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鈴木参考人 初めにちょっとお断りしておきますけれども、今ちょっと歯を抜いておりましてお聞きづらい点があるかと思いますけれども、御容赦願いたいと思います。
今御
紹介いただきました、
株式会社鈴木工機製作所の
鈴木でございます。
私どもは、大田区久が原におきまして、昭和十四年、ですからもう六十二年前でございますけれども、私の父が
日本光学から独立いたしまして
創業をしたという
会社で、現在六十二年の歴史を持っておりますけれども、私は、父が昭和五十一年に他界いたしました後を継ぎまして、二代目として現在まで
社長をやっております。
現在のこの
状況は、
中小企業、我々にとって、私の二十六年間の経験の中でも一番厳しいなということを実際に感じております。今までの
お話と違いまして、私、二十六年もやっておりますと、地域のこともいろいろやらされまして、現在商工
会議所の大田支部の工業分科会長という立場に立たされております。大田区の
中小企業、大体、何かテレビ等でも話題になりますと大田区へ行けというようなことで、
不況だというと大田区へ来る。やれ糀谷の方が軒並みもう
中小企業はなくなっているというような話が、一番先に出るのが大田区でございまして、その中の工業分科会長という大任を私は仰せつかっているわけでございますけれども、本当に
皆さんの
お話が切実な問題である。
今、
金融に関しては
長野さんが、非常に私どもの訴えたいことを前もっておっしゃってくださったんですけれども、ダブってしまうかもわかりませんが、一応みんなで考え、こういうことを、時間がちょっと足りなかったのでなかなか代表した
意見とはならないかもわかりませんが、レジュメに沿って御説明をさせていただきたいと思っております。
私は、この
機会に、
日本の
中小製造業の代表的集積地である大田区の
製造業の
現状と問題点、それから
政策課題に関しまして
意見を開陳させていただきたいと思います。
御存じのように、大田区は典型的な
中小企業が集積した地区であります。現在、減ったとはいえまだ五千軒以上の
事業所が操業しております。どのぐらい減ったかといいますと、ピーク時、一九八三年には一万軒近い工場がございました。それが現在、この約二十年の間に半分に減ってしまっているというのが
現状でございます。
中小企業は、常に景気の荒波をまともに受けて、
大手企業の
生産の動向に左右されております。特に今回の
不況は中でもとりわけ厳しく、昨年六月ごろからの
大手電機メーカーの
不況というのがよく新聞でも言われておりますけれども、
大手電機メーカー自身の
生産調整が始まり、
大手の下請
企業は受注の急減に見舞われました。これは過去にないことだと思います。それから、昨年の十一月以降、
大手企業の設備投資の減少も加わり、
中小企業の景況はさらに深刻化しております。
東京商工会議所大田支部が会員を対象に昨年の十月に行った緊急アンケートの結果では、八割の回答
企業が仕事量の減少に苦しんでいるという回答でございます。金も足りないけれども仕事の方がもっと足りないというのが
現状だと思います。
先ほど五千軒ぐらいの
製造業があると申しましたけれども、分析してみますと、本当に、二十人以下の零細
企業といいますか小さな
会社が八五%、残りの一五%が二十人以上の中堅
中小企業、
会社をなしているのはわずか一五%しかないわけなんです。その一五%の中身を見ますと、数社の親
会社を持った下請加工業と、また独自の
商品を持った
製造業、本当の
製造業ですね、自社ブランドで立派に売っている
製造業、それで
中小企業でありながら
日本でナンバーワン
企業、その
商品に関してはナンバーワン
企業だと言われるところは何社もございます。
そういうようなところであっても、今回のIT
不況のせいですか、例えばプラスチックの成形機をつくるための温度計をやっているような
日本トップメーカーでも受注が半減している。要するにプラスチックの機械が売れない。そのIT
不況がすべてに、意外なところにまで波及していて、それが
中小企業に
最大のピンチを招かしている、こういうことではないかと思っております。
また、独自の
商品をつくっているところも、海外
商品との競争ということで非常に苦労しておりますし、加工業の中でも、やはり最近はグローバルになりまして、例えば私どものお客さんでも、香港にお客さんがあるんですけれども、そこから見積もり依頼が来る。歯車をこれだけ、
日本から何十万個供給してくれないかという話は来るんですけれども、実際に、例えば私どもの
お客様で見積もっていただいて、三十万個もあるから、まあ安いとは思うけれども、一個八円ぐらいは欲しいという見積もりが出てくるわけですね。それで香港に見積もってみますと、とんでもない、高いよと、香港でやると三円だというわけです。
香港が三円で
日本が八円、香港に比べればしようがないかなと我々も思ったところが、とんでもない、ドイツの見積もりで四円だと。
日本はドイツの倍だというわけですね。何十万個とやる場合にはもうほとんど無人でやるわけですよ、二十四時間フル稼働で、オートローダーつけましてね。そういうものですら
日本ではもう世界の価格に合わない。
これは何がいけないかというのが僕らもよくわからないんですよね。要するに、機械の償却、まあすべてが高いんだろうと。人件費だけじゃないんだ、電気代から土地の税金から、要は、すべてが世界のレベルに比べて高いんだということがよくわかるわけです。要するに、人間がやるから高いということじゃないんですね、もう既に。ですから
そこら辺が、海外に
大手企業が海外戦略を持っていく
最大の
原因じゃないかなという気がするわけです。ですから、根本的なことを
皆さんによく考えていただいて、その対策、
日本全体としてどうしたらいいのかということを本当に考えていただきたい、このように思っております。
また、特に零細
企業の置かれている環境はまことに厳しい
状況にあります。それは
中小企業からのまた孫請という慣行ですから、
中小企業に仕事がなければ下には仕事が流れないということですので、もうきょうあすの仕事がないんだ、どうしていると聞きますと、いやあ、もう三割だという。三割落ちたのかといったら、そうじゃない、三割しか仕事がないんだと、こういうのが
現状でございまして、今でもちっともそれが改善に向かう気配は全然見えておりません。
そういうことを踏まえた上で、こうした
状況を打破する
政策課題を、
金融と経営支援ということで、
皆さんの御
意見をまとめたものをレジュメにも書いてございますので、それをちょっと読ませていただきます。
金融面では、貸し渋り、貸しはがしの影響が優良な
中小企業にまで及んでおり、何とか対策を講じてほしい。また、
金融機関の
中小企業向け
融資は、量的にも安定的に確保していただき、
企業の血液である
資金が円滑に流れるようにしてほしい。
一つ、平成十年の
中小企業金融安定化特別
保証制度は貸し渋り
倒産の危機から救ってくれたが、その後の受注の伸び悩み、
売り上げ停滞で利用者の返済が苦しくなっているのが
現状である。返済条件変更には柔軟に応じてもらいたい。
先ほど長野さんもおっしゃったとおりでございます。
それからもう一つ、
中小企業に対して円滑に
資金が回っていないのは
金融検査マニュアルに問題があるからではないか。大
企業も
中小企業も同じマニュアルで一律に判断されるのはおかしい。
中小企業は長年培った信頼の中で商売を営んでいる。大
企業と同じような厳しい
審査が
中小企業への貸し渋りを招いており、健全な
中小企業への
融資が滞っている。
中小企業に配慮した規定を明確にしていただくなど、マニュアルの見直しを含め検討していただきたい。
もう一つ、
個人保証は貸し手のリスクヘッジの
意味からやむを得ないのかもしれないが、我が国の場合、
経営者は
個人保証をしており、破産したときは
中小企業経営者はすべての資産を失うことになる。万一の破綻時に備え、現在進められている破産法制の見直しを可及的速やかに進めてほしい。
昨年十二月から取り扱いが開始されている売り掛け債権
担保融資保証制度については、
中小企業の短期の
資金繰り調達に資する
制度であり、迅速に普及することが望まれる。使い勝手が悪く、出足が鈍いと聞いています。関係機関も努力しているとは思いますが、この
制度が普及するよう、より一層の工夫やPRなどを進めてもらいたい。
それから、レジュメにはこれは書いてないんですけれども、追加いたしますと、
中小企業の資本充実のための特別な
融資を構築してほしい。
これは
先ほど長野さんからもおっしゃられたことの繰り返しになるわけですけれども、この間、ドイツからミッションの方が大田区へお見えになりました。そのときにお聞きした話ですと、ドイツあたりですと、そういう資本充実のために、十年据え置き、後十年で返済。要するに、
先ほどおっしゃったように
中小企業は資本力が足りない、株を発行して
市場で集めるということもできない、したがって
金融に頼らざるを得ない
現状でございまして、やはりそれの返済がもう翌月から来るというのは非常に、一年据え置きとかそれでやっていくような簡単な仕事じゃないわけです、製造というのは。したがいまして、今機械一台買いますとやはり何千万する。それが一千万ぐらいまでの
中小企業は非常に多いわけですから、自分の資本の中で機械一台も買えないような状態で営業をやっているわけですね。
ですから、そういうための援助ということで、ドイツでは既にもうやっているよ、十年据え置きで、十年後から元利を返して、利息だけはもちろん払うわけですけれども、元利は十年後から十年ぐらいで返済する
制度がもう既にあるというようなことをおっしゃっていましたので、
日本でもそういうことをぜひ検討していただければ、このように思っております。
それから、経営支援及び物づくり支援ということで申し上げたいと思います。
中小企業の
技術開発に向けた経営支援についてはもっと拡充強化してほしい。大田区にはオンリーワン
企業と呼ばれる優良
企業が多いが、独自
技術の開発にはもっと国や
東京都、区の
資金援助が必要である。我が国にとって物づくりの
技術が衰退していくことは大変大きな問題である。
日本の
製造業の基盤である
技術や技能が失われることは国家的損失と認識していただきたい。そこで、
技術開発に関する予算については相当な増額をお願いしたいということでございます。
また、物づくり能力の衰退が激しい。若者が製造現場に魅力を感じないようだが、初等中等教育から物づくりの楽しさや重要性を教えていかないと、工業立国である
日本はもたなくなる。
熟練
技能者はますます高齢化している。大田の
製造業がすぐれているのは、熟練のわざと製造
技術が融合しているからだ。熟練
技能者を社会的にもっと評価してほしい、また、評価できるようなシステムを構築してほしい、このように私は思います。
例えばドイツなんかですとマイスター
制度という
制度がございまして、要するに
技能者、熟練者というのは
一般国民からも尊敬される地位にあるわけなんですが、したがって若い人も、おれはマイスターで何を目指すよという若い子がいると聞いております。ところが、今なかなか
日本では、私はこれでこういう
技術をやっていこうという若い者が非常に減っている。要するに、初等中等からの教育の間に物づくりというものの楽しさを教えるということを今怠っているんじゃないかという気がいたしますので、ぜひもう小さいときから、物づくりがやはり国をつくっていくんだという観点で教育を支えていただきたい、このように思っております。
以上、いろいろ申し上げましたが、一日も早く安定した
経済となり仕事がふえることを望んでいるのが本音でございます。
以上をもちまして、私の
意見陳述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)