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柏木参考人 今、
総合資源エネルギー調査会の新エネの
部会長を拝命している
柏木でございます。よろしくお願いします。
私、きょう用意した三枚物、四つのブレットから成っておりますが、それに沿ってお話しします。私、大学の教師なものですから、
エネルギー政策とはどうあるべきかというところから簡単に御説明をしたいと思います。
ちょうど私、IPCCという気候
変動に関する
政府間パネル、この執筆代表をやっておりまして、国内の
エネルギー政策の
考え方と国際的に見た
エネルギー政策の
考え方は大分違っている。もちろん私たちは、国内においては
エネルギーセキュリティー、安定
供給が第一でありまして、ただ、世界に出ますと、人類皆共通のもとで
公平性を保ちつつ持続可能な社会を構築するためにはどうしたらいいのかという
考え方。そうしますと、万国共通なのは、これは省エネですよね。その次に大事なのは、やはり地域に密着した
エネルギーをどうやって使っていくか。我々は、
原子力もありますし、新エネもある。特に、この高
コスト構造の新
エネルギーをどうやって
市場メカニズムの中に組み込んでいくかというのが今の世界の趨勢だと思っています。
そういう
観点から
日本の政策を
考えたときに、我々、四つのブレットで、
総合資源エネルギー調査会の中では
考えた。一つが、最終的には、一番万国共通の省エネをやれ、その次に、国に密着した新エネをどんどん入れろ、あとは、燃料転換をやったり、あるいは
原子力をきちっとやれ、この四つの
考え方があると思いますね。
特に、この中の新エネに関しては、
日本で今まで新
エネルギーのカテゴリーというのは石油代替であって、余り石油に頼り過ぎたらこれはセキュリティー上うまくない、よって、なるべく国内で石油に代替できて、かつ、経済ベースがまだ商用段階に至っていないものをあえて新
エネルギーと定義したわけですよ。これは国が定義したわけですから。
国によって
エネルギーのビジョンというのは違ってしかるべきで、万国共通なものは、例えば再生可能な
エネルギーであればこれは万国共通かもしれませんけれ
ども、
我が国には、ごみという
エネルギーだってあるんだし、あるいはソーラーだってあるんだし、風があるところは
風力もあるんだと。よって、
日本の中で、風だとか太陽だとか、新
エネルギー法の中にいろいろ書いてありますけれ
ども、
バイオマスをやったり、今度新しく雪氷なんかも入れました。その中にごみ
発電も入っているわけです。こういうものを今度の
法律でどうやって進めていくかというのが一つの骨子になるんだろうと思っています。
私はたまたま省エネ
部会の
委員でもありますので、簡単に最初の万国共通の省エネ政策、これは御存じだと思いますけれ
ども、
日本の
エネルギー消費というのは、大体
産業界は頑張ってやってきましたけれ
ども、民生用の中、民生というのは家庭用と業務用に分かれていますが、業務用の
エネルギー消費がかなり伸びているのですね。
具体的にデータを申し上げますと、二〇〇〇年度で一九九〇年比、業務用で二八・四%伸びています。ですから、そういう
意味では、この分野に対していかに省エネ政策を打っていくかというのが今度の、もう一つきょう出ております省エネ法の改正の一つの骨子になっていまして、
産業と同じように民生部門も強力な省エネ政策を打つ。
これは規制法ですから、規制ですから、規制するだけでは業務用の方も困っちゃうわけで、ある
意味ではビジネスチャンスが生まれるようにITを、バブルが崩壊してITはだめだなんと言う方もいらっしゃいますけれ
ども、私はそうは思っていなくて、ITは、インフラが引けたんだから、これからはITのインフラを
エネルギーの分野に使ってくださいと。ですから最適制御の関係、制御系をきちっとコントロールするためのITのインフラとして活用すれば、今まで投資したものが十二分に生きてくるわけで、それを省エネの分野でやってくださいと。
ですから、業務用のビルの中にビルディング・
エネルギー・マネジメント・システムを入れる、IT活用の
エネルギー・マネジメント・システムを入れる、こういうことをできるような形で今度の省エネ法の改正も行われています。ですから非常に高く評価をしたいというふうに思っています。
もう一つ、ES
COというのがありまして、
日本は、やはり金融と都市と経済、経済の再生というのはキーワードですから、ある
意味では金融がうまく、
エネルギー分野に新たな金融資本を
導入していただくような政策を打っていただくと、また一挙に金融とのいい関係が生まれるというふうに思っています。これがES
COと言われているものであります。細かいことは省略しますが。
そういう
意味で、省エネ法は一つ終わった、終わるだろう、この審議を経て終わると非常に都合がいいなと私は思っています。
それで、新エネですけれ
ども、今大分いろいろと新エネに対するコメントをいただきましたが、省エネ
部会は一年間でございましたが、新エネ
部会は二年間やっていますから。何をやったかというと、まず、現状の政策が維持されたとするならば、
我が国でいう新
エネルギーのどのぐらいの量が入りますかということを計算したのですよ。これはけんけんごうごうとした
議論をしました。その結果、約九百万キロリットル弱、八百七十八万キロリットルというふうな計算をしたわけです。
どうも諸外国と比べて、国際的に見て、新
エネルギー、
環境性のある新
エネルギーをどのぐらい入れたら
先進国としての
エネルギービジョンにふさわしいかということを
考えました。この政策維持ケースでいいんだったら何も政策を打つことはないわけで、いろいろと
考えたあげく、やはり三%ぐらいは入れるべきだろうと。
水力とか
地熱は新エネに入っていませんから、もう経済力ありとしているわけですよ。それを合わせれば、三%プラス四%で七%ぐらいになれば、世界的に見ても遜色ない程度だろうということになりました。
そうすると、現状レベルの新
エネルギーを三%まで引き上げるということは、倍に持ってこなきゃいけないのです。そうすると、何らかの政策を打たなきゃいかぬということになります。
では、政策論議になってくると、じゃ、どういう政策を打ったらいいか。世の中は間違いなく、今の超党派の新
エネルギー議員連盟が出されているような議員連盟の
法案。それから、今
飯田さんがおっしゃったような買い取り
義務の
法案。それから、その中に市場のメカニズムを入れて、なるべく社会的に追加する——高
コストのものを市場に入れていくわけですから、これを全部税金で賄うわけにはいきませんよね。そういう
意味では、高
コストのものを入れるわけですから、何らかそこで
市場メカニズムをどうにか入れて少しでも国民の
負担を少なくしたいと、それが
RPSと言われているものですよ。この三つに対して随分積極的にディスカッションしました。
それで最終的に残ったのが、
固定価格の買い取り
義務化を課すのと、今の
RPS法案ということになりました。
具体的には、
ドイツが今まだ買い取り
義務化をやっています。もちろんのことながら、初期
需要がぱっと膨らみますから
コストが低減する。ただし、買い取り
義務の
価格を高く
設定すれば
電力会社が困りますね、
民間企業ですから。高く買わざるを得ないわけですから。
そうすると、
事業者はいいわけですが、余り安く
設定したらどうなるかというと、今度は
事業者が意欲がなくなりますね。ですから、
電力会社としては安く買い取れるわけですけれ
ども、
事業者が、それじゃ余りもうけが出ないからといってやめるようになります。
ですから、いかに買い取り
価格をうまく
設定するかということになるわけですが、この
価格というのは、一たん決めると、
市場メカニズムは働きませんから、やはり買い取り
義務ですから、余り下がりづらいのですね。そういう
意味で、そこら辺の量的な、どれだけの量が入るかということは、買い取り
価格の値によって成り行きなわけですよ。
私たちは長期
エネルギー需給見通しを策定していまして、今までは
目標量で決めていましたけれ
ども、これからはそうはいかぬと。今の
地球規模の
環境問題があって、今度はエミッショントレーディングをやるかという話になってきたときに、やはり
環境性に富んだ
エネルギービジョンを
我が国が主できちっとしておかないと、これはうまくありませんね。
そういう
意味では、今度の長期
エネルギー需給見通しというのは、我々が新
エネルギーの量として確定した量をどうにか死守して入れたいというのが一つの骨子であります。その中で、
市場メカニズムを入れてなるべく国民的な
コストを安くするというのが
RPSと言われているもので、メリットは今まで何人かの方が言っておられたとおりですが、我々としては、量が確定できるというところに非常にこれからの
日本の
エネルギーの需給の構造を明確にできるということが一つ挙げられると思います。
ですから、量を決めた中で、
一般電気事業者あるいは
電力を小売りしている
事業者に対して
利用の
義務化を課すわけですね。
利用義務ですから何らかの、
義務化というのは大変なことで、
法律で課されるということは、
勝俣参考人がおっしゃったわけですが、やはりかなり強烈なことになります。
そうすると、私
どもはこれだけ新
エネルギーを
利用しましたよという証明書が必要になりますね。ですから、ある
意味では
発電証明書みたいなものを持っていないと証明になりませんから、それがある
意味では証書と同じような役目をしてくるだろうというふうに我々は
考えていまして、
法律ではそういうふうなことが機能できるように、政令あるいは省令等々できめ細かな対応をしながら、なるべく、国民が
負担すべき高
コストのものを、アディショナルの
コストを安くする方向で競争をしていただくというのがこの骨子であります。
もちろん、そうなりますと、
発電証明書を課す
対象とする
エネルギー源は何にするのかという話になります。私
どもは、できれば、新
エネルギー部会ですから、
日本の中で決めてきた新
エネルギーも入っているカテゴリーのものを積極的に
推進したいと思うわけです。
その中に
廃棄物発電が入っている。
廃棄物発電に関しては、本当に、例えば廃プラスチックが比較的経済ベースに合う
発電になって、それでまた
発電証明書があって、ビジネスができるのかという話がありますけれ
ども、でき得れば、これは
市場メカニズムですから、それは
廃棄物発電だってそう簡単にできるわけじゃありませんね、
環境アセスもあれば。
風力だって、これは風況のいいところを見つけなければそう簡単にできない。ある
意味ではみんな同じように何らかのハンディを背負っています。それが新エネですから。
ですから、ハンディキャップをもしつけるのであれば、
助成金とか何かを少しずつ入れていくという可能性はありますけれ
ども、できれば、オリンピックみたいに用意ドンでやってほしいという
考え方で、それで自分がまだ少し高いなと思えばそれは
コスト削減努力をしていただいて、勝てるようにトレーニングをしていただくというふうな
制度がこの
制度でございます。
そうなりますと、
利用義務を課された小売
事業者の皆さんにとって、なるべくチョイスが広がるような形の方がいいだろう。ですから、電源の多様化の方が
コストインセンティブも働いてくるだろうということで、なるべく広く間口を広げるという
考え方をとってきました。
これに関しては、新
エネルギー部会の中でもちろん反対もあります。反対される方は最後まで反対しますから。ただ、多数決はとっていませんが、一応私
どもは数として押さえていまして、八〇%以上の方はこの
RPSに対してゴーサインのサインを出していただいたという経緯がありまして、
対象エネルギーに関してもなるべく広くした方がいいだろうという
考え方の方がマジョリティーを占めているというふうに私は理解をしております。
それで、これからの要望ですけれ
ども、こういう
制度というのは、
固定価格で買い取りをやって、いろいろと余り
コストが下がらなかったとかということを踏まえて、インセンティブをつけた、
市場メカニズムが入ったこの
制度に移行しつつある国がかなりあるわけでありまして、その代表、もう既に移行している国が、米国のテキサス州、米国は州によって違いますから。それから英国、オーストラリアという国です。大体みんなルールづくりがうまくて、
環境という名のもとで、
エネルギーの政策に対してルールをつくって、先取りをして、世界戦略をしようという国ですよ。
だから、そういう
意味で、もしこの
法案が、先生方の御審議を経て、御審議の過程でいろいろと考察していただいて、いち早く取り入れられるものであれば、私
どもとしては、なるべく世界に先駆けて、世界と同じような形でスピーディーに、遅くなくてスピーディーにやっていただくことが大事である。それで、早くそのノウハウを得て、経験を積んで、そして、
エネルギー政策に関しては、アジア圏あるいは世界に対して、
我が国の
エネルギー政策ここにありということをきちっとやはりやっていただくようなことを私は願いたいと思います。
そういう
意味で、まだ経験が少ないということがありますから、完璧な
制度とは全く言えないかもしれません。そういう
意味で、なるべく弾力的に、フレキシビリティーがあり、かつ機動的に、
対象の
エネルギーだとかあるいはクオータの
設定のところだとかいうことをうまく対応できるような形にしていただくと非常に効果の上がる
制度じゃないかと思います。
それで、あと、国の役割として、私
どもは、例えばこの
法律が通ったら、この一本で新エネ政策は終わりなんだということではなくて、必ずこういうのは合わせわざですから、高
コストのものを市場に入れてくれと言ったって普通は入らないわけですからね。循環型社会なんて言ったって、市場経済が優先されればそんな高
コストの循環型が入るわけがないわけですから。そういう
意味では、なるべく合わせわざでうまく持っていっていただきたい。
ですから、広く民から集めた税金を薄く
助成金として
技術開発に入れるとかということもあわせてやっていただくし、もちろんのことながら、
電力会社が主導でやってこられたグリーン料金
制度、これは篤志家の浄財ですから、こういうものも集めていただいて、
制度と、ボランタリーと、それからもう一つ
助成金と、この三つの合わせわざで、世界に先駆けて非常に効果のある新エネ政策を打っていただくと非常にうれしいと思います。
ありがとうございました。(拍手)