○松本(善)
委員 いわゆる
外国の領土になったことのない、一言で言えば固有の領土論、それで、これは千島でないという立場であろうかと思います。
固有の領土、
外国の領土になったことが一度もない領土が、戦争の結果、
外国に領有されるということに至った例は、それは世界に幾らでもある。クラーク教授は、この固有の領土論というのは一番弱い、こういうふうに言っておられます。
それから、サンフランシスコ講和
会議で
吉田全権の代表演説は、千島列島南部の二島、国後、択捉と述べておられる。一九五五年までは、放棄した千島列島には国後、択捉が含まれると西村
条約局長が何遍も答弁をしております。一九五五年の十二月九日の衆議院
外務委員会で初めて、国後、択捉は千島に含まれないという答弁をして、それ以来、それが政府の統一
見解となっているということであります。
この解釈について、
日本政府は、
アメリカ、フランス、イギリスに
見解を聞いたことがあります。私は、ここへ持っているその当時の日ソ
交渉の全権代表の松本俊一氏の回想録「モスクワにかける虹 日ソ国交回復秘録」、この本ですけれども、それを読みました。三国の回答は、これは全部引用いたしますと大変長いものになりますので、要旨を申し上げます。
アメリカは、千島の定義は対日
平和条約でもサンフランシスコ
会議の議事録にも定められていない。将来の
国際的決定こそ、南樺太及び千島の究極的処理となるであろう。米国は、
日本が択捉、国後を、これら諸島が千島列島の一部でないという理由で
日本に返還するよう、ソ連を説くことに何ら反対するものではない。
イギリスは、英国政府は、米国政府との
考えの間に数点の相違があり、なかんずくヤルタ協定の内容に関し
見解の相違があるため、米国の
見解に同意を表明し得ない。
フランスは、サンフランシスコ
条約は千島問題を第二条(c)項に規定するのみである。サンフランシスコ
会議議事録は、千島の範囲に関し言及をしている。特に
日本代表が国後、択捉を南千島として言及していることに注意を喚起するというものであります。
クラーク氏はこのことについてどう言っているかというと、
ロシア側は、「二国間の問題でなぜ米国や欧州の応援を求めるのか。特に米国は、サンフランシスコ
平和条約が
締結された一九五一年には、
日本の立場を支持していなかった。だから
日本は
北方領土を放棄せざる得なかったのだ。」と。千島列島という
意味でしょうね。一九五六年のころ、「米国は日ソの接近を妨害するため態度を百八十度変え、「国後、択捉を要求しないと沖縄を返さない」と言い出した。明らかに米国は
自分の利益のためにやっており、支持を受けても
意味はない」、これがクラークさんの
見解なんですね。
クラークさんの言っていることが全部いいかどうかはわかりませんが、
ロシア側が、
アメリカがこう言っているからといってそう簡単に応ずるものではない。私は、南千島は千島にあらず論、それから固有の領土論というのは、やはり全世界を納得させる法と正義に立った議論というわけにはいかないんじゃないかということを思っております。
大臣でも審議官でも、何かこの点について言いたいことがあれば、おっしゃってください。