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佐藤参考人 与えられた時間は十分ということでございますので、
皆さん方の手元に
問題提起という私のメモを配ってあります。
朝鮮半島においては、大体ここに書いてある五つぐらいが大変大きな関心を呼び、かつ問題になっているところだと思います。
まず
最初の、
ブッシュ政権の
朝鮮半島政策なんですが、これは十分の中で触れることはできませんので、最近何が起きているかという事実
関係だけを御
紹介させていただきます。
まず、三月十八日、
ブッシュ政権は
韓国に
イージス艦三隻を売却いたしております。
それから、三月の二十九日、
駐韓米軍、これは三万七千おるんですが、これの
基地の縮小。どれくらい
基地が縮小されているかというと、四千万坪、
米軍が使っておった
基地を返すという
動きが出ております。表面上の理由は
韓国民の要望にこたえてということになっているんですが、これは
クリントン政権時代から根強くあった
駐韓米軍撤退問題と何らかの
関係があるというふうに私は見ております。したがって、
情勢の
発展いかんによっては三万七千の
駐韓米軍が引き揚げる、そういう
可能性が起きてきている。
それから、四月の一日、
アメリカの
ロッキード社が、射程三百キロの
地対地ミサイル、これを
韓国に百十機販売いたしております。
さらに、四月十九日には、
アメリカの
ボーイング社から最
新鋭機F15K四十機購入をいたしております。
したがって、
韓国の
軍事力は、この三、四月でもって、前とは比較にならないほど強力なものに変わっております。
それから、
アメリカ海軍は、五月の八日、
西太平洋、
アジア水域なんですが、新しく、空母一隻、
駆逐艦五隻、
原子力潜水艦二隻、これの
増派を決定いたしております。
今、御
案内のように
ワールドカップで
日韓は沸き立っているわけですが、その裏側では、今申し上げたように、
韓国軍に対して
アメリカの最新の
兵器がどんどんと今投入されている。それだけではなくて、
アメリカ自身が一
機動隊を
西太平洋に
増派を決定したという
動きです。
後で御
質問があるかと思いますから、この問題はこれくらいにしておきまして、第二番目の、
北朝鮮情勢、深刻な
経済危機が到来するであろう。
テレビなんかでよく放映されておりますように、
今北朝鮮は、亡くなった
金日成主席の生誕九十周年、軍の創建七十周年、それを中心に据えて、
ワールドカップにぶつけて、
アリラン祭という大イベントを展開しております。これが終わったら経済的に大変な
危機が訪れるであろうというのが
朝鮮総連の
関係者の一致した
見方です。なぜ到来するかという話は、御
質問があればお答えいたしますが、従来とは全く違う事態が到来するであろうというふうに我々は見ております。
三番目の、
亡命者、
難民の問題ですが、今申し上げたような、言うなれば、
ブッシュ政権が登場して、従来の
クリントン政権とは全く逆な、
軍事力を
背景にした、つまり
抑止力を
背景にした
外交を展開いたしておりますから、
韓国からも
食糧は余り入っておりません。御
案内のように、
日本からは全く
食糧支援はない。
それから、
世界の
NGOが、ここ何年間ずうっと
北朝鮮に入って
食糧支援などをやってきたんですが、この数年間の中で明らかになったことは、
援助をした
食糧が
飢餓難民には渡っていないという事実が非常にはっきりしてきたことです。したがいまして、主要な国際的な
NGOが次から次へと今引き揚げをしておるということで、そういう
意味で、
北朝鮮の
食糧事情は
大変逼迫をしてきている、その中での
難民というふうに位置づけてよろしいかと思います。
きょうの朝刊も一斉に報道しておりますように、
中国にある
韓国大使館、もう既に十七人の
亡命者が今たまっているわけです。これから
亡命者がふえることはあっても減る
情勢には全くないということで、今私
たちは、
北京の
大使館、
外国の
大使館あるいは領事館にどんどん
北朝鮮難民が入るのを対岸の火事のように見ておりますが、
日本に入ってくるのはもはや時間の問題だと思います。
私
たち専門家の間で広く言われていることは、もと
日本に住んでおった
在日朝鮮人、これは九万三千人、一九六〇年、正確には五九年末から
北朝鮮に帰ったわけです。この
人たちは現在、私の知っている限りでは、
日本に密入国してきている
人たちは二十三人おります。もっとふえているかもしれません。この
人たちが大挙して船で
日本にやってくるという
情報がずっと流れております。この大挙して船にというのは、二けたではなくて三けたと言われております。
この
難民問題が東アジアに大きな混乱を引き起こす兆候が、実は今
中国で起きているものだというふうに私は見ております。
金正日政権の
行方がどうなるかと
密接不可分の
関係がありますけれども、私はちょっと違った
見方をしているんですが、
専門家の中には、
東独崩壊の前夜と非常によく似てきておるという
認識が比較的広まっております。つまり、この
亡命者問題を見ておって、そう判断しているわけです。そういう
意味で、この夏から秋にかけて、
朝鮮半島情勢、なかんずく
北朝鮮の動向は
日本に大きな影響を与えてくるであろうと見ております。
四番目の、朝銀への
公的資金導入の問題なんですが、これは最近、衆議院の
安保委員会かなんかで明らかになったことですが、破綻をした朝銀の
理事長四人が
朝鮮総連の
幹部である、これは定款に、それはまかり相ならぬと
金融庁の指導で行ったわけですが、実際出てきた名簿は、
朝鮮総連の
幹部ではなくて、
朝鮮労働党の
党員です。
つまり、それを
学習組と普通呼んでいるんですが、
ハナ信用組合の
理事長、これは
朝鮮大学校に勤めておった
学部長です。その
学部長のとき、彼は
朝鮮大学校の党の
最高責任者です、
労働党の
最高責任者。それが
ハナ信組の
理事長に横滑りをしてきたということですから、
金融庁の立場からいっても、こういう
金融機関に
公的資金を導入することが妥当なのかどうかということが大きな問題になると思います。
さらに問題になるのは、それまでに朝銀には、御
案内のように、近畿朝銀に三千億、新たに受け皿になったその他
三つの朝銀に約三千億、合計六千億出ております。これはもう出て、終わったわけです。今問題になっているのは、五千五百億。そうすると、金を出した朝銀の前の
理事長たちは
学習組と
関係なかったのかどうかということです。
関係あったということになると、
外国の
政党の
党員が
理事長を務める
金融機関に
我が国が
公的資金を一兆一千億投入するという問題が起きてくるわけです。こういうことが許されるのかどうかということが、今、
外交的に言っても大きな問題になってくると思います。
五番目、
拉致の問題です。
拉致の問題は、
横田めぐみさんが
拉致をされまして、この十一月が参りますと二十五年が経過します。十三歳の少女が三十八歳になります。それと同じように、
政府が認めただけで八件十一名。
一番大きな問題だと私が思っておりますのは、
四半世紀近く経過しているのに、
拉致された
人間が生きているか死んでいるかも
我が国の
政府は把握していないという事実です。
外交機密費というのは、私に言わせるならば、こういう
拉致された
人たちが生存しているかどうかを確認するため、そのために使うお金だと私は理解しております。実際はああいう
機密費の使い方をされておって、
四半世紀にわたって、自国の
国民が生きているのか死んでいるかもわからないというような
状態が二十五年間続いてきた、この
日本というのは何かということが大きな問題だと思っております。
それから、
不審船の問題。これは引き揚げるとはっきりするんですが、
覚せい剤を大量に積んでおったとか、あるいは
武器弾薬が搭載されておったということになりますと、
日本の
安全保障上大きな問題になってくると思います。
武器弾薬の搭載というのは、それを使う
人間が既に
日本に入っているということを裏づけることになります。何のために入ってきているのかということになります。
覚せい剤、これを使って、
青少年たちの体がむしばまれていく。人によっては、
覚せい剤、麻薬の問題は、明らかに形を変えた
戦争だという
見方をしている人がいらっしゃいますけれども、私は一定の根拠があると思っております。
以上が私の
問題提起です。御清聴ありがとうございました。(拍手)