○
大石参考人 御紹介いただきました
大石でございます。
この
政治の
基本機構の
あり方に関する小
委員会にお招きいただきまして、まことにありがとうございます。
お手元に二枚の簡単な
レジュメを用意しておりますので、ほぼそれに基づいて私の
意見を申し上げ、御
参考に供したいと思います。
なお、時間に限りがございますので、多少はしょったりするところがございますが、どうぞ御海容いただきたいと思います。
政治の
基本機構の
あり方というテーマのうち、「
両院制と
選挙制度の
あり方」について
意見を述べるということになりますが、以下では、
選挙法というものが、
立法その他の
国政上の重要な
権限を持つ
機関の
組織の
あり方を定めるという
意味で、
憲法そのものである、つまり実質的な
意味での
憲法であるという視点から、両
議院選挙制度の
技術論といいますか、または個々の
制度の当否の問題ではなくて、
両院制の
趣旨から見た場合の両
議院組織法の
あり方に関するいわば
憲法論の要点を中心に述べたいというふうに思います。
そこで、
レジュメにありますように、まず、既に御
承知のことかとは思うんですが、「
基本的な
考え方」を述べ、それから「
日本国憲法と
両院制の
あり方」について話を申し上げ、
最後に「
両院組織法をめぐる問題」というふうにありまして、若干の感想を述べさせていただくというのが「おわりに」というところでございます。途中で、第四の
項目の
最後のところで
項目を改めればよかったんですが、
参議院の
あり方についても多少
意見を述べさせていただくということで、多分そこでは
憲法改正の問題という点にも、若干
項目を改めて立ち入るということになることと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
第二の「
基本的な
考え方」というところでございますが、既に御
承知おきのことと思いますが、復習を兼ねて、
基本的な点だけをまず押さえておきたいと思います。
現在は、
両院制あるいは
二院制と言われる
制度を採用しているわけですが、この
現行の
日本国憲法を改めて
一院制の
国会にするということも
議論されないではありません。しかしながら、どのような
選挙制度をとるにしても、
日本のように
人口の多い、
有権者の多様な意思を一院で集約できるかといいますと、かなり疑問でありまして、私
自身は、
両院制を維持することが妥当であるという
前提に立ちます。
こういうふうに
両院制を
前提といたしますと、
両院はそれぞれ独自の
機能を果たすことが望ましいわけでありまして、そのためには、その
議員の
選挙法といいますか、
両院組織法という
言葉を使いますが、それもできるだけ異なった
原理に基づくものであるということが肝要であろうと思います。
この両
議院の
関係につきましては、
両院制の
趣旨に照らして、各
議院の
組織、
権限、
手続という三点の問題を有機的に関連させて考える必要があろうかと思います。
選挙制度の
あり方も、
衆参両院それぞれの問題としてではなく、両
議院の
権限関係というものを踏まえ、しかも、
現行憲法の採用する
両院制をより意義あるものにするという
観点から、再検討すべきであろうと思います。
この
両院制の
あり方にはいろいろな
類型を考えることができますが、普通言われるところは、各
議院議員の
選挙方法に
着目をした場合の
類型、
組織上の
類型ということと、それから、各
議院が
法律、
予算等について
議決する、その効力に
着目をした
類型がある、これが
権限類型といいますか、
権限上の
類型だという分け方をいたします。
この
権限上の
類型としては、今言いました
立法または
予算議決などの面から
両院が対等であるという
タイプと、
下院が
優越するという
タイプ、これを人によっては
一院制型両院制という言い方をするわけですが、そういう二つのものに分けられる。この
下院優越型あるいは
一院制型両院制というのは、二十世紀の初めに
イギリスの
議会で成立したものでありまして、
各国憲法にその後採用されるということになりました。これがいわば現代型の
両院制と言うことができましょう。
他方、その
組織上の
類型、選ばれ方ということなんですが、それにつきましては、多数
代表制あるいは
比例代表制といったような
代表法の違いというものはもちろんありますけれども、
一般に、その
下院議員の
選挙、
下院議員というのは全部
交代制をとり、直接
選挙制とするという点は
各国議会で
共通するという面があります。
そこで、
両院制の
組織類型といった場合には、結局のところ、
上院組織法の違いということに帰着するわけでありまして、この
上院組織法の違いということになりますと、アメリカのような
連邦制型を除けば、いわば
貴族院の
タイプと
公選制をとる
公選型とに大別されるということになりますが、この
公選型の場合にはさらに細かく分かれるわけでありまして、いわば
間接選挙型及び直接
選挙型というように分けることができます。
言葉としては、直接
選挙、
間接選挙というふうに分けますけれども、何が異なるかといいますと、
下院といいますか、
日本でいう
衆議院と同じであるなら
意味がないわけですから、どこかを違えなきゃいけない。どこで違いを加えるかといいますと、
間接選挙型というのは
選挙人団の
組織原理を変えるという
考え方なんですね。これに対して、直接
選挙ということになりますと、結局、
衆議院、
下院と同じようなことになりますので、違いをどこに見出すかということになりますと、
代表原理を
下院の場合と違えるというところに
ポイントを置くということになるわけであります。
こういう
一般的な、
基本的な
考え方を
前提にしまして、以下、
日本国憲法のもとでの
両院制の
あり方、及び、そこに問題があるとすれば、
憲法についてどのような反省を加えればいいかということをお話し申し上げることになります。
そこで、三の
項目、「
日本国憲法と
両院制の
あり方」というところに進むことになりますが、
幾つか
ポイントを
レジュメにお書きしております。その
順序で参ります。
日本国憲法は、今申し上げました
権限上の
類型としては、
法律制定、
予算の
議決あるいは
条約締結の承認、さらには
総理大臣の
指名というような重要な点において、いわゆる
衆議院の
優越というのを認めているわけでありまして、
一院制型両院制を採用しているというわけです。
ただ、
立法の
あり方について言いますと、三分の二以上の
議員による
特別多数決によって再
議決するのでない限りは、
衆議院の
議決は最終的なもの、ファイナルなものにならないという点において、
イギリス型の
一院制型両院制とは大きく異なっているということになります。また、この点から、
衆参両院について、いろいろな
法律を通す場合を見越していろいろな駆け引きがあるというのは、私
ども外から観察しているところでございます。
さて、
現行憲法は、これに対して、両
議院の
組織法、
組織の問題につきましては、
両院議員の
任期、さらに
衆議院の全部入れかえ制及び
参議院の
半数改選制というものを定めているわけですが、このほかには特に定めるところがございません。むしろ、いわば
選挙制度法定主義あるいは
選挙事項法定主義というべき規定を多く設けております。
このことは諸
外国の場合と対比して見るとよくわかるわけでございまして、諸
外国の場合に、
一般に両
議院の
議員定数、それから、場合によっては
比例代表法、さらに
議席配分の
方法といったものを定めますし、さらに、
普通選挙、
平等選挙、直接
選挙、
自由選挙といったいわば
近代選挙法の公理というものを
憲法原理として
明文化しているものが多いわけでございます。そういう例と比べますと、
日本国憲法は、
憲法の
明文で直接に定めるところが少ないという
意味で、
選挙制度法定主義ということを語ることができるわけでございます。
そこで、その両
議院の
選挙制度の
あり方は、
原則的に
国会の
裁量によって、
立法裁量によって決定し得るというふうに考えられるわけですが、
他方、
国会議員の
選挙制度につきましては、
有権者である
国民との
関係で、
投票価値、いわゆる一票の
格差の問題であるとか、全
国民の
代表でなくてはならないといったような問題があります。
両院の
選挙制度につきましては、そういう点を踏まえて、
最高裁の判例の
言葉をかりれば、「
国民の利害や
意見が公正かつ効果的に
国政の
運営に反映される」、つまり、公正かつ効果的な
代表という仕組みを考える必要があるということになろうかと思います。
今申し上げた
選挙制度法定主義という
考え方から、どういう
選挙制度にするか。例えば、
個人本位のものにするかあるいは
政党本位のものにするか、多数
代表制をとるかあるいは
比例代表制をとるか、小
選挙区制にするか大
選挙区制にするかといったような問題のほかに、
投票の
方法について
単記制をとるかあるいは
連記制をとるかというようなもろもろの決定すべき問題がありますけれども、これらについてはすべて
国会の
裁量が広く認められるということになります。
しかしながら、ここで注意すべきことは、
立法によっても変更できない
憲法原理というものと、
法律によって変更できるもの、すなわち
法律事項というのは、やはりしっかりと区別する必要があるということでありまして、特に、直接
選挙制かあるいは
間接選挙制なのか、いずれをとるのか、また、
平等選挙の
原則などとの
関係をどう考えるかというのは、両
議院の
組織法にとって非常に重要な問題であろうというふうに思うわけでございます。
そこで、
両院組織法をめぐる具体的な問題というのを以下扱いまして、
憲法改正問題にも及びたいと思います。
「
両院組織法をめぐる問題」の第一は、現在の
制度ということで、特に説明する必要もないかと思うんですが、
衆議院議員選挙につきましては、直接
選挙制によることを
前提として、小
選挙区制と
ブロック別比例代表制との
組み合わせを持っている。
参議院につきましては、これも直接
選挙制という
前提に立って、
都道府県別大
選挙区制、
選挙区の
選挙と
全国比例代表制との
組み合わせというものを採用している。
しかも、
参議院の場合は、
都道府県別の大
選挙区といっても、現在でいいますと、全部で二十七県だと思いますが、二十七の県に上る二人区の県がございますから、これは、
半数改選制ですと、
通常選挙というのは小
選挙区になるわけでありまして、結果的に両
議院ともかなり似通った
選挙制度になっているということは否めない事実であろうと思います。
この点につきましては、しばしば、小
選挙区制あるいは
選挙区
選挙における
議員定数の
格差がいわゆる一票の
格差として問題となるわけでありますが、さらに加えて、
政党本位の
選挙制度になり過ぎているのではないかといったような批判があることは御
承知のとおりでございます。
しかしながら、私が思いますに、むしろ問題なのは、そういうふうに非常に類似したものになっている両
議院組織法というものが果たして
両院制の
趣旨を損なうことになっていないのかどうか、あるいは、その
両院制というものを意義あるものとするゆえんであるかどうかということでございまして、特に
参議院につきましては、いわゆる
議員定数格差の問題よりもその方がはるかに深刻な問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。
そこで、
衆参両院について申し上げますと、まず
衆議院の
組織法ということでございますが、
一院制型の
両院制がとられるわけで、
衆議院の場合、
議員任期が短い、しかも
解散制度がある、
予算先議権を持つといった諸点を考えますと、諸
外国におけるいわゆる
下院の
地位に相当するものでございます。
先ほど申し上げたように、
選挙制度について、
日本国憲法はほとんど述べるところがありません。したがって、
選挙制度法定主義ということを主張することができるわけですけれども、しかし、たとえ
憲法上の
明文がないとしても、
下院の
地位に相当するということになれば、直接
選挙である、あるいは
平等選挙を貫かなくてはならぬというのは
憲法上の当然の
原理あるいは
要請であるというふうに考えられるわけでして、これと異なる
選挙制度を法定するということになりますと、
憲法違反というそしりを免れないというふうに考えられます。
この点は、
憲法上の
明文がないとしてもそう考えるべきだということでございまして、先ほどの、
憲法問題、
憲法事項と
法律事項を分けるべきだということの
一つのあらわれでございます。
他方、
参議院の方を考えますと、いわば諸国の
議会でいえば
上院に相当するということになりますが、先ほど述べましたように、
上院の
組織の
あり方につきましては、
各国共通の
原理というものを考えることはできない、
共通のものはなかなか見出しがたいということになります。
そうすると、
日本国憲法も、先ほど申し上げた
貴族院型と
公選院型ということですが、
公選院型のいずれにするか。つまり、
間接選挙にして
選挙人団、
有権者団の
組織原理を異なるものとするか、あるいは直接
選挙にするか、つまり、そうすることによって
代表の
性格を変えるということにするかというのは、
憲法上は直接に特定されていないというふうに考えることができます。
そこで、
参議院につきましては、
両院制における
上院の
憲法上の
役割というものを再考し、その
上院としての
性格を
選挙制度の
あり方にどう反映させるかということが重要な問題になろうかと思います。
なお、先ほど申し上げた、
公選院型とは違う
貴族院型という
可能性も残されるということに一応はなりますが、しかしながら、御
承知のように、
憲法制定過程の論議がございます。さらに、全
国民代表という
要請を
前提といたしますと、
貴族院型のものが果たして
現行憲法上認められるかというと、これはかなり難しい、むしろ、はっきり言って認められないであろうというふうに考えられるわけでございます。
この
参議院の
組織法の問題についてしばしば裁判になるわけでございますが、
最高裁判所は、御
承知のように、
基本的な
立場を明らかにしております。
すなわち、その
最高裁によれば、
参議院議員に対して、
衆議院議員とは異なった
代表の実質的な
内容ないし
機能に独特の要素を持たせようという試みも
立法裁量の問題として
憲法上認められる、したがって、
衆議院議員選挙のような
人口比例主義を最も重要かつ
基本的な基準とする
選挙制度と比較すれば、
一定の譲歩を免れないという
考え方を明らかにしております。
ある
意味では、これは消極的な反論でございまして、しかも、現在の
公職選挙法に基づく
選挙制度を
前提とした上での、さらに
平等選挙の
原則との
関係というものを説いたものにすぎないわけです。今言いましたように、したがって、
参議院組織法に関する正面からの
憲法論というものではないというふうに考えられる。
それならどういうふうに考えていったらいいかというのが次の
項目でございまして、そもそも論になりますが、繰り返しになりますけれども、ほぼどの国でも、
下院議員の
選挙というのは全部
交代制、全員が
選挙の対象になって、場合によっては大きく入れかわることがあるというわけでして、
下院は、一度の総
選挙で
院内の
政治勢力が大きく変化し得るという
組織上の特性を備えていると言うことができます。
これに対して
上院というものは、
解散制度がない、
半数入れかえあるいは一部入れかえ、二分の一あるいは三分の一というところがございますが、そういう入れかえ制によって、
下院とは異なりまして、一度の
選挙で
院内勢力が劇的に変化することがないという
特徴を持っております。これに加えて、
上院議員の
任期は
一般的に長い。しかも、年齢の資格も
下院議員のそれよりも高いということなどを考え合わせますと、結局のところ、
上院というものは、
下院が一回の
選挙で大きく
政治勢力を変えるという
意味で非常にダイナミックな動きをするわけですね、そういう
ダイナミズムを緩和するという
役割を期待されているというふうに考えられる。その
意味において、ちょっと
言葉に語弊があるかもしれませんが、
保守性あるいは
漸進性を持つというふうに考えることができるのではないか。
両院制につきましては、一方の院が他のハウスを牽制する、
権力分立の
一つであるというようなことがしばしば言われます。しかし、
上院の
組織の
あり方を見ますと、もう少し具体的な
内容を持っているわけでありまして、その具体的な
内容を見た場合に、先ほどのように、さまざまな
特徴を持っているわけですから、全体として
下院が持っている
ダイナミズムを緩和するという
役割を期待されているというふうに考えるのが妥当であろうと思いまして、この理屈は
参議院についても当てはまるのではないか。したがって、
参議院組織法の問題は、こういう
観点から出発すべきであろうというふうに思います。
そこで、
憲法論としてどういうふうにまとめたらいいかということになりますが、
憲法論としては、
参議院議員選挙については、
間接選挙制とすることも可能だという
議論がありますし、さらに、直接
選挙は直接
選挙で要求されるけれども、しかし
平等選挙の
原則というのはそこに要求されないという説、あるいはそういう
議論が有力に唱えられることになります。
私も
基本的にこういう
立場に賛成でございまして、前者によれば、すなわち、
間接選挙とすることも可能だという
立場に立てば、例えば、
市町村代表を
有権者とする
フランス上院型の
選挙制度も
日本国の
憲法上可能であって、さらに、後者、すなわち、直接
選挙制は要求されるけれども
平等選挙制は要求されないということになれば、例えば、
都道府県一律三人の
参議院議員を
選挙するという
制度も
現行憲法のもとで十分可能であろうというふうに思います。
もちろん、学説の中には、直接
選挙が要求され、かつ
平等選挙制が要求されるという
議論がございます。しかし、そうしますと、
衆議院組織法、これは先ほど申し上げたように
憲法上
明文はありませんけれども、各
議会法の
共通の
原理として、
憲法原理として考えざるを得ない。その点と全く同じ
組織原理をとるものでありましたら、そもそも
両院制の
趣旨を損なうことになるわけでして、
憲法が予定している
両院制をむしろないがしろにする
議論ではないかというふうに私
自身は考えております。
ここまでが
両院組織法をめぐる問題ということでございまして、
レジュメの(8)のところは、あるいは章を改めてといいますか
項目を改めて、
憲法改正問題というふうに立てた方がよかったかもしれません。おわびを申し上げます。いわば4aという形で5との間に挟みたいと思いますが、
参議院の
役割を再考するという
意味では、さらに
立法手続における
参議院の
議決権をどう考えるか、あるいはどう見直すか、さらに、
総理大臣の
指名権というものもこれに関連しますが、
参議院がそれを
現行憲法上持っていることをどう見るかというような根本的な問題がございます。
今言いました
立法手続における
参議院の
議決権という問題は、実は先ほど申し上げた
一院制型両院制というものの
あり方に
関係をします。さらに、
総理大臣指名権を
参議院が持つということは、
議院内閣制の
あり方にも密接な関連を持つものであります。
しかしこの点は、言うまでもなく、
憲法改正を要する問題でありますから、これまで述べた
現行憲法を
前提とした
組織法というようなことではありませんで、より包括的な
議論が必要だというのは当然のことでございます。
この点についてどう考えるかということでございますが、
幾つかのところで、この点について私は
考え方を明らかにしておりますし、さらに、一部の方には大変おしかりを受けたんですが、
参議院の斎藤前議長のときに
私的諮問機関がつくられて、そのメンバーとして一応の
意見を述べたことがございますので、あるいは御
承知おきかもしれませんけれども、結論だけをとりあえず述べることにいたします。
立法手続における
参議院の
議決権という問題についてまず言いますと、
衆議院による法案再
議決要件というものを、現在は三分の二の
特別多数決ということでございまして、相当高いハードルだという気がいたしますが、これはもちろん
通常多数決に改める。したがって、二度目に
通常多数決の
要件を備えれば、それで
法律として成立するという
タイプにすべきではないかということになります。
ただし、その場合、
言葉として適切かどうかわかりませんが、
一定の
冷却期間といいますか、
イギリスのような二
会期連続してという
要件をつけるということもまた大事なことでありまして、そういう
意味で、
一定の
期間は
衆議院は再
議決権を行使できないというような形をとるべきではないかと思います。
これと同時に、いわゆる
会期制度の問題がございまして、この点についてもいろいろなところで
意見を申し上げておりますけれども、この
会期制度、あるいはこれに伴うと言われておりますいわゆる
会期不継続の
原則というものを改めて、普通の
議会のように、いわゆる
立法期、人によっては
議会期という
言葉を使いますが、そういう
制度を採用することが必要であろうと思います。
事実上の
通年国会制を実現すれば何も問題はないという
意見もありましょうけれども、要するに、一回の
選挙から次の総
選挙のときまでは
衆議院の
院内勢力というのは
基本的に変わらないわけでありますから、その
単位を
前提とした
議院運営、
議会運営というものを
基本にすべきであろうと思います。常にその全体の
立法期をさらに細分化した
会期というものを
前提とし、それを
単位として、いわばアジェンダの設定で
手続的な
議論が盛んに行われるというのは余り好ましいことではないというふうに思っております。書生論議かもしれませんが、私なりの
考え方でございます。
もう一点は、
総理大臣の
指名権ということでございました。
衆議院と
参議院でございますが、
衆議院というのは、
議院内閣制という
原則でありますれば、政権を形成し、あるいは維持するその基盤となるということは当然のことでありまして、これに対して
参議院は、さきにも述べましたように、政権との間に
一定の距離を置くという
意味で
両院制の
趣旨を発揮できるというところがございます。
したがって、
現行憲法のように
参議院が
総理大臣指名権を持つというのではなくて、専ら
衆議院のみが
総理大臣指名権を持つというように改めるべきであろうというふうに感じております。
議会制度の
あり方につきましてはそのほかにも多少の
意見を持っておりますけれども、ここでは、必要な範囲で
憲法改正の問題というものについて触れさせていただきました。
終わりに、二点ほど申し上げたいと思います。
それは、
レジュメではごく簡単に申し上げましたけれども、
一つは
選挙制度の
あり方について平素思っていることでございまして、もう
一つは、この
憲法調査会の活動についての勝手な注文といいますか、
言葉は適当ではないかもしれませんが、要望を述べて終わりにしたいと思います。
一つは、いろいろなところで問題になっておりますが、
選挙権の年齢を満十八歳にするように
選挙法を早く改めるべきであるということを強調したいと思います。
これは、大きな流れの問題と、いわば一種の
原理的な問題がございまして、
一つ、流れということでいえば、主要な欧米諸国は既に十八歳
選挙権を実現している。一九七〇年代から既にそうであります。そういう時代的な流れに沿うという
意味もありますけれども、現実的な点で申し上げますと、幾ら大学進学率が高くなったといっても、高卒で就職し、納税者として
国民の義務を果たしているという者はたくさんいるわけです。しかしながら、二十歳になるまでは
選挙権のない
国民がいるということはやはり大きな問題でございまして、
代表なければ課税なしとかなり昔に言われたことがありますが、そのことをあわせて考えるべきであろうと思います。いろいろな法案の形でも既に出てきているところでございますけれども、ぜひお願いしたいと思います。
もう一点は、僣越でございますが、この
憲法調査会の活動の
あり方についてということでございます。
五月号の「
国会月報」にも若干冒頭のところで書きましたけれども、
両院の
憲法調査会はこれまで全く別個に
調査を進めてこられました。それはそれで十分成果を上げているように思いますけれども、しかしながら、
衆参両院議員選挙制度と密接に
関係する
両院制の
あり方といったような問題などは、単なる
議院の内部
運営の問題とは違うわけでして、
両院の枠を超えた両
議院の
組織法そのものを問うものだというふうに考えられるわけであります。
したがって、こういう問題につきましては、合同審査会として
議論する方がむしろ望ましいのではないか。
衆参両院それぞれの
委員が忌憚なく
意見を述べることによって、とかく忘れられがちな
両院制の
あり方をどうすべきかという
議論をおやりになるのが望ましいのではないかということでありまして、しかしそのためには、現在、合同審査会のための規定がございませんから、
両院調査会による合同審査会を開くことができるように
調査会の規程をお改めになってはいかがでしょうかということを、大変書生論議で申しわけございませんけれども、
先生方を前にして
意見を述べる機会をいただきましたので、せっかくの機会ですから申し上げることになりました。
以上、多少早口で大変お聞き苦しかったかと思うんですが、私の大まかな考えを述べまして、私の
参考人の
意見といたします。
以上でございます。(拍手)