○小川敏夫君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいまの法案に対し質問いたします。
司法は、立法、行政と並び三権の一つを担うもので、法の支配の理念に基づき、
日本国憲法のよって立つ個人の尊重と国民主権を真の意味において実現する
役割を担う民主主義の根幹をなす部門であります。
日本国憲法制定から五十余年を経た今日、司法がその基本理念に基づく
役割を真に担うことができるよう制度の
改革に
取り組みがなされることは十分に意義があるもので、
民主党・新緑風会も真の
改革の実現のために積極的に取り組む
考えでおります。
ところで、司法の
改革を論ずる上において基本的な
議論は、司法が本来果たすべき機能と
役割を十分に果たし得ているかを検証することが最初です。
司法は、具体的事件、争訟を契機に、法の正しい解釈、適用を通じて当該事件、争訟を適正に解決して、違法行為の是正や被害を受けた者の権利救済を行います。そしてまた、行政の違法行為などから被害を受けた者の権利救済など、行政の行き過ぎ等の誤りから国民の権利を守る
役割が課せられているのです。あるいは、公正な手続のもとで適正かつ迅速に刑罰権を実現して、
ルール違反に対処するとともに、
政府の恣意的な刑罰権等の行使により国民が不当な不利益をこうむることがないよう、国民の権利を守る
役割が課せられております。
今、私たちが司法の
改革を論ずるに当たっては、まず第一に、ただいま述べた司法に課せられた
役割を司法が十分に担い得ていたのかを検証し、司法がこれを十分に担い得ていないのであるとするなら、その原因と対策を論議、
検討し、その
役割を十分に担い得る司法制度に
改革すべきを論ずるべきであります。
司法制度
改革審議会の
意見書は、「裁判所は、これらの権限の行使を通じて、国民の権利・自由の保障を最終的に担保し、憲法を頂点とする法秩序を維持することを
期待されたのである。裁判所がこの
期待に応えてきたかについては、必ずしも十分なものではなかったという評価も少なくない。」と述べ、慎重な表現ではあっても、司法が司法に課せられた
役割を十分に担い得てきたかについて疑問を呈しています。
そして、同
意見書は、「身体にたとえて、政治部門が心臓と動脈に当たるとすれば、司法部門は静脈に当たる」とし、静脈の
規模及び機能の拡大を図る必要があるという場合、「その中に、立法・行政に対する司法のチェック機能の充実・
強化の必要ということが含まれていることを強調しておかなければならない。」と述べ、司法の本質面においての
改革の必要性を強調しています。
本法案は、第一条の「目的」において、「この
法律は、国の規制の撤廃又は緩和の一層の
進展その他の内外の社会
経済情勢の
変化に伴い、司法の果たすべき
役割がよる重要になることにかんがみ」、司法制度
改革を
推進することを目的とすると規定しています。
社会
経済情勢の
変化に合わせ司法制度を
改革することが必要であることは認めますが、
審議会の
意見書が、司法制度
改革の根本的な課題を、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」となるために、一体何をなさなければならないのか」、「
日本国憲法のよって立つ個人の尊重と国民主権が真の意味において実現されるために何が必要とされているのか」を明らかにすることにあると設定していることに表現されるところの、司法の本質面においての
改革の目的は一体どこに行ってしまったのでありましょうか。
右に述べた司法の本質面における
改革の
措置を講じた上で、さらに社会
経済情勢の
変化により必要とされる
改革を論じるべきであるのにかかわらず、司法の本質面における
改革が置き去りにされた上での社会
経済情勢の
変化により必要とされる
改革のみを論じる本法案の目的は、司法制度
審議会が求めた司法の本質面における
改革の精神を歪曲し、単に
経済事情からの要請に応じた
改革にとどめようとの意図が図らずも露呈したものであるという批判にどう答えるのでありましょうか。
これでは、今、真に必要とされる司法の本質面における
改革はなおざりにされたまま、規制緩和のかけ声のもと、弁護士の数をふやすだけで
改革が片づけられてしまうのではないかとの危惧を感じるのは果たして私だけでしょうか。
そこで、司法制度
改革推進本部長となる
総理大臣にかえて、官房長官に
お尋ねします。
本法案第一条「目的」にある「国の規制の撤廃又は緩和の一層の
進展その他の内外の社会
経済情勢の
変化に伴い、司法の果たすべき
役割がより重要になることにかんがみ」の条文の意味することを御
説明ください。
右の条文は、司法制度
改革審議会の
意見に一定の枠をはめ、これを制限するものであっては決してなりませんが、
審議会
意見に枠をはめるものでも、これを制限するものでもないことをお約束してください。
本法案は、
審議会の
意見の趣旨にのっとって行われる
改革を
推進するものですが、
審議会の右
意見を
最大限に尊重して諸
施策を講じることを約束してください。
次に行きます。
審議会の
意見は、立法、行政に対する司法のチェック機能の充実
強化の必要性を強調し、「行政に対する司法のチェック機能については、これを充実・
強化し、国民の権利・自由をより実効的に保障する
観点から、行政訴訟制度を見直す必要がある。」と断じております。ところが、本法案第二条「基本理念」、第五条「基本
方針」の中に行政訴訟制度の見直しに直接触れた部分がありません。
そこで、法務大臣に
お尋ねします。
行政訴訟の見直しを行う
考えはありますか。行政訴訟の見直しは本法案が
推進する司法
改革の中に含まれますか。第二条「基本理念」、第五条「基本
方針」の中で、行政訴訟の見直しはどのように位置づけられ、法文のどこに示されているのですか。
次に行きます。
審議会の
意見は、違憲立法審査制度についても触れ、あわせ、「最高裁判所裁判官の選任等の在り方についても、工夫の余地があろう。」と指摘しています。
そこで、法務大臣に
お尋ねします。
違憲立法審査権を機能させる方策及び最高裁判所裁判官の選任等のあり方の工夫について、本法案の基本理念と基本
方針ではそれぞれどのように位置づけられているのでしょうか。それらは、法文上、どのように示されているのでしょうか。それらについて、今後どのように取り組むお
考えでしょうか。
司法制度
改革審議会は、「国民のための司法を国民自らが実現し支えなければならない。」と述べ、国民が統治主体、権利主体として司法の運営に主体的に参加することを求めております。その実現の一つとして、裁判員制度の導入を提案しています。ただいま述べた趣旨から、国民がわきにいるだけの制度ではなく、国民が主体となって判断する裁判員制度の導入が必要であります。
そこで、法務大臣に
お尋ねします。
裁判員制度の導入に当たっては、国民が統治主体として主体的に参加する裁判員制度を導入する
考えでいますか。
先般、今
国会において成立しました自衛隊法改正案では、秘密漏えいに関する規定の改正部分について、非常に重大な
内容の改正点でありながら、
政府・官僚によってその
重要性についての
説明が隠されたまま
審議に入ってしまったという声が多くあります。
私は、国民の権利の最後の守りである司法の
改革において、重要な事項が国民の目から隠されたところで論議されたり、
議論の方向が恣意的に左右されたりしては決してならないと思います。このためには、司法
改革の
推進体制が国民の前に開かれた、そして自由で公正な論議のなされる場でなければならないと
考えます。
そこで、官房長官に
お尋ねします。
本法案によって設置される司法制度
改革推進本部の透明性及び公正さの確保のために、具体的にどのような
施策を講じる
考えでおりますか。
そして、
推進本部事務局に、司法及び行政の職員だけでなく、
日本弁護士連合会やその他の
関係団体の推薦する弁護士やその他の者をなるべく多く配置すべきと思いますが、その点はどうですか。事前に聞いたところでは、五十数名中、弁護士が四、五名配置されると聞いていますが、それでは少な過ぎますので、弁護士をさらに増員してください。
裁判を受ける立場で司法にかかわる国民一般の声を反映させるため、事務局に民間人も配置するのが適切と思いますが、この点はどうですか。
あわせ、法務大臣に
お尋ねします。
本法の規定によらないで顧問
会議及び
検討会議を設置すると聞いていますが、どうですか。
顧問
会議及び
検討会議の
メンバーはどのような構成を
考えていますか。
顧問
会議には日弁連会長や民間人なども参加させるのが好ましいと思いますが、その点はどうですか。
検討会議にも弁護士や民間人を多く参加させるべきと思いますが、その点はどうですか。
推進本部下の各
会議や
検討会の議事を公開して行うべきと思いますが、その点はどうでしょうか。
次に行きます。
本法第四条では、日弁連に
協力義務を課しています。
そこで、法務大臣に
お尋ねします。
協力義務の
内容について
説明してください。日弁連の独立性を害することにはならないでしょうか。
次に行きます。
男女共生は今日の
我が国社会の基本であります。
そこで、これまで男女共生社会構築に
努力してこられた法務大臣に
お尋ねします。
今回の司法
改革に当たり、ジェンダーバランスの採用についてお
考えをお聞かせください。
次に行きます。
今回の司法
改革の大きな
改革点の一つは、法曹養成制度の
改革にあります。
これまでの司法試験及び司法修習による法曹養成制度を
改革するのは、単に法曹の数を増員するためだけに行うのではありません。
改革の本質は、現行制度が
法律知識に偏った知識の試験と技術の習得の養成制度であったため、幅広い識見と豊かな人間性そして倫理観を備えた法曹人の輩出に不向きであったことの反省から、単に
法律知識の試験や法廷技術等の習得にとらわれないで、幅広い分野から人材を集め、人間性豊かな法曹を育成するための教育を行う制度の確立を目的として法科大学院制度の
創設が
推進されるべきものであります。
したがって、これから設置される法科大学院は、法学部履修者だけを対象としたものではなく、法学部以外の学部と分野から幅広く入学者を選考する必要があります。このためには、法学部を履修した者を前提として二年制の法科大学院を設置することは好ましくなく、これを三年制にして法学教育を最初から受ける者が対応できるようにすべきであり、司法制度
改革審議会の
意見も同様であります。
法科大学院を設置予定の大学では、既設の法学部履修者を対象として既設の大学院を手直しする程度で法科大学院を設置する動きもあるように仄聞しますが、このような法科大学院では法曹養成制度の
改革の趣旨が失われてしまいます。
そこで、法務大臣に
お尋ねします。
法科大学院は法曹養成に特化した教育機関でありますので、文部科学省ではなく、法曹三者などで構成する国家行政組織法三条による委員会を設立し、その所管とするべきと
考えますが、いかがですか。
法科大学院設置に当たっては三年制を原則とする
方針を採用するべきと
考えますが、その予定でおりますか。
法学部履修者に限らず、幅広く人材を集めるためにどのような方策を
検討しておりますか。
また、文部科学大臣に
お尋ねします。
従来の大学院と法科大学院の
関係をどのように整えていく
考えでありますか。
次に行きます。
小泉
総理は、米百俵の精神を掲げております。司法
改革にもその精神を発揮し、すぐれた法曹の輩出のため十分な予算
措置を講じるべきと
考えます。
そこで、官房長官に
お尋ねします。
司法
改革に対する十分な予算
措置を
考えておりますか。また、
経済的困窮が理由で法曹になれないということのないよう、困窮者に対する
支援措置を
考えておりますか。
最後に、
民主党は、司法の本質を見据えた
改革の提言をまとめ、法曹人口の増大、法曹一元の実現、陪審制など国民の司法参加の
促進、行政訴訟制度の
改革、家庭裁判所の
改革、司法アクセスの改善、裁判の適正迅速化、裁判以外の
紛争解決手段の
拡充、司法行政の適正化、法科大学院構想、隣接専門職種の参加などを提案しております。
今回の司法制度
改革審議会の
意見には一部に不十分な点もありますが、
民主党が提案する司法
改革へと
改革する方向にあるものであり、
民主党はこれを高く評価しております。
司法制度
改革審議会の
意見による
改革が正しく実現されることを
期待するとともに、
民主党はさらなる
改革の実現に
努力していくことを述べます。
そして、
答弁によりましては再度質問に立つことを申し添えた上、私の質問を一応終わります。(
拍手)
〔
国務大臣森山眞弓君
登壇、
拍手〕