○峰崎直樹君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました
銀行等の
株式等の保有の
制限等に関する
法律案について
質問いたします。
小泉総理は、十月四日の
衆議院予算委員会で、我が国の金融機関と金融庁はマーケットから疑念を持たれているとお認めになりました。そこで柳澤金融担当
大臣にお伺いしますが、我が国の金融行政に関する最高
責任者は一体どなたなんでしょうか。私の
認識では、
内閣府設置法及び金融庁設置法で、それは
内閣総理
大臣とされているはずですが、いかがですか。
ところで、なぜ我が国の金融機関と金融庁はマーケットから疑念を持たれているのでしょうか。
政府は、不良債権処理は峠を越えたという大本営発表を何度も繰り返し、そのたびにそれが真っ赤なうそであったことがばれたこともあるでしょう。しかし、金融行政の最高
責任者である総理が全く他人事のように傍観をし、金融担当
大臣が過去の失政を暴かれるのを恐れて何もせず、金融担当
大臣と財務
大臣と経済財政
政策担当
大臣がばらばらな姿勢であるということが最大の原因であることは明らかではありませんか。柳澤
大臣、竹中
大臣、それぞれ
お答えください。
歴代自民党政権は、株価PKOに代表される市場原理への
政府の介入という禁じ手ばかりを繰り返してまいりました。その結果、市場原理はゆがめられ、金融機関も本当の競争力を失い、不良債権問題は我が国経済にとって最大の桎梏になりました。にもかかわらず、
銀行等保有株式
取得機構による銀行保有株式の買い取りを企図した本
法律案が
政府から提出され、さらには、整理回収機構、RCCの機能強化と称する不良債権の国家的飛ばし策が与党内で
検討されているということに、私は我が国資本主義の危機を感じないわけにはいきません。柳澤金融担当
大臣は、市場原理をゆがめるこれらの
政策について、かつては反対してこられたのではありませんか。なぜ賛成に転じられたのか、その
理由をお聞かせください。
以下、本
法律案の
内容について順次お伺いいたします。
まず、この
法律の
目的です。第一条には、銀行による株式売却に伴う市場へのインパクトを緩和するとともに、銀行経営の健全性を維持するという
趣旨の文言が並べられています。しかし、金融庁の説明では、機構による株式の買い取り額は二兆円程度であるとされている。日銀の一番新しいデータによれば、個人の金融資産は
年間八十四兆円ふえ、そのうち株式が二十五兆円もあるということであります。ということは、本当の
目的が後者すなわち銀行の健全性の維持にあることは明白です。こうした禁じ手まで出さなくては銀行経営の健全性を維持できないのであれば、これまでの金融行政の誤りを率直に認め、抜本的な危機管理策を実行に移すべきではありませんか。柳澤金融担当
大臣及び市場を重視してこられた竹中
大臣に御所見をお伺いいたします。
次に、機構を通じた取引の公正性が
確保できるかどうかという問題です。
機構には、銀行界から役職員が派遣されるとお聞きしています。すなわち、銀行から株を買い取る機構は銀行の支配下にあり、機構は、金融再編により普通銀行とグループ化された信託銀行に株式の管理を委託することになるわけです。これでは出来レースではありませんか。倒産したマイカルが個人投資家向けに九百億円の社債を発行したときも、社債管理会社となった銀行がちゃっかりと融資を回収していたのではないかという話もあります。インサイダー取引、相場操縦、総会屋への損失補てんなど、証券市場の公正性をぶち壊すアンフェアな行為は、これまで何度も何度も繰り返されてきたではありませんか。この疑問に対し、柳澤金融担当
大臣から納得のいく御説明を受けたいと思います。あわせて、
民主党が提案しています
日本版SEC法について早急に制定すべきと
考えますが、
大臣、いかがでございましょうか。
次に、特別勘定による買い取り資金に対し二兆円の
政府保証を付与することについてお伺いいたします。
言うまでもなく、株は上がることもあれば下がることもあります。であれば、機構に株式を売却する銀行は、できるだけ株価が下がりそうな株式ばかり選ぼうとするインセンティブが働きます。その結果、機構の財産はどんどん食いつぶされ、いずれ債務超過に陥るであろうことは想像にかたくありません。本
法律案では、機構の解散時に機構が債務超過であればその不足分を
政府が補てんすることとされており、要は最大二兆円の国民
負担が発生するおそれがあるわけです。一方、もし幸運にも機構に財産が残れば銀行に分配されます。もうけは銀行で山分け、損が出れば国民にツケ回し、これがこの
法律案の正体なのであります。このような不公平な話が許されるのでしょうか。柳澤金融担当
大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
次に、このスキームが本当に機能発揮するのかどうか、お伺いしたいと思います。
本
法律案は、森前
内閣の
政策を継承したものであり、初めて構想が出たときから厳しい批判にさらされてきました。金融庁も否定的見解を繰り返し、
法案化が決まってからも、自分
たちはできるだけかかわらないように、表向き民間が自主的にやるものであるという形にしようと努めてきたわけであります。こうした不幸な生い立ち、そして余りにも筋の悪いスキームであるがゆえに、さすがの銀行界も余り活用する気はないと漏らしております。要するに、機能発揮する見込みはないということなのであります。であれば、我が国金融行政の信頼回復のためにも、このような
法律案は直ちに撤回する方が得策であります。これらの点について、柳澤金融担当
大臣の御見解をお伺いいたします。
先ほども述べましたが、私は、
政府が市場原理をゆがめる禁じ手まで出さなくては銀行経営の健全性を維持できないという事実が、今や抜本的な
対策を講じる段階にまで来ていることを雄弁に物語っていると
考えます。そして、こうした事態を招いた最大の原因が、九八年のあの金融国会以降も金融機関に厳格な資産査定と十分な引き当てを課すという大原則を踏み外したことにあります。
私
たち民主党議員とともに
政策新人類と言われた日銀出身のある自民党
議員が、つい最近、こう述べております。三年前の早期健全化法は厳格な評価抜きに健全行をさらに健全にするという国家的フィクションだった。もう一度申し上げます。国家的フィクションであった。まさにそのとおりだと思います。
柳澤金融担当
大臣は、金融機関の資産査定と引き当ては適切に行われていると強情にも言い続けてこられました。しかし、当の銀行自身からそれを否定する発言が飛び出し、倒産した
企業が不良債権に分類されていなかったことが発覚し、与党の有力
議員もフィクションだったということを認め、総理もまた金融当局がマーケットから疑念を持たれていると公言している今、柳澤金融担当
大臣の論理は完全に破綻をしています。通常の金融検査に加え、わざわざ特別検査なるものを
実施せざるを得なくなったのも、それを裏づけるのではありませんか。
この際、柳澤金融担当
大臣は、みずからの失政を率直に認め、潔く
責任をおとりになるべきと
考えますが、いかがでございましょうか。
私は、この三
年間の金融失政により、再び金融危機が顕在化してきたことを大変憂慮しています。今そこにある危機は、金融システム全体の過少資本問題による金融仲介機能の喪失です。問題解決
能力のない
政府・与党は、特別検査は適当にお茶を濁し、またしてもペイオフ凍結解除の再延期という先送りを繰り返すのでしょう。そして、国債発行額を三十兆円以下に抑えるという小泉総理の公約も、年が明ければあっさりと破棄されるのでしょう。そのとき、
日本政府には構造改革を断行する
能力も意思もないと判断した国債マーケットは、反乱を開始いたします。すなわち、国債価格の暴落、長期金利の急騰であり、
日本経済全体のクラッシュの発生です。このような悪夢は、荒唐無稽な空想小説ではありません。
私
たち民主党は、一貫して、不良債権の抜本処理を急ぎ断行し、間接金融の金融仲介機能を回復するとともに、我が国金融システムを直接金融をより重視した構造に改革すべきであると主張してまいりました。
以下、具体的に申し上げます。
第一に、不良債権の抜本処理について、緊急一斉検査を
実施して、金融機関に厳格な資産査定と十分な引き当てを課し、速やかに間接償却を終了させる。その際、債務超過の銀行は一時国有化などの手法により破綻処理に移行、不良債権はRCCに移して回収を進める。
第二に、金融システムを株価変動リスクから守るため、一定の経過
期間を経て、決済業務を行う金融機関の株式保有を原則として禁止をする
措置を講ずる。
第三に、証券市場に対する信頼を回復するため、不公正取引に対する罰則を厳格化するとともに、証券取引等監視委員会を金融庁から独立させ、証券取引委員会、
日本版SECに改組し、監視体制を強化する。
第四に、バブル崩壊後の金融行政を総括するため、国会に金融問題監視院、いわゆる
日本版ペコラ委員会を設置し、金融犯罪・不祥事の真相究明と
責任追及を行う。
第五に、金融
政策について、ハイパーインフレにつながる調整インフレは、国民
生活を破綻に追いやるものであり、断じて容認をしない。インフレターゲティングに名をかりた調整インフレも同様である。
これら
民主党の主張に対する柳澤金融担当
大臣及び竹中
大臣の御見解をお伺いし、また、各
大臣から明快な御答弁がいただけない場合は再
質問させていただくことをあらかじめ申し添えておきます。
また、竹中
大臣が財政金融委員会へ所管
大臣として出席できるようお願いをいたし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣柳澤伯夫君
登壇、
拍手〕