○松本(善)
委員 外務大臣、ごらんになってください。これは、前の
委員会の後、私に渡された、恐らくすべての
議員に渡されたんだというふうに
思います。
それはさておきといきましょう。それで何遍も
議論をしても始まりませんから。
それで、やはりこれが日ロ
外交をゆがめたということについて、少しきちっと
お話をしようというふうに
思います。少し長くなりますが、聞いていていただきたいと
思います。
ロシア政府は、二〇〇〇年の十一月三十日に、日ソ共同宣言の歯舞・色丹引き渡し条項は
二島返還で領土問題を最終決着させるという規定であったとの見解を正式に
日本政府に伝えております。
この状況のもとで、
鈴木議員が、二〇〇〇年十二月二十五日から二十六日まで、
森首相の特使として、プーチン大統領あてとイワノフ
安全保障会議書記あての親書二通を持ってモスクワを訪問し、イワノフ書記やロシュコフ
外務次官と会談をして、森訪ロの日程や
二島先行返還論などについて協議した。この後、新聞報道は対ロ二元
外交表面化ということで大きく報道され、その後もずっとこの問題については報道をされています。
そして、翌二十六日、河野外相や福田官房長官は、
鈴木議員の訪問を、これを正式会談とするとまずいですから、
二島先行返還論などを、これを一
議員の立場、個人の資格ということで発言をしたわけです。
それで、橋本
北方担当
大臣は、二〇〇一年の
国会で、四島
一括返還論を言い続けているというふうに答弁をしておられるわけでございます。先ほども言いました。
先日、私どもが会見で発表しました、そして皆さんにも、
外務大臣にもお渡しをいたしました三月五日の鈴木・ロシュコフ会談、この第一の特徴は、これらの
日本政府首脳を、河野さん、福田さん、橋本さんなどの発言を非難して、
自分を
二島先行返還論の柔軟な立場に立った政治家として売り込み、東郷
局長が同席して、異論を述べなかったというものなんです。これは、記者会見で鈴木氏は胸を張って、私はそういうことなんだ、こう言ってやっているんですよ。
これは経過ですが、最も大きな特徴は、
鈴木議員は、日ロ首脳のイルクーツク会談では一九五六年の共同声明の有効性を共同文書に明記しよう、これをたびたび要求しているんです、あの文書の中で。しかし、
ロシア側は、先ほど申しましたように、これは
二島返還で領土問題を最終決着させるという規定であったという見解を正式に
日本政府に伝えているわけですよ。
この状況のもとで、共同宣言への明記を
日本側から主張するということは、この
ロシア側の主張を認めることになる。そして現実に、三月二十五日のイルクーツク声明に盛り込まれることになる。イルクーツク声明が、一九五六年の日ソ共同宣言を
平和条約締結に関する
交渉のプロセスの出発点を設定した
基本的な法的文書であることを確認した、これは非常に重大なことだと私は思っています。
我が党は北千島を初めから放棄する立場でないことは先日の
委員会でも申しましたけれども、
政府の四島
返還論の立場から見ても、極めて重大であります。といいますのは、日ソ共同宣言第九項は、「歯舞群島及び色丹島を
日本国に引き渡すことに同意する。」とはっきり書いてある。この
二島返還は既定のことで、無条件で
日本に引き渡すことになっていて、ただ、「
平和条約が
締結された後に現実に引き渡されるものとする。」となっているだけであります。先ほど
欧州局長も、歯舞、色丹は
解決しているという答弁をいたしましたから、恐らくそのことを言っているんだと
思います。
ロシア政府が、日ソ共同宣言の歯舞・色丹引き渡し条項は
二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったとの見解を正式に
日本政府に伝えている状況のもとで、これを
基本的な法的文書として扱うことは、
日本側にとっては、歯舞、色丹の無条件
返還、
二島について無条件に主権回復する道を閉ざすことになる。
ロシア側には、歯舞、色丹の
返還を領土問題の終着駅にしようとする思惑に有力な根拠を与えることになる。だから、私は、これは重大なことだと言う。二元
外交は、こういう重大な
日本外交のゆがみをもたらしているんです。
それで、
外務大臣に質問したいことは、五六年の日ソ共同宣言第九項をどう見ているか。これは無条件に歯舞、色丹については
日本に返すという、このことを既定のこととしている、こういうふうに見ているかどうか、伺いたいと
思います。