本では、ここ五、六年の間に極めて急速に犯罪の増加がある、この六年ぐらいで犯罪が二倍を超えるスピードでふえているというような統計も最近あります。そういったことが、実は
日本のコミュニティーが非常に危機に瀕している、その問題が
都市再生と非常に深くかかわっているというこの認識が非常に重要ではないかというふうに私は思っております。そういう
意味で、
再生の主役というのは、ハードな
都市開発というよりは、ソフトな社会システムを構築するということが非常に重要ではないかというふうに基本的に考えております。
その問題は、二番目の「
都市経済の
再生」ということにつきましても、大
規模な
都市開発ということにも期待がかかりますが、しかし、極めて中小
規模の開発、修復あるいは保全といった活動、これが市街地を
再生させ、
都市の経済のマーケットを
再生させるベースになるということを申し上げたいと思います。
三番目には、市民セクターの発意と活動の育成ということに重点を置くべきではないかということであります。
レーガン、サッチャーに代表される市場主義ということ、あるいは小さな政府というものも、八〇年代、大いに成果を上げたわけでありますが、同時に、社会的な分裂でありますとか格差の拡大ということをもたらして、その後、特に市民セクターの重要性ということが非常に認識されるようになりました。この点をやはり我々としても重点を置いて考えるべきではないかというふうに思っております。
四番目は「
都市における主体・活動の多様性」ということでありまして、これは、
日本の
都市が非常に多様な市街地の
状況、同じ
東京であっても実にさまざまな
地域から成り立つということのよさ、これを評価すべきではないか。
五番目には、今回の
都市再生では超高層プラスオープンスペース型の
都市像というのがほとんど将来
イメージを覆い尽くしているのではないかというふうに感じられるわけですが、
都市というのは、もっと多様な空間、多様な文化、多様な人間の集まり、そういうものがあって初めて魅力を持つという、そういった
都市像を考える必要がある、このように思っております。
大きな二番目で、この
関連法が開いたもの、それに改善を要する問題ということについて触れさせていただきたいと思います。
一番目は「コミュニティ主体の取り組みを支える仕組み」ということで、今回、まちづくりに関する
都市計画提案制度の創設ということが、本日の二
法案ではありませんが、建築
基準法等の一部を改正する
法律ということで制度化されるということでありまして、このことは、今申し上げた趣旨に照らして大変重要なことではないかというふうに思っております。
都市再生特別措置法では、住民の参加とかあるいはそのプロセスにおける公開性等について特に記されているというふうにはなっておらないわけでありますが、これは、むしろ
都市計画法の仕組みによって補っていくというようなことも考えていくべきではないかというふうに思っております。
二番目は、
再生特別措置法の中の
緊急整備地域あるいは
都市再生特別地区の選定とか手続の公開性、透明性ということが非常に重要ではないかというふうに思っております。
これは、現在、あらゆる主体の間の相互の信頼ということが極めて危機に瀕している
状況であります。これは政治的、経済的、あるいは社会的に共通する問題であると思います。
そういう
意味で、公開とかあるいは参加ということも含めて、社会的な信頼を十分得るようにしていくということが非常に重要ではないかということで、三番目の「住民参加を積極的に進める」という趣旨も、そういったことからここに挙げております。
四番目は、「住民参加の積極的評価」ということについては、ぜひこれをよく認識していただきたいというふうに思います。
ここにはさまざまプラスの面があることを記しておりますが、私どもの経験におきましても、住民参加というのは決して時間をたくさんとるというようなものではない。むしろ、一堂にさまざまな主体が会するということによって得られる情報とかお互いの
関係の醸成ということから、全体のプロセスは非常に円滑に進むというふうに考えているわけであります。事実としても、私はさまざまな現場でそれを体験しているわけであります。
そういったわけで、どうも、えてして住民参加というのは今回のスピードアップをしなきゃいかぬという思いの中で邪魔者扱いをされているんではないかというふうに思いますが、実は、相互の信頼を確保しつつ社会的なコンセンサスを生み出すということによって、全体のスピードが上がっていくという結果になるというふうに期待しております。
最後に、五番目として、再
開発事業の
民間事業者への
施行権限付与につきましても、同様な趣旨で、公平かつ公開の手順を通じて、さまざまな市民の
意見を反映しつつこれが行われるということが極めて重要ではないかということを申し上げたいということで書き記しております。
以上、私の
最初の
意見ということで述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)