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2002-07-04 第154回国会 衆議院 憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
平成
十四年七月四日(木曜日) 午前九時三分
開議
出席小委員
小
委員長
島 聡君 石破 茂君 近藤
基彦君
土屋 品子君 葉梨 信行君
平井
卓也
君 大出 彰君 小林 憲司君 今野 東君 太田 昭宏君
武山百合子
君 春名 直章君 金子 哲夫君
井上
喜一
君 …………………………………
憲法調査会会長
中山
太郎君
憲法調査会会長代理
中野 寛成君
参考人
(
日本労働組合
総
連合会事
務局長
)
草野
忠義
君
衆議院憲法調査会事務局長
坂本 一洋君
—————————————
七月四日 小
委員井上喜一
君六月六日
委員辞任
につき、その
補欠
として
井上喜一
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。 同日 小
委員中山成彬
君同日小
委員辞任
につき、その
補欠
として
平井卓也
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。 同日 小
委員平井卓也
君同日小
委員辞任
につき、その
補欠
として
中山成彬
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した
案件
基本的人権
の
保障
に関する件 ————◇—————
島聡
1
○島小
委員長
これより
会議
を開きます。
基本的人権
の
保障
に関する件について
調査
を進めます。 本日、
参考人
として
日本労働組合
総
連合会事務局長草野忠義
君に御
出席
をいただいております。 この際、
参考人
の方に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわらず御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。
基本的人権小委員会
、今回五回目の
委員会
でございますが、恐らく今国会では最後の小
委員会
になると思います。
参考人
のお
立場
から忌憚のない御
意見
をお述べいただきまして、
調査
の
参考
にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。 次に、議事の順序につきまして申し上げます。 最初に
参考人
の方から御
意見
を四十分以内でお述べいただき、その後、小
委員
からの質疑にお答え願いたいと存じます。 なお、
発言
する際はその都度小
委員長
の許可を得ることとなっております。また、
参考人
は小
委員
に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御
承知
おき願いたいと存じます。 御
発言
は
着席
のままでお願いいたします。 それでは、
草野参考人
、お願いいたします。
草野忠義
2
○
草野参考人
御紹介いただきました
連合事務局長
の
草野
でございます。本日は、
参考人
としてお招きをいただきまして、まことにありがとうございます。 では、以下、小
委員長
の
発言
に従いまして、
着席
で
発言
をさせていただきたいと思います。 御
案内
のとおり、私
ども連合
は、ちょうど十三年前に
発足
をいたしました。現在、約七百五十万人の
組合員
を擁する組織になっております。 まず、
衆議院
の
憲法調査会
の
皆様方
が真摯な
討議
をされておりますことに、心から敬意を表したいと思っております。 本日は、私
ども
の
立場
から
労働基本権
と
雇用対策
についての
考え方
を述べるようにとのことでございますので、その件について
お話
をさせていただきたいと思っております。
労働基本権
と
雇用対策
は、言うまでもなく、私
ども労働組合
にとりまして最も基本的な
テーマ
である、このように
認識
をいたしております。
連合
のこれまでの各
機関会議
におきます
確認事項
あるいは
取り組み等
を踏まえながら、現時点でできる範囲の
お話
をさせていただきたいというふうに思っておるところであります。 なお、本日は、
憲法
問題に限定せずに
お話
を申し上げたいと思いますが、
憲法調査会
での
陳述
ということでもございますので、
憲法
に関する
連合
の基本的な
考え方
をまず御報告申し上げたいと思います。
連合
は、先ほど申し上げましたように、十三年前に
発足
をいたしましたが、一九九九年十月の第六回
定期大会
で、国の
基本政策
に関する
見解
の一環といたしまして、
憲法
についての当面の
考え方
を整理いたしました。それは、まず、
平和主義
、
主権在民
、
基本的人権尊重
という
日本国憲法
の三大
原則
を重視し、その貫徹を期すということでございます。同時に、
憲法論議
を否定するものではないということにつきましても
確認
をしているところでございます。
連合
では、国の
基本政策
に関しまして三役
会議
で
検討
してまいりましたが、
安全保障
や
憲法
の問題などにつきましては、現在、三役
会議
のもとに国の
基本政策検討作業委員会
を設置して
検討
を進めているところでございます。そういう意味では、
憲法
につきましては、本年の五月から
検討
を開始したところでございますので、
検討開始
といいましてもまだ
勉強会
の
段階
でございまして、具体的な
討議
までには至っておりません。そのために、
連合
として
憲法
に関する総合的な
見解
をまとめるという
段階
には至っておりませんので、そういう前提でひとつきょうは
意見陳述
をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。 したがいまして、今回の
陳述
では、
労働基本権
あるいは
雇用対策
、
労働条件
に関する私
ども連合
の
取り組み
などを紹介しながら、
幾つ
かの点について述べさせていただきたいと存じます。 なお、私
たち
は、
憲法
の問題につきましては、
個人
の
尊重
、法のもとの平等、
強制労働
の
禁止
、思想、良心の自由、
職業選択
の自由など、
労働
問題に
関係
の深い
課題
に
関心
を持っておりますけれ
ども
、本日は、
労働基本権
と
雇用
問題という
テーマ
につきまして、特に
労働権
、
社会権
について
お話
しさせていただきたいということを申し上げておきたいと思います。 まずは、
労働基本権
についてでございますけれ
ども
、言うまでもなく、最も
労働組合
にとって重要な
権利
の
一つ
であることは御
承知
のとおりでございます。しかしながら、
我が国
の
労働基本権
の
状況
は
先進国
とは言いがたい深刻な問題を含んでいる、このように
認識
をいたしております。すなわち、
憲法
第二十八条で
団結権
、
団交権
、
団体行動権
のいわゆる
労働三権
を
規定
しているにもかかわらず、
公務員関係法
などが
労働基本権
に重大な
制約
を加えているという点でございます。
公務員
の
労働基本権
に関するこれまでの
経緯
は
先生方
も御
承知
のとおりでございますが、簡単に振り返ってみたいと思います。
我が国
の
労働組合法
は、
憲法
に先立ち、
昭和
二十年十二月に
制定
をされましたが、当初の
規定
は、
警察官等
を除く
公務員
に
労働基本権
を
保障
するというものでございました。しかしながら、
昭和
二十三年の
国家公務員法改正
に始まる
公務員関係法
の
改正
と
制定
によりまして、
労働基本権
に大きな
制約
が加えられることになりまして、
公務員
の
争議行為
の
禁止
などが決められたわけであります。その後、
公務員関係法
は
幾つ
かの
改正
が行われましたけれ
ども
、
労働基本権
を
制約
するという
枠組み
は、五十年余を経た今日なお、基本的には当時のままとなっているわけでございます。 このような
憲法
の
趣旨
に反する
公務員諸法
の
規定
につきまして、
労働組合
は、当然のことながら、強く抗議し、
改正
を求める
運動
を進めてまいりました。その主要な舞台の
一つ
が
ILO
、
国際労働機関
でございます。
ILO
は、
我が国
の
労働組合
の訴えなどを受けまして、
労働基本権
の
状況
に強い
関心
を持つこととなりました。
昭和
四十年の初めには
調査団
を
日本
に派遣し、
我が国
の
労働基本権
の
状況等
を
調査
し、
結社
の自由を
規定
いたしております
ILO
第八十七
号条約
の
批准
に向けての
勧告
などを行いました。
政府
は、同
条約
の
批准
に向けまして
公務員関係法
の若干の
改正
を行うとともに、同年の五月に
ILO
第八十七
号条約
を
批准
したわけであります。しかしながら、
公務員
の
労働基本権
を
制約
するという基本的な
枠組み
は変更されないままで来ているところであります。
政府
は、また、
ILO条約
の
批准
を受けまして、
昭和
四十年の十月に
労使
の
代表
を含みます
公務員制度審議会
を設置し、
労働基本権
の問題を含む
公務員制度
のあり方について
検討
を始めました。
公務員制度審議会
は
昭和
四十八年九月に第三次
審議会
の
答申
を行っておりますが、その
内容
は
労働組合
の主張からは大きく離れたものでございました。しかし、現業の
公務員
につきましては、
争議権
の問題を解決するための諸
課題
の
検討
を
政府
に求めるなど、従来と比べれば前向きの
内容
を含むというふうな
理解
をいたしております。 しかし、その後、
昭和
四十九年のいわゆる
スト権スト
をめぐる
労使
の対立などを経まして、
公務員制度
をめぐる
論議
が繰り返されましたが、
労働基本権
の問題が大きく前進するということはなかったと
認識
をいたしております。
平成
九年に至りまして、
公務員制度審議会
は廃止され、新たに
公務員制度調査会
が設置されたと聞いております。
公務員制度調査会
は
労使
の
代表
が参加するもので、
平成
十一年に
公務員制度改革
に関して
関係制度
の改善などを求める
答申
を行いましたが、
労働基本権
を扱うものではございませんでした。
政府
は、
平成
十二年の末に至りまして、
公務員制度
を
根本
的に改革するとして
行政改革大綱
を閣議決定いたしましたが、これは
公務員制度調査会
の
検討経緯
を無視するものでございました。
行政改革大綱
を受けまして、
行政改革推進事務局
は、
労働組合
との
協議
は行わないまま、
平成
十三年三月には
公務員制度改革
の大枠を発表し、同じ
平成
十三年の十二月に
公務員制度改革大綱
をまとめたところでございます。しかしながら、その
内容
は、
労働基本権
の回復は行わないとするだけではなくて、内閣と各
府省
の
人事管理権
の
強化
を図るなど、
労働組合
としての
基本的要求
を無視したものだと
認識
をいたしております。
連合
は、そのような
内容
に抗議いたしますと同時に、
平成
十四年の二月に、
ILO
、
国際労働機関結社
の
自由委員会
への提訴に踏み切りました。そして、
平成
十四年六月、先月でございますが、
ILO総会
の
条約勧告適用委員会
におきまして、
日本
における
公務員制度
の問題を
個別審査案件
として
審議
を行いまして、
日本政府
の
労働基本権制約
を
批判
し、
公務員
との
協議
、交渉を促進するよう求める
適用委員会議長集約
を
確認
したところでございます。 この
条約勧告適用委員会
におきます
審議
では、各国から
日本政府
に厳しい
批判
が加えられるなど、
我が国
の
公務員制度
の問題は改めて国際的な
批判
にさらされる
事態
となっております。 私も、今回、六月の
ILO総会
に
出席
してまいりました。
日本案件
に関する
議長集約
の
資料
もおつけいたしておりますので、後ほど御一覧いただければ大変幸いだというふうに思っております。 以上がこれまでの
経緯
の極めて概要でございますが、
我が国
の
公務員
の
労働基本権
は、
憲法
二十八条があるにもかかわらず、大きく
制約
されていることは御
承知
のとおりだというふうに思っております。
公務員諸法
の
改正
から半
世紀
以上経た今日、
社会経済情勢
は大きく変化しております。
労働運動
も、抵抗から
要求
、そして参加の
段階
へと発展してきているというふうに自覚をいたしております。
小泉総理
がカナダのカナナスキス・サミットで奮闘されております姿をテレビで拝見いたしましたが、サミットの
構成国
である
我が国
において、
公務員制度
と
労働基本権
に関する限り、国際的なルールから離れようとする動きが見られることはまことに残念でならない、このように感じている次第でございます。
政府
が、
民間企業
では普通のことであるように、
公務員
の
労働組合
を
社会的パートナー
として位置づけること、そのために国際的な視野に立って適切な
政策変更
を行うことが何より必要だと考えております。その中で、
公務員関係法
を
改正
して、
労働基本権
を速やかに回復し、民主的な
公務員制度
を確立するよう強く求めたいと思っている次第でございます。 なお、
民間産業
の分野でも前時代的な
スト規制法
がいまだに存在しており、対象である
電気事業
や
石炭鉱業
の
労働組合
はもちろん、私
たち
もその撤廃を求めていることをあわせて御報告しておきたいと思います。
衆議院
の
憲法調査会
におかれましても、
憲法
第二十八条をめぐる
状況
について、十分
検討
されるよう要望させていただきたいと思っております。 次に、
雇用対策
について若干述べさせていただきたいと思います。 言うまでもなく、
雇用対策
は
労働組合
にとりまして最も重要な
課題
の
一つ
であります。
完全雇用
の達成は、
我が国
のみならず
世界
の
労働組合
、
世界
の
労働者
の共通の目標でございます。ところが、
我が国
の
雇用
をめぐる
情勢
は未曾有の困難を抱えていると言っても
過言
ではないのではないでしょうか。 つい先日、六月二十八日に発表されました本年五月の
完全失業者数
は三百七十五万人に上っており、
完全失業率
は五・四%とこれまでで最悪のレベルにございます。
完全失業者
の中で非自発的な
失業者
の数は百五十二万人となっております。このうち、勤め先の都合による倒産あるいはリストラなどの
失業者
は百十三万人にも達しておりますが、とりわけ四十五歳以上の
中高年
の
労働者
が五十七万人に及ぶ
事態
となっており、このような
状況
の中で
自殺者
が急増しております。
平成
十三年では三万二千人の
方々
がみずからの命を絶ったと報告されております。
自殺者
の中で四十歳、五十歳代の
中高年者
がほぼ四割を占める、そして
経済生活苦
を理由とするものが増加しております。これはまさに現在の
雇用
問題の深刻さを示すものであると考えている次第でございます。
連合
といたしましては、このような
情勢
を打ち破るために、
政府
に対しまして、積極的な
経済政策
を通じて景気を回復すること、
雇用対策
を抜本的に
強化
することなどを強く求めております。 お手元の
資料
の中に、六月十四日に
連合
として
小泉総理
に要請した文書をつけてございますので、後ほどお目通しをいただければと考えております。 さて、
憲法
第二十七条第一項では、「すべて
国民
は、
勤労
の
権利
を有し、
義務
を負ふ。」と
規定
をいたしております。ここで言う
勤労
の
権利
の
内容
については、
政府
による次の三つの
政策義務
があるなどと解釈されております。すなわち、
国民
が完全
就業
できる
体制
をつくる
義務
、
失業者
への
就業
の
機会
を与える
義務
、
失業者
の
生活資金
を給付する
義務
であります。
政府
は、
勤労権
を確保するための
雇用対策
を行うべき
憲法
上の
義務
があるわけでございまして、今御紹介申し上げましたような
政策義務
に反するような
法律
や
施策
は違憲と考えるべきではないかと思う次第でございます。 このように見てまいりますと、現在の
政府
の
雇用政策
は
憲法
の
趣旨
に沿ったものとは言いがたい面があるのではないでしょうか。 例えば、
雇用保険制度
の
状況
であります。
さき
に述べましたように、
憲法
の
勤労権
は
失業者
の
生活資金
を給付する
義務
についても
規定
していると考えられておりますが、これを具体化したものが
雇用保険制度
であります。 現在、
雇用保険制度
は主として
労使
が負担するものでありますが、長期の不況と
失業者
の増加の中で、財政的に厳しい
状況
に立ち至っておるのは御
案内
のとおりであります。
連合
は、
雇用保険制度
につきまして、
一般会計
による
負担増
を考えるべきということを主張しておりますが、
政府
は一貫して
国庫負担
を減らしてきており、それを当然とするかのような説明が繰り返されていると聞いております。このような姿勢は
憲法
の
趣旨
と相入れないものがあるのではないか、このように考える次第でございます。
雇用対策
と
憲法
との
かかわり
の問題としては、このほかにも、
国民
が完全
就業
できる
体制
をつくる
義務
、
失業者
への
就業
の
機会
を与える
義務
について多くの
検討
すべき
課題
があるものと思われます。
衆議院
の
憲法調査会
におかれましても、
雇用対策
をめぐる
状況
についても、十分御
検討
、御
審議
をされるよう要望させていただきたいと思います。 続きまして、
労働条件
、
労働基準
の問題について触れさせていただきたいと思います。
憲法
第二十七条二項は、「
賃金
、
就業
時間、休息その他の
勤労条件
に関する
基準
は、
法律
でこれを定める。」としております。これは
労働条件
に関する
根本
的な
規定
でございまして、
労働基準法
を初めとする
労働保護法
の
根拠
となっております。したがいまして、この
規定
に反するような
法律
や
施策
は
憲法
に反するものとされていると伺っております。
労働条件
と
憲法
の
趣旨
との
かかわり
で申し上げれば、例えば
男女
の
不平等
の問題がございます。
憲法
は、
我が国社会
における
男女
平等の実現をその主要な
課題
としておりますが、
職場
や
社会
の
状況
は、それが達成されたと言うにはほど遠いものがあると思っております。
我が国
の多くの
職場
は、
憲法
が
制定
されて半
世紀
以上がたっても、なおいわゆる
男社会
であり続けております。
賃金格差
も著しく、
女性
の
賃金
は、
パートタイマー
を除く
一般労働者
で比較しても、
所定内給与額
で見ると、平均では男性の六五%
程度
であります。さらに、
パートタイマー
の
賃金水準
は
一般労働者
を大きく下回っております。
平成
十二年では、
時給換算
で見てみましても、
女性パートタイマー
は
女性一般労働者
の六七%
程度
となっております。 このような
賃金格差
は近年拡大を続けておりますが、そのような
状況
をもたらしている原因の
一つ
に、
女性
をパートで
雇用
し、コストを引き下げようとする傾向が強まっていることがあると
理解
をいたしております。ワークシェアリングの
先進国
と言われておりますオランダ初め
欧州諸国
などでは、
均等待遇原則
が法制化され、正社員と
パートタイマー
の
格差
は
労働
時間の短い分だけの違いとなっている、このようにお伺いをいたしております。
雇用
の場における
男女
の平等は、
憲法
上の直接の
規定
はありませんが、法のもとの平等の
規定
を見るまでもなく、
憲法
全体の
趣旨
に沿わないものと言わざるを得ないのではないでしょうか。 また、
職場
での
過労死
や
いじめ
、
セクシュアルハラスメント
の問題などについても、
労働条件
との
かかわり
で考えなければならない
課題
であると考えております。 年間四千時間に近いような超長時間
労働
、一年間ほとんど休みがとれない、このような
労働
の果てに、病で命を落としたり、みずから命を絶つ
労働者
の例が後を絶ちません。また、
職場
での上司や
同僚
の
いじめ
から退職に追い込まれる、あるいは
自殺
をしたというケースを聞いております。また、
セクシュアルハラスメント
につきまして、
行政
や
労働組合
の
各種調査
などによりましても、引き続き問題がある
状況
でございまして、蔓延していると言っても
過言
ではないところもあると考えております。 これらは
労働基準
の問題であるにとどまらず、
労働者
の
人間
としての尊厳が失われている問題であると思います。
憲法
では、
勤労
の
基準
を
法律
で定めるとされておりますことから、これらの問題を防止し、
禁止
するための
法律
などの
強化
が必要であると思っております。 また、
憲法
は
最低基準
の法定を求めておりますが、
職場
の中の
使用者
や
同僚
によるものなど、私
人間
の
行為
のよるべき
理念
には触れておりません。しかしながら、
過労死
や
いじめ
、
セクシュアルハラスメント
などの問題は、
人権尊重
を
基本理念
とする
憲法
の
趣旨
に反するものであることは言うまでもないと思っております。 また、これらの問題は、
生存権
を
規定
いたしました
憲法
第二十五条、すなわち、「すべて
国民
は、健康で文化的な
最低限度
の
生活
を営む
権利
を有する。」との
規定
ともかかわる問題であると思います。
憲法
第二十五条は
社会権
の
根本規定
と言われており、
労働基本権
や
労働条件
の
規定
はその上に形づくられております。
産業
、
企業
の競争が激化する中で、
労働
の負荷が増加しており、さまざまな問題が生じておりますが、現在の
職場
の
状況
と
憲法
の
趣旨
との
かかわり
を改めて見詰める必要があるのではないかと思っておるところでございまして、ここにつきましても十分な
検討
をお願い申し上げたいと思っております。 さて、
憲法
の
規定
いたします
労働基本権
、
労働権
、
社会権等
は、言うまでもなく、
基本的人権
の重要な柱として高い
意義
を持つものであります。
連合
は、既に述べましたとおり、
基本的人権尊重
を初めとする
憲法
の
原則
を貫徹することを求めておりますが、
労働基本権
や
雇用対策
などにつきまして、
憲法
の
趣旨
に沿った立法や
施策
が強力に推進されることを求めるものでございます。 その上で、
憲法制定
以降の
社会経済情勢
の変化を踏まえて、現在の
労働権
、
社会権
などの
規定
で十分であるのか、新しい
労働権等
の
必要性
についてどのように考えるのかという問題がございます。 この問題については、私
ども
は、
さき
に述べましたとおり、現在
検討
を進めている
段階
でございます。
専門家
の
方々
からは、
連合
は
憲法
と
労働
の問題についての十分な見識を持つべきである、新しい
労働権
について積極的に
検討
してほしいなどの声が寄せられておりますが、
連合
といたしましては、繰り返し申し上げますが、これから具体的な
検討
を進めてまいりたい、このように考えている
状況
でございます。 ただし、
雇用労働者
が五千万人を超える
我が国社会
の現状などを踏まえて、
衆議院憲法調査会
として、
国民生活
に深くかかわる
労働権
、
社会権
について大いに
議論
していただくよう御要請を申し上げたいと存じております。 このことにつきまして、
幾つ
かの
検討課題
について触れさせていただければと思います。 まず、
雇用対策
についてであります。
さき
に述べましたとおり、
憲法
第二十七条一項は
勤労
の
権利
を
規定
しており、これは国の
政策義務
を
規定
したものと解釈されております。これについて、解釈にゆだねることなく、国が
雇用対策
を適切に推進することもあわせて明らかにしてはという
意見
があると聞いております。
国民生活
の
根本
である
雇用対策
について、どのような
根拠規定
が本来は望ましいのかという問題であると考えます。 これに関連する最近の
課題
としては、
労働者
の
能力開発
の問題がございます。
労働者
が
労働条件
と
生活
の向上を図るためにも、みずからの
職業能力
を高める
機会
を得ることを
権利
としてとらえるべき時期ではないか。国や
使用者
が
労働者
の
職業能力
を
尊重
し、その
開発
に協力する
義務
などとする
考え方
であります。これは、
勤労
の
権利
の
内容
をもう少し内実あるものにするという
議論
だと考えております。 次に、
労働条件
についてでございます。
憲法
第二十七条二項は
勤労条件
の
基準
を
法律
で定めることを
規定
しており、
労働基準法
などを通じて国が
労働条件
の
最低基準
を定める
根拠規定
となっており、
意義
の高いものと考えております。ただ、この
規定
には、現在の最
重要課題
の
一つ
である
男女
平等や
機会均等
などが明示されておりません。このことをどう考えるのかという問題があると考えております。 さらに、
労働条件
の
規定
を含め、
憲法
の
人権保障
の
規定
については、一部を除いて、
職場
の
労使関係
など私
人間
の
関係
には及ばないという基本的な
課題
があることが指摘されております。
人権保障
の
規定
は、
国家
などからの自由を
保障
する
自由権
が主体であるからであると考えております。例えば、
憲法
十四
条は法
のもとに平等であって性別で差別されないと定めておりますが、この
規定
は
使用者
と
労働者
などの私
人間
の
関係
には直接の効力がないとされております。 この問題につきましては、二月十四日に開催されました
基本的人権小委員会
で、
棟居参考人
が私
人間
の
問題全般
について
お話
しになっておられますが、私は
雇用
の場における私
人間
の問題について触れてみたいと思います。
職場
での
労使関係
など、
雇用
の場での私
人間
の
関係
には、
通常
の
市民個人
の間の
関係
とは異なり、特別な重みがございます。
雇用
の場においては、
使用者
に比べて
労働者
の力は極めて弱いことが
通常
であります。また、多くの
労働者
にとって、
職場
は人生の多くの部分を過ごす場であり、決定的な
影響力
を持っております。その中で、
労働条件
をめぐる
トラブル
、あるいは
雇用
の
不平等
、
過労死
、
いじめ
、
セクシュアルハラスメント
の今日的な問題を初めさまざまな
トラブル
が発生いたします。 このように考えますと、私
人間
の
職場
での
関係
のよりどころとなる
規定
が
憲法
にあった方がよいとの
議論
があることは、
理解
ができるところであります。 以上の
課題
については、
現行法
の
改正
で対応することを含め、さまざまな論点があると思いますが、ぜひとも御
検討
いただければと思っております。 なお、
憲法
第二十七条三項の「児童は、これを酷使してはならない。」との
規定
は当然のことと考えます。ただし、この
規定
につきましては、国際的な子
ども
の
権利
条約
などが進展している今日、
我が国
の将来を担う子供
たち
のための
憲法
の
規定
は、本来はさらに充実させるべきであると識者の指摘が以前からございますことは、御存じのとおりでございます。 また、
憲法
第二十五条の
生存権
、
社会権
は、
最低限度
の
生活
保障
と
社会
福祉の増進を
規定
いたしております。この
規定
は、
生存権
を明らかにするとともに、
社会
国家
の
理念
を示す
意義
深いものと考えます。しかし、
我が国
では、近年、経済のグローバル化と国際競争の激化が進む中で、アメリカであらわれているような
社会
的
格差
の拡大が進むのではないか、弱肉強食型
社会
になるのではないかとの懸念が強まっております。 この中で、
憲法
第二十五条において、
社会
国家
、福祉
国家
の
理念
にとどまらず、
社会
的な連帯や弱者への配慮を重視する
社会
を目指すことをより明確にしてはどうかという
考え方
もございます。これにつきましても御
検討
を願えればと考える次第でございます。 私
ども
が二十一
世紀
の望ましい
社会
のあり方と
労働運動
の新しい戦略をまとめました
連合
二十一
世紀
ビジョンの中で、その
基本理念
を、
労働
を中心とする福祉型
社会
の構築、すなわち、働くということに最も重要な価値を置き、すべての人に働く
機会
と公正な
労働条件
を
保障
し、安心して自己実現に挑戦できるセーフティーネットがはめ込まれた
社会
を目指すとしていることも、御
参考
までに申し添えておきたいと思います。 ところで、
憲法
の
労働権
、
社会権
のあり方について、かつて
憲法制定
時に
衆議院
で
検討
された
内容
に改めて目を通させていただきました。
資料
として六番でつけておりますけれ
ども
、これは
昭和
二十一年に
衆議院
の
委員会
で行われた
憲法
草案の
検討
に際しての各党の
意見
であります。ここでは
労働権
、
社会権
に関するもののみをお示ししておりますが、当時、
労働権
、
社会権
については
日本
社会
党と協同民主党の二党から草案への修正
意見
が出されたということであります。
日本
社会
党の
意見
は、
労働権
について、当時の
憲法
草案について、正当なる報酬、
機会均等
と失業防止、休息の
権利
、最長八時間
労働
制などを追加すべきというものでありました。このうち、休息の
権利
につきましては、草案が修正され、現在の
憲法
第二十七条に記されることとなったということであります。
社会権
につきましては、
日本
社会
党が、草案に加えて、健康で文化的な
最低限度
の
生活
の
保障
を
規定
するよう求め、これが受け入れられて現在の
規定
になっているということでございます。 協同民主党の修正
意見
は、草案にある
勤労
の
権利
に
義務
を加えるべきというもので、これについては
日本
社会
党も同様な
意見
であり、原案が修正されております。
憲法制定
時の
論議
につきましては、今日的にも示唆に富むものがあると思います。これらを含めて御
検討
いただければと思っておるところであります。 本日は、
陳述
の
機会
をいただき、
労働基本権
と
雇用対策
を中心に述べさせていただきました。
陳述
の結びに申し上げたいことは、
我が国
がますます
雇用労働者
を中心とする
社会
になってきているということであります。
失業者
を含む
雇用労働者
の数は、
憲法制定
のころには千三百万人弱、
労働
人口の三七%、十五歳以上の
労働
人口の二四%でございましたが、今日では五千六百万人強、
労働
力人口の八三%、十五歳以上人口の五二%に達しております。
労働
に関する
権利
の問題は、多くの
国民
にとって日常的かつ切実な問題となっております。 また、
委員
の
皆様方
に申し上げるまでもなく、
労働権
と
社会権
の
規定
は、ドイツのワイマール
憲法
などに始まるもので、国際的にも先進的な
憲法
の特徴とされているものであり、その
規定
のあり方は国の形として見られるものであると
理解
をいたしております。
衆議院憲法調査会
は、五年間の
検討
期間の半ばに差しかかっていると伺っております。
調査
会が多くの
国民
、
勤労
者の負託にこたえ、
労働
に関する諸問題について十分な御
検討
をいただくように重ねてお願いを申し上げまして、私の
陳述
とさせていただきます。 ありがとうございました。
島聡
3
○島小
委員長
以上で
参考人
の御
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
島聡
4
○島小
委員長
これより
参考人
に対する質疑を行います。 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。石破茂君。
石破茂
5
○石破小
委員
事
務局長
、きょうはお忙しいところありがとうございました。大変感銘深く
お話
を聞かせていただきました。きょうの
お話
と直接
関係
しない部分もありますが、お許しをいただきまして、御
意見
を賜りたいと存じます。 私、最近、自分が
関係
しております仕事と
憲法
、そして
労働組合
というのか
勤労
者というのか、その三つの
かかわり
合いで思うことが
幾つ
かございます。
一つ
は、外国人
労働者
の問題であります。すなわち、先般の瀋陽の総領事館の事件を
一つ
のきっかけといたしまして、難民問題をどのように取り扱うのかというような
議論
が起こっております。現在、外国人
労働者
は単純
労働
は認めないということに相なっておるわけでございますが、これから先、どの国とは申しませんが、四囲の
情勢
が不安定になりまして、難民が
日本
の国にやってくるということは容易に予想されることである。 インドシナ難民につきましては、これは
条約
難民とは別の取り扱いをいたしておりまして、今一万人ぐらい受け入れております。インドシナ難民に対しては、つまりベトナム、カンボジア、ラオス、その方面から来られた
方々
に対しましては、
日本
語の教育でありますとか就労のあっせんでありますとか、そういうような支援を
我が国
として行っておる。 ただ、
憲法
の
規定
の中には、「何人も」という
規定
と「すべて
国民
は」という二通りの書き方をしておるわけですね。
勤労
の場合には「すべて
国民
は」、こういう書き方をしておって、「何人も」という書き方をしていないわけであります。 私
ども
は、確かに、その国の
状況
が不安定になって、国へ帰れば迫害を受けるおそれがある人
たち
に対して、人道的にという言葉を仮に使うとすれば、支援をしていかねばならないということはヒューマニスティックには思うわけでありますが、
我が国
においては、移民の受け入れという歴史もないわけですね。文化も全く異なるわけです。 では、この際、難民をどうするかという
議論
はさておいて、外国人の
労働
というものと
日本
の
勤労
者の利益というのは、正直申し上げれば相反する場面が全くないとは私は思っていない。それと人道とがぶつかり合うような話は、できれば避けたいんだけれ
ども
、その
議論
をしなければ実は本質的な解決には何もならない。 外国人の就労というものにつきまして、
連合
の
考え方
でも事
務局長
個人
の
考え方
でも結構ですが、御教示いただけませんでしょうか。
草野忠義
6
○
草野参考人
大変難しい御質問をちょうだいいたしましたが、過去におきまして、
日本
が、バブルの頂点の時期を含めまして、ほとんどの
産業
で
労働
力が極めて逼迫するという時代がございまして、そのときに
労働
界の中で、外国人
労働者
問題についてどうするかという
議論
を大分したことが実はございます。 その中で、
労働
力需給が逼迫している中ではありますけれ
ども
、中長期的に考える場合、今石破先生御指摘のように、国内
労働者
と利害が相反する部分が出てくるであろうということで、私、その当時の、十年ちょっと前になりますでしょうか、したがいまして全部を把握したわけではございませんけれ
ども
、かなりの組合においては、外国人
労働者
問題は極めて慎重に考えるべきという
意見
が大半であった、こういうふうに
理解
をいたしております。 では、現在これをどう考えるかということでございますが、基本的には、先ほど申し上げましたように、
雇用
状況
が逆の意味で極めて厳しくなってきているという
状況
を考えますと、我々として、失業ということを視点に考えるならば、やはり外国人
労働者
問題については極めて慎重に考えざるを得ないのではないだろうか、こういうふうに思っているところがまず一点です。 それから、人道的な面との
関係
でいいますと、これは我々としても、
労働組合
でございますのでそこは考えなきゃいけないので、正直申し上げて、非常に呻吟しているというのが率直なところではないかというふうに思っています。 それと、最後になりますが、もう
一つ
は、今後の
日本
の経済、
産業
あるいは
雇用
の
状況
がどうなるか、この
認識
が一番大事な点ではないかというふうに思っております。もし今後今のような
状況
が常態化していくんだという
認識
に立てば、大変申しわけないんですが、外国人
労働者
問題についてはかなり慎重に考えないと、
日本
の
雇用
状況
はますますひどいものになっていく危険性をはらんでいる、私はこういうふうに思っております。 一方で、
日本
経済は今後
産業
構造の転換等が進んでさらに発展していくという
理解
に立てば、少子高齢化という今の
労働
力人口の
状況
を考えますと、これは逆に人手不足という
状況
も起こり得るわけでありますから、そういう意味では外国人
労働者
あるいは移民という問題を本当に真剣に考えていかなければならない
状況
になってくる。 したがって、今後の
我が国
の経済、
産業
がどうなっていくかという判断によって、この問題についての対応はかなり変わってくるのではないか、私はこういうふうに思っております。
石破茂
7
○石破小
委員
ありがとうございました。 もう一点お教えをいただきたいと思います。有事法制に関連してでございます。 つまり、
憲法
の第十八条には、御
案内
のとおり、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」こういうふうに
規定
がございます。 今回、自衛隊法の第百三条にもともとあります業務従事命令、このことをめぐりまして、
労働組合
からいろいろな
意見
が出されております。つまり、有事法制によって業務従事命令をかけられることは、極端に言えば
憲法
十八条違反だとまで言い切る人もおられます。それは、私、ある意味ためにする
議論
ではないかという気もいたしますが。 他方、
我が国
は、国際人権規約というものを承認いたしておるわけですね。その中で市民的及び政治的
権利
に関する国際規約というものがございます。その中で、
強制労働
には含まれないというものの中に、「
社会
の存立又は福祉を脅かす緊急
事態
又は災害の場合に
要求
される役務」、これは
強制労働
とは言いませんというふうに国際人権規約でうたってある。そのことの関連をどうするかということでございます。 私は、災害対策基本法においては業務従事命令というのは認められておって、それでは今回の有事法制、自衛隊法百三条、これにおいてはこれは認められないということは、この人権規約の
趣旨
からすれば相矛盾するものであって、災害であれあるいは有事であれ、これは
強制労働
には当たらないと考えるのが理の当然ではないかというふうに考えておりますが、
労働組合
の
幾つ
か、港湾、航空、あとは陸、海でもそうです、そういう
方々
の
労働組合
、
連合
全部とは言いません、一部から、これは
憲法
に抵触するので反対であるという
意見
が出ております。 そのことにつきまして、
連合
として、あるいは事
務局長
個人
の御
見解
でも結構ですが、お教えをいただければ幸いです。
草野忠義
8
○
草野参考人
有事法制の問題につきましては、二つ申し上げたいと思います。
一つ
は、
連合
といたしまして、先般、先ほど
意見陳述
の中でも申し上げました、国の
基本政策検討作業委員会
で一定の整理をいたしまして、これは文書として公表いたしております。基本的には、大きな自然災害等を含めて考えますと、こういう緊急避難時に対応する備えをすることは必要である、まずこの一点は
確認
いたしております。 しかしながら、今回の有事法制の提案の中身はいろいろ問題があるのではないかということで、今回の提案については反対だ、こういう態度でいるということ。これは、もし必要であれば、文書をまた届けさせていただきたいというふうに思います。 今、石破先生御指摘の後段の問題は非常に悩ましい問題で、
連合
の中では詰めた
議論
を正直言ってしておりません。ただ、今御指摘のように、例えば私
ども
の傘下ですと、海員組合さんから非常に強い要望書を私
ども
はいただいております。 これは、正確に今記憶しておりませんが、湾岸戦争のときに、海員組合の
組合員
が、非戦闘員であったにもかかわらず砲撃を受けて、数名の方が命を落とした、こういうことは、
組合員
を守るという
立場
から見ればとても耐えられないことだ、したがって、そういう我々の
趣旨
を
理解
してほしいという我々の傘下組合の海員組合の主張については、私は十分
理解
ができるというふうに思っておりますが、申しわけございませんが、今の業務従事命令の問題については、
連合
加盟組合の中でも
意見
が実は分かれております。 今御指摘のように、これについては
憲法
違反であるという大変強い主張をしているところと、これはある意味では当然のことではないかという
理解
をしている組合もございまして、私の
立場
から、今どちらがいいということを申し上げることはちょっと控えさせていただきたいというふうに思っております。
石破茂
9
○石破小
委員
終わります。
島聡
10
○島小
委員長
次に、小林憲司君。
小林憲司
11
○小林(憲)小
委員
本日は、大変お忙しい中、貴重な御
意見
をたくさん、ありがとうございました。 私、民主党の小林憲司でございます。本日は、
労働基本権
について御質問させていただきます。
労働基本権
とされる
憲法
二十八条による
労働三権
、
団結権
、団体交渉権、そして団体行動、いわゆるスト権が
公務員
の場合何らかの形で制限されており、その回復が悲願であるという点は、これまでの
経緯
にも照らしまして十分
理解
できるところであります。しかし、今どき、民間にしても、紛争を解決するに当たりまして、ストという手法をほとんど用いられておりません。そして、各単組、いわゆる
産業
別単一組合では、スト資金の積み立てを中止しようという声さえ出ているのが現状であると思うんです。今さらスト権によって自分
たち
の経済的地位を確立しようという意識は、民間の間にはほとんど
日本
の国では見受けられないのではないでしょうか。
公務員
の
世界
にしても、日教組にしろ自治労にしろ、組織率が二〇%と言われておるわけです。多くの
公務員
は、非
組合員
ということで
組合員
にはなっていないわけですから、スト権を解放したところで、旗を振りかざす人は少ないというふうに私は思うのであります。そういう時代の中にあって、
公務員
が
労働基本権
の回復を叫んでも、世間一般の共感を呼ぶとは私は思わないのですが、
草野
事
務局長
はいかがお思いでしょうか。お願いします。
草野忠義
12
○
草野参考人
民間でもストライキはほとんどないじゃないかという今の先生の御指摘、統計上からもそれは明確にあらわれているわけでありまして、私自身が自動車の出身でございますが、自動車もここのところ、十八年ぐらいでしょうか、ストライキは基本的には行っておりません。ただ、おととし、一部販売会社でストライキをやりましたけれ
ども
、私自身も実際にみずからがストライキをやったという経験はございません。 しかしながら、先ほ
ども
ちょっと申し上げましたけれ
ども
、
労働者
といわゆる
使用者
側という
立場
でいいますと、圧倒的な力の差があることは事実でありますから、そういう意味で、我々としては、最後の手段というふうに平たく言えば言えると思いますが、
争議行為
というものをきちっと持って交渉に当たるというのは国際的にも認められた
権利
でありますので、ここは何としても確保したいというのが正直なところでございます。 それから二つ目には、したがいまして、世間の
理解
を得られなければ、ストライキが成功しないんではないかというふうに私自身も思っております。私自身は、先ほど申し上げましたように、実際にストライキを打った経験はございませんが、ストライキを打とうとして準備をしたことは何回かございます。先輩の話を聞いたり、過去の事例を書き物で読んだりした場合、ストライキというのは、そこの
組合員
の
理解
だけでなく、世間あるいは周囲の
皆様方
が、ああ、それはしようがないんだな、そこまで追い込まれているんだなという
理解
がないと成功しないだろう、こういうふうにまず私は思っております。 それから最後になりますが、したがいまして、私
ども
も、
労働三権
を返せということだけではなしに、どうやったら
国民
から信頼される
公務員
の制度ができるかという視点に立って今
運動
を進めておりますし、
考え方
も提示させていただいておりますので、そこも御
理解
をいただくようにぜひお願いしたいというふうに思っております。
小林憲司
13
○小林(憲)小
委員
今私は、
草野
事
務局長
の
お話
をお伺いしまして、最近、
連合
の鷲尾
会長
から笹森
会長
にかわられまして、そしてまた
草野
事
務局長
にかわられまして、笹森
会長
の大変柔軟な姿勢と、そしてまた
草野
事
務局長
の、今までの
労働
界では考えられないような非常に前向きな明るい話が出る。ストをまだ御自身で経験していない世代の方が今トップに来ているという現状の中で、非常に
労働
界も変わっていくんだろうなというふうに
認識
いたしました。 そして今、私も
連合
の組織の人員の推移をずっと追ってみました。組織数の減少は、必ずしも倒産ということではないわけで、統合再編もあるのでございますが、とにかくピークの一九九七年以降余り数字が変わっていない状態で進んでいる。そしてまた、明らかにリストラの影響とか定年退職者の無補充もあるわけでございますけれ
ども
、数字的には大体伸びがない。決してシュリンクしているわけではないんですが、伸びがないというような感じだと思います。 そしてまた、
連合
に加盟していないといいますか、そういうところでもっともっと倒産の件数が多くて、ここで
一つ
一つ
挙げませんが、悲惨な
状況
が出ているということも
認識
しておりまして、
連合
の皆さんの御努力が
雇用
というものに対しての役割を今果たしていると思うのであります。 次に、
雇用対策
について、それに関連いたしまして質問させていただきたいんですが、最近の経済
情勢
の中で、
企業
の組織再編にかかわる法整備が急速に進められてきているわけでございます。九九年に
制定
された民事再生法、そしてまた
産業
活力再生法、そして二〇〇〇年の会社分割制度などがそういう大きなものであると言えるんですが、それは裏を返せば、リストラ型解雇促進法とも言えるものでありまして、これに対し、大量解雇に対する立法措置が大きく立ちおくれているのではないでしょうか。
企業
の組織再編の法整備とその際の
労働者
保護の法整備は、いわゆる車の両輪というふうに考えられると私は思うんです。現状は、一方の車輪が今大変小さい状態じゃないでしょうか。どう見ても
労働
法の分野が極めて弱い状態で、
雇用
されている
方々
の
権利
が守られていない。これでは、極めて弱い片肺飛行状態で、この面での法整備も
連合
として強力に取り組んでアナライズしていく
必要性
があると思うんですが、いかがお考えでしょうか。
草野忠義
14
○
草野参考人
さっきの先生の御指摘は、褒められたのかどうかよくわからないんですが、変わっていこうという強い思いだけは持っているということだけ表明をさせていただきたいというふうに思っております。 今御指摘のように、民事再生法というのは、確かに倒産法等から見れば、会社を生き返らせるのに非常に有効であるということは私
ども
理解
をいたしておりますけれ
ども
、実際に民事再生法が使われたケースを見てまいりますと、ちょっと極端な言い方になるかもしれませんが、会社は生き残ったけれ
ども
従業員はいなくなってしまったというケースが非常に多く見受けられるわけでありまして、今私
ども
も、民事再生法の
改正
問題についても取り組ませていただいております。 それと、会社分割法あるいはこれから
議論
になります営業譲渡の問題等を含めまして、EUでは、EU指令という極めて厳しい指令が出されておりまして、いわゆる
労働
契約の継続、継承というものが明確に示されているわけであります。分割法のところは、一部それを法制化していただきましたことは感謝申し上げたいと思いますが、全体として言えば、今の中で、
雇用
を維持するという点が非常に難しくなってきているということは御指摘のとおりでございまして、私
ども
、
労働者
保護法を
制定
するように今お願いをしているところでございますので、ぜひ御
理解
をいただきたいというふうに思っております。 それから、最後にもう一点でございますが、私の出身
企業
も大分リストラが行われましたけれ
ども
、一言で言うと、合成の誤謬というんでしょうか、
企業
として生き延びなければならないためにリストラをやる、これが、ミクロのところでは一見正しいようですが、マクロになりますと、国としての大きな損失につながっている。 今データを持ってきておりませんが、三百万から四百万の方が失業いたしますと、トータルでたしか百七、八十万、国としてのコストがかかるという計算がございますし、六百万、七百万ぐらいの方ですと、たしか二百五十万ぐらいのコストがかかる。こういうこと全体を合わせますと、国としては、トータルとしては物すごい
負担増
になっているのではないか。そういう意味では、やはり
雇用
を維持しながらやっていく。 そのために、私
ども
が今提起しておりますのは、ワークシェアリングという行き方が
日本
の中でできないのかどうか。政
労使
で
検討
委員会
を設けさせていただきまして、三月末には一定の結論を出しましたけれ
ども
、これはあくまでも緊急避難型の問題でございます。来週からまた
議論
を始めていきたいと思っておりますが、中長期的なワークシェアリングを定着させていくということが
雇用
を維持することになりますし、全体としての国のコスト負担の削減にもつながる、こういうふうに思っているところでございますので、ぜひともよろしくお願いをしたいというふうに思います。
小林憲司
15
○小林(憲)小
委員
ありがとうございました。終わります。
島聡
16
○島小
委員長
次に、太田昭宏君。
太田昭宏
17
○太田(昭)小
委員
草野
事
務局長
には、日ごろから大変お世話をいただきましてありがとうございます。 きょうは、新しい
権利
ということについて、
男女
の平等等々について
お話
がありましたが、端的に言いますと、二十七条、二十八条を変えた方がいいとお考えなのか、現状でいいけれ
ども
、そういうことについての
内容
をいろいろ
論議
していただいて深めて、
法律
的なことでそれをつくっていくという方向でいいとお考えなのか。私は、二十七条、二十八条はこれでいいという
立場
なんですが、いかがでしょうか。
草野忠義
18
○
草野参考人
先ほど申し上げましたように、条文を逐一変えた方がいいかどうかという
議論
はこれからでございますので、直接的には今太田先生の御質問にお答えできる
立場
にはございませんが、
憲法
であらゆることを網羅しようとするのは難しいというふうに
理解
をいたしております。要するに、基本的な
理念
を
憲法
に記し、それに基づいて法制化、立法化するというのが基本的な
考え方
ではないかというふうに思っておりますので、この二十七条、二十八条の
内容
については、基本的に私は評価をさせていただきたいというふうに思っておりますが、文章的に何かをつけ加えた方がいいか、表現を変えた方がいいかという点については、もう少し勉強させていただきたいというふうに思っております。
太田昭宏
19
○太田(昭)小
委員
ILO
への提訴ということの中で二つほどお聞きしたいと思いますが、議長の集約の訳文がなかなか難しい訳文になっておりましてあれなんですが、要するに、
ILO
の
議長集約
は、
論議
をされたことは、国の
制約
は
日本
の場合は広過ぎるよ、国の
行政
に従事していない
公務員
という、その辺をきめ細かく見て、必要最小限にすべきだよという意味合いのような気が私はするんですね。 これは、
連合
としてというか
草野
事
務局長
というのか、どちらでもいいんですが、国のこの部分についてもう少し緩めなさいというお考えなのか、私は、
ILO
はそういうことを言っているんじゃないかというふうに思うんですが、この辺はいかがなんでしょうか。
草野忠義
20
○
草野参考人
二つぐらいあると思うんですが、
一つ
は、この
議長集約
が、原文が実はドイツ語でありまして、たまたまこのときの議長がドイツ人だったんです。私は、その当時はもう
日本
に帰ってきて、いなかったんですが、後から
状況
を聞きましたら、事務局の方が英語でメモしたのを議長がみずからそれをドイツ語でやって、
日本
の場合は英語から
日本
語の通訳だったものですから、ドイツ語から英語への通訳が若干意味不明なところがありました。したがって、
日本
代表
団が、英語そのもの、ドイツ語から英語がよくわからないものですから、結果として何を言っているかよくわからなかったというのが実はございまして、これは
政府
代表
も行っておりますから、最終的に議長
発言
をもう一回整理をして出されたのがこの仮訳でございまして、実は
政府
が訳した
内容
と我々が訳した
内容
はま
たち
ょっと意味が違うところがあります。 それはちょっとおきまして、私
ども
としては、二つあると申し上げましたのは、
一つ
は、
ILO
結社
の
自由委員会
に提訴をいたしておりますので、
結社
の
自由委員会
の結論が出るのはことしの十一月でございます。したがって、そこでどういうレポートが出るかということを私
ども
は極めて重視をしているというふうにお酌み取りいただきたい、こういうふうに思っております。 それから、このときに、
条約勧告適用委員会
で七カ国が
連合
の主張に対して応援演説をしていただいた。その場の雰囲気等から見ますと、基本的には
連合
の主張がかなりの部分議長には受け入れられたんではないか、私
ども
はこういうふうに
理解
をしております。 ただ、今、太田先生御指摘のように、この文章だけを読むと一体どうなのかというところはあるんですが、そこで言えることは、
一つ
は、
公務員
の
労働者
が給与決定に参加する
機会
が大きく
制約
されているという、いわゆる
労働
協約締結権、ここの部分はやはり
制約
されているということは明確に指摘をしているんではないかと思っております。それから、
争議行為
につきましては、各国、特に先進諸国でもすべての
公務員
に認められているわけではないというふうに
理解
をしておりますので、私
ども
も、
公務員
全体に適用しなければならないというふうには考えておりません。 具体例を挙げるとちょっとそごがあるかもしれませんので申し上げませんけれ
ども
、例えばイギリスの場合には、警察及び軍隊は除く、こういうふうになっておりますし、フランスでも、軍人及び警察官を除くところは
争議権
はある、こういうふうになっています。ドイツは、何か全部
争議権
はあるようでございます。 そういうふうなことですから、我々も、すべての
公務員
の方に
労働三権
全部をというふうには考えていないということは申し上げてよろしいかと思います。
太田昭宏
21
○太田(昭)小
委員
昭和
四十八年の全農林最高裁判決の最後のところで、
労働基本権制約
の代償措置としての人事院
勧告
制度というのが出ているわけですが、今回の
公務員制度改革
の中で、人事院のあり方について、これがある意味では縮小されるといいますか、そういう方向性の中での
論議
が、そういう表現は当然されておりませんけれ
ども
、そうしたニュアンスというものがあろうというふうに思います。 今回の
公務員制度
の人事院
勧告
制度あるいは人事院のあり方ということと、このスト権という問題についてどうお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
草野忠義
22
○
草野参考人
今回の
公務員
改革大綱の中身の我々の
理解
は、かなり人事院の権限が縮小されるというふうに
理解
をいたしておりまして、その中で、一方での
制約
は全く変化がない。これは一方に偏った方向性が示されているんではないか、実はこういう
理解
をいたしております。 ただ、この問題と
争議行為
の問題とは直接絡んでいるというふうには私は
理解
をしておりません。もともと
労働組合
としては、冒頭申し上げましたように、基本的には、
労働三権
は当然
公務員
であっても持つべきであるという主張の一貫性の流れの中にあるということは御
理解
いただきたいと思います。そういう中で、今回出されてきたものは、人事院の権限をかなり縮小して、当局のいわゆる人事権を
強化
している、一方で
制約
は全く変わらない、こういうふうな
公務員制度改革
の方向を目指しているのではないか、こういうふうに
理解
をいたしております。
太田昭宏
23
○太田(昭)小
委員
最後に、職につかない若者、職につけない
中高年
、働きがいを一体どう考えるのかということの中で、僕は、特に若年
雇用
について、将来の
日本
のことを考えると非常に心配をしているわけです。このあたり、東大の玄田さんなどは、根性をたたき直すだけでは若者はだめだよ、働き場所ということ、またその中身で、つまらない仕事ばかりさせておいたらますます仕事から離れていくよということで、
機会
の平等よりも過程の平等という表現を、説明責任という、なぜそういう仕事をさせるかというようなことも含めて、意味のある仕事をできるだけ若者に会社としてもさせることが非常に大事だというような指摘もされているんです。 若年
雇用
について、時間がありませんので短い時間で結構です。
草野忠義
24
○
草野参考人
私
ども
も、とかく
中高年
のリストラされた
失業者
に対しまして目が向きがちでございますが、今太田先生御指摘のように、一方で、就職できない、フリーターがいいか悪いかという問題はまた別の
議論
があろうかと思いますが、そういう若い人
たち
がふえているというのは、
社会
問題として非常に大きな問題だろうというふうに思っております。 即解決策がないと思いますが、私は、基本的にはやはり教育のあり方に問題があるんではないか、こういうふうに思っておりまして、学校教育の中でも、
勤労
観とか職業意識といったものの教育をもっと取り入れていただく必要があるんではないかと思います。一方で、兵庫県などはかなり先進的にやられておりますが、インターンシップ等をどんどん取り入れていくことによって、いわゆる働くことの重要性とか働くことの楽しさというものを、もっと若い年代から教育していくということが今一番求められているんではないかな、こういうふうに思っております。
太田昭宏
25
○太田(昭)小
委員
ありがとうございました。
島聡
26
○島小
委員長
次に、
武山百合子
君。
武山百合子
27
○武山小
委員
草野
さん、きょうは忌憚のない御
意見
を開陳していただきまして、ありがとうございます。 早速ですけれ
ども
、きのう、
ILO
議連総会が東京の方でありまして、これは国
会議
員の中の議連の方なんですね。そこで、質問が集中した点について
一つ
見解
等をお聞きしたいと思いますけれ
ども
、
日本
はなぜ百十一
号条約
をいまだに
批准
していないのかということで、大変
意見
が集中いたしました。 それで、この
雇用
及び職業の
条約
ですけれ
ども
、
機会
及び待遇の均等を促進する国内政策が必要じゃないかということが言われておりますけれ
ども
、
草野
さんのところでは、この辺の
見解
は、どう思っておりますでしょうか。
草野忠義
28
○
草野参考人
連合
といたしましては、
ILO
の未
批准
の
条約
の中でも、八
条約
を最優先で
批准
すべきという
取り組み
をずっと続けてきておりまして、ことし、たしか百四十四号が
批准
されたというふうにお伺いしております。今、武山先生御指摘の百十一
号条約
につきましても、私
ども
としては優先して
批准
すべきだという主張をさせていただいておりますが、お伺いしますと、何か一年に一
条約
というようなことがあるようでございまして、残念ながらなかなか進展していないというのが率直な気持ちでございます。
武山百合子
29
○武山小
委員
まず、採用、募集における採用の自由という
憲法
上の問題があるという
議論
もされたわけです。それから、その百十一
号条約
自体が大変古い
条約
だということで、抽象的な言葉で書かれて、どう解釈すればよいのかという問題もあるということですね。 それで、お聞きしたいのは、
公務員
の政治活動の制限は差別に当たらないかということですけれ
ども
、この件に関しては
連合
の方はどうお考えでしょうか。
草野忠義
30
○
草野参考人
労働組合
として、
組合員
として政治活動をやるということについては、私
ども
はやはり自由は
保障
されているというふうに
理解
をいたしております。
武山百合子
31
○武山小
委員
ありがとうございます。 それから、人権擁護法が成立すればということなんですけれ
ども
、この人権擁護法に対しては、御
見解
はいかがでしょうか。
草野忠義
32
○
草野参考人
済みません、ちょっと人権擁護法は……。
武山百合子
33
○武山小
委員
これは私も通告していなかったものですから、また個別に
お話
ししたいと思います。 それでは、もう少し一般的な
お話
で、パートタイムのことについて、
女性
の視点からいろいろ
お話
を聞きたいと思います。 今、パートタイム
労働
が、
機会
も、すなわちチャンスも本当にたくさんあり、
女性
があらゆる
職場
で働いておるわけですけれ
ども
、税との
かかわり
の中で、いわゆるパート減税がありまして、扶養に入っているということで、一定以上は働けないという
女性
がまだまだおるんです。私は、
女性
の一人として、国の方の政策のその減税という枠ももちろん国が取り払って、そして、
女性
が自立して、一定の金額以上働いたら納税の
義務
を果たすということが非常に大切であろうと思っておるんですけれ
ども
、その辺の
議論
は
連合
ではどうされておりますでしょうか。
草野忠義
34
○
草野参考人
全く今武山先生御指摘のとおりの
考え方
で私
ども
もいるというふうに申し上げてよろしいかと思っております。
理念
的になりますが、お父さんが働いて家族四人分の
生活
費を稼ぐという時代から、夫婦が働いて、例えば従来の一・五の収入を得ることによってさらに家庭のゆとりが出てくる、こういうような時代に変わっていかざるを得ない、こういう
認識
に立っております。 そうしますと、パートタイムというものが、従来の、何かコストが安い、補助的な仕事だということではなしに、まさにその人のメーンの仕事としてパートタイムの仕事を位置づけていくべきではないか、こういうふうに考えておりまして、百三万の問題あるいは六十五万の問題等々については、今パートタイムプロジェクトを立ち上げて、できるだけ早く今御指摘のような具体的な
内容
についても整理をしていきたいというふうに思っておりますが、方向として、今御指摘のような方向で我々は
議論
を進めているということは申し上げられるんではないかと思います。
武山百合子
35
○武山小
委員
ありがとうございます。 それから、
パートタイマー
の人がどんどん今ふえていっている状態ですね。ところが、
雇用
の方が追いつかないという状態です。そうしますと、自然とワークシェアリングというものを現実的に考えていかざるを得ないと思うんです。オランダに
一つ
例があって、そういうものをマスコミ等で見聞きしておりますけれ
ども
、
日本
のワークシェアリングということを考えて、独自のものをつくっていった方がいいと思いますけれ
ども
、その辺の青写真を示していただけたらと思います。
草野忠義
36
○
草野参考人
青写真というところまではまいりませんけれ
ども
、先ほど申し上げましたように、
労使
、今度日経連は組織が変わりまして、
日本
経団連というふうにマスコミでは言われておりますが、そこと
連合
の間でワークシェアの
会議
を設けております。さらに、先ほど申し上げましたように、政
労使
のワークシェアリング
検討
会も改めて再スタートをすることに今要請をしているところでありますが、その中で、やはり中長期的な
日本
型ワークシェアリングというものを探していかなければいけないだろうと。 オランダ・モデルは、御
案内
のとおり極めて成功したと言われておりますが、一方で、人口も違う、
産業
構造も違う中で、オランダ型モデルをそのまま
日本
に導入できるかというと、これは相当難しい、むしろ不可能に近いと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういう思いを持っております。 言葉で言うのは簡単なんですが、
日本
型ワークシェアリングというものが、どこまで具体図が今回の政
労使
あるいは
労使
のワークシェアリング
検討
会の中で描けるか。そうしませんと、どうも今の
状況
ですと、ワークシェアリングなんかどっちみち導入できないだろうとか、ワークシェアリングをやって効率が落ちるんではないか、生産性が落ちるんではないかという、どちらかというと否定的な面が強調され過ぎているように私
ども
は思っておりますので、何とか皆さんが、それならいけるかというものを、ぜひ政
労使
あるいは
労使
で出していきたいなというふうに思っております。
武山百合子
37
○武山小
委員
今経済状態が悪いと言いつつも、現実には過去の養ってきたものがあって、その中で
男女
を問わず、年齢を問わず、ある時間だけ働きたいという人がふえていることは事実なんですね。そこに職がないということで、自分にマッチする仕事が、例えば二十四時間
体制
を三交代とか、四交代とか、ある時間を区切ってやった場合、この時間だけ働きたいという方はこれから大いにふえていくであろうと思うのですね。それで、ぜひ私自身は、こういうものは進めていっていいかなという考えの一人でございます。もう時間が来てしまいましたので、ありがとうございます。
島聡
38
○島小
委員長
次に、春名直章君。
春名直章
39
○春名小
委員
参考人
には、本当にきょうは貴重な
お話
をありがとうございました。
日本
共産党の春名直章でございます。 最初に、働く者の
権利
が
憲法
上の
権利
として明記されたことの
意義
について伺いたいと思います。 今
お話
がありましたように、第二十七条で
勤労
の
権利
と
義務
、
労働基準
の法定、それから児童酷使の
禁止
、二十八条で
労働三権
、これが
規定
されたわけですけれ
ども
、これは戦前の女工哀史に見られるような、人たるに足りないような過酷な
労働条件
のもとで命まで落とすような、そういう深刻な実態の
日本
の歴史の中から生み出された、私は大事な
権利
だというように
認識
をしています。 同時に、この
労働三権
を見てみたら、アメリカやイギリスでは
法律
レベルの
保障
にとどまっていて基盤が非常に弱いと思うんですね。それから、フランス、ドイツ、イタリアだったら、
憲法
では三権すべてを
保障
しているわけではない。そういう意味でも、非常に私は先駆的だと考えております。
草野
さんは、この
労働者
の
権利
が
憲法
上の
権利
として明記されたことの意味合いを、改めてどうお考えになっているか、お聞かせください。
草野忠義
40
○
草野参考人
先ほ
ども
一番最後のところで申し上げたように、
憲法制定
当時の
日本
社会
党さんと協同民主党さんの修正
意見
が、全部ではありませんけれ
ども
、一部取り入れられて、
勤労
の
権利
と
義務
あるいは
労働三権
の問題等がきちっと
憲法
に明示されたということについては、私は、大変これは立派な
憲法
の条文だというふうには思っております。
春名直章
41
○春名小
委員
ありがとうございました。 ところが、
憲法制定
直後から、これへの、率直に言って攻撃といいますか、ということが歴史だったと思うんですね。 一九四七年一月三十一日には、有名な二・一ゼネストへのマッカーサーによる中止命令が出されました。
争議権
の侵害です。一九四八年七月三十一日には、今
お話
が出ました政令二〇一号での全官公
労働者
からの団体交渉権とストライキ権の剥奪が強行されました。その後、レッドパージが吹き荒れました。四九年の七月には、国鉄が定員法に基づいて首切り三万七百人通告をする。これを皮切りに非常に激しい首切りが強行されて、謀略事件も起きて、
公務員
や民間
労働者
を問わないレッドパージが吹き荒れる。
労働組合
も激しい弾圧にさらされるという歴史をたどっていくわけだと思うのです。 私は、この歴史を見たときに、アメリカ自身が、率直に言って、この
憲法
そのものの
内容
を戦後直後からないがしろにしていく、そういう方向の中で、
労働者
のせめぎ合いといいますか、
労働者
の頑張りの中で今日に至っているという面が非常にあるんじゃないかと思うんですね。そういう戦後直後の
労働三権
にかかわる歴史をどうごらんになっているのか、御
見解
があればお聞かせください。
草野忠義
42
○
草野参考人
大変難しい御指摘でございますが、第二次
世界
大戦直後の問題については、歴史の問題としていろいろな御
意見
があろうかと思いますので、今
連合
という
立場
からこれに対しての判断をするのはちょっと差し控えさせていただきたいというふうに思っております。 これもまた司法の問題に絡んでまいりますけれ
ども
、今御指摘のように、特に
公務員
の
労働基本権
に対する最高裁の判例も少し時代を追って変わってきているのではないかというふうに思っておりまして、私
ども
としては、この流れは非常に好ましくない流れではないかな、こういうふうに思っておりますが、これはまた司法の問題でございますので、ここでまたいろいろ言うと問題があろうかと思いますので、そのくらいにさせていただきたいと思っております。
春名直章
43
○春名小
委員
続いて、最近の
労働
法制の変遷について御
見解
をお聞かせいただきたいんですが、例えば職安法では
労働者
派遣業というのは
原則
禁止
なんですね。ところが、今、現時点、はっきり言いまして、特に九九年ですけれ
ども
、
労働者
派遣業は
原則
自由化になっちゃったんですね。それから、裁量
労働
制が拡大する、有期
労働
契約など、率直に言って、規制緩和という流れが
労働
法制の中にもかなり入ってきて、戦後の
労働者
を守る法制そのものが骨抜きにされるといいますか、なし崩しにされる、財界の
要求
に沿って崩されていくという歴史をたどっているように思えてなりません。 そのことが、今
お話
があった失業率五・四%などの非常に重大な
状況
を生み出していたり、一万人に及ぶような
過労死
で亡くなられる方が生まれるとか、そういう問題とやはり直結しているように思えてならないんですね。
参考人
は、こうした最近の
労働
法制の変遷についてどういうふうに見られているのかをお聞かせください。
草野忠義
44
○
草野参考人
二つ申し上げたいと思いますが、
一つ
は、
我が国
の経済
社会
をどうしていくかという基本的な問題が、私、まだクリアできてないだろうというふうに思っております。グローバルスタンダードという言葉がよく使われますけれ
ども
、どこにあるのかよくわからないんですけれ
ども
、我々の
立場
からいえば、あれはアメリカンスタンダードであってグローバルスタンダードではない、こういう
認識
を持っております。 今先生も御指摘になった、規制緩和、自由競争、市場任せが
日本
経済をよくしていくんだという流れが非常に今大きな流れとなっていることに対しては、極めて私
ども
は危機感を持っております。そういう意味では、新しい
日本
の
産業
、経済、
社会
のあり方というものをもう一度きっちりと
国民
の皆さんと
議論
するなり、
国民
の皆さんに政治の場から提示をしていくということが一番大事ではないか、こういうふうに思っております。 そういう流れの中で、あらゆる面で規制緩和が行われておるわけでありますが、私は、規制を全く守る方がいいという
立場
にはございませんけれ
ども
、やはり
程度
問題、少し行き過ぎではないか、こういうふうに思っております。今御指摘の派遣法の問題、それから有期契約の問題等々、我々としては文書を別途まとめておりますので、必要であればお届けさせていただきたいと思いますが、私は、今の流れは余りにも急速に、しかも大幅に行き過ぎだというふうに
認識
をいたしております。
春名直章
45
○春名小
委員
ありがとうございました。 それでなくても
日本
は、ヨーロッパなんかと比べますと、
労働者
を守る法制は非常に弱いわけですね、
憲法
上はそういう明記がされているんですが。ですから私は、これからの
日本
を考えたときに、例えば
労働基準法
の中で残業の上限が
規定
されてないというような問題だとか、あるいはこれだけの解雇、リストラが強行されている
状況
の中で、解雇を規制する
法律
が、判例の四要件はありますけれ
ども
法令上ないとか、それからサービス残業という犯罪が横行しているとか、これをきちっと
法律
上ただすとか、
労働者
を守って、そのことを通じて
雇用
を拡大して景気もよくしていくという、そういう意味での規制
強化
ということは、これからの二十一
世紀
の
日本
を考えると、どうしても
憲法
上の要請でもあると私は思うんですけれ
ども
、そのあたりについてどうお考えでしょうか。
草野忠義
46
○
草野参考人
みずから天につばする感じもなきにしもあらずなんですが、
労働組合
の力量をまずしっかりとしていくということが、私はまず第一に重要であるというふうに思っております。特に、今先生御指摘のサービス残業、実は私
ども
、サービス残業という言葉を使うと怒られまして、サービスはただだと思っているのが
日本
人の悪い癖だというので、今、不払い残業という言葉を使っているわけでありますが、これも本来絶対許すことはできない話でございますので、まずは
労働組合
がそこはしっかりするということが基本的に一番大事だろうというふうに思っております。 今の
法律
でもこれは違反でございますから、今の法の中でもきちっと監督すればできるわけですから、そういうものをまず
一つ
一つ
きちっとやっていくことの方が今大事なんじゃないかな、こういうふうに私は思っております。
春名直章
47
○春名小
委員
ちょうど時間になりましたので、どうもありがとうございました。
島聡
48
○島小
委員長
次に、金子哲夫君。
金子哲夫
49
○金子(哲)小
委員
社会
民主党・市民
連合
の金子でございます。 きょうは、
草野
事
務局長
にはさまざまな
立場
からの
お話
をいただきまして、ありがとうございました。 先ほど
昭和
四十九年の
スト権スト
の
お話
が出まして、また、先ほど来
論議
を聞いておりますと、どうもストライキを体験したのはこの中で私だけかもわからないという思いを、当時私は電電公社におりまして、全電通の
組合員
として
スト権スト
にも参加をしましたし、その前、さまざまなストライキと処分の繰り返し、また、処分の回復闘争をやるというような
状況
の中で、三十年たっておりますけれ
ども
、
公務員
における
争議権
とかそういった問題がある意味では全く前進をしていない。今
公務員制度
の見直しという
論議
も行われておりますけれ
ども
、残念ながら、そうした点については余り触れられていないように思えて残念に思います。 最初に、
連合
として
ILO
の重要
条約
と考えておられる
一つ
に百五十一
号条約
があると思いますけれ
ども
、公務における
団結権
の保護及び
雇用
条件の決定のための手続に関する
条約
なんですけれ
ども
、非常に重要な法案だと思います。 先ほど
お話
がありましたように、ここには明確に、例えば、高級の
公務員
に対しては国内法で適用しろとか、警察とか軍隊に対しては国内法をつくれ、その他については、この
条約
に応じて、
公務員
といえ
ども
一定の
団結権
などが保護されるべきだということになっております。
日本
の場合は、御
承知
のように、例えば消防職員の皆さんだって
団結権
がないということになっております。この百五十一
号条約
について、
草野参考人
のお考えをまずお聞かせいただければと思います。
草野忠義
50
○
草野参考人
今金子先生御指摘のように、私
ども連合
といたしましても、この
ILO
百五十一
号条約
は極めて重要な
条約
だというふうに
理解
をいたしておりまして、先ほど申し上げました優先的に
批准
すべき
条約
の
一つ
として掲げさせていただいておりまして、そういう
取り組み
を今進めている。ただ、残念ながら、先ほどのような
状況
にありますので、なかなか一挙に進まないという、ちょっと隔靴掻痒的な気持ちもあることは率直に申し上げたいというふうに思っております。
金子哲夫
51
○金子(哲)小
委員
公務員制度
にかかわって、既に
日本
が
批准
している
ILO
の八十七
号条約
、九十八
号条約
などを見ますと、本来は
労働者
の
団結権
、団体交渉権、
争議権
というのはその中で
保障
されておるべきものであって、また、そういうことをめぐっても、これまで裁判も含めて
労働
側が争っていきましたけれ
ども
、全農林の警職法裁判の判決以降、裁判闘争ということについては、
労働
側の方も、そのまま進んでも難しいんではないかということもあって、その点について行われておりません。 私自身は、本来なら裁判所そのものも、
憲法
九十八条二項との
関係
からいっても、国際
条約
を
批准
すれば国内法と同等の役割を持つということであれば、それも裁判規範性を持つというふうに考えておれば、これまでの
労働
争議の判例は
憲法
上からもいささか外れているというふうに思っております。 その上で、現状の裁判
状況
な
ども
考えられてとは思いますけれ
ども
、先ほど
お話
がありましたように、二月に、
ILO
では争うということで、
ILO
の
条約
違反ということで提訴をされておりますけれ
ども
、
日本
の裁判所に提訴をされない。先ほど言いました
憲法
九十八条二項との
関係
からいえば、
批准
された国際
条約
も一定の
憲法
上の役割を持つということになると思いますが、その点について、なかなかいい判決が出ないということもあるかもわかりませんが、もし国内の裁判所における提訴の問題について何かお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
草野忠義
52
○
草野参考人
結論から申し上げますと、私
ども
、
連合
として、実は
ILO
提訴というのは今回初めてでございまして、私
ども
としては、せっかくと言ったら語弊がありますが、
ILO
という国際機関があるので、まずその場できっちりとした
連合
としての主張、
日本
の官公部門としての主張をし、それを国際的に広く
理解
を得ていきたい、そのことをまず基本に進めていきたいということです。 昨年の
ILO総会
でも、実は八十七
号条約
の適用
勧告
についての
委員会
での
議論
がありましたが、今回は、私
ども
としてはそれをもう一歩踏み越えて、
結社
の
自由委員会
に提訴をさせていただいた。これが、
委員会
が三回行われまして、先ほど申し上げましたように、ことしの十一月に多分結論が出るかと思いますので、それを踏まえた上で、国内
運動
と絡めて、
公務員制度改革
の我々の主張する方向での解決を期待していきたいというふうに思っているのがまず一点であります。 提訴の問題につきましては、今先生も御指摘のとおり、私も素人でありますけれ
ども
、なかなか裁判所が国際
条約
の裁判規範性を認めない傾向があるということもございますし、四十八年の最高裁判所の判断の
基準
も少し変化してきたというふうに私
ども
は
理解
をいたしております。したがって、裁判所に提訴しないというふうには私
ども
は考えておりませんで、まずは
ILO
の場できっちりとした一定の方向性を見出していきたいというふうに考えて今取り組んでいるということで御
理解
いただきたいと思います。
金子哲夫
53
○金子(哲)小
委員
そもそも
ILO
には、
政府
、
使用者
側、そして
労働者
側、三者が
委員
を出しておりますから、国内のすべての
代表
者が出ておりますから、
ILO
のさまざまな
条約
に対して、我々国内も責任を持つ、
政府
の側も、また司法の側も、そしてまた国会というところも責任を持つべきだというふうに思っております。 最後にもう
一つ
お伺いしたいと思います。
公務員制度改革
で、今申し上げましたように、スト権やさまざまな
制約
を受けているということ自身問題を持っておりますけれ
ども
、
日本
の場合には、その代償として人勧制度をつくったということで、
公務員
の皆さんが、大体十二月ごろになりますと人勧の完全実施ということで、我々公労協もまた仲裁裁定の完全実施とかいうことで当時言ってきたわけですけれ
ども
、そもそも代償として出されたものだから、またその上に完全実施を求めてさまざまな
運動
をしなければならないというのもおかしい話ではあったわけです。 今度の
公務員制度改革
の中で人勧制度についても触れられているように感じますけれ
ども
、どうも、一方で
公務員
の
労働
関係
諸法は手をつけずに、人勧問題だけは何か俎上に上っているということを聞いております。その点については、
労働
のさまざまな
権利
について回復をされていく、少なくとも先ほど来話がある八十七
号条約
、九十八
号条約
に基づくような形にいけば、人勧制度を変えていくということはそれなりに意味があると思いますけれ
ども
、一方の側は全く手をつけずに、もし人勧制度だけが変更されていくというようなことになると、さらに
公務員
に対する
労働権
が
制約
を受けていくということになると私は思いますけれ
ども
、その点についての
草野参考人
の御
意見
をお伺いしたいと思います。
草野忠義
54
○
草野参考人
今金子先生御指摘のとおりだというふうに私
ども
理解
しております。
立場
によっていろいろ
意見
は違うやには聞いておりますが、その他の問題はそのままにして、人勧制度だけ権限を縮小する。その他の制度はそのままといいながら、ここを縮小することによって、当局の人事権が、管理権を含めて非常に
強化
されるという偏った改革に向かっているのではないかという強い危機感を持っているという意味では、今先生御指摘のとおりだというふうに思っております。
金子哲夫
55
○金子(哲)小
委員
時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
島聡
56
○島小
委員長
次に、
井上喜一
君。
井上喜一
57
○
井上
(喜)小
委員
保守党の
井上喜一
でございます。
草野参考人
、きょうは本当に御苦労さまでございます。 私は、二つ大きな問題ですが、
一つ
は、
公務員
の
労働
三法の適用問題といいますか、三権の問題です。まず、
公務員
の場合には、
団結権
があるということははっきりしておりますし、
労働条件
についての交渉権も実質的にあるというふうに私は
理解
するのでありまして、ないのは
争議権
ですね。今、
労働条件
の中でも一番基本をなすのは私は
賃金
だと思うのでありますが、この
賃金
につきましては、人事院という制度がありまして、これが
勧告
をする、こういうことになっているわけですね。 確かに、おっしゃいますように、今
ILO
に提訴をされまして争っておられるわけでありますけれ
ども
、考えてみますと、この
日本
の現状、これはそれなりの
日本
的な特徴のあります制度ではないかと私は思うんです。一概に、これは
争議権
を認めていないからだめだと言えるのかどうか。 そういうことで、まず、現行の制度、つまり、
団結権
を認め、交渉権を認めるけれ
ども
、
争議権
を認めない、しかし人事院
勧告
の制度なんかはある、これについてどのような評価をしておられるのか、お伺いしたいと思うんです。
草野忠義
58
○
草野参考人
基本的には、
労働三権
がまず最初にありきというのが私
ども
の
考え方
でございまして、その過程において人事院制度が出てきた、こういう
状況
でございますので、これを、今
井上
先生御指摘のように、評価しろと言われてもなかなか難しいところがあるのでございますが、私
ども
は、
労働者
である以上、そして
労働組合
である以上、まずはこの
労働三権
が
保障
されてからのスタートという姿をやはり描くべきではないかな、こういうふうに思っております。 それからもう
一つ
、今先生御指摘の中で極めて重要なポイントは、
労働
協約締結権がないというところ、これが一番私
ども
としては大きな問題ではないかな、こういうふうに思っているところであります。
井上喜一
59
○
井上
(喜)小
委員
しかし、現実の
労使
の
関係
を見ますと、締結権はないにしても、交渉権というのは現実にありまして、私は、随分これは定着した制度になってきているのではないかと思うのであります。そういうことで、確かに形式的にはそういうことにはなっていると思うのでありますが、実質的には大部分問題が解決されているのではないかという感じがいたします。 そこで、現行のこの制度、お
立場
はお
立場
としてよくわかりますが、
労働三権
が認められないことで何か不都合なことが現実に起こっているのかどうか、あればお聞かせいただきたいんです。
草野忠義
60
○
草野参考人
御指摘のように、人事院
勧告
、あるいは現業部門でいきますと、交渉をやって、交渉が成立しない場合には中労委の裁定を受ける、こういうような仕組みで今まで出されてきておりますので、表で見ると、確かに今
井上
先生のように、何か問題があるのかという御指摘にもなろうかと思いますが、結果としては、先ほ
ども
議論
が出ましたように、人事院
勧告
の不完全実施であるとか、そういうような問題が現実には出てきております。 それもそのとおりでございますけれ
ども
、私
ども
は、先ほどからの繰り返しになりますけれ
ども
、まずは、基本的に、
労働組合
に対する三権は
憲法
で
保障
された
権利
であり、それを認めるというところからスタートをすべきではないか、こういうふうに思っているということが
一つ
。それから、今回の
公務員制度改革
は、一言で言いますと、さらにそこの
制約
を強めようという改革大綱ではないかな、これはこのまま放置するとさらに大変なことになってくるのではないかな、こういう危機感を持っているということをひとつ御
理解
をいただきたい、こういうふうに思っております。
井上喜一
61
○
井上
(喜)小
委員
今の
労働
界といいますか、
日本
の経済の中で、大きな問題点はやはり
雇用
の問題だと思うんですね。特に解雇の問題です。
憲法
の中には解雇について強行適用する
規定
はないのでありますが、
雇用
に関して
憲法
に
規定
することについての御
意見
、お持ちだったらお聞かせいただきたいんです。
草野忠義
62
○
草野参考人
先ほど申し上げましたように、逐一条文としての
確認
をまだいたしておりませんので、
憲法
上どうするかという問題はこの場ではちょっと避けさせていただきたいと思いますが、
労働
契約法等をきちっと
法律
で
制定
するというのが当面の一番大事なことではないかなというふうに思っております。 特に、整
理解
雇四
原則
、これは四要件といいましょうか、四
原則
といいましょうか、いろいろ言い方があるようでございますが、これは判例としてかなり長い間積み重ねてきたものでありますので、このことをベースに例えば法制化をするということはぜひ必要ではないか、こういうふうに私は思っているところでございます。
井上喜一
63
○
井上
(喜)小
委員
その解雇につきましての判例、四条件ですか、それを仮に
法律
なら
法律
で明記する場合に、大体それで十分な、十分という表現はどうかよくわかりませんが、おおむねそれで目的を達成するような条件とお考えですか、あるいはつけ加えることがあるとすればどんなものがあるのか、お聞かせいただきたいんです。
草野忠義
64
○
草野参考人
私
ども
としては、現実をきちっと見詰めていく必要がある。そうしますと、この整
理解
雇四要件につきましては、かなり多くの積み上げの中で出されてきた
一つ
の
考え方
だというふうに
理解
をしておりますし、特に経営者の皆さん方が言うことによりますと、物すごくこれで解雇がしにくいというふうによく言われるんですが、私
ども
から見るとごく常識的なことしか書いてないじゃないかなというふうに
理解
をしておりまして、このことをまずは第一義的に法制化をするということが現実的な対応策としては最もよろしいのではないか、こういうふうに思っております。
井上喜一
65
○
井上
(喜)小
委員
ワークシェアリングの話が出ましたが、これの導入について何か
法律
事項はあるんですか。あるいは、
法律
事項がないので、事実上
労使
の話し合いでやればいいようなものなのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
草野忠義
66
○
草野参考人
ワークシェアリングにつきましては、先ほど申し上げましたように、とりあえず、今の危機的な
雇用
状況
を少しでも和らげるために何かできないかということで
一つ
の対策を出しまして、我々からいいますと極めて不十分ではありますが、若干の手当てもしていただいた。できればさらにもう少し手当てをふやしていただくと、このワークシェアによって、なかなか創出まではいかないと思うんですが、
雇用
維持という面では一定の効果があるのかな、こういうふうに思っておりますので、そこは
法律
事項としてはさほど大きな問題はない、あとは予算措置の問題だろうというふうに思っております。 ただ、中長期的なワークシェアリングということになりますと、これは、先ほ
ども
御指摘がありました、特に
女性
を中心とした
パートタイマー
との均等待遇という問題が出てまいりますので、これはかなり大きな
課題
だろう。これは相当
法律
面できちっと縛っていかないと、中長期的なワークシェアリングが
日本
の中に定着するということにはなかなかなっていかないのではないかな、そこが一番大きな
法律
事項ではないかな、こういうふうに思っております。
井上喜一
67
○
井上
(喜)小
委員
終わります。
島聡
68
○島小
委員長
次に、近藤
基彦君
。
近藤基彦
69
○近藤(基)小
委員
自民党の近藤でございますが、
草野
局長には大変御苦労さまでございます。 最初に、基本的なことからちょっとお伺いをしたいんですが、
連合
の六回
定期大会
で、
憲法論議
を否定するものではないと一九九九年に
見解
を出されて、その後、
憲法
に対して
検討
あるいは
勉強会
を行っておるという
お話
でありましたが、
憲法
には第九章、九十六条で
改正
の
規定
をしておりますが、国会の不作為と言われるように、それに伴う
法律
ができておりません。今その
法律
をつくろうと努力をしているところでありますが、一部の人の
意見
では、それを
法律
にすると即
改正
論議
に、あるいはすぐ
改正
されるんではないかと。私は別に、
改正
するしないというよりも、いい
憲法
ができればそれでいいなと思っておるだけであります。
検討
、勉強なさっているということでありますが、いわゆる
国民
投票法と言われるそういう事務的な手続を進めていくことについて、どういう御
見解
をお持ちでしょうか。
草野忠義
70
○
草野参考人
今近藤先生御指摘のように、具体的な改憲といいますか
改正
の手続が何も
規定
がないというところで
議論
になっているということは私
ども
承知
しておりますし、
改正
手続をつくること自体が改憲に結びつくのではないか、こういう強い懸念を持っておられる方がいるということも私
ども
承知
しておりますし、私
ども
の組合の中にも両論がございます、率直に申し上げて。 したがって、私の
立場
で、ここでどちらがいいかというのは極めて言いづらい部分がございますが、私
個人
的には、やはり不備があるところはきちっと決めていくというのは、この問題に限らず大事なことではないかな、これはあくまでも
個人
的な
意見
でございますけれ
ども
、そういうふうに思っております。
近藤基彦
71
○近藤(基)小
委員
憲法
二十八条では、
労使関係
に焦点を当てて、団体交渉権だとか三権を認めているわけでありますけれ
ども
、今の
社会
情勢
の中で、
労使
だけでは判断できないような、例えば大
企業
と下請の
関係
とか、あるいは非営利団体であるNPOの
関係
が非常にクローズアップされているというか進んでいる部分であるんですけれ
ども
、そういったものが、
団結権
とか団体交渉権だけではちょっとはかれない部分、
労働
と
規定
できるのかどうかもはっきりわかりませんが、
連合
として、例えば大
企業
の中での
労働組合
ももちろんあるでしょう、それから中小
企業
の組合もお持ちでしょう。そこの取り扱い、あるいは非営利団体との兼ね合いというのは、どういうふうな形で今ごらんになっていらっしゃいますか。
草野忠義
72
○
草野参考人
労働組合
の
運動
として、今近藤先生御指摘のところが非常に実は頭の痛い問題でございます。 大
企業
の場合には割と組織化も、いわゆる
組合員
になっている比率も高いんですが、中小零細
企業
にいきますと、
組合員
になっている比率が大分少ないという問題もございます。ことしの春季
生活
闘争の中でも、ことしはベースアップというのはほとんどなかったわけでありますけれ
ども
、親
企業
と、俗に言う下請
企業
といいますか、そういうところの
賃金
引き上げ等々もなかなかうまくいかない背景に、いわゆる単価の問題だとか、取引条件の問題が大きく絡んでいるというのは私
ども
も強く
認識
をしているところであります。 一方では、
法律
的に、下請代金遅延防止法であるとか、いろいろな法整備をしていただいて、そこで守る部分と、今度は、
労働組合
としてそれができないのかということで、例えば取引先を全部含めた大きな組合としてのくくり、こういうものも今大分進んできておりまして、そこの中で、親
企業
は親
企業
の
労働組合
との交渉、それから下請は下請の交渉ということだけではなしに、このグループを包み込んだ
労使
の
協議
というものも進めていかなければならないんではないか。そういう中で、うまい解が、あるいは改善策が見つかっていくのではないかな。これは
一つ
の
労働組合
としての組織論と
労使関係
の組織論になってまいりますが、そういうような改革をしていかなければいけないのかなというふうに思っております。 それからNPOとの
関係
につきましては、私
ども
自身がNPO、NGOの
一つ
ではないかというふうに思っておりますけれ
ども
、これは交渉とかなんかではなくて、NPOサポート事業というのを
連合
としてやっております。NPO、NGOの一番大きな
課題
は、
一つ
は、組織を経営するというところが、
日本
の場合は非常に弱いんではないかなという思いを持っておりまして、
連合
としていろいろなノウハウを、あるいはお手伝いをするような、そういう事業もあわせてやらせていただいております。
近藤基彦
73
○近藤(基)小
委員
公務員
法が大分
議論
されておりますが、人事院
勧告
制度との整合性、
争議権
を認めた場合の、変な話ですが、一般の
企業
と同様に、では、勝手にやったらどうだという話にも多分なるのかもしれません。
公務員
というのは、もともとが奉仕者ということで
規定
をされている。
公務員
ですから、
国民
の税金で、我々もそうでありますが、財政民主主義的な部分で、
国民
の奉仕者という
立場
からいけば、
争議権
を認める認めない以前に、果たして争議を起こしてもいいのかどうかという部分も実はありなんと思ってはおるんです。 現実的に、
労働条件
がいわゆる民間の
労働者
に比べて、現行制度でも劣っているとはちょっと考えにくいし、むしろ現在の不況の中で、はっきり言えば親方日の丸みたいなところがあって、リストラとか、そういう厳しい
労働
環境の中よりは少し緩いのかなと思っておるんです。
権利
として主張なされることは、もちろん
労働者
でありますから、やぶさかではないと実は思ってはいるんですが、果たして、ではその
権利
を行使するときに、
国民生活
に普通の
民間企業
以上に直接影響を与えるものが非常に大きい部分があり、財政民主主義からの
関係
もあり、人事院
勧告
制度をきちんと整備するというところを強調した方がいいのかなという気が私としてはするんですが、その辺の整合性を、かなり
議論
されているんですが、もう一度
お話
しいただきたいと思います。
草野忠義
74
○
草野参考人
今回の
公務員制度改革
の基本的な部分に、従来型の号俸給という、一言で申し上げますと年功序列ですね、こういうような仕組みから、今はやりの、実力をベースにした能力給あるいは業績給、いろいろな言い方があると思いますが、そういう部分に管理の基本的な姿勢を変えていきたい、しかも処遇についてもそういうふうにしたい、こういうことが明確に出されているわけでございますが、このことは、私も民間の出身ですが、民間でもいろいろ試行錯誤してやってきているんですね。ですから、これだったら絶対というのは逆に絶対ないわけでありまして、いかに改善をしていくか。 このときに最も大事なのは、
労使
が相談をしながら、これはこっちへ振り過ぎたからもうちょっと戻すかとか、もう一段別のルールに変えるかというのを、
労使
が率直な
意見
交換をやって、
協議
、交渉をしながらつくり上げて、よりよいものにしていくというのが私の経験からいったらあるわけでございます。 今回も、そういうことにしようとするならば、
労働組合
との
協議
というものをきっちりやらないと、一方的なシステムの変更と管理だけでは絶対失敗しますよということは、実は私は自民党の行革本部の方にも行って、そういう実例も挙げながら説明をさせていただいたんですが、そういう意味で言うからこそ、
労使
の
協議
、交渉権というものをやはりきっちり置いておかなきゃいけないな、私なんかは特に強くそういう思いを持っております。 それから、スト権の問題につきましては、先ほ
ども
申し上げましたけれ
ども
、世間の支持を受けないストライキというのは、なかなか今できる
状況
にはありませんし、そのストが成功するという保証もないと思いますので、そこはしっかりとした、あるいは成熟した
労使関係
を築いていくという双方の誠意があれば、私は、いい方向で解決ができるんではないかな、こういうふうに思っております。
近藤基彦
75
○近藤(基)小
委員
どうもありがとうございました。
島聡
76
○島小
委員長
次に、大出彰君。
大出彰
77
○大出小
委員
民主党の大出彰でございます。事
務局長
、御苦労さまでございます。 私は最初に、
公務員制度
の問題で、実は十一月六日の総務
委員会
で、大綱の前に質問をしたんです。そのときに、相手方は
行政改革推進事務局
長の西村正紀さんです。実は、職員団体とも話してほしいと思ったものですから、まず最初にその点についての質問をしたところ、十一月の六日の
段階
で、西村さんは「また職員団体とも誠実に話し合いを行ってきておるところでございます。」こうおっしゃったんですね、当時。それで、「これからも各省庁また職員団体を初め幅広く
関係
者と
意見
交換を行いまして、十二月の大綱策定に向けて努力をしていきたいと考えております。」こう答えられたんですよ。十一月の六日なんです、これが。 ところが、そのころに、
労働
団体の方にお伺いをすると、どうも我々職員はそんな話は聞いてもらっていないということだったんですね。それで、この
段階
では、職員団体と話しているとおっしゃるけれ
ども
話しておられないんではないかということで、十二月の大綱に向けて職員団体とも
意見
交換をしていただきたいという要請をしたんです。 ところが、どうも、きょうの
お話
のところでは、余りそれがなかったようにお伺いしたので、その点の経過についてお伺いをしたいと思います。
草野忠義
78
○
草野参考人
細かいデータはきょう持ってきておりませんが、行革推進本部と、それから
幾つ
かの政党の
方々
と何回か話し合いはさせていただきました。情報もかなりいただいてきた経過もあります。 私自身も何回か、
政府
あるいは与党の皆さん方のところに行って話し合いをさせていただきましたが、一番大事な最後のところはすぽっと抜けてしまったというのが正直なところなんですね。それまでは結構
意見
交換をしてきたんですが、いざ、これは
政府
あるいは与党の内部の話なので私
ども
はわかりません、推測以外の何物でもないので申し上げませんけれ
ども
、最後の詰めの
段階
でこの間の話し合いが全く抜けてしまって、十二月二十五日、いきなりぱっと出てきてしまった。それまでは確かに何回か
意見
交換会はさせていただいていますので、最後のところがすぽっと抜けたので、余計我々としてはショックが大きかったということではないかというふうに思っております。
大出彰
79
○大出小
委員
わかりました。全く話し合いがないんだとすると、これは私も質問しているのに何も成果がなかったことになりますので、非常に残念になってしまいますが。 ただ、結論的なもの、確かに十二月二十五日の閣議決定というものについては、私も大変不満に思いました。というのは、長年の懸案であります
労働基本権
の問題についても質問をしたんですが、それがどうも認められないような
状況
であるということだったものですから、その点については大変不満なんです。 そして、巷間、この改革案の流れの中で、例えば、野中さんが
労働基本権
を認めてもいいんではないかと言って自民党側のアドバルーンのようなことになって、期待をちょっと抱いたりした時期もあったわけですね。ところが、結果的にそうではないという方向で収拾をするとなると、どうも
憲法
に
規定
してあるのにおかしいではないかと思うわけです。
日本
は立憲主義の国ですから、本当は
憲法
に基づいて考えなきゃいけないわけなんですが、どうもその辺のやり方がちょっとおかしいなと思うところがありまして、それはなぜかというと、先ほど事
務局長
も、
原則
、三権があるということからスタートするんだとおっしゃっていましたが、まさに私はそれだと思うんです。
憲法
で三権を
規定
している、だから、
原則
は自由に認めるんだというところから始まらないと、自由を
憲法
で認めた意味がないわけです。 そういう意味では、先ほどおっしゃられたスタートから三権があるということが重要なんだということ、それは
憲法
にのっとっている
考え方
だと思うんですが、その点お答えいただけますか。
草野忠義
80
○
草野参考人
今大出先生御指摘のとおりだというふうに思っておりまして、野中代議士の
発言
も出ておりますが、別に私
ども
は、期待感はないわけじゃなかったんですけれ
ども
、そんなに甘いものではないという
認識
のもとで、いろいろ話し合いをさせてきていただきました。 これ以上は差しさわりがありますので申し上げませんけれ
ども
、中でいろいろな大きなうねりがあったやに聞いておりまして、それが最後の
段階
で、私
ども
の方との
協議
といいますか話し合いといいますか、それが抜けてしまった一番大きな背景ではないかなというふうに、これは推測をいたしております。 基本的には、やはり
憲法
で決められた
権利
というのがまず先にありきで、それをいろいろな事情でどこまであるいは制限をするか、
制約
をするかという
議論
の進め方でなければいけないんじゃないかと思いますが、今のこの問題については、全く入り口と出口が逆転しているのではないか、こういうふうに思っております。
大出彰
81
○大出小
委員
私もそのように思います。 そして、認めるべきだという理屈の中にいろいろなことがあると思うんですね。その中で、
一つ
は、諸外国と比べたときに、先ほ
ども
イギリス、フランスとか出ておりますが、イギリス、フランスでは
公務員
に三権を認めているわけですね。そして、フランスの場合には協約締結権がないということになっていますが、
原則
認めていて、さすがに警察だとか軍隊はだめかもしれませんが、それで出発して、ずっと来ているわけですね。そういう意味で、比べっこをしますと、何で
日本
だけなかったのかということがやはり疑問に思うんですね。
憲法
にあるのにというのが疑問なんです。 それともう
一つ
は、公の機関だったものが、例えば国鉄が民営化されたり専売公社が民営化されると、即ストライキ権を上げるんですね。その間にそんなに変わりはないわけなのに、そういう種類のものなんですね。
公務員
ももともと
勤労
者なわけですから、あるのが前提なのに、その辺のことの
理解
が
日本
の中で深まっていないというのがおかしいなということを思うんですが、その点どのようにお考えでしょうか。
草野忠義
82
○
草野参考人
よくテレビ、新聞等で、最近は少ないようでありますが、外国において
公務員
の
方々
がストライキをやるときに、結構市民の方は不便を感じつつもその目的に対して
理解
を示す、こういう傾向があるやに聞いております。 そういう意味では、繰り返しになりますが、世間から
理解
をされる行動でなければならない、こういうふうに思っておりますし、私
ども
のまとめた
資料
にもございますけれ
ども
、今大出先生御指摘のとおり、まず三権を認めて、そこから
議論
をスタートすべきだ、そこで何が問題があるのかという
議論
をしていくべきではないかな、こういうふうに思っております。
大出彰
83
○大出小
委員
ありがとうございます。 その
議論
とともに、乱用のことをお考えの方もおられるようですが、それについては、
憲法
十二条にも乱用を戒めておりますから、私は問題ないだろうと思っております。 それと、もう
一つ
重要なのが、
公務員
の皆さん、
国家
公務員
法、地方
公務員
法の適用の方が、ユニオンショップができないですよね。そういう規制になっていると思うんですね。その部分が多少組合の組織率にも影響してくるので、この部分の基本権についてもやはりしっかり直すべきではないかと私は考えておるんですが、その点いかがでしょうか。
草野忠義
84
○
草野参考人
ちょっとユニオンショップ、そこのところ勉強不足で、申しわけございません。
大出彰
85
○大出小
委員
質疑時間が終わりましたのでやめますが、いろいろな
公務員
の問題があるということで、なるべく
憲法
に基づいた政治をするためにも、懸案でありました
労働権
については何とか認めてもらいたいということで
お話
をしまして、私の質問を終わります。 ありがとうございました。
島聡
86
○島小
委員長
次に、
平井卓也
君。
平井卓也
87
○
平井
小
委員
平井
です。あと一人でございますので、どうかしばらくおつき合いをいただきたいと思います。
公務員
の
労働三権
という話が今までずっと来ていますが、一方で、身分
保障
されているので、それをもって、行革をしても
行政
コストが下がらない、これは私の
意見
でありますが。なぜそのことを申し上げるかというと、最近、電子
政府
関係
で各役所の仕事の
内容
を僕は分析し始めました。それは、
国民
との接点のところ、政策立案にかかわる真ん中のところ、あとは官房基幹業務を支えるバックオフィスと言われる部門、この三つに分けて、それぞれの効率性等を今
調査
しております。ある
程度
のものはわかってきておりますが、今度は予算をつけていただいて一歩踏み込んで中を調べたいと思っているんですが、
行政
コストを下げていかなきゃいけない、
国民
の税金をむだに使ってはいけないという観点から考えると、今はどうしてもお役所仕事はむだが多い。 それは何となくむだが多いというふうに言われていますが、ではどこにどうむだがあるのか。私、いろいろ調べてみますと、例えば出張の精算をするときに判こを十四回押さなきゃいけないとか、例えば海外出張するときには毎回旅券を申請しなきゃいけないとか、それにかかわってそれだけの人がその役所の中にもいるわけです。 こういうものを考えてみたら、
労働三権
の問題もいいんですが、それは当然認めるとしても、
労働条件
の引き下げとかリストラとか、できる仕組みがあっていいんではないかな。これは
国民
の
立場
から見るとそうだと思うんです、いろいろ
立場
の違いはあるとは思いますが。お役所仕事のむだをなくす。確かに
公務員
数だけを言えば、
日本
は多いわけではありません。しかし、仕事の
内容
のむだという意味では、私の目からは物すごくあるなと思っているんです。 今の問題と
労働三権
の問題を一緒にするとちょっと
議論
しづらいかもわかりませんが、御
意見
をお聞かせ願いたいと思います。
草野忠義
88
○
草野参考人
今
平井
先生からの御指摘のいわゆる
行政
コストを下げるという問題については、一般論で申し上げれば私もそれは必要だろうと思いますし、特に、我々の
連合
の中でも、民間部門の人から見ると、やはり
行政
にはむだが多いんではないかという、これはある意味では観念的な部分もあると思いますが、今
平井
先生のように事細かに全部調べているわけではないので若干感覚的なものがあろうかと思いますが、そういう声がかなり多いということは事実であります。 したがって、民間部門でも、こういう
情勢
でございますので、
労使
で
協議
しながら、どうやったら生産性の向上が達成できるのか、どうやったらコストが下げられるのかというのは、そういう意味では血のにじむような努力をしているわけですから、それはパブリックの部門においてもそういう努力をしていただくのは、私は当然だろうと思います。 ただ、そのときに、我々
労働組合
からいえば、一方的な理事者側の命令ではなくて、きちっと
労使
が話し合った上で、どうやるか、これがありませんと、少なくとも私の経験では、一方的命令だけでは物事はうまくいかないだろうと思うんですね。いかに働いている人
たち
がその目的を
理解
して、納得して、よし一緒にやろうというのがエネルギーとなって出てくるというふうに思っていますので、
平井
先生言わんとするところは私も全くそのとおりだと思いますが、そこで大事なことは、そういう
労使
の
協議
という場が必要なんではないだろうか、こういうふうに思っております。
平井卓也
89
○
平井
小
委員
労使
の
協議
というのも当然大事だと思いますけれ
ども
、やはり
国民
に情報を開示して、
国民
との
協議
がまず必要だと思います、雇い主は
国民
ではないかというふうに私自身思っていますので。その意味では、これから数字でいろいろなものを示せるようなデータを私
ども
もつくっていこうと思っておりますので、またぜひ働く
立場
からアドバイスを今後ともいただければと思います。 もう
一つ
、最近、
政府
が、小泉政権の売りとして、規制改革の中で特区構想というのが出てきています。スペシャルパーパスエリアといいますか、特別目的地域、その中に
雇用
特区という
考え方
も出てきています。これは一国二制度になるというか、ちょっと実験的な要素もあるのでどうかという
意見
もあるんですが。 確かに、地理的な不利な地域であったり、今失業率が高いようなところに、例えば沖縄みたいな問題もそうですが、職業紹介事業に関する規制の適用を除外したりとか、多様な
雇用
形態を可能にするような
雇用
ルールをそこだけでやってみたり、そういうことは、私はこれからの時代は必要ではないかなというふうに思っています。これは自民党内でもいろいろ
意見
が分かれるところかと思いますが、そういう実験的な
雇用
特区というのを今後とも
検討
していくという
考え方
に対して、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
草野忠義
90
○
草野参考人
実は細かくまだ勉強しておりませんが、
連合
の中でも、地方
連合
のあるところからは、特区を早くやってくれ、実はこういう声も出てきているのは事実でございます。ただ、中身がまだ細部含めて明確になっておりませんので、私自身、今ここで判断をするのは非常に難しいわけであります。ただ、トライアルといいますか、テストケースでやるといいましても、かなり大きな範囲でやらないとほとんど意味がないのではないかというふうに思います。かなり大きなエリアでやるとすると、逆に具体的な影響が出てくる。そのことを、私
ども
はちょっと心配な部分が少なからずあるということだけ申し上げさせていただきたいと思います。
平井卓也
91
○
平井
小
委員
先ほど各
委員
の先生から解雇権の乱用法理の問題がありましたけれ
ども
、一方で、若い人
たち
の
就業
機会
を奪ってしまっているという
考え方
もないわけではないわけですね。例えば、
企業
がより自由に、まあ自由に解雇という言い方もおかしいですけれ
ども
、解雇することができるのであれば、不況になっても若い人の
雇用
機会
、就職はより容易になるという
考え方
もあると思うんです。これは定年制の問題とも絡んできて、特に若い人
たち
が今不況で非常に就職に困っている。これに対してはどのように、これは極端な話、解雇権を
企業
にもっと使わせろという意味で言っているわけではありませんが、
雇用
というものの
根本
的な
考え方
を改善する余地があるのかなと思っているんですが、いかがでしょうか。
草野忠義
92
○
草野参考人
我々のところでいいますと、経営者の皆さん方から時々そういう話を聞くんですが、本当にそうなんでしょうか。今、現実のこの失業状態、三百七十五万人、しかも非自発的失業が百五十七万人でしたでしょうか、これだけの
失業者
が出ているときに、解雇とかいわゆる
雇用
契約を切るということが本当に難しくてできないというのは、どうしても私、信じられないんですね。そうでなければこんな
失業者
が出るはずがないというふうに思っていますので、ちょっとそこのところは、
平井
先生がおっしゃったという意味じゃないんですが、経営者の皆さん方が言っているところは、本当にそうですかと、ちょっと不信感を持って見ているというふうに申し上げたいと存じます。
平井卓也
93
○
平井
小
委員
若い人
たち
が、つまり、高齢の
労働者
と、若い、これから可能性のある
労働者
の入れかえみたいなものに関して、定年制とか、今言った解雇の問題とか、私は絡んでくるんではないかなと思うんですが、この低迷する経済の中で、若い人
たち
がより可能性にチャレンジできる
社会
をつくるにはどのようにすればよろしいとお思いでしょうか。
草野忠義
94
○
草野参考人
非常に難しいんですが、基本的には、
雇用
のパイを広げていくしかないんだろうというふうに私思うんですね。そういう意味でいいますと、新しい
産業
をどう起こしていくかということが
一つ
。それから、そういう中でも
制約
が出てくるとすれば、ワークシェアリングというものをどうしても定着させていく必要がある。 そして、具体的な入れかえということになりますと、実は
労働
界も、六十歳の定年がもちろん一般的でありますが、年金の問題、
社会
保障
の問題も含めて、六十歳代の
雇用
を継続する、あるいはそこの
雇用
をふやすということを今ねらっていますし、ある意味では
政府
の政策としてもその部分があるわけですね。そうすると、ますます若い人の働く場所がなくなっていくというまさにジレンマに陥ってしまいます。 ドイツでは、定年退職の年齢を引き下げて、若い人に置きかえるということをやりましたけれ
ども
、そのかわり、これはまた年金と連動しています。 年金は六十五歳からですよ、仕事は六十歳でやめなさい、若い人に入れかえなさいと言って、まさに世代間の闘争みたいになってまいりますが、もう
一つ
そこを乗り越えて、年金と接続をする、そのことによって早期引退ができるようなシステムをつくるというのは、私は
一つ
の案としてはあり得るのかなというふうに思っていますが、現実的には、政治の場で解決するのは非常に難しい問題ではないかな、こういうふうに思っております。
平井卓也
95
○
平井
小
委員
ありがとうございました。
島聡
96
○島小
委員長
これにて
参考人
に対する質疑は終了いたしました。 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
草野参考人
におかれましては、貴重な御
意見
をお述べいただき、ありがとうございました。
憲法
二十七条、二十八条はもとより、外国人
労働者
の問題、
国民
投票、NPO、特区構想という非常に多岐にわたる御質問にもお答えいただきましたことを、まことにありがたいと思っております。小
委員会
を
代表
いたしまして、心から御礼を申し上げます。本日はどうもありがとうございました。(拍手)
—————————————
島聡
97
○島小
委員長
これより、本日の
参考人
質疑を踏まえ、
基本的人権
の
保障
について、小
委員
間の自由
討議
を行いたいと存じます。 一回の御
発言
は、五分以内におまとめいただくこととし、小
委員長
の
指名
に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いをいたしたいと存じます。 小
委員
の
発言
時間の経過につきましてのお知らせでございますが、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせしたいと存じます。 御
発言
を希望される方は、お手元にあるネームプレートをこのようにお立てください。御
発言
が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。 きょうは
労働権
についての
お話
でございましたが、五回、小
委員会
をやってまいりまして、実は七月二十五日には小
委員長
から中間報告をさせていただくという形になっております。それを踏まえまして、今までの五回の
議論
を踏まえた上で何か御
意見
がありましたら、それも述べていただければ幸いかと存じます。もちろん
労働権
に関してでも結構でございますが、全体を通しての御
意見
でも結構でございますので、よろしくお願いを申し上げます。 それでは、各
委員
から御
発言
をお願い申し上げます。
土屋品子
98
○土屋小
委員
自由民主党の土屋品子です。 W杯が終わりまして、振り返ってまとめたものがありますので、申しわけありませんが、読ませていただきます。 W杯に沸いた一カ月を振り返って、
国家
とは何か、人権とは何かを考えるよい
機会
になったと感じています。
憲法論議
でも、よく個の
権利
や個の
尊重
といった言葉を耳にします。今国会でも問題となっていた夫婦別姓の問題などは、まさに顕著な例と言えるのではないでしょうか。相手の姓を名乗るかどうか、戸籍を入れるかどうか、さまざまな価値観があり、その
考え方
も多様化しています。だからこそ、
憲法
でも、
個人
の尊厳や、そこから導き出される人権という
考え方
をどこまでどう受け入れるかが問題になるのではないでしょうか。
憲法
学者の中には、個の人権のあり方が護憲か改憲かの尺度になると言う方もいらっしゃるぐらいですから、価値観の多様化した中、人権の
考え方
は大変複雑だと思います。 人権を考えたとき、究極的には、独立した
個人
がもとになっていることは明確です。確かに、
個人
はあらゆる組織や集団から束縛を受けず、自由であることが大切かもしれません。しかしながら、
人間
の
生活
は、好むと好まざるとにかかわらず、組織や集団の一員としてしか
生活
が営めないのではないでしょうか。
個人
は、所属している組織の中で利害を共有し合い、結果として、ほかのメンバーと感情を共有できるのではないでしょうか。その感情を共有できる最も重要な集合体が
国家
であることを意識したのが、まさに今回のワールドカップでした。 少し抽象的な表現を使ってしまいましたが、ふだんは、国旗を上げてください、国歌を斉唱しますと言っても、そっぽを向くか、決して歌おうとしない若者
たち
、もっと言えば子供からお年寄りまでが、なぜ顔に日の丸のペインティングをし、
日本
、
日本
と連呼したのでしょうか。ここ数年、国際化が叫ばれる中、ボーダーレス
社会
やグローバル化が叫ばれ、地球市民という言葉や、地球温暖化防止といった
世界
規模の話をよく耳にしますが、今回のW杯は、まさにそういった現象と逆行する光景でした。これをどうとらえたらいいのか。
国家
を意識せざるを得ないワールドカップの争奪に、
国民
であることを再
認識
したのは私だけではないと思います。 第二次
世界
大戦後、
日本
人は、無意識のうちにアイデンティティーを失っていたのではないかと感じています。
日本
は過去悪いことをした、日の丸や君が代は戦争の代名詞であると言う人もいます。しかし、本当にそうなのでしょうか。私自身、今回のワールドカップを通して肌で感じたのは、自分とは何か、いかなる集団に属するのか、それは紛れもなく
日本
という
国家
に帰属しているのだという感情であったように思います。 国旗や国歌は必要ですし、個や人権といっても、結局は、所属している
国家
がそれを
保障
しているかいないかが重要な要素になってくると思うわけです。そういった意味からも、
日本
人に
国家
という意識がサッカーを通じて芽生えてきたことは大変よかったと感じています。悪い意味でのナショナリズムではなく、アイデンティティーの確立という面で、多少保守的になってもよいのかもしれません。 ヨーロッパでも、フランスの大統領選挙で極右政党が最終決選にまで残りましたが、それでも
国民
は正しい選択をしました。行き過ぎはよくありませんが、結局は、自分の
立場
をどこに置くかという意味で、一番重要なのは
国家
だということです。EU諸国では、欧州共同体をつくって以降、
幾つ
かの国の政権が保守系の政党にかわってきています。通貨や
法律
が
一つ
になって、国境が消えても、
国民
であるという意識は消しがたいものだということではないでしょうか。 人権問題に関しては、
日本
人は、与えられた
憲法
や与えられた民主主義から脱皮し、自分
たち
で、どこまで個の尊厳に基づく人権を認めるのかをしっかりと
議論
して、新しい人権の追加を含めて、時代に合った
憲法
の条文に変えていくべきであると考えます。
憲法
をつくるときには、短期間とはいえ、人権をどう認めていくかという
議論
があり、多くの修正案も出されたわけですから、今の
憲法
が完璧でないことは明白ではないでしょうか。 これからも、自立した
個人
が相互に支え合っていく
社会
を目指すために、個に立脚した
権利
である人権を真剣に考えていきたいと思います。 どうもありがとうございました。
春名直章
99
○春名小
委員
日本
共産党の春名直章です。
憲法
に定める
労働権
それから
労働基本権
が、先進諸国の
憲法
と比べても先駆的なものであること、そして、今後の
労働者
の
生活
と
権利
を守る上で指針たり得ることが、きょうの
参考人
の質疑を通じても明らかになったと思います。 戦後、
憲法
の諸
原則
を出発点にして、弱点は持っていたんですけれ
ども
、
労働基準法
それから職業安定法などの
労働者
保護立法ができました。それから、
労働者
が
使用者
と対等の
立場
に立って
生活
と
権利
を守っていくということで、
労働基本権
を具体化した
労働組合法
などが
制定
されました。 ところが、歴代の政治の側が行ってきたことは、こうした
憲法
が命じた
労働
法制をさらに豊かにしていくということではありませんでした。逆に、
労働
法制の重要な諸
原則
を空洞化に近い方向でなし崩しにしていくということであったと考えます。 第一に、
労働基本権
についてです。 一九四七年一月三十一日に、二・一ゼネストが行われようとしましたが、マッカーサーによる中止命令が出ました。一九四八年七月三十一日、マッカーサーの書簡に基づく政令二百一号で、全官公
労働者
からの団体交渉権とストライキ権が剥奪をされました。そして、代償措置としての人勧機能は縮小しながら、
労働基本権
回復は置き去りにするという今日の
公務員制度改革
、これらが示していると思います。 それから、
労働者
の
権利
、
労働条件
をめぐる問題という点ではどうでしょうか。特に、一九九〇年代に入って行ってきた
労働
法制の改変というのは、
参考人
も
お話
がありましたように、市場原理万能主義、規制緩和の名のもとに財界の意向をストレートに反映したものとなっていて、その
内容
や手法ともに、戦後の
労働
をめぐる大切な諸
原則
を骨抜きにしていく、異質なものに改変していくということになっていると思います。 年間一万人近い
過労死
が出ています。横行するサービス残業、不当な配転、転籍などによって、家庭
生活
の危機がもたらされています。
女性
の採用差別、無
権利
状態に置かれる
パートタイマー
、派遣
労働者
などの深刻な実態は、こうした
労働
法制の改変によってもたらされてきているものだと考えます。 したがって、今大切なことは、従来の基本
原則
をしっかり守りつつ、今日の
労働
をめぐる新たな
状況
に対応する創造的な探求だと考えます。その場合にも、指針となるのは
日本国憲法
であります。この
憲法
に沿って解雇規制法などの
労働者
保護法制を一層整備すること、残業の上限を制限すること、サービス残業の根絶などの諸法制を整備すること、当然、
公務員
労働者
に対する
労働三権
の回復、こういうことが今日の
課題
になっていると思います。 こうした点での突っ込んだ
調査
をぜひ
憲法調査会
としてやっていくことを呼びかけまして、私の
発言
といたします。 以上です。
金子哲夫
100
○金子(哲)小
委員
社会
民主党・市民
連合
の金子です。 私は、きょう
論議
となりました
労働基本権
、
公務員制度
の問題について、重ねて
意見
を述べさせていただきたいと思います。 私は、まずその大前提に、
公務員
といえ
ども
労働者
だということを申し上げたいと思います。 確かに、
雇用
の形態、また
雇用
者の
関係
においては
民間企業
とは違う側面はありますけれ
ども
、
労働者
という側面には全く変わりがないわけでありまして、その点でいえば、基本的に
憲法
で
保障
された
労働基本権
を初めとするさまざまな
権利
をまず
保障
していくということが大前提にならなければならないと思いますけれ
ども
、今日の
状況
は、
公務員
の制度にあって、そのような
労働基本権
が完全に
保障
されていない点については
憲法
に近づける努力をしなければならないというふうに考えております。 例えば、私は大変疑問に思っておりますけれ
ども
、消防署の職員にも
団結権
すらないという現実についてどのように考えるかという問題、ここを見てみますと、非常に大きな矛盾をたくさん抱えていることについて、もっと真剣にこの問題を考える必要があるのではないかというふうに考えております。 もちろん、国際
社会
にあって、
ILO
のさまざまな
勧告
や
条約
などに抵触する問題もありますけれ
ども
、本来、
日本国憲法
の中に明確に
労働基本権
がうたわれている限り、そのことは当然のこととして許容されて当たり前ではないかというふうに私は思います。また、そのことを前提としながら、今日の
公務員制度改革
の中においてこの点が全く
論議
をされず、またこの点に対する提言がなされていないことについても極めて問題があるように考えております。 さらに、
労働
の
権利
の問題について提起をしたいと思います。先ほど来ありますように、今日の
雇用
状況
を考えてみますと、この
労働
の
権利
の問題について、政策的にもっと提起をすべき点が多いのではないかということを改めて申し上げたいと思います。 特に、私は、今日の失業
状況
の中にあって、
雇用保険制度
のありようがこのままでいいのかということを考えております。政策の
義務
としての
失業者
への
生活
保障
ということが言われながら、実質上は
労使
の負担によって
雇用保険制度
が維持されているという現状を考えてみますと、しかも、今日の
状況
の中で
雇用
保険の基金も枯渇の
状況
を迎え、それだけ
雇用
状況
が悪いということでありますけれ
ども
、そうした
状況
の中にあって、さらに
労使
負担だけを増加させるという解決方法だけでいいのか、これにもっと政治としての
かかわり
の
義務
があるのではないか。
自殺者
が三万二千人も急増する
状況
の中にあって、しかも四十代、五十代の働き盛りの人
たち
がみずからの命を絶つというこの現状は、
労働基本権
のみならず、まさに
生存権
そのものを否定するということにつながることでありまして、その面から考えても、この
勤労
の
権利
を積極的に
保障
していくということが今政治に課せられている
課題
であるように思います。 現状の
労働者
をめぐる
状況
は、そういう意味からいいますと、残念ながら、
憲法
に
規定
された
労働基本権
、
勤労
の
権利
の現状から見て極めて厳しい
状況
にあるということを指摘し、さらに
憲法
の
状況
に近づけていく努力をすべきだということを申し上げて、私の
発言
とさせていただきます。
中山太郎
101
○
中山
会長
自由民主党の
中山
でございます。 私は、
委員
の
先生方
にもこれから御
議論
をいただくことだと思いますが、インドシナ難民を別にして、難民
条約
で入ってくる新しい外国人、この人
たち
の人権というものをこれからどう考えていくのか。これは非常に大事な
課題
でございまして、
日本
という国にとっては、過去経験がなかった、インドシナ難民以外の新しい難民の人
たち
を難民
条約
のもとで受け入れる、どのようにこのような人
たち
の人権を
保障
していくのか、こういった問題については、我々にはそのオリジナルなシナリオがない。 ここで、最近言われる中国における瀋陽の
日本
総領事館への駆け込み事件とか、いろいろな点で韓国に亡命を求める人
たち
が何十人かおったわけですけれ
ども
、私
ども
の
調査
では、北の
方々
は、中国における各国の在外公館に逃げ込んで保護されて、その行き先の希望を聞いたら韓国ということになると、韓国
政府
は、朝鮮半島全体に住む人
たち
は同胞であるという基本
原則
に基づいて、難民
条約
とかそういうものには全く
関係
なく受け入れているという実態がございます。 そういったことで、私
ども
の国において、かつて北朝鮮へ戻られたときの
日本
人妻の
方々
、この
方々
は、現実の問題として、国籍法に基づくと、
日本
の国籍を放棄しておられない。国籍を持ったまま北朝鮮の方と結婚されて、そして北朝鮮人民共和国に住んでおられた。こういう
方々
がもし脱北者という形で出てきた場合には、
日本
は
日本
人としてこれを迎え入れなければならない
一つ
の仕組みを我々は持っている。 こういう
考え方
以外に、
日本
のバブル時代に入ってきた、イラン等からの多くの外国の人
たち
、まだ相当残っておりますけれ
ども
、いろいろな形で、この在留外国人の人権問題をこれからどのように考えていくかということが非常に大きな
日本
の
一つ
の宿題になってきたと私は感じております。 どうぞ各党でも、これらの点については十分お考えおき願いたいとお願い申し上げておく次第でございます。
今野東
102
○今野小
委員
今、
我が国
にアフガニスタンの難民の
方々
がおいでになっています。この間、その
方々
が強制収容されようとしました。一たん強制収容されたんですけれ
ども
、ほどなく仮放免されたということで、ちょっとほっとしているんですけれ
ども
、あの
方々
は、そういう状態ですから、もちろん難民認定されておりません。したがって、働くこともできません。こういう
方々
の声を私
たち
はどのように
法律
やあるいは
憲法
の解釈に生かしていくかということが大変大事なのではないかと思います。 また、難民の
方々
ではなくても、同じ
労働者
でも、組織されていない人
たち
の声は大変反映されにくい。また、先ほどの有事法制についての海員組合の
方々
の強い要望があったという
お話
がありましたけれ
ども
、組織されていても、その
連合
体の中ではなかなかその声があらわれにくいという点があります。 私
たち
は、そういう表に出てきにくい声にどのように耳を傾けるかということが大変大事なのではないかと思います。 また、この小
委員会
で
基本的人権
についてさまざまに話し合いをしてきたわけでありますが、それを通して私は考えますのは、
憲法
は
理念
であります。その
理念
に基づいて諸制度を定めていき、この国は動いているのであります。したがって、
法律
で定めればいい諸点を挙げ、だから
憲法
が完璧ではないと言うのは当たらないと考えております。 以上です。
島聡
103
○島小
委員長
ほかに御
発言
ございますでしょうか。 それでは、
討議
も尽きたようでございますので、これにて自由
討議
を終了いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午前十一時四十三分散会